(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220318BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220318BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220318BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H01B7/00 301
B60R16/02 623U
H01B7/18 G
(21)【出願番号】P 2018127746
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】須山 博史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 好一
(72)【発明者】
【氏名】押野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-116109(JP,A)
【文献】特開2016-040969(JP,A)
【文献】特開2010-166750(JP,A)
【文献】特開2015-076952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
H01B 7/00
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、
前記樹脂シートにより筒状の空間を形成する複数の壁部を備え、
前記複数の壁部のうち少なくとも1つの壁部は、長手方向に互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部に対して傾斜して
おり、
前記複数の壁部のうち、少なくとも2つの壁部が互いに重なり合う重ね合わせ部を有し、
前記重ね合わせ部において外側に配置された壁部は、前記長手方向に互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部に対して傾斜している電線用外装体。
【請求項2】
前記複数の壁部のうち互いに対向する2つの壁部は、前記長手方向に互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が前記長手方向における一側において他方の縁部に対して傾斜しており、
前記2つの壁部の間に配置された2つの壁部が前記長手方向における一側において互いに接合されている請求項
1記載の電線用外装体。
【請求項3】
前記複数の壁部のうち、少なくとも1つの壁部には、前記樹脂シートの厚み方向に貫通して車体に取り付け可能な取付部材が挿入される貫通孔が形成されている請求項1
又は2記載の電線用外装体。
【請求項4】
前記複数の壁部は、少なくとも2枚の樹脂シート片により形成されており、
一方の樹脂シート片には、縁部から突出した爪部が形成されており、
他方の樹脂シート片には、前記樹脂シートの厚み方向に貫通して前記爪部が挿入される挿入孔が形成されており、
前記爪部を前記挿入孔に挿入することにより前記筒状の空間を形成する請求項1乃至
3のいずれか1項記載の電線用外装体。
【請求項5】
前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂発泡シートが用いられる請求項1乃至
4のいずれか1項記載の電線用外装体。
【請求項6】
外装体付きワイヤーハーネスであって、
ワイヤーハーネスと、
請求項1乃至
5のいずれか1項記載の電線用外装体と、を備え、
前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている外装体付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の外周に装着される電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に配索される電線の外周に装着される電線用外装体として、電線束の周囲を囲む態様で板材を折り曲げて、電線束を収容する四角筒状の収容空間を形成することにより、電線束を外力から保護するプロテクタが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このプロテクタは、2つの板状部分と、2つの板状部分の間に配設されて板状部分の間に中空空間を形成する介在部分とを含む板状部材で電線の周囲を囲むことにより、プロテクタの軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したプロテクタでは、車体に取り付ける際や車両の走行時の振動等によってプロテクタに外力が加わると、潰れや捩れ、歪み等の変形により、プロテクタ及び電線束を正確な取り付け位置で保持させることができないおそれがあった。このため、変形を抑制した電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスの構造が求められてきた。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外力による変形を抑制することができる電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電線用外装体は、樹脂シートが折り曲げられて形成された、電線の外周に装着される電線用外装体であって、前記樹脂シートにより筒状の空間を形成する複数の壁部を備え、前記複数の壁部のうち少なくとも1つの壁部は、長手方向に互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部に対して傾斜している。
【0008】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記複数の壁部のうち、少なくとも2つの壁部が互いに重なり合う重ね合わせ部を有し、前記重ね合わせ部において外側に配置された壁部は、前記長手方向に互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部に対して傾斜している。
【0009】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記複数の壁部のうち互いに対向する2つの壁部は、前記長手方向に互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が前記長手方向における一側において他方の縁部に対して傾斜しており、前記2つの壁部の間に配置された2つの壁部が前記長手方向における一側において互いに接合されている。
【0010】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記複数の壁部のうち、少なくとも1つの壁部には、前記樹脂シートの厚み方向に貫通して車体に取り付け可能な取付部材が挿入される貫通孔が形成されている。
【0011】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記複数の壁部は、少なくとも2枚の樹脂シート片により形成されており、一方の樹脂シート片には、縁部から突出した爪部が形成されており、他方の樹脂シート片には、前記樹脂シートの厚み方向に貫通して前記爪部が挿入される挿入孔が形成されており、前記爪部を前記挿入孔に挿入することにより前記筒状の空間を形成する。
【0012】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記壁部には、前記固定部が挿入される挿入孔が形成されている。
【0013】
本発明の一態様に係る電線用外装体において、前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂発泡シートが用いられる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の外装体付きワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスと、前記電線用外装体と、を備え、前記電線用外装体は、前記ワイヤーハーネスの外周に装着されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電線用外装体及び外装体付きワイヤーハーネスによれば、外力による変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る外装体を展開した状態で示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る外装体の平面図であり、
図3(a)は外装体の左側面図であり、
図3(b)は外装体の右側面図であり、
図3(c)は外装体の上面図であり、
図3(d)は外装体の正面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスの第1の変形例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスの第2の変形例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスを示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る外装体の壁部を展開した状態で示す斜視図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る外装体の上側シート片を展開した状態で示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施の形態に係る外装体の上側シート片及び下側シート片を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る外装体の壁部を展開した状態で上側シート片を組み立てた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
はじめに、
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1を示す斜視図である。
図2は、
図1の外装体3を展開した状態で示す斜視図である。
図3は、
図1の外装体3の平面図であり、
図3(a)は
図1の外装体3の左側面図であり、
図3(b)は
図1の外装体3の右側面図であり、
図3(c)は
図1の外装体3の上面図であり、
図3(d)は
図1の外装体3の正面図である。
【0019】
以下、説明の便宜上、外装体3の長手方向(長さ方向)を「X」とし、外装体3の短手方向(幅方向)を「Y」とする。また、外装体3の高さ方向を「H」とする。
【0020】
[1-1.外装体付きワイヤーハーネスの構成]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス1について説明する。
図1に示すように、外装体付きワイヤーハーネス1は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス2と、ワイヤーハーネス2の外周に装着される電線用外装体(以下、「外装体」ともいう。)3と、を備える。ワイヤーハーネス2は、外装体3によって外部環境から保護されている。例えば、外装体3は、車の振動で車体とワイヤーハーネス2とが直接擦れることを防止するプロテクタとしての機能を有する。なお、
図1においては、ワイヤーハーネス2を1本の円柱形状で示しているが、ワイヤーハーネス2は、1本以上の電線を備えたものである。
【0021】
[1-2.外装体の構成]
次いで、
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施の形態に係る外装体3の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、外装体3は、ワイヤーハーネス(電線)2の延び方向(長手方向X)に沿って延在する複数の壁部4を備えており、この複数の壁部4に囲まれて形成され、ワイヤーハーネス2を収容する収容部5を有している。
【0023】
外装体3は、短手方向Yの断面形状が長手方向Xの前方X1から後方X2へ向かって異なる四角形状又は略四角形状となっている。具体的には、外装体3の断面形状は、長手方向Xの前方X1から後方X2へ向かって面積が大きくなっている。
図1に示す例では、後方X2における外装体3の断面形状は、台形である。
【0024】
図2に示すように、複数の壁部4は、1枚の樹脂シートを折曲部20a~20dで折り曲げることにより一体的に形成されており、筒状の空間を形成している。樹脂シートは、例えば、熱可塑性樹脂発泡シートで実現することができる。よって、外装体3の軽量化を図ることができる。また、この樹脂シートを折曲部20a~20dで折り曲げることにより、複数の壁部4が形成されている。
【0025】
図1に示すように、複数の壁部4は、底壁部41と、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して連設された側壁部42と、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して連設された側壁部43と、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して連設された内側蓋壁部44と、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して連設された外側蓋壁部45とを有している。
【0026】
底壁部41は、側壁部42と側壁部43との間に配置され、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して側壁部42が立設され、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して側壁部43が立設されている。
【0027】
内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とは、ワイヤーハーネス2の外周方向(短手方向Y)において互いに重なり合い、当該重なり合った部分が重ね合わせ部46となっている。具体的には、重ね合わせ部46は、外側蓋壁部45の端縁45aから短手方向Yの中央付近までの端部45bを内側蓋壁部44の上から覆い重ね合わせた部分である。この重ね合わせ部46において、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とが接合手段により接合されている。なお、接合手段としては、例えば、接着剤や粘着テープ等の接着手段、超音波溶着、熱溶着等の溶着手段、係止部材、リベット等を用いた嵌合手段、ホッチキス等を用いた貫通固定手段等を挙げることができる。
【0028】
内側蓋壁部44は、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して底壁部41に対して傾斜して配置されており、重ね合わせ部46において内側(収容部5側)に配置されている。
【0029】
外側蓋壁部45は、底壁部41と対向しており、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して底壁部41に対して傾斜して配置され、重ね合わせ部46において外側に配置されている。外側蓋壁部45は、内側蓋壁部44の上側に配置された状態で端縁45aが側壁部42と略面一に配置されている。
【0030】
複数の壁部4のうち少なくとも1つの壁部4(本発明の実施の形態では、側壁部42)は、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部に対して傾斜した四角形の形状を有している。傾斜した四角形の形状とは、例えば、台形である。
【0031】
具体的には、
図3(a)に示すように、側壁部42は、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部42c,42dのうち、一方の縁部42cが他方の縁部42dに対して傾斜している。すなわち、側壁部42は、一辺が傾斜した四角形の形状を有している。なお、一方の縁部42cが他方の縁部42dに対して傾斜する傾斜角度αは、壁部4の潰れや捩れ、歪み等の変形を抑制する点から、30度以下であることが好ましい。
【0032】
また、
図3(d)に示すように、底壁部41の長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部41c,41dは、平行又は概略平行に長手方向Xに延びている。また、
図3(b)に示すように、側壁部43の長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部43c,43dは、平行又は概略平行に長手方向Xに延びている。すなわち、底壁部41及び側壁部43は、長方形又は概略長方形の形状を有している。
【0033】
さらに、
図3(a),(b)に示すように、内側蓋壁部44の長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部44c,44dのうち、一方の縁部44cが他方の縁部44dに対して傾斜している。また、外側蓋壁部45の長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部45c,45dのうち一方の縁部45cが他方の縁部45dに対して傾斜している。内側蓋壁部44及び外側蓋壁部45は、
図3(c)に示すように、長方形又は概略長方形の形状を有している。
【0034】
また、
図1及び
図3(d)に示すように、内側蓋壁部44及び外側蓋壁部45の高さ方向Hの側に配置された面は、側壁部42の一方の縁部42cの傾斜にともなって傾斜している。具体的には、内側蓋壁部44及び外側蓋壁部45は、一方の縁部44c,45cの長手方向Xにおける前方X1から他方の縁部44d,45dの長手方向Xにおける後方へ向かって傾斜した傾斜面を有している。
【0035】
なお、
図3(a),(b),(c),(d)では、壁部4を直線状に示しているが、壁部4は、
図1に示すように、幅方向Yにおける概略中央が外方(収容部5と反対側)に湾曲した形状を有していてもよい。
【0036】
[1-3.外装体及び外装体付きワイヤーハーネスの形成方法]
次いで、
図1乃至
図3を参照して、上述した外装体3の形成方法、及び外装体3へワイヤーハーネス2を装着して外装体付きワイヤーハーネス1を形成する方法についてそれぞれ説明する。
【0037】
外装体3の形成方法では、先ず、外装体3を形成するための母材となる樹脂シートから、外装体3に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工としては、例えば、低コスト化と加工簡易性の点から、トムソン刃金型での打ち抜き等が挙げられる。なお、カッティングプロッタ等の切り抜き加工により、樹脂シートから外装体3に相当する部分を切り抜いてもよい。
【0038】
上記のように形成された外装体3をワイヤーハーネス2へ装着する方法では、先ず、底壁部41に対して側壁部42,43が略垂直となるように、折曲部20a,20bで折り曲げる。折曲部20a,20bで折り曲げると、側壁部42と側壁部43との間が長手方向Xに沿って上方に開口した形状となる。
【0039】
折曲部20a,20bを折り曲げた後、底壁部41にワイヤーハーネス2を載置し、底壁部41に対して内側蓋壁部44が傾斜するように、折曲部20cで折り曲げる。次に、底壁部41に対して外側蓋壁部45が傾斜するように、折曲部20dで折り曲げる。
【0040】
折曲部20dで外側蓋壁部45を折り曲げると、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とが重なって重ね合わせ部46となる。また、側壁部42と側壁部43間の開口が塞がれて収容部5が形成されるとともに、収容部5内にワイヤーハーネス2が挿通された状態で収容される。
【0041】
そして、重ね合わせ部46において、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とを接合することにより、側壁部42と側壁部43との間の開口が塞がれた状態が固定される。固定されると、外装体3が断面形状の面積が長手方向Xの前方X1から後方X2へ向かって大きくなるように形成されるとともに、ワイヤーハーネス2の外周に装着される。
【0042】
なお、外装体3は、ワイヤーハーネス2を構成する複数の電線を分散しないように固定するための固定用テープの外周に装着されていてもよく、固定用テープを使用していない複数の電線の外周に装着されていてもよい。また、外装体3は、1本の電線の外周に装着されていてもよい。
【0043】
このように、外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1において、複数の壁部4のうち側壁部42は、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部42c,42dのうち、一方の縁部42cが他方の縁部42dに対して傾斜した四角形の形状を有している。具体的には、
図3(a)に示すように、一方の縁部42cと他方の縁部42dとの間に配置された一側の縁部42eの高さH方向の寸法の値は、他側の縁部42fの高さH方向の寸法の値より低い。このため、一側の縁部42eにより側壁部42の外力による歪みが抑制され、壁部4の変形を抑制することができる。
【0044】
なお、外装体3に用いられる樹脂シートは折り曲げが可能であれば、特に限定されず、樹脂種としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれも使用することができる。このうち、軽量性、形状設計の自由度、コスト等の点で、熱可塑性樹脂発泡シートが好ましい。熱可塑性樹脂発泡シートの具体的な樹脂種については、特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0045】
また、外装体3に用いられる熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されず、例えば、軽量性と機械的強度とのバランスを向上させる点から200Kg/m3以上700Kg/m3以下が好ましく、300Kg/m3以上600Kg/m3以下がより好ましく、350Kg/m3以上550Kg/m3以下が特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、JIS K 7222に基づいて測定する。
【0046】
熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、特に限定されず、例えば、折り曲げ容易性と機械的強度の点から、0.5mm以上4.0mm以下が好ましく、0.8mm以上2.5mm以下が特に好ましい。
【0047】
また、熱可塑性樹脂発泡シートには、両面または片面に、非発泡層が形成されていてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。熱可塑性樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されていることにより、外装体3の機械的強度が向上して、収容されるワイヤーハーネス2の保護性能がより向上する。外装体3の機械的強度を確実に向上させる点から、両面に非発泡層が形成されることが好ましい。非発泡層の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0048】
熱可塑性樹脂発泡シートのショア硬さ(HSC)は、特に限定されないが、機械的強度の点から、例えば、60以上100以下が好ましい。
【0049】
なお、外装体3は、ワイヤーハーネス2を構成する複数の電線を分散しないように固定するための固定用テープの外周に装着されていてもよく、固定用テープを使用していない複数の電線の外周に装着されていてもよい。また、外装体3は、1本の電線の外周に装着されていてもよい。
【0050】
[1-4.変形例]
次いで、
図4を参照して、上述した第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1の第1の変形例及び第2の変形例について説明する。
図4は、外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1における第1の変形例を示すための外装体103a及び外装体付きワイヤーハーネス101aの斜視図であり、
図5は、外装体3における第2の変形例を示すための外装体103b及び外装体付きワイヤーハーネス101aの斜視図である。
【0051】
以下、前述の第1の実施の形態に係る外装体3及び外装体付きワイヤーハーネス1と同様又は類似する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図4に示すように、外装体103a及び外装体付きワイヤーハーネス101aにおいて、複数の壁部104aのうち2つの壁部104a(第1の変形例では、側壁部142a,143a)は、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部のうち一方の縁部が他方の縁部に対して傾斜した四角形の形状を有している。
【0053】
複数の壁部104aは、底壁部141aと、底壁部141aの端縁から折曲部20aを介して連設された側壁部142aと、底壁部141aの端縁から折曲部20bを介して連設された側壁部143aと、側壁部142aの端縁から折曲部20cを介して連設された内側蓋壁部144aと、側壁部143aの端縁から折曲部20dを介して連設された外側蓋壁部145aとを有している。
【0054】
側壁部142aは、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部42c,42dのうち、一方の縁部42cが他方の縁部42dに対して傾斜している。また、側壁部143aは、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部43c,43dのうち、一方の縁部43cが他方の縁部43dに対して傾斜している。
【0055】
すなわち、側壁部142aと側壁部143aとは、対称形状となっており、一辺が傾斜した四角形の形状を有している。また、底壁部141a、側壁部143a、内側蓋壁部144a及び外側蓋壁部145aは、長方形又は概略長方形の形状を有している。
【0056】
なお、内側蓋壁部144a及び外側蓋壁部145aの高さ方向H側に配置された面は、側壁部142aの一方の縁部42c及び側壁部143aの一方の縁部43cの傾斜にともなって、長手方向Xにおける前方X1から長手方向Xにおける後方へ向かって傾斜した傾斜面を有している。すなわち、外装体103aの断面形状は、長手方向Xの前方X1から後方X2へ向かって面積が大きくなっている。
【0057】
このように、外装体103a及び外装体付きワイヤーハーネス101aにおいて、側壁部142aの一方の縁部42cが他方の縁部42dに対して傾斜し、側壁部143aの一方の縁部43cが他方の縁部43dに傾斜した四角形の形状を有している。すなわち、一方の縁部42cと他方の縁部42dとの間に配置された一側の縁部42eの高さH方向の寸法の値は、他側の縁部42fの高さH方向の寸法の値より小さい。また、一方の縁部43cと他方の縁部43dとの間に配置された一側の縁部43eの高さHは、他側の縁部43fより低い。このため、一側の縁部42e,43eにより側壁部142a及び側壁部143aの外力による歪みが抑制され、壁部104aの変形をより抑制することができる。
【0058】
図5に示すように、外装体103b及び外装体付きワイヤーハーネス101bにおいて、複数の壁部104bのうち2つの壁部104b(第2の変形例では、内側壁部144b及び外側壁部145b)が互いに重なり合う重ね合わせ部146bを有している。そして、この重ね合わせ部146bにおいて外側に配置された外側壁部145bは、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部45c,45dのうち一方の縁部45cが他方の縁部45dに対して傾斜した四角形の形状を有している。
【0059】
具体的には、複数の壁部104bは、底壁部141bと、底壁部141bの端縁から折曲部20aを介して連設された内側壁部144bと、底壁部141bの端縁から折曲部20bを介して連設された側壁部142bと、側壁部42の端縁から折曲部20dを介して連設された上側壁部143bと、上側壁部143bの端縁から折曲部20cを介して連設された外側壁部145bとを有している。
【0060】
内側壁部144bと外側壁部145bとは、ワイヤーハーネス2の外周方向において互いに重なり合い、重なり合った部分が重ね合わせ部146bとなっている。この重ね合わせ部146bにおいて、外側に配置された外側壁部145bは、一方の縁部45cが他方の縁部45dに対して傾斜した四角形の形状を有している。傾斜した四角形の形状とは、例えば、台形である。
【0061】
また、底壁部141b、側壁部142b及び上側壁部143bは、長方形又は概略長方形の形状を有している。
【0062】
なお、重ね合わせ部146bにおいて、内側に配置された内側壁部144bは、外側壁部145bと同様に、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部のうち、一方の縁部が他方の縁部に対して同一又は概略同一の傾斜角度で傾斜した四角形の形状を有していてもよい。
【0063】
このように、外装体103b及び外装体付きワイヤーハーネス101bにおいて、重ね合わせ部146bの外側壁部145bの一方の縁部45cが他方の縁部45dに対して傾斜した四角形の形状を有している。すなわち、一方の縁部45cと他方の縁部45dとの間に配置された一側の縁部45eの高さH方向の寸法の値は、他側の縁部42fの高さH方向の寸法の値より小さい。このため、一側の縁部45eにより重ね合わせ部146bの外力による歪みが抑制され、壁部104bの変形を抑制することができる。
【0064】
[2.第2の実施の形態]
次に、
図6乃至
図10を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る外装体及び外装体付きワイヤーハーネスについて説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る外装体203及び外装体付きワイヤーハーネス201を示す斜視図である。
図7は、
図6の外装体203の壁部4を展開した状態で示す斜視図である。
図8は、
図6の上側シート片211を展開した状態で示す斜視図である。
図9は、
図6の上側シート片211及び下側シート片221を示す斜視図である。
図10は、
図7の壁部4を展開した状態で上側シート片211を組み立てた状態で示す斜視図である。
【0065】
[2-1.外装体付きワイヤーハーネスの構成]
まず、
図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る外装体付きワイヤーハーネス201について説明する。
図6に示すように、外装体付きワイヤーハーネス201は、複数の電線が束ねられたワイヤーハーネス2と、ワイヤーハーネス2の外周に装着される電線用外装体(以下、「外装体」ともいう。)203と、を備える。ワイヤーハーネス2は、外装体203によって外部環境から保護されている。外装体203は、複数の壁部4,204を備えている。
【0066】
[2-2.外装体の構成]
次いで、
図6乃至
図10を参照して、本発明の実施の形態に係る外装体203の構成について説明する。
【0067】
図6に示すように、外装体203は、ワイヤーハーネス(電線)2の延び方向(長手方向X)に沿って延在する複数の壁部4,204を備えており、複数の壁部4に囲まれて形成され、ワイヤーハーネス2を収容する収容部5を有している。
【0068】
図7に示すように、複数の壁部4は、底壁部41と、底壁部41の端縁から折曲部20aを介して連設された側壁部42と、底壁部41の端縁から折曲部20bを介して連設された側壁部43と、側壁部42の端縁から折曲部20cを介して連設された内側蓋壁部44と、側壁部43の端縁から折曲部20dを介して連設された外側蓋壁部45とを有している。
【0069】
図6に示すように、複数の壁部204は、長手方向Xへ延在し、少なくとも2枚の樹脂シート片(本実施の形態では、上側シート片211と下側シート片221の2枚のシート片。)により筒状の空間を形成する。
【0070】
図8及び
図9に示すように、上側シート片211は、1枚の樹脂シートを折曲部210a~210dで折り曲げることにより一体的に形成されている。樹脂シートは、例えば、熱可塑性樹脂発泡シートで実現することができる。よって、上側シート片211の軽量化を図ることができる。
【0071】
図8に示すように、上側シート片211は、折曲部210aを介して連設された上壁部212a及び上壁部212b(以下、「上壁部212」ともいう。)と、上壁部212の縁部から折曲部210bを介して連設された側壁部213と、上壁部212の縁部から折曲部210bを介して連設された側壁部214と、上壁部212aから折曲部210dを介して連設された後壁部215とを有している。
【0072】
図8に示すように、上側シート片211には、シート片端部211aから突出した複数の爪部216a~216fが形成されている。なお、以下では、側壁部213と側壁部214とは、対称形状ではない場合を図示して説明するが、側壁部213と側壁部214とは対称形状であってもよい。
【0073】
図9に示すように、上壁部212は、側壁部213と側壁部214との間に位置され、上壁部212aの端縁から折曲部210bを介して側壁部213が下方に延出し、上壁部212aの端縁から折曲部210cを介して側壁部214が下方に延出し、上壁部212aの後端から折曲部210dを介して後壁部215が下方に延出している(
図8及び
図10参照)。
【0074】
上壁部212aと上壁部212bとの間には折曲部210aが配置されており、上壁部212が折曲部210aで折り曲げられることにより、上壁部212bを上壁部212aに対して傾斜させて配置する。
【0075】
上壁部212bには、上側シート片211の厚み方向(高さ方向H)に貫通して車体に取り付け可能な係止部材(図示せず)が挿入される貫通孔216が形成されている。
【0076】
図8に示すように、側壁部213は、上壁部212aから連設された側壁部213a,213bと、上壁部212bから連設された側壁部213eとを有している。側壁部213a,213b,213eは、後述する下側シート片221の挿入孔222a,222b,222cにそれぞれ挿入される爪部216a,216b,216cを有している。
【0077】
側壁部214は、上壁部212aから連設された側壁部214aと、上壁部212bから連設された側壁部214bcとを有している。側壁部214a,214bは、後述する下側シート片221の挿入孔222d,222eにそれぞれ挿入される爪部216d,216eを有している。
【0078】
爪部216a~216eを挿入孔222a~222eへ挿入することにより筒状の空間を形成した状態において、側壁部213は、
図9に示すように、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部213c,213dのうち、一方の縁部213cが長手方向Xにおける一側(前方X1)において他方の縁部213dに対して傾斜した四角形の形状を有している。
【0079】
また、爪部216a~216eを挿入孔222a~222eへ挿入した状態において、側壁部214は、
図9に示すように、長手方向Xに互いに対向して延びる一対の縁部214c,214dのうち、一方の縁部214cが長手方向Xにおける一側(前方X1)において他方の縁部214dに対して傾斜した四角形の形状を有している。
【0080】
図8及び
図10に示すように、側壁部213,214には、切り欠き218a,218b,218cが形成されている。具体的には、
図8に示すように、切り欠き218aは、側壁部213aと側壁部213bとの間に形成されている。切り欠き218bは、側壁部213bと側壁部213eとの間に形成されている。切り欠き218cは、側壁部214aと側壁部214bとの間に形成されている。
【0081】
図8に示すように、後壁部215は、側壁部213と側壁部214との間に配置されている。後壁部215は、後述する下側シート片221の挿入孔222fに挿入される爪部216fを有している。
【0082】
図8及び
図9に示すように、上側シート片211は、後述する下側シート片221の挿入孔222a~222fへ爪部216a~216fを挿入した後、爪部216a~216fの先端が収容部5側へ向く方向へ折曲部217a~217fで折り曲げることにより、下側シート片221に固定される。
【0083】
また、
図9に示すように、上側シート片211は、上壁部212bの溶着部分219において下側シート片221と接合手段により接合されている。すなわち、側壁部213と側壁部214との間に配置されている2つの壁部204が長手方向Xにおける一側(前方X1)において互いに接合されている。具体的には、上側シート片211の上壁部212bと下側シート片221とが長手方向Xにおける一側(前方X1)において互いに接合されている。なお、溶着手段としては、例えば超音波溶着、熱溶着等の溶着手段を挙げることができる。
【0084】
図7に示すように、下側シート片221は、壁部4の底壁部41と一体に形成されており、底壁部41の長手方向Xにおける前方X1側から延出した部分である。
【0085】
下側シート片221には、上側シート片211の爪部216a~216fが挿入される挿入孔222a~222fと、上側シート片211の厚み方向(高さ方向H)に貫通して車体に取り付け可能な係止部材(図示せず)が挿入される貫通孔223が形成されている。
【0086】
挿入孔222a~222fは、下側シート片221の厚み方向(高さ方向H)に貫通している。挿入孔222a~222fは、上側シート片211の爪部216a~216fが挿入可能に上側シート片211の厚み寸法の値より若干大きい値の幅寸法と、爪部216a~216fの幅寸法の値より若干大きい値の長さ寸法を有している。
【0087】
貫通孔223は、上側シート片211の貫通孔216より小さく形成されている。具体的には、貫通孔223は、貫通孔216の長さ寸法及び幅寸法の値より小さい長さ寸法及び幅寸法を有している。すなわち、上側シート片211の貫通孔216は、係止部品の基部(図示省略)と、車体の取付孔に挿入可能で基部より幅狭な先端部(図示省略)が挿入可能に大きく形成されている。また、下側シート片221の貫通孔223は、先端部のみが挿入可能に貫通孔216より小さく形成されている。なお、貫通孔216は、貫通孔223と同じ大きさでもよいし、貫通孔223よりも小さくてもよい。
【0088】
[2-3.外装体及び外装体付きワイヤーハーネスの形成方法]
次いで、
図6乃至
図10を参照して、上述した外装体203の形成方法、及び外装体203へワイヤーハーネス2を装着して外装体付きワイヤーハーネス201を形成する方法についてそれぞれ説明する。
【0089】
外装体3の形成方法では、先ず、外装体3を形成するための母材となる樹脂シートから、壁部4及び下側シート片221に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工としては、例えば、低コスト化と加工簡易性の点から、トムソン刃金型での打ち抜き等が挙げられる。なお、カッティングプロッタ等の切り抜き加工により、樹脂シートから壁部4及び下側シート片221に相当する部分を切り抜いてもよい。
【0090】
また、打ち抜かれた外装体3に相当する部分のうち、下側シート片221の挿入孔222a~222eに対応する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。挿入孔222a~222eに対応する部分を打ち抜くと、下側シート片221に挿入孔222a~222eが形成される。なお、カッティングプロッタ等の切り抜き加工により、外装体3に相当する部分から挿入孔222a~222eに対応する部分を切り抜いてもよい。
【0091】
また、外装体3を形成するための母材となる樹脂シートから、上側シート片211に相当する部分を打ち抜く、打ち抜き加工を行う。なお、カッティングプロッタ等の切り抜き加工により、樹脂シートから上側シート片211に相当する部分を切り抜いてもよい。
【0092】
上記のように形成された外装体3をワイヤーハーネス2へ装着する方法では、まず、上側シート片211を折曲部210aで折り曲げることにより、上壁部212bを上壁部212aに対して傾斜させて配置する。
【0093】
また、上側シート片211を折曲部210b,210c,210dで折り曲げることにより、上壁部212の端縁から側壁部213,側壁部214,後壁部215を下方に延出させる。
【0094】
上側シート片211を折り曲げた後、上側シート片211の爪部216a~216fを下側シート片221の挿入孔222a~222fへ挿入して下側シート片221を貫通させる。
【0095】
下側シート片221の挿入孔222a~222fへ爪部216a~216fを挿入した後、爪部216a~216fを折曲部217a~217fで折り曲げる。具体的には、爪部216a~216fを先端が収容部5側へ向く方向へ折曲部217a~217fで折り曲げて下側シート片221の下面221b側に配置する。
【0096】
そして、爪部216a~216fを下側シート片221の下面221bに溶着手段により溶着する。なお、溶着手段としては、例えば超音波溶着、熱溶着等の溶着手段を挙げることができる。
【0097】
爪部216a~216fを下側シート片221の下面221bに溶着した後、上側シート片211を上壁部212bの溶着部分219において下側シート片221と溶着することにより、下側シート片221に上側シート片211を接合して固定する。
【0098】
下側シート片221に上側シート片211を固定すると、底壁部41に対して側壁部42,43が略垂直となるように、折曲部20a,20bで折り曲げる。折曲部20a,20bで折り曲げると、側壁部42と側壁部43との間が長手方向Xに沿って上方に開口した形状となる。
【0099】
折曲部20a,20bを折り曲げた後、底壁部41にワイヤーハーネス2を載置し、底壁部41に対して内側蓋壁部44が略平行となるように、折曲部20cで折り曲げる。次に、底壁部41に対して外側蓋壁部45が略平行となるように、折曲部20dで折り曲げる。折曲部20dで外側蓋壁部45を折り曲げると、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とが重なって重ね合わせ部46となる。
【0100】
また、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とが重なると、側壁部42と側壁部43間の開口が塞がれて収容部5が形成されるとともに、収容部5内にワイヤーハーネス2が挿通された状態で収容される。重ね合わせ部46において、内側蓋壁部44と外側蓋壁部45とを接合することにより、側壁部42と側壁部43との間の開口が塞がれた状態が固定され、外装体203がワイヤーハーネス2の外周に装着される。
【0101】
このように、外装体203及び外装体付きワイヤーハーネス201において、上側シート片211と下側シート片221とが溶着部分219において互いに接合されている。このため、溶着部分219により側壁部213及び側壁部214の外力による歪みが抑制され、壁部204の変形を抑制することができる。
【0102】
また、上側シート片211と下側シート片221には、樹脂シートの厚み方向(高さ方向H)に貫通して車体に取り付け可能な係止部品が挿入される貫通孔216,223が形成されている。上側シート片211と下側シート片221は、溶着部分219により互いに接合されているため外力による歪みが抑制されているため、係止部品が挿入された外装体203を車体へ取り付ける際の位置決めが容易になり、外装体203及び外装体付きワイヤーハーネス201の車体への取り付け作業の作業効率を向上することができる。
【0103】
さらに、上側シート片211に形成された爪部216a~216eを下側シート片221に形成された挿入孔222a~222eへ挿入することにより筒状の空間を形成するため、上側シート片211と下側シート片221との固定作業の作業効率を向上することができる。
【0104】
また、上側シート片211には切り欠き218a,218b,218cが形成されているため、上壁部212bを上壁部212aに対して傾斜させた状態で上側シート片211を下側シート片221に固定することができる。
【0105】
[3.他の実施の形態]
上述した本発明の第1の実施の形態における外装体3は、短手方向Yの断面形状が長手方向Xの前方X1から後方X2へ向かって異なる四角形状又は略四角形状となっている場合について説明したが、長手方向Xの前方X1から後方X2へ向かって拡径したり、縮径したり、これらが繰り返された形状であってもよい。また、外装体3は、短手方向Yの断面形状が五角形や六角形等の多角形であってもよい。
【0106】
上述した本発明の第2の実施の形態における壁部204は、壁部4から長手方向Xへ延在している場合について説明したが、底壁部41,側壁部42,43,内側蓋壁部44及び外側蓋壁部45から外側、すなわち、短手方向Y又は高さ方向Hに延在していてもよい。また、壁部204が延在している数は適宜変更が可能である。
【0107】
また、壁部204は、上側シート片211と下側シート片221との2枚のシート片により形成されている場合について説明したが、1枚のシート片で形成されていてもよい。また、2枚以上のシート片で形成されていてもよい。
【0108】
上述した本発明の実施の形態における外装体3,203は、ワイヤーハーネス2の延び方向(長手方向X)に沿って延在する複数の壁部4により形成されている場合について説明したが、延在方向の途中でワイヤーハーネス2の形状に沿うように上下左右方向に分岐されていてもよい。
【0109】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に係る外装体3,103a,103b,203及び外装体付きワイヤーハーネス1,101a,101b,201に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0110】
1…外装体付きワイヤーハーネス(第1の実施の形態)、2…ワイヤーハーネス、3…外装体(第1の実施の形態)、4…壁部、5…収容部、20a~20d…折曲部、41…底壁部、41c,41d…縁部、42…側壁部、42c,42d,42e,42f…縁部、43…側壁部、43c,43d,43e,43f…縁部、44…内側蓋壁部、44c,44d…縁部、45…外側蓋壁部、45a,45b…端部、45c,45d,45e…縁部、46…重ね合わせ部、101a,101b…ワイヤーハーネス、103a,103b…外装体、201…外装体付きワイヤーハーネス(第2の実施の形態)、203…外装体(第2の実施の形態)、204…壁部、211…上側シート片、216…貫通孔、216a~216f…爪部、219…溶着部分、221…下側シート片、223…貫通孔、X…長手方向、Y…短手方向、Z…高さ方向