(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】光ファイバモジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/30 20060101AFI20220317BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G02B6/30
G02B6/125
(21)【出願番号】P 2020505049
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2019008628
(87)【国際公開番号】W WO2019172254
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2018042364
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝博
(72)【発明者】
【氏名】山本 潤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】榊原 陽一
(72)【発明者】
【氏名】渥美 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知也
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017927(JP,A)
【文献】特開平08-152537(JP,A)
【文献】特開平09-312440(JP,A)
【文献】特開2001-337253(JP,A)
【文献】特開2015-191112(JP,A)
【文献】特開2000-321464(JP,A)
【文献】特開2006-146053(JP,A)
【文献】特開2001-330762(JP,A)
【文献】特開2016-001286(JP,A)
【文献】特開2001-196683(JP,A)
【文献】YOSHIDA, Tomoya et al.,Vertical silicon waveguide coupler bent by ion implantation,Optics Express,OSA,2015年11月03日,Vol. 23, No. 23,pp. 29449 - 29456
【文献】ATSUMI, Yuki et al.,Design of compact surface optical coupler based on vertically curved silicon waveguide for high-numerical-aperture single-mode optical fiber,Japanese Journal of Applied Physics,Vol. 56, No. 9,2017年08月24日,pp. 090307-1 - 090307-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/125
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/42 - 6/43
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面を有し、光導波路が形成されるとともに前記光導波路の端部が前記第1表面から突出している光回路形成体と、
前記第1表面と対向する第2表面を有し、光ファイバを保持するとともに前記光ファイバの一方の端部を前記第2表面側において前記光導波路の前記端部と光学的に接続できるように露出させる保持体と、
前記第1表面と前記第2表面とにより挟持される、球状のスペーサ及び/又はその外周面が前記第1表面及び前記第2表面に接触している円柱状のスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、前記第1表面と前記第2表面とを接着する接着剤内に含まれており、
前記第1表面と前記第2表面のうち前記接着剤が付着している部分は、平坦面である、
光ファイバモジュール。
【請求項2】
前記スペーサは、前記第1表面の法線方向に沿った径または高さが、前記光導波路の前記端部の前記第1表面からの前記法線方向に沿った突出長さと実質的に同じかもしくは大きい請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項3】
前記光回路形成体及び前記保持体は、特定波長の光を透過するように形成されている請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項4】
前記保持体は、石英あるいはホウケイ酸ガラスにより形成されている請求項
3に記載の光ファイバモジュール。
【請求項5】
前記接着剤は、前記光導波路の前記端部と前記光ファイバの前記一方の端部との間に介在しないように設けられる請求項
1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項6】
前記保持体の前記第2表面とは反対側の面において、前記保持体における前記光ファイバの周囲に形成された空間に前記光ファイバの保持力を補強する補強部を有する請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項7】
前記補強部は、前記保持体における前記反対側の面に形成された凹部に固着する補強材により形成されている請求項
6に記載の光ファイバモジュール。
【請求項8】
前記補強部は、前記第1表面の法線方向に進行するとともに前記光回路形成体及び前記保持体を透過する特定波長の光の進行を阻害しない領域に設けられている請求項
6に記載の光ファイバモジュール。
【請求項9】
前記光導波路の前記端部の先端と前記光ファイバの前記一方の端部の先端との間にギャップを有する請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項10】
前記光導波路の前記端部から出射する光の光軸上に前記光ファイバの前記一方の端部が配置される請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項11】
前記光導波路はシリコン細線光導波路である請求項1に記載の光ファイバモジュール。
【請求項12】
第1表面を有し、光導波路が形成されるとともに前記光導波路の端部が前記第1表面から突出している光回路形成体と、前記第1表面と対向する第2表面を有し、光ファイバを保持するとともに前記光ファイバの一方の端部を前記第2表面側において前記光導波路の前記端部と光学的に接続できるように露出させる保持体と、
球状及び/又は円柱状のスペーサと、を備え
、前記スペーサが前記第1表面と前記第2表面とを接着する接着剤内に含まれている光ファイバモジュールの製造方法であって、
前記第1表面と前記第2表面のうち前記接着剤が付着することになる部分は、平坦面であり、
前記第1表面と前記第2表面とを所定間隔を有して支持するための
前記スペーサと
前記接着剤とを準備し、
前記スペーサを含む前記接着剤を前記第1表面又は前記第2表面に塗布する、又は、前記接着剤を前記第1表面又は前記第2表面に塗布した後に前記スペーサを前記接着剤に含ませることにより、前記スペーサ
を含む前記接着剤を前記第1表面と前記第2表面との間に介在させ、
前記第1表面と前記第2表面とが接近するように前記光回路形成体と前記保持体とを相対的に移動させて前記第1表面と前記第2表面との間に前記スペーサを挟持させ、
前記接着剤を硬化させることにより前記光回路形成体と前記保持体とを互いに固定する、
光ファイバモジュールの製造方法。
【請求項13】
前記第1表面と前記第2表面とが接近するように前記光回路形成体と前記保持体とを相対的に移動させる際、前記保持体及び前記光回路形成体を透過する特定波長の光を前記接着剤に照射して前記スペーサを観察する請求項
12に記載の光ファイバモジュールの製造方法。
【請求項14】
前記第1表面と前記第2表面との間に前記スペーサが挟持された状態で前記保持体を前記第1表面に沿って相対的に移動させて前記光導波路と前記光ファイバとの調芯を行う、請求項
13に記載の光ファイバモジュールの製造方法。
【請求項15】
前記接着剤はUV硬化型接着剤であり、前記接着剤にUV光を照射させることにより前記接着剤を硬化させる請求項
12に記載の光ファイバモジュールの製造方法。
【請求項16】
前記光導波路がシリコン細線光導波路である請求項
12に記載の光ファイバモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバモジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コア部にシリコン材料、クラッド部に石英系材料を用いたシリコン細線光導波路からなる光回路の研究開発が活発に行われている。シリコン細線光導波路は、大きな比屈折率差を有しており、光導波路の曲率半径を小さくしても放射損失が小さいことから、光回路を小型化することが可能になる。
また、上記のような技術は、シリコンCMOS LSIの製造プロセスと共用することが可能であり、公知技術に基づいて、量産による製造コストの低減効果が期待されている。
【0003】
通常、シリコン細線光導波路を主要構成部とする基板と、光ファイバ、光源、受光器など他の光デバイスとの光の入出力は、基板の光回路の形成面に対して平行の方向から、光導波路の断面を経由して行う。
【0004】
ところで、上記とは別の方向、特に光回路の形成面に対して垂直の方向から光ファイバを接続することができると、ウェハ製造段階において、シリコン細線光導波路デバイスの検査が可能となる。また、光源や受光器が光回路の形成面に対して垂直方向から実装できるなどの点で技術的な多くの利点がある。
【0005】
シリコン細線光導波路を主要構成部とする光回路に対して、光回路の形成面と交差する方向に光を結合させる方法として、下記特許文献1には、シリコン細線光導波路の端部及びこれに隣接する部位を光回路基板の表面から離間する方向に湾曲させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなシリコン細線光導波路を有する基板において、基板の一面から突出しているシリコン細線光導波路の端部と保持体に保持されている光ファイバの端部とを光学的に調芯して基板と保持体とを固定する際に、シリコン細線光導波路の端部と保持体の一面とが接触してシリコン細線光導波路の端部が破損するおそれがある。
また、シリコン細線光導波路の端部の破損を避けるために両者の距離を大きくしすぎると、シリコン細線光導波路と光ファイバとの光結合効率が低下するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、光回路が形成された基板の一面から突出する線状の光導波路の端部と保持体により保持された光ファイバの端部とを光学的に接続する光モジュールにおいて、光導波路の端部を破損させることなく、基板の一面と保持体の一面との距離を精度良くかつ簡便に保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、
第1表面を有し、光導波路が形成されるとともに前記光導波路の端部が前記第1表面から突出している光回路形成体と、
前記第1表面と対向する第2表面を有し、光ファイバを保持するとともに前記光ファイバの一方の端部を前記第2表面側において前記光導波路の前記端部と光学的に接続できるように露出させる保持体と、
前記第1表面と前記第2表面とにより挟持される、球状のスペーサ及び/又はその外周面が前記第1表面及び前記第2表面に接触している円柱状のスペーサと、を備え、
前記スペーサは、前記第1表面と前記第2表面とを接着する接着剤内に含まれており、
前記第1表面と前記第2表面のうち前記接着剤が付着している部分は、平坦面である、光ファイバモジュールが提供される。
【0010】
スペーサにより光回路形成体の第1表面と保持体の第2表面とが所定間隔を有した状態で支持されるため、保持体の第2表面が光導波路の端部を破損させることを抑制することができる。
前記スペーサは、前記第1表面の法線方向に沿った径または高さが、前記光導波路の前記端部の前記第1表面からの前記法線方向に沿った突出長さと実質的に同じかもしくは大きいことが好ましい。
【0011】
光回路形成体と保持体とを接近させるとき、光回路形成体の第1表面と保持体の第2表面との間隔がスペーサの径または高さと同等になった時点で光回路形成体の第1表面と保持体の第2表面との間の距離が変化しなくなる。すなわち、光回路形成体の第1表面と保持体の第2表面との間隔は、スペーサにおける第1表面の法線方向に沿った径または高さよりも小さくならないので、光導波路の端部の損傷を抑制することができる。
前記スペーサは、例えば、前記第1表面と前記第2表面とを接着する接着剤内に含まれているようにすることができる。
【0012】
前記光回路形成体及び前記保持体は、特定波長の光を透過するように形成されていることが好ましい。
一例として、前記保持体は、石英あるいはホウケイ酸ガラスにより形成することができる。
光回路形成体及び保持体を特定波長の光が透過することで、スペーサを保持体の第2表面と反対側の面または光回路形成体の第1表面と反対側の面から照射された光により観察することができる。
【0013】
前記接着剤は前記光導波路の前記端部と前記光ファイバの前記一方の端部との間に介在しないように設けることが好ましい。
このようにすると、接着剤が保持体の第2表面における光ファイバの端部を避けた領域に接することになるため、スペーサが光の進行を阻害することなく、保持体の第2表面と光回路形成体の第1表面との間隔をスペーサの径または高さ以上に保つことができる。
【0014】
前記保持体の前記第2表面とは反対側の面において、前記保持体における前記光ファイバの周囲に形成された空間に前記光ファイバの保持力を補強する補強部を有することが好ましい。
前記補強部は、前記反対側の面に形成された凹部に固着する補強材により形成されていると好ましい。
また、前記補強部は、前記第1表面の法線方向に進行するとともに前記光回路形成体及び前記保持体を透過する特定波長の光の進行を阻害しない領域に設けられることが好ましい。この場合、特定波長の光の照射によるスペーサの観察がしやすくなる。
【0015】
前記光導波路の前記端部の先端と前記光ファイバの前記一方の端部の先端との間にギャップを有するようにしてもよい。
前記光導波路の前記端部から出射する光の光軸上に前記光ファイバの前記一方の端部が配置されるようにすることが好ましい。
【0016】
本発明の他の観点によれば、
第1表面を有し、光導波路が形成されるとともに前記光導波路の端部が前記第1表面から突出している光回路形成体と、前記第1表面と対向する第2表面を有し、光ファイバを保持するとともに前記光ファイバの一方の端部を前記第2表面側において前記光導波路の端部と光学的に接続できるように露出させる保持体と、球状及び/又は円柱状のスペーサと、を備え、前記スペーサが前記第1表面と前記第2表面とを接着する接着剤内に含まれている光ファイバモジュールの製造方法であって、
前記第1表面と前記第2表面のうち前記接着剤が付着することになる部分は、平坦面であり、
前記第1表面と前記第2表面とを前記第1表面の法線方向に所定間隔を有した状態で支持するための前記スペーサと前記接着剤とを準備し、
前記スペーサを含む前記接着剤を前記第1表面又は前記第2表面に塗布する、又は、前記接着剤を前記第1表面又は前記第2表面に塗布した後に前記スペーサを前記接着剤に含ませることにより、前記スペーサを含む前記接着剤を前記第1表面と前記第2表面との間に介在させ、
前記第1表面と前記第2の表面とが接近するように前記光回路形成体と前記保持体とを相対的に移動させて前記第1表面と前記第2表面との間に前記スペーサを挟持させ、
前記接着剤を硬化させることにより前記光回路形成体と前記保持体とを互いに固定する、光ファイバモジュールの製造方法が提供される。
【0017】
前記第1表面と前記第2の表面とが接近するように前記光回路形成体と前記保持体とを相対的に移動させる際、前記保持体及び前記光回路形成体を透過する特定波長の光を前記接着剤に照射して前記スペーサを観察することが好ましい。
【0018】
この場合、前記第1表面と前記第2表面との間に前記スペーサが挟持された状態で前記保持体を前記第1表面に沿って相対的に移動させて前記光導波路と前記光ファイバとの調芯を行うようにすることができる。
【0019】
前記接着剤はUV硬化型接着剤であり、前記接着剤にUV光を照射させることにより前記接着剤を硬化させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光回路形成体の第1表面から突出する光導波路の端部と保持体により保持された光ファイバの端部とを光学的に接続する光モジュールにおいて、光導波路の端部を破損させることなく、光回路形成体の第1表面と保持体の第2表面との距離を精度良くかつ簡便に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】本発明の第1の実施の形態による光ファイバモジュールにおいてシリコン細線光導波路が形成されたシリコン基板の一構成例を示す斜視図である。
【
図1b】当該シリコン基板をシリコン細線光導波路の延在方向に沿って切った断面図である。
【
図2a】本実施の形態による光モジュールの一構成例を示す斜視図である。
【
図3a】本実施の形態による基板と光ファイバの保持体との側面図である。
【
図4a】接着材が塗布された保持体を基板に接近させる様子を示す図である。
【
図4b】保持体に塗布された接着剤が基板に接した状態を示す図である。
【
図4c】接着材に含まれた全てのスペーサが保持体及び基板に接した状態を示す図である。
【
図4d】保持体を基板の一面に沿って移動させて調芯する様子を示す図である。
【
図5】光ファイバモジュールの組み立てに用いる光学系を示した図である。
【
図6a】保持体が基板に接近したときに接着剤とスペーサとを観察した様子を示す図である。
【
図6b】保持体が基板に更に接近したときに接着剤とスペーサとを観察した様子を示す図である。
【
図6c】全てのスペーサが保持体及び基板に接したときに接着剤とスペーサとを観察した様子を示す図である。
【
図7】第1変形例によるシリコン細線光導波路の端部と光ファイバの端部との接続構造の他の一例を示す図である。
【
図8a】第2変形例によるシリコン細線光導波路の端部と光ファイバの端部との接続構造の他の一例を示す図である。
【
図8b】第2変形例による、シリコン細線光導波路の端部と光ファイバの端部との間に所定のギャップを有している接続構造の他の一例を示す図である。
【
図9a】本発明の第2の実施の形態による光ファイバモジュールの側面図である。
【
図9b】本発明の第2の実施の形態による光ファイバモジュールの他の一例を示す図である。
【
図9c】本発明の第2の実施の形態による光ファイバモジュールの他の一例を示す図である。
【
図9d】本発明の第2の実施の形態による光ファイバモジュールの他の一例を示す図である。
【
図10a】
図4a~
図4dに示される組み立て方法において、接着剤に分散剤を含めた状態を示す図である。
【
図10b】
図10aに示された接続構造において、保持体に塗布された接着剤が基板に接した状態を示す図である。
【
図10c】当該接続構造において、全てのスペーサが保持体及び基板に接した状態を示す図である。
【
図10d】当該接続構造において、保持体を基板の一面に沿って移動させて調芯する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施の形態においては、シリコン細線光導波路の端部が、基板の一面から法線方向に沿って突出する突出長さと、スペーサの径とが実質的に同じである例について説明しているが、実際には、基板の一面と保持体の一面との間隔は、スペーサの径以上であることが重要であるため、上記間隔は必ずしもスペーサの径と完全に一致している必要はなく、スペーサは上記突出長さと実質的に同じ径または大きい径を有していれば良い。なお、スペーサが球状以外の形状の場合には、スペーサは上記突出長さと実質的に同じ高さ(基板の一面の法線方向に沿った高さ)または上記突出長さよりも大きい高さを有していれば良い。
【0023】
以下に、本発明の実施の形態による光ファイバモジュール及びその製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施形態による光ファイバモジュールは、
図1a及び
図1bに示されるシリコン細線光導波路構造A、及び、
図2a~
図2cに示される光モジュールBを含んでいる。
図1aは、シリコン細線光導波路構造Aの斜視図である。シリコン細線光導波路構造Aは、例えば、図示しない光回路が形成されている基板1と、基板1の一面に沿って形成された複数のシリコン細線光導波路3,3,…とを有している。
図1bは、
図1aの基板1及びシリコン細線光導波路3,3をシリコン細線光導波路3,3,…の延在方向に沿って切った断面図である。なお、基板1は本発明の「光回路形成体」に相当し、基板1の一面1aは本発明の「第1表面」相当する。また、シリコン細線光導波路3,3は、本発明の「光導波路」に相当する。
【0025】
シリコン細線光導波路3の断面形状は矩形であってもよく、例えば、一辺の長さが0.4μmで、この一辺に交差する辺の長さが0.2μmであってもよい。なお、シリコン細線光導波路3は1つであってもよい。
【0026】
シリコン細線光導波路3の端部3a、3bは、基板1の一面1aから上方に離間するように突出している。たとえば、特許文献1のように、基板の一面から端部3a、3bが湾曲するように、そして、基板の一面から離間するように突出している構造をシリコン細線光導波路構造Aとして用いることができる。
ここでは、シリコン細線光導波路3の材料としてシリコンを用いた例を示すが、SiGe、アモルファスシリコンなどの細線を用いても良い。
【0027】
あるいは、発明者らの下記の文献に記載されている構造を利用してもよい。
Y. Atsumi, T. Yoshida, E. Omoda, and Y. Sakakibara, “Design of compact surface optical coupler based on vertically curved silicon waveguide for high-numerical aperture single-mode optical fiber,” Jpn. J. Appl. Phys., 56(9), 090307-1-4 (2017).
【0028】
とりわけ、上記の文献に記載されているような、シリコン細線光導波路の端部が基板の一面に対して法線方向に突出する構造を用いると、シリコン細線光導波路の端部から出射する光の光軸上に光ファイバの一方の端部が配置されるようになり、シリコン細線光導波路と光ファイバとの光学的接続を光損失の少ない良好なものとすることができる。
【0029】
なお、基板1にシリコン細線光導波路3を形成するためには、専用のSOI基板を用いることができる。例えば、厚さ200nm程度のシリコンデバイス層がシリコン基板上の厚さ2μmから3μm程度の厚い酸化膜(BOX層)の上に形成されたものを用いることが好ましい。本実施の形態では、このような構造を基板と称するが、基板の構造はこれに限定されるものではない。
【0030】
なお、シリコン細線光導波路3の径や絶縁膜の厚さは、後述するスペーサの径に比べて極めて小さいため、後述する保持体を基板1上に設ける場合には、基板1のほぼ平坦な一面1a上に保持体が設けられていると見なすことができる。
【0031】
なお、基板1の一面1aの法線方向におけるシリコン細線光導波路3の端部3a、3bの突出長さをLtと称する。また、本明細書における突出長さLtは、基板1の一面1aからの突出長さだけでなく、基板1の一面1a上に絶縁膜等が形成されていれば、その絶縁膜等の表面からの突出長さもLtに含まれるものとする。
【0032】
シリコン細線光導波路3の端部3a,3bは光の入出力部であり、例えば、後述する光ファイバなどにより外部の光部品との光学的な接続を行うことができる。
【0033】
図1a及び
図1bには示していないが、シリコン細線光導波路3の補強や、シリコン細線光導波路3の径と光ファイバとのモードフィールド径との一致を目的として、シリコン細線光導波路3のコア周辺にCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法等を用いて、例えば、石英層を形成した。基板1は、例えば、20mm(縦方向の長さ)×20mm(横方向の長さ)×0.5mm(厚さ)である。或いは、基板1に代えて、板状以外の形状(例えば、立方体形状)を有する基体に光導波路を形成したものを用いることもできる。本実施形態において、基板1の一面1aから突出する端部3a,3bの突出長さLtは、例えば10μmである。これらの寸法も限定されるものではない。
【0034】
図2aは、本実施の形態による光モジュールBを含む光ファイバモジュールの斜視図である。
図2bは、
図2aの側面図であり、
図2cは、
図2aの平面図である。
【0035】
図2a,
図2bに示すように、本実施の形態による光モジュールBでは、
図1aに示すシリコン細線光導波路構造Aにおけるシリコン細線光導波路3の端部3a、3bと、基板1の一面1aと交差する方向に延在する光ファイバ7の端部とが接続されている。
【0036】
ここで、「接続」とは、シリコン細線光導波路3の端部3a、3bと光ファイバ7の端部とが接触する形態に限定されるものではなく、光学的な接続であれば、どのような形態であっても良い。
【0037】
光ファイバ7のクラッド径は、例えばφ125μm、あるいはφ180μm程度であり、光ファイバ7それ自体を基板1上に自立させることは難しい。
【0038】
そこで、
図2aに示すように、光ファイバ7(具体的には、光ファイバ7における特定の区間)を周囲から保持する、光ファイバ7よりも大径の円筒状のキャピラリなどを保持体15として用いることができる。保持体15の形状は特に限定されるものでなく、例えば、断面が多角形の形状をしていても良い。
【0039】
シリコン細線光導波路3の端部3a、3bと光ファイバ7の端部との接続工程について簡単に説明する。
【0040】
まず、保持体15を構成するキャピラリの中心を貫通する孔内に光ファイバ7を通し、光ファイバ7を保持体15に接着材などで固定する。保持体15の一面を固定された光ファイバ7とともに平坦に研磨する。その結果、光ファイバ7の一方の端部(後述される先端7a)が露出される。シリコン細線光導波路3の端部3a,3bと光ファイバ7とを光学的に接続する際に、この保持体15の一面15aを基板1の一面1aに支持させる面として用いることができる。保持体15の一面15aは本発明の「第2表面」相当する。
【0041】
保持体15の材質は特に限定されないが、可視光または近赤外光の少なくとも一方を透過する材料、例えば、石英ガラスあるいはホウケイ酸ガラスを用いると良い。一般的には、ジルコニアなどを用いることもできるが、本実施の形態においては、後述するように光学調芯時に保持体15の一面15aに塗布した接着剤をカメラで観察するために、保持体15の上方に例えば波長1μm程度の光を発する照明を設けて、保持体15及び基板1を透過した光を基板1の下方からカメラで撮像して観察することから、保持体15は、その照明光の波長において透過性の高い材質により構成されることが好ましい。また、基板1と保持体15をUV(紫外光)硬化型の接着剤で固定する場合には、UV光を接着剤に照射することから、保持体15は、UV光の波長においても透過性の高い材質により構成されることが好ましい。
【0042】
図2bに示すように、保持体15を基板1の一面に配置して基板1の一面と固定するために、接着剤11を用いることができる。接着剤11は、保持体15の一面における光ファイバ7の一方の端部の先端7a(
図4a~
図4dを参照)の露出領域を避けて、その周囲に塗布すると良い。
【0043】
図2cに示すように、例えば、複数本のシリコン細線光導波路3の端部3a、3bの各々に光ファイバ7が光学的に接続された、多数の光入出力部を有する構造を製造することができる。
【0044】
図3a及び
図3bは、本実施の形態による基板1と光ファイバ7の保持体15との側面図及び保持体15の底面図である。
図4a~
図4dは、本実施の形態による光ファイバモジュールの組み立て方法を示す図である。
図5は、光ファイバモジュールの組み立てに用いる光学系を示した図である。
図6a~
図6cは、
図4a~
図4dの工程に沿って、接着剤11とスペーサ13とを基板1の下方から観察した様子を示す図である。
【0045】
シリコン細線光導波路3と光ファイバ7との光結合効率を大きくするために、保持体15を基板1に接近させ(
図3aの矢印La1参照)、その後に、保持体15を基板1の一面1aに沿って移動させて、シリコン細線光導波路3と光ファイバ7との面内方向における位置を近づける調芯処理をする必要がある。その際、基板1の一面1aには、シリコン細線光導波路3の端部3a、3bが突出しているため、調芯時に保持体15が端部3a、3bに接触して端部3a、3bを破損させてしまう可能性がある。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、以下のように工夫を行った。
シリコン細線光導波路3の端部3a、3bの破損を避けるために、液晶パネルなどにも用いられるスペーサ13と接着剤11(
図4a~
図4dを参照)を準備する。次いで、スペーサ13を含む接着剤11を基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの間に介在させる。例えば、保持体15の一面15aにスペーサ13を含む接着剤11を塗布する。
【0047】
スペーサ13の材質は、一例として、二酸化ケイ素が用いられる。この場合、挟圧されても変形しにくいという利点がある。
【0048】
例えば、直径Rがφ10μmの球状のスペーサ13とUV硬化型の接着剤11とを1:9の重量比で混ぜて攪拌し、スペーサ13を接着剤11中にほぼ均一に分布させる。なお、スペーサ13の直径Rは、シリコン細線光導波路3の突出長さLtと等しい。
【0049】
そして、
図4aに示すように、保持体15の一面15aにスペーサ13入りの接着剤11を一定量塗布する。この際、保持体15の一面15aの中央部には光ファイバ7の端部の先端7aが露出しているため、接着剤11は光ファイバ7の端部の先端7aが露出する領域を避けて、周囲の領域AR(
図3b参照)に環状に塗布する。例えば、光ファイバ7と接着剤11の塗布領域ARとの間にスペースLsを設ける。スペーサ13は、接着剤11により領域ARに保持されるため、光ファイバ7を通る光の進行を妨げることはない。
【0050】
さらに、
図5に示すように、保持体15の一面15aに塗布した接着剤11を基板1の下方からカメラ41で観察する。
カメラ41による観察を容易にするために、保持体15の上方には、光hν1を照射することができる照明21を設ける。さらに、接着剤の硬化手段が設けられる。
【0051】
例えば、接着剤11としてUV硬化型のものを用い、接着剤11にUV光を照射できる位置にUV光照射器31を設ける。なお、カメラ41には、カメラ41で撮像した画像を見やすいように画像処理する画像処理部43を設けても良い。画像処理部43は、カメラ41によって撮像された画像を表示装置(図示せず)に拡大して表示する。カメラ41は、基板1の一面1aの近傍にある被写体にピントが合うように調整されている。
【0052】
次に、保持体15を
図4aに示すように基板1の上方の位置(基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの距離をt
1とすると、t
1が接着剤11の厚みt
2よりも十分大きい位置)から矢印La2で示すように基板1の一面1aに接近させていく。なお、保持体15を移動させる代わりに基板1を移動させてもよく、保持体15と基板1の両方を移動させてもよい。
【0053】
スペーサ13は、接着剤11の中で無秩序に分布している。すなわち、接着剤11が保持体15の一面15aに塗布された時点において、各スペーサ13と保持体15の一面15aとの距離は、互いに異なっている。なお、あらかじめ接着剤11内にスペーサ13を含ませる代わりに、基板1の一面1aまたは保持体15の一面15aに接着剤11を塗布した後にスペーサ13を接着剤11に含ませるようにしても良い。
図6aは、保持体15の一面15aに塗布された接着剤11を基板1の下方からカメラ41で撮像した画像であるが、保持体15に塗布された接着剤11のうち、一部の領域(
図3bにおける領域Ap)を拡大して示している。保持体15が基板1に接近するにつれて、複数のスペーサ13のうち、基板1側に最も近いスペーサ13Aにピントが合ってくるため、スペーサ13Aが次第に明瞭に観察されるようになる。
【0054】
図4bに示すように、保持体15の一面15aを基板1の一面1aにさらに近づけると、接着剤11が基板1の一面1aに接触し(基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの距離t
1=接着剤の最初の厚さt
2となり)、接着剤11が挟圧されて徐々に一面1aの方向に広がり始める。
【0055】
すると、
図6bに示すように、カメラ41による観察画像によれば、複数のスペーサ13のうち、スペーサ13Aの次に基板1側に近いスペーサ13Bのピントが合い始めてスペーサ13Bも明瞭に観察されるようになる。
【0056】
その後、
図4cに示すように、各スペーサ13が基板1の一面1aと保持体15の一面15aとに当接し(基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの距離t
1=スペーサ13の直径R<接着剤の最初の厚さt
2となり)、基板1の一面1aと保持体15の一面15aとがそれ以上は近づかないようになる。
【0057】
すなわち、接着剤11の広がりは止まり、全てのスペーサ13が基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの間に挟持された状態で保持体15は静止する。すなわち、基板1の一面1aと保持体15の一面15aとが基板1の一面1aの法線方向に所定間隔Rを有した状態でスペーサ13により支持される。スペーサ13の直径Rは、基板1の一面1aからのシリコン細線光導波路3の端部3a,3bの突出長さLtと等しいため、端部3a,3bを破損させずにシリコン細線光導波路3の先端3cを光ファイバ7の先端7aに接触させることが出来る。従って、シリコン細線光導波路3と光ファイバ7との光結合効率の低下を抑制することができる。
【0058】
全てのスペーサ13A,13B,13Cが基板1と保持体15の間に挟持された状態になれば、
図6cに示されるカメラ41の観察画像のように、全てのスペーサ13A,13B,13Cが明瞭に見えるようになり、明瞭に見えるスペーサの数がそれ以上増えなくなるので、基板1の一面1aと保持体15の一面15aとがそれ以上は近づかないようになるタイミングを知ることができる。
【0059】
したがって、スペーサ13が基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの間に挟持された後、すぐに保持体15の移動を停止させることが可能になるので、保持体15が端部3a,3bを破損させるのをより確実に抑制することができる。
【0060】
このように、
図4a~
図4dの工程において、接着剤11を塗布した保持体15が基板1に接近し、基板1から一定距離で静止する様子は、
図5のように保持体15の上方から照射した光を用いて基板1の下に配置したカメラ41で観察することが出来る。
【0061】
また、この状態では接着剤11は硬化していないため、保持体15を基板1の一面1aに沿って移動させて調芯を行うことが出来る。本実施の形態において、調芯とは、シリコン細線光導波路3と光ファイバ7とが光学的に接続されるように、シリコン細線光導波路3の先端3cと光ファイバ7の先端7aとを位置決めすることである。なお、調芯を行う際には、基板1を移動させても良いし、基板1と保持体15の両方を移動させてもよい。
【0062】
そして、スペーサ13は球状であるため、保持体15が基板1の一面1aと平行に移動する際にベアリングのように機能し、保持体15の移動が滑らかになる。なお、スペーサ13に代えて、円柱状のスペーサを用いても、同様の効果を得ることができる。すなわち、円柱状のスペーサの外周面が基板1の一面1aと保持体15の一面15aに接するように円柱状のスペーサを配置する。
【0063】
そして、カメラ41により観察することで、
図4dに示すように、シリコン細線光導波路3の先端3cと光ファイバ7の先端7aとの調芯(光学的な接続を行うことができるように矢印La3の方向に位置を合わせる)を行うことができる。
【0064】
調芯が完了したタイミングで、例えば、UV光照射器31からのUV光により接着剤11を硬化させることで、基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの距離を所定の距離、例えば、スペーサ13の直径Rと同じ距離を保ったまま、かつ、調芯が完了した状態で、基板1と保持体15とを速やかに固定することができる。
【0065】
基板1をシリコンにより形成する場合には、照明21からの照明光を透過させるために、例えば波長1μm程度のLED照明を用いることができる。基板1の下面側の表面反射が大きい場合、基板1の上方にある保持体15に塗布された接着剤を観察することは難しいため、
図5の構成がより好ましい。照明21による基板1及び保持体15を透過する光の波長は、便宜上、「特定波長」とも称される。特定波長は、保持体15及び基板1を透過する光の波長の範囲に含まれていれば、1μmとは異なっていてもよい。加えて、特定波長は、単一の波長ではなく、波長の範囲によって特定されてもよい。例えば、可視光及び近赤外光が保持体15及び基板1を透過するのであれば、特定波長は、可視光及び近赤外光の波長の範囲に含まれていればよい。
【0066】
以上に説明するように、本実施の形態によれば、シリコン細線光導波路が形成された基板と、光ファイバを保持する保持体とを固定して光ファイバモジュールを製造する際に、基板の一面から突出しているシリコン細線光導波路の端部を破損させることなく、基板の一面と保持体の一面との距離を精度良く保持することができる。また、基板の一面と保持体の一面との距離を所望の値に設定することができる。さらに、シリコン細線光導波路の端部と光ファイバの端部との基板の一面方向の位置合わせ(調芯)を精度良く行うことができる。
【0067】
以下に、本実施の形態による光ファイバモジュールの変形例について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0068】
(第1変形例)
まず、本実施の形態の第1変形例について説明する。
図7は、第1変形例によるシリコン細線光導波路3の端部3a,3bの先端3cと光ファイバ7の先端7aとの接続構造の他の一例を示す図である。
図7に示す構造では、シリコン細線光導波路3の先端3cと光ファイバ7の先端7aとの間に所定のギャップGが形成されている例を示す。所定のギャップGが存在しても、シリコン細線光導波路3と光ファイバ7とは、光学的には接続されている。
【0069】
所定のギャップGを設けるには、第1の実施の形態の製造方法において、例えば、スペーサ13の直径Rをシリコン細線光導波路3の端部3a,3bの基板1の一面からの突出長さLtよりもギャップG分だけ大きくすれば良い。このようにすれば、シリコン細線光導波路3の先端3cと光ファイバ7の先端7aとが直接接続されていないため、製造工程における僅かなズレや振動などによるシリコン細線光導波路3の先端3cと光ファイバの先端7aとの接続部分の損傷を抑制することができる。
【0070】
(第2変形例)
次に、本実施の形態の第2変形例について説明する。
図8a及び
図8bは、第2変形例によるシリコン細線光導波路3の端部3a,3bと光ファイバ7の端部との接続構造の他の一例を示す図である。
図8aに示す構造では、シリコン細線光導波路3の端部3a、3bが湾曲しておらず、屈曲して直線状に延びている。端部3a、3bは、保持体15の一面15aの法線に対して成す角度が所定の角度θaで光ファイバ7に接続されている。
図8bに示す構造では、第1の変形例と同様にシリコン細線光導波路3の先端3cと光ファイバ7の先端7aとの間に所定のギャップGを有している例を示している。但し、シリコン細線光導波路3の端部3a、3bの形状をこれに限定するものではない。例えば、発明者らの研究によれば、端部3a、3bの根元は湾曲して立ち上がり部分は真っ直ぐなものが良い特性を示すことがわかっている。
【0071】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図9a~
図9dは、本発明の第2の実施の形態による光ファイバモジュールの側面図である。すなわち、
図9a~
図9dは、光ファイバ7が接着固定された円筒状の保持体15の側面を示す図である。保持体15は、例えば、直径φ1.8mm、長さ5mmである。
【0072】
光ファイバ7は保持体15の中心軸に沿って設けられた細い穴15bに挿入されて、先端を研磨して使用される。例えば、光ファイバ7を保持体15の穴15bに挿入しやすくするために、穴15bの一端(基板1とは反対側)には、テーパー形状の凹部15cが形成され、この凹部15c内に補強材71が埋設されて固着されている。補強材71は接着剤で形成しても良い。補強材71により構成される補強部は、保持体15による光ファイバ7の保持力を補強する。この補強部は、保持体15のうち光ファイバ7の周囲の領域(即ち、光ファイバ7における保持体15によって保持される区間とは異なる区間の周囲に形成された空間)にのみに形成され、その径方向の外側には形成されていない。従って、保持体15のうち、補強材71を除く領域には、接着剤11とスペーサ13とを観察するための光が透過する領域が形成されている。すなわち、補強部は、基板1の一面1aの法線方向に進行する照明21からの光(矢印L11,L12)の進行を阻害しない領域に設けられる。
【0073】
光ファイバ7のうち保持体15から突出した部分において、光ファイバ7の曲げによる断線を防ぐために、例えば接着剤から成る曲げ抑制部が設けられることがある。
【0074】
しかしながら、
図9aに示すように、曲げ抑制部61を保持体15の上面のほぼ全体を覆うように半球状に形成すると、
図5に示した光学系において保持体15の下面の接着剤11を観察する場合に問題が生じる。すなわち、
図9aに示すように、保持体15の上方に設置した照明21(
図5参照)からの光(矢印L11,L12)は、半球状の曲げ抑制部61の界面で屈折(屈曲)し、矢印L13,L14に示すように、保持体15の下面の中心部に集光される。その結果、スペーサ13を含む接着剤11に光が照射されない。従って、基板1の裏側に配置されたカメラ41(
図5参照)でスペーサ13を含む接着剤11を観察することが難しくなる。
【0075】
そこで、
図9b~
図9dに示すように、保持体15の上面における平坦な面が、スペーサ13を含む接着剤11の塗布位置と対向するようにしている。すなわち、
図9b,
図9dに示すように、保持体15の上面と補強材71の上面とを平坦な面とする。あるいは、
図9cに示すように、補強材71の上面から突出する曲げ抑制部61aを小径として、照明21から接着剤11へ向かう光(矢印L11,L12)が屈曲しないようにする。
【0076】
このようにすれば、保持体15を通って接着剤11へ向かう光L15~L18が保持体15の下面の中心部に向かうことがなく、接着剤11に照射されるため、カメラで保持体15の一面15a上のスペーサ13を含む接着剤11を観察することが阻害されない。
【0077】
図9dは、凹部を、テーパー状の凹部15c(
図9cの凹部15cと上下方向の長さが同じ)と、その上端に接続された直線状の凹部15dとから成る構成としている。このようにすると、
図9bよりも凹部の長さが長くなり、凹部15cに充填される補強材71aと、凹部15dに充填される補強材71bとにより光ファイバ7の保持力が補強され、光ファイバ7の保持力を補強する部分の長さも長くなるため、光ファイバ7の保持力が向上する。また、上部の凹部15dは直線状であるため、照明21(
図5参照)から接着剤11に照射される光L19,L20の進行を阻害することがない。
【0078】
なお、
図4aから
図4dまでに対応する
図10aから
図10dまでに示すように、接着剤11内のスペーサ13と同じ材質で、スペーサ13と直径の異なる複数の種類の分散剤81を混ぜてもよい。スペーサ13は基板1の一面1aと保持体15の一面15aとの距離を保ち、分散剤81は接着剤11の粘度などの調整に用いることが可能である。また、スペーサ13は球状以外の形状(例えば円柱状)であってもよい。
【0079】
上記の実施の形態において、図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、本発明は、シリコン細線光導波路以外の線状の光導波路を有する光ファイバモジュールにも適用可能である。
また、上記実施形態では、光回路形成体として基板を例に挙げて説明しているが、光回路形成体は基板以外のものでもよい。
また、上記実施形態では、保持体に設けた孔に光ファイバを収容しているが、これに代えて、保持体に設けた溝に光ファイバを収容するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、基板と保持体とを接着剤で固定する場合について説明したが、接着剤以外の手段で基板と保持体とを固定する場合においても、本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、光導波路の両方の端部が基板の一面から突出しているが、一方の端部のみが基板の一面から突出していてもよい。
その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、光通信に用いられる光ファイバモジュールに利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
A シリコン細線光導波路構造
B 光モジュール
G ギャップ
1 基板(光回路形成体)
1a 基板の一面(第1表面)
3 シリコン細線光導波路(光導波路)
3a、3b シリコン細線光導波路の端部
7 光ファイバ
11 接着剤
13 スペーサ
15 保持体
15a 保持体の一面(第2表面)
15c、15d 凹部
21 照明
41 カメラ
71、71a、71b 補強材