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  • 特許-エアロゲルを含む複合断熱シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】エアロゲルを含む複合断熱シート
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20220317BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220317BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20220317BHJP
【FI】
F16L59/02
B32B7/023
B32B7/027
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019570394
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 KR2018009608
(87)【国際公開番号】W WO2019107706
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160077
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】LG ELECTRONICS INC.
【住所又は居所原語表記】128, Yeoui-daero, Yeongdeungpo-gu, 07336 Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ、キョン-シル
(72)【発明者】
【氏名】イ、チェ-キュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ビョン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュン-ニョン
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068465(JP,A)
【文献】特開2016-112757(JP,A)
【文献】特表2010-534188(JP,A)
【文献】特開2016-028880(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072093(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
B32B 7/023
B32B 7/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲルシートと、
前記エアロゲルシートの一面に形成されたゾル不透過性コーティング層と、
前記エアロゲルシートの他面に形成された1以上の機能性層と、を含む複合断熱シートにおいて、
前記エアロゲルシートは無機繊維、有機繊維またはこれらの組み合わせを含み、
前記ゾル不透過性コーティング層の厚さは30μm以下であり、
複合断熱シートの厚さは3mm以下であることを特徴とする複合断熱シート。
【請求項2】
前記ゾル不透過性コーティング層はPA(ポリアミド)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(Pポリイミド)及びシリコンからなる群から選択された1以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合断熱シート。
【請求項3】
前記ゾルはジルコニア、酸化イットリウム、ハフニア、アルミナ、チタン、セリア、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択された1以上を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の複合断熱シート。
【請求項4】
前記機能性層は熱拡散、絶縁、吸音、耐振動、水に対する不透過性及び水蒸気に対する透過性からなる群から選択された1以上の機能を示すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合断熱シート。
【請求項5】
前記ゾル不透過性コーティング層は、PA(ポリアミド)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合断熱シート。
【請求項6】
前記エアロゲルシートの厚さは2mm以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合断熱シート。
【請求項7】
繊維シートの一面にゾル不透過性コーティング層を形成させるステップと、
前記繊維シートの他面にゾル及び触媒を含浸させるステップと、
前記含浸されたシートをゲル化させて湿潤ゲルシートを形成するステップと、
前記湿潤ゲルシートを乾燥させてエアロゲルシートを形成するステップと、
前記エアロゲルシートに1以上の機能性層を形成させるステップと、を含む複合断熱シートの製造方法において、
前記ゾル不透過性コーティング層の厚さは30μm以下であり、
複合断熱シートの厚さは3mm以下であることを特徴とする、複合断熱シートの製造方法。
【請求項8】
前記複合断熱シートはゾル不透過性コーティング層が一面に形成され、機能性層が他面に形成されたエアロゲルシートを含むことを特徴とする、請求項7に記載の複合断熱シートの製造方法。
【請求項9】
離型紙が付着したゾル不透過性コーティング層上に繊維を配置させた後、熱処理をして繊維シートの一面にゾル不透過性コーティング層を形成させることを特徴とする、請求項7または8に記載の複合断熱シートの製造方法。
【請求項10】
ゲル化の完了後に、前記ゾル不透過性コーティング層から離型紙を除去するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の複合断熱シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月28日付けの韓国特許出願第10-2017-0160077号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、エアロゲルを含む複合断熱シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ノート型パソコン、OLEDまたはTVなどの電子製品はHeat SourceによるHot Spotが存在して部分的に機器の表面に熱放出により、消費者が感じる感性品質が低下する恐れがある。また、単純断熱材を使用して外部へ適切に拡散させることができない場合、過度に蓄積された熱によりシステムの障害を誘発し、製品の寿命を短縮させたり、深刻な場合には爆発及び火災の原因を提供したりする。このような発熱による問題を解決するために多様な断熱素材が適用されたが、現在までも厚さが薄く断熱性能に優れた最適の断熱素材が開発されておらず、断熱に対する多様な研究及び技術開発が行われている。
【0004】
このような従来の問題を解決するための本発明は、高効率断熱材の用途として注目されているAerogelを適用して前記問題点を解決しようとする。
【0005】
エアロゲル(aerogel)はナノ粒子で構成された高多孔性物質であって、高い気孔率と比表面積、そして低い熱伝導度を有して高効率の断熱材、防音材などの用途として注目されている素材である。
【0006】
一方、このようなエアロゲルは、多孔性構造により極めて低い機械的強度を有するため、既存の断熱繊維である無機繊維または有機繊維などの繊維にエアロゲルを含浸して結合させたエアロゲル複合体を製造して使用しているが、前記エアロゲル複合体は、繊維とエアロゲルの付着力が弱く、切断、曲げなどの加工過程においてエアロゲル粒子が分離されてDust発生及び耐久性が低下して電子製品などの断熱材として適用する場合、機器の損傷などをもたらす恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は前記問題を解決するために、低粉塵、高強度、高断熱の特性を有するエアロゲル複合シートを提供して電子機器の活用可能性を高めようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第8021583号明細書(2011年9月20日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、電子機器に活用することができるように低粉塵、高強度、高断熱の特性を有する超薄型複合断熱シート及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はエアロゲルシートと、
前記エアロゲルシートの一面に形成されたゾル不透過性コーティング層と、
前記エアロゲルシートの他面に形成された1以上の機能性層と、を含む複合断熱シートを提供する。
【0011】
また、本発明は繊維シートの一面にゾル不透過性コーティング層を形成させるステップと、
前記繊維シートの他面にゾル及び触媒を含浸させるステップと、
前記含浸されたシートをゲル化させて湿潤ゲルシートを形成するステップと、
前記湿潤ゲルシートを乾燥させてエアロゲルシートを形成するステップと、
前記エアロゲルシートに1以上の機能性層を形成させるステップと、を含む複合断熱シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合断熱シートによれば、一面に形成されたゾル不透過性コーティング層により粉塵発生が低減されて高い断熱効率及び加工便宜性を提供することができる。
【0013】
また、本発明の複合断熱シートによれば、前記コーティング層により機械的強度が改善されて耐久性が増加することができる。
【0014】
また、本発明の複合断熱シートによれば、機能性層により必要なその他の機能を確保することができる。
【0015】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の具体的な実施例を例示するものであり、前述の発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明はかかる図面に記載された事項にのみ限定して解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例及び比較例の複合断熱シートの熱伝導度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。この時、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味として限定して解釈されてはならず、発明者はその自分の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0018】
一般的に電子製品はHeat SourceによるHot Spotが存在し、部分的に機器の表面に熱放出が発生して品質が低下する恐れがある。そこで、本発明は、高効率断熱材としてエアロゲルシートを使用しようとする。
【0019】
しかしながら、前記エアロゲルシートは繊維とエアロゲル間の付着力が弱く、切断、曲げなどの加工過程においてエアロゲル粒子が分離されるなど、粉塵発生がひどく、強度が弱くて耐久性が低下して電子製品などの断熱材としての適用に限界がある。
【0020】
そこで、本発明は、電子製品に広く活用できるように低粉塵、高強度、高断熱の特性を有する超薄型複合断熱シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
以下、本発明の複合断熱シート及びその製造方法を詳細に説明することとする。
【0022】
本発明はエアロゲルシートと、
前記エアロゲルシートの一面に形成されたゾル不透過性コーティング層と、
前記エアロゲルシートの他面に形成された1以上の機能性層と、を含む複合断熱シートを提供する。
【0023】
従来問題であった粉塵発生を低減させるために、本発明の複合断熱シートは、エアロゲルシートの一面にゾル不透過性コーティング層を導入することを特徴とする。
【0024】
具体的に、前記コーティング層はPA(ポリアミド、Poly amide)、PE(ポリエチレン、Poly Ethylene)、PET(ポリエチレンテレフタレート、Poly Ethylene Terephthalate)、PI(ポリイミド、Polyimide)及びシリコンからなる群から選択された1以上を含むことを特徴とする。
【0025】
前記コーティング層は特にゾル不透過性であることを特徴とする。本発明のコーティング層は、エアロゲルシートの製造過程においてゾルが有機または無機繊維に含浸される時、繊維を透過して外側にゾルが流れることを防止してエアロゲルシートの表面にエアロゲルが露出されないようにすることにより、低粉塵特性を具現することができるようにする。一方、前記コーティング層が形成されていない他の一面は、後述する機能性層によりエアロゲルが表面に露出されることを防止することができる。
【0026】
また、前記コーティング層は、多孔性構造により極めて低いエアロゲルシートの機械的強度を補完する役割をすることができる。前記コーティング層は、複合断熱シートの機械的強度を増加させて耐久性を改善させることができる。
【0027】
一方、本発明の前記ゾル不透過性コーティング層の厚さは30μm以下、より具体的には10~20μmであることを特徴とする。前記ゾル不透過性コーティング層の厚さが前記範囲より厚い場合、複合断熱シートの断熱性能が低下するという問題があり得るとともに、超薄型断熱材が必要な電子製品への使用に限界があり得る。反面、前記範囲より薄い場合、機械的強度の改善効果が微々として耐久性が良くない恐れがある。
【0028】
本発明において、前記ゾルを形成可能な物質は、ジルコニア、酸化イットリウム、ハフニア、アルミナ、チタン、セリア、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択された1以上の無機物質を含むことができる。
【0029】
また、前記シリカゾルの場合、シリコン含有アルコキシド系化合物を含んでもよく、具体的にはテトラメチルオルトシリケート(tetramethyl orthosilicate;TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate;TEOS)、予備加水分解されたテトラエチルオルトシリケート(Prehydrolyzed TEOS)、メチルトリエチルオルトシリケート(methyl triethyl orthosilicate)、ジメチルジエチルオルトシリケート(dimethyl diethyl orthosilicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、テトライソプロピルオルトシリケート(tetraisopropyl orthosilicate )、テトラブチルオルトシリケート(tetrabutyl orthosilicate)、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート(tetra secondary butyl orthosilicate)、テトラターシャリブチルオルトシリケート(tetra tertiary butyl orthosilicate)、テトラヘキシルオルトシリケート(tetra hexyl orthosilicate)、テトラシクロヘキシルオルトシリケート(tetracyclohexyl orthosilicate)、テトラドデシルオルトシリケート(tetradodecyl orthosilicate)などのようなテトラアルキルシリケートであってもよい。
【0030】
また、本発明のシリカゾルの製造に使用可能なアルコールは、具体的にメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような1価アルコール;またはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトールなどのような多価アルコールであってもよく、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。この中でも水及びエアロゲルとの混和性を考慮する時、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような炭素数1~6の1価アルコールであってもよい。前記のようなアルコール(極性有機溶媒)は表面改質反応を促進させるとともに、最終製造されるシリカエアロゲルにおける疎水化度を考慮して適切な含量で使用されることができる。
【0031】
また、本発明の複合断熱シートは、前記エアロゲルシートの他面に1以上の機能性層を含むことができる。
【0032】
一方、電子製品は単純断熱材を使用して発生した熱を外部へ適切に拡散させることができない場合、過度に蓄積された熱によりシステムの障害を誘発し、製品の寿命を短縮させたり、深刻な場合には爆発及び火災の原因を提供したりする。
【0033】
そこで、本発明は、複合断熱シートのゾル不透過性コーティング層が形成されていない他の一面に機能性層を積層することにより、画期的な断熱性能を有しながらも、粉塵(Dust)発生がなく機器の損傷を防止することができ、さらには熱拡散または絶縁層と積層して、断熱による機器内の熱蓄積を防止して機器の損傷を防止することができる構造的特徴を有する複合断熱シートを提供しようとする。
【0034】
具体的に前記機能性層は熱拡散、絶縁、吸音、耐振動、水に対する不透過性及び水蒸気に対する透過性からなる群から選択された1以上の機能を示すことができ、本発明の複合断熱シートはこれに制限されずに使用される電子製品において必要な機能を示す機能性層を含むことができる。
【0035】
一方、前記機能性層が水に対して不透過性である場合、本発明の複合断熱シートは電子部品に水が浸透することを防止して電子部品の損傷を防止することができ、水蒸気に対して透過性である場合、電子部品に水蒸気が凝結することを防止して電子部品の損傷を防止することができる。前記水に対して不透過性であり、水蒸気に対して透過性である層にはセルロース物質を含むことができる。
【0036】
本発明の複合断熱シートに含まれるエアロゲルシートにおいて、前記シートは無機繊維、有機繊維またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0037】
さらに具体的に前記シートは、フィルム、シート、ネット、繊維、多孔質体、発泡体、不織布体またはこれらの2層以上の積層体であってもよい。また、用途に応じてその表面に表面粗度が形成されるか、パターン化されたものであってもよい。前記シートは、シート内へゾルの挿入が容易な空間または空隙を含むことにより、断熱性能をより向上させることができる繊維であってもよい。また、本発明のシートは低い熱伝導度を有することが好ましい。
【0038】
具体的に、本発明において使用可能な繊維シートは、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体など)、セルロース、カーボン、麺、毛、麻、不織布、ガラス繊維またはセラミックウールなどであってもよい。
【0039】
一方、本発明の前記エアロゲルシートの厚さは3mm以下、具体的には2mm以下、より具体的には1mm以下であることを特徴とする。前記エアロゲルシートの厚さが前記範囲より厚い場合、超薄型断熱材が必要な電子製品への使用に限界があり得るとともに、前記範囲より薄い場合、機械的強度が極めて弱く、耐久性に劣ることがあり、断熱性能が良くない恐れがある。
【0040】
また、本発明の前記複合断熱シートの厚さは3mm以下、具体的には2mm以下、より具体的には1mm以下であることを特徴とする。複合断熱シートの厚さが前記範囲より厚い場合、超薄型断熱材が必要な電子製品への使用が困難であることがあり、前記範囲より薄い場合は公正性に劣る恐れがある。
【0041】
また、本発明は前記複合断熱シートの製造方法を提供する。
【0042】
具体的に、本発明の複合断熱シートの製造方法は、
繊維シートの一面にゾル不透過性コーティング層を形成させるステップと、
前記繊維シートの他面にゾル及び触媒を含浸させるステップと、
前記含浸されたシートをゲル化させて湿潤ゲルシートを形成するステップと、
前記湿潤ゲルシートを乾燥させてエアロゲルシートを形成するステップと、
前記エアロゲルシートに1以上の機能性層を形成させるステップと、を含む。
【0043】
より具体的に、前記ゾル不透過性コーティング層は離型紙が付着したコーティング層上に繊維を位置させた後、熱処理をして形成することができる。
【0044】
ここで、離型紙とは粘着テープ、接着紙、ラベルなど、粘着面に接触させて接触した面を保護するものを意味し、使用する時は剥がして目的を達成できるようにすることを意味する。
【0045】
本発明のゾル不透過性コーティング層の形成方法として、前記離型紙を使用することは、エアロゲルシートの表面にエアロゲルが露出されることを根本的に防止するためである。
【0046】
具体的に、前記離型紙を使用せずに、単に繊維シートの一面にコーティング層を形成した以後、前記繊維シートの他面にゾル及び触媒を含む溶液を含浸させる場合、繊維シートが前記溶液を全て含浸できない程度に前記溶液が過量である時、繊維シートの外側へ溢れたゾルにより前記コーティング層の表面にエアゲルが形成されてコーティング層が汚染される恐れがあり、この場合、粉塵発生を防止するコーティング層の役割を十分に果たせないからである。
【0047】
したがって、本発明の複合断熱シートの製造方法は、コーティング物質を含む離型紙を準備した後、前記コーティング物質上に繊維を位置させた後、熱処理をして繊維シートの一面にコーティング層を形成した以後、ゲル化の完了後にコーティング層に付着している離型紙を除去して前記コーティング層の表面の汚染を防止することを特徴とする。
【0048】
次に、前記繊維シートの他面にゾル及び触媒を含浸させ、前記含浸されたシートをゲル化させて湿潤ゲルシートを形成することができる。
【0049】
本発明の前記触媒は、ゾルのpHを増加させてゲル化を促進する役割を果たし、具体的に塩基性触媒を使用することができる。
【0050】
前記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;または水酸化アンモニウムのような有機塩基が挙げられるが、無機塩基の場合、化合物内に含まれた金属イオンがSi-OH化合物に配位(coordination)される恐れがあるため有機塩基が好ましい。具体的に、前記有機塩基は、水酸化アンモニウム(NHOH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、コリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ニトリロトリエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、またはジブタノールアミンなどが挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。より具体的に本発明の場合、前記塩基は水酸化アンモニウム(NHOH)であってもよい。
【0051】
一方、本発明は、前記ゲル化反応の完了以後、前記ゲルを適当な温度で放置して化学的変化が完全になされるように熟成するステップをさらに含んで機械的安定性を強化させることができ、以後、表面改質ステップをさらに含んでゲルの表面を疎水化させて空気中の水分吸収を抑制させて低い熱伝導度を保持するようにすることができる。
【0052】
以後、前記湿潤ゲルシートを乾燥させてエアロゲルシートを形成することができ、前記乾燥は常圧乾燥または超臨界乾燥によることができる。
【0053】
最後に、前記エアロゲルシートに1以上の機能性層を形成させることができ、これを通じてゾル不透過性コーティング層が一面に形成され、機能性層が他面に形成されたエアロゲルシートを含む複合断熱シートを製造することができる。
【0054】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0055】
(実施例1)
離型紙を含むポリアミド(Polyamide)フィルムの上にポリエチレンテレフタレート(有機繊維)を配置させた後、150℃で熱処理して一面にPoly amideコーティング層が形成されたポリエチレンテレフタレート繊維シートを製造した。
【0056】
次に、テトラエチルオルトシリケートとエタノール、水、HClを混合してシリカ濃度20%のPrehydrolyzed TEOS(HTEOS)を製造し、前記HTEOS、エタノール及び水を1:2.25:0.35の重量比で混合してシリカ(SiO)濃度4%のシリカゾルを製造した。
【0057】
ポリエチレンテレフタレート繊維シートのPoly amideコーティング層が形成されていない他面に前記シリカゾルと塩基触媒溶液を(エタノール:アンモニア水=210:1の重量比で混合し、HTEOS対比0.44重量%)噴射した後、ゲル化を誘導して湿潤ゲルシートを製造した。ゲル化が完了するまでは10分程度所要された。一方、この時、前記シリカゾルは前記コーティング層を通過できないことを確認することができた。ゲル化の完了後、前記離型紙を除去し、シリカゾル体積対比80~90%のアンモニア溶液(2~3vol%)を用いて50~70℃の温度で1時間放置して熟成させた後、シリカゾル体積対比80~90%のヘキサメチルジシラザン(HMDS)溶液(2~10vol%)を用いて50~70℃の温度で4時間の間放置して疎水化反応を進行した。疎水化反応が終わると、7.2L超臨界抽出機(extractor)に前記湿潤ゲルシートを入れてCO2を注入し、50℃、100bar到達時0.4L/minの速度でCO2を注入し、エタノールを抽出して乾燥した。乾燥が終わった後、CO2を排出(venting)してエアロゲルシートを製造した。
【0058】
前記エアロゲルシートに熱拡散素材としてグラファイトシートを付着して複合断熱シートを完成した。
【0059】
(実施例2)
前記実施例1においてポリエチレンテレフタレート(有機繊維)の代わりにガラス繊維(無機繊維)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で複合断熱シートを製造した。
【0060】
(比較例1)
前記実施例1においてコーティング層を形成しないことを除いては、実施例1と同じ方法で複合断熱シートを製造した。
【0061】
(比較例2)
前記実施例2においてコーティング層を形成しないことを除いては、実施例2と同じ方法で複合断熱シートを製造した。
【0062】
(比較例3)
前記実施例1の方法でPoly amideコーティング層が形成されたポリエチレンテレフタレート繊維シートを製造した。
【0063】
(比較例4)
前記実施例2の方法でPoly amideコーティング層が形成されたガラス繊維シートを製造した。
【0064】
(比較例5)
前記実施例1のポリエチレンテレフタレート繊維シートを準備した。
【0065】
(比較例6)
前記実施例2のガラス繊維シートを準備した。
【0066】
【表1】
【0067】
(実験例1:粉塵発生量の測定)
前記実施例1及び2、並びに、比較例1及び2で製造した各複合断熱シートを12cm×12cmとなるように切断してサンプルを製造した後、内製した振動試験機(ASTMC592-04)を用いて振動条件を24Hz/3mm、6hrsとして振動による重量減少率を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0068】
重量減少率(%)=[(最初複合断熱シートの重量-振動実験後の複合断熱シートの重量)/(最初複合断熱シートの重量)]×100
【0069】
【表2】
【0070】
前記の表2から分かるように、実施例の複合断熱シートは重量の減少がないことから、粉塵発生量がほとんどないことが分かった。
【0071】
これは、本発明の複合断熱シートに含まれたエアロゲルシートの一面に形成されたゾル不透過性コーティング層によるものであることを予想することができた。
【0072】
(実験例2:熱伝導度の測定)
前記実施例1及び2、並びに、比較例1及び2で製造した各エアロゲルシート及び比較例3~6のシートに対してNETZSCH社のHeat Flow Meter(HFM)456装備を用いて常温熱伝導度を測定し、その結果を下記の表3及び図1に示した。
【0073】
【表3】
【0074】
前記表3及び図1から分かるように、比較例5のエアロゲルを含んでいないPET(ポリエチレンテレフタレート)有機繊維シート及び比較例6のエアロゲルを含んでいないGF(Glass fiber、ガラス繊維)無機繊維シートは、本発明の実施例対比熱伝導度が極めて高く、繊維シートのみでは断熱性能に優れていないことが分かった。
【0075】
一方、前記比較例5及び6のそれぞれにコーティング層を形成した比較例3及び4の場合、熱伝導度がむしろ増加して断熱性能が低下することが分かった。
【0076】
反面、本発明の実施例1及び2の複合断熱シートは熱伝導度が極めて低く、断熱性能に優れていることを確認することができ、前記本発明の熱伝導度はコーティング層を形成していない比較例1及び2と比較して、それと同等であるか、むしろさらに低いことから、コーティング層の形成による熱伝導度の上昇は起こらないことを確認することができた。
【0077】
これにより、本発明の複合断熱シートは、断熱性能の低下を防止しながら低粉塵、高強度の特性を確保可能であることが分かった。
【0078】
前述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解することができる。したがって、以上で述べた実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものとして理解すべきである。
図1