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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】接合導体及び接合導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20220318BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20220318BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H01R4/02 C
H01R43/02 B
B23K20/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018076386
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019186070
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 肇宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 智裕
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-220933(JP,A)
【文献】特表2008-528299(JP,A)
【文献】特開2010-251287(JP,A)
【文献】特開2014-075245(JP,A)
【文献】特開2016-185009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 4/62
H01R 43/02
H01R 43/28
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って配置された複数の導体が、溶融接合された接合部を有する接合導体であって、
前記接合部は、
前記長手方向に沿って互いに対向する二つの面が設けられ、
対向する前記面の一である第一面と、前記第一面と対向する第二面の双方に
二つの前記面が対向する対向方向の外側に向けて突出する山部と、前記対向方向の内側に窪んだ谷部とが、前記長手方向に沿って連続する、正弦波形状の波形部が前記長手方向に沿って複数備えられ、
前記第一面に形成された前記波形部を第一波形部とし、
前記第二面に形成された前記波形部を第二波形部とし、
前記第一波形部と前記第二波形部とが、同形状で構成されるとともに、
前記第一波形部における山部が、前記第二波形部における谷部と対向するとともに、前記第一波形部における谷部が、前記第二波形部における山部と対向し、
前記対向方向と交差する交差方向において互いに対向する面のうち、少なくとも一つの第三面に、
前記交差方向の外側に向けて突出する交差側山部と、前記交差方向の内側に窪んだ交差側谷部とが、前記長手方向に沿って連続する、波形状の交差側波形部が備えられ、
前記交差側波形部は、前記第一波形部及び前記第二波形部と、波形状、ピッチ及び、位相のいずれかが異なる波形で構成された
接合導体。
【請求項2】
前記交差側波形部は、前記第一波形部及び前記第二波形部と、波形状及びピッチが異なる波形で構成された
請求項1に記載の接合導体。
【請求項3】
前記交差側波形部は、前記第一波形部と同形状の正弦波で構成され、
前記第一波形部における山部と谷部との中央部分に、前記交差側波形部における交差側山部が配置され、
隣接する前記第一波形部における谷部と山部との中央部分に、交差側谷部が配置された
請求項1に記載の接合導体。
【請求項4】
前記谷部の底部から前記山部の頂点までの前記長手方向と直交する直交断面方向における高さが、前記第一面と対向する第二面と前記第一面との前記対向方向における間隔の0.5倍以下で構成された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の接合導体。
【請求項5】
前記谷部の底部から前記山部の頂点までの前記対向方向における高さが、複数配置された前記導体のうちの最小径の0.5倍以上となるように構成された
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載の接合導体。
【請求項6】
前記接合部は、
前記長手方向に沿って平面状に形成された平面部を先端と前記波形部との間に有する
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載の接合導体。
【請求項7】
前記接合部は、
超音波溶接で形成された超音波接合部が構成された
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の接合導体。
【請求項8】
前記導体が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された
請求項1乃至請求項7のうちのいずれかに記載の接合導体。
【請求項9】
長手方向に沿って配置された複数の導体を溶融接合する接合導体の製造方法であって、
前記長手方向と直交する第一方向に沿って前記導体を圧縮するとともに、前記長手方向及び前記第一方向に直交する第二方向への前記導体の移動を規制する圧縮工程と、
前記第一方向において圧縮された前記導体に超音波振動による超音波溶接を行う溶接工程とを行い、
前記圧縮工程において、
複数配置された前記導体で構成された導体束のうち、前記第二方向に形成される第一面に、前記第二方向の外側に向けて突出する山部と、前記第二方向の内側に窪んだ谷部とが連続して設けられた正弦波形状の第一波形部が前記長手方向に沿って複数形成されるように、前記導体の前記第二方向への移動を規制しつつ、
前記第一面と対向する第二面に、前記第二方向の外側に向けて突出する山部と、前記第二方向の内側に窪んだ谷部とが連続して設けられるとともに、前記第一波形部における山部が谷部と対向するとともに、前記第一波形部における谷部が山部と対向する正弦波形状の第二波形部が前記長手方向に沿って複数形成されるように、前記導体の前記第二方向への移動を規制し、
前記第一方向に形成される第三面に、前記第一方向の外側に向けて突出する交差側山部と前記第一方向の内側に窪んだ交差側谷部とが、前記長手方向に沿って連続する波形状の交差側波形部が、前記第一波形部及び前記第二波形部の波形状、ピッチ及び、位相のいずれかが異なる波形で形成されるように、前記第一方向に沿って前記導体を圧縮する
接合導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、導体を溶融接合させた接合導体及び前記導体を溶融接合させる接合導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、操作性や快適性を向上させる様々な電気機器が搭載されており、このような電気機器は、自動車に配索されるワイヤハーネスなどによって互いに電気的に接続され、信号の送受信や電力の供給が行われている。
【0003】
このワイヤハーネスを構成する複数の被覆電線は、絶縁被覆で覆われた導体を露出させて互いに接合した接合導体によって導通可能としている。
このような接合導体は、例えば、複数の導体を所定の幅に規制した状態で、厚み方向(上下方向)から加圧しながら超音波接合させて製造されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-198506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された接合導体では、上下方向に隣接する導体同士は十分な強度で接合されているものの、左右方向に隣接する導体同士の接合強度は上下方向の接合強度に比べて弱い傾向があった。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑み、導体同士の接合強度を向上させ、導電性を向上させることができる接合導体及び接合導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、長手方向に沿って配置された複数の導体が、溶融接合された接合部を有する接合導体であって、前記接合部は、前記長手方向に沿って互いに対向する二つの面が設けられ、対向する前記面の一である第一面と、前記第一面と対向する第二面の双方に、二つの前記面が対向する対向方向の外側に向けて突出する山部と、前記対向方向の内側に窪んだ谷部とが、前記長手方向に沿って連続する、正弦波形状の波形部が前記長手方向に沿って複数備えられ、前記第一面に形成された前記波形部を第一波形部とし、前記第二面に形成された前記波形部を第二波形部とし、前記第一波形部と前記第二波形部とが、同形状で構成されるとともに、前記第一波形部における山部が、前記第二波形部における谷部と対向するとともに、前記第一波形部における谷部が、前記第二波形部における山部と対向し、前記対向方向と交差する交差方向において互いに対向する面のうち、少なくとも一つの第三面に、前記交差方向の外側に向けて突出する交差側山部と、前記交差方向の内側に窪んだ交差側谷部とが、前記長手方向に沿って連続する、波形状の交差側波形部が備えられ、前記交差側波形部は、前記第一波形部及び前記第二波形部と、波形状及びピッチが異なる波形で構成されたことを特徴とする。
【0008】
またこの発明は、長手方向に沿って配置された複数の導体を溶融接合する接合導体の製造方法であって、前記長手方向と直交する第一方向に沿って前記導体を圧縮するとともに、前記長手方向及び前記第一方向に直交する第二方向への前記導体の移動を規制する圧縮工程と、前記第一方向において圧縮された前記導体に超音波振動による超音波溶接を行う溶接工程とを行い、前記圧縮工程において、複数配置された前記導体で構成された導体束のうち、前記第二方向に形成される第一面に、前記第二方向の外側に向けて突出する山部と、前記第二方向の内側に窪んだ谷部とが連続して設けられた正弦波形状の第一波形部が前記長手方向に沿って複数形成されるように、前記導体の前記第二方向への移動を規制しつつ、前記第一面と対向する第二面に、前記第二方向の外側に向けて突出する山部と、前記第二方向の内側に窪んだ谷部とが連続して設けられるとともに、前記第一波形部における山部が谷部と対向するとともに、前記第一波形部における谷部が山部と対向する正弦波形状の第二波形部が前記長手方向に沿って複数形成されるように、前記導体の前記第二方向への移動を規制し、前記第一方向に形成される第三面に、前記第一方向の外側に向けて突出する交差側山部と前記第一方向の内側に窪んだ交差側谷部とが、前記長手方向に沿って連続する波形状の交差側波形部が、前記第一波形部及び前記第二波形部の波形状、ピッチ及び、位相のいずれかが異なる波形で形成されるように、前記第一方向に沿って前記導体を圧縮することを特徴とする。
【0009】
前記導体は、導電性を有する素線を撚った撚線、あるいは単線で構成された導体、素線を束ねた導体などを含み、また、前記導体は導電性を有すればどのような材質で構成されていてもよく、銅や銅合金で構成された銅系導体や、アルミニウムやアルミニウム合金などで構成されたアルミニウム系導体で構成されるものを含む。
【0010】
なお前記導体は、例えば撚線や素線の束を絶縁性の絶縁被覆で被覆させた被覆電線の一端において、外層を形成する前記絶縁被覆を切剥いで露出させた露出導体や、絶縁被覆で被覆されていない撚線導体や素線を束ねた導体などを含む。
【0011】
上述の複数の導体とは、同一又は異なる種類の導体で構成されたものを含む。具体的には、外径や材質が異なる導体であってもよく、また一部は撚線で一部は単線であってもよい。
上述の前記長手方向に沿って複数設けられたとは、複数の前記波形部が連続して設けられた場合や、平面状に形成された部位を間に挟んでもよい。
【0012】
上述の対向方向の外側に向けて突出する前記山部とは、前記山部が前記谷部に対して相対的に前記対向方向の外側に突出しておればよく、同様に、上述の前記対向方向の内側に窪んだとは、前記谷部が前記山部に対して相対的に前記対向方向の内側に窪んだ構成であればよい。
【0013】
前記波形部は、前記側面の全面に形成されている場合や、前記側面の一部分に形成されている場合を含む。
また前記波形部は、前記長手方向に沿って少なくとも一つ以上の前記山部及び前記谷部がそれぞれ一つ以上連続した構成をさす、なお、前記山部と谷部とが連続していれば、山部と谷部の数が一致している必要はない。
【0014】
この発明により、導体同士の接合強度を向上させ、導電性を向上させることができる。
詳述すると、対向する前記面のうち少なくとも前記第一面に前記波形部が形成されているため、前記接合部を構成する複数の前記導体のうち、前記対向方向に並んで配置された前記導体は、対向方向に隣接する他の導体と前記長手方向と交差する方向に沿って接触した状態で接合されている。このため、前記接合部においては、前記対向方向に配置された前記導体同士の接合強度が向上している。
【0015】
したがって、前記接合部の一体性を向上させることができ、前記接合導体を構成する前記導体の導電性を向上させることができるとともに、前記接合導体の剛性も向上させることができる。
【0016】
また、前記第一面に形成された前記第一波形部と前記第二面に形成された前記第二波形部とが、半波長ずれて構成されているため、前記接合部は前記対向方向に沿って並んで配置された導体同士が一定の幅で前記対向方向に振幅した状態で接合されている。このため、前記接合部全体の見かけの断面係数を向上させることができ、前記接合導体の剛性を向上させることができる。
【0017】
また、前記対向方向に対する前記第一面と前記第二面との幅が前記長手方向において一定であるため、すなわち、前記長手方向における前記導体同士の断面積が一定であるため、前記接合部の剛性の不均一を抑制することができ、前記接合導体品質のばらつきを抑えることができる。
【0018】
さらにまた、前記長手方向と交差する交差方向に周期的に並んで配置された前記導体が接合された前記接合部では、前記交差方向に並んで配置された導体同士の接合強度を向上させることができるとともに、前記導体同士の接触面積を増大させることができる。したがって、前記接合部の一体性をより向上させることができ、前記導体の導電性及び剛性をより向上させることができる。
【0019】
また、前記対向方向に沿って配置された前記導体同士の接触面積の増大及び接合強度の向上のみならず、前記交差方向に沿って配置された前記導体同士の接触面積が増大させることができる。このため、前記接合導体の接合強度をさらに向上させることができる。また、前記接合導体の一体性をより向上させることができるため、前記接合導体の導電性をより向上させることができる。
【0020】
の発明の態様として、前記谷部の底部から前記山部の頂点までの前記長手方向と直交する直交断面方向における高さが、前記第一面と対向する第二面と前記第一面との前記対向方向における間隔の0.5倍以下で構成されてもよい。
この発明により、前記接合導体の導電性を向上させることができるとともに、剛性を確実に向上させることができる。
【0021】
詳述すると、前記谷部に対する前記山部の高さが前記第一面と前記第二面との前記対向方向における間隔の0.5倍よりも高い場合、前記接合部における波形の振幅が大きくなり、導体にかかる負荷が大きくなる。このため、前記導体が部分的に断裂や損傷するおそれがあり、前記接合導体の導電性を十分に確保できず、また剛性も低下するおそれがある。
【0022】
これに対して、前記対向方向における前記谷部に対する前記山部の高さが、前記第一面と前記第二面との前記対向方向における間隔の0.5倍以下で構成されることにより、前記接合部を構成する前記導体の負荷が軽減できるとともに、前記対向方向に並んだ前記導体を前記対向方向に振幅させることができるため、湾曲による前記導体同士の接合強度を確実に向上させることができるとともに、前記導体同士の接触面積を増大させることができる。
【0023】
これにより、前記接合部の一体性を向上させることができるとともに、前記導体が部分的に断裂や損傷する可能性を低減でき、前記接合導体の導電性を十分に向上させることができるとともに、剛性を確実に向上させることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記谷部の底部から前記山部の頂点までの前記直交断面方向における高さが、複数配置された前記導体のうちの最小径の0.5倍以上となるように構成されてもよい。
この発明により、前記接合導体の導電性を向上させることができる。
【0025】
詳述すると、前記対向方向における前記谷部に対する前記山部の高さが、複数配置された前記導体のうちの最小径の0.5倍よりも低い場合、前記接合部における前記山部及び谷部が形成する波形の振幅量が小さく、前記対向方向に沿って配置された前記導体同士が前記長手方向に対して交差した状態で配置されないため、前記接合部の一体性を十分に向上させることができず、前記接合導体の導電性を十分に向上させることができない。
【0026】
これに対して、前記対向方向における前記谷部に対する前記山部の高さが、複数配置された前記導体のうちの最小径の0.5倍以上とすることにより、前記接合部を前記山部及び谷部に沿って確実に湾曲させることができるため、前記対向方向に沿って配置された前記導体同士が前記長手方向に対して交差した状態で配置されることとなる。これにより、前記導体同士の接合強度を確実に向上させることができるとともに、前記導体同士の接触面積を増大させることができ、前記接合導体の導電性を向上させることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記接合部は、前記長手方向に沿って平面状に形成された平面部を先端と前記波形部との間に有してもよい。
上述の平面状に形成されたとは、前記一方の側面と平行に形成された場合や、側面に対して傾斜した場合を含む。すなわち、前記接合部の先端と前記波形部との間において、側面に意図的な凹凸形状が設けられていない形状をさす。
【0028】
この発明により、前記導体同士の接合が前記接合部の先端側から剥離されることを抑制できる。
詳述すると、前記波形部を構成する前記山部及び前記谷部は、前記導体を湾曲させて構成されているため、湾曲方向と反対側に外力が作用した場合に、前記導体同士の接合が剥離しやすくなる。
【0029】
しかしながら、前記接合部は前記平面部を先端と前記波形部との間に有しているため、前記山部や谷部に対して湾曲方向と反対側への意図しない外力が直接作用することを防止できるとともに、仮に意図しない外力が作用したとしても、前記平面部により前記外力を吸収できるため、前記導体同士の接合の剥離を抑制できる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記接合部は、超音波溶接で形成された超音波接合部が構成されてもよい。
この発明によると、前記接合部における導体同士の界面を超音波溶接により接合させることができるため、前記接合導体の内部においても十分に接合することができる。これにより、前記接合導体の接合強度を安定させることができる。また、過剰な熱の付与による物性変化が抑制されるため、異物の混合を防止できる。したがって、前記接合導体の導電性及び剛性を安定させることができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記導体が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されてもよい。
この発明により、前記接合導体の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明により、導体同士の接合強度を向上させ、導電性を向上させることができる接合導体及び接合導体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】接合導体の概略斜視図。
図2】接合導体の説明図。
図3】導体接続装置の概略斜視図。
図4】導体接続装置の概略分解斜視図。
図5】ホーンの説明図。
図6】規制部の説明図。
図7】アンビルの説明図。
図8】導体接続装置の説明図。
図9】導体接続方法のフローチャート。
図10】導体の接合方法の説明図。
図11】導体の接合方法の説明図。
図12】他の実施形態の導体接続装置の概略斜視図。
図13】他の実施形態の導体接続装置の断面図。
図14】他の実施形態の接合導体の概略斜視図。
図15】他の実施形態の接合導体の説明図。
図16】他の実施形態の接合導体の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明である、接合導体100及び接合導体100を製造する導体接合装置1の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は接合導体100の概略斜視図を示し、図2は接合導体100の説明図を示す。詳しくは、図2(a)は、接合導体100における接合部110の拡大平面図を示し、図2(b)は図2(a)におけるA-A断面図を示し、図2(c)は図2(a)におけるB-B断面図を示す。
【0035】
図3は導体接合装置1の概略斜視図を示し、図4は導体接合装置1の概略分解斜視図を示し、図5は導体接合装置1を構成するホーン13の説明図を示し、図6は導体接合装置1を構成する規制部21の説明図を示し、図7は導体接合装置1を構成するアンビル30の説明図を示し、図8は導体接合装置1の構成を説明する説明図を示す。
【0036】
ここで、図3において、被覆電線200の長手方向を長手方向Xとし、被覆電線200の横幅方向であって長手方向Xと直交する方向を幅方向Yとし、図3の長手方向Xに沿って左側を+X方向とし、右側を-X方向とするとともに、幅方向Yに沿って左側を-Y方向とし、右側を+Y方向とする。
また、図3において、縦方向を上下方向Zとし、図3の上側を+Z方向(上方)、下側を-Z方向(下方)とする。
【0037】
図5について詳述すると、図5(a)はホーン13の底面を拡大した拡大底面図を示し、図5(b)はホーン13を+Y側から視た拡大側面図を示し、図5(c)はホーン13を+X側から視た拡大正面図を示す。なお、図5(b)及び図5(c)ではホーン13の一部分のみを拡大して表示する。
【0038】
図6及び図7について詳述する。図6(a)は規制部21の上面を拡大した拡大平面図を示し、図6(b)は規制部21を+Y側から視た拡大側面図を示し、図6(c)は規制部21を+X側から視た拡大正面図を示す。なお、図6(a)及び図6(c)では規制部21の一部分のみを拡大して表示する。
図7(a)はアンビル30の平面図を示し、図7(b)はアンビル30に立設されたアンビル上部32を+Y側から視た拡大側面図を示す。
【0039】
また、図8について詳述する。図8(a)は導体接合装置1において導体露出部220を接合する部位を+X方向から視た概略正面図を示し、図8(b)は図8(a)におけるC-C断面図を示す。
【0040】
接合導体100は、複数の被覆電線200の先端部分である導体露出部220を超音波溶接により接合させ、一体化した導体であり、例えばバッテリーなどの電気機器同士を電気的に接続するのに用いられている。
【0041】
被覆電線200は、アルミニウム合金の素線を撚り合わせて形成された撚線導体を絶縁樹脂製の絶縁被覆210で被覆して構成されており、被覆電線200の先端側には絶縁被覆210を所定の長さ分剥いで撚線導体を露出させた導体露出部220が設けられている(図3参照)。
【0042】
なお、撚線導体は導電性を有していれば、どのような素材であってもよく、例えば、アルミニウムや銅、銅合金などの素線を撚り合わせてもよい。また、導体露出部220は必ずしも撚線導体で構成されている必要はなく導電性を有する素線を束ねて構成されていてもよい。
【0043】
この接合導体100は、長手方向Xに沿って複数本(本実施形態では9本)の被覆電線200を束ねるとともに、被覆電線200の先端側(-X側)において絶縁被覆210を剥いで露出させた導体露出部220を複数束ねた導体束として溶融接合させた構成であり、接合導体100の先端部分には、導体露出部220を溶融接合させた接合部110を有する。
【0044】
接合部110は、図1及び図2に示すように、幅方向Yにおいて互いに対向する第一面121(左側(-Y側)に形成された面とする)及び第二面122(右側(Y側)に形成された面とする)と、上下方向Zにおいて互いに対向する第三面131(下側(-Z側)に形成された面とする)及び第四面132(上側(+Z側)に形成された面とする)とで断面矩形状に構成されており、接合部110の+X側の端部及び-X側の端部には、平面状に形成された平面部150が設けられている。
【0045】
第一面121及び第二面122には、平面視で長手方向Xに沿って正弦波状に形成された波形部140が形成されている(図2(a)参照)。
この波形部140は、幅方向Yに沿って外側に突出している山部141と、幅方向Yに沿って内側に窪んでいる谷部142とが連続して構成されている。
【0046】
この谷部142の底部に対する山部141の頂部の高さL1は、第一面121と第二面122との距離、すなわち、接合導体100における幅の長さL2の約0.20倍に構成されている。
【0047】
本実施形態において、高さL1は長さL2の0.20倍としているが、必ずしもこの値でなければならないわけでなく、適宜変更してもよい。なお、導電性及び剛性の観点から、0.5倍以下であることが好ましい。
【0048】
また、この谷部142の底部に対する山部141の頂部の高さL1は、接合部110を構成する導体露出部220の最小径である径L3の約0.6倍となるように構成されている。
【0049】
本実施形態において、この高さL1は径L3の0.6倍としているが、必ずしもこの値でなければならないわけでなく、適宜変更してもよい。なお、導電性の観点から、素線の0.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは撚線導体の外径の0.5倍以上であることが好ましい。また、本実施形態では導体露出部220の径は9本すべて同じとしているが、一部またはすべての導体露出部220の径が異なる構成でもよい。この場合、高さL1は導体露出部220の最小径である径L3の0.5倍以上であることが好ましい。
【0050】
このように構成された波形部140のうち、第一面121に設けられた波形部140Lは、+X側から谷部142と山部141とが交互に連続して配置されるように4つ並んで設けられている。
【0051】
一方で、波形部140のうち、第二面122に設けられた波形部140Rは、+X側から山部141と谷部142とが交互に連続して配置されるように4つ並んで設けられている。
【0052】
換言すると、第一面121に配置された谷部142及び山部141は、第二面122に配置された山部141及び谷部142と幅方向Yに沿って対向配置されている。すなわち、波形部140Lと波形部140Rとは互いに同形状の正弦波が半波長だけ長手方向Xに沿ってずれてそれぞれ第一面121及び第二面122とに設けられている。
【0053】
このように構成された接合部110は、図2(b)及び図2(c)に示すように、-X側から+X側に向かうに伴い、断面形状が-Y側に突出する状態から+Y側へ突出する状態へと周期的に繰り返すこととなる。このため、接合部110の見かけの断面係数は向上することとなるため、接合部110の剛性が向上することとなる。
【0054】
また、接合導体100は後述するように、導体接合装置1により超音波溶接を行っているため、接合部110の断面における導体同士の界面には超音波接合部160が形成されている。
【0055】
さらにまた、接合部110は、先端に配置された波形部140と長手方向Xの先端側端部の間に平面部150が備えられているとともに、基端に配置された波形部140と長手方向Xの基端側端部の間に平面部150が備えられている。
詳述すると、この平面部150は、図1及び図2(a)に示すように、-X側及び+X側に向かって平面状に突出して形成されている。換言すると、波形部140は接合導体100の先端から所定の間隔を隔てた位置に配置されていることとなる。
【0056】
次に、被覆電線200から露出した導体露出部220先端側を接合し接合導体100を製造する導体接合装置1について、図3乃至図8に基づいて説明する。
導体接合装置1は、図3に示すように、複数本の被覆電線200の先端側から露出する導体露出部220同士を超音波溶接(超音波金属接合)する装置であり、上下方向Zに昇降する超音波溶接具10と、超音波溶接具10の+X方向側に固定された一対の幅方向調整部20と、下降する超音波溶接具10とで導体露出部220を圧縮する複数のアンビル30と、超音波溶接具10及び幅方向調整部20の移動を制御する制御部40とで構成されている。
【0057】
超音波溶接具10は、図示しない昇降用モータによって上下方向Zに沿って昇降する昇降部11と、昇降部11の中央部分から+X方向側に突出するホーン支持部12と、ホーン支持部12の+X方向側端面から下方に延びるホーン13とで構成されている。
なお、昇降用モータは制御部40により制御されている。
【0058】
ホーン支持部12は、図3及び図4に示すように、昇降部11の中央部分から+X方向側に突出するとともに、ホーン13を昇降部11に支持するように構成されている。
なお、本実施形態において、ホーン支持部12は長手方向Xに沿って昇降部11から突出しているが、必ずしも長手方向Xに沿って突出している必要はなく、例えば幅方向Yに沿って突出するように構成されてもよい。すなわち、本実施形態において、ホーン支持部12の突出方向は、後述する規制部21の移動方向と直交するように構成されているが、規制部21の移動方向に沿うように構成されていてもよい。
【0059】
ホーン13は、ホーン支持部12の+X方向側端面から下方に延び、図示しない超音波発振器と接続されることで長手方向Xに沿って超音波振動するように構成されている。
また、ホーン13の底面であるホーン側下面13aには、図5(a)に示すように、上方に窪ませて形成したホーン側凹部14と、下方に突出させて形成したホーン側凸部15が、長手方向X及び幅方向Yに沿って格子状に複数設けられている。すなわち、ホーン13の底面は長手方向X及び幅方向Yから視て凹凸形状となるように形成されている(図5(b)及び図5(c)参照)。
【0060】
詳述すると、ホーン側凹部14は、ホーン側下面13aから上方に窪ませて形成されたホーン長手方向谷部14a(図5(b)参照)と、ホーン側下面13aから上方に窪ませて形成されたホーン幅方向谷部14b(図5(c)参照)とで構成されており、これらの交差部分に形成される。
【0061】
また、ホーン側凸部15は、長手方向Xに沿って形成されたホーン長手方向谷部14aの間において、ホーン側下面13aから下方に突出するホーン長手方向山部15a(図5(b)参照)と、幅方向Yに沿って形成されたホーン幅方向谷部14bの間において、ホーン側下面13aから下方に突出するホーン幅方向山部15b(図5(c)参照)とで構成されており、これらの交差部分に形成される。
【0062】
このホーン長手方向谷部14a及びホーン長手方向山部15aは、幅方向Yに沿ってそれぞれ等間隔に5列及び6列配列され、ホーン幅方向山部15b及びホーン幅方向谷部14bは長手方向Xに沿ってそれぞれ等間隔に23列及び24列配列されている(図5(a)参照)。このように配置されたホーン側凹部14及びホーン側凸部15は、底面視においてアヤメ形状となるように形成されている。
【0063】
超音波溶接具10の+X方向側において、対向配置された一対の幅方向調整部20は、被覆電線200の幅方向Yへの移動を規制する規制部21と、規制部21を固定するとともに支持する固定支持部22と、規制部21を間接的に昇降部11に固定する固定部23と、固定部23に対して固定支持部22を移動可能に連結させる連結部24とで構成されている。
【0064】
規制部21は、幅方向Yに沿って所定間隔を隔てて配置されており、図3及び図4に示すように、長手方向Xに沿った長さが対応するホーン13の長さと等しく、上下方向Zに沿った高さが導体露出部220の外径の3倍に比べて十分に長くなるように構成されており、対向する他の規制部21と対向するように規制面26が設けられている。
【0065】
なお、本実施形態において、規制部21の高さは、導体露出部220の外径の3倍に比べて十分な長さとしているが、導体露出部220の外径の3倍である必要はなく、超音波溶接される複数の導体露出部220が形成する電線束の総外径よりも十分に長く形成されていればよい。
【0066】
規制部21の上端面には、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15と噛み合って、規制部21の幅方向Yへの移動を補助する規制移動補助部25が形成されている。
【0067】
規制移動補助部25は、規制面26における上端側から上方にわずかに突出した移動補助部251と、移動補助部251の幅方向Yの外側において下方側に窪んで形成された上面凹部252とで構成されている。また、移動補助部251は上方に突出する複数の規制部側凸部253が長手方向Xに沿って並んでいる。
【0068】
この規制部側凸部253は、ホーン長手方向谷部14a及びホーン長手方向山部15aに比べて、高さが2分の1程度であり、規制部側凸部253三個で形成する幅がホーン長手方向山部15a(ホーン長手方向谷部14a)の幅よりもわずかに小さくなるように構成されており、ホーン長手方向谷部14a及びホーン長手方向山部15aに対応するように、長手方向Xに沿って等間隔に18個並んでいる。
【0069】
このように構成された規制部側凸部253は、ホーン13と規制部21とが噛み合った状態で、ホーン長手方向谷部14a及びホーン長手方向山部15aとの間にわずかな隙間を設けることにより超音波振動による長手方向X方向の振幅を吸収することができる。
【0070】
対となる規制部21の対向部分に設けられた規制面26には、図6(a)に示すように、平面視で正弦波状の波形規制部27と、波形規制部27の長手方向Xの両端に平坦に形成された平坦部28が設けられている。
【0071】
この波形規制部27は、対向する規制面26側に向けて所定の高さに突出した規制部側凸部271と、規制部側凸部271の突出方向とは反対方向に、規制部側凸部271の高さと同じ深さになるように窪ませた規制部側凹部272が交互に滑らかに連続して構成されている(図6(a)参照)。なお、波形規制部27は、長手方向Xに沿って4つずつ交互に連続して配置されている。
【0072】
このように対向する規制面26にそれぞれ設けられた波形規制部27は、それぞれ規制部側凸部271及び規制部側凹部272が、対向する他の規制面26に設けられた規制部側凹部272及び規制部側凸部271に対向するように配置されている。
【0073】
すなわち、+Y側の規制面26(以下、規制面26Rとする)における規制部側凸部271及び規制部側凹部272が形成する波形と、-Y側の規制面26(以下、規制面26Lとする)における規制部側凸部271及び規制部側凹部272が形成する波形とは、互いに半波長ずれて形成されている。
【0074】
本実施形態において、規制面26に形成された規制部側凸部271及び規制部側凹部272はそれぞれ4個ずつとしているが、この個数に限定するものではなく、導体接合装置1の使用方法や形状、大きさいこの個数は適宜調整することができる。
平坦部28は、波形規制部27の長手方向Xの両端側において、上下方向Z及び長手方向Xに沿って平坦状に形成された平面である。
【0075】
このように構成された規制部21の外側は、図3及び図4に示すように、固定支持部22と嵌合されて固定されている。
連結部24は、図3及び図4に示すように、昇降部11に固定された固定部23を幅方向Yに沿って貫通するとともに、一端が固定支持部22に固定された棒状体であり、制御部40により制御されている図示しない幅方向移動用モータによって、幅方向Yに沿って移動可能に構成されている。
【0076】
すなわち、連結部24は固定支持部22と固定部23とを連結するとともに、固定部23に対して規制部21が固定された固定支持部22を幅方向Yに沿って移動可能に構成されている。
なお、固定部23は昇降部11に固定されているため、規制部21及び固定支持部22は昇降部11に対して間接的に固定されている。
【0077】
図示しない昇降用モータと幅方向移動用モータを制御する制御部40は、昇降用モータと幅方向移動用モータを同期させて駆動させることができる構成であり、超音波溶接具10を下降させるとともに、対向配置された規制部21を幅方向Yに沿って同時に移動させることができる。
なお、制御部40の制御により、規制部21は別個独立に幅方向Yに沿って移動させることもできる。
【0078】
アンビル30は、導体接合装置1の基板上に設けられた直方体状の受け治具であり、後述するレール50に沿って移動可能に構成された可動基部31と、可動基部31に立設されたアンビル上部32とで構成されている。
【0079】
アンビル上部32は、その幅方向Yに対する長さが、超音波溶接される複数の導体露出部220が形成する電線束の幅方向Yに対する長さよりもわずかに長くなるように構成されるとともに、その高さが規制部21の高さよりも高くなるように構成され、アンビル上部32の主面であるアンビル主面321が幅方向Yを向くように可動基部31の上部に立設されている。
【0080】
アンビル主面321には、長手方向Xに沿って連続して配置されたアンビル側波形部33が形成されている。このアンビル側波形部33は、アンビル主面321から幅方向Yの外側に向けて突出するアンビル側凸部331と、アンビル主面321の内側に窪ませたアンビル側凹部332とで構成されている。
【0081】
このアンビル側凸部331は規制部側凹部272と嵌合するように形成されており、アンビル側凹部332は規制部側凸部271と嵌合するように形成されている。すなわち、アンビル側波形部33の振幅が波形規制部27の振幅と等しくなる平面視正弦波状に形成されている。
【0082】
このように構成されたアンビル側凸部331とアンビル側凹部332とを連続して配置させたアンビル側波形部33は、図7(a)に示すように、平面視で正弦波状に形成されており、長手方向Xに沿って4つ連続して並んでいる。
【0083】
また、アンビル側波形部33は、幅方向Yを向いたアンビル主面321の両面に設けられているが、+Y側に設けられたアンビル側波形部33(アンビル側波形部33R)と-Y側に設けられたアンビル側波形部33(アンビル側波形部33L)とは互いに半波長ずれて配置されている。すなわち、アンビル側波形部33Rは、+X側からアンビル側凹部332、アンビル側凸部331の順で設けられ、アンビル側波形部33Lは、+X側からアンビル側凸部331、アンビル側凹部332の順で設けられており、アンビル側波形部33Rとアンビル側波形部33Lとでは、アンビル側凸部331とアンビル側凹部332が互いに対向するように形成されている。
【0084】
さらに、アンビル側波形部33Lに設けられたアンビル側凸部331及びアンビル側凹部332は、規制面26Lに設けた規制部側凹部272及び規制部側凸部271と対向するようにアンビル30と規制部21Lとが配置されている。同様に、アンビル側波形部33Rに設けられたアンビル側凸部331及びアンビル側凹部332は、規制面26Rに設けた規制部側凹部272及び規制部側凸部271と対向するようにアンビル30と規制部21Rとが配置されている。
【0085】
アンビル上部32の上面であるアンビル側上面322は、超音波溶接具10を下降させた場合においてホーン側下面13aとで導体露出部220を圧縮させる面であり、上下方向Zに沿って形成された凹凸のアンビル側凹凸部34が設けられている。
【0086】
また、アンビル側凹凸部34の先端側及び後端側には、アンビル側波形部33が形成する正弦波の約半波長の長さとなる平面状に形成された平坦部35が、長手方向Xに沿って備えられている。
【0087】
なお、本実施形態においては、アンビル上部32の幅方向Yの幅が異なるように構成されたアンビル30が3個設けられている(アンビル30a、30b、30c)。幅方向Yの幅は、アンビル30aが一番小さく、アンビル30cが一番大きくなるように形成されている。
このように複数設けられたアンビル30(アンビル30a、30b、30c)は、レール50に沿って移動可能に構成され、所望のアンビル30を超音波溶接具10の下方に配置させることができる。
【0088】
また、本実施形態において、アンビル30は3個設けられているが、接続する被覆電線200に合わせて設ける個数を適宜調整でき、また各アンビル30におけるアンビル上部32の幅も適宜調整できる。
【0089】
このように構成された超音波溶接具10と幅方向調整部20は、図3及び図8に示すように、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15に規制部側凸部253が緩く嵌合されることにより、規制部21がホーン側下面13aに沿って移動させることができる。
【0090】
また、アンビル30は、レール50に沿って移動させることにより、ホーン側下面13aとアンビル側上面322とが対向するように配置することができる(図8(b)参照)。これにより、ホーン側下面13aとアンビル側上面322と一対の規制面26とで、複数本の導体露出部220を挿通させる配置空間Sを形成することができる(図8(a)参照)。
【0091】
このように超音波溶接具10に対して、規制部21が幅方向Yに沿って移動可能に幅方向調整部20を固定するとともに、ホーン13の下方にアンビル30を配置させた導体接合装置1は、導体露出部220を配置空間Sに挿通させた状態で、制御部40の制御により昇降用モータで超音波溶接具10及び幅方向調整部20を下方側に移動できるとともに、幅方向移動用モータにより規制部21を幅方向Yに沿って移動させることができる。
【0092】
以下、導体接合装置1を用いた接合導体100の製造方法について、図9乃至図11に基づいて簡単に説明する。
ここで図9は、複数本(本実施形態では9本)の被覆電線200における導体露出部220を溶融接合させる導体接合方法のフローチャートを示し、図10は、導体露出部220(導体露出部220)を配置空間Sに挿通し、規制部21を幅方向Yに沿って移動させた状態を説明する説明図を示し、図11は、図8におけるα部のD-D断面図を用いて導体露出部220を接合させる導体接合方法を説明する説明図を示す。
【0093】
詳述すると、図10(a)は導体露出部220を挿通させる前の規制部21及びアンビル30の拡大平面図を示し、図10(b)は導体露出部220を挿通させて規制部21を導体露出部220に向けて移動させた状態における規制部21及びアンビル30の拡大平面図を示し、図10(c)は図10(b)において圧縮された導体露出部220の概略平面図を示す。
【0094】
図11(a)は配置空間Sに導体露出部220を挿入した状態におけるD-D断面図を示し、図11(b)は配置空間Sに導体露出部220を挿入した状態で超音波溶接具10及び幅方向調整部20を下降させて圧縮した導体露出部220に対して超音波溶接をした状態におけるD-D断面図を示す。
なお、図11において、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15の図示を省略している。
【0095】
被覆電線200の端末部分に設けられた導体露出部220は、図9に示すように、配置空間Sに導体露出部220を配置する電線配置工程s1と、超音波溶接具10と幅方向調整部20とを下降する圧縮移動工程s2と、ホーン13とアンビル30とで導体露出部220を圧縮する導体圧縮工程s3と、圧縮された導体露出部220を超音波により溶融接合する超音波溶接工程s4とをこの順に行うことで導通可能に接続される。
なお、導体圧縮工程s3と超音波溶接工程s4とは同時に行うこともできる。
【0096】
以下、各工程について図10及び図11に基づいて詳述する。
あらかじめ、複数本(本実施形態では9本)の被覆電線200を用意して、被覆電線200の一端側(―X方向側)の絶縁被覆210を所定の長さ分だけ切り剥ぎ、絶縁被覆210に囲繞された撚線導体を露出させて導体露出部220を形成する。
【0097】
次に、接続する導体露出部220の本数や外径に適したアンビル30を選択し、アンビル側上面322がホーン側下面13aと対向配置するようにレール50に沿って移動させ、アンビル30を所定の位置に配置する。ここではアンビル30aを超音波溶接具10の下方側に配置することとする。
続いて、規制面26が所定の間隔となるまで規制部21を幅方向Yに沿って移動させるとともに、ホーン13が所定の高さとなるまで超音波溶接具10を上昇させて、配置空間Sを形成する。
【0098】
この状態において、図10(a)に示すように、所定の間隔を隔てて対向配置された規制部21とホーン13とで形成された配置空間Sに、導体露出部220を配列させて、+X方向側から-X方向側に向けて挿入する(電線配置工程s1)。なお、本実施形態では、導体露出部220を上下方向Zに沿って3本、幅方向Yに沿って3本ずつ配置させた、計9本の導体露出部220を配置空間Sに挿通させて接合させる。
【0099】
そして、制御部40の制御により、超音波溶接具10を下降させるとともに、超音波溶接具10の下降と同期させて規制部21を導体露出部220側へ幅方向Yに沿って移動させる。これにより、図10(b)及び図11(a)に示すように、規制面26がアンビル上部32の幅方向Y側の両側面と当接するとともに、導体露出部220がホーン側下面13a及びアンビル側上面322とで挟み込まれ、導体露出部220がホーン13により上方から押し付けられる。(圧縮移動工程s2)。
【0100】
この圧縮移動工程s2について詳述すると、導体露出部220がホーン側下面13aとアンビル側上面322と一対となる規制面26との間に形成される配置空間Sに配置された状態において、超音波溶接具10を下降させるとともに、規制部21をホーン側下面13aに沿って導体露出部220側へ移動させることにより、規制面26に設けられた波形規制部27と、アンビル主面321に設けられたアンビル側波形部33とが互いに嵌合することとなる。
【0101】
ここで、アンビル主面321の幅方向Yに対する幅は、導体露出部220の電線束が形成する幅よりもわずかに長くなるように構成されているため、波形規制部27とアンビル側波形部33と嵌合した状態において、導体露出部220が規制部21とアンビル上部32との間に噛み込まれることも防止できる。
【0102】
また、導体露出部220が配置空間Sに配置された状態において、超音波溶接具10がさらに下降させることで、導体露出部220が上方から押されて幅方向Yに移動したとしても、規制面26により導体露出部220の幅方向Y方向への移動を規制できる。
【0103】
続けて、超音波溶接具10をさらに下方に下げることにより(導体圧縮工程s3)、導体露出部220がホーン13によって加圧されて変形し、幅方向Yに広がることとなるが、波形規制部27がアンビル上部32と嵌合していることにより、導体露出部220が規制面26に当接することとなる。
【0104】
そしてさらに導体露出部220がホーン13に加圧されることにより、図10(b)に示すように、導体露出部220が規制面26に設けられた波形規制部27に押し付けられることとなり、被覆電線200の側面に対応する箇所に長手方向Xに沿って連続する波形が形成されることとなる。
【0105】
このように、被覆電線200が配置空間Sにおいて配列された状態で、ホーン13をさらに下降することにより、導体露出部220を上下方向Zから圧縮させることができ(導体圧縮工程s3)、上下方向Zに配置された導体露出部220同士をより確実に接触させることができる。また、導体露出部220が規制面26に当接した状態で圧縮されるため、導体露出部220は、長手方向Xに沿って波形状に形成される。これにより、幅方向Yに沿って並列配置された導体露出部220同士が長手方向Xと交差する方向(幅方向Y)に接触させることができるとともに、圧縮によって導体露出部220同士の確実に接触させることができる。
【0106】
このように導体露出部220同士を確実に接触させて接合し、確実な導電性の確保することは接合導体100の製造において重要な課題である。また例えば、近年車両の軽量化の要求に伴い、合金化された高強度の電線も接合する必要が出てきている。これらの高強度の材料は変形しづらく、導体露出部220同士をより確実に接触させることが困難である。
【0107】
このように導体露出部220同士を確実に接触させて接合するため、例えば本実施形態における製造工程として、導体圧縮工程s3において、後述の超音波溶接工程s4の溶接時より弱い超音波振動を行い、材料の温度を上昇させて強度を低下させながら導体圧縮工程s3を実施しても良い。また例えば、導体圧縮工程s3の終了後であって、超音波溶接工程s4の直前に溶接時より弱い超音波振動を行うことによっても同じ目的は達成される。
【0108】
導体露出部220の導体の総断面積をアンビル面幅で割ることから計算される金型内が導体にて100%充填される厚みを100%ハイトとすると、導体圧縮工程s3を行う際には、100%ハイトより低いハイトまで圧縮することが望ましい。
【0109】
これにより、金型内に充填された導体露出部220には長手方向Xに伸びが発生し、導体露出部220表面に形成されている酸化膜が破られ、その後の溶接時での酸化膜の除去が効率的に行われる。100%以下であれば上記目的は達成されるが、95%以下70%以上が好ましい。より好ましくは90%から80%の間で行われる。圧縮が小さいと上記目的が達成されにくく、圧縮が大きすぎると電線の根本部分において断面積が小さくなり強度が弱くなるため好ましくない。
【0110】
この状態において、ホーン13を幅方向Yと交差する長手方向Xに沿って超音波振動させることで、導体露出部220同士が超音波溶接により互いに超音波金属接合される(超音波溶接工程s4)。超音波溶接工程s4では、制御部40で制御を行い、溶接時の上下方向Zでの下死点(停止点)を決めてもよい。これにより、導体露出部220の溶接時の温度の急上昇が抑制され、ホーン13への固着が抑制される。
【0111】
また、溶接時の下死点に達してからも超音波振動は継続されても良い。これにより、溶接部は酸化膜が除去され、導体露出部220の表面の原子同士が接したまま、高温で維持される。これにより導通性および剛性がより向上する。なお、下死点のハイトは、前記導体圧縮工程s3で形成したハイトより小さいことが望まれ、導体露出部220の総断面積をアンビル面幅から計算される金型内が導体にて100%充填される100%ハイトより小さいことが望まれる。100%以下であれば上記目的は達成されるが、90%以下70%以上が好ましい。より好ましくは85%から80%の間で行われる。圧縮が小さいと上記目的が達成されにくく、圧縮が大きすぎると電線の根本部分において断面積が小さくなり弱強度となり好ましくない。
【0112】
なお、本実施形態に記載されるように、規制部21における規制面26に波形規制部27が形成されていない場合であっても、すなわち、製造させる接合導体100における接合部110の側面に波形状の波形部140が形成されない場合においても、導体露出部同士を確実に接触させて接合させることができ、接合導体の導電性を確実に確保することができる。
【0113】
これにより、配置空間Sの内部において、長手方向Xに沿った波形状が形成されるように加圧された9本の導体露出部220が、長手方向X及び幅方向Yに沿って隣接する導体露出部220同士を確実に接触させた状態で、超音波溶接されることとなり、導通性及び剛性が向上した接合導体100を製造することができる(図11(b)参照)。
【0114】
このように、長手方向Xに沿って配置された複数の導体露出部220が、溶融接合された接合部110を有する接合導体100であって、接合部110は、長手方向Xに沿って互いに対向する二つの面である第一面121及び第二面122が設けられ、対向する第一面121及び第二面122のうちの双方に、二つの面が対向する幅方向Yの外側に向けて突出する山部141と、幅方向Yの内側に窪んだ谷部142とが、長手方向Xに沿って連続する、波形状の波形部140が備えられたことにより、導体露出部220同士の接合強度を向上させ、導電性を向上させることができる。
【0115】
詳述すると、対向する面である第一面121及び第二面122のうち少なくとも第一面121には波形部140が形成されているため、接合部110を構成する複数の導体露出部220のうち、幅方向Yに並んで配置された導体露出部220は、幅方向Yにおいて隣接する他の導体露出部220と長手方向Xと交差する方向に沿って接触した状態で接合されている(図10(c)参照)。このため、接合部110においては、幅方向Yに配置された導体露出部220同士の接合強度が向上している。
【0116】
したがって、接合部110の一体性を向上させることができ、接合導体100を構成する導体露出部220の導電性を向上させることができるとともに、接合導体100の剛性も向上させることができる。
【0117】
また、第一面121及び、第一面121と対向する第二面122の双方に波形部140が備えられ、第一面121に形成された波形部140を波形部140Lとし、第二面122に形成された波形部140を波形部140Rとし、波形部140Lと波形部140Rとが同じ波形で構成されるとともに、波形部140Lにおける山部141が、波形部140Rにおける谷部142と対向するとともに、波形部140Lにおける谷部142が、波形部140Rにおける山部141と対向している、換言すると、第一面121に形成された波形部140Lと第二面122に形成された波形部140Rとが、長手方向Xに沿って半波長ずれて構成されているため、幅方向Yに沿って並んで配置された導体露出部220同士が一定の幅で幅方向Yに振幅している。このため、接合部110全体の見かけの断面係数を向上させることができ、接合導体100の剛性を向上させることができる。
【0118】
また、幅方向Yに対する第一面121と第二面122との幅が長手方向Xにおいて一定であるため、すなわち、長手方向Xにおける導体露出部220同士の断面積が一定であるため、接合部110の剛性の不均一を抑制することができ、接合導体100品質のばらつきを抑えることができる。
【0119】
さらにまた波形部140が長手方向Xに沿って複数設けられていることにより、長手方向Xと交差する交差方向に周期的に並んで配置されていた導体露出部220が接合されている接合部110では(図10(c)参照)、交差方向に並んで配置された導体露出部220同士の接合強度を向上させることができるとともに、導体露出部220同士の接触面積を増大させることができる。したがって、接合部110の一体性をより向上させることができ、導体露出部220の導電性及び剛性をより向上させることができる。
【0120】
また、谷部142の底部から山部141の頂点までの直交断面方向における高さL1が、第一面121と第二面122との幅方向Yにおける間隔L2の0.5倍以下で構成されることにより、接合導体100の導電性を向上させることができるとともに、剛性を確実に向上させることができる。
【0121】
詳述すると、谷部142に対する山部141の高さが第一面121と第二面122との幅方向Yにおける間隔の0.5倍よりも高い場合、接合部110における波形の振幅が大きくなり、導体露出部220にかかる負荷が大きくなり、導体露出部220が部分的に断裂や損傷するおそれがあり、接合導体100の導電性を十分に確保できず、また剛性も低下するおそれがある。
【0122】
しかしながら、幅方向Yにおける谷部142に対する山部141の高さL1が、第一面121と第二面122との幅方向Yにおける間隔L2の0.5倍以下で構成されることにより、接合部110を構成する導体露出部220の負荷が軽減できるとともに、幅方向Yに並んだ導体露出部220を幅方向Yに振幅させることができるため、湾曲による導体露出部220同士の接合強度を確実に向上させることができるとともに、導体露出部220同士の接触面積を増大させることができる。
【0123】
これにより、接合部110の一体性を向上させることができるとともに、導体露出部220が部分的に断裂や損傷する可能性を低減でき、接合導体100の導電性を十分に向上させることができるとともに、剛性を確実に向上させることができる。
【0124】
さらにまた、谷部142の底部から山部141の頂点までの直交断面方向における高さL1が、複数配置された導体露出部220のうちの最小径である径L3の0.5倍以上となるように構成されることにより、接合導体100の導電性を向上させることができる。
【0125】
詳述すると、幅方向Yにおける谷部142に対する山部141の高さL1が、複数配置された導体露出部220のうちの最小径の0.5倍よりも低い場合、接合部110における山部141及び谷部142が形成する波形の振幅量が小さく、幅方向Yに沿って配置された導体露出部220同士が長手方向Xに対して交差した状態で配置されないため、接合部110の一体性を十分に向上させることができず、接合導体100の導電性を十分に向上させることができない。
【0126】
これに対して、幅方向Yにおける谷部142に対する山部141の高さが、複数配置された導体露出部220のうちの最小径の0.5倍以上とすることにより、接合部110を山部141及び谷部142に沿って確実に湾曲させることができるため、幅方向Yに沿って配置された導体露出部220同士が長手方向Xに対して交差した状態で配置されることとなる。これにより、導体露出部220同士の接合強度を確実に向上させることができるとともに、導体露出部220同士の接触面積を増大させることができ、接合導体100の導電性を向上させることができる。
【0127】
また、接合部110は、長手方向Xに沿って平面状に形成された平面部150を先端と波形部140との間に有してもよい。これにより、導体露出部220同士の接合が接合部110の先端側から剥離されることを抑制できる。
【0128】
詳述すると、波形部140を構成する山部141及び谷部142は、導体露出部220を湾曲させて構成されているため、湾曲方向と反対側に外力が作用した場合に、導体露出部220同士の接合が剥離しやすくなる。
【0129】
しかしながら、接合部110は平面部150を先端と波形部140との間に有しているため、山部141や谷部142に対して湾曲方向と反対側への意図しない外力が直接作用することを防止できるとともに、仮に意図しない外力が作用したとしても、平面部150により外力を吸収できるため、導体露出部220同士の接合の剥離を抑制できる。
【0130】
また、接合部110は、超音波溶接で形成された接合部110が構成されていることにより、接合部110における導体露出部220同士の界面を超音波溶接により接合させることができるため、接合導体100の内部においても十分に接合することができる。これにより、接合導体100の接合強度を安定させることができる。また、過剰な熱の付与による物性変化が抑制されるため、異物の混合を防止できる。したがって、接合導体100の導電性及び剛性を安定させることができる。
【0131】
また、接合部110の断面において、導体露出部220が変形しているとともに、導体露出部220同士の界面が超音波接合部160により密接して接合されていることから、具体的には、図2(b)及び図2(c)に示すように、長手方向Xと直交する直交断面において導体露出部220が例えば真円状から楕円形状に変形していることから、導体露出部220同士の接触面積が増加するとともに、導体露出部220同士の接合強度が増大しているため、接合部110の一体性がより向上され、接合導体100の導電性及び剛性をより向上させることができる。
さらにまた、導体露出部220が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されてもいることにより、接合導体100の軽量化を図ることができる。
【0132】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
導体は、導体露出部220に対応し、
接合部は、接合部110に対応し、
接合導体は、接合導体100に対応し、
第一波形部は、波形部140Lに対応し、
第二波形部は、波形部140Rに対応し、
対向方向は、幅方向Yに対応し、
超音波接合部は、接合部110に対応し、
超音波溶接部は、超音波接合部160に対応し、
第一方向は、上下方向Zに対応し、
第二方向は、幅方向Yに対応するが
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0133】
例えば、本実施形態において、導体露出部220は、導電性を有する素線を撚った撚線導体としているが、この形態に限定されず、例えば単線で構成された手もよいし、素線を束ねてもよい。また、導体露出部220は、アルミニウムやアルミニウム合金などで構成されたアルミニウム系に限定されず、例えば、銅や銅合金で構成されてもよい。すなわち、導電性を有すればどのような材質で構成されていればどのような材質でもよい。
【0134】
また、導体露出部220は、絶縁性の絶縁被覆210で被覆させた被覆電線200の一端において、外層を形成する絶縁被覆210を切剥いで露出させているが、絶縁被覆210で被覆されていない導体や素線を束ねただけの導体であってもよい。
【0135】
さらにまた、導体露出部220は、同一の導体としているが、それぞれ異なる種類の導体を複数用いても構わない。さらに言えば、上述の複数の導体露出部220には、例えば銅管や銅箔などで接合部分を囲繞した構成を用いても構わない。
【0136】
また、波形部140は、第一面121又は第二面122の両方に形成されている場合のみならず、一方にのみ形成されていてもよい。また、第一面121又は第二面122の全面に形成されている場合の他、一部分に形成されていてもよい。
さらに、波形部140は、長手方向Xに沿って少なくとも山部141及び谷部142がそれぞれ一つ以上連続していればよく、例えば、少なくとも一つ以上の山部141と谷部142とが連続していれば、山部141と谷部142の数が一致している必要はない。
【0137】
また、本実施形態において、導体露出部220を挿入するための配置空間Sを形成するホーン側下面13a、アンビル側上面322、一対の規制面26のうち、規制面26にのみ波形状の波形規制部27を設けているが、例えば図12及び図13に示すように、ホーン13の底面部(波状底面部13bとする)及びアンビル側上面322を波形状に形成してもよい。
【0138】
以下、波状底面部13b及びアンビル側上面322を波形状に形成した導体接合装置1xについて図12及び図13に基づいて簡単に説明する。
ここで、図12は導体接合装置1xの概略斜視図を示し、ホーン13は導体接合装置1xにおける図8(a)におけるC-C断面図に対応する断面図示のうち、波状底面部13b及びアンビル側上面322を拡大して図示している。
【0139】
図12及び図13に示すように、アンビル側上面322には、アンビル側凹凸部34の代わりに、圧縮側波形部37が設けられている。
なお、圧縮側波形部37が構成されたアンビル30をそれぞれアンビル30d、アンビル30e、アンビル30fとする(図12参照)。
【0140】
この圧縮側波形部37は、交差側波形部に対応しており、平坦部35に比べて上方に向けて突出する圧縮側凸部371と、下方に向けて窪んだ圧縮側凹部372とで構成されており、長手方向Xに沿って4つ連続して並んで配置されている。すなわち、圧縮側凸部371は交差側山部に対応し、圧縮側凹部372は交差側谷部に対応し、それぞれが長手方向Xに沿って連続して配置されている。
【0141】
一方、図13に示すように、ホーン13の底面側には、下方側に突出する波状底面部13bが設けられており、波状底面部13bには、上方側に向けて円弧状に窪んだ谷を形成するホーン幅方向谷部14cと、下方側に円弧上に突出するホーン幅方向山部15cが備えられている。
【0142】
また、波状底面部13bに沿って幅方向Yに移動可能に形成された規制部21には、規制移動補助部25の代わりに移動用波形部29が形成されている。この移動用波形部29は、ホーン幅方向谷部14cに対して緩く嵌合できる移動補助用凸部291と、ホーン幅方向山部15cと緩く嵌合できる移動補助用凹部292とで構成されている。なお、移動補助用凸部291と移動補助用凹部292とは連続した側面視略正弦波状に形成されている。
【0143】
このように構成された導体接合装置1xは、幅方向Yのみならず上下方向Zに沿っても導体露出部220を波形状に形成した状態で超音波接合することができるため、幅方向Yに沿って対向した第一面121及び第二面122に波形部140が形成されているのみならず、上下方向Zに沿って対向した第三面131及び第四面132にも上下側波形部170が形成された接合導体100xを製造することができる。
【0144】
以下、接合導体100xについて図14図16に基づき簡単に説明する。
ここで図14は接合導体100xの概略斜視図を示し、図15は接合導体100xの平面図(図15(a))及び側面図(図15(b))を示す。また、図16は、図15(a)におけるE-E断面図平面図(図16(a))、F-F断面図平面図(図16(b))、G-G断面図平面図(図16(c))、H-H断面図平面図(図16(d))を示す。
【0145】
図14及び図15に示すように、接合導体100xは第一面121及び第二面122に波形部140が形成されているのみならず、第三面131及び第四面132に波形状の上下側波形部170が長手方向Xに沿って4つ連続して設けられており、側面視において正弦波状に形成されている。
より詳しくは、上下側波形部170は、第三面131に対して上下方向Zの外側に突出している上下側山部171と、第三面131に対して上下方向Zの内側に窪んだ上下側谷部172とで構成されており、上下側山部171と上下側谷部172とが連続して交互に配置されている。
【0146】
このように構成された接合導体100xは、図16に示すように、長手方向Xに沿って-Xから+Xに向けうに伴い、幅方向Yにおいて山部141が-Y側に突出している状態から(図16(a)参照)、山部141が突出していない状態となり(図16(b)参照)、続いて山部141が+Y側に突出している状態を経て(図16(c)参照)、山部141が突出していない状態となる(図16(d)参照)。
【0147】
同様に上下方向Zに対して、長手方向Xに沿って-Xから+Xに向けうに伴い、上下側山部171が側に突出している状態から(図16(b)参照)、上下側山部171が上方(+Z側)に突出する状態となり(図16(b)参照)、上下側山部171が突出していない状態を経て(図16(c)参照)、上下側山部171が下方(-Z側)に突出する状態となる(図16(d)参照)。
【0148】
すなわち、長手方向Xに沿って-Xから+Xに向けうに伴い、突出部分である山部141及び上下側山部171が螺旋状に突出することとなるため、接合導体100に比べてより見かけの断面係数が向上し、剛性を向上させることができる。なお、ホーン13の底面部である波状底面部13bとアンビル側上面322にそれぞれホーン幅方向谷部14c及びホーン幅方向山部15cと、圧縮側波形部37とを設けた構成としているが、例えば、アンビル側上面322の一方にのみ圧縮側波形部37を設けた構成としてもよい。
【0149】
このように、直交断面において対向する上下方向側面組130における第三面131及び第四面132に、外側に向けて突出する上下側山部171と、内側に窪んだ規制部側凹部272とが、長手方向Xに沿って連続する、波形状の上下側波形部170が構成されることにより、幅方向Y及び上下方向Zに並んで配置された導体露出部220同士の接触面積及び接合強度が増大される。すなわち、導体露出部220同士の接触面積及び接合強度がより増大されこととなるため、接合導体100の一体性をより向上させることができ、接合導体100の導電性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0150】
100 接合導体
110 接合部
121 第一面
122 第二面
131 第三面
140 波形部
140L 波形部
140R 波形部
141 山部
142 谷部
170 上下側波形部
171 上下側山部
172 上下側谷部
220 導体露出部
s3 導体圧縮工程
s4 超音波溶接工程
X 長手方向
Y 幅方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16