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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220318BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220318BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220318BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20220318BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220318BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220318BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220318BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20220318BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20220318BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 B
H01L21/78 S
H01L21/78 Q
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
H01L21/302 105A
C09J7/22
C09J7/38
C09J133/00
C09J175/04
B23K26/351
H01L21/302 201B
C09J163/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018062940
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019176021
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2019-07-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】三上 一輝
(72)【発明者】
【氏名】内山 具朗
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 晃
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-019385(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043391(WO,A1)
【文献】特開2016-164972(JP,A)
【文献】特開2016-171261(JP,A)
【文献】特開2012-212731(JP,A)
【文献】特開2006-152154(JP,A)
【文献】特開2013-023665(JP,A)
【文献】特開2017-063210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
H01L 21/3065
C09J 7/22
C09J 7/38
C09J 133/00
C09J 175/04
B23K 26/351
H01L 21/302
C09J 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの製造方法であって、
半導体ウェハのパターン面側に、少なくとも基材フィルムと粘着剤層を有する表面保護テープが貼合された状態で前記半導体ウェハの裏面を研削する工程aと、
前記表面保護テープが貼合された状態で研削した前記半導体ウェハの裏面に、曲げ弾性率が200MPa以上のマスクテープを貼り付けることによりマスク材層を形成する工程bと、
前記半導体ウェハのストリートに相当する部分をレーザーにより切断し、前記半導体ウェハの前記マスク材層側からストリートを開口する工程cと、
SFプラズマにより、前記半導体ウェハを前記ストリートで分断して半導体チップに個片化するプラズマダイシング工程dと、
プラズマにより前記マスク材層を除去するアッシング工程eと、
アッシングした前記半導体ウェハの裏面にチップ固定テープを貼合して、リングフレームで支持固定する工程fと、
前記表面保護テープを剥離する工程gと、
を具備し、
前記基材フィルムにおける前記粘着剤層が形成されていない側の表面抵抗率が1012Ω/sqよりも大きく、1013Ω/sq未満であることを特徴とする半導体チップ製造方法。
【請求項2】
前記工程gにおいて、前記表面保護テープに紫外線を照射して、前記粘着剤層を硬化させて接着力を弱め、前記半導体チップと前記チップ固定テープとの接着力、および前記基材フィルムと前記粘着剤層との接着力を、前記粘着剤層と前記半導体チップとの接着力よりも強くして、前記表面保護テープを剥離することを特徴とする請求項1記載の半導体チップ製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤層には、前記基材フィルム側に感圧型粘着剤からなるアンカー層が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体チップ製造方法。
【請求項4】
前記粘着剤層は、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、前記(メタ)アクリル共重合体およびその架橋物の含有率が90%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体チップ製造方法。
【請求項5】
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート基を有する硬化剤またはエポキシ基を有する硬化剤0.5~5質量部を用いて少なくとも一部を架橋させていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体チップ製造方法。
【請求項6】
前記基材フィルムの曲げ弾性率が5.0×10Pa以上1.0×1010Pa以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体チップ製造方法。
【請求項7】
前記基材フィルムを形成している樹脂の融点が90℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の半導体チップ製造方法。
【請求項8】
前記基材フィルムにおける前記粘着剤層が形成されていない側の表面粗さRaが0.1μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の半導体チップ製造方法。
【請求項9】
前記粘着剤層の貯蔵弾性率が5.0×10Pa以上2.0×10Pa以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の半導体チップ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマダイシングを用いて半導体ウェハを個片化する半導体チップの製造方法と、これに用いられる半導体ウェハの表面保護テープに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体チップの薄膜化・小チップ化への進化はめざましく、特に、メモリカードやスマートカードの様な半導体ICチップが内蔵されたICカードでは薄膜化が要求され、また、LED・LCD駆動用デバイスなどでは小チップ化が要求されている。今後これらの需要が増えるにつれ半導体チップの薄膜化・小チップ化のニーズはより一層高まるものと考えられる。
【0003】
これらの半導体チップは、半導体ウェハをバックグラインド工程やエッチング工程等において所定厚みに薄膜化した後、ダイシング工程を経て個々のチップに分割することにより得られる。このダイシング工程においては、ダイシングブレードにより切断されるブレードダイシング方式が用いられてきた。ブレードダイシング方式では、切断時にブレードによる切削抵抗が半導体ウェハに直接かかる。そのため、この切削抵抗によって半導体チップに微小な欠け(チッピング)が発生することがある。チッピング発生は半導体チップの外観を損なうだけでなく、場合によっては抗折強度不足によるピックアップ時のチップ破損を招き、チップ上の回路パターンまで破損する可能性がある。また、ブレードによる物理的なダイシング工程では、チップ同士の間隔であるカーフ(スクライブライン、ストリートともいう)の幅を厚みのあるブレード幅よりも狭小化することができない。この結果、一枚のウェハから取ることができるチップの数(収率)は少なくなる。さらにウェハの加工時間が長いことも問題であった。
【0004】
ブレードダイシング方式以外にもダイシング工程には様々な方式が利用されている。例えば、ウェハを薄膜化した後にダイシングを行う難しさに鑑みて、先に所定の厚み分だけウェハに溝を形成しておき、その後に研削加工を行って薄膜化とチップへの個片化を同時に行うDBG(先ダイシング)方式がある。この方式によれば、カーフ幅はブレードダイシング工程と同様だが、チップの抗折強度がアップしチップの破損を抑えることができるというメリットがある。
【0005】
また、ダイシングをレーザーで行うレーザーダイシング方式がある。レーザーダイシング方式によればカーフ幅を狭くでき、またドライプロセスとなるメリットもある。しかし、レーザーによる切断時の昇華物でウェハ表面が汚れるという不都合があり、所定の液状保護材でウェハ表面を保護する前処理を要する場合がある。また、ドライプロセスといっても完全なドライプロセスを実現するには至っていない。さらに、レーザーダイシング方式はブレードダイシング方式よりも処理速度を高速化できる。しかし、1ラインずつ加工することには変わりはなく、極小チップの製造にはそれなりに時間がかかる。
【0006】
また、ダイシングを水圧で行うウオータージェット方式などのウェットプロセスを用いる方式もある。この方式では、MEMSデバイスやCMOSセンサーなど表面汚染を高度に抑えることが必要な材料において問題が起きる可能性がある。またカーフ幅の狭小化には制約があり、得られるチップの収率も低いものとなる。
【0007】
また、ウェハの厚み方向にレーザーで改質層を形成し、エキスパンドして分断し個片化するステルスダイシング方式も知られている。この方式は、カーフ幅をゼロにでき、ドライで加工できるというメリットがある。しかしながら、改質層形成時の熱履歴によりチップ抗折強度が低下する傾向があり、また、エキスパンドして分断する際にシリコン屑が発生する場合がある。さらに、隣接チップとのぶつかりが抗折強度不足を引き起こす可能性がある。
【0008】
さらにステルスダイシングと先ダイシングを併せた方式として、薄膜化の前に先に所定の厚み分だけ改質層を形成しておき、その後に裏面から研削加工を行って薄膜化とチップへの個片化を同時に行う狭スクライブ幅対応チップ個片化方式がある。この技術は、上記プロセスのデメリットを改善したものであり、ウェハ裏面研削加工中に応力でシリコンの改質層が劈開し個片化するため、カーフ幅がゼロでありチップ収率は高く、抗折強度もアップするというメリットがある。しかし、裏面研削加工中に個片化されるため、チップ端面が隣接チップとぶつかってチップコーナーが欠ける現象が見られる場合がある。
【0009】
また、プラズマダイシング方式によるダイシング技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。プラズマダイシング方式は、マスクで覆っていない箇所をプラズマで選択的にエッチングすることで、半導体ウェハを分割する方法である。このダイシング方法を用いると、選択的にチップの分断が可能であり、スクライブラインが曲がっていても問題なく分断できる。また、エッチングレートが非常に高いことから近年ではチップの分断に最適なプロセスの1つとされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-19385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
プラズマダイシング方式では、六フッ化硫黄(SF)や四フッ化炭素(CF)など、ウェハとの反応性が非常に高いフッ素系のガスをプラズマ発生用ガスとして用いている。そのためエッチングレートが高く、エッチングしない面に対してはマスクによる保護が必須となる。
【0012】
このマスクは、半導体ウェハのパターン面側に形成され、プラズマ処理することでチップを個片化した後、Oプラズマによるアッシング工程によって除去される。しかし、形成されたマスクが必ずしも均一な層でないため、マスクを完全に除去しようとすると過度なアッシングによりデバイスに対しダメージを与えてしまうことが懸念された。
【0013】
本発明は、ここのような問題に鑑みてなされたもので、プラズマダイシングを用いて半導体ウェハを個片化する際に、マスクのアッシング時のデバイスへのダメージを抑えることが可能な半導体チップ製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達するために本発明は、半導体チップの製造方法であって、半導体ウェハのパターン面側に、少なくとも基材フィルムと粘着剤層を有する表面保護テープが貼合された状態で前記半導体ウェハの裏面を研削する工程aと、前記表面保護テープが貼合された状態で研削した前記半導体ウェハの裏面に、曲げ弾性率が200MPa以上のマスクテープを貼り付けることによりマスク材層を形成する工程bと、前記半導体ウェハのストリートに相当する部分をレーザーにより切断し、前記半導体ウェハの前記マスク材層側からストリートを開口する工程cと、SFプラズマにより、前記半導体ウェハを前記ストリートで分断して半導体チップに個片化するプラズマダイシング工程dと、Oプラズマにより前記マスク材層を除去するアッシング工程eと、アッシングした前記半導体ウェハの裏面にチップ固定テープを貼合して、リングフレームで支持固定する工程fと、前記表面保護テープを剥離する工程gと、を具備し、前記基材フィルムにおける前記粘着剤層が形成されていない側の表面抵抗率が1012Ω/sqよりも大きく、1013Ω/sq未満であることを特徴とする半導体チップ製造方法である。
また、前記工程gにおいて、前記表面保護テープに紫外線を照射して、前記粘着剤層を硬化させて接着力を弱め、前記半導体チップと前記チップ固定テープとの接着力、および前記基材フィルムと前記粘着剤層との接着力を、前記粘着剤層と前記半導体チップとの接着力よりも強くして、前記表面保護テープを剥離してもよい。
また、前記粘着剤層には、前記基材フィルム側に感圧型粘着剤からなるアンカー層が設けられていてもよい。
【0015】
前記粘着剤層は、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、前記(メタ)アクリル共重合体およびその架橋物の含有率が90%以上であることが望ましい。
【0016】
前記粘着剤層は、前記(メタ)アクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート基を有する硬化剤またはエポキシ基を有する硬化剤0.5~5質量部を用いて少なくとも一部を架橋させていることが望ましい。
【0017】
前記基材フィルムの曲げ弾性率が5.0×10Pa以上1.0×1010Pa以下であることが望ましい。
【0018】
前記基材フィルムを形成している樹脂の融点が90℃以上であることが望ましい。
【0019】
前記基材フィルムにおける前記粘着剤層が形成されていない側の表面粗さRaが0.1μm以上2.0μm以下であることが望ましい。
【0021】
前記粘着剤層の貯蔵弾性率が5.0×10Pa以上2.0×10Pa以下であることが望ましい。
【0022】
第1の発明によれば、プラズマ照射によってウェハをチップへと分割することができるため、不良チップの発生を抑えることができる。この際、パターン面側に表面保護テープを貼り付けた後、半導体ウェハの裏面側にマスク材層を形成して、半導体ウェハの裏面側から、半導体ウェハを個片化する。このため、マスク材層を除去するアッシング工程によって、パターン面がダメージを受けることがない。すなわち、マスクのアッシング時のデバイスへのダメージを抑えることが可能である。
【0023】
また、粘着剤層が、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体を主成分とする場合であって、(メタ)アクリル共重合体およびその架橋物の含有率が90%以上であれば、耐薬品性や耐酸化性が十分であるため、粘着剤層の溶解や膨潤を抑制することができる。
【0024】
また、粘着剤層が、(メタ)アクリル共重合体に対して、所定量のイソシアネート基を有する硬化剤またはエポキシ基を有する硬化剤によって架橋されていることで、ウェハ表面のパターン面に対する追従性を確保することができ、ウェハの裏面の研削時等におけるウェハ割れを抑制することができる。
【0025】
また、基材フィルムの曲げ弾性率が5.0×10Pa以上1.0×1010Pa以下であれば、ウェハの反りなどを抑制することができ、取扱い性にも優れる。
【0026】
また、基材フィルムを形成している樹脂の融点が90℃以上であれば、ウェハの裏面側からプラズマ照射した際に、表面保護テープが溶融することを抑制することができる。
【0027】
また、基材フィルムにおける粘着剤層が形成されていない側の表面粗さRaが0.1μm以上2.0μm以下であれば、より確実に静電チャックによってウェハを保持することができる。
【0028】
また、同様に、基材フィルムにおける粘着剤層が形成されていない側の表面抵抗率が1013Ω/sq未満であれば、より確実に静電チャックによってウェハを保持することができる。
【0029】
また、粘着剤層の貯蔵弾性率が5.0×10Pa以上2.0×10Pa以下であれば、製造工程におけるウェハの割れ等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、プラズマダイシングを用いて半導体ウェハを個片化する際に、マスクのアッシング時のデバイスへのダメージを抑えることが可能な半導体チップ製造方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】半導体ウェハ1への表面保護テープ3の貼合までの工程を説明する概略断面図であり、(a)は半導体ウェハ1を示し、(b)は表面保護テープ3を貼合する様子を示し、(c)は表面保護テープ3を貼合した半導体ウェハ1を示す。
図2】半導体ウェハ1の薄膜化と固定までの工程を説明する概略断面図であり、(a)は半導体ウェハ1の薄膜化処理を示し、(b)は半導体ウェハ1を静電チャック9に配置する様子を示し、(c)は半導体ウェハ1が静電チャック9に固定された状態を示す。
図3】マスク形成までの工程を説明する概略断面図であり、(a)はマスクテープ11を貼合した状態を示し、(b)はレーザーLでストリートに相当する部位のマスクテープ11を切除する工程を示す。
図4】プラズマダイシング工程を説明する概略断面図であり、(a)はプラズマダイシングを行う様子を示し、(b)はチップ7に個片化された状態を示す。
図5】アッシング工程を説明する概略断面図であり、(a)はアッシングを行う様子を示し、(b)はマスクテープ11が除去された状態を示す。
図6】チップ7をチップ固定テープ4に固定する工程を説明する概略断面図であり、(a)はチップ7をチップ固定テープ4に貼合する様子を示し、(b)はチップ7がチップ固定テープ4に固定された状態を示す図、(c)は、表面保護テープ3を剥がす様子を示す。
図7】チップ7をピックアップするまでの工程を説明する概略断面図であり、(a)は表面保護テープ3が除去された状態を示し、(b)はチップ7をピックアップする様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、本発明で規定されること以外は下記実施形態に限定されるものではない。また、各図面に示される形態は、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各部材のサイズ、厚み、ないしは相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
【0035】
なお、下記の実施形態に用いる装置及び材料等は、特に断りのない限り、従来から半導体ウェハの加工に用いられている通常の装置及び材料等を使用することができ、その使用条件も通常の使用方法の範囲内で目的に応じて適宜に設定、好適化することができる。また、各実施形態で共通する材質、構造、方法、効果などについては重複記載を省略する。
【0036】
本発明の製造方法を図1図7を参照して説明する。図1(a)に示すように、半導体ウェハ1は、その表面Sに半導体素子の回路などが形成されたパターン面2を有するシリコンウェハなどである。パターン面2は、半導体素子の回路などが形成された面であって、平面視においてストリート5を有する。まず、図1(b)に示すように、半導体ウェハ1のパターン面2側に、表面保護テープ3を貼合することで、図1(c)に示すように、パターン面2が表面保護テープ3で被覆された半導体ウェハ1が得られる。
【0037】
表面保護テープ3は、少なくとも基材フィルム3a上に粘着剤層3bを有するものである。なお、表面保護テープ3には、他の層が含まれてもよい。また、表面保護テープ3において、基材フィルム3a、粘着剤層3bは、それぞれ単層構造でも2層以上の複層構造でもよい。表面保護テープ3については詳細を後述する。
【0038】
次に、図2(a)に示すように、表面保護テープ3が貼合された状態で、半導体ウェハ1の裏面Bをウェハ研削装置12で研削し、半導体ウェハ1の厚みを薄くする。半導体ウェハ1の研削後、図2(b)に示すように、半導体ウェハ1の表面保護テープ3側(表面S側)を静電チャック9と対向させて、半導体ウェハ1を静電チャック9に固定する。すなわち、図2(c)に示すように、静電チャック9は、表面保護テープ3(表面S)と密着する。なお、半導体ウェハ1の表面保護テープ3側を固定可能であれば、静電チャック9以外の方法で半導体ウェハ1を固定してもよい。
【0039】
次に、図3(a)に示すように、表面保護テープ3が貼合された状態で、研削された半導体ウェハ1の裏面Bにマスク材層を形成する。マスク材層は、例えば、マスクテープ11の貼合や、スピンコータ等による樹脂の塗布によって形成される。なお、本実施形態では、マスクテープ11を貼り付けてマスク材層を形成する例について説明する。
【0040】
次に、図3(b)に示すように、マスクテープ11(裏面B)側から、パターン面2に格子状等に適宜形成された複数のストリート5に相当する部分にレーザーLを照射して、マスクテープ11を切断し、半導体ウェハ1のストリート5に相当する部位を開口する。マスクテープ11を切断するレーザーには、紫外線または赤外線のレーザー光を照射するレーザー照射装置を用いることができる。このレーザー照射装置は、半導体ウェハ1のストリート5に沿って移動可能にレーザー照射部が配設されており、マスクテープ11を除去するために適切に制御された出力のレーザーLを照射できる。なお、レーザーLは特に限定されないが、例えば、COレーザーやYAGレーザーなどを適用することができる。なかでもCOレーザーは数W~数十Wの大出力を得ることが可能であり、本発明に好適に利用できる。
【0041】
次に、図4(a)に示すように、マスクテープ11(裏面B)側から、SFプラズマ15を照射し、ストリート5に相当する部分で剥き出しになった半導体ウェハ1をエッチングする。SFプラズマ15の照射により、図4(b)に示すように、個々の半導体のチップ7に分割して個片化することができる(プラズマダイシング工程)。
【0042】
なお、プラズマダイシングを行うにはプラズマエッチング装置を用いることができる。プラズマエッチング装置は、半導体ウェハ1に対してドライエッチングを行い得る装置であって、真空チャンバ内に密閉処理空間をつくり、高周波側電極に半導体ウェハ1が載置され、その高周波側電極に対向して設けられたガス供給電極側からプラズマ発生用ガスが供給されるものである。高周波側電極に高周波電圧が印加されればガス供給電極と高周波側電極との間にプラズマが発生するため、このプラズマを利用する。発熱する高周波電極内には冷媒を循環させて、プラズマの熱による半導体ウェハ1の昇温を防止している。
【0043】
次いで、図5(a)に示すように、Oプラズマ19によってアッシングを行う(アッシング工程)。Oプラズマ19によるアッシングによって、図5(b)に示すように、裏面Bに残ったマスクテープ11を除去することができる。
【0044】
ここで、SFガスを用いた半導体ウェハのSiのエッチングプロセスはBOSCHプロセスとも呼ばれ、露出したSiと、SFをプラズマ化して生成したF原子とを反応させ、四フッ化ケイ素(SiF)として除去するものであり、リアクティブイオンエッチング(RIE)とも呼ばれる。一方、Oガスによる、マスク材層の除去は、半導体製造プロセス中ではプラズマクリーナーとしても用いられる方法でアッシング(灰化)とも呼ばれ、対有機物除去の手法の一つである。半導体デバイス表面に残った有機物残渣をクリーニングするために行われる。
【0045】
次に、図6(a)に示すように、アッシング後の表面保護テープ3が貼合された半導体ウェハ1を、静電チャック9から取り外し、裏面B側にチップ固定テープ4を貼合する。また、図6(b)に示すように、半導体ウェハ1(チップ7)をリングフレーム13に支持固定する。
【0046】
次いで、図6(c)に示すように、半導体ウェハ1(チップ7)から、表面保護テープ3を剥離する。表面保護テープ3の剥離には、例えば剥離テープなどが用いられる。この際、チップ7とチップ固定テープ4との接着力を、表面保護テープ3とチップ7との接着力よりも強くすることで、容易に表面保護テープ3を剥離することができる。なお、表面保護テープ3を剥離する前に、表面保護テープ3に紫外線を照射して、粘着剤層3bを硬化させて、接着力を弱めてもよい。
【0047】
図7(a)は、表面保護テープ3が除去されて、チップ固定テープ4及びリングフレーム13に固定されたチップ7が露出した状態を示す図である。この状態から、個片化されたチップ7をピン17により突き上げ、コレット18により吸着してピックアップする。以上により、半導体チップを製造することができる。なお、この後、ピックアップしたチップ7は、ダイボンディング工程に移行される。
【0048】
次に、本発明の製造方法で用いる各種テープについて説明する。
【0049】
(表面保護テープ3)
前述したように、表面保護テープ3は、基材フィルム3aに粘着剤層3bを設けた構成からなり、パターン面2に形成された半導体素子を保護する機能を有する。即ち、前述したウェハ薄膜化工程では、パターン面2で半導体ウェハ1を支持してウェハの裏面が研削されるために、この研削時の負荷に耐える必要がある。そのため、表面保護テープ3は単なるレジスト膜等とは異なり、パターン面に形成される素子を被覆するだけの厚みがあって、その押圧抵抗は低く、また研削時のダストや研削水などの浸入が起こらないように素子を密着できるだけの密着性が高いものである。
【0050】
(基材フィルム3a)
表面保護テープ3のうち基材フィルム3aはプラスチックやゴム等からなり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体、あるいはこれらの混合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、スチレン-エチレン-ブテン-もしくはペンテン系共重合体等の単体もしくは2種以上を混合させたもの、さらにこれらにこれら以外の樹脂や充填材、添加剤等が配合された樹脂組成物をその材質として挙げることができ、要求特性に応じて適宜に選ぶことができる。低密度ポリエチレンとエチレン-酢酸ビニル共重合体の積層体や、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートの積層体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートは好適な材質の一つである。
【0051】
これらの基材フィルム3aは、一般的な押出し法を用いて製造できる。基材フィルム3aを種々の樹脂を積層して得る場合には、共押出し法、ラミネート法などで製造される。この際、通常のラミネートフィルムの製法に於いて普通に行われている様に、樹脂と樹脂の間に接着層を設けても良い。この様な基材フィルム3aの厚さは、強度、伸度等の特性、放射線透過性の観点から20~200μmが好ましい。
【0052】
なお、基材フィルム3aの曲げ弾性率は、5.0×10Pa以上1.0×1010Pa以下であることが望ましい。基材フィルム3aの曲げ弾性率が5.0×10Pa未満であると半導体ウェハ1の反りの矯正力が無くなり、半導体ウェハ1の搬送エラーのおそれがある。一方、基材フィルム3aの曲げ弾性率が1.0×1010Paを超えると、表面保護テープ3の剥離の際に、剥離の力が半導体ウェハ1に加わってしまい、半導体ウェハ1の割れの恐れがある。
【0053】
また、基材フィルム3aを形成している樹脂の融点は90℃以上であることが望ましい。融点が90℃未満であるとプラズマダイシング時に、半導体ウェハ1に発生した熱により、基材フィルム3aの表面が軟化する可能性があるためである。
【0054】
また、基材フィルム3aにおける粘着剤層3bが形成されていない側の表面粗さRaは、0.1μm以上2.0μm以下であることが望ましい。表面粗さ0.1μmは、製造時に調整できる略限界の値である。また表面粗さ2.0μmを超えると、静電チャック9におけるチャックエラーが生じやすくなり、搬送エラーが発生するおそれがある。
【0055】
また、基材フィルム3aにおける粘着剤層3bが形成されていない側の表面抵抗率が1013Ω/sq未満であることが望ましい。表面抵抗率が1013Ω/sq以上だと、静電チャック9によって半導体ウェハ1を吸着しにくくなり、チャックエラーが発生しやすくなる。
【0056】
(粘着剤層3b)
粘着剤層3bは、パターン面2への貼着に際し、半導体素子等を傷つけるものではなく、また、その除去の際に半導体素子等の破損や表面への粘着剤残留を生じさせないものである。そのため、粘着剤層3bにはこうした性質を有する非硬化性の粘着剤や、好ましくは放射線、より好ましくは紫外線硬化により粘着剤が三次元網状化を呈し、粘着力が低下すると共に剥離した後の表面に粘着剤などの残留物が生じ難い、紫外線硬化型や電子線のような電離性放射線硬化型等の放射線重合型の粘着剤を用いることができる。なお、本明細書において「放射線」とは紫外線のような光線や電子線のような電離性放射線の双方を含む意味に用いる、本発明に用いる放射線は紫外線が好ましい。
【0057】
粘着剤層3bが放射線硬化型粘着剤で構成される場合、アクリル系粘着剤と放射線重合性化合物とを含有してなる粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体及び硬化剤を成分とするものである。(メタ)アクリル系共重合体は、例えば(メタ)アクリル酸エステルを重合体構成単位とする重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の(メタ)アクリル系重合体、或いは官能性単量体との共重合体、及びこれらの重合体の混合物等が挙げられる。これらの重合体の分子量としては質量平均分子量が50万~100万程度の高分子量のものが一般的に適用される。
【0058】
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と反応させて粘着力及び凝集力を調整するために用いられるものである。例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロール-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-(2-メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。硬化剤の添加量は、所望の粘着力に応じて調整すればよく、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~5.0質量部が適当である。本発明に用いる表面保護テープ3の粘着剤層3bにおいて、硬化剤は(メタ)アクリル系共重合体と反応した状態にある。
【0059】
なお、より好ましくは、粘着剤層3bは、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート基を有する硬化剤またはエポキシ基を有する硬化剤0.5~5質量部を用いて、少なくとも一部を架橋させていることが望ましい。硬化剤が0.5質量部未満であると、糊残りが発生しやすくなり、また硬化剤が5質量部を超えると追従性が悪化し、研削時のウェハの割れ等のおそれがある。
【0060】
上記放射線重合性化合物としては、放射線の照射によって三次元網状化しうる、分子内に光重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分量化合物が広く用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等のアクリレート系化合物を広く適用可能である。
【0061】
また、上記アクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いる事も出来る。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4-ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシ基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
【0062】
放射線硬化型粘着剤中のアクリル系粘着剤と放射線重合性化合物との配合比としては、アクリル系粘着剤100質量部に対して放射線重合性化合物を50~200質量部、好ましくは50~150質量部の範囲で配合されるのが望ましい。この配合比の範囲である場合、放射線照射後に粘着剤層の粘着力は大きく低下する。
【0063】
また、粘着剤層3bに用いる放射線硬化型粘着剤として、アクリル系粘着剤に放射線重合性化合物を配合する替わりに、アクリル系粘着剤自体を放射線重合性アクリル酸エステル共重合体とすることも可能である。
【0064】
放射線重合性アクリル酸エステル共重合体は、共重合体の分子中に、放射線、特に紫外線照射で重合反応することが可能な反応性の基を有する共重合体である。このような反応性の基としては、エチレン性不飽和基、すなわち、炭素-炭素二重結合を有する基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルロイルアミノ基などが挙げられる。このような反応性の基は、例えば、共重合ポリマーの側鎖に、ヒドロキシ基を有する共重合体に、ヒドロキシ基と反応する基、例えば、イソシアネート基などを有し、かつ紫外線照射で重合反応することが可能な上記の反応性の基を有する化合物(代表的には、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート)を反応させることによって得ることができる。
【0065】
上記反応性基の共重合体中への導入は、光重合性開始剤、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を併用することが出来る。これらのうち少なくとも1種類を粘着剤層に添加することにより、効率よく重合反応を進行させることができる。
【0066】
2-エチルヘキシルアクリレートとn-ブチルアクリレートとの共重合体から成るアクリル系粘着剤に対して、紫外線硬化性の炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物を含有し、光開始剤および光増感剤、その他従来公知の粘着付与剤、軟化剤、酸化防止剤等を配合してなる粘着剤は好ましい態様の一つである。上記粘着剤層3bとして、特開2014-192204号公報の段落番号0036~0055に記載されている形態を採用することも好ましい。
【0067】
なお、粘着剤層3bは、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、(メタ)アクリル共重合体およびその架橋物の含有率が90%以上であることが好ましい。含有率が90%未満の場合、耐薬品性や耐酸化性が不十分であるためアッシング時等において粘着剤層3bがダメージを受けるおそれがある。
【0068】
また、粘着剤層3bの貯蔵弾性率は5.0×10Pa以上2.0×10Pa以下であることが好ましい。貯蔵弾性率が5.0×10Pa未満であるとマスク材層としてマスクフィルムをウェハの裏面に貼合する際に粘着剤層3bの変形が大きくなりすぎてウェハ割れを起こすおそれがある。
【0069】
粘着剤層3bの厚さは、5~100μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。5μmよりも薄いとパターン面2に形成された素子等の保護が不十分となるおそれがあり、また、パターン面2の凹凸に対して密着不足である場合、SFガスの侵入によりデバイスに対してダメージが発生する。なお、デバイスの種類にもよるが、パターン面2の凹凸は概ね数μm~15μm程度であるため、5~30μmがより好ましい。
【0070】
粘着剤層3bには、上記材質でなる粘着剤に加え、アンカー層を基材フィルム3a側に含めて設けることができる。このアンカー層は、通常、(メタ)アクリル共重合体と硬化剤を必須成分とするアクリル系粘着剤からなり、感圧型粘着剤が使用される。
【0071】
(マスクテープ11)
マスクテープ11は、プラズマダイシング工程にさらされても耐えうるプラズマ耐性が必要である。また、図3(a)に示すように、マスクテープ11は、半導体ウェハ1のパターン面2とは逆側の平滑な裏面Bに貼り付けられる。このため、例えば、パターン面2のような凹凸面に貼り付ける場合と比較して、マスクテープ11の凹凸形状への追従性は不要である。このため、例えば、曲げ弾性率が200MPa以上のマスクテープ11も適用可能である。このようなマスクテープ11としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂を適用可能である。
【0072】
(チップ固定テープ4)
チップ固定テープ4は、半導体ウェハ1を保持し、またピックアップ工程においては良好なピックアップ性や場合によってはエキスパンド性等も要求されるものである。こうしたチップ固定テープ4には、上記表面保護テープ3と同様のテープを用いることができる。また一般的にダイシングテープと称される従来のプラズマダイシング方式で利用される公知のダイシングテープを用いることができる。また、ピックアップ後のダイボンディング工程への移行を容易にするために、粘着剤層3bと基材フィルム3aとの間にダイボンディング用接着剤を積層したダイシングダイボンディングテープを用いることもできる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の半導体チップの製造方法(半導体ウェハの処理方法)によれば、パターン面2を保護する表面保護テープ3を貼合した状態で、研削した裏面Bにマスク材層が形成され、裏面B側からレーザーLによるストリートの開口、SFプラズマ15によるプラズマダイシング、Oプラズマ19によるマスクアッシング工程が行われる。このため、従来のようにパターン面2側にマスク材層を形成し、Oプラズマによるアッシングを行う際の過度のアッシングによるデバイスへのダメージを抑制することができる。したがって、製造プロセスにおける高価なチップのロスを大幅に抑えることができる。
【0074】
特に、表面保護テープ3の基材フィルム3aが所定以上の剛性を有するため、半導体ウェハ1の反りの発生を抑制することができる。また、表面保護テープ3の基材フィルム3aの表面粗さや表面抵抗率を適切に設定することで、効率よく静電チャックを行うことができ、搬送エラーを抑制することができる。
【0075】
また、表面保護テープ3の粘着剤層3bの成分および架橋密度を適切に設定することで、アッシング工程等における酸素との反応や粘着剤の溶解や膨潤を抑制することができる。さらに、粘着剤層3bの貯蔵弾性率を適切に設定することで、マスクテープ11の貼り付け等の際における粘着剤層3bの変形量を所定以下にすることができ、半導体ウェハ1の割れを抑制することができる。
【0076】
また、マスク材層がマスクテープ11によって形成されるため、従来のプラズマダイシングプロセスで用いられていたレジストを設けるためのフォトリソ工程等が不要となる。また、剛性の高いマスクテープ11を使用することで、半導体ウェハ1の反り等を抑制することができる。
【実施例
【0077】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
1.製造方法による半導体チップの抗折強度評価
<実施例1>
メタクリル酸を1.0mol%、2-エチルヘキシルアクリレートを78mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレートを21mol%配合し、溶液中で重合することによりポリマー溶液を得た。このポリマー100質量部に対してオリゴマーとして光重合性炭素-炭素二重結合を有する2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名カレンズMOI)5質量部を反応させた。この反応性ポリマーに光重合開始剤イルガキュア184(チバジャパン社製)を5質量部、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン社製)を2.5質量部配合して酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物Iを得た。38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上に粘着剤組成物Iを乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、基材フィルムとして厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社、商品名ルミラーS105)に貼り合わせてラミネートすることで、実施例1に係る半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0079】
アクリル酸メチルを5mol%、ブチルアクリレートを47mol%、2-エチルヘキシルアクリレートを47mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレートを1mol%配合し、溶液中で重合することによりポリマー溶液を得た。このポリマー100質量部に対し、エポキシ硬化剤(三菱ガス化学製、商品名Tetrad-C)を2.0質量部配合して、マスク材組成物Iを得た。38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上にマスク材組成物Iを乾燥後の厚みが30μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、25μmのPETセパレータ(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名ピューレックス(登録商標)II SRD)に貼り合わせてラミネートすることで、マスク材フィルム(マスクテープ)を作製した。
【0080】
上記構成からなる表面保護テープを用いて次に示す工程の処理を行った。まず、直径8インチのシリコンウェハのパターン面側にウェハと略同径となるように表面保護テープを貼合し、バックグラインダー[DGP8760(株式会社ディスコ製)]にてウェハ厚が50μmになるまで研削した。次いで、研削した裏面に上記マスク材フィルムを貼合し、シリコンウェハのストリートに相当する部分に沿ってCOレーザーでマスク材層を除去し、ストリート部分を開口した。
【0081】
その後、プラズマ発生用ガスとしてSFガスを用い、0.5μm/分のエッチング速度でマスク材層の面側からプラズマ照射して、プラズマダイシングを行い、ウェハを切断して5mm角のチップに分割した。次いでプラズマ発生用ガスとしてOガスを用い、1.0μm/分のエッチング速度で、アッシングを行い、マスク材層を除去した。その後、アッシングしたウェハ裏面側にチップ固定テープを貼合し、リングフレームにて支持固定した。次いで表面保護テープを剥離し、チップ固定テープ側から紫外線を照射しチップ固定テープの粘着力を低減させ、ピックアップ工程にて、チップをピックアップし、各チップの抗折強度を測定した。
【0082】
<比較例1>
実施例1の構成からなる表面保護テープを用いて次に示す工程の処理を行った。まず、直径8インチのシリコンウェハのパターン面側にウェハと略同径となるように表面保護テープを貼合し、バックグラインダー(DGP8760(株式会社ディスコ製))にてウェハ厚が50μmになるまで研削した。次いでウェハ裏面側に半導体加工用テープを貼合し、リングフレームに支持固定し、ウェハ表面から表面保護テープを剥離した。その後デュアルダイサー(DFD6400(株式会社ディスコ製))にてダイシングブレードを用いてウェハを分断ラインに沿って切削し、5mm角のチップに分断し、ダイシングテープ側から紫外線を照射しダイシングテープの粘着力を低減させた、半導体加工用テープを拡張することによりチップ毎に分断し、ピックアップ工程にて、チップをピックアップし各チップの抗折強度を測定した。
【0083】
実施例1および比較例1の工程にて分断した5mm角のチップを、引張試験機に設けた圧縮試験用の平行板治具に戴置し、曲げ試験(JIS K7171)の圧子から、速度1.0mm/分で圧縮荷重をかけ、得られた圧縮荷重Fから下記式よりチップの抗折強度σを算出した。抗折強度の値は計5回測定し、その平均値とした。
σ=3FL/2bh
但し、F:圧縮荷重、L:支点間距離、b:チップ幅、h:チップ厚さ
結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の実施例1及び比較例1より、ピックアップ後のチップの抗折強度を測定したところ、比較例1に対して実施例1の方が、抗折強度が約3倍程度高い結果となった。このように、本発明の製造方法を用いることで、チップの抗折強度を上げることができるため、半導体チップへのダメージを最小限に抑えることが可能となり、チップ割れが発生しにくくなる。
【0086】
2.表面保護テープによる各種評価
<実施例2>
PEDOT-PSS(PEDOTとポリアニオンポリスチレンスルホン酸塩)の混合物からなる水分散液を、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社、商品名ルミラーS105)に乾燥後の厚みが1μmになるようにグラビア塗工にて塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させることで帯電防止コートを施したPET基材フィルムを作製した。
【0087】
38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上に粘着剤組成物Iを乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、基材フィルムとして上記帯電防止コートを施した厚み51μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り合わせてラミネートすることで、実施例2に係る半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0088】
<実施例3>
実施例1においてポリマー溶液として2-エチルヘキシルアクリレートを74mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレートを25mol%に変更し、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン社製)を0.5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0089】
<実施例4>
実施例1においてポリマー溶液として2-エチルヘキシルアクリレートを84mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレートを15mol%に変更し、架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD-X(三菱ガス株式会社製)に変更し、配合部数を5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0090】
<実施例5>
実施例1において基材フィルムを厚み100μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人株式会社製、テオネックス)に変更した以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0091】
<実施例6>
高密度ポリエチレン(HDPE、東ソー株式会社、ニポロンハード4010A)と酢酸ビニル含有量10%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂(東ソー株式会社、ウルトラセン540)を押出成形することにより、厚さ比率がHDPE:EVA=8:2である厚さ150μmの基材フィルムを作製した。38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上に粘着剤組成物Iを乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、上記基材フィルムに貼り合わせてラミネートすることで、実施例6に係る半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0092】
<実施例7>
高密度ポリエチレン(HDPE、東ソー株式会社、ニポロンハード4010A)と酢酸ビニル含有量6%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂(東ソー株式会社、ウルトラセン510)を押出成形することにより、厚さ比率がHDPE:EVA=8:2である厚さ150μmの基材フィルムを作製した。38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上に粘着剤組成物Iを乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、上記基材フィルムに貼り合わせてラミネートすることで、実施例7に係る半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0093】
<実施例8>
実施例1において、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン社製)の配合部数を10部に変更した以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0094】
<実施例9>
実施例1において、架橋剤としてエポキシ系硬化剤TETRAD-X(三菱ガス株式会社製)に変更し、配合部数を0.3部に変更した以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0095】
<実施例10>
実施例1においてポリマー溶液として2-エチルヘキシルアクリレートを69mol%、2-ヒドロキシエチルアクリレートを30mol%に変更し、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン社製)を0.1質量部に変更した以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0096】
<実施例11>
高密度ポリエチレン(HDPE、東ソー株式会社、ニポロンハード4010A)と酢酸ビニル含有量19%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂(東ソー株式会社、ウルトラセン636)を押出成形することにより、厚さ比率がHDPE:EVA=2:8である厚さ150μmの基材フィルムを作製した。38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上に粘着剤組成物Iを乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、上記基材フィルムに貼り合わせてラミネートすることで、実施例11に係る半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0097】
<実施例12>
酢酸ビニル含有量19%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂(東ソー株式会社、ウルトラセン636)を押出成形することにより、厚さ150μmの基材フィルムを作製した。38μmのPETセパレータ(東レフィルム加工株式会社製、商品名♯38セラピールWZ(E))上に粘着剤組成物Iを乾燥後の厚みが40μmになるように塗布し、120℃の乾燥炉にて乾燥させ、上記基材フィルムに貼り合わせてラミネートすることで、実施例12に係る半導体ウェハ表面保護テープを作製した。
【0098】
[表面抵抗率]
デジタル超高抵抗/微小電流計R8340/8340Aとレジスティビティ・チェンバR12702A(共に(株)アドバンテスト製)を用いて23℃、50%RHの環境下で500Vの電圧を印加し、印加後60秒後の電流値を読み取り、得られた各表面保護テープにおける基材フィルム表面の表面抵抗率を測定した。
【0099】
[粘着剤の含有率]
各半導体ウェハ表面保護テープをA5サイズに切断し、セパレータを剥離したものを試験片とした。この試験片の質量を測定した。次いで、トルエンに24時間浸漬した。ここで、トルエン表面に試験片が浮かないよう重量物もしくは容器の底に、基材フィルム側が接触する方向で固定し、粘着剤層である糊面をトルエン溶媒にさらされる状態にした。その後、試験片を取り出し、50℃で24時間乾燥した。一方、トルエン溶媒からもメッシュを通し回収した。試験片およびメッシュ上の残渣の質量を測定した。
【0100】
得られた質量から、基材フィルムおよびメッシュの質量を差し引いた。ここで、メッシュはそのものの質量を測定し、基材フィルムは基材フィルムのみを同面積に切り出して質量測定した。これらの値をもとに、下記式に従い、粘着剤(粘着剤層)の放射線硬化前の含有率を求めた。

含有率(%)=
{(トルエン浸漬後の試験片とメッシュの合計質量)-(試験片の基材フィルムの質量+メッシュの質量)}/(トルエン浸漬前の試験片の質量-試験片の基材フィルムの質量)×100
【0101】
[貯蔵弾性率]
各粘着剤層を粘弾性装置(レオメトリックス製、ARES)により、貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、0℃から測定を開始し昇温速度5℃/分、周波数1Hzで、25℃に達した時点での値とした。試験片は、粘着剤層を積層して、厚さ約1mm、直径8mmの円筒形にしたものを用いた。
【0102】
[耐薬品性]
8インチの半導体ウェハに、実施例で得られた半導体ウェハ表面保護用粘着テープを貼り合せ、リングフレームに固定した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)中に1時間浸漬した。その後20rpmで回転させスピン乾燥を施した後に粘着剤層を観察した。粘着剤の溶解または膨潤が見られなかったもの「○」とし、粘着剤の膨潤または溶解が見られたものを「×」とした。
【0103】
[ウェハの反り]
厚さ725μmの8inchウェハに、貼合機として日東精機株式会社製のDR8500III(商品名)を用いて、各実施例の半導体ウェハ表面保護テープを貼合し、グラインダーとして株式会社ディスコ製のDGP8760(商品名)を用いて、ウェハ厚さ50μmまで研削した。各半導体ウェハ表面保護用粘着テープにつきウェハ20枚を研削し、反り量(ウェハを平板の上に置いたときの、平板表面から反ったウェハの最も高い点の下面までの高さ)を測定した。
反り量の平均値が10mm未満のものを「○」とし、反り量の平均値が10mm以上20mm未満であったものを「△」とし、反り量の平均値が20mm以上であったものを「×」とした。
【0104】
[耐熱性試験]
厚さ725μmの8inchウェハに、貼合機として日東精機株式会社製のDR8500III(商品名)を用いて、各実施例の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを貼合した。その後、90℃に加熱したホットプレート上にテープ面を下向きにして3分間放置した後、テープ表面を目視にて観察を行った。
テープ表面(基材フィルム背面)が溶けなかったものを「○」とし、テープ表面の軟化がみられたものを「×」とした。
【0105】
[静電チャック]
厚さ725μmの8inchウェハに、貼合機として日東精機株式会社製のDR8500III(商品名)を用いて、各実施例の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを貼合し、グラインダーとして株式会社ディスコ製のDGP8760(商品名)を用いて、ウェハ厚さ150μmまで研削した。各表面保護テープにつきウェハ20枚を研削し、これらウェハを静電チャック装置に上記保護面側を内側にして載置・固定し、このときのチャックエラー発生有無を確認した。
チャックエラーがなかったものを「○」とし、チャックエラーが1回以上発生したものを「×」とした。
【0106】
[ウェハ割れ]
厚さ725μmの8inchウェハに、貼合機として日東精機株式会社製のDR8500III(商品名)を用いて、各実施例の半導体ウェハ表面保護用粘着テープを貼合し、グラインダーとして株式会社ディスコ製のDGP8760(商品名)を用いて、ウェハ厚さ50μmまで研削した。各表面保護テープにつきウェハ20枚を研削し、研削後のウェハの状態を確認した。また研削した裏面に実施例1で作製したマスク材フィルムを貼合した際のウェハの状態も確認し、研削からマスク材フィルム貼合までの工程においてウェハの割れを目視にて観察した。
ウェハに割れがなかったものを「○」とし、ウェハ割れが1回以上発生したものを「×」とした。
【0107】
各結果を表2、表3に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
詳細は割愛するが、実施例2~12は、いずれも、実施例1と同様にチップの抗折強度が高く、半導体チップへのダメージを最小限に抑えることが可能となった。また、上記表2および表3で示すように、実施例2~7は、粘着剤層が、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体を主成分とし、(メタ)アクリル共重合体およびその架橋物の含有率が90%以上であり、かつ、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート基を有する硬化剤またはエポキシ基を有する硬化剤0.5~5質量部を用いて少なくとも一部が架橋されているため、表面保護テープは耐薬品性および実施例1で作製したマスク材フィルムを貼合する際のウェハ割れを抑制することができた。
【0111】
また、表面保護テープを構成する基材フィルムの曲げ弾性率が5.0×10Pa~1.0×1010Pa以下の範囲であり、基材フィルムを形成している樹脂の融点が90℃以上であることからウェハの反りを抑制できるためハンドリング性に優れ、かつプラズマダイシング時の熱によって基材フィルムが軟化することを防ぐことができた。
【0112】
特に、実施例2は、帯電防止コートを施した基材フィルムを用いた表面保護テープであるため、静電チャック方式でのチャックエラーをより確実に抑制することができた。
【0113】
これに対して、実施例8では粘着剤層における硬化剤の質量部数が5部を超えるようにしたことでウェハ表面のパターン面に対する追従性が悪化し、ウェハ研削時にウェハ割れが発生する結果となった。
【0114】
逆に、実施例9および10では、粘着剤層における硬化剤の質量部数を0.5部未満にしたことでマスク材フィルムを貼合した際の粘着剤の変形量が大きくなりすぎてウェハ割れが発生した。特に実施例10においては粘着剤層における(メタ)アクリル共重合体およびその架橋物の含有率が90%未満であるため、耐薬品性が低下したことで粘着剤の溶解または膨潤が見られた。
【0115】
また実施例11および12では表面保護テープを構成する基材フィルムの曲げ弾性率が5.0×10Pa~1.0×1010Paの範囲外であることからウェハの反りのためにハンドリング性が悪化し、搬送エラーが発生した。また基材フィルムを形成している樹脂の融点が90℃未満であることから耐熱性試験を実施した際に基材フィルム表面が軟化する結果となった。
【0116】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0117】
1………半導体ウェハ
2………パターン面
3………表面保護テープ
3a………基材フィルム
3b………粘着剤層
4………チップ固定テープ
5………ストリート
7………チップ
9………静電チャック
11………マスクテープ
12………ウェハ研削装置
13………リングフレーム
15………SFプラズマ
17………ピン
18………コレット
19………Oプラズマ
S………表面
B………裏面
L………レーザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7