(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及び相溶化材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20220317BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220317BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20220317BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220317BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220317BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220317BHJP
C08L 81/04 20060101ALI20220317BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20220317BHJP
C08L 33/20 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C08L23/02
C08L101/00
C08L23/14
C08L23/10
C08L67/00
C08L77/00
C08L81/04
C08L79/08 Z
C08L33/20
(21)【出願番号】P 2018020254
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2020-11-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「極性基含有ポリプロピレン:触媒開発と樹脂設計」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】303061270
【氏名又は名称】日本ポリケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】野崎 京子
(72)【発明者】
【氏名】田谷野 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】横溝 勝行
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145947(JP,A)
【文献】特開平06-340780(JP,A)
【文献】特開平06-271718(JP,A)
【文献】特開2006-002072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(A)と、樹脂(B)と、下記に示す相溶化材(C)と、を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが
24.0~35.0(J
0.5/cm
1.5)であり、
前記樹脂組成物は、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記樹脂(B)とを含む組成物(D)を99.5~90.0質量%含み、且つ、前記相溶化材(C)を0.5~10.0質量%含み、
前記組成物(D)中の前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記樹脂(B)の質量基準(質量%)での比率が(A):(B)=5:95~95:5の範囲であることを特徴とする樹脂組成物。
相溶化材(C):水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10.0mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリプロピレン換算の重量平均分子量が60,000以上1,000,000以下であるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体。
【請求項2】
前記水酸基含有コモノマーが、10ウンデセン-1-オールであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(B)がポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂
、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂
、アクリロニトリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂(A)と、樹脂(B)とを相溶化するための相溶化材であって、
前記樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが
24.0~35.0(J
0.5/cm
1.5)であり、
前記相溶化材は、水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリプロピレン換算の重量平均分子量が60,000以上1,000,000以下であるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体であることを特徴とする相溶化材。
【請求項6】
前記水酸基含有コモノマーが、10ウンデセン-1-オールであることを特徴とする請求項5に記載の相溶化材。
【請求項7】
前記樹脂(B)がポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂
、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂
、アクリロニトリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項5又は6に記載の相溶化材。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂である、請求項5~7のいずれか一項に記載の相溶化材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の相溶化材成分を使用することで得られる、曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度のバランスに優れた、ポリオレフィン系樹脂と、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)である樹脂との組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、軽量でかつ剛性が比較的高く、耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性にも優れた性質を持つ汎用樹脂であり、洗剤やシャンプーなどの各種生活用品向け容器、食品等の包装フィルム、シート、さらには工業用部品たとえば、自動車のバンパーやフェンダー、インパネ材など、極めて広範な用途で広く用いられている。ポリプロピレン系樹脂は生産時のコストが低く、経済性にも優れることも大きな特徴である。
しかし一方で、ポリプロピレン系樹脂の剛性は、2000MPa程度であって、用途によっては十分なものとは言えない。また、耐熱性は一般的に200℃未満であることから、極めて高温な環境下等での使用は制限される。
【0003】
一方で、広くエンジニアリングプラスチック、あるいはスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる樹脂を含む、ポリプロピレン系樹脂よりも耐熱性や引張強度、弾性率等の力学特性値に優れた樹脂も多く知られている(非特許文献1)。
これらは確かにポリプロピレン系樹脂よりも耐熱性等の物性値において優れているが、反面たとえばポリアミド系樹脂であれば吸湿性があって物性が安定しない等、ポリカーボネート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂であれば耐衝撃性が低い等、ポリエステル系樹脂であれば成形加工性に難点がある等といった、それぞれの樹脂に改善すべき点が残されている(非特許文献2)。また、一般にこれらの樹脂は、ポリプロピレン系樹脂に比べてコストが高く、経済性に劣っている。
【0004】
樹脂それぞれが持つ優位な点を生かし、不利な点を補う方法の一つとして、ポリマーブレンドはよくおこなわれる方法であり、ポリプロピレン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂の側から見れば、耐熱性や剛性を向上させるべく、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などをブレンドすることが行われる。
他方、エンジニアリングプラスチック、あるいはスーパーエンジニアリングプラスチック側から見れば、耐衝撃性の向上、軽量化、経済性の追求の観点から、ポリプロピレン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂をブレンドすることが広くおこなわれている(非特許文献2)。
しかしながら、モノマーが非極性であるポリオレフィン系樹脂と、モノマー中にエステル基、アミド基、カーボネート基、エーテル基、スルフィド基等の極性基を有する樹脂との間には強い相互作用が働かず、それらのポリマーブレンドを製造する際には、物性の向上を図るために、一般に相溶化材を使用するか、使用するポリオレフィンに変性等の手法によって極性基を導入することが行われてきた。
【0005】
例えば特許文献1では、脂肪族ポリエステル樹脂の耐熱性、機械物性を改良することを目的として、脂肪族ポリエステル構造を主成分とするポリエステル樹脂と、ポリオレフィン系樹脂及びエステル形成性官能基を有するポリオレフィン系樹脂からなり、前記エステル形成性官能基を有するモノマーユニットの割合が、エステル形成性官能基を有するポリオレフィン系樹脂の総量に対して0.01mol%以上20mol%以下であることを特徴とする樹脂組成物が開示されている。
本技術を詳細に検討すると、エステル形成性官能基を有するポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン重合体をマレイン酸と有機過酸化物によって処理することにより得られる、マレイン酸変性ポリプロピレンが使用されている。
【0006】
特許文献2では、ポリエステル樹脂60~95重量%と、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基およびエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する官能基含有オレフィン共重合体とエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとを共重合して得られるエチレン/α-オレフィン共重合体からなるオレフィン系樹脂5~40重量%とからなる樹脂組成物100重量部に対して、ポリフェニレンスルフィド樹脂0.5~30重量部およびポリエーテルイミド樹脂0.5~30重量部を含有した、機械的性質、特に-40℃もの低温雰囲気下で優れた柔軟性および耐衝撃性を有し、かつ耐加水分解性、耐薬品性にも優れたポリエステル樹脂組成物が開示されている。
本技術においては、官能基含有オレフィン共重合体としては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体や、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等が用いられている。
【0007】
特許文献3では、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂および相溶化材を配合してなる樹脂組成物であって、相溶化材としてエチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体または、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するポリオレフィン系樹脂等を用いた、成形性、耐衝撃性および耐熱性に優れた樹脂組成物が開示されている。
【0008】
特許文献4では、炭素数4~18の脂肪族ジアミンとテレフタル酸から形成される構造単位を含有するポリアミド(A)、不飽和カルボン酸系化合物で変性された変性ポリオレフィン(B)およびエポキシ基を有する重合体(C)からなるポリアミド樹脂組成物であって、組成物に対して(A)成分が55~85重量%、および(B)成分と(C)成分との和が45~15重量%、ならびに(B)成分および(C)成分の総和に対して(B)成分が20~80重量%であるポリアミド樹脂組成物が、衝撃強度、耐熱性、耐道路凍結防止剤、成形品の外観、ヒンジ部の屈曲耐性にすぐれた成形品を与える樹脂組成物であると開示されている。
本技術においては、変性ポリオレフィンとしては無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン-エチレン共重合体が用いられており、また、エポキシ基を有する重合体としては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体が用いられている。
【0009】
これらのように、従来非極性であるポリオレフィン樹脂に共重合や変性等の手法で少量の極性コモノマーを導入して官能基化されたものを用いて異樹脂間の親和性を向上させる技術が多く開示されている。
【0010】
一方、特許文献5、6には、相溶化材の観点から、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂が内包する、金属をはじめ種々の極性物質との親和性に乏しく、極性物質との接着または極性樹脂とのブレンドが困難であるという課題を解決するために、ポリプロピレンに極性基である水酸基を導入する技術が開発され、プロピレンと、水酸基含有オレフィンからなるプロピレン系重合体であって、(i)該重合体中の水酸基含有オレフィン量が10mol%以下であり、(ii)該重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって得られた重量平均分子量(Mw)が5000以上であり、(iii)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比の値(Mw/Mn)が、1.0~3.5の範囲にあり、(iv)該重合体のDSCで測定した融点([Tm];℃)と核磁気共鳴(NMR)で測定した水酸基含有オレフィン量([-OH];mol%)とが、特定の関係式を満たすプロピレン系重合体が開示されている。
【0011】
しかしながら、これらの特許文献には、水酸基を有するポリプロピレン系重合体の製造のための触媒成分や重合方法については詳細が述べられているものの、その特性や用途については、塗装性材料と記載があるのみで他に何らの示唆もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2007-326961号公報
【文献】特開2006-89700号公報
【文献】特開2008-38142号公報
【文献】特開平09-124934号公報
【文献】特開2006-2072号公報
【文献】特開2009-84578号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】「新高分子化学序論」東村敏延ら著、化学同人、1995年
【文献】「ポリマーアロイとポリマーブレンド」L.A.Utracki著、東京化学同人、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように従来技術を俯瞰してみると、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂等の極性基を含有する樹脂とのブレンドを製造するにあたって、より優れた物性を得るための相溶化材としての共重合体の開発は現在でも精力的に行われている状況であり、未だ改良の余地は残されている。
【0015】
本願は、かかる従来技術の状況に鑑み、ポリオレフィン系樹脂と、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J/cm3)0.5である樹脂との組成物に対し、特定の相溶化材成分を使用することで、曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度のバランスに優れた樹脂組成物、及び、当該相溶化材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本研究者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定のプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体を相溶化材として用いた場合に、ポリオレフィン系樹脂と、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)である樹脂との組成物が、曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度のバランスが優れるものとなることを見出した。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、樹脂(B)と、下記に示す相溶化材(C)と、を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)であり、
前記樹脂組成物は、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記樹脂(B)とを含む組成物(D)を99.5~90.0質量%含み、且つ、前記相溶化材(C)を0.5~10.0質量%含み、
前記組成物(D)中の前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記樹脂(B)の質量基準(質量%)での比率が(A):(B)=5:95~95:5の範囲であることを特徴とする。
相溶化材(C):水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10.0mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリプロピレン換算の重量平均分子量が60,000以上1,000,000以下であるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体。
【0018】
本発明の樹脂組成物においては、前記水酸基含有コモノマーが、10ウンデセン-1-オールであってもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物においては、前記樹脂(B)がポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であってもよい。
【0020】
本発明の樹脂組成物においては、前記ポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0021】
本発明の相溶化材は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、樹脂(B)とを相溶化するための相溶化材であって、
前記樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)であり、
前記相溶化材は、水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(ポリプロピレン換算)が60,000以上1,000,000以下であるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体であることを特徴とする。
【0022】
本発明の相溶化材においては、前記水酸基含有コモノマーが、10ウンデセン-1-オールであってもよい。
【0023】
本発明の相溶化材においては、前記樹脂(B)がポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であってもよい。
【0024】
本発明の相溶化材においては、前記ポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の樹脂組成物は、曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度のバランスに優れたものであり、各種生活用品向け容器、食品等の包装フィルム、シート、さらには工業用部品等に好適に用いることができる。
本発明の相溶化材は、ポリオレフィン系樹脂と特定の溶解度パラメータの範囲を満たす重合体である樹脂の相溶化材として用いた場合に、得られる樹脂組成物を曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度のバランスに優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1~4、比較例1~8の曲げ弾性率に対する、曲げ強さの関係を示す図である。
【
図2】実施例1~4、比較例1~8の曲げ弾性率に対する、シャルピー衝撃強度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、樹脂(B)と、下記に示す相溶化材(C)と、を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)であり、
前記樹脂組成物は、前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記樹脂(B)とを含む組成物(D)を99.5~90.0質量%含み、且つ、前記相溶化材(C)を0.5~10.0質量%含み、
前記組成物(D)中の前記ポリオレフィン系樹脂(A)と前記樹脂(B)の質量基準(質量%)での比率が(A):(B)=5:95~95:5の範囲であることを特徴とする。
相溶化材(C):水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10.0mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリプロピレン換算の重量平均分子量が60,000以上1,000,000以下であるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体。
【0028】
本研究者らは、10ウンデセン-1-オール等の水酸基含有コモノマーを含むプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体が、ポリオレフィン系樹脂とFedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)である重合体との相溶化材として機能することを見出した。
【0029】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0030】
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
本発明において、ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリプロピレン系樹脂であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、ランダムポリプロピレン、及び、ポリプロピレンとプロピレン-エチレンランダム共重合体を逐次重合することで得られるプロピレン-エチレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン樹脂であり、プロピレン単位の含有量は50mol%以上であることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂は、各々単独で用いても良いし、複数のものを混合して用いることもできる。
【0031】
ここで、ランダムポリプロピレンとは、エチレンやその他のα-オレフィンを数質量%の範囲(この際、ランダムポリプロピレンのモノマーの総量を100質量%とする)で含むプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体である。
【0032】
α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等、通常炭素数が10程度までの直鎖状あるいは分岐状のα-オレフィンが挙げられるが、通常エチレン、1-ブテンが好ましく用いられる。
【0033】
また、プロピレン-エチレンブロック共重合体とは、第1工程で結晶性ポリプロピレンを製造し、第2工程でプロピレン-エチレン共重合体を製造する逐次重合法によって製造された、ポリプロピレンとプロピレン-エチレン共重合体のリアクターブレンドからなる組成物のことを言う。
第1工程で製造される結晶性ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであっても、ランダムポリプロピレンであってもよい。
第2工程では、通常プロピレン-エチレンランダム共重合体を製造する。
プロピレン-エチレンブロック共重合体の好適な第1工程及び第2工程で製造される樹脂の質量比率としては、第1工程/第2工程=95/5~30/70の範囲である。この場合、2つの工程を経て製造される樹脂全体の質量を100とする。
また、第2工程で製造されるプロピレン-エチレンランダム共重合体中のエチレン含量は、通常5~85質量%が好適に用いられるが、低温耐衝撃性が求められる用途においては、10~70質量%、特に好ましくは20~50質量%の範囲である。この場合、第2工程で製造される共重合体のモノマーの総量を100質量%とする。なお、この際、少量(第2工程で製造される共重合体のモノマーの総量を100質量%として、数質量%の範囲)の他のα-オレフィンを同時に共重合するものであってもよい。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂(A)の好適なメルトフローレート(MFR)の範囲としては、0.01~500g/10分である。より好適な範囲は0.1~300g/10分、さらに好適な範囲は1~100g/10分である。MFRがこの範囲を下回るものは成形加工性に劣るものとなり、上回るものは強度が低下して好ましくない。
なお、ポリオレフィン系樹脂(A)のMFRはJIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定したものとする。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂(A)の好適な融点は140~170℃の範囲である。特に耐熱性が求められる分野ではより高い融点が望まれ、150~170℃の範囲がより好ましい。ここで、融点は、ポリオレフィンの結晶の融解温度のことであり、示差操作熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度とする。
【0036】
<樹脂(B)>
本発明において、樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)である重合体である。
樹脂(B)は、上記条件を満たせば、特定の重合体単独でもよいし、複数の種類の重合体の混合物であってもよい。
また、樹脂(B)は、重合体の溶解度パラメータの平均値が上記の範囲である限り、異なる溶解度パラメータを与える複数のモノマーの共重合体であってもよい。
【0037】
溶解度パラメータとは、例えば“Properties of Polymers, Third completely revised edition”, D.W.Van Krevelen,Elsevier Science Publishing Company, Amsterdam, 1990年のChapter7に記載があるように、樹脂の相溶性の判定に用いることが出来るパラメータである。
溶解度パラメータの算出法は種々が提案されているが、例えばFedors(Polym.Eng.Sci.1974年、14巻,p147)によって提案された手法が挙げられ、溶解度パラメータδは、下記式(a)を用いて求めることが出来る。
δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2 ・・・(a)
ここで、δは溶解度パラメータ(J0.5/cm1.5)、Ecohは凝集エネルギー密度(J/mol)、Vはモル分子容(cm3/mol)を表し、Σは原子団ごとに与えられているこれらの数値を、モノマーを構成する原子団すべてについての和を取る意味である。
原子団ごとのEcohやVの数値は、上記“Properties of Polymers, Third completely revised edition”のTable7.3等に挙げられている。
【0038】
δが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)の値をとる樹脂(B)としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂等が挙げられる。
さらに具体的には、ポリエチレンテレフタレート(δ=25.4)、ポリブチレンテレフタレート(δ=24.0)、ナイロン6,6(δ=25.4)、ナイロン6(δ=25.4)、ナイロン12(δ=21.7)、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル(δ=22.9)、ポリ2,2プロパンビス(4-フェニル)カーボネート(δ=23.0)、ポリオキシメチレン(δ=20.4)、ポリフェニレンスルフィド(δ=26.8)、ポリイミド(商品名カプトンH)(δ=34.6)、ポリメチルメタクリレート(δ=20.3)、ポリアクリロニトリル(δ=29.4)、(単位はいずれも(J0.5/cm1.5))等が挙げられる。
【0039】
溶解度パラメータδが、樹脂の相溶性を表す指標として用いられることは公知であり、この数値が近いもの同士は相溶性が高いものとされる。
ここで、本発明の樹脂組成物の成分であるポリオレフィン系樹脂(A)としてホモポリプロピレンを挙げ、上記の文献記載の情報に従って計算を行うと、δ=16.4(J0.5/cm1.5)という数値が算出される。
一方、ポリエチレンではδ=17.5となる。
そのため、プロピレン‐エチレン共重合体は、コモノマー組成によって16.4~17.5の間の値をとりうる。
したがって、ポリオレフィン系樹脂(A)がδ=16.4~17.5の値であり、樹脂(B)がδ=18.0~35.0ということは、樹脂(B)はポリオレフィン系樹脂(A)との相溶性に乏しいことを意味している。
樹脂(B)のδの好ましい範囲は、19.0~34.0(J0.5/cm1.5)であり、さらに好ましい範囲は20.0~33.0(J0.5/cm1.5)である。
【0040】
<相溶化材(C)>
本発明に用いられる相溶化材(C)は、コモノマーとして、水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10.0mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリプロピレン換算の重量平均分子量が60,000以上1,000,000以下であることを特徴とする、プロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体である。
【0041】
相溶化材(C)の脂肪族α-オレフィンモノマーの炭素数は、炭素数5以上20以下であればよく、好ましい範囲としては、6~18、さらに好ましくは7~16である。脂肪族α-オレフィンモノマーの炭素数が5を下回るものでは、力学物性の改良効果が顕著ではない。また、炭素数が20を上回るものでは、実質的に長鎖分岐となり、組成物の流動特性や力学物性を損なう恐れがある。
【0042】
相溶化材(C)の脂肪族α-オレフィンモノマーの炭素数が5より小さい場合、水酸基と当該水酸基が結合するプロピレン主鎖との相互作用が強くなることで、水酸基が拘束を受け、水酸基の運動性が低下し、水酸基と樹脂(B)との最適な配置がとりにくくなり、結果として樹脂(B)との強い相互作用が生じにくくなると考えられる。
一方、相溶化材(C)の脂肪族α-オレフィンモノマーの炭素数が5以上であれば、当該炭素数が5より小さい場合と比較して、水酸基の拘束が緩和し、水酸基の運動性が向上し、樹脂(B)との強い相互作用が生じやすくなると考えられる。
すなわち、水酸基をポリプロピレン主鎖から独立させ、水酸基の運動性を高めることが、樹脂(B)との相互作用を最大限に高める有効な機構と推測する。
水酸基をポリプロピレン主鎖から独立させ、水酸基の運動性を高めるには、水酸基が直接結合するαオレフィンの末端近傍の炭素原子の運動性を高める必要がある。
この末端近傍の炭素原子がポリプロピレン主鎖から受ける直接的な拘束力としては、原子間結合伸縮(2原子間相互作用)、結合変角(3原子間相互作用)、結合2面角(4原子間相互作用)が公知のものとして知られている(例えば、J.Phys.Chem.Vol.94,p8897,1990参照)。
したがって、αオレフィンの末端近傍の炭素原子がポリプロピレン主鎖からの上記直接的な拘束力から解放されるためには、最低でも上記結合2面角の相互作用が及ばないようにすることが好ましく、すなわち炭素原子数で5個以上のαオレフィンを用いることが好ましいものと推測する。
【0043】
相溶化材(C)のコモノマー含量は、1.5mol%以上10.0mol%以下であればよく、下限値は1.8mol%以上であってもよく、2.0mol%以上であってもよく、2.7mol%以上であってもよく、3.0mol%超であってもよく、4.0mol%以上であってもよく、4.3mol%以上であってもよい。上限値は9.0mol%以下であってもよく、8.0mol%以下であってもよく、7.0mol%以下であってもよく、6.0mol%以下であってもよい。相溶化材(C)のコモノマー含量が1.5mol%を下回るものでは、力学物性改良の効果が顕著でない。また、10.0mol%を上回るものは耐熱性が失われるため好ましくない。
【0044】
相溶化材(C)のポリプロピレン換算の重量平均分子量(Mw)は、60,000以上1,000,000以下であればよく、70,000~800,000であってもよく、80,000~600,000であってもよく、100,000~300,000であってもよく、110,000~180,000であってもよい。
相溶化材(C)の重量平均分子量が1,000,000よりも大きいと、複合材としての流動性が不足し、薄肉成形品を成形する際に大きな型締め力のある成形機を必要とするか、或いは、成形温度を高くする必要性が生じるので、生産性に悪影響を及ぼす。一方、相溶化材(C)の重量平均分子量が60,000未満であると、耐衝撃性等の機械特性が劣る。そのため、相溶化材(C)の重量平均分子量が上記の範囲を外れるものは、力学物性の改良効果が顕著ではない。
【0045】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものとし、具体的な測定手法は以下の通りである。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、GPCによって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10-4、α=0.7
PP : K=1.03×10-4、α=0.78
すなわち、上述の手法により、ポリプロピレン換算した分子量から相溶化材(C)の重量平均分子量(Mw)を求める。Mwの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されている。
【0046】
<相溶化材(C)の製造方法>
相溶化材(C)として用いられるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体は、主要モノマーであるプロピレンモノマー、及び、水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに加えて、必要により有機アルミニウム化合物を添加し、ポリプロピレン重合に各種公知である触媒を使用して製造することが可能である。
【0047】
本発明に用いられる、水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーは、好ましくは、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-ペンテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ペンテン-2-オール、4-ペンテン-2-オール、1-ペンテン-3-オール、4-メチル-3-ペンテン-1-オール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、2-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-1-オール、4-ヘキセン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、1-ヘキセン-3-オール、1-ヘプテン-3-オール、6-メチル-5-ヘプテン-2-オール、1-オクテン-3-オール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、3-ノネン-1-オール、5-デセン-1-オール、9-デセン-1-オール、10-ウンデセン-1-オール、オレイルアルコール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール、7-オクテン-1,2-ジオール、1,4-ペンタジエン-3-オール、2,4-ヘキサジエン-1-オール、1,5-ヘキサジエン-3-オール、2,4-ジメチル-2,6-ヘプタジエン-1-オール、ジヒドロカルベオール、イソプレゴオール、5-ノルボルネン-2-オール、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2,2-ジメタノール等が挙げられる。
さらに好ましくは、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、シトロネロール、ジヒドロミルセノール、10-ウンデセン-1-オール、7-オクテン-1,2-ジオール、5-ノルボルネン-2-オール、5-ノルボルネン-2-メタノールが挙げられる。
特に好ましくは、5-ヘキセン-1-オール、10-ウンデセン-1-オールが挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物としては、好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、メチルアルモキサンやブチルアルモキサンなどのアルミニウムオキシ化合物等が挙げられ、さらに好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルモキサンが挙げられ、特に好ましくは、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルモキサンが挙げられる。
【0049】
本発明の相溶化材(C)の製造に用いられる重合触媒は、(i)周期表第4~10族の遷移金属化合物と、必要により(ii)アルミニウムオキシ化合物、上記遷移金属化合物と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、固体酸微粒子、およびイオン交換性層状珪酸塩から成る化合物群の中から選ばれる少なくとも一種の助触媒と、必要により(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、本発明の相溶化材(C)の製造が可能である公知の触媒は、いずれも使用可能である。
【0050】
周期表第4~10族の遷移金属化合物としては、4族メタロセン化合物、10族ホスフィンフェノラート化合物、10族ホスフィンスルホナート化合物等が例示され、特に好ましくは、4族メタロセン化合物が挙げられる。
4族メタロセン化合物は、プロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能なメタロセン化合物である。
例えば、特開平2-131488号、特開平2-76887号、特開平4-211694号、特開平4-300887号、特開平5-43616号、特開平6-100579号、特開平5-209013号、特開平6-239914号、特開平11-240909号、特開平6-184179号、特表2003-533550号等に記載されたメタロセン化合物が挙げられる。
【0051】
4族メタロセン化合物としては、具体的には、以下の例示ができる。
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(1-ナフチル)-インデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン[1-(2-メチル-4-(4-t-ブチルフェニル)インデニル)][1-(2-i-プロピル-4-(4-t-ブチルフェニル)インデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(2-フルオロビフェニリル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。
【0052】
上記メタロセン化合物において、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。
また、2種以上の錯体を使用することもできる。
さらに、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
これらの内、2位と4位に置換基を有し、珪素あるいはゲルミル基で架橋したビスインデニル基あるいはアズレニル基を配位子とするメタロセン化合物が好ましい。
上記の錯体は、単離抽出して触媒に用いてもよいし、単離せずに触媒に用いてもよい。
また、一種類を単独で用いてもよいし、複数種の触媒組成物を併用してもよい。特に、分子量分布やコモノマー含量分布を広げる目的には、こうした複数種の触媒組成物の併用は有用である。
【0053】
本発明の相溶化材(C)として用いられるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体の重合は、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒や、液化α-オレフィンなどの液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のような極性溶媒の存在下あるいは非存在下で行われる。
また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。
なお、高い重合活性や高い分子量を得る上では、上述の炭化水素溶媒がより好ましい。
また、共重合に際して、公知の添加剤の存在下又は非存在下で共重合を行うことができる。
【0054】
添加剤としては、ラジカル重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。好ましい添加剤としては、例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体等が挙げられる。具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6-ジ-t-ブチル4-メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物等が使用可能である。
また、添加剤として、無機及び/又は有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で重合を行ってもよい。
【0055】
本発明の相溶化材(C)として用いられるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体の重合においては、その重合形式は、特に制限されない。
重合形式としては、媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、及び、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合等が挙げられる。
また、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。
【0056】
重合温度、重合圧力及び重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
重合温度は、通常、-20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃である。
重合圧力は、通常、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPaである。
重合時間は、通常、0.1分から10時間、好ましくは、0.5分から7時間、更に好ましくは1分から6時間である。
【0057】
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給方法を採用することができる。
例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。
また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、及び、触媒の配位子構造の制御により分子量を制御する方法等が挙げられる。
【0058】
重合体の組成制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。
その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法等が挙げられる。
【0059】
<樹脂組成物の質量比率>
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂(A)と樹脂(B)とを含む組成物(D)を99.5~90.0質量%と、上記の相溶化材(C)を0.5~10.0質量%含むことを特徴とする。
【0060】
本発明において組成物(D)は、ポリオレフィン系樹脂(A)と樹脂(B)とを含む組成物であり、その他の成分が含まれていてもよいが、その他の成分が含まれていなくてもよい。
組成物(D)は、樹脂組成物全体の質量を100質量%としたとき、樹脂組成物中に99.5~90.0質量%含まれていることが必要であり、99.2~92.0質量%であってもよく、99.0~95.0質量%であってもよく、98.5~97.0質量%であってもよい。
樹脂組成物に含まれる上記組成物(D)中のポリオレフィン系樹脂(A)と樹脂(B)との質量基準(質量%)での比率が、(A):(B)=5:95~95:5の範囲であり、10:90~90:10であってもよく、20:80~80:20であってもよい。
【0061】
相溶化材(C)は、樹脂組成物全体の質量を100質量%としたとき、樹脂組成物中に0.5~10.0質量%含まれていることが必要であり、0.8~8.0質量%であってもよく、1.0~5.0質量%であってもよく、1.5~3.0質量%であってもよい。
相溶化材(C)の量が0.5質量%を下回るものは、力学物性の改良効果に乏しく、10.0質量%を上回ると樹脂組成物の剛性や耐衝撃性、耐熱性などの特性が悪化する。
【0062】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、ペレット状、パウダー状、ベール状等の形状で得られるポリオレフィン系樹脂(A)、樹脂(B)、及び相溶化材(C)を、必要に応じてタンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダー等の混合機器を用いて混合した後、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーなどの混練機器を用いて溶融混練することにより製造することができる。
しかし、溶融混練工程は必ずしも必須ではなく、ドライブレンド品を以下に示す各種成形に直接用いることも可能である。
溶融混練を行う場合、例えば、初めに相溶化材(C)の含量が極めて高い値の樹脂(いわゆるマスターバッチ)を溶融混練により作成しておき、これに対して適切な量のポリオレフィン系樹脂(A)と樹脂(B)(あるいは、場合によってはさらに相溶化材(C)を加えてもよい)を別の溶融混練の工程で追加することで、最終的にポリオレフィン系樹脂(A)、樹脂(B)、及び相溶化材(C)の配合量が本発明の規定の範囲に入るように調整して製造することも可能である。
本発明の樹脂組成物を成形することにより、各種成形体を製造することができる。
成形方法としては、従来公知の方法を用いることが出来、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形などを挙げることができる。
押出成形に関しては、押出成形した成形体を、さらに真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの熱成形をすることができる。
【0063】
<その他の配合剤>
本発明の樹脂組成物には、必須成分のポリオレフィン系樹脂(A)、樹脂(B)、及び相溶化材(C)に加えて、他の重合体、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、発泡剤等の各種添加剤や、着色剤等の顔料を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0064】
他の重合体としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、上記記載以外のポリプロピレン系樹脂、ポリ-4-メチル-ペンテン-1等のポリα-オレフィン、エチレン-プロピレンエラストマー等のオレフィン系エラストマー、またはこれらと共重合可能な他の単量体、例えば酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体及び混合物等を挙げることができる。
【0065】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤及びチオ系酸化防止剤などが例示できる。
中和剤としては、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類が例示できる。
光安定剤及び紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケル錯化合物、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類等が例示できる。
【0066】
また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラス繊維、カーボン繊維、カーボンブラックなどが例示できる。
滑剤としては、ステアリン酸アマイド等の高級脂肪酸アマイド類が例示できる。
【0067】
更に、帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類が例示できる。
金属不活性剤としては、トリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類などが例示できる。
発泡剤としては、重炭酸ソーダとクエン酸等の有機酸の混合物、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム等のアゾ系発泡剤等が挙げられる
【0068】
<樹脂組成物の用途>
本発明における樹脂組成物を使用するに当たり各種成形に供するが、その形状は特に限定されるものではないが、通常例えば、フィルム状、シート状、繊維状、トレイ状、ボトル状、パイプ状、その他の形状に成形される。
これらは、熱可塑性樹脂の通常の溶融成形法、例えば、インフレーション成形、押出成形、圧縮成形、真空成型、射出成形、中空成形、回転成形等によって行われるが、更にそれらに熱成形、延伸成形、発泡成形等の二次成形法を適用して成形されたものであってもよい。
本発明における樹脂組成物の用途としては、例えば、包装用資材、農業用資材、土木用資材、繊維、建築用資材、自動車部品、家電部品、衛生・医療材料その他工業用資材等が挙げられる。
【0069】
2.相溶化材
本発明の相溶化材は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、樹脂(B)とを相溶化するための相溶化材であって、
前記樹脂(B)は、Fedors法により求められる溶解度パラメータδが18.0~35.0(J0.5/cm1.5)であり、
前記相溶化材は、水酸基を有する炭素数5以上20以下の脂肪族α-オレフィンモノマーよりなる水酸基含有コモノマーに由来する構造単位を1.5mol%以上10mol%以下含み、且つ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリプロピレン換算の重量平均分子量が60,000以上1,000,000以下であるプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体であることを特徴とする。
【0070】
本発明の相溶化材は、コモノマーとして、水酸基を有する脂肪族α-オレフィンモノマーを所定の割合でプロピレンと共重合したプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体であるが、本研究者らは、特定の構造を有するプロピレン/水酸基含有コモノマー共重合体が、ポリオレフィン系樹脂(A)と特定の溶解度パラメータの範囲を満たす重合体である樹脂(B)の相溶化材として用いた場合に、樹脂組成物の力学物性が格段に向上することを見出した。
【0071】
本発明の相溶化材は、上述した1.樹脂組成物に含まれる相溶化材(C)と同様であるため、ここでの記載は省略する。また、相溶化の対象であるポリオレフィン系樹脂(A)及び樹脂(B)についても上述した1.樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂(A)及び樹脂(B)と同様であるため、ここでの記載は省略する。
【実施例】
【0072】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、本実施例における測定法は次の通りである。
【0073】
1.分析方法及び評価方法
(1)重量平均分子量Mw(ポリプロピレン換算)
GPC法によって求めた。詳細は上述の通りであるため、ここでの記載は省略する。
【0074】
(2)MFR
JIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0075】
(3)融点
示差走査熱量測定(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。装置はTA Instruments社製Q2000を用い、サンプル量は約5mgとした。
【0076】
(4)曲げ弾性率、曲げ強さ
・規格番号:JIS K-7171(ISO 178)に準拠
・試験機:東洋精機社製 ベンドグラフII
・試験片の形状:厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm
・試験片の作成方法:射出成型
・状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24h以上放置
・試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
・試験片の数:n=3
・支点間距離:64mm
・試験速度:2.0mm/min
・評価項目:曲げ弾性率、及び、曲げ強さ(最大曲げ応力)
【0077】
(5)シャルピー衝撃試験
・規格番号:JIS K-7111(ISO 179/1eA)準拠
・試験機:東洋精機社製 全自動シャルピー衝撃試験機(恒温槽付き)
・試験片の形状:シングルノッチ付き試験片、厚さ4mm、幅10mm、長さ80mm
・ノッチ形状:タイプAノッチ(ノッチ半径0.25mm)
・衝撃速度:2.9m/s
・公称振り子エネルギー:4J
・試験片の作成方法:射出成型試験片にノッチを切削(ISO 2818に準拠)
・状態の調節:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室内に24h以上放置
・試験室:室温23℃、湿度50%に調節された恒温室
・試験片の数:n=5
・試験温度:23℃
・評価項目:吸収エネルギー
【0078】
(6)水酸基含有コモノマー含量(mol%)
1H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、水酸基含有コモノマー含量(mol%)を求めた。
[試料の調製]
試料200mgをO-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4ml、および化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシクロキサンとともに内径10mmφのNMR試料管に入れ、窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。
[測定条件]
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカーバイオスピン(株)のNMR装置AVANCE(III)400を用いた。1H-NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回として測定をした。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmとして設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。コモノマー含量は、1H-NMRスペクトルのコモノマーシグナルを帰属し、そのシグナル強度に基づいて算出した。
【0079】
2.使用材料
ポリオレフィン系樹脂(A)として、日本ポリプロ社製ホモポリプロピレン(グレード名MA3)を使用した。MFRは10g/10分、融点は161℃であった。Fedors法により求めた溶解度パラメータδは16.4であった。
樹脂(B)として、市販のポリブチレンテレフタレート樹脂(Sabic社製Valox310)を用いた。Fedors法により求めた溶解度パラメータδは24.0であった。
相溶化材(C)としては、以下に示すC-1~C-8を使用した。
【0080】
<相溶化材C-1の製造>
プロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を以下の方法で製造した。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、2μmolのrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを秤量し、脱水ヘプタン(10mL)を加えた。このヘプタン溶液に、日本アルキルアルミ(株)製のメチルアルミノキサントルエン溶液(メチルアルミノキサン(MAO)として20mmol)を加えて触媒溶液を調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内に精製窒素雰囲気下で、精製ヘプタン500mL、10-ウンデセン-1-オール60mmol、トリイソブチルアルミニウム66mmolを導入し、水素200mL、プロピレン圧0.5MPa、80℃で安定化させた。
その後、上記オートクレーブ内に、先に調製した触媒溶液を添加し、重合を開始した。
15分間の重合終了後、エタノール(10mL)を加え、圧力を開放し、窒素置換し、オートクレーブを室温まで冷却した。
回収した重合スラリー液から、エタノール(1L)を用いて共重合体を再沈し、ろ過により共重合体を得た。
共重合体を塩酸(2N、200mL)/エタノール(1L)溶液で洗浄した後、さらにエタノール(1L)を用いて洗浄した。
70℃で6時間減圧乾燥後、最終的にプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を回収した。収量は36.7g、Mw110,000、Mw/Mn2.4、10-ウンデセン-1-オール含量4.3mol%であった。
【0081】
<相溶化材C-2の製造>
プロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を以下の方法で製造した。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、2μmolのrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを秤量し、脱水ヘプタン(10mL)を加えた。このヘプタン溶液に、日本アルキルアルミ(株)製のメチルアルミノキサントルエン溶液(メチルアルミノキサン(MAO)として30mmol)を加えて触媒溶液を調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内に精製窒素雰囲気下で、精製ヘプタン900mL、10-ウンデセン-1-オール60mmol、トリイソブチルアルミニウム66mmolを導入し、水素200mL、プロピレン圧0.5MPa、70℃で安定化させた。
その後、上記オートクレーブ内に、先に調製した触媒溶液を添加し、重合を開始した。
25分間の重合終了後、エタノール(10mL)を加え、圧力を開放し、窒素置換し、オートクレーブを室温まで冷却した。
回収した重合スラリー液から、エタノール(1L)を用いて共重合体を再沈し、ろ過により共重合体を得た。
共重合体を塩酸(2N、200mL)/エタノール(1L)溶液で洗浄した後、さらにエタノール(1L)を用いて洗浄した。
70℃で6時間減圧乾燥後、最終的にプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を回収した。収量は22.0g、Mw180,000、10-ウンデセン-1-オール含量2.7mol%であった。
【0082】
<相溶化材C-3の製造>
プロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を以下の方法で製造した。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、10μmolのrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを秤量し、脱水ヘプタン(10mL)を加えた。このヘプタン溶液に、日本アルキルアルミ(株)製のメチルアルミノキサントルエン溶液(メチルアルミノキサン(MAO)として5mmol)を加えて触媒溶液を調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内に精製窒素雰囲気下で、精製ヘプタン500mL、10-ウンデセン-1-オール75mmol、トリイソブチルアルミニウム100mmolを導入し、水素400mL、プロピレン圧0.5MPa、70℃で安定化させた。
その後、上記オートクレーブ内に、先に調製した触媒溶液を添加し、重合を開始した。
20分間の重合終了後、エタノール(10mL)を加え、圧力を開放し、窒素置換し、オートクレーブを室温まで冷却した。
回収した重合スラリー液から、エタノール(1L)を用いて共重合体を再沈し、ろ過により共重合体を得た。
共重合体を塩酸(2N、200mL)/エタノール(1L)溶液で洗浄した後、さらにエタノール(1L)を用いて洗浄した。
70℃で6時間減圧乾燥後、最終的にプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を回収した。収量は10.4g、Mw53,000、Mw/Mn2.0、10-ウンデセン-1-オール含量3.4mol%であった。
【0083】
<相溶化材C-4の製造>
プロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を以下の方法で製造した。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、5μmolのrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを秤量し、脱水ヘプタン(10mL)を加えた。このヘプタン溶液に、日本アルキルアルミ(株)製のメチルアルミノキサントルエン溶液(メチルアルミノキサン(MAO)として5mmol)を加えて触媒溶液を調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内に精製窒素雰囲気下で、精製ヘプタン750mL、10-ウンデセン-1-オール30mmol、トリイソブチルアルミニウム40mmolを導入し、水素100mL、プロピレン圧0.5MPa、70℃で安定化させた。
その後、上記オートクレーブ内に、先に調製した触媒溶液を添加し、重合を開始した。
20分間の重合終了後、エタノール(10mL)を加え、圧力を開放し、窒素置換し、オートクレーブを室温まで冷却した。
回収した重合スラリー液から、エタノール(1L)を用いて共重合体を再沈し、ろ過により共重合体を得た。
共重合体を塩酸(2N、200mL)/エタノール(1L)溶液で洗浄した後、さらにエタノール(1L)を用いて洗浄した。
70℃で6時間減圧乾燥後、最終的にプロピレン/10-ウンデセン-1-オール共重合体を回収した。収量は15.4g、Mwは108,000、Mw/Mnは2.1、10-ウンデセン-1-オール含量は1.2mol%であった。
【0084】
<相溶化材C-5の製造>
プロピレン/3-ブテン-1-オール共重合体を以下の方法で製造した。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、40μmolのrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを秤量し、脱水ヘプタン(10mL)を加えた。このヘプタン溶液に、日本アルキルアルミ(株)製のメチルアルミノキサントルエン溶液(メチルアルミノキサン(MAO)として20mmol)を加えて触媒溶液を調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内に精製窒素雰囲気下で、精製ヘプタン500mL、3-ブテン-1-オール40mmol、トリイソブチルアルミニウム44mmolを導入し、水素100mL、プロピレン圧0.2MPa、70℃で安定化させた。
その後、上記オートクレーブ内に、先に調製した触媒溶液を添加し、重合を開始した。
15分間の重合終了後、エタノール(10mL)を加え、圧力を開放し、窒素置換し、オートクレーブを室温まで冷却した。
回収した重合スラリー液から、エタノール(1L)を用いて共重合体を再沈し、ろ過により共重合体を得た。
共重合体を塩酸(2N、200mL)/エタノール(1L)溶液で洗浄した後、さらにエタノール(1L)を用いて洗浄した。
70℃で6時間減圧乾燥後、最終的にプロピレン/3-ブテン-1-オール共重合体を回収した。収量は38.6g、Mwは43,000、Mw/Mnは2.5、3-ブテン-1-オール含量は1.1mol%であった。
【0085】
<相溶化材C-6の製造>
プロピレン/3-ブテン-1-オール共重合体を以下の方法で製造した。
充分に窒素置換した30mLフラスコに、45μmolのrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを秤量し、脱水ヘプタン(10mL)を加えた。このヘプタン溶液に、日本アルキルアルミ(株)製のメチルアルミノキサントルエン溶液(メチルアルミノキサン(MAO)として45mmol)を加えて触媒溶液を調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内に精製窒素雰囲気下で、精製ヘプタン400mL、3-ブテン-1-オール180mmol、トリイソブチルアルミニウム195mmolを導入し、水素400mL、プロピレン圧0.1MPa、70℃で安定化させた。
その後、上記オートクレーブ内に、先に調製した触媒溶液を添加し、重合を開始した。
30分間の重合終了後、エタノール(10mL)を加え、圧力を開放し、窒素置換し、オートクレーブを室温まで冷却した。
回収した重合スラリー液から、エタノール(1L)を用いて共重合体を再沈し、ろ過により共重合体を得た。共重合体を塩酸(2N、200mL)/エタノール(1L)溶液で洗浄した後、さらにエタノール(1L)を用いて洗浄した。
70℃で6時間減圧乾燥後、最終的にプロピレン/3-ブテン-1-オール共重合体を回収した。収量は9.2g、Mwは20,000、3-ブテン-1-オール含量は2.5mol%であった。
【0086】
<相溶化材C-7>
市販の無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成社製 商品名:ユーメックス1001)を使用した。
【0087】
<相溶化材C-8>
三菱化学社製の無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名:CMPP2)を使用した。酸変性量(グラフト率)は0.7質量%であった。
C-1~C-8の物性については、表1に示す。
【0088】
【0089】
(実施例1~4、比較例1~8)
表2に記載の割合で、ポリオレフィン系樹脂(A)、樹脂(B)、相溶化材(C)をドライブレンドにて混合し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物100質量部に対して、フェノ-ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト]メタン(商品名:IRGANOX1010、BASFジャパン株式会社製)0.05質量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.05質量部、ステアリン酸カルシウム0.05質量部を添加した。
これらを、二軸押出機(テクノベル社製KZW-15)を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパ下から120℃、200℃、240℃(以降、ダイス出口まで同温度)の設定条件で溶融混練して、樹脂組成物ペレットを得た。
上記樹脂組成物ペレットを、東芝機械社製EC20型射出成形機にて射出成型を行い、10×80×4t(mm)サイズの試験片を成形した。
射出成形の条件は、成形温度240℃、金型温度40℃、射出速度52mm/秒、射出時間8秒、冷却時間12秒である。
この試験片を用いて曲げ弾性率、曲げ強さ、シャルピー衝撃強度の評価を行った結果について表2に示す。
また、
図1に、実施例1~4、比較例1~8の曲げ弾性率に対する、曲げ強さの関係を示す。
さらに、
図2に、実施例1~4、比較例1~8の曲げ弾性率に対する、シャルピー衝撃強度の関係を示す。
【0090】
【0091】
(実施例5、比較例9)
配合する樹脂の種類と量を表3に記載のように変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表3に示す。
【0092】
【0093】
[実施例と比較例の対比]
実施例1~4と比較例1~8の対比からわかるように、相溶化材(C)として本発明の規定を満たすものを用いた場合には、曲げ弾性率とシャルピー衝撃強度はほぼ変わらない値を保持するか、あるいは若干の向上が認められ、最も顕著な特徴として、曲げ強度に明確な性能向上が認められる。この効果は、従来公知の無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PP)を相溶化材として用いたものよりも大きい。
実施例5と比較例9の対比でも同様の傾向が認められる。
また、実施例1と実施例3の対比から、ポリオレフィン系樹脂(A)と樹脂(B)との比率と、相溶化材(C)の添加量を同じにして、相溶化材(C)として、C-1を用いた実施例1の方が、C-2を用いた実施例3よりも曲げ弾性率は若干低下するものの、曲げ強さとシャルピー衝撃強度が向上し、全体的なバランスは向上していることがわかる。
実施例2と実施例4の対比でも同様の傾向が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の樹脂組成物は、曲げ弾性率、曲げ強度、及び衝撃強度のバランスに優れたものであり、各種生活用品向け容器、食品等の包装フィルム、シート、さらには工業用部品等に好適に用いることができる。
また、本発明の相溶化材は、ポリオレフィン系樹脂(A)と特定の溶解度パラメータの範囲を満たす重合体である樹脂(B)の相溶化材として用いた場合に、樹脂組成物の力学物性が格段に向上するため、ポリオレフィン系樹脂(A)と特定の溶解度パラメータの範囲を満たす重合体の間の相溶化材として好適に用いることができる。