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  • 特許-二乗/除算回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】二乗/除算回路
(51)【国際特許分類】
   G06G 7/16 20060101AFI20220317BHJP
   G06G 7/164 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G06G7/16
G06G7/164
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018077790
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019185547
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近野 暢
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0043087(US,A1)
【文献】特開昭58-52776(JP,A)
【文献】特開2015-177369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06G7/16-7/164;7/20
H03F3/21;H03F3/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が電源端子に接続される第1電流源と、該第1電流源の他端と接地間に直列接続されるダイオード接続の第1導電型の第1及び第2トランジスタと、一端が前記電源端子に接続される第2電流源と、該第2電流源の他端にコレクタが接続されベースが前記第1電流源の他端と前記第2トランジスタのコレクタに接続される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記電源端子に接続されゲートが前記第2電流源の前記他端に接続される第1導電型の第4トランジスタと、コレクタが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第5トランジスタと、コレクタとベースが前記第4トランジスタのエミッタと前記第5トランジスタのベースに接続されエミッタが接地される第1導電型の第6トランジスタと、ベースが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第7トランジスタとを有する二乗/除算回路において、
前記第7トランジスタのコレクタにエミッタが接続される第1導電型の第11トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されコレクタとベースが前記第11トランジスタのベースに接続される第2導電型の第12トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第12トランジスタのベースに接続されコレクタが前記第7トランジスタのベースに接続される第2導電型の第13トランジスタとを備え、前記第11トランジスタのコレクタ電流を出力電流として取り出すことを特徴とする二乗/除算回路。
【請求項2】
請求項1に記載の二乗/除算回路において、
エミッタが前記電源端子に接続されベースとエミッタが前記第11トランジスタのコレクタに接続される第2導電型の第8トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第11トランジスタのコレクタに接続されコレクタが出力端子に接続される第9トランジスタと、前記第8トランジスタのエミッタとコレクタの間に接続されるキャパシタとを備え、前記第11トランジスタのコレクタ電流に相当する電流を前記出力端子から取り出すことを特徴とする二乗/除算回路。
【請求項3】
一端が電源端子に接続される第1電流源と、該第1電流源の他端と接地間に直列接続されるダイオード接続の第1導電型の第1及び第2トランジスタと、一端が前記電源端子に接続される第2電流源と、該第2電流源の他端にコレクタが接続されベースが前記第1電流源の他端と前記第2トランジスタのコレクタに接続される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記電源端子に接続されゲートが前記第2電流源の前記他端に接続される第1導電型の第4トランジスタと、コレクタが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第5トランジスタと、コレクタとベースが前記第4トランジスタのエミッタと前記第5トランジスタのベースに接続されエミッタが接地される第1導電型の第6トランジスタと、ベースが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第7トランジスタとを有する二乗/除算回路において、
前記第7トランジスタのベースにベースが接続されエミッタが接地される第1導電型の第10トランジスタと、該第10トランジスタのコレクタにエミッタが接続されコレクタが前記電源端子に接続される第1導電型の第11トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されコレクタとベースが前記第11トランジスタのベースに接続される第2導電型の第12トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第12トランジスタのベースに接続されコレクタが前記第7トランジスタのベースに接続される第2導電型の第13トランジスタとを備え、前記第7トランジスタのコレクタ電流を出力電流として取り出すことを特徴とする二乗/除算回路。
【請求項4】
請求項3に記載の二乗/除算回路において、
エミッタが前記電源端子に接続されベースとエミッタが前記第7トランジスタのコレクタに接続される第2導電型の第8トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第7トランジスタのコレクタに接続されコレクタが出力端子に接続される第9トランジスタとを備え、前記第7トランジスタのコレクタ電流に相当する電流を前記出力端子から取り出することを特徴とする二乗/除算回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に関連し、2つの入力電流に対する二乗/除算の結果を得る二乗/除算回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に従来の二乗/除算回路を示す(非特許文献1)。1は電圧Vccが印加する電源端子、2は演算結果の電流Ioutを出力する出力端子、3は入力電流IAを供給する電流源、4は入力電流IBを供給する電流源である。Q1,Q2は電流源3に直列接続されるダイオード接続のNPNトランジスタ、Q3はコレクタが電流源4に接続されベースが電流源3に接続されるNPNトランジスタ、Q4はコレクタが電源端子1に接続されベースが電流源4に接続されるNPNトランジスタである。Q5,Q6はカレントミラー接続のNPNトランジスタで、トランジスタQ5のコレクタはトランジスタQ3のエミッタに、トランジスタQ6のベースとコレクタはトランジスタQ4のエミッタに、それぞれ接続されている。Q7はベースがトランジスタQ3のエミッタに接続されるNPNトランジスタである。Q8,Q9はカレントミラー接続のPNPトランジスタで、トランジスタQ8はベースとコレクタがトランジスタQ7のコレクタに接続され、トランジスタQ9のコレクタは出力端子2接続されている。
【0003】
図5の二乗/除算回路では、トランジスタQ1,Q2,Q3,Q7について、以下の式(1)が成り立つ。Vbe1,Vbe2,Vbe3,Vbe7はそれぞれトランジスタQ1,Q2,Q3,Q7のベース・エミッタ間電圧である。
【0004】
ここで、Vtをサーマル電圧、Isを飽和電圧とすると、トランジスタのベース・エミッタ間電圧Vbeは、
であるので、式(1)は、
となる。
【0005】
よって、
となり、
が得られる。
【0006】
トランジスタQ8,Q9のカレントミラー比を1:1にすると、トランジスタQ1,Q2,Q3,Q7のコレクタ電流Ic1,Ic2,Ic3,Ic7は次の式(6)の関係を持つ。
よって、式(5)と(6)から、出力電流Ioutは、
となる。この式(7)より、出力電流Ioutは、入力電流IAを二乗し、入力電流IBで除算した二乗/除算を演算した電流となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】「アナログICの機能回路設計入門」、青木英彦著、CQ出版、pp190-192、1992年9月20日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
入力電流IAが変化せず入力電流IBが小さくなった場合、あるいは入力電流IBが小さくなり入力電流IAが大きくなった場合、出力電流Ioutに相当するトランジスタQ7のコレクタ電流Ic7は、式(5)により大きくなる。しかし、同時にトランジスタQ7のベース電流Ib7も大きくなる。そして、ベース電流Ib7が入力電流IBとほぼ同じとなったときに、出力電流Ioutは制限されてしまう。
【0009】
すなわち、例えば、入力電流IA,IBともに1μAの状態から、入力電流IAだけが10倍の10μAになった場合、出力電流Ioutは1μAから100μAへ100倍も変化する。このとき、トランジスタQ7の電流増幅率βを100とすると、トランジスタQ7のベース電流Ib7は0.01μAから1μAへ100倍も変化する。
【0010】
ここで、トランジスタQ3のエミッタ電流Ie3は入力電流IBにほぼ等しい(=1μA)ため、ベース電流Ib7がエミッタ電流Ie3と等しくなり、ベース電流Ib7が制限されて、出力電流Ioutも制限されることになる。したがって、さらに入力電流IAが増えても出力電流Ioutは増えず、二乗/除算の演算結果に誤差が生じるようになる。実際の特性は図4の点線で示す従来例の特性となる。
【0011】
本発明の目的は、演算結果の出力電流が大きくなる場合においても誤差を少なくするように動作する二乗/除算回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、一端が電源端子に接続される第1電流源と、該第1電流源の他端と接地間に直列接続されるダイオード接続の第1導電型の第1及び第2トランジスタと、一端が前記電源端子に接続される第2電流源と、該第2電流源の他端にコレクタが接続されベースが前記第1電流源の他端と前記第2トランジスタのコレクタに接続される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記電源端子に接続されゲートが前記第2電流源の前記他端に接続される第1導電型の第4トランジスタと、コレクタが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第5トランジスタと、コレクタとベースが前記第4トランジスタのエミッタと前記第5トランジスタのベースに接続されエミッタが接地される第1導電型の第6トランジスタと、ベースが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第7トランジスタとを有する二乗/除算回路において、前記第7トランジスタのコレクタにエミッタが接続される第1導電型の第11トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されコレクタとベースが前記第11トランジスタのベースに接続される第2導電型の第12トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第12トランジスタのベースに接続されコレクタが前記第7トランジスタのベースに接続される第2導電型の第13トランジスタとを備え、前記第11トランジスタのコレクタ電流を出力電流として取り出すことを特徴とする。
【0013】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の二乗/除算回路において、エミッタが前記電源端子に接続されベースとエミッタが前記第11トランジスタのコレクタに接続される第2導電型の第8トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第11トランジスタのコレクタに接続されコレクタが出力端子に接続される第9トランジスタと、前記第8トランジスタのエミッタとコレクタの間に接続されるキャパシタとを備え、前記第11トランジスタのコレクタ電流に相当する電流を前記出力端子から取り出すことを特徴とする。
【0014】
請求項3にかかる発明は、一端が電源端子に接続される第1電流源と、該第1電流源の他端と接地間に直列接続されるダイオード接続の第1導電型の第1及び第2トランジスタと、一端が前記電源端子に接続される第2電流源と、該第2電流源の他端にコレクタが接続されベースが前記第1電流源の他端と前記第2トランジスタのコレクタに接続される第1導電型の第3トランジスタと、コレクタが前記電源端子に接続されゲートが前記第2電流源の前記他端に接続される第1導電型の第4トランジスタと、コレクタが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第5トランジスタと、コレクタとベースが前記第4トランジスタのエミッタと前記第5トランジスタのベースに接続されエミッタが接地される第1導電型の第6トランジスタと、ベースが前記第3トランジスタのエミッタに接続されエミッタが接地される第1導電型の第7トランジスタとを有する二乗/除算回路において、前記第7トランジスタのベースにベースが接続されエミッタが接地される第1導電型の第10トランジスタと、該第10トランジスタのコレクタにエミッタが接続されコレクタが前記電源端子に接続される第1導電型の第11トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されコレクタとベースが前記第11トランジスタのベースに接続される第2導電型の第12トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第12トランジスタのベースに接続されコレクタが前記第7トランジスタのベースに接続される第2導電型の第13トランジスタとを備え、前記第7トランジスタのコレクタ電流を出力電流として取り出すことを特徴とする。
【0015】
請求項4にかかる発明は、請求項3に記載の二乗/除算回路において、エミッタが前記電源端子に接続されベースとエミッタが前記第7トランジスタのコレクタに接続される第2導電型の第8トランジスタと、エミッタが前記電源端子に接続されベースが前記第7トランジスタのコレクタに接続されコレクタが出力端子に接続される第9トランジスタとを備え、前記第7トランジスタのコレクタ電流に相当する電流を前記出力端子から取り出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、出力電流が大きくなる場合においても、第1電流源から供給される入力電流と第2電流源から供給される入力電流に対する二乗/除算の演算結果の誤差を少なくすることができる。また、演算結果としての出力電流を得る第7トランジスタのベース電流の補償を行うので温度変化の影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施例の二乗/除算回路の回路図である。
図2図1のNPNトランジスタQ11の静特性の特性図である。
図3】本発明の第2実施例の二乗/除算回路の回路図である。
図4】本発明と従来回路の入力電流-出力電流動作特性図である。
図5】従来の二乗/除算回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施例>
図1に本発明の第1実施例の二乗/除算回路を示す。図5で説明した従来の二乗/除算回路との違いは、NPNトランジスタQ7のベース電流を補償するベース電流補償回路5を設けた点である。このベース電流補償回路5は、トランジスタQ8のコレクタとトランジスタQ7のコレクタの間に接続されるNPNトランジスタQ11と、カレントミラー接続(ミラー比は1:1)のPNPトランジスタQ12,Q13とで構成されている。トランジスタQ12のベースとコレクタはトランジスタQ11のベースに接続され、トランジスタQ13のコレクタはトランジスタQ7のベースに接続されている。
【0019】
このベース電流補償回路5では、トランジスタQ7のコレクタ電流と同じ値のコレクタ電流が流れるトランジスタQ11のベース電流Ib11が、トランジスタQ12から供給される。このベース電流Ib11は、トランジスタQ7のコレクタ電流Ic7の1/βとなる。この電流Ib11はカレントミラー接続されるトランジスタQ12,Q13で折り返されトランジスタQ7のベースに流れる。
【0020】
この結果、入力電流IAが増大するか又は入力電流IBが減少することで、トランジスタQ7のコレクタIc7が増加すると、トランジスタQ11のベース電流Ib11が増えて、カレントミラー接続のトランジスタQ12,Q13により、コレクタ電流Ic7の増加分に対応する電流がトランジスタQ7のベースに追加供給される動作となる。
【0021】
したがって、トランジスタQ3のエミッタからの電流に影響されずに、トランジスタQ7のコレクタ電流Ic7、つまり、トランジスタQ9の出力電流Ioutを増やすことができるので、入力電流IBが小さくなっても、出力電流Ioutの大きさに制限がかかることはない。
【0022】
シミュレーションでは、入力電流IBを一定の2μAの条件として入力電流IAを増大させたとき、出力電流Ioutは図4の実線で示す特性となり、従来の回路のような大きな誤差(点線で示した)が発生しなくなることが確認できた。
【0023】
さらに、本実施例では、トランジスタQ11のコレクタ電流を折り返すカレントミラー回路をトランジスタQ8,Q9で構成し、トランジスタQ8のコレクタ・エミッタ間に回路動作を安定させるためにキャパシタC1を接続している。この理由をトランジスタQ7のコレクタ電流Ic7が変化したときのトランジスタQ11の動作で説明する。
【0024】
トランジスタQ11のコレクタがトランジスタQ8のコレクタに接続されているので、トランジスタQ7のコレクタ電流Ic7が変化すると、トランジスタQ8のコレクタ電圧も変動してトランジスタQ11のコレクタ・エミッタ電圧Vce11も変動することとなる。この電圧Vce11が変動すると、アーリー効果によりトランジスタQ11のベース電流Vb11も変動する。このことを図2のトランジスタQ11のトランジスタ静特性で示した。
【0025】
トランジスタQ7のコレクタ電流がIc7_1のとき、トランジスタQ11のコレクタ・エミッタ電圧がVce11_1であったものが、コレクタ電流Ic7_2に増加するとトランジスタQ8のコレクタ・エミッタ電圧Vce8が大きくなることから、トランジスタQ11のコレクタ電圧が下がりコレクタ・エミッタ電圧がVce11_2に低下して、トランジスタQ11のベース電流はIb11_1からIb11_3に増える。
【0026】
しかし、トランジスタQ11のコレクタ電圧が変化しない場合(Vce11_1のまま)は、トランジスタQ11のベース電流はIb11_2であり、これはトランジスタQ7のベース電流Ib7相当になるので、ベース電流Ib11_3への変化は過剰にトランジスタQ7のベース電流補償をしてしまうこととなる。
【0027】
そうすると、トランジスタQ7にベース電流Ib11_3がフィードバックされるのでトランジスタQ7のコレクタ電流Ic7が増えることになり、さらにトランジスタQ8のコレクタ電圧が下がり、トランジスタQ11の電圧Vce11が小さくなり、トランジスタQ11のベース電流が増えて、トランジスタQ7にフィードバックするという正帰還のループで不安定動作になってしまう。とくに、不安定動作はトランジスタQ7のコレクタ電流Ic7が過渡的に変化するときに起こりやすい。
【0028】
そこで本実施例では、トランジスタQ8のエミッタ・コレクタ間にキャパシタC1を接続することで、トランジスタQ7のコレクタ電流Ic7の電流が変化しても、トランジスタQ8のコレクタ電圧が変動し難くしている。これによって、過渡的に変化するときに有効となる。
【0029】
<第2実施例>
図3に本発明の第2実施例の二乗/除算回路を示す。本実施例では、図1で説明したベース電流補償回路5よりもさらに安定動作するベース電流補償回路5Aを提供する。ここでは、トランジスタQ7とベースを共通接続したトランジスタQ10を挿入し、そのトランジスタQ10に、トランジスタQ7と同じまたは比例したコレクタ電流を流すよう構成している。トランジスタQ10のコレクタにはトランジスタQ11のエミッタを接続し、トランジスタQ11のコレクタは電源端子1に接続している。トランジスタQ11のベースは、図1のベース電流補償回路5と同じようにトランジスタQ13とカレントミラー接続されるトランジスタQ12のベースとコレクタに接続して、トランジスタQ13経由でトランジスタQ11のベース電流と同じ電流をトランジスタQ7,Q10のベースに流して、トランジスタQ7のベース補償する。
【0030】
トランジスタQ13のコレクタ電流は、トランジスタQ7だけでなくトランジスタQ10のベース電流も補償するようにトランジスタQ12,Q13のミラー比を設定する。トランジスタQ10のコレクタ電流Ic10がトランジスタQ7のコレクタ電流Ic7と等しくなるようにする場合には、トランジスタQ12,Q13のミラー比は1:2に設定する。トランジスタQ7のコレクタ電流Ic7が増加した場合、トランジスタQ10のコレクタIc10も増加するが、トランジスタQ11のコレクタは電源端子1に接続しているので、トランジスタQ11のコレクタ・エミッタ間電圧Vce11はコレクタ電流Ic7の変化前後でほぼ一定であり、図1のベース電流補償回路5のような変化は起きない。そのため、トランジスタQ7のコレクタ電流Ic7が増加したときのベース電流Ib7が適切にフィードバックされて、過剰にベース電流が補償されることはく、本実施例のベース補償回路5Aは正帰還ループの動作が起き難くなる。
【0031】
さらに、トランジスタQ7のコレクタ電流を折り返すカレントミラー回路をPNPトランジスタQ8,Q9で構成している。本実施例のベース電流補償回路5Aは図1のベース電流補償回路5と異なる構成となっているため、トランジスタQ8のコレクタ・エミッタ間にキャパシタを接続する必要なく、集積回路上で回路を形成した場合に、NPNトランジスタの素子面積よりキャパシタの素子面積が大きくなる場合では、図3のベース電流補償回路5Aを適用することで、二乗/除算回路に占める面積の増大を抑制することができる利点がある。
【符号の説明】
【0032】
1:電源端子
2:出力端子
3,4:入力電流源
5,5A:ベース電流補償回路
図1
図2
図3
図4
図5