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特許7042809反射防止用光学フィルターおよび有機発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】反射防止用光学フィルターおよび有機発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220318BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220318BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220318BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019515821
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 KR2017011370
(87)【国際公開番号】W WO2018070849
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2019-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2016-0133355
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・クク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョク・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ス・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・チョン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026266(JP,A)
【文献】特開2014-228581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0078475(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0101841(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0094391(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に形成された吸収軸を有する偏光子と、下記数式1のNz値が1を超え、1.5以下である第1位相差フィルムと、下記数式1のNz値が-4.0以下である第2位相差フィルムとを含み、前記第1位相差フィルムおよび前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は、それぞれ前記偏光子の吸収軸と43度~47度を成し、前記第1位相差フィルムと前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに平行である、反射防止用光学フィルターと、
有機発光表示パネルと、
を含み、
前記第1位相差フィルムの550nm波長の光に対する面上の位相差は、70nm~200nmであり、
前記第2位相差フィルムの550nm波長の光に対する面上の位相差は、0nmを超え、70nm以下である、有機発光装置。
[数式1]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
(数式1でnx、nyおよびnzは、位相差フィルムのx軸、y軸およびz軸方向の屈折率であり、x軸は、位相差フィルムの面内遅相軸に平行な方向であり、y軸は、位相差フィルムの面内進相軸に平行な方向であり、z軸は、位相差フィルムの厚さ方向である。)
【請求項2】
前記第2位相差フィルムのNz値の下限は、-11000以上である、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項3】
前記第1位相差フィルムと前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに直交し、前記第1位相差フィルムの面上の位相差は、120nm~200nmである、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項4】
前記第1位相差フィルムと前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに平行であり、前記第1位相差フィルムの面上の位相差は、70nm~160nmである、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項5】
前記第1位相差フィルムのR(450)/R(550)は、0.60~0.92であり、R(λ)は、λnm光に対する位相差フィルムの面上の位相差を意味する、請求項1に記載の有機発光装置。
【請求項6】
前記第2位相差フィルムの下記数式7で計算される厚さ方向位相差は、50nm~200nmである、請求項1に記載の有機発光装置。
[数式7]
Rth=d×{(nz-(nx+ny)/2}
(数式7でnx、nyおよびnzは、請求項1で定義したものと同一であり、dは、位相差フィルムの厚さを意味する。)
【請求項7】
前記光学フィルターの前記第1位相差フィルムが前記偏光子に比べて前記有機発光表示パネルに隣接して配置される、請求項1に記載の有機発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、反射防止用光学フィルターおよび有機発光装置に関する。
【0002】
本出願は、2016年10月14日付けの韓国特許出願第10-2016-0133355に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、モニターまたはテレビなどの軽量化および薄型化が要求されており、このような要求に応じて、有機発光装置(organic light emitting device、OLED)が注目されている。有機発光装置は、自ら発光する自発光型表示装置であって、別のバックライトを必要としないため、厚さを減らすことができ、フレキシブル表示装置を具現するのに有利である。
【0004】
なお、有機発光装置は、有機発光表示パネルに形成された金属電極および金属配線により外部光を反射させることができ、反射した外部光により視認性とコントラスト比が低下して、表示品質に劣ることがある。特許文献1(韓国特許公開第2009-0122138号)のように、有機発光表示パネルの一面に円偏光板を付着して、前記反射した外部光が外側に漏れ出ることを減らすことができる。
【0005】
しかしながら、現在開発されている円偏光板は、視野角の依存性が大きいため、側面に行くほど反射防止性能が低下し、視認性に劣るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開第2009-0122138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願が解決しようとする課題は、正面のみならず側面においても、全方位反射防止性能およびカラー特性に優れた光学フィルターおよび前記光学フィルターを適用することで視認性が改善された有機発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は、反射防止用光学フィルターに関する。前記光学フィルターは、一方向に形成された吸収軸を有する偏光子と、第1位相差フィルムおよび第2位相差フィルムを順に含むことができる。
【0009】
本明細書で偏光子は、入射光に対して選択的透過および吸収特性を示す素子を意味する。偏光子は、例えば、色々な方向に振動する入射光からいずれか一方の方向に振動する光は透過し、残りの方向に振動する光は吸収することができる。
【0010】
前記光学フィルターに含まれる偏光子は、線偏光子であってもよい。本明細書で線偏光子は、選択的に透過する光がいずれか一つの方向に振動する線偏光であり、選択的に吸収する光が前記線偏光の振動方向に直交する方向に振動する線偏光である場合を意味する。
【0011】
前記偏光子としては、例えば、PVA延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨードを染色した偏光子または配向された状態で重合された液晶をホストとし、前記液晶の配向に応じて配列された異方性染料をゲストとするゲスト-ホスト型偏光子が使用できるが、これに限らない。
【0012】
本出願の一実施形態によると、前記偏光子としては、PVA延伸フィルムが使用できる。前記偏光子の透過率ないしは偏光度は、本出願の目的を考慮して適宜調節され得る。例えば前記偏光子の透過率は、42.5%~55%であってもよく、偏光度は、65%~99.9997%であってもよい。
【0013】
本明細書で角度を定義しつつ、垂直、水平、直交または平行などの用語を使用する場合、これは、目的とする効果を損傷させない範囲における実質的な垂直、水平、直交または平行を意味するものであって、例えば、製造誤差(error)または偏差(variation)などを勘案した誤差を含むものである。例えば、前記それぞれの場合は、約±15度以内の誤差、約±10度以内の誤差または約±5度以内の誤差を含むことができる。
【0014】
本明細書で位相差フィルムは、光学異方性フィルムであって、複屈折を制御することによって入射偏光を変換できる素子を意味する。本明細書で位相差フィルムのx軸、y軸およびz軸を記載しつつ、特別な言及がない限り、前記x軸は、位相差フィルムの面内遅相軸(slow axis)に平行な方向を意味し、y軸は、位相差フィルムの面内進相軸(fast axis)に平行な方向を意味し、z軸は、位相差フィルムの厚さ方向を意味する。前記x軸と前記y軸は、面内で互いに直交を成すことができる。本明細書で位相差フィルムの光軸を記載しつつ、特に別途規定しない限り、遅相軸を意味する。前記位相差フィルムが棒形状の液晶分子を含む場合、遅相軸は、前記棒形状の長軸方向を意味し、ディスク形状の液晶分子を含む場合、遅相軸は、前記ディスク形状の法線方向を意味する。
【0015】
本明細書で位相差フィルムのNz値は、下記数式1で計算される。
【0016】
[数式1]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
【0017】
本明細書で下記数式2を満たす位相差フィルムをいわゆる+Cプレートと呼ぶことができる。
【0018】
本明細書で下記数式3を満たす位相差フィルムをいわゆる+Bプレートと呼ぶことができる。
【0019】
本明細書で下記数式4を満たす位相差フィルムをいわゆる-Bプレートと呼ぶことができる。
【0020】
本明細書で下記数式5を満たす位相差フィルムをいわゆる+Aプレートと呼ぶことができる。
【0021】
[数式2]
nx=ny<nz
【0022】
[数式3]
ny<nx≠nz
【0023】
[数式4]
nx>ny>nz
【0024】
[数式5]
nx>ny=nz
【0025】
本明細書で位相差フィルムの面上の位相差(Rin)は、下記数式6で計算される。
【0026】
本明細書で位相差フィルムの厚さ方向の位相差(Rth)は、下記数式7で計算される。
【0027】
[数式6]
Rin=d×(nx-ny)
【0028】
[数式7]
Rth=d×{(nz-(nx+ny)/2}
【0029】
数式1~数式7で、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記定義したx軸、y軸およびz軸方向の屈折率であり、dは、位相差フィルムの厚さである。
【0030】
本明細書で逆波長分散特性は、下記数式8を満たす特性を意味し、正常波長分散特性(normal wavelength dispersion)は、下記数式9を満たす特性を意味し、フラット波長分散特性(flat wavelength dispersion)は、下記数式10を満たす特性を意味する。
【0031】
[数式8]
R(450)/R(550)<R(650)/R(550)
【0032】
[数式9]
R(450)/R(550)>R(650)/R(550)
【0033】
[数式10]
R(450)/R(550)=R(650)/R(550)
【0034】
本明細書で位相差フィルムの屈折率を記載すると共に、特に別途規定しない限り、約550nm波長の光に対する屈折率を意味する。
【0035】
本出願の光学フィルターによると、前記第1位相差フィルムは、+Aプレートまたは-Bプレートであってもよい。前記第1位相差フィルムは、Nz値が1.0~1.5であってもよい。
前記第2位相差フィルムは、+Bプレートであってもよい。前記第2位相差フィルムは、Nz値が-1以下であってもよい。前記第1位相差フィルムおよび前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は、それぞれ前記偏光子の吸収軸と43度~47度を成すことができる。前記第2位相差フィルムの面内遅相軸は、第1位相差フィルムの面内遅相軸に直交したりまたは平行したりすることができる。
【0036】
図1は、偏光子30、第1位相差フィルム10および第2位相差フィルム20を順に含む本出願の光学フィルターを例示的に示す。
【0037】
本出願の光学フィルターは、第1位相差フィルムのNz値および第1位相差フィルムと第2位相差フィルム間の面内遅相軸の関係によって下記第1~第4実施形態として具現され得る。図2図5は、それぞれ第1~第4実施形態による光学フィルターを例示的に示す。偏光子30の括弧は、偏光子の吸収軸を意味し、第1位相差フィルム10の括弧は、第1位相差フィルムの種類および面内遅相軸を意味し、第2位相差フィルム20の括弧は、第2位相差フィルムの種類および面内遅相軸を意味する。
【0038】
図2に示したように、本出願の第1実施形態による光学フィルターによると、第1位相差フィルムのNz値は1であり、第1位相差フィルムと第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに直交してもよい。前記第1位相差フィルムは、+Aプレートであってもよい。
【0039】
図3に示したように、本出願の第2実施形態による光学フィルターによると、第1位相差フィルムのNz値は、1を超え、1.5以下であり、第1位相差フィルムと第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに直交することができる。前記第1位相差フィルムは、-Bプレートであってもよい。
【0040】
図4に示したように、本出願の第3実施形態による光学フィルターによると、第1位相差フィルムのNz値は1であり、第1位相差フィルムと第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに平行であってもよい。前記第1位相差フィルムは、+Aプレートであってもよい。
【0041】
図5に示したように、本出願の第4実施形態による光学フィルターによると、第1位相差フィルムのNz値は、1を超え、1.5以下であり、第1位相差フィルムと第2位相差フィルムの面内遅相軸は、互いに平行することができる。前記第1位相差フィルムは、-Bプレートであってもよい。
【0042】
前記光学フィルターは、正面のみならず側面においても、優れた全方位反射防止性能およびカラー特性を示すことができる。以下、前記光学フィルターについてより具体的に説明する。
【0043】
前記光学フィルターは、例えば傾斜角60度で測定した反射率が13%以下、12%以下、11%以下または10%以下であってもよい。前記反射率は、可視光領域内のいずれか一つの波長の光に対する反射率、例えば、380nm~780nm範囲のうちいずれか一つの波長の光に対する反射率であるか、あるいは、可視光の全領域に属する光に対する反射率であってもよい。前記反射率は、例えば、光学フィルターの偏光子側で測定した反射率であってもよい。前記反射率は、傾斜角60度の特定の動径角または所定の範囲の動径角で測定した反射率であるか、あるいは、傾斜角60度におけるすべての動径角に対して測定した反射率を意味し、後述する実施例にて記載された方式で測定した数値である。
【0044】
前記光学フィルターは、色偏差の平均が50以下、45以下または40以下であってもよい。本明細書で色偏差は、前記光学フィルターが有機発光表示パネルに適用されたとき、側面の色が正面の色とどれぐらい違いが生じるかを意味するものであり、後述する実施例のカラー特性シミュレーション評価において△E abの数式で計算される値を意味する。
【0045】
前記第1位相差フィルムは、1/4波長位相遅延特性を有することができる。本明細書で「n波長位相遅延特性」は、少なくとも一部の波長の範囲内で、入射光を該入射光の波長のn倍で位相遅延させることができる特性を意味する。したがって、前記1/4波長位相遅延特性は、少なくとも一部の波長の範囲内で、入射光を該入射光の波長の1/4倍で位相遅延させることができる特性を意味する。
【0046】
前記第1位相差フィルムの550nm波長の光に対する面上の位相差は、70nm~200nmであってもよい。前記第1位相差フィルムは、前記第1実施形態および前記第2実施形態の場合、例えば、第1位相差フィルムと第2位相差フィルムの面内遅相軸が互いに直交する場合、550nm波長の光に対する面上の位相差が120nm~200nmであってもよい。より具体的に、前記第1位相差フィルムの面上の位相差の下限は、120nm以上、130nm以上、140nm以上、150nm以上または155nm以上であってもよく、上限は、200nm以下、195nm以下または190nm以下であってもよい。前記第1位相差フィルムは、前記第3実施形態および第4実施形態の場合、例えば、第1位相差フィルムと第2位相差フィルムの面内遅相軸が互いに平行する場合、550nm波長の光に対する面上の位相差が70nm~160nmであってもよい。より具体的に、前記第1位相差フィルムの面上の位相差の下限は、70nm以上、80nm以上または90nm以上であってもよく、上限は、160nm以下、150nm以下、140nm以下または130nm以下であってもよい。
【0047】
第1位相差フィルムの面上の位相差が前記範囲を満たす場合、正面のみならず側面においても、優れた全方位反射防止性能およびカラー特性を示すのに有利である。
【0048】
前記第1位相差フィルムは、逆波長分散特性(reverse wavelength dispersion)を有することができる。例えば、前記第1位相差フィルムは、入射光の波長が増加するほど面上の位相差が増加する特性を有することができる。前記入射光の波長は、例えば300nm~800nmであってもよい。
【0049】
前記第1位相差フィルムのR(450)/R(550)値は、0.60~0.99、具体的に、0.60~0.92であってもよい。前記第1位相差フィルムのR(650)/R(550)の値は、前記R(450)/R(550)より大きい値を有し、且つ、1.01~1.19、1.05~1.15または1.09~1.11であってもよい。前記第1位相差フィルムが逆波長分散特性を有する場合、正面のみならず側面においても、優れた全方位反射防止性能およびカラー特性を示すのに有利である。
【0050】
前記第2位相差フィルムのNz値は、-1以下であってもよい。前記第2位相差フィルムのNz値の下限は、-11000以上であってもよい。前記第2位相差フィルムのNz値が前記範囲を満たす場合、正面のみならず側面においても、優れた全方位反射防止性能およびカラー特性を示すのに有利である。
【0051】
前記第2位相差フィルムの550nm波長の光に対する面上の位相差は、0nmを超え、70nm以下であってもよい。より具体的に、前記第2位相差フィルムの面上の位相差の下限は、0nm超過、5nm以上、10nm以上、11nm以上、12nm以上または13nm以上であってもよく、上限は、70nm以下、60nm以下、55nm以下、または54nm以下であってもよい。前記第2位相差フィルムの厚さ方向位相差は、50nm~200nmであってもよい。より具体的に、前記第2位相差フィルムの厚さ方向位相差の下限は、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、83nm以上、85nm以上または88nm以上であってもよく、上限は、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、125nm以下、110nm以下または105nm以下であってもよい。前記第2位相差フィルムの面上の位相差ないしは厚さ方向位相差が前記範囲を満たす場合、正面のみならず側面においても、優れた全方位反射防止性能およびカラー特性を示すのに有利である。
【0052】
前記第2位相差フィルムは、逆波長分散特性、フラット波長分散特性または正常波長分散特性を有することができる。
【0053】
前記第1位相差フィルムおよび前記第2位相差フィルムは、高分子フィルムであってもよい。前記高分子フィルムとしては、PC(polycarbonate)、ノルボルネン樹脂(norbonene resin)、PVA(poly(vinyl alcohol))、PS(polystyrene)、PMMA(poly(methyl methacrylate))、PP(polypropylene)などのポリオレフィン、Par(poly(arylate))、PA(polyamide)、PET(poly(ethylene terephthalate))またはPS(polysulfone)などを含むフィルムが使用できる。前記高分子フィルムを適切な条件で延伸または収縮処理し、複屈折性を付与して前記第1位相差フィルムおよび前記第2位相差フィルムとして使用することができる。
【0054】
前記第1位相差フィルムおよび前記第2位相差フィルムは、液晶フィルムであってもよい。前記液晶フィルムは、液晶分子を配向および重合させた状態で含むことができる。前記液晶分子は、重合性液晶分子であってもよい。本明細書で重合性液晶分子は、液晶性を示すことができる部位、例えばメゾゲン(mesogen)骨格などを含み、重合性官能基を一つ以上含む分子を意味する。また、重合性液晶分子を重合された形態で含むというのは、前記液晶分子が重合されて、液晶フィルム内で液晶高分子の主鎖または側鎖のような骨格を形成している状態を意味する。
【0055】
前記第1位相差フィルムおよび前記第2位相差フィルムの厚さは、本出願の目的を考慮して適宜調節できる。前記第1位相差フィルムの厚さは、0.5μm~100μmであってもよい。前記第2位相差フィルムの厚さは、0.5μm~100μmであってもよい。
【0056】
前記光学フィルターは、表面処理層をさらに含むことができる。前記表面処理層としては、反射防止層などが例示できる。前記表面処理層は、前記偏光子の外側に、すなわち第2位相差フィルムが配置された反対の側面に配置され得る。前記反射防止層としては、屈折率が異なる2つ以上の層の積層体などが使用できるが、これに限らない。
【0057】
前記光学フィルターの第1位相差フィルム、第2位相差フィルム、および偏光子は、粘着剤または接着剤を介して付着しているか、あるいは、直接コーティングにより互いに積層されていてもよい。前記粘着剤または前記接着剤としては、光学透明粘着剤または接着剤が使用できる。
【0058】
本出願の光学フィルターは、外光の反射を防止できるので、有機発光装置の視認性を改善することができる。外部から入射する非偏光した光(incident unpolarized light)(以下、「外光」という)は、偏光子を通過しながら、二つの偏光直交成分のうち一つの偏光直交成分、すなわち第1偏光直交成分のみが透過し、偏光した光は、第1位相差フィルムを通過しながら、円偏光に変わることができる。前記円偏光した光は、基板、電極などを含む有機発光表示装置の表示パネルで反射しながら、円偏光の回転方向が変わるようになり、前記円偏光した光が第1位相差フィルムをさらに通過しながら、二つの偏光直交成分のうち他の一つの偏光直交成分、すなわち第2偏光直交成分に変換される。前記第2偏光直交成分は、偏光子を通過せずに外部に光が放出されないため、外光反射の防止効果を有することができる。
【0059】
本出願の光学フィルターは、側面から入射する外光の反射も効果的に防止できるので、有機発光装置の側面視認性を改善することができる。例えば、視野角偏光補償原理を用いて側面から入射する外光の反射も効果的に防止することができる。
【0060】
本出願の光学フィルターは、有機発光装置に適用され得る。図6は、前記有機発光装置を例示的に示す断面図である。図6を参照すると、前記有機発光装置は、有機発光表示パネル200と、有機発光表示パネル200の一面に位置する光学フィルター100とを含む。前記光学フィルターの第1位相差フィルム10が偏光子30に比べて有機発光表示パネル200に隣接するように配置され得る。
【0061】
前記有機発光表示パネルは、ベース基板、下部電極、有機発光層、上部電極および封止基板などを含むことができる。前記下部電極および上部電極のうち一つは、アノード(anode)であり、他の一つは、カソード(cathode)であってもよい。アノードは、正孔(hole)が注入される電極であって、仕事関数(work function)が高い導電物質からなり、カソードは、電子が注入される電極であって、仕事関数が低い導電物質からなることができる。下部電極および上部電極のうち少なくとも一つは、発光した光が外部に出ることができる透明導電物質からなることができ、例えばITOまたはIZOであってもよい。有機発光層は、下部電極と上部電極に電圧が印加されたとき、光を出すことができる有機物質を含むことができる。
【0062】
下部電極と有機発光層との間および上部電極と有機発光層との間には、付帯層をさらに含むことができる。付帯層は、電子と正孔の均衡を合わせるための正孔伝達層(hole transporting layer)、正孔注入層(hole injecting layer)、電子注入層(electron injecting layer)および電子伝達層(electron transporting layer)を含むことができるが、これに限らない。封止基板は、ガラス、金属および/または高分子からなり得、下部電極、有機発光層および上部電極を封止して、外部から水分および/または酸素が流入するのを防止することができる。
【0063】
光学フィルター100は、有機発光表示パネルから光が出る側に配置され得る。光学フィルター100は、例えばベース基板側に光が出る背面発光(bottom emission)構造である場合、ベース基板の外側に配置され得、封止基板側に光が出る前面発光(top emission)構造である場合、封止基板の外側に配置され得る。光学フィルター100は、外光が有機発光表示パネル200の電極および配線などのように金属からなる反射層により反射して有機発光装置の外側に出るのを防止することによって、有機発光装置の表示特性を改善することができる。また、光学フィルター100は、前述したように、正面のみならず側面においても反射防止効果を示すことができるので、側面視認性を改善することができる。
【発明の効果】
【0064】
本出願の光学フィルターは、正面のみならず側面においても、全方位反射防止性能およびカラー特性に優れており、前記光学フィルターは、有機発光装置に適用され、視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本出願の光学フィルターの例示的な断面図である。
図2】本出願の第1実施形態による光学フィルターの例示的な断面図である
図3】本出願の第2実施形態による光学フィルターの例示的な断面図である。
図4】本出願の第3実施形態による光学フィルターの例示的な断面図である。
図5】本出願の第4実施形態による光学フィルターの例示的な断面図である。
図6】本出願の一実施形態による有機発光装置の断面図である。
図7】実施例1のカラー特性シミュレーションの評価結果である。
図8】実施例3のカラー特性シミュレーションの評価結果である。
図9】比較例1および比較例2のカラー特性シミュレーションの評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、実施例および比較例を通じて前記内容をより具体的に説明するが、本出願の範囲が下記提示された内容に限定されるものではない。
【実施例
【0067】
反射率およびカラー特性シミュレーションを評価するために、偏光子、位相差フィルムおよびOLEDパネルが順に配置された構造を下記実施例1~4および比較例1および2のように設定した。前記偏光子は、一方向に吸収軸を有し、単体透過率(Ts)が42.5%であり、前記OLEDパネルは、Galaxy S6である。
【0068】
実施例1
シミュレーション評価のために、偏光子、第1位相差フィルム、第2位相差フィルムおよびOLEDパネルが順に配置された構造を設定した。
【0069】
前記第1位相差フィルムは、R(450)/(550)が0.84の+Aプレートであり、第2位相差フィルムは、+Bプレートである。
【0070】
前記偏光子の吸収軸は、0度であり、前記第1位相差フィルムの遅相軸は、+45度であり、前記第2位相差フィルムの遅相軸は、-45度である。
【0071】
第1位相差フィルムおよび第2位相差フィルムの光学物性を下記表1のように調節して、6個のサンプルを準備した。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例2
シミュレーション評価のために、偏光子、第1位相差フィルム、第2位相差フィルムおよびOLEDパネルが順に配置された構造を設定した。
【0074】
第1位相差フィルムは、R(450)/(550)が0.84の-Bプレートであり、第2位相差フィルムは、+Bプレートである。
【0075】
前記偏光子の吸収軸は、0度であり、前記第1位相差フィルムの遅相軸は、+45度であり、前記第2位相差フィルムの遅相軸は、-45度である。
【0076】
第1位相差フィルムおよび第2位相差フィルムの光学物性を下記表2のように調節して、13個のサンプルを準備した。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例3
シミュレーション評価のために、偏光子、第1位相差フィルム、第2位相差フィルムおよびOLEDパネルが順に配置された構造を設定した。
【0079】
第1位相差フィルムは、R(450)/(550)が0.84の+Aプレートであり、第2位相差フィルムは、+Bプレートである。
【0080】
前記偏光子の吸収軸は、0度であり、前記第1位相差フィルムの遅相軸は、+45度であり、前記第2位相差フィルムの遅相軸は、+45度である。
【0081】
第1位相差フィルムおよび第2位相差フィルムの光学物性を下記表3のように調節して、5個のサンプルを準備した。
【0082】
【表3】
【0083】
実施例4
シミュレーション評価のために、偏光子、第1位相差フィルム、第2位相差フィルムおよびOLEDパネルが順に配置された構造を設定した。
【0084】
第1位相差フィルムは、R(450)/(550)が0.84の-Bプレートであり、第2位相差フィルムは、+Bプレートである。
【0085】
前記偏光子の吸収軸は0度であり、前記第1位相差フィルムの遅相軸は、+45度であり、前記第2位相差フィルムの遅相軸は、+45度である。
【0086】
第1位相差フィルムおよび第2位相差フィルムの光学物性を下記表2のように調節して、18個のサンプルを準備した。
【0087】
【表4】
【0088】
比較例1
シミュレーション評価のために、偏光子、第1位相差フィルムおよびOLEDパネルが順に配置された構造を設定した。
【0089】
第1位相差フィルムは、550nm波長の光に対する面上の位相差が140nmであり、R(450)/R(550)が0.84であり、+Aプレートである。
【0090】
前記偏光子の吸収軸は、0度であり、前記第1位相差フィルムの面内遅相軸は、45度である。
【0091】
【表5】
【0092】
比較例2
実施例1-3、実施例2-2、実施例3-4、実施例4-2の構造においてそれぞれ第2位相差フィルムの面内遅相軸と偏光子の吸収軸が平行を成すように配置したことを除いて、同じ構造で比較例2-1、比較例2-2、比較例2-3および比較例2-4を設定した。
【0093】
【表6】
【0094】
評価例1:反射率シミュレーション評価
実施例1~4および比較例1~2に対して動径角0度~360度に応じて正面を基準として60度の側面方向で反射率をシミュレーション(Techwiz 1D plus、サナイシステム)評価し、その結果を前記表1~表6に整理した。最大反射率(Max.)は、動径角0度~360度で反射率のうち最も高い反射率を意味する。実施例1~4の構造は、比較例1~2の構造に比べて、最大反射率(Max.)が低いため、反射防止効果に優れていることを確認することができる。
【0095】
評価例2:カラー特性シミュレーション評価
実施例1~4および比較例1~2に対して全方位カラー特性(Techwiz 1D plus、サナイシステム)をシミュレーション評価し、その結果を図7図9に示したものであり、その結果を表1~表6に整理した。
【0096】
カラー特性の場合、表面反射の影響度を除いて分析することが適切であるため、Extended jones方式で計算し評価した。図7図9のそれぞれの円の明るさは、色偏差(Color difference、ΔE ab)を意味し、黒い色に近いほど色偏差が低いことを意味する。色偏差は、下記のような数式で定義される。
【0097】
【数1】
【0098】
前記数式で(L 、a 、b )は、正面(傾斜角0°、方位角0°)における反射色の値を意味し、(L 、a 、b )は、それぞれの傾斜角、方位角の位置における反射色の値を意味する。図7図9は、全方位角度に対する色偏差を計算して図示化したグラフである。色偏差の数値が意味するものは、側面の色が正面の色とどれぐらい違いが生じるかを示すものである。したがって、図8での色が暗いほど全方向において均一な色を具現すると判断できる尺度になり得る。
【0099】
表示された色は、実際に人間が認知できる色感を示す。円の中心は、正面(傾斜角0°、方位角0°)を意味し、円から遠ざかるほど最大60°まで傾斜角が増加することを示す。円の径方向に沿って右側(0°)から反時計回りの方向にそれぞれ90°、180°、270°などの方位角を意味する。
【0100】
表1~表6で最大色偏差(Max.)は、動径角0度~360度で反射率のうち最も高い色偏差を意味し、平均色偏差(Ave.)は、動径角0度~360度においての色偏差の平均値を意味する。実施例1~4の構造は、比較例1の構造に比べて最大色偏差(Max.)および平均色偏差(Ave.)が低いため、全方向において均一な色を具現することを予測することができる。具体的に、図7図9によると、実施例1および3の構造は、比較例1の構造に比べて色が暗くて、最大色偏差(Max.)および平均色偏差(Ave.)が低いため、全方向において均一な色を具現することを確認することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 第1位相差フィルム
20 第2位相差フィルム
30 偏光子
100 光学フィルター
200 有機発光表示パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9