(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】融着接続機
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
G02B6/255
(21)【出願番号】P 2018231456
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2020-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】細井 英昭
(72)【発明者】
【氏名】服部 真樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕之
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-005007(JP,A)
【文献】特開2010-230858(JP,A)
【文献】特開平10-239553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238298(US,A1)
【文献】特表2009-522594(JP,A)
【文献】特許第5417546(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255
6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着接続の対象とする一対の光ファイバの長手方向の位置調整を行うための駆動部と、
前記一対の光ファイバの前記位置調整が行われる所定空間領域を、前記一対の光ファイバの径方向から撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像をもとに、前記一対の光ファイバのうち前記所定空間領域の内部に位置する光ファイバの長手方向先端面の位置を検出する画像処理部と、
前記一対の光ファイバの融着接続時において前記長手方向先端面を位置させる基準となる基準セットラインの位置と、前記位置調整の前に前記画像処理部によって検出された前記長手方向先端面の位置である初期位置とを比較し、
前記一対の光ファイバのうち前記長手方向先端面が前記基準セットラインを越えている第1状態の光ファイバの前記長手方向先端面を
、前記所定空間領域の内部であって前記基準セットラインよりも前記
第1状態の光ファイバの基端側
である第1所定位置に位置させるべく
、前記
第1状態の光ファイバを
少なくとも後退させ
、且つ、前記一対の光ファイバのうち前記長手方向先端面が前記基準セットラインを越えていない第2状態の光ファイバの前記長手方向先端面の初期位置を維持して、前記一対の光ファイバの初期位置調整を行うように前記駆動部を制御する制御部と、
を備え
、
前記第2状態の光ファイバの前記長手方向先端面の初期位置は、前記所定空間領域の内部であって前記基準セットラインよりも前記第2状態の光ファイバの基端側の位置であることを特徴とする融着接続機。
【請求項2】
融着接続の対象とする一対の光ファイバの長手方向の位置調整を行うための駆動部と、
前記一対の光ファイバの前記位置調整が行われる所定空間領域を、前記一対の光ファイバの径方向から撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された画像をもとに、前記一対の光ファイバのうち前記所定空間領域の内部に位置する光ファイバの長手方向先端面の位置を検出する画像処理部と、
前記一対の光ファイバの融着接続時において前記長手方向先端面を位置させる基準となる基準セットラインの位置と、前記位置調整の前に前記画像処理部によって検出された前記長手方向先端面の位置である初期位置とを比較し、
前記一対の光ファイバのうち前記長手方向先端面が前記基準セットラインを越えている第1状態の光ファイバの前記長手方向先端面を
、前記所定空間領域の内部であって前記基準セットラインよりも前記
第1状態の光ファイバの基端側
である第1所定位置に位置させるべく
、前記
第1状態の光ファイバを
少なくとも後退させ
、且つ、前記一対の光ファイバのうち前記長手方向先端面が前記基準セットラインを越えていない第2状態の光ファイバの前記長手方向先端面を、前記所定空間領域の内部であって前記基準セットラインよりも前記第2状態の光ファイバの基端側である第2所定位置に位置させるように前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記撮像部によって撮像された画像をもとに、
前記一対の光ファイバのうち前記所定空間領域の内部に位置する前記光ファイバを検出し、
前記制御部は、前記画像処理部
によって検出された前記光ファイバが前記所定空間領域を貫通した貫通状態の光ファイバであるか否かを判断し、検出された前記光ファイバが貫通状態の光ファイバである場合、前記光ファイバの貫通状態が解消されて
なる前記
第1状態の光ファイバの前記長手方向先端面が前記画像処理部によって検出されるまで、前記一対の光ファイバの各々を後退させ、貫通状態が解消された前記
第1状態の光ファイバの前記長手方向先端面を
前記第1所定位置に位置させるように、前記駆動部を制御する、
ことを特徴とする融着接続機。
【請求項3】
前記制御部は、前記一対の光ファイバのうち、貫通状態が解消されて前記長手方向先端面が前記画像処理部によって検出された前記第1状態の光ファイバを、貫通状態にあった前記光ファイバであると特定するとともに、
貫通状態にあった前記光ファイバの前記長手方向先端面を前記所定空間領域の外部まで後退させる間、前記一対の光ファイバのうち前記所定空間領域の外部に位置している前記第2状態の光ファイバの前記長手方向先端面の位置を維持し、前記所定空間領域の外部に位置している前記一対の光ファイバのうち、貫通状態にあった前記光ファイバの前記長手方向先端面を前記第1所定位置に位置させ且つ前記第2状態の光ファイバの前記長手方向先端面を前記第2所定位置に位置させるように前記駆動部を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の融着接続機。
【請求項4】
前記制御部は、予め設定された移動量だけ前記
第1状態の光ファイバを後退させるように、前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1
または2に記載の融着接続機。
【請求項5】
前記制御部は、前記画像処理部によって検出された前記長手方向先端面の位置が前記基準セットラインよりも前記
第1状態の光ファイバの基端側の位置となるように、前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1
または2に記載の融着接続機。
【請求項6】
前記制御部は、前記基準セットラインよりも前記
第1状態の光ファイバの基端側の位置である第1の位置まで前記長手方向先端面を後退させ、後退させた前記長手方向先端面を前記第1の位置よりも前記基準セットライン側の位置である第2の位置まで前進させるように、前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1
~5のいずれか一つに記載の融着接続機。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記撮像部によって撮像された画像をもとに、
前記一対の光ファイバのうち前記所定空間領域の内部に位置する前記光ファイバを検出し、
前記制御部は、
前記画像処理部によって検出された前記光ファイバが前記所定空間領域を貫通した貫通状態の光ファイバであるか否かを判断し、検出された前記光ファイバが貫通状態の光ファイバである場合、前記光ファイバの貫通状態が解消されてなる前記第1状態の光ファイバの前記長手方向先端面が前記画像処理部によって検出されるまで
、貫通状態の前記光ファイバを後退させ、
貫通状態が解消された前記第1状態の光ファイバの前記長手方向先端面を
前記第1所定位置に位置させるように、前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1、
4~
6のいずれか一つに記載の融着接続機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ同士を融着接続する融着接続機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ同士の融着接続に用いられる融着接続機が公知である(特許文献1参照)。一般に、融着接続機は、光ファイバ同士を融着接続するための融着接続機構として、光ファイバホルダ及び放電部等を備えている。融着接続の対象とする一対の光ファイバは、2つの光ファイバホルダのV溝内に各々セットされる。2つの光ファイバホルダは、光ファイバの融着接続される先端部分(被覆が除去されたガラス部分)がホルダ外部に延出する態様で、一対の光ファイバをV溝内に各々把持する。放電部は、光ファイバの長手方向に対向する2つの光ファイバホルダの間に配置され、一対の光ファイバを融着接続するための放電を行うように構成されている。
【0003】
また、融着接続機は、一対の光ファイバの先端部分を観察するための撮像部を備えている。例えば、特許文献1に記載の融着接続機は、撮像部によって撮像された画像をもとに一対の光ファイバの各先端面を検出し、検出した各先端面同士の間隔が予め設定された端面間隔になるまで、2つの光ファイバホルダを互いに接近する方向に前進させる。これにより、一対の光ファイバの各々は、放電部側へ向かう方向に前進して、融着接続の基準セットラインに先端面の位置を合わせた状態となる。なお、基準セットラインは、放電部の放電による一対の光ファイバ同士の融着接続に適した各先端面の離間位置を示すラインである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の融着接続機では、一対の光ファイバを把持した2つの光ファイバホルダを、互いに離間する方向に後退させることが考慮されていない。このため、光ファイバホルダに光ファイバをセットした段階において、この光ファイバホルダから延出する光ファイバの先端部分の端面位置が既に融着接続の基準セットラインを越えている場合、この光ファイバの先端部分の端面位置を基準セットラインに合わせることができない。それ故、この光ファイバを光ファイバホルダにセットし直して、光ファイバホルダからの光ファイバの延出量を調整しなければならない。この結果、一対の光ファイバ同士を融着接続する作業に手間取る恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、光ファイバ同士を融着接続する作業を簡易且つ効率よく行うことができる融着接続機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る融着接続機は、融着接続の対象とする光ファイバの長手方向の位置調整を行うための駆動部と、前記光ファイバの前記位置調整が行われる所定空間領域を、前記光ファイバの径方向から撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された画像をもとに、前記光ファイバの長手方向先端面の位置を検出する画像処理部と、前記長手方向先端面を位置させる基準セットラインの位置と、前記位置調整の前に前記画像処理部によって検出された前記長手方向先端面の位置である初期位置とを比較し、前記基準セットラインの位置が前記長手方向先端面の初期位置よりも前記光ファイバの基端側の位置である場合、前記長手方向先端面を前記基準セットラインよりも前記光ファイバの基端側に位置させるべく前記光ファイバを後退させるように前記駆動部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る融着接続機は、上記の発明において、前記制御部は、予め設定された移動量だけ前記光ファイバを後退させるように、前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る融着接続機は、上記の発明において、前記制御部は、前記画像処理部によって検出された前記長手方向先端面の位置が前記基準セットラインよりも前記光ファイバの基端側の位置となるように、前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る融着接続機は、上記の発明において、前記制御部は、前記基準セットラインよりも前記光ファイバの基端側の位置である第1の位置まで前記長手方向先端面を後退させ、後退させた前記長手方向先端面を前記第1の位置よりも前記基準セットライン側の位置である第2の位置まで前進させるように、前記駆動部を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る融着接続機は、上記の発明において、前記画像処理部は、前記撮像部によって撮像された画像をもとに、前記所定空間領域を貫通した貫通状態の前記光ファイバを検出し、前記制御部は、貫通状態の前記光ファイバの前記長手方向先端面が前記画像処理部によって検出されるまで貫通状態の前記光ファイバを後退させ、後退させた前記光ファイバの前記長手方向先端面を前記基準セットラインよりも前記光ファイバの基端側に位置させるように、前記駆動部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバ同士を融着接続する作業を簡易且つ効率よく行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態1に係る融着接続機における一対の光ファイバの長手方向及び径方向の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1における画像処理部による光ファイバの画像に基づく検出処理の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1に係る融着接続機が行う一対の光ファイバの初期位置調整から融着接続までの一連の動作を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態1における一対の光ファイバの初期位置調整を具体的に説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態2に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態2における光ファイバの後退処理を具体的に説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態3に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態3に係る融着接続機が行う一対の光ファイバの初期位置調整から融着接続までの一連の動作を例示するフローチャートである。
【
図10】
図10は、本実施形態3における一対の光ファイバの初期位置調整を具体的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明に係る融着接続機の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る融着接続機の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態1に係る融着接続機1は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2を位置合わせ等ができるように融着接続機1にセットするためのホルダ2a、2b、可動ステージ3a、3b及び光ファイバクランプ4a、4bと、これらの光ファイバF1、F2同士を融着接続するための放電部5a、5b及び放電制御部6と、を備える。融着接続機1の装置本体18には、開閉可能な風防カバー(図示せず)が設けられており、ホルダ2a、2b、可動ステージ3a、3b、光ファイバクランプ4a、4b、及び放電部5a、5bは、この風防カバーに覆われるように装置本体18に配置されている。また、融着接続機1は、これらの光ファイバF1、F2の位置合わせ等に必要な画像(映像)を得るための第1撮像部7a及び第2撮像部7bと、得られた画像を処理する画像処理部8とを備える。また、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の長手方向の位置を調整するための搬送駆動部9a、9bと、光ファイバF1、F2の径方向の位置を調整するための第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11と、光ファイバF1、F2の周方向における回転位置を調整するための回転駆動部12a、12bと、第1撮像部7a及び第2撮像部7bのフォーカスを調整するための第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bとを備える。さらに、融着接続機1は、表示部としての機能と操作部としての機能とを兼ね備えるタッチパネル14と、融着接続機1の各構成部を制御するための制御部15とを備える。
【0016】
なお、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の位置合わせとして、例えば、各光ファイバF1、F2の端面同士の各位置を光ファイバ長手方向(コア軸方向)について調整する端面位置調整、各光ファイバF1、F2の径方向についてコア軸の位置を調整する調心、各光ファイバF1、F2の周方向における回転位置を調整する回転調心、各光ファイバF1、F2の径方向からの撮像のフォーカスを調整するフォーカス調整等が挙げられる。
【0017】
ホルダ2a、2bは、融着接続機1にセットする一対の光ファイバF1、F2を各々把持するものである。特に詳細な構造は図示しないが、ホルダ2a、2bは、例えば、V溝等を備える土台部、この土台部に対して開閉可能な蓋部等によって各々構成される。本実施形態1において、ホルダ2aは、先端側の被覆が剥がされてガラス部分を露出させた状態の光ファイバF1を、一端からガラス部分を延出させ且つ他端から被覆部分を延出させた状態で蓋部と土台部のV溝とによって挟むようにして、把持する。ホルダ2bは、このホルダ2aと同様に、先端側の被覆が剥がされてガラス部分を露出させた状態の光ファイバF2を把持する。
【0018】
なお、光ファイバF1、F2において、先端側は、互いに融着接続されるガラス部分の端面側である。この先端側とは反対の端面(被覆部分の端面)側は、基端側とする。また、光ファイバF1、F2のガラス部分(先端部分とも適宜いう)は、被覆が剥がされた光ファイバ部分、すなわち、コア部と当該コア部の外周に形成されたクラッド部とからなるガラス部分である。
【0019】
可動ステージ3a、3bは、光ファイバF1、F2の位置合わせのために移動及び回転させる可動なステージである。本実施形態1において、可動ステージ3aには、例えば
図1に示すように、光ファイバF1を保持した状態のホルダ2aが、光ファイバF1の先端側のガラス部分を放電部5a、5b側へ向けるように取り付けられる。可動ステージ3aは、後述する搬送駆動部9a、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11又は回転駆動部12aの作用により、光ファイバF1の長手方向又は径方向に移動し、或いは、光ファイバF1の長手方向の軸(コア軸)を中心にして回転する。一方、可動ステージ3bには、例えば
図1に示すように、光ファイバF2を保持した状態のホルダ2bが、光ファイバF2の先端側のガラス部分を放電部5a、5b側へ向けるように取り付けられる。可動ステージ3bは、後述する搬送駆動部9b又は回転駆動部12bの作用により、光ファイバF2の長手方向に移動し、或いは、光ファイバF2のコア軸を中心にして回転する。
【0020】
ここで、光ファイバF1、F2の各ホルダ2a、2bが上述したように可動ステージ3a、3bに各々取り付けられることにより、融着接続機1における光ファイバF1、F2の長手方向及び径方向が設定される。
図2は、本実施形態1に係る融着接続機における一対の光ファイバの長手方向及び径方向の一例を示す図である。本実施形態1では、
図2に示すように、光ファイバF1、F2の長手方向としてZ軸方向が設定される。Z軸は、XYZの3軸直交座標系の一軸であり、光ファイバF1、F2の各コア軸に対して平行な軸である。また、光ファイバF1、F2については、互いに異なる複数(本実施形態1では2つ)の径方向が設定される。例えば、
図2に示すように、光ファイバF1、F2の径方向としてX軸方向及びY軸方向が設定される。X軸及びY軸は、各々、XYZの3軸直交座標系の一軸である。X軸は、光ファイバF1、F2の互いに異なる第1径方向及び第2径方向のうち、第1径方向に対して平行な軸であり、Y軸は、第2径方向に対して平行な軸である。すなわち、本実施形態1において、光ファイバF1、F2の第1径方向及び第2径方向は、互いに垂直な径方向である。
【0021】
また、本実施形態1では、説明の便宜上、
図1に示すように放電部5a、5bを境にして、右側に設けられた可動ステージ3a上のホルダ2aの光ファイバF1は「右側の光ファイバ」とし、左側に設けられた可動ステージ3b上のホルダ2bの光ファイバF2は「左側の光ファイバ」とする。
【0022】
一方、光ファイバクランプ4a、4bは、光ファイバF1、F2の各ガラス部分の位置を可動ステージ3a、3bに対して各々相対的に固定するためのものである。
図1に示すように、光ファイバクランプ4aは、右側の可動ステージ3a上に取り付けられたホルダ2aから先端側に延出する光ファイバF1のガラス部分を、可動ステージ3aに対して解除可能に留める。これにより、光ファイバクランプ4aは、右側の光ファイバF1のガラス部分の位置を可動ステージ3aに対して相対的に固定する。また、光ファイバクランプ4bは、左側の可動ステージ3b上に取り付けられたホルダ2bから先端側に延出する光ファイバF2のガラス部分を、可動ステージ3bに対して解除可能に留める。これにより、光ファイバクランプ4bは、左側の光ファイバF2のガラス部分の位置を可動ステージ3bに対して相対的に固定する。ここで、光ファイバクランプ4a、4bによって光ファイバF1、F2をクランプした状態で光ファイバF1、F2をZ軸中心に回転させてしまうと、光ファイバF1、F2のガラス部分が傷つく等のダメージを受け、この結果、光ファイバF1、F2同士の融着接続の強度が低下する恐れがある。この事態を回避するために、光ファイバクランプ4a、4bは、制御部15の制御に基づき、光ファイバF1、F2の回転調心が行われるに際して光ファイバF1、F2のクランプを各々解除する。
【0023】
放電部5a、5bは、融着接続の対象とする光ファイバF1、F2の各ガラス部分に対して放電するためのものである。
図1に示すように、放電部5a、5bは、右側の可動ステージ3a上のホルダ2aと左側の可動ステージ3b上のホルダ2bとが対向する方向に対して垂直な方向に対向するように、これらの可動ステージ3a、3b間に配置される。放電部5a、5bは、可動ステージ3a、3b上のホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分に対して、光ファイバF1、F2の径方向から放電する。この放電の強さの違いにより、光ファイバF1、F2の各ガラス部分(先端部分)は、クリーニング又は融着接続される。
【0024】
放電制御部6は、放電部5a、5bによる放電の電流量等を制御するものである。放電制御部6は、後述する制御部15の制御に基づいて、放電部5a、5bに給電する放電電流及び印加する放電電圧の少なくとも一つの値を変化させ、これにより、放電部5a、5bから光ファイバF1、F2の各ガラス部分に加えられる放電のエネルギー量を制御する。例えば、放電制御部6は、光ファイバF1、F2の各ガラス部分を放電によってクリーニングする場合、このクリーニングに適したエネルギー量の放電(以下、クリーニング放電と適宜いう)を放電部5a、5bに行わせる。また、放電制御部6は、光ファイバF1、F2の各ガラス部分の端面同士を放電によって融着接続する場合、この融着接続に必要なエネルギー量の放電(以下、本放電と適宜いう)を放電部5a、5bに行わせる。
【0025】
第1撮像部7a及び第2撮像部7bは、融着接続の対象とする光ファイバ(例えば一対の光ファイバF1、F2)の長手方向の位置調整が行われる調整空間領域19を、当該光ファイバの径方向から撮像する撮像部の一例である。
【0026】
詳細には、第1撮像部7aは、例えば
図2に示すY軸方向を光軸方向とする光源及び撮像素子等によって構成され、可動ステージ3a、3b間の調整空間領域19を撮像領域とするように配置される。なお、調整空間領域19は、融着接続の対象とする光ファイバ(本実施形態1では一対の光ファイバF1、F2)の位置合わせが行われる所定空間領域である。この位置合わせには、光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整が含まれる。第1撮像部7aは、Y軸方向から調整空間領域19の画像を撮像する。光ファイバF1、F2のうち少なくとも一つが調整空間領域19の内部に位置する場合、第1撮像部7aは、この調整空間領域19内の光ファイバを、この光ファイバの径方向(この場合は光軸方向であるY軸方向)から撮像する。これにより、第1撮像部7aは、光軸方向に対して垂直な径方向(X軸方向)について、この光ファイバの輝度分布を示す第1径方向画像を撮像する。この場合、第1撮像部7aによって撮像された調整空間領域19の画像には、調整空間領域19内の光ファイバの第1径方向画像が含まれる。第1撮像部7aは、調整空間領域19の画像を撮像する都度、この調整空間領域19の画像データを画像処理部8に送信する。
【0027】
第2撮像部7bは、例えば
図2に示すX軸方向を光軸方向とする光源及び撮像素子等によって構成され、可動ステージ3a、3b間の調整空間領域19を撮像領域とするように配置される。第2撮像部7bは、X軸方向から調整空間領域19の画像を撮像する。光ファイバF1、F2のうち少なくとも一つが調整空間領域19の内部に位置する場合、第2撮像部7bは、この調整空間領域19内の光ファイバを、この光ファイバの径方向(この場合は光軸方向であるX軸方向)から撮像する。これにより、第2撮像部7bは、光軸方向に対して垂直な径方向(Y軸方向)について、この光ファイバの輝度分布を示す第2径方向画像を撮像する。この場合、第2撮像部7bによって撮像された調整空間領域19の画像には、調整空間領域19内の光ファイバの第2径方向画像が含まれる。第2撮像部7bは、調整空間領域19の画像を撮像する都度、この調整空間領域19の画像データを画像処理部8に送信する。
【0028】
画像処理部8は、第1撮像部7a及び第2撮像部7bによって互いに異なる方向から撮像された調整空間領域19の各画像の画像データに対する各種画像処理を行う。詳細には、画像処理部8は、第1撮像部7aから画像データを受信し、受信した画像データに対して所定の画像処理を行う。これにより、画像処理部8は、例えば、縦方向をX軸方向とし且つ横方向をZ軸方向とする調整空間領域19の画像を構築する。光ファイバF1、F2の少なくとも一つが調整空間領域19内に位置する場合、この調整空間領域19の画像には、調整空間領域19内の光ファイバの第1径方向画像が含まれる。この第1径方向画像は、調整空間領域19内に位置する光ファイバ(例えば光ファイバF1、F2)のX軸方向の輝度分布を示す画像であり、この光ファイバのコア部とクラッド部とをX軸方向(第1径方向)の位置に対する輝度の違いによって視覚的に区別し得る画像である。また、画像処理部8は、第2撮像部7bから画像データを受信し、受信した画像データに対して所定の画像処理を行う。これにより、画像処理部8は、例えば、縦方向をY軸方向とし且つ横方向をZ軸方向とする調整空間領域19の画像を構築する。光ファイバF1、F2の少なくとも一つが調整空間領域19内に位置する場合、この調整空間領域19の画像には、調整空間領域19内の光ファイバの第2径方向画像が含まれる。この第2径方向画像は、調整空間領域19内に位置する光ファイバ(例えば光ファイバF1、F2)のY軸方向の輝度分布を示す画像であり、この光ファイバのコア部とクラッド部とをY軸方向(第2径方向)の位置に対する輝度の違いによって視覚的に区別し得る画像である。画像処理部8は、上記のように構築した調整空間領域19の各画像の画像信号を時系列に沿ってタッチパネル14に順次送信する。
【0029】
また、画像処理部8は、上述した撮像部によって撮像された画像をもとに、光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19の内部に位置する光ファイバを検出する。例えば、本実施形態1では、画像処理部8は、当該光ファイバの長手方向先端面の位置を検出する。この場合の撮像部は、第1撮像部7aであってもよいし、第2撮像部7bであってもよい。
図3は、本発明の実施形態1における画像処理部による光ファイバの画像に基づく検出処理の一例を説明するための図である。例えば、
図3に示すように、調整空間領域19内に光ファイバF1、F2が位置する場合、この調整空間領域19の画像には、これら光ファイバF1、F2の各々の第1径方向画像又は第2径方向画像(以下、これらを纏めて「径方向画像」と適宜いう)が含まれる。
【0030】
ここで、光ファイバF1、F2の各径方向画像は、例えば
図3に示すように、X軸方向又はY軸方向の位置に対する輝度の違いによってコア部F1a、F2aとクラッド部F1b、F2bとを区別し得る画像である。これと同時に、光ファイバF1、F2の各径方向画像は、コア部Fa及びクラッド部Fbと調整空間領域19の画像の背景部分(光ファイバF1、F2以外の部分)とを輝度の違いによって区別し得る画像である。画像処理部8は、このような画像における輝度の違いをもとに、調整空間領域19内に位置する光ファイバを検出する。詳細には、画像処理部8は、例えば
図3に示すように、調整空間領域19の画像の一端側から他端側(本実施形態1では右側から左側)へ延出した状態にある光ファイバを、右側の光ファイバF1として検出する。そして、画像処理部8は、この光ファイバF1の長手方向(Z軸方向)における延出端面を、光ファイバF1の長手方向先端面F1cとして検出する。画像処理部8は、調整空間領域19の画像の単位画素辺りに設定された距離等をもとに、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置(Z軸方向についての位置)を検出する。これと同様に、画像処理部8は、例えば
図3に示すように、調整空間領域19の画像の他端側から一端側(本実施形態1では左側から右側)へ延出した状態にある光ファイバを、左側の光ファイバF2として検出する。そして、画像処理部8は、この光ファイバF2のZ軸方向における延出端面を、光ファイバF2の長手方向先端面F2cとして検出する。画像処理部8は、調整空間領域19の画像の単位画素辺りに設定された距離等をもとに、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの位置(Z軸方向についての位置)を検出する。画像処理部8は、上記のように調整空間領域19内における光ファイバF1、F2の各長手方向先端面F1c、F2cのうち少なくとも一つの位置を検出した場合、その都度、検出した位置を示す位置検出信号を制御部15に送信する。
【0031】
なお、
図3において、1次セットラインL1a、L1bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の各ガラス部分を調整空間領域19内に準備する際、これら光ファイバF1、F2の各長手方向先端面F1c、F2cの位置を各々合わせる目安となるラインである。
図3に示すように、右側の1次セットラインL1aは、右側の2次セットラインL2aに比べて光ファイバF1の基端側に位置する。左側の1次セットラインL1bは、左側の2次セットラインL2bに比べて光ファイバF2の基端側に位置する。これらの1次セットラインL1a、L1bは、
図3に示すようにラインとして表してもよいが、本実施形態1では、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各々による画像にも描画されず、タッチパネル14にも表示されない。一方、2次セットラインL2a、L2bは、放電部5a、5bの本放電による一対の光ファイバF1、F2同士の融着接続に適した各長手方向先端面F1c、F2cの離間位置を示す基準セットラインの一例である。これらの2次セットラインL2a、L2bは、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各々による画像には描画されないが、後述のタッチパネル14には、例えば
図3に示すような態様で表示される。
【0032】
搬送駆動部9a、9bは、融着接続の対象とする光ファイバの長手方向の位置調整を行うための駆動部の一例である。詳細には、搬送駆動部9aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをZ軸方向に移動(
図2に示すZ軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。搬送駆動部9aは、Z軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の長手方向に搬送する。このような搬送駆動部9aは、右側の光ファイバF1の初期位置調整及び端面位置調整を行うための駆動部として機能する。また、搬送駆動部9bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって左側の可動ステージ3bをZ軸方向に移動させ得るように設けられる。搬送駆動部9bは、Z軸方向への可動ステージ3bの移動を通じて、可動ステージ3b上の左側の光ファイバF2を、光ファイバF2の長手方向に搬送する。このような搬送駆動部9bは、左側の光ファイバF2の初期位置調整及び端面位置調整を行うための駆動部として機能する。
【0033】
本実施形態1において、光ファイバF1、F2の初期位置調整は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の各ガラス部分を調整空間領域19内に準備する段階における光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整である。搬送駆動部9aによる右側の光ファイバF1の初期位置調整には、調整空間領域19の内部又は外部へ光ファイバF1のガラス部分を搬送することと、調整空間領域19の内部における光ファイバF1のガラス部分の端面位置(すなわち長手方向先端面F1cの位置)を1次セットラインL1aに向けて調整することとが含まれる。搬送駆動部9bによる左側の光ファイバF2の初期位置調整には、調整空間領域19の内部又は外部へ光ファイバF2のガラス部分を搬送することと、調整空間領域19の内部における光ファイバF2のガラス部分の端面位置(すなわち長手方向先端面F2cの位置)を1次セットラインL1ab向けて調整することとが含まれる。一方、光ファイバF1、F2の端面位置調整は、光ファイバF1、F2同士を融着接続する段階における光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整である。搬送駆動部9aによる右側の光ファイバF1の端面位置調整には、調整空間領域19内の光ファイバF1の長手方向先端面F1cを2次セットラインL2aに合わせることと、融着接続の本放電時に光ファイバF1の長手方向先端面F1cを光ファイバF2の長手方向先端面F2cに突き合わせることとが含まれる。搬送駆動部9bによる左側の光ファイバF2の端面位置調整には、調整空間領域19内の光ファイバF2の長手方向先端面F2cを2次セットラインL2bに合わせることと、融着接続の本放電時に光ファイバF2の長手方向先端面F2cを光ファイバF1の長手方向先端面F1cに突き合わせることとが含まれる。
【0034】
第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11は、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の調心を行うための駆動部である。詳細には、第1径方向駆動部10は、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをX軸方向に移動(
図2に示すX軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。第1径方向駆動部10は、X軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の第1径方向に移動させる。このような第1径方向駆動部10は、右側の光ファイバF1のコア軸を第1径方向(X軸方向)について左側の光ファイバF2のコア軸に合わせることにより、これらの光ファイバF1、F2の各コア軸を合わせる調心(第1径方向の調心)を行うための駆動部として機能する。また、第2径方向駆動部11は、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aをY軸方向に移動(
図2に示すY軸の太線矢印参照)させ得るように設けられる。第2径方向駆動部11は、Y軸方向への可動ステージ3aの移動を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の第2径方向に移動させる。このような第2径方向駆動部11は、右側の光ファイバF1のコア軸を第2径方向(Y軸方向)について左側の光ファイバF2のコア軸に合わせることにより、これらの光ファイバF1、F2の各コア軸を合わせる調心(第2径方向の調心)を行うための駆動部として機能する。
【0035】
回転駆動部12a、12bは、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の回転調心を行うための駆動部である。詳細には、回転駆動部12aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって右側の可動ステージ3aを、Z軸を中心として時計回り又は反時計回りに回転(
図2に示すZ軸の実線矢印参照)させ得るように設けられる。回転駆動部12aは、Z軸を中心とする可動ステージ3aの回転を通じて、可動ステージ3a上の右側の光ファイバF1を、光ファイバF1の長手方向の中心軸回りに回転させる。また、回転駆動部12bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって左側の可動ステージ3bを、Z軸を中心として時計回り又は反時計回りに回転させ得るように設けられる。回転駆動部12bは、Z軸を中心とする可動ステージ3bの回転を通じて、可動ステージ3b上の左側の光ファイバF2を、光ファイバF2の長手方向の中心軸回りに回転させる。これらの回転駆動部12a、12bは、左右両側の光ファイバF1、F2の周方向における各回転位置を互いに合わせる回転調心を行うための駆動部として機能する。
【0036】
第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bは、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各フォーカス調整を各々行うための駆動部である。詳細には、第1フォーカス駆動部13aは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって第1撮像部7aの撮像素子(図示せず)を調整空間領域19内の光ファイバF1、F2に対して近接または離間させる方向に移動させ得るように設けられる。第1フォーカス駆動部13aは、この撮像素子の移動を通じて、第1撮像部7aのフォーカスを調整する。このような第1フォーカス駆動部13aは、調整空間領域19内に位置する光ファイバF1、F2の第1径方向画像を撮像する際のフォーカス調整を行うための駆動部として機能する。第2フォーカス駆動部13bは、モータ等によって構成され、モータの駆動力によって第2撮像部7bの撮像素子(図示せず)を調整空間領域19内の光ファイバF1、F2に対して近接または離間させる方向に移動させ得るように設けられる。第2フォーカス駆動部13bは、この撮像素子の移動を通じて、第2撮像部7bのフォーカスを調整する。このような第2フォーカス駆動部13bは、調整空間領域19内に位置する光ファイバF1、F2の第2径方向画像を撮像する際のフォーカス調整を行うための駆動部として機能する。
【0037】
タッチパネル14は、アイコンや画像等を表示する機能と、表示画面の押下に応じて各種操作のための信号を出力する機能とを兼ね備えるものである。詳細には、タッチパネル14は、制御部15の制御に基づいて、融着接続機1を操作するための各種アイコンと、調整空間領域19の画像とを表示画面内に表示する。この際、タッチパネル14は、画像処理部8から時系列に沿って画像信号を順次受信し、受信した画像信号をもとに、第1撮像部7a及び第2撮像部7bによる調整空間領域19の各画像を表示する。特に図示しないが、タッチパネル14に表示される調整空間領域19の各画像には、調整空間領域内に位置する光ファイバ(例えば光ファイバF1、F2)の径方向画像が含まれる。また、タッチパネル14は、上述した2次セットラインL2a、L2b(
図3参照)を調整空間領域19の各画像に重畳して表示する。また、タッチパネル14は、アイコンや画像等を表示する表示画面の押下の位置及び長さに応じた信号を、制御部15に対して出力する。
【0038】
制御部15は、融着接続機1の各構成部を制御するものである。例えば、制御部15は、タッチパネル14から出力された信号に基づいて、タッチパネル14の表示と、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整から融着接続までの一連の処理を行うための複数の駆動部の動作とを制御する。本実施形態1において、これら複数の駆動部は、
図1に示す搬送駆動部9a、9b、第1径方向駆動部10、第2径方向駆動部11、回転駆動部12a、12b、第1フォーカス駆動部13a、及び第2フォーカス駆動部13bである。
【0039】
特に、制御部15は、光ファイバF1、F2同士の融着接続に際して、光ファイバF1、F2の初期位置調整を行うように搬送駆動部9a、9bを制御する。詳細には、制御部15は、調整空間領域19内の光ファイバF1の長手方向先端面F1cを融着接続時に位置させる2次セットラインL2a(基準セットラインの一例)の位置と、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置とを比較する。本実施形態1において、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置は、光ファイバF1をZ軸方向について初期位置調整する前に画像処理部8によって検出された光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置である。すなわち、上記初期位置は、光ファイバF1を把持した状態のホルダ2aが可動ステージ3aにセットされた段階における光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置である。制御部15は、2次セットラインL2aの位置が光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置よりも光ファイバF1の基端側の位置である場合、搬送駆動部9a、9bのうち光ファイバF1に対応する搬送駆動部9aを、光ファイバF1の長手方向先端面F1cを2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側に位置させるべく光ファイバF1を後退させるように制御する。この際、制御部15は、2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側の位置である第1の位置(例えば調整空間領域19の右側外部の位置)まで光ファイバF1の長手方向先端面F1cを後退させるように、搬送駆動部9aを制御する。その後、制御部15は、後退させた光ファイバF1の長手方向先端面F1cを上記第1の位置よりも2次セットラインL2a側の位置である第2の位置(例えば1次セットラインL1aの近傍の位置)まで前進させるように、搬送駆動部9aを制御する。
【0040】
また、制御部15は、調整空間領域19内の光ファイバF2の長手方向先端面F2cを融着接続時に位置させる2次セットラインL2b(基準セットラインの一例)の位置と、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置とを比較する。本実施形態1において、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置は、光ファイバF2をZ軸方向について初期位置調整する前に画像処理部8によって検出された光ファイバF2の長手方向先端面F2cの位置である。すなわち、上記初期位置は、光ファイバF2を把持した状態のホルダ2bが可動ステージ3bにセットされた段階における光ファイバF2の長手方向先端面F2cの位置である。制御部15は、2次セットラインL2bの位置が光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置よりも光ファイバF2の基端側の位置である場合、搬送駆動部9a、9bのうち光ファイバF2に対応する搬送駆動部9bを、光ファイバF2の長手方向先端面F2cを2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側に位置させるべく光ファイバF2を後退させるように制御する。この際、制御部15は、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置である第1の位置(例えば調整空間領域19の左側外部の位置)まで光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させるように、搬送駆動部9bを制御する。その後、制御部15は、後退させた光ファイバF2の長手方向先端面F2cを上記第1の位置よりも2次セットラインL2b側の位置である第2の位置(例えば1次セットラインL1bの近傍の位置)まで前進させるように、搬送駆動部9bを制御する。
【0041】
なお、光ファイバF1の後退は、光ファイバF1の長手方向先端面F1cが光ファイバF1の基端側へ変位するように光ファイバF1を移動させることである。これと同様に、光ファイバF2の後退は、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが光ファイバF2の基端側へ変位するように光ファイバF2を移動させることである。一方、光ファイバF1の前進は、光ファイバF2へ接近する方向に光ファイバF1を移動させることである。これと同様に、光ファイバF2の前進は、光ファイバF1へ接近する方向に光ファイバF2を移動させることである。
【0042】
つぎに、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整から融着接続までの一連の処理を行う際の融着接続機1の動作について説明する。
図4は、本発明の実施形態1に係る融着接続機が行う一対の光ファイバの初期位置調整から融着接続までの一連の動作を例示するフローチャートである。
図5は、本実施形態1における一対の光ファイバの初期位置調整を具体的に説明するための図である。本実施形態1において、融着接続機1(
図1参照)は、
図4に示すステップS101~S105の各処理を適宜行うことにより、一対の光ファイバF1、F2の初期位置調整を行い、その後、ステップS106の処理を行うことにより、一対の光ファイバF1、F2の位置合わせ及び融着接続等を行う。
【0043】
詳細には、
図4に示すように、融着接続機1は、一対の光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの初期位置を検出する(ステップS101)。本実施形態1では、
図1に示すように、光ファイバF1を把持した状態のホルダ2aと光ファイバF2を把持した状態のホルダ2bとが、融着接続機1の装置本体18の可動ステージ3a、3bに各々セットされる。その後、装置本体18の風防カバー(図示せず)が閉じられる。この段階において、ホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分は、調整空間領域19の内部に位置している。
【0044】
ステップS101においては、タッチパネル14のアイコンの押下又は上記風防カバーの閉鎖等の融着接続機1の操作をトリガーとして、第1撮像部7a及び第2撮像部7bが、調整空間領域19の画像を撮像する。この場合、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各々によって撮像された調整空間領域19の画像には、光ファイバF1、F2の各径方向画像が含まれている。画像処理部8は、第1撮像部7a及び第2撮像部7bのいずれかによって撮像された画像をもとに、調整空間領域19内における光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの初期位置を検出する。画像処理部8は、検出した光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの初期位置を示す位置検出信号を制御部15に送信する。
【0045】
ステップS101の処理を実行後、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの初期位置と2次セットラインL2a、L2bとを比較する(ステップS102)。ステップS102において、制御部15は、画像処理部8から位置検出信号を受信し、受信した位置検出信号をもとに、ステップS101で画像処理部8によって検出された光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの初期位置を取得する。ここで、制御部15には、調整空間領域19内における2次セットラインL2a、L2bのZ軸方向の各位置が予め設定されている。制御部15は、取得した光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置と既知の2次セットラインL2aとを比較し、且つ、取得した光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置と既知の2次セットラインL2bとを比較する。
【0046】
続いて、制御部15は、ステップS102における比較処理の結果をもとに、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cが2次セットラインL2a、L2bを越えているか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103において、制御部15は、2次セットラインL2aの位置が光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置よりも光ファイバF1の基端側の位置である場合、光ファイバF1の長手方向先端面F1cが2次セットラインL2aを越えていると判断する。これ以外の場合、制御部15は、光ファイバF1の長手方向先端面F1cが2次セットラインL2aを越えていないと判断する。また、制御部15は、2次セットラインL2bの位置が光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置よりも光ファイバF2の基端側の位置である場合、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えていると判断する。これ以外の場合、制御部15は、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えていないと判断する。
【0047】
例えば、
図5に例示する状態A1では、調整空間領域19内において、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置は、2次セットラインL2aの位置よりも光ファイバF1の基端側である。この場合、制御部15は、2次セットラインL2aの位置が光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置よりも光ファイバF1の基端側の位置ではないことから、光ファイバF1の長手方向先端面F1cが2次セットラインL2aを越えていないと判断する。また、この状態A1では、調整空間領域19内において、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置は、2次セットラインL2bの位置よりも他方の光ファイバF1側(右側)である。この場合、制御部15は、2次セットラインL2bの位置が光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置よりも光ファイバF2の基端側の位置であることから、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えていると判断する。
【0048】
ステップS103の判断処理により、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cのうち少なくとも一つが2次セットラインL2a、L2bを越えていると判断された場合(ステップS103,Yes)、融着接続機1は、光ファイバF1、F2のうち、長手方向先端面が2次セットラインを越える光ファイバを後退させる(ステップS104)。ステップS104において、制御部15は、光ファイバF1の長手方向先端面F1cが2次セットラインL2aを越えている場合、予め設定された移動量だけ光ファイバF1を後退させるように、この光ファイバF1に対応する搬送駆動部9aを制御する。例えば、搬送駆動部9aがパルス信号によって駆動するタイプの駆動部である場合、制御部15は、予め設定されたパルス数の制御信号(パルス信号)を搬送駆動部9aに入力する。搬送駆動部9aは、入力された制御信号のパルス数に応じた移動量だけ、可動ステージ3aを光ファイバF1の基端側へ移動させて光ファイバF1を後退させる。これにより、搬送駆動部9aは、2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側の位置(第1の位置の一例)まで光ファイバF1の長手方向先端面F1cを後退させる。また、制御部15は、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えている場合、予め設定された移動量だけ光ファイバF2を後退させるように、この光ファイバF2に対応する搬送駆動部9bを制御する。例えば、搬送駆動部9bがパルス信号によって駆動するタイプの駆動部である場合、制御部15は、上述した搬送駆動部9aの場合と同様に、予め設定されたパルス数の制御信号を搬送駆動部9bに入力する。搬送駆動部9bは、入力された制御信号のパルス数に応じた移動量だけ、可動ステージ3bを光ファイバF2の基端側へ移動させて光ファイバF2を後退させる。これにより、搬送駆動部9bは、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置(第1の位置の一例)まで光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させる。
【0049】
例えば、
図5の状態A1に示すように、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えている場合、制御部15は、制御信号のパルス数等に基づく所定の移動量だけ光ファイバF2を後退させるように、搬送駆動部9bを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9bは、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置、例えば
図5の状態A2に示されるように調整空間領域19の左側外部(光ファイバF2の基端側の外部)の位置まで、光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させる。一方、
図5の状態A1、A2に示される例では、光ファイバF1の長手方向先端面F1cは、2次セットラインL2aを越えていない。この場合、制御部15は、光ファイバF1の現在の位置を維持するように搬送駆動部9aを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9aは、可動ステージ3aを移動させず、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置を現在の位置に維持する。
【0050】
なお、上述した制御信号のパルス数等、制御部15の一度の制御による搬送駆動部9a、9bの駆動量、すなわち、光ファイバF1、F2の移動量は、タッチパネル14のアイコンを押下する等の融着接続機1の操作によって設定変更できるようにしてもよい。
【0051】
ステップS104の処理を実行後、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの各位置を調整する(ステップS105)。ステップS105において、制御部15は、調整空間領域19の内部であって2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側の位置である右側所定位置(例えば1次セットラインL1aの位置又はその近傍の位置)に光ファイバF1の長手方向先端面F1cを位置させるように、搬送駆動部9aを制御する。特に、制御部15は、上述したステップS104の処理によって光ファイバF1を後退させた場合、この後退させた光ファイバF1の長手方向先端面F1cを、上述した第1の位置(後退後の位置)よりも2次セットラインL2a側の位置である第2の位置まで前進させるように、搬送駆動部9aを制御する。この場合の第2の位置は、上述した右側所定位置と同じ位置であり、例えば、1次セットラインL1aの位置又はその近傍の位置等である。
【0052】
また、ステップS105において、制御部15は、調整空間領域19の内部であって2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置である左側所定位置(例えば1次セットラインL1bの位置又はその近傍の位置)に光ファイバF2の長手方向先端面F2cを位置させるように、搬送駆動部9bを制御する。特に、制御部15は、上述したステップS104の処理によって光ファイバF2を後退させた場合、この後退させた光ファイバF2の長手方向先端面F2cを、上述した第1の位置(後退後の位置)よりも2次セットラインL2b側の位置である第2の位置まで前進させるように、搬送駆動部9bを制御する。この場合の第2の位置は、上述した左側所定位置と同じ位置であり、例えば、1次セットラインL1bの位置又はその近傍の位置等である。
【0053】
例えば、
図5の状態A2に示すように、光ファイバF2が後退させられた場合、制御部15は、この後退させた光ファイバF2の長手方向先端面F2cを上述した第2の位置(左側所定位置)まで前進させるように、搬送駆動部9bを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9bは、例えば
図5の状態A3に示すように、後退後の光ファイバF2の長手方向先端面F2cが1次セットラインL1bに近接するように可動ステージ3bを移動させて、この光ファイバF2を調整空間領域19内の左側所定位置まで前進させる。この搬送駆動部9bの作用により、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの位置は、1次セットラインL1bの位置又はその近傍の位置(
図5では1次セットラインL1bの左側近傍の位置)に調整される。一方、
図5の状態A2、A3に示される例では、光ファイバF1は後退させられていない。この場合、制御部15は、光ファイバF1の長手方向先端面F1cを上述した第2の位置(右側所定位置)に位置させるように、搬送駆動部9aを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9aは、調整空間領域19内において光ファイバF1を適宜前進又は後退させるように可動ステージ3aを移動させ、これにより、光ファイバF1の長手方向先端面F1cを1次セットラインL1aに近接させる。この搬送駆動部9aの作用により、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置は、例えば
図5の状態A3に示すように、1次セットラインL1aの位置又はその近傍の位置(
図5では1次セットラインL1aの右側近傍の位置)に調整される。以上のようにして、光ファイバF1、F2の初期位置調整が完了する。
【0054】
ステップS105の処理を実行後、融着接続機1は、光ファイバF1、F2の位置合わせ及び融着接続等を行うべく、融着接続プログラムを実行し(ステップS106)、本処理を終了する。ここで、制御部15は、CPU及びメモリ等によって構成されており、融着接続プログラム及び複数の融着接続条件が予め設定されている。ステップS106において、制御部15は、これら複数の融着接続条件の中から光ファイバF1、F2同士の融着接続に適合する融着接続条件を選択し、選択した融着接続条件を用いて融着接続プログラムを実行する。これにより、融着接続機1は、上述した初期位置調整が行われた光ファイバF1、F2に対して、融着接続前検査、位置合わせ及び融着接続の一連の処理を行う。なお、本発明において、融着接続プログラムは、融着接続の対象とする光ファイバの初期位置調整以後の処理、すなわち、初期位置調整が行われた光ファイバに対する融着接続前検査、位置合わせ及び融着接続の一連の処理を実行するためのプログラムである。
【0055】
詳細には、融着接続前検査において、制御部15は、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各々によって撮像された画像を画像処理部8から取得し、取得した画像をもとに、光ファイバF1、F2の各ガラス部分を検査する。この検査の結果、これらのガラス部分に異物が付着していた場合、制御部15は、放電部5a、5bにクリーニング放電を行わせるように放電制御部6を制御し、このクリーニング放電によって光ファイバF1、F2の各ガラス部分から異物を除去する。また、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの形状が良好ではない(例えばZ軸方向に対して過度に傾斜している等)場合、その旨を知らせるエラーメッセージを表示するようにタッチパネル14を制御する。
【0056】
上記融着接続前検査が完了後、光ファイバF1、F2の位置合わせが行われる。この際、制御部15は、光ファイバF1、F2に対して、端面位置調整を行うように搬送駆動部9a、9bを制御し、調心を行うように第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11を制御し、回転調心を行うように回転駆動部12a、12bを制御する。また、制御部15は、第1撮像部7a及び第2撮像部7bのフォーカス調整を行うように、第1フォーカス駆動部13a及び第2フォーカス駆動部13bを制御する。この結果、光ファイバF1、F2は、X軸方向及びY軸方向の調心とZ軸周りの方向の回転調心とが完了し且つ各長手方向先端面F1c、F2cを2次セットラインL2a、L2bに各々一致させた状態となる。
【0057】
上記位置合わせが完了後、光ファイバF1、F2に対する融着接続が行われる。この際、制御部15は、放電部5a、5bに本放電を行わせるように放電制御部6を制御し、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2c同士を突き合せるように搬送駆動部9a、9bを制御する。この結果、光ファイバF1、F2同士の融着接続が完了する。
【0058】
一方、上述したステップS103の判断処理により、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの双方とも2次セットラインL2a、L2bを越えていないと判断された場合(ステップS103,No)、融着接続機1は、ステップS105に進み、このステップS105以降の処理を実行して本処理を終了する。
【0059】
以上、説明したように、本発明の実施形態1では、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整が行われる調整空間領域19を撮像領域として画像を撮像し、撮像された画像をもとに、光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19の内部に位置する光ファイバ(以下、特定光ファイバと適宜いう)の長手方向先端面の位置を検出している。また、検出された特定光ファイバの長手方向先端面の初期位置と基準セットライン(例えば2次セットラインL2a、L2bのいずれか)の位置とを比較し、基準セットラインの位置が特定光ファイバの長手方向先端面の初期位置よりも特定光ファイバの基端側の位置である場合、特定光ファイバの長手方向先端面を基準セットラインよりも特定光ファイバの基端側に位置させるべく特定光ファイバを後退させるように、特定光ファイバに対応する搬送駆動部を制御している。
【0060】
このため、光ファイバF1、F2を各々把持した2つのホルダ2a、2bを融着接続機1の装置本体18にセットした初期段階において、既に、光ファイバF1、F2のうちの特定光ファイバのガラス部分が基準セットラインを越えているとしても、この特定光ファイバのガラス部分が基準セットラインを越えている状態を、上述した特定光ファイバの後退によって自動的に解消することができる。したがって、基準セットラインを越えた状態にある特定光ファイバのホルダからの延出量を手作業で調整し直す必要が無く、特定光ファイバの長手方向先端面の初期位置を、基準セットラインよりも特定光ファイバの基端側の位置に簡易且つ短時間に調整することができる。この結果、上記特定光ファイバのホルダからの延出量や光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの初期位置調整等、一対の光ファイバF1、F2同士を融着接続するまでに掛かる手間を大幅に低減できることから、一対の光ファイバF1、F2同士を融着接続する作業を簡易且つ効率よく行うことができる。
【0061】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る融着接続機について説明する。
図6は、本発明の実施形態2に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態2に係る融着接続機21は、上述した実施形態1に係る融着接続機1の画像処理部8に代えて画像処理部24を備え、制御部15に代えて制御部25を備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0062】
画像処理部24は、第1撮像部7a又は第2撮像部7bによって撮像された画像をもとに、光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19の内部に位置する光ファイバを検出する。この際、画像処理部24は、上述した実施形態1における画像処理部8と同様に、調整空間領域19内の光ファイバF1、F2、これらの長手方向先端面F1c、F2c及びZ軸方向についての長手方向先端面F1c、F2cの各位置を検出する。画像処理部24は、調整空間領域19内における光ファイバF1、F2の各長手方向先端面F1c、F2cのうち少なくとも一つの位置を検出した場合、その都度、検出した位置を示す位置検出信号を制御部25に送信する。特に、本実施形態2において、画像処理部24は、搬送駆動部9aの作用による光ファイバF1の後退とともに変位する長手方向先端面F1cの位置(以下、後退位置と適宜いう)を順次検出し、その都度、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの後退位置を示す位置検出信号を制御部25に送信する。また、画像処理部24は、搬送駆動部9bの作用による光ファイバF2の後退とともに変位する長手方向先端面F2cの後退位置を順次検出し、その都度、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの後退位置を示す位置検出信号を制御部25に送信する。
【0063】
制御部25は、画像処理部24によって検出された光ファイバの長手方向先端面の位置が基準セットラインよりも当該光ファイバの基端側の位置となるように、当該光ファイバに対応する駆動部を制御する。本実施形態2では、制御部25は、2次セットラインL2aの位置が光ファイバF1の長手方向先端面F1cの初期位置よりも光ファイバF1の基端側の位置である場合、画像処理部24によって検出された光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置を監視しながら、2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側の位置まで光ファイバF1の長手方向先端面F1cを後退させるように、光ファイバF1に対応する搬送駆動部9aを制御する。また、制御部25は、2次セットラインL2bの位置が光ファイバF2の長手方向先端面F2cの初期位置よりも光ファイバF2の基端側の位置である場合、画像処理部24によって検出された光ファイバF2の長手方向先端面F2cの位置を監視しながら、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置まで光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させるように、光ファイバF2に対応する搬送駆動部9bを制御する。
【0064】
なお、制御部25は、上記のような「画像処理部24によって検出された光ファイバの長手方向先端面の位置を監視しながら、基準セットラインよりも当該光ファイバの基端側の位置に当該光ファイバの長手方向先端面を後退させる」という搬送駆動部に対する制御機能以外、上述した実施形態1における制御部15と同様の機能を有する。
【0065】
つぎに、本実施形態2における融着接続機21の動作について説明する。融着接続機21は、上述した実施形態1におけるステップS101~S105(
図4参照)とほぼ同様の各処理を適宜行うことにより、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の初期位置調整を行い、その後、ステップS106の処理を行うことにより、これら光ファイバF1、F2の位置合わせ及び融着接続等を行う。すなわち、本実施形態2において、融着接続機21は、実施形態1と異なる手法によってステップS104の処理(長手方向端面が2次セットラインを越える光ファイバを後退させる処理)を行う。
【0066】
実施形態2におけるステップS104において、制御部25は、光ファイバF1の長手方向先端面F1cが2次セットラインL2aを越えている場合、画像処理部24によって検出された光ファイバF1の長手方向先端面F1cの後退位置を監視しながら、2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側の位置(例えば調整空間領域19内における第1の右側位置)まで光ファイバF1の長手方向先端面F1cを後退させるように、搬送駆動部9aを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9aは、2次セットラインL2aよりも光ファイバF1の基端側の位置である調整空間領域19内の第1の右側位置まで、光ファイバF1の長手方向先端面F1cを後退させる。また、制御部25は、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えている場合、画像処理部24によって検出された光ファイバF2の長手方向先端面F2cの後退位置を監視しながら、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置(例えば調整空間領域19内における第1の左側位置)まで光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させるように、搬送駆動部9bを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9bは、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置である調整空間領域19内の第1の左側位置まで、光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させる。
【0067】
図7は、本実施形態2における光ファイバの後退処理を具体的に説明するための図である。例えば、
図7の状態A11に示すように、光ファイバF2の長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えている場合、制御部25は、この長手方向先端面F2cの位置を監視しながら、光ファイバF2を後退させるように搬送駆動部9bを制御する。この際、制御部25は、画像処理部24から位置検出信号を受信し、受信した位置検出信号をもとに、光ファイバF2の後退とともに変位する長手方向先端面F2cの後退位置を取得する。制御部25は、この長手方向先端面F2cの後退位置と2次セットラインL2bの位置とを比較し、2次セットラインL2bの位置が長手方向先端面F2cの後退位置よりも光ファイバF2の基端側であるか否かを判断する。制御部25は、この判断処理の結果、2次セットラインL2bの位置が長手方向先端面F2cの後退位置よりも光ファイバF2の基端側である場合、光ファイバF2の後退を継続するように搬送駆動部9bを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9bは、光ファイバF2を継続して後退させる。一方、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの後退位置が2次セットラインL2bの位置よりも光ファイバF2の基端側である場合、制御部25は、光ファイバF2の後退を停止するように搬送駆動部9bを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9bは、例えば
図7の状態A12に示すように、調整空間領域19内において2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側である第1の左側位置(例えば1次セットラインL1bよりも光ファイバF2の基端側の位置)まで、光ファイバF2の長手方向先端面F2cを後退させる。
【0068】
なお、
図7の状態A11、A12に示される例では、光ファイバF1の長手方向先端面F1cは、2次セットラインL2aを越えていない。この場合、制御部25は、上述した実施形態1と同様に、光ファイバF1の現在の位置を維持するように搬送駆動部9aを制御する。
【0069】
その後、ステップS105においては、上述した実施形態1と同様に、制御部25は、光ファイバF1の長手方向先端面F1cを、上述した第1の右側位置よりも2次セットラインL2a側の位置(例えば1次セットラインL1aの位置又はその近傍の位置)に位置させるように、搬送駆動部9aを制御する。また、制御部25は、光ファイバF2の長手方向先端面F2cを、上述した第1の左側位置よりも2次セットラインL2b側の位置(例えば1次セットラインL1bの位置又はその近傍の位置)に位置させるように、搬送駆動部9bを制御する。
【0070】
以上、説明したように、本発明の実施形態2では、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19内に位置する特定光ファイバの長手方向先端面の位置を調整空間領域19の画像をもとに検出し、検出された特定光ファイバの長手方向先端面の位置が基準セットラインよりも特定光ファイバの基端側の位置となるように、特定光ファイバに対応する搬送駆動部を制御するようにし、その他を実施形態1と同様にしている。このため、上述した実施形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、特定光ファイバの長手方向先端面の位置を監視しながら、長手方向先端面が基準セットラインを越えた状態の特定光ファイバを後退させることができ、これにより、特定光ファイバの長手方向先端面を基準セットラインよりも特定光ファイバの基端側に確実に位置させることができる。
【0071】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3に係る融着接続機について説明する。
図8は、本発明の実施形態3に係る融着接続機の一構成例を示す図である。
図8に示すように、本実施形態3に係る融着接続機31は、上述した実施形態1に係る融着接続機1の画像処理部8に代えて画像処理部34を備え、制御部15に代えて制御部35を備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0072】
画像処理部34は、第1撮像部7a又は第2撮像部7bによって撮像された画像をもとに、光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19の内部に位置する光ファイバを検出する。この際、画像処理部34は、上述した実施形態1における画像処理部8と同様に、調整空間領域19内の光ファイバF1、F2、これらの長手方向先端面F1c、F2c及びZ軸方向についての長手方向先端面F1c、F2cの各位置を検出する。画像処理部34は、調整空間領域19内における光ファイバF1、F2の各長手方向先端面F1c、F2cのうち少なくとも一つの位置を検出した場合、その都度、検出した位置を示す位置検出信号を制御部35に送信する。
【0073】
また、本実施形態3において、調整空間領域19内の光ファイバが調整空間領域19を貫通した貫通状態の光ファイバである場合、画像処理部34は、第1撮像部7a又は第2撮像部7bによって撮像された画像をもとに、この貫通状態の光ファイバを検出する。ここで、「光ファイバが調整空間領域19を貫通する」とは、調整空間領域19におけるZ軸方向の一端から他端に亘って光ファイバのガラス部分が連続していることをいう。すなわち、貫通状態の光ファイバの長手方向先端面は、調整空間領域19の外部に位置し、第1撮像部7a又は第2撮像部7bによって撮像された調整空間領域19の画像には表されない。画像処理部34は、このような貫通状態の光ファイバを検出した場合、その都度、貫通状態の光ファイバの径方向画像が含まれる調整空間領域19の画像の画像信号を制御部35に送信する。また、貫通状態の光ファイバが後退して調整空間領域19内に長手方向先端面を位置させた場合、すなわち、この光ファイバの調整空間領域19における貫通状態が解消された場合、この光ファイバは、その長手方向端面が2次セットラインを越えた状態の光ファイバとなる。この場合、画像処理部34は、このような状態の光ファイバの径方向画像が含まれる調整空間領域19の画像の画像信号を制御部35に送信する。
【0074】
制御部35は、画像処理部34によって検出された貫通状態の光ファイバの長手方向端面位置を基準セットラインよりも当該光ファイバの基端側に位置させるように、搬送駆動部9a、9bを制御する。詳細には、制御部35は、画像処理部34から受信した画像信号をもとに、画像処理部34によって貫通状態の光ファイバが検出されたことを確認し、この確認結果をトリガーとして、貫通状態の光ファイバを後退させるように、貫通状態の光ファイバに対応する搬送駆動部を制御する。この際、制御部35は、貫通状態の光ファイバの長手方向先端面が画像処理部34によって検出されるまで、この貫通状態の光ファイバを継続して後退させるように、上記搬送駆動部を制御する。本実施形態3では、この貫通状態の光ファイバを確実に後退させるために、制御部35は、貫通状態の光ファイバの長手方向先端面が画像処理部34によって検出されるまで、光ファイバF1、F2を各々後退させるように搬送駆動部9a、9bの双方を制御する。また、制御部35は、上記のように後退させた光ファイバ(貫通状態が解消された光ファイバ)の長手方向先端面を基準セットラインよりも当該光ファイバの基端側に位置させるように、搬送駆動部9a、9bのうち当該光ファイバに対応する搬送駆動部を制御する。この基準セットラインは、当該光ファイバが光ファイバF1であれば2次セットラインL2aであり、当該光ファイバが光ファイバF2であれば2次セットラインL2bである。
【0075】
なお、制御部35は、上記のような貫通状態の光ファイバに関する搬送駆動部9a、9bの制御を行う制御機能以外、上述した実施形態1における制御部15と同様の機能を有する。
【0076】
つぎに、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整から融着接続までの一連の処理を行う際の融着接続機31の動作について説明する。
図9は、本発明の実施形態3に係る融着接続機が行う一対の光ファイバの初期位置調整から融着接続までの一連の動作を例示するフローチャートである。
図10は、本実施形態3における一対の光ファイバの初期位置調整を具体的に説明するための図である。本実施形態3において、融着接続機31(
図8参照)は、
図9に示すステップS301~S310の各処理を適宜行うことにより、一対の光ファイバF1、F2の初期位置調整を行い、その後、ステップS311の処理を行うことにより、一対の光ファイバF1、F2の位置合わせ及び融着接続等を行う。
【0077】
詳細には、
図9に示すように、融着接続機31は、一対の光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19内に位置する光ファイバを検出する(ステップS301)。本実施形態3では、
図8に示すように、光ファイバF1を把持した状態のホルダ2aと光ファイバF2を把持した状態のホルダ2bとが、融着接続機31の装置本体18の可動ステージ3a、3bに各々セットされる。その後、装置本体18の風防カバー(図示せず)が閉じられる。この初期段階において、ホルダ2a、2bから各々延出する光ファイバF1、F2の各ガラス部分のうち少なくとも一つは、調整空間領域19の内部に位置している。
【0078】
ステップS301においては、タッチパネル14のアイコンの押下又は上記風防カバーの閉鎖等の融着接続機31の操作をトリガーとして、第1撮像部7a及び第2撮像部7bが、調整空間領域19の画像を撮像する。この場合、第1撮像部7a及び第2撮像部7bの各々によって撮像された調整空間領域19の画像には、光ファイバF1、F2のうちの調整空間領域19内に位置する光ファイバの径方向画像が含まれている。画像処理部34は、このような調整空間領域19の画像をもとに、光ファイバF1、F2のうちの調整空間領域19内に位置する光ファイバ(初期段階の光ファイバ)を検出する。
【0079】
ステップS301の実行後、融着接続機31は、ステップS301で検出された調整空間領域19内の光ファイバが貫通状態の光ファイバであるか否かを判断する(ステップS302)。ステップS302において、制御部35は、調整空間領域19の画像の画僧信号を画像処理部34から受信し、受信した画像信号をもとに、調整空間領域19の画像を取得する。制御部35は、この取得した調整空間領域19の画像をもとに、調整空間領域19内の光ファイバが貫通状態の光ファイバであるか否かを判断する。この際、制御部35は、調整空間領域19の画像に含まれる光ファイバの径方向画像を抽出し、この径方向画像が調整空間領域19の画像をZ軸方向に貫通する画像である場合、調整空間領域19内の光ファイバが貫通状態の光ファイバであると判断する。一方、制御部35は、この径方向画像が調整空間領域19の画像をZ軸方向に貫通する画像ではない場合、すなわち、この径方向画像が光ファイバの長手方向先端面を含む画像である場合、調整空間領域19内の光ファイバが貫通状態の光ファイバではないと判断する。
【0080】
例えば、
図10に示す状態A21では、光ファイバF2が、調整空間領域19を貫通する貫通状態の光ファイバとして例示されている。状態A21において、光ファイバF2の径方向画像は、調整空間領域19のZ軸方向(
図10では横方向)の一端から他端に亘って連続した状態(光ファイバF2の長手方向先端面F2cが表されていない状態)となっている。制御部35は、このような調整空間領域19の画像をもとに、この径方向画像によって示される光ファイバ(
図10では光ファイバF2)を、貫通状態の光ファイバと判断する。なお、この段階において、制御部35は、この貫通状態の光ファイバが光ファイバF2であることを識別していない。
【0081】
ステップS302の判断処理により、調整空間領域19内の光ファイバが貫通状態の光ファイバであると判断された場合(ステップS302,Yes)、融着接続機31は、この貫通状態の光ファイバを後退させる(ステップS303)。ステップS303において、制御部35は、現段階で光ファイバF1、F2のいずれが貫通状態の光ファイバであるかを識別ができないことから、光ファイバF1、F2を各々後退させるように搬送駆動部9a、9bの双方を制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9a、9bは、例えば
図10の状態A21に示すように、貫通状態の光ファイバであるか否かに関係なく、光ファイバF1、F2を各々後退させる。これにより、貫通状態の光ファイバ(
図10では光ファイバF2)の後退を確実に行うことができる。
【0082】
続いて、制御部35は、調整空間領域19内の光ファイバの長手方向先端面を画像処理部34が検出したか否かを判断する(ステップS304)。ステップS304において、画像処理部34は、光ファイバF1、F2が後退している際に第1撮像部7a又は第2撮像部7bによって撮像された調整空間領域19の画像をもとに、調整空間領域19内の光ファイバを検出する。この際、
図10の状態A21に示されるように、調整空間領域19内の光ファイバの径方向画像が未だ調整空間領域19の画像を貫通する状態の画像であれば、画像処理部34は、この光ファイバの長手方向先端面を検出できていない。この段階において、画像処理部34は、貫通状態の光ファイバの径方向画像が含まれる調整空間領域19の画像の画像信号を制御部35に送信する。制御部35は、この画像処理部34から受信した画像をもとに、画像処理部34が調整空間領域19内の光ファイバの長手方向先端面を検出していないと判断する。
【0083】
制御部35は、ステップS304の判断処理により、画像処理部34が調整空間領域19内の光ファイバの長手方向先端面を検出していないと判断した場合(ステップS304,No)、上述したステップS303に戻り、このステップS303以降の処理を繰り返し行う。すなわち、制御部35は、貫通状態の光ファイバの長手方向先端面が画像処理部34によって検出されるまで、光ファイバF1、F2を継続して後退させるように、搬送駆動部9a、9bを制御する。この制御に基づき、搬送駆動部9a、9bは、光ファイバF1、F2を各々後退させ続ける。
【0084】
一方、
図10の状態A22に例示されるように、調整空間領域19内の光ファイバの径方向画像が調整空間領域19内に長手方向先端面を位置させた状態の光ファイバの画像であれば、画像処理部34は、この調整空間領域19の画像をもとに、この貫通状態が解消された光ファイバの長手方向先端面を検出する。この段階において、画像処理部34は、この貫通状態が解消された光ファイバの径方向画像が含まれる調整空間領域19の画像の画像信号を制御部35に送信する。ステップS304において、制御部35は、この画像処理部34から受信した画像をもとに、画像処理部34が調整空間領域19内の光ファイバの長手方向先端面を検出したと判断する。
【0085】
制御部35は、ステップS304の判断処理により、画像処理部34が調整空間領域19内の光ファイバの長手方向先端面を検出したと判断した場合(ステップS304,Yes)、光ファイバF1、F2の後退を停止するように搬送駆動部9a、9bを制御する(ステップS305)。ステップS305において、搬送駆動部9a、9bは、制御部35の制御に基づき、光ファイバF1、F2の後退を各々停止する。この段階では、例えば
図10の状態A21、A22に示すように、調整空間領域19を貫通していた光ファイバF2は、貫通状態が解消され、調整空間領域19内に長手方向先端面F2cを位置させた状態となっている。一方、光ファイバF1は、調整空間領域19の右側外部に位置した状態となっている。
【0086】
ステップS305の実行後、融着接続機31は、実施形態1におけるステップS104と同様に、光ファイバF1、F2のうちの長手方向先端面が2次セットラインを越える光ファイバを後退させる(ステップS309)。続いて、融着接続機31は、実施形態1におけるステップS105と同様に、光ファイバF1、F2の長手方向先端面F1c、F2cの位置を調整する(ステップS310)。
【0087】
具体的には、上述したステップS309において、
図10の状態A22に例示するように、貫通状態が解消された光ファイバF2は、その長手方向先端面F2cが2次セットラインL2bを越えた状態となっている。このような光ファイバF2は、制御部35の制御に基づく搬送駆動部9bの作用により、
図10の状態A23に例示するように、2次セットラインL2bよりも光ファイバF2の基端側の位置(例えば調整空間領域19の左側外部の位置)まで、長手方向先端面F2cを後退させる。一方、光ファイバF1の長手方向先端面F1cは、2次セットラインL2aを越えていないため、長手方向先端面F1cの位置を現在の位置に維持している。その後、上述したステップS310において、
図10の状態A24に例示するように、後退後の光ファイバF2は、制御部35の制御に基づく搬送駆動部9bの作用により、長手方向先端面F2cを1次セットラインL1bに近接させるように調整空間領域19内の左側所定位置まで前進する。この結果、光ファイバF2の長手方向先端面F2cの位置は、1次セットラインL1bの位置又はその近傍の位置(
図10では1次セットラインL1bの左側近傍の位置)に調整される。一方、光ファイバF1は、制御部35の制御に基づく搬送駆動部9aの作用により、長手方向先端面F1cを1次セットラインL1aに近接させるように調整空間領域19内の右側所定位置まで前進する。この結果、光ファイバF1の長手方向先端面F1cの位置は、1次セットラインL1aの位置又はその近傍の位置(
図10では1次セットラインL1aの右側近傍の位置)に調整される。以上のようにして、光ファイバF1、F2の初期位置調整が完了する。
【0088】
ステップS310の処理を実行後、融着接続機31は、実施形態1におけるステップS106と同様に、光ファイバF1、F2の位置合わせ及び融着接続等を行うべく、融着接続プログラムを実行し(ステップS311)、本処理を終了する。
【0089】
一方、上述したステップS302の判断処理により、調整空間領域19内の光ファイバが貫通状態の光ファイバではないと判断された場合(ステップS302,No)、融着接続機31は、実施形態1におけるステップS101と同様に、光ファイバF1、F2のうち調整空間領域19内に位置する光ファイバの長手方向先端面の初期位置を検出する(ステップS306)。つぎに、融着接続機31は、実施形態1におけるステップS102と同様に、調整空間領域19内における光ファイバの長手方向先端面の初期位置と2次セットラインの位置とを比較し(ステップS307)、続いて、実施形態1におけるステップS103と同様に、光ファイバの長手方向先端面の初期位置が2次セットラインを越えているか否かを判断する(ステップS308)。光ファイバの長手方向先端面の初期位置が2次セットラインを越えている場合(ステップS308,Yes)、融着接続機31は、上述したステップS309に進み、このステップS309以降の処理を行って本処理を終了する。一方、光ファイバの長手方向先端面の初期位置が2次セットラインを越えていない場合(ステップS308,No)、融着接続機31は、上述したステップS310に進み、このステップS310以降の処理を行って本処理を終了する。
【0090】
以上、説明したように、本発明の実施形態3では、融着接続の対象とする一対の光ファイバF1、F2の長手方向の位置調整が行われる調整空間領域19の画像をもとに、光ファイバF1、F2のうちの調整空間領域19を貫通した貫通状態の光ファイバを検出し、貫通状態の光ファイバの長手方向先端面が検出されるまで貫通状態の光ファイバを後退させるように、貫通状態の光ファイバに対応する搬送駆動部を制御し、この後退させた光ファイバの長手方向先端面を基準セットラインよりも当該光ファイバの基端側に位置させるように、当該光ファイバに対応する搬送駆動部を制御するようにし、その他を実施形態1と同様にしている。このため、上述した実施形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、光ファイバF1、F2を各々把持した2つのホルダ2a、2bを融着接続機31の装置本体18にセットした初期段階において、既に、光ファイバF1、F2のうちの特定光ファイバのガラス部分が調整空間領域19を貫通する程に過度に延出しているとしても、この特定光ファイバのガラス部分が過度に延出している状態を、この特定光ファイバの後退によって自動的に解消することができる。
【0091】
なお、上述した実施形態1~3では、一対の光ファイバF1、F2のうち、左側の光ファイバF2を基準にし、右側の光ファイバF1を径方向に移動させて、これらの光ファイバF1、F2の径方向の調心を行っているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、一対の光ファイバF1、F2のうち、右側の光ファイバF1を基準にし、左側の光ファイバF2を径方向に移動させて、これらの光ファイバF1、F2の径方向の調心を行ってもよい。この場合、上述した第1径方向駆動部10及び第2径方向駆動部11は、左側の光ファイバF2の可動ステージ3bを径方向に移動させるものとしてもよい。或いは、一対の光ファイバF1、F2の双方を径方向に移動させて光ファイバF1、F2の径方向の調心を行ってもよい。この場合、融着接続機は、左側の光ファイバF2の可動ステージ3bを径方向に移動させるための第1径方向駆動部及び第2径方向駆動部をさらに備えるようにしてもよい。
【0092】
また、上述した実施形態1~3では、融着接続機の操作手段としてタッチパネル14を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、融着接続機は、各種情報を表示する表示部と各種操作を行うための操作部(入力部)とを別体として備えるものであってもよい。
【0093】
また、上述した実施形態1~3では、複数の撮像部の一例として2つの第1撮像部7a及び第2撮像部7bを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。調整空間領域19を撮像する撮像部の配置数は、上述した2つでもよいし、3つ以上でもよい。また、これら複数の撮像部が調整空間領域19を各々撮像する際の複数の撮像方向は、上述した光ファイバの互いに異なる複数の径方向(例えばX軸方向、Y軸方向)に限定されず、光ファイバの長手方向(Z軸方向)に対して傾斜する方向等、互いに異なる方向であってもよい。
【0094】
また、上述した実施形態3では、光ファイバを後退させる処理(ステップS309)を実施形態1におけるステップS104と同様に行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、このステップS309の処理は、実施形態2におけるステップS104と同様に行ってもよい。
【0095】
また、上述した実施形態1~3では、融着接続の対象とする光ファイバの初期位置調整から、融着接続前検査、位置合わせ及び融着接続までの一連の処理を自動で行っていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、融着接続の対象とする光ファイバの初期位置調整(
図4に示すステップS101~S105、又は
図9に示すステップS301~S310)を自動で行い、この初期位置調整以後の処理(ステップS106又はステップS311)、具体的には、融着接続前検査、位置合わせ及び融着接続を、融着接続機の手動操作によって行うようにしてもよい。
【0096】
また、上述した実施形態1~3では、光ファイバを2次セットラインよりも基端側へ後退させたか否かによらず、一対の光ファイバの各々の長手方向先端面を1次セットライン側へ調整していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、長手方向先端面の初期位置が2次セットラインを越えていない状態の光ファイバについては、当該初期位置の調整を行わず、現状の初期位置を維持してもよい。
【0097】
また、上述した実施形態1~3により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1~3に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1、21、31 融着接続機
2a、2b ホルダ
3a、3b 可動ステージ
4a、4b 光ファイバクランプ
5a、5b 放電部
6 放電制御部
7a 第1撮像部
7b 第2撮像部
8、24、34 画像処理部
9a、9b 搬送駆動部
10 第1径方向駆動部
11 第2径方向駆動部
12a、12b 回転駆動部
13a 第1フォーカス駆動部
13b 第2フォーカス駆動部
14 タッチパネル
15、25、35 制御部
18 装置本体
19 調整空間領域
F1、F2 光ファイバ
F1c、F2c 長手方向先端面
F1a、F2a コア部
F1b、F2b クラッド部
L1a、L1b 1次セットライン
L2a、L2b 2次セットライン