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特許7042675高温超電導ケーブルの終端容器及び高温超電導ケーブルの終端構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】高温超電導ケーブルの終端容器及び高温超電導ケーブルの終端構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 39/04 20060101AFI20220318BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220318BHJP
   H02G 15/34 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H01L39/04
H01B13/00 561Z
H02G15/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018066546
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179781
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高木 智洋
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-67167(JP,A)
【文献】特開2016-226143(JP,A)
【文献】国際公開第2012/102340(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0211586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/04
H01B 13/00
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電電流が流れる超電導導体層を有し液体冷媒の流通により冷却される高温超電導ケーブルの端部と容器外部に延びる送電電流リードとを接続する高温超電導ケーブルの終端容器であって、
前記終端容器と前記高温超電導ケーブルとのケーブル接続部と、前記高温超電導ケーブルと前記送電電流リードとのリード接続部との間に、ガス化した前記液体冷媒の気泡を貯蔵するガス貯蔵部と、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部とが設けられていることを特徴とする高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項2】
前記高温超電導ケーブルは、前記超電導導体層の外側にシールド層を備えており、前記ケーブル接続部と前記リード接続部との間で前記シールド層がシールド電流用電流リードと接続されており、
前記ガス貯蔵部が、容器への前記シールド電流用電流リードの挿入部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項3】
前記ガス貯蔵部に、排気弁が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項4】
前記ガス貯蔵部に、前記液体冷媒の液面高さを測定可能なセンサと、前記液面高さが所定の高さを超えた時点で前記排気弁を開く弁開放手段を備えていることを特徴とする請求項3に記載の高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項5】
前記狭窄部の高さ方向の空隙が、前記高温超電導ケーブルのケーブルコアの直径の2倍よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項6】
前記狭窄部の断面形状が、水平方向に長い長円形状又は長方形状であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項7】
前記狭窄部に接続フランジを有し、前記接続フランジの部分で分離可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルの終端容器。
【請求項8】
送電電流が流れる超電導導体層を有し液体冷媒の流通により冷却される高温超電導ケーブルの端部と容器外部に延びる送電電流リードとを接続するリード接続部を備えた高温超電導ケーブルの終端容器を有する高温超電導ケーブルの終端構造であって、
前記リード接続部を基点として、前記終端容器と前記高温超電導ケーブルとを接続するケーブル接続部よりも遠い位置に、ガス化した前記液体冷媒の気泡を貯蔵するガス貯蔵部を備え、前記ケーブル接続部の少なくとも上側部分に内側に向けて絞られた狭窄部が設けられていることを特徴とする高温超電導ケーブルの終端構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超電導ケーブルの終端容器及び高温超電導ケーブルの終端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の送電が可能な超電導ケーブル、特に超電導導体として高温超電導線材を用いた高温超電導ケーブルの開発が進められている。
高温超電導ケーブルは、後述する図1に示すように、複数条の高温超電導線材51を銅フォーマ4に緩い螺旋状に巻回させるようにして1層又は複数層の超電導導体層5が構成されており、それを電気絶縁層6で分厚く被覆するようにしてケーブルコア2が形成される。そして、超電導導体層5が液体窒素等の液体冷媒の流通によって冷却されて超電導状態が維持されている。
また、超電導導体層5を電流が流れることによって形成される磁場の外部への漏れを遮断する等の目的で、電気絶縁層6の外側に高温超電導線材や銅編組等で形成されたシールド層7が配設されている場合がある(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、高温超電導ケーブルの終端部には、超電導導体層5と実系統側とを接続するための高温超電導ケーブルの終端容器が設けられる。例えば図7(A)に示すように、終端容器100は略円筒状に形成されることが多い。
そして、図7(B)に示すように、終端容器100内には高温超電導ケーブル1のケーブルコア2の端部が引き込まれており、ケーブルコア2の超電導導体層5と送電電流リード101とが接続されるように構成される。
また、上記のように高温超電導ケーブル1の超電導導体層5を被覆する電気絶縁層6の外側にシールド層7が配置されている場合には、シールド層7とシールド電流用電流リード102とが接続されてシールド層7が接地されるように構成される場合もある(例えば特許文献3参照)。
【0004】
なお、図7(B)に示すように、高温超電導ケーブル1が終端容器100に接続される部分では、高温超電導ケーブル1の断熱内管10と終端容器100の断熱内槽103とが図示しないベローズ等を介して接続されており、高温超電導ケーブル1のケーブルコア2と断熱内管10との間に形成されている液体冷媒9の外側流路Bと終端容器100の断熱内槽103の内部空間とが連通されている。
そのため、高温超電導ケーブル1の外側流路B内の液体冷媒9と終端容器100内の液体冷媒9とが、終端容器100と高温超電導ケーブル1とのケーブル接続部αを経由して流通するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3632743号公報
【文献】特許第3691692号公報
【文献】国際公開第2012/102340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、送電ケーブルで送電する場合、変電所等の送電先で短絡が生じると、抵抗負荷がなくなるため送電ケーブルに非常に大きな電流が流れる場合がある。その際、送電ケーブルが高温超電導ケーブル1であれば、短絡発生時に超電導導体層5に大電流が流れると、超電導導体層5の合計臨界電流を超える。
しかし、超電導導体層5のすぐ内側には銅フォーマ4があるため、銅フォーマ4がバイパスになり超電導導体層5から溢れた電流が銅フォーマ4を流れる。そして、銅フォーマ4を電流が流れるためジュール熱が発生するが、銅フォーマ4は断面積を比較的大きくとることができ熱容量が大きくとることができるため、銅フォーマ4と超電導導体層5の温度上昇を抑制することができ、大きな問題にはならない。
【0007】
一方、高温超電導ケーブル1では、短絡発生時に超電導導体層5に大電流が流れると、この大電流とは逆位相の交流電流がシールド層7に流れる。そして、その振幅は、最大で超電導導体層5に流れる短絡電流と同じとなり得る。
前述したように、シールド層7が高温超電導線材や銅編組等で形成されていれば、この逆位相の大電流がシールド層7を構成する高温超電導線材に流れると高温超電導線材の臨界電流を超えるため、電流が高温超電導線材から溢れて銅編組を流れる。
しかし、高温超電導ケーブル1が重くならないようにしてケーブルをできるだけコンパクトに製造するために、銅編組は薄く形成される場合が多い。そのため、銅編組の断面積を上記の銅フォーマ4ほど大きくとることができず、銅編組の熱容量を大きくすることができない。
【0008】
そのため、そのような銅編組に高温超電導線材から溢れた電流が流れると、発生したジュール熱で銅編組等の温度が比較的大きく上昇するため、銅編組に接している液体冷媒9(すなわち高温超電導ケーブル1のケーブルコア2の外側の外側流路B(図7(B)や後述する図1参照)の液体冷媒9)がガス化する場合がある。
そして、このようにして発生した液体冷媒9のガス化した気泡が、高温超電導ケーブル1の外側流路Bからケーブル接続部αの部分を経由して終端容器100内に流れ込んでくる場合がある(図7(B)のケーブル接続部α部分の矢印参照)。また、高温超電導ケーブル1の外側流路Bでの液体冷媒9の急激なガス化によって外側流路Bの圧力が上がり、ガスの気泡が終端容器100内に液体冷媒9とともに噴出するように流入する場合もあり得る。
【0009】
終端容器100の奥側、すなわち送電電流リード101と高温超電導ケーブル1のケーブルコア2とが接続されるリード接続部βでは、ケーブルコア2の電気絶縁層6が剥ぎ取られて超電導導体層5が剥き出しにされており、それと送電電流リード101が接続されている。また、終端容器100自体は通常接地されており、高電圧が印加されている超電導導体層5と終端容器100との間には電位の急勾配が形成されている。
そして、そこに上記のように液体冷媒9のガス化した気泡が流れてくると、リード接続部β近傍での耐電圧性能が低下して放電が生じる可能性がある。そして、大規模な放電が生じると、終端容器100や送電電流リード101等に深刻な損傷をもたらしてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、高温超電導ケーブルでガス化した液体冷媒の気泡が容器内に流入しても放電が発生することを確実に防止することが可能な高温超電導ケーブルの終端容器及び高温超電導ケーブルの終端構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
送電電流が流れる超電導導体層を有し液体冷媒の流通により冷却される高温超電導ケーブルの端部と容器外部に延びる送電電流リードとを接続する高温超電導ケーブルの終端容器であって、
前記終端容器と前記高温超電導ケーブルとのケーブル接続部と、前記高温超電導ケーブルと前記送電電流リードとのリード接続部との間に、ガス化した前記液体冷媒の気泡を貯蔵するガス貯蔵部と、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部とが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高温超電導ケーブルの終端容器において、
前記高温超電導ケーブルは、前記超電導導体層の外側にシールド層を備えており、前記ケーブル接続部と前記リード接続部との間で前記シールド層がシールド電流用電流リードと接続されており、
前記ガス貯蔵部が、容器への前記シールド電流用電流リードの挿入部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の高温超電導ケーブルの終端容器において、前記ガス貯蔵部に、排気弁が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の高温超電導ケーブルの終端容器において、前記ガス貯蔵部に、前記液体冷媒の液面高さを測定可能なセンサと、前記液面高さが所定の高さを超えた時点で前記排気弁を開く弁開放手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルの終端容器において、前記狭窄部の高さ方向の空隙が、前記高温超電導ケーブルのケーブルコアの直径の2倍よりも小さいことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルの終端容器において、前記狭窄部の断面形状が、水平方向に長い長円形状又は長方形状であることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルの終端容器において、前記狭窄部に接続フランジを有し、前記接続フランジの部分で分離可能とされていることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、
送電電流が流れる超電導導体層を有し液体冷媒の流通により冷却される高温超電導ケーブルの端部と容器外部に延びる送電電流リードとを接続するリード接続部を備えた高温超電導ケーブルの終端容器を有する高温超電導ケーブルの終端構造であって、
前記リード接続部を基点として、前記終端容器と前記高温超電導ケーブルとを接続するケーブル接続部よりも遠い位置に、ガス化した前記液体冷媒の気泡を貯蔵するガス貯蔵部を備え、前記ケーブル接続部の少なくとも上側部分に内側に向けて絞られた狭窄部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケーブル接続部とリード接続部との間や、リード接続部を基点としてケーブル接続部よりも遠い位置に、ガス貯蔵部と少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部を設けたため、高温超電導ケーブルで液体冷媒がガス化して気泡が発生し、その気泡が終端容器内に流入しても、それらの気泡は、ガス貯蔵部に捕集されて貯蔵される。また、仮に気泡がガス貯蔵部に捕集されなかったとしても、上側部分が絞られた狭窄部が障壁になり堰き止められる。
そのため、高温超電導ケーブルでガス化した液体冷媒の気泡が終端容器内に流入しても、気泡が終端容器のリード接続部近傍に流れ込む事態が的確に防止される。そのため、リード接続部近傍での耐電圧性能が維持され、リード接続部で放電が発生することを確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】高温超電導ケーブルの構成例を表す斜視図である。
図2】本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端容器の断面図である。
図3図2の終端容器の外観を表す斜視図である。
図4】ケーブル接続部を基点としてリード接続部よりも遠い位置に捕集容器を配置した高温超電導ケーブルの終端構造の構成を表す断面図である。
図5】センサと弁開放手段とを表す図である。
図6】ケーブルコアを狭窄部の部分で水平方向に湾曲させた状態を表す平面図である。
図7】(A)高温超電導ケーブルの終端容器の構成例を表す斜視図であり、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る高温超電導ケーブルの終端容器及び高温超電導ケーブルの終端構造について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の各実施形態や図示例に限定するものではない。
【0022】
[高温超電導ケーブルの構成例]
本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端容器等について説明する前に、高温超電導ケーブルの構成例について説明する。図1は、高温超電導ケーブルの構成例を表す斜視図である。
高温超電導ケーブル1は、主にケーブルコア2と断熱管3とで構成されている。そして、ケーブルコア2は、銅フォーマ4と、超電導導体層5と、電気絶縁層6と、シールド層7と、保護層8とを備えて構成されている。
【0023】
銅フォーマ4は、ケーブルコア2の中心部分に設けられており、本実施形態では、複数本の銅の丸線41が束ねられて円筒状に形成されている。銅フォーマ4は、ケーブルコア2の形状を維持する機能を有するとともに、前述したように超電導導体層5に過大な電流が流れた場合にはバイパス経路として機能するようになっている。
また、円筒状の銅フォーマ4の中空部4aは、液体冷媒(例えば液体窒素)が流れる内側流路Aとされている。そして、液体冷媒は、銅フォーマ4を冷却するとともに、中空部4aから銅の丸線41の隙間を通り、後述する各高温超電導線材51の間を浸透してそれらを冷却するようになっている。
【0024】
銅フォーマ4の外周には、超電導導体層5が設けられており、超電導導体層5が高温超電導ケーブル1における通常時の送電電流の経路になっている。
本実施形態では、超電導導体層5は、複数条の高温超電導線材51を並べるようにして構成されており、各高温超電導線材51を銅フォーマ4に緩い螺旋状に巻回させるようにして構成されている。なお、図1では、超電導導体層5が1層形成されている場合を示したが、超電導導体層5は複数層形成されていてもよい。
高温超電導線材51は、テープ状の線材であり、高温超電導線材51の超電導層(図示省略)を構成する超電導体としては、例えば、液体窒素温度(77K)以上の臨界温度を有するイットリウム系超電導体(REBCO線材。化学式はYBa2Cu37-y(yは酸素不定比量)で表される。)を用いることができる。
【0025】
超電導導体層5の外周には、電気絶縁層6が設けられている。
本実施形態では、電気絶縁層6は、絶縁紙にポリプロピレンフィルムをラミネートした半合成紙やクラフト紙等の絶縁性紙類等で形成されており、それらが超電導導体層5の上に分厚く巻回されて構成されている。なお、電気絶縁層6は、例えば樹脂等で形成されていてもよい。
【0026】
電気絶縁層6の外周には、シールド層7が設けられており、シールド層7は接地されている。また、本実施形態では、シールド層7は、主に超電導シールド層71と銅編組シールド層72とで構成されている。
超電導シールド層71は、超電導導体層5と同様に複数条の高温超電導線材を電気絶縁層6に螺旋状に巻回させるようにして構成されている。そして、超電導導体層5を電流が流れることによって形成される磁場の外部への漏れがこの超電導シールド層71によって完全に遮断されるようになっている。
また、銅編組シールド層72は、例えば銅編組線で構成されており、ケーブルコア2を外部からの衝撃から守るように機能する。
【0027】
シールド層7の外周には、不織布等で形成された保護層8が設けられており、ケーブルコア2を保護するようになっている。
そして、以上のように構成されたケーブルコア2の外側(すなわちケーブルコア2の保護層8と後述する断熱管3の断熱内管10との間)に、液体冷媒が流れる外側流路Bが設けられている。そして、この液体冷媒は、前述したフォーマ4の中空部4aを流通する液体冷媒と協働してケーブルコア2全体を冷却するようになっている。
【0028】
一方、断熱管3は、ケーブルコア2を収容するとともに上記のように液体冷媒が充填されて外側流路Bを形成する断熱内管10と、断熱内管10の外周を覆うように配設された断熱外管11とを備えており、断熱内管10と断熱外管11の間が真空状態とされた二重管構造になっている。
断熱内管10と断熱外管11は、例えばステンレス製のコルゲート管(波付け管)で構成される。そして、断熱内管10と断熱外管11の間には、例えばアルミを蒸着したポリエステルフィルムの積層体で構成された多層断熱層12が介在されている。
そして、断熱外管11の外周が、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の外部被覆(防食層)13で被覆されている。
【0029】
[高温超電導ケーブルの終端容器]
次に、本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端容器について説明する。
図2は、本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端容器20の断面図であり、図3は、図2の終端容器20の外観を表す斜視図である。
なお、本実施形態に係る終端容器20には、正常稼働時に液体冷媒9の流れの上流側となる終端容器と、下流側となる終端容器のいずれも含まれる。また、実系統側から高温超電導ケーブル1への電力の導入側の終端容器と、高温超電導ケーブル1からの電力の取り出し側の終端容器のいずれも含まれる。
また、図2等において、終端容器20の図中左側を「手前側」、図中右側を「奥側」という場合がある。
【0030】
本実施形態では、終端容器20は、ケーブル接続部αを含む略円筒形状の容器21(以下、第1容器21という。)と、リード接続部βを含む略円筒形状の容器22(以下、第2容器22という。)が狭窄部23で接続されるように構成されている。
そして、本実施形態では、ケーブル接続部αとリード接続部βとの間に、ガス化した液体冷媒9の気泡を貯蔵するガス貯蔵部γと、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部23とが設けられている。
以下、終端容器20の構成等について詳しく説明する。
【0031】
本実施形態では、終端容器20は、断熱内槽25と断熱外槽26の二重壁面構造を有しており、終端容器20の断熱内槽25と断熱外槽26は接地されている。
終端容器20の第1容器21のケーブル接続部αでは、断熱内槽25と断熱外槽26にそれぞれ円孔が形成されている。そして、断熱内槽25の円孔の周囲の縁部には、高温超電導ケーブル1(以下、ケーブル1と略す。)の断熱内管10が接続されており、断熱外槽26の円孔の周囲の縁部には、ケーブル1の断熱外管11が接続されている。
なお、図示や説明を省略するが、本実施形態では、ケーブル接続部α(終端容器20とケーブル1との接続部)等でベローズを介して部材同士を接続するなど、適宜の構造が設けられている。
【0032】
また、本実施形態では、終端容器20の断熱内槽25と断熱外槽26の間の空間と、ケーブル1の断熱内管10と断熱外管11の間の空間とが連通されており、ケーブル1の断熱内管10と断熱外管11の間の空間と同様に、終端容器20の断熱内槽25と断熱外槽26の間の空間も真空引きされている。
本実施形態では、このようにして終端容器20の断熱内槽25の内側の断熱が図られている。なお、終端容器20の断熱内槽25と断熱外槽26の間の空間と、ケーブル1の断熱内管10と断熱外管11の間の空間とが連通されないように構成される場合もある。また、終端容器20においても、ケーブル1と同様に、断熱内槽25と断熱外槽26の間に多層断熱層を介在させる等の構造を設けてもよい。
【0033】
また、上記のように終端容器20の断熱内槽25の円孔の周囲の縁部にケーブル1の断熱内管10が取り付けられているため、断熱内槽25の内部の領域がケーブル1の外側流路Bと連通している。
そのため、上記のようにケーブル1の外側流路B内の液体冷媒9と終端容器20の第1容器21の断熱内槽25内の液体冷媒9とがケーブル接続部αを経由して流通している。
【0034】
第1容器21の上部には、略円筒形状の引き出し部27が垂設されており、引き出し部27から第1容器21内にシールド電流用電流リード28が垂下されている。すなわち、本実施形態では、引き出し部27が、終端容器20の第1容器21へのシールド電流用電流リード28の挿入部になっている。
また、終端容器20に引き込まれたケーブルコア2は、シールド電流用電流リード28の下方で外側の保護層8が剥ぎ取られており、露出されたシールド層7(超電導シールド層71と銅編組シールド層72)とシールド電流用電流リード28の下端部分が接続されている。
【0035】
すなわち、本実施形態では、ケーブル1のシールド層7が、リード接続部βの手前側でシールド電流用電流リード28と接続されている。そして、シールド電流用電流リード28を介してケーブル1のシールド層7が接地電位に保たれている。
また、本実施形態では、引き出し部27がガス貯蔵部γとして用いられており、引き出し部27の上部に排気弁29が設けられているが、これらの点については後で説明する。
【0036】
一方、第2容器22の上部にも、略円筒形状の引き出し部30が垂設されており、引き出し部30から第2容器22内に送電電流リード31が垂下されている。
また、ケーブルコア2は、シールド電流用電流リード28の奥側では電気絶縁層6が露出され、狭窄部23を通って第2容器22内に引き込まれている。そして、送電電流リード31の下方で電気絶縁層6が剥ぎ取られ、露出された超電導導体層5と送電電流リード31の下端部分が接続されている。ケーブル1と送電電流リード31との接続部が前述したリード接続部βである。
送電電流リード31は、容器外部に延設されて外部の実系統側と接続されており、ケーブル1の超電導導体層5に外部から電流を導入したり、超電導導体層5を流れてきた電流を外部に取り出すようになっている。
【0037】
なお、前述したように、終端容器20の断熱内槽25等が接地されており、ケーブル1の超電導導体層5には高電圧が印加されているため、ケーブル1の超電導導体層5と終端容器20の断熱内槽25との間には急峻な電位勾配が形成されているが、それらの間に存在する液体冷媒9の高い耐電圧性能により放電が発生しないようになっている。
また、終端容器20の引き出し部30には、液体冷媒9の流路となる配管32が設けられている。そして、配管32を経由して液体冷媒9が外部から第2容器22に流入したり第2容器22から外部に流出するようになっている。
【0038】
狭窄部23は、本実施形態では、第1容器21側から見た断面形状が水平方向に長い長方形である角筒状に形成されている。なお、狭窄部23は、断面形状が水平方向に長い長円形状等に形成することも可能である。
また、狭窄部23は、少なくとも上側部分が終端容器20の容器内側に向けて絞られるように構成されている。なお、狭窄部23については、以下で詳しく説明する。
【0039】
[ガス貯蔵部と狭窄部について]
次に、本実施形態に係る終端容器20のガス貯蔵部γや狭窄部23について詳しく説明する。
前述したように、短絡事故が生じる等してケーブル1(高温超電導ケーブル1)のシールド層7に大きな電流が流れると、シールド層7に接している外側流路Bの液体冷媒9がガス化し、ガス化した液体冷媒9の気泡が、ケーブル接続部α(図2参照)から終端容器20の第1容器21内に流れ込んでくる場合がある(図2のケーブル接続部α部分の矢印参照)。
【0040】
一方、前述したように、終端容器20の第2容器22に引き込まれたケーブル1のケーブルコア2のリード接続部βでは、電気絶縁層6が剥ぎ取られて超電導導体層5が露出されており、超電導導体層5には高電圧が印加されているため超電導導体層5と終端容器20の断熱内槽25との間には急峻な電位勾配が形成されている。
しかし、第1容器21に引き込まれたケーブルコア2は超電導導体層5が電気絶縁層6で被覆されているため、第1容器21内では、ケーブルコア2の電気絶縁層6と終端容器20の接地された断熱内槽25との間には急峻な電位勾配は形成されていない。
【0041】
そのため、本実施形態では、終端容器20の第1容器21内に流れ込んだ液体冷媒9の気泡が第2容器22(リード接続部β)に流れ込まないようにするための対策が取られている。
そして、ガス化した液体冷媒9の気泡が終端容器20の第2容器22に流れ込まなければ、液体冷媒9の高い耐電圧性能が維持されて、第2容器22内で放電が発生することを確実に防止することが可能となり、放電により終端容器20や送電電流リード31等に深刻な損傷が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、ガス化した液体冷媒9の気泡が終端容器20の第2容器22(リード接続部β)に流入しないようにするための対策が二重にとられている。
【0043】
[ガス貯蔵部]
第1の対策は、上記のように放電が発生する可能性があるリード接続部β(ケーブル1と送電電流リード31との接続部)の手前側、すなわちリード接続部βとケーブル接続部αとの間に、ガス化した液体冷媒9の気泡を貯蔵するためのガス貯蔵部γ(図2参照)を設けたことである。
液体冷媒9の気泡は、終端容器20(第1容器21)に流入すると、液体冷媒9中を浮上する。そのため、リード接続部βの手前側の終端容器20の上方に液体冷媒9の気泡を貯蔵するためのガス貯蔵部γを設けておけば、終端容器20内に流入した液体冷媒9の気泡をそこで捕集して貯蔵することが可能となり、気泡が第2容器22内に流入したりリード接続部βの近傍まで流入することを防止することができる。そして、それにより、リード接続部βで放電が発生することを防止することが可能となる。
【0044】
本実施形態では、図2に示したように、ケーブル1と送電電流リード31との接続部(すなわちリード接続部β)より手前側の、ケーブル1とシールド電流用電流リード28との接続部の上方で、略円筒形状の引き出し部27が終端容器20(第1容器21)の上方に突出するように設けられている。
そのため、本実施形態では、これを利用して、引き出し部27の内部空間をガス貯蔵部γとして用いるように構成されている。
【0045】
このように、引き出し部27にガス貯蔵部γを設ければ、終端容器20にシールド電流用電流リード28を挿入するために必要な構造をガス貯蔵部γとして利用することが可能となり、終端容器20にガス貯蔵部γを新たに設けなくてもよいため、終端容器20をコンパクトに構成することが可能となる。
【0046】
[高温超電導ケーブルの終端構造]
なお、終端容器20によっては、引き出し部27をガス貯蔵部γとして用いることができない場合がある。また、ケーブル1にシールド層7が形成されていないため終端容器20にシールド電流用電流リード28の引き出し部27が形成されていない場合もある。
そこで、そのような場合は、例えば、図4に示すように終端容器20内のリード接続部βを基点としてケーブル接続部αよりも遠い位置に捕集容器40を配置し、ケーブル1を捕集容器40に接続するとともに、捕集容器40と終端容器20とを、ケーブル接続部αの少なくとも上側部分に内側に向けて絞られた狭窄部23で接続する高温超電導ケーブルの終端構造として構成することも可能である。
【0047】
そして、捕集容器40の上面を例えば略円筒形状に上方に突出させるようにしてガス貯蔵部γを設けることが可能である。
なお、以下の高温超電導ケーブルの終端容器20についての説明は、この高温超電導ケーブルの終端構造についての説明にもなっている。
【0048】
[排気弁等について]
ところで、例えば図2の場合において、ケーブル接続部αから終端容器20内に液体冷媒9の気泡(ガス)が大量に流入してくる場合があり得る。その場合、大量のガスがガス貯蔵部γから溢れ、狭窄部23を通って第2容器22に流入しリード接続部βの近傍まで流入してしまう可能性がある。
そこで、そのような事態が生じないようにするために、例えば図2に示すように、ガス貯蔵部γに排気弁29を設けておくことが望ましい。
その際、例えば、排気弁29は、所定の圧力で弁が開放されるタイプのものを用いることができる。その場合、排気弁29は、通常の圧力(すなわちガス貯蔵部γに液体冷媒9が溜まっている場合の圧力)では開かないが、ガス貯蔵部γに液体冷媒9のガスが貯蔵されて圧力が上昇すると自動的に開いてガス貯蔵部γに溜まったガスを終端容器20外に排気することができる。
【0049】
また、例えば、図5に示すように、ガス貯蔵部γに、ガス貯蔵部γでの液体冷媒9の液面高さを測定可能なセンサ41と、電気回路やコンピュータ等で構成され、排気弁29の開放動作を制御する弁開放手段42を備えるように構成し、弁開放手段42は、センサ41が測定した液体冷媒9の液面高さが所定の高さを超えた時点で排気弁29を開く制御を行うように構成することも可能である。
このように構成すれば、上記のような事態の発生を防止することが可能となるとともに、以下のような有益な効果がある。
【0050】
すなわち、終端容器20では、シールド電流用電流リード28が容器の内外をつないでいるため、シールド電流用電流リード28を伝って外気温が終端容器20内に侵入し得る状態になっている。
その際、ガス貯蔵部γ(すなわちシールド電流用電流リード28の引き出し部27)が液体冷媒9で満たされていると、シールド電流用電流リード28の容器外の部分(外気温になっている。)とシールド電流用電流リード28の下側の液体冷媒9に浸かった部分(液体冷媒9の温度になっている。)との間の部分の距離が短く、間の部分のシールド電流用電流リード28にできる温度勾配が急になり、シールド電流用電流リード28を伝って外気温が終端容器20内に侵入しやすくなる。
【0051】
しかし、上記のようにセンサ41を取り付けるように構成すると、センサ41より上のガス貯蔵部γに液体冷媒9のガスが溜まる状態になり得る。
そして、このようにガス貯蔵部γの上部にガスが溜まると、シールド電流用電流リード28の容器外の外気温になっている部分と、シールド電流用電流リード28の下側の液体冷媒9に浸かった部分(液体冷媒9の温度)との距離が長くなり、シールド電流用電流リード28にできる温度勾配が緩やかになる。
【0052】
そのため、シールド電流用電流リード28を伝って終端容器20内に侵入する熱を、より小さく抑えることが可能となる。
この点は、送電電流リード31の場合も同様であり、図2に示すように、送電電流リード31の引き出し部30内部の上部にガスを溜めるように構成すれば、送電電流リード31を伝って終端容器20内に侵入する熱を、より小さく抑えることが可能となる。
【0053】
[狭窄部]
また、本実施形態で、ガス化した液体冷媒9の気泡が終端容器20の第2容器22に流入しないようにするために二重に取られている第2の対策は、上記のように放電が発生する可能性があるリード接続部β(ケーブル1と送電電流リード31との接続部)の手前側に、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部23を設けたことである。
狭窄部23は、終端容器20(第1容器21)に流入した液体冷媒9の気泡が、リード接続部β側(第2容器22側)に流入することを妨げる障壁になる。
【0054】
すなわち、液体冷媒9の気泡は、ケーブル接続部αを通って終端容器20(第1容器21)に流入すると、液体冷媒9中を浮上し、終端容器20内の上側を移動する。そして、狭窄部23は、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られるように構成されているため、仮に気泡が上記のガス貯蔵部γに捕集されずに奥側に移動しても、上側部分が絞られた狭窄部23に堰き止められる。
そのため、気泡は、結局、浮上せざるを得なくなりガス貯蔵部γで捕集されて貯蔵される。そのため、狭窄部23を設けたことで、ガス化した液体冷媒9の気泡が終端容器20のリード接続部β側に流入することが的確に防止される。
【0055】
なお、このように、狭窄部23は、その上側部分が容器内側に向けて絞られるように構成されていれば十分に機能を発揮するため、図2等に示したように、その下側部分や左右部分が容器内側に向けて絞られるように構成されている必要はない。
しかし、一方で、狭窄部23の高さが低いほど(狭いほど)気泡の第2容器22内(すなわちリード接続部β)への流入を阻止しやすくなる。上記のように狭窄部23内にケーブル1のケーブルコア2が通されることを考慮すると、狭窄部23の高さ方向の空隙が、ケーブル1のケーブルコア2の直径の2倍よりも小さければ、気泡のリード接続部β側への流入を的確に阻止することが可能となり好ましい。
【0056】
また、このように終端容器20が狭窄部23を有するように構成する際、狭窄部23を有する終端容器20の断熱内槽25を一体形成するのは、実際問題として必ずしも容易ではない。また、断熱内槽25が一体形成されていると、それに断熱外槽26を取り付ける作業も困難なものになるとともに、終端容器20を一旦製造してしまうと、その後、第1容器21と第2容器22とを分離することはほぼ不可能になる。
そのため、図3に示すように、狭窄部23に接続フランジ23Aを設け、接続フランジ23Aの部分で狭窄部23のケーブル接続部α側(すなわち第1容器21と狭窄部23の一部)とリード接続部β側(すなわち第2容器22と狭窄部23の残りの部分)とが分離可能とされていることが望ましい。
【0057】
このように構成されていれば、狭窄部23のケーブル接続部α側とリード接続部β側とを別々に製造して双方を接続フランジ23Aで接続すれば、比較的容易に終端容器20を製造することが可能となる。
また、終端容器20を一旦製造した後でも、容易に狭窄部23のケーブル接続部α側とリード接続部β側と分離することができる。そのため、例えば、狭窄部23のケーブル接続部α側とリード接続部β側と分離して終端容器20内部のメンテナンス作業等を容易に行うことが可能となる。
【0058】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端容器20や高温超電導ケーブルの終端構造によれば、ケーブル接続部α(終端容器と前記高温超電導ケーブルとのケーブル接続部α)とリード接続部β(高温超電導ケーブル1と送電電流リード31とのリード接続部β)との間や、リード接続部βを基点としてケーブル接続部αよりも遠い位置に、ガス化した液体冷媒9の気泡を貯蔵するガス貯蔵部γと、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部23とを設けた。
そのため、例えば送電先で短絡が発生して高温超電導ケーブル1のシールド層7に大電流が流れる等して高温超電導ケーブル1の外側流路Bで液体冷媒9がガス化して気泡が発生し、その気泡がケーブル接続部αから終端容器20内に流入しても、それらの気泡は、ガス貯蔵部γに捕集されて貯蔵されるため、放電が発生する可能性があるリード接続部β側には気泡が流入しない。
【0059】
また、ケーブル接続部αとリード接続部βとの間や、リード接続部βを基点としてケーブル接続部αよりも遠い位置に、少なくとも上側部分が容器内側に向けて絞られた狭窄部23が設けられているため、仮に気泡が上記のガス貯蔵部γに捕集されずに奥側に移動しても、上側部分が絞られた狭窄部23が障壁になり堰き止められる。
そのため、本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端容器20によれば、高温超電導ケーブル1でガス化した液体冷媒9の気泡が終端容器20内に流入しても、気泡が終端容器20のリード接続部β側に流れ込む事態が的確に防止されるため、リード接続部β近傍での耐電圧性能が維持される。そのため、リード接続部βで放電が発生することを確実に防止することが可能となる。
また、そのため、放電により終端容器20や送電電流リード31等に深刻な損傷が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0060】
なお、上記のように、液体冷媒9の気泡は液体冷媒9中で浮上する性質を有しているため、例えば、終端容器20において狭窄部23をより低い位置に設けた方が、狭窄部23内を気泡が通り抜けにくくなる。
このように、液体冷媒9の気泡がリード接続部β側に流入しないようにするための改良は適宜行うことが可能である。
【0061】
また、前述したように、本実施形態では、狭窄部23は、第1容器21側から見た断面形状が水平方向に長い長方形や長円形状であるように形成されている。このように構成すると、狭窄部23を、上記のように上側部分が容器内側に向けて絞られるように設けることが可能となるといった効果のほか、以下のような有益な効果がある。
【0062】
すなわち、図1に示したように、高温超電導ケーブル1は、基本的にケーブルコア2と断熱管3で構成されているが、このうち断熱管3を構成する断熱外管11は常温であるが、断熱内管10とケーブルコア2は稼働時に液体窒素温度まで冷却される。そして、それに伴って、冷却される部位には熱収縮とそれによる強い張力(熱応力)がかかることになる。
冷却される部位のうち断熱内管10は、終端容器20等と接続する際にベローズを介して接続されるなどして熱収縮を吸収することができるが、ケーブルコア2では熱収縮を吸収することは難しい。そのため、ケーブルコア2を予め終端容器20内部で湾曲させておき、冷却により収縮するとその湾曲がまっすぐに伸びることで収縮分を打ち消す手法が考えられる。
【0063】
高温超電導ケーブル1と終端容器20内壁との間に形成される電位差で放電を起こさないような耐電圧性を持たせる目的で、超高電圧用の高温超電導ケーブル1の終端容器20は非常に大きく設計されるが、その耐電圧性が必要なのは高温超電導ケーブル1の超電導導体層5が剥き出しになるリード接続部βの周辺のみである。
ケーブルコア2のそれより手前側の部分では超電導導体層5が厚い電気絶縁層6に覆われているため、ケーブルコア2が湾曲して終端容器20の断熱内槽25に接触しても問題はない。そして、上記のように超高電圧用の高温超電導ケーブル1の終端容器20が巨大であることから、上記の手法は有効であると考えられる。
【0064】
しかし、本発明を終端容器20に適用すると、ケーブルコア2は終端容器20の中程に位置する狭窄部23で位置が固定されてしまうため、十分な長さの余裕をとるための大きな湾曲をケーブルコア2に持たせることができない。
そこで、前述したように、本実施形態のように、狭窄部23を断面形状が水平方向に長い長方形や長円形状であるように形成すれば、図6に示すように、ケーブルコア2を狭窄部23の部分で水平方向に大きく湾曲させることができ、熱収縮に備えて長さの余裕を持たせることが可能となる。図6では、排気弁29や配管32等の図示が省略されている。
【0065】
なお、このように構成する場合、ケーブルコア2が湾曲すると、図6に示すように、ケーブルコア2は、引き出し部27から垂下されるシールド電流用電流リード28の下方から水平方向にずれた位置に移動する。そのため、シールド電流用電流リード28とケーブルコア2の接続部も、終端容器20の中央付近から縁側(すなわち断熱内槽25に近い側)まで移動することができるように構成することが必要になる。
そのため、シールド電流用電流リード28の少なくとも下側部分を銅編組等の可撓性を有する導体に置き換えることが望ましい。なお、リード接続部βが終端容器20の断熱内槽25に近づくように移動すると放電が起きる可能性があるため、送電電流リード31は銅ブスバー等の可撓性を持たない導体で構成して、ケーブルコア2が湾曲しても終端容器20の中央から移動しないように構成することが必要である。
【0066】
[実施例]
(1)第2容器22
第2容器22の断熱内槽25の内径はφ900mm、軸方向長さは2000mmで、その中央にφ90mmのケーブルコア2が収まる。
第2容器22の上部にはケーブルコア2の超電導導体層5に接続される送電電流リード31とそれを収納するための円筒状の引き出し部30が付属されている。引き出し部30は内径がφ500mm、軸方向長さが2000mmであり、その断熱内槽/外槽とも第2容器22の本体円筒に溶接接続されている。そして、引き出し部30の上部底面を送電電流リード31とその付属物(ブッシング等)が貫いている。また、その外槽には、長さを調整するためのベローズが含まれている。
【0067】
引き出し部30の円筒形の内部空間のうち上側半分程度が常時気相領域となっており、液体冷媒9の圧力変化に応じてその液面が上下に変動する。さらに、その下部には液体冷媒9である液体窒素が供給又は回収されるための配管32が接続されている。
送電電流リード31は単数又は複数の銅ブスバーであり、その上部で気相領域に含まれ得る部位は耐電圧性を持つブッシングに覆われている。ブッシングに覆われない電流リードの下部、及びケーブルコア2との接続部(リード接続部β)は液体冷媒9である液体窒素に対して剥き出しの状態になっており、接地電位となる断熱内槽25との間の耐電圧性を維持するために十分な空間が確保されている。
【0068】
第2容器22の手前側は狭窄部23と溶接接続されており、奥側は閉じている。リード接続部βに位置する側面には、断熱内槽25/断熱外槽26ともフランジとその導入部が設けられている(図3の第2容器22側面のフランジ参照)。
第2容器22の組み立てや敷設の際、あるいは容器内部のメンテナンスを行う際にはこのフランジを取り外して内部に入る。断熱外槽26は冷却されないためゴム製Oリングを用いることができるが、断熱内槽25は液体窒素温度まで冷却されるため、金属製のガスケットを用いて気密を維持する。
【0069】
(2)第1容器21
第1容器21の内径(断熱内槽25の内径)はφ900mm、軸方向長さは1000mmで、基本的にはその中央にφ90mmのケーブルコア2が収まる。
第1容器21の上部には、シールド電流用電流リード28とそれを収納するための円筒状の引き出し部27が付属されている。引き出し部27は内径がφ400mm、軸方向長さが1600mmであり、断熱内槽/外槽とも第1容器21の本体円筒に溶接接続されている。引き出し部27の上部は気相領域となっており、排気弁29を備えている。圧力が上限を上回った際にはこの排気弁29が開き、窒素ガスを外部に放出する。
シールド電流用電流リード28はブッシングに被覆された銅ブスバーであるが、送電電流リード31よりも短い。シールド電流用電流リード28はケーブルコア2のシールド層7に接続されており、接続部との間に可撓性を持つ長さ1000mmの被覆銅撚り線を介している。この部位の可撓性により、ケーブルコア2の位置が固定されないようになっている。
【0070】
ケーブルコア2のシールド層7は接地電位にある断熱内槽25との間に大きな電位差を持たないため、これらの部位は耐電圧性を持つ必要がない(すなわち簡単な絶縁のみでよい。)。シールド電流用電流リード28の銅ブスバーを被覆するブッシングは、ここでは耐電圧性を持たせる目的ではなく、銅ブスバー経由の侵入熱量を減らすための断熱材として機能している。
第1容器21の奥側には第2容器22に続く狭窄部23が溶接接続されており、第1容器21の手前側はベローズを介して高温超電導ケーブル1の断熱管3と接続されている。
【0071】
(3)狭窄部23
狭窄部23は長さ500mm、断熱内槽25の断面形状は高さ120mm、幅600mmの長円形である。なお、長円形は、左右がそれぞれφ120mmの半円形で、その間に幅360mmの長方形が挟まる形状とされている。第1容器21や第2容器22との接続関係は対称ではなく、水平方向に大きく偏っている(図6参照)。
また、狭窄部23の内槽は、長さ方向の中央部で接続フランジ23Aによりフランジ接続される形になっており、そこで第1容器21と第2容器22とが分離できるようになっている。狭窄部23の外槽は内槽フランジの手前で内槽に溶接されている。すなわち、接続フランジ23Aの部分では真空断熱構造になっていないため、フランジ接続後、この部分に発泡材等の断熱材を当てて断熱が図られる。なお、ベローズ等を用い、内槽/外槽ともフランジ接続として真空断熱構造とすることも可能である。
【0072】
(4)終端容器20の敷設と冷却
第1容器21と第2容器22は個別に作製され、敷設現場に配置された後、狭窄部23の接続フランジ23Aによって一体化される。その後、第1容器21から超電導ケーブル1のケーブルコア2が容器内部に挿入され、それぞれ第2容器22ではリード接続部βでケーブルコア2の超電導導体層5と送電電流リード31が、第1容器21ではケーブルコア2のシールド層7とシールド電流用電流リード28がそれぞれ接続される。このとき、狭窄部23が偏った方向にケーブルコア2を撓ませるように接続する。そして、高温超電導ケーブル1の断熱管3が第1容器21と接続される。その他、電流経路の接続や冷媒配管との接続等も行われる。そして、最後に、終端容器20の真空断熱部(すなわち断熱内槽25と断熱外槽26の間の領域)の真空引きが行われる。
【0073】
このようして敷設が完了した後、高温超電導ケーブル1から終端容器20まで内部に液体冷媒9である液体窒素を循環させて、ケーブルコア2とその周辺部の冷却がなされる。それにより高温超電導ケーブル1の断熱内管10とケーブルコア2に熱収縮が生じる。高温超電導ケーブル1の断熱管3はコルゲート管(波付け管)であるため、ある程度の熱収縮には対応できるが、ケーブルコア2は熱収縮して、終端容器20内部の接続部を引っ張る形になる。
しかし、上記のように常温での敷設時に終端容器20内部でケーブルコア2を撓ませて長さの余裕を持たせていたため、ケーブルコア2が熱収縮すると終端容器20の内部でまっすぐに伸びる状態になる。
【0074】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施形態では、終端容器20の外部から狭窄部23を目視できるように構成する場合について説明したが、例えば第1容器21の断熱外槽26と第2容器22の断熱外槽26とをそれぞれ狭窄部23側に延ばしたり、あるいは第1容器21と狭窄部23と第2容器22の全体を外被で覆う等して、外部から狭窄部23が目視できないように構成することも可能である。
【0075】
また、上記の実施形態では、高温超電導ケーブル1の外側流路B(図1等参照)でガス化した液体冷媒9の気泡を終端容器20(第1容器21)のガス貯蔵部γで捕集する場合について説明したが、高温超電導ケーブル1の内側流路Aで液体冷媒9のガス化が発生した場合に、それにより生じた気泡を例えば絶縁性FRP製のカップの内部に捕集して、リード接続部βで放電が起きないように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 高温超電導ケーブル
2 ケーブルコア
5 超電導導体層
7 シールド層
9 液体冷媒
20 終端容器
23 狭窄部
23A 接続フランジ
27 引き出し部(シールド電流用電流リードの挿入部)
28 シールド電流用電流リード
29 排気弁
31 送電電流リード
41 センサ
42 弁開放手段
α ケーブル接続部
β リード接続部
γ ガス貯蔵部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7