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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20220322BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220322BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220322BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020547380
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2019007282
(87)【国際公開番号】W WO2019245246
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0070664
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0071077
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】セラ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ホ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ボラ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ス・ソ
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-199015(JP,A)
【文献】特表2017-504976(JP,A)
【文献】特表2016-531167(JP,A)
【文献】特開2011-221463(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H01L21/301;304;21/463;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を含むバインダ樹脂;
(b)250nm以上の波長で活性を有する光開始剤;および
(c)多官能性架橋剤;を含み、
三級アミン化合物を前記光開始剤100重量部に対して100~2000重量部の含有量でさらに含み、
前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、樹脂総重量に対してシリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体由来の第1繰り返し単位20~80重量%と、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含む架橋性単量体由来の第2繰り返し単位10~70重量%と、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート系化合物由来の第3繰り返し単位5~70重量%と、を含み、
前記第2繰り返し単位は、シリコン系官能基を含まず、反応性官能基と側鎖の光反応性官能基との少なくとも一方を有する繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位全体重量に対し、60~95重量%の第2繰り返し単位が側鎖に光反応性官能基を含み、
前記第3繰り返し単位は、シリコン系官能基、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基を含まず、
前記シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体は、下記化学式2a~2dで表されるシリコン(メタ)アクリレートのうち少なくとも一つを含む、粘着剤組成物:
【化1】
前記化学式2a~2dにおいて、
~R はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、
~R はそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、
x、y、z、wおよびvはそれぞれ独立して1~3の整数であり、
n1~n4はそれぞれ独立して1~200の整数である。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含む架橋性単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムおよび3-(n-メチルアミノプロピル)メタクリルアミドからなる群より選ばれるいずれか一つまたは二つ以上を含む、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、樹脂総重量に対して、
シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体由来の第1繰り返し単位20~40重量%、
ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含む架橋性単量体由来の第2繰り返し単位20~40重量%、および
炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート系化合物由来の第3繰り返し単位40~60重量%を含み、
前記第2繰り返し単位全体重量に対し、70~95重量%の第2繰り返し単位が側鎖に光反応性官能基を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、50,000~2,000,000の重量平均分子量および-100℃~-5℃のガラス転移温度を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(b)光開始剤は、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンおよび2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドからなる群より選ばれた1種以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(c)多官能性架橋剤は、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物および金属キレート系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記(a)バインダ樹脂100重量部に対し、前記(b)光開始剤0.1~40重量部、そして前記(c)多官能性架橋剤0.01~30重量部を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記三級アミン化合物は、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、メチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-p-ジメチルアミノベンゾエート、オクチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジンおよびこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
基材フィルム、および粘着層を含み、
前記粘着層は、請求項1からのいずれか一項による粘着剤組成物を含む、臨時固定用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年6月20日付韓国特許出願第10-2018-0071077号および2019年6月14日付韓国特許出願第10-2019-0070664号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の小型化、薄型化、大容量化の傾向が拡大し、これに伴う半導体パッケージの高密度化、高集積化に対する必要性が急激に大きくなっている。これを反映し、半導体チップの大きさがますます大きくなると同時にチップの厚さは薄くなっている。
【0003】
薄型の半導体チップは、製造工程中のハンドリングが難しい問題がある。そのため、粘着シートなどを用いて臨時に薄型の半導体チップを固定し、一時的に固定された状態でこれを加工、処理および移送する工程を行う方法が適用されている。
【0004】
このような粘着シートは、優れた接着力を示しながらも、一連の工程が完了した後固定された薄型の半導体チップを分離する工程において、半導体チップに損傷を与えないとともに表面に残渣などが残らないようにする剥離性を有しなければならない。また、半導体の製造工程のうち多数の工程が高温の条件下で行われるので、工程中に熱分解などによって粘着力が低下しないように高い耐熱性が求められている。特に半導体工程では200℃以上の超高温工程が行われるが、耐熱性が低い場合、臨時粘着シートと薄型基板との間に気泡発生および浮き現象などによる外観不良の問題が発生した。
【0005】
一方、最近臨時粘着素材として紫外線照射によって粘着力が低下する紫外線硬化型粘着剤が用いられている。しかし、このような紫外線硬化型粘着剤の場合、粘着剤内の光開始剤などの添加剤が高温の工程で熱分解されたりまたは添加剤の移動現象により、剥離段階での粘着力低下が不充分である問題があった。
【0006】
そのため、臨時固定用粘着シートとして高温工程後にも外観に気泡および浮き現象が発生せず、また容易に分離可能な粘着素材の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた接着力を示しながらも、高温工程後にも気泡および浮きが発生せず、剥離段階で光硬化によって容易に分離できる粘着剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
(a)シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を含むバインダ樹脂;
(b)光開始剤;および
(c)多官能性架橋剤;を含み、
前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体由来の第1繰り返し単位と、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含む架橋性単量体由来の第2繰り返し単位を含み、
【0009】
前記第2繰り返し単位全体重量に対し、20~95重量%の第2繰り返し単位は側鎖に光反応性官能基を含む、粘着剤組成物を提供する。
【0010】
以下、発明の実施形態による粘着剤組成物、それを用いた臨時固定用粘着シートおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0011】
それに先立ち、本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0012】
本明細書で使われる単数形は、文面がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形も含む。
【0013】
本明細書で使われる「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0014】
そして、本明細書において「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使われ、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は、第2構成要素とも名付けることができ、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けることができる。
【0015】
本発明者などは研究を重ねた結果、半導体の製造工程に用いられる臨時固定用粘着シートなどに有用な粘着剤組成物の製造時、バインダ樹脂として特定構造の繰り返し単位を含む重合体を用いることによって、半導体の製造工程中には優れた粘着力を実現し、高温の工程後の剥離段階では光硬化により十分な粘着力低下効果を奏することによって容易に剥離することができる。また、耐熱性改善により高温の工程中にも外観に気泡または浮きなどが発生せず、優れた外観特性を示すことができる。そのため、前記粘着剤組成物を用いて製造した臨時固定用粘着シートを半導体製造工程での保護フィルムまたはキャリアフィルムとして使用時、半導体の製造工程の効率を向上させることができ、また、製造された半導体の品質を改善させることができる。
【0016】
I.粘着剤組成物
具体的に本発明の一実施形態による粘着剤組成物は、(a)シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を含むバインダ樹脂、(b)光開始剤、および(c)多官能性架橋剤を含み、選択的に(d)三級アミン化合物をさらに含む。以下、各構成成分別に詳細に説明する。
【0017】
(a)バインダ樹脂
前記粘着剤組成物において、(a)バインダ樹脂は、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を含み、また、前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、(a1)シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体由来の第1繰り返し単位;と(a2)ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の反応性官能基を含む架橋性単量体由来の第2繰り返し単位;を含み、前記(a2)の第2繰り返し単位総重量に対して20~95重量%の第2繰り返し単位は側鎖に光反応性官能基を含む。
【0018】
このようにシリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体由来の第1繰り返し単位およびこれと共に架橋構造の形成が可能な架橋性単量体由来の第2繰り返し単位を含み、また、前記第2繰り返し単位の一部が側鎖に光反応性官能基を有する、ランダム共重合構造の(メタ)アクリレート系樹脂をバインダ樹脂として含むことによって、高温の工程でも優れた粘着安定性を実現することができる。
【0019】
前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂において、(a1)の第1繰り返し単位は、シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系化合物から由来した構造を含む繰り返し単位であり、前記シリコン系官能基は、1~200個のアルキルシロキサンが結合されたポリアルキルシロキサン基、1~200個のアリールシロキサンが結合されたポリアリルシロキサン基、またはアルキルシロキサンおよびアリールシロキサンが混合されて2~200個結合されたポリオルガノシロキサン基であってよく、この時、前記アルキルはメチル、エチルまたはプロピルのような炭素数1~20のアルキル基であり、前記アリールはフェニルなどのような炭素数6~2のアリール基でありうる。具体的な例として、前記シリコン系官能基は、下記化学式1a~1cで表される官能基のいずれか一つでありうる:
【0020】
【化1】
【0021】
前記化学式1a~1cにおいて、
~Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であってよく、より具体的には水素原子または炭素数1~4のアルキル基、より具体的には水素原子またはメチル基でありうる。
【0022】
また、前記n1~n3はそれぞれ独立して1~200の整数を示し、より具体的には5~100の整数でありうる。
【0023】
このように前記第1繰り返し単位に含まれるシリコン系官能基は、炭素-炭素結合に比べて高い結合エネルギを有するシロキサン結合を有するので、バインダ樹脂の耐熱性を増加させて熱分解温度を増加させることができる。そのため、高温の工程でも優れた粘着安定性を実現することができ、また、気泡や浮きなどの発生を防止することができる。
【0024】
より具体的には、前記(a1)の第1繰り返し単位は、下記化学式2a~2dで表される、シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系化合物から由来した構造を少なくとも一つ含むものでありうる:
【0025】
【化2】
【0026】
前記化学式2a~2dにおいて、
~Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であってよく、より具体的には水素原子または炭素数1~4のアルキル基であってよく、
~Rはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、
x、y、z、wおよびvはそれぞれ独立して1~3の整数であり、
n1~n4はそれぞれ独立して1~200の整数を示し、より具体的には5~100の整数でありうる。
【0027】
また、前記シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系化合物は、片側末端または両側末端に(メタ)アクリレート基を含み、エチルヘキシルアクリレート(EHA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)などのようなバインダ樹脂製造用単量体と共にランダム共重合される。
【0028】
前記シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系化合物は、また、重量平均分子量(Mw)が10~10,000g/mol、より具体的には1,000~5,000g/molでありうる。上記した範囲の重量平均分子量を有することによって耐熱性および相容性の面において優れた効果を奏することができる。
【0029】
前記シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系化合物は、公知の有機化学反応を用いて直接製造することもでき、またはJNC社製のSilaplane(登録商標) FM-0721,Silaplane(登録商標) FM-0711、またはSilaplane(登録商標) FM-0725などのように商業的に入手可能である。
【0030】
前記(a1)の第1繰り返し単位は、前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂総重量に対して10~90重量%で含まれ得る。第1繰り返し単位の含有量が10重量%未満であれば、耐熱性の改善効果が微小であり、また、相対的に(a2)の第2繰り返し単位の含有量が過度に増加することによって架橋反応に参加しない未反応官能基が残留し、剥離時脱着が難しい。また、90重量%を超えると、バインダ樹脂の表面エネルギが過度に低くなり、粘着剤組成物の粘着力が低下する恐れがある。より具体的には、前記(a1)の第1繰り返し単位は、前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂総重量に対して20~80重量%、より具体的には20~40重量%で含まれ得る。
【0031】
本発明において、バインダ樹脂内の各繰り返し単位の含有量は、NMR分析により計算することができる。
【0032】
一方、前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂での(a2)の第2繰り返し単位は、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含む架橋性単量体由来の構造を含む繰り返し単位であり、前記第2繰り返し単位内のヒドロキシ基、カルボキシ基または窒素含有官能基などの反応性官能基は、熱硬化時多官能性架橋剤などと反応して3次元架橋構造を実現することができる。その結果、粘着剤組成物に高い架橋密度を付与し、凝集力を増加させて半導体工程中に十分な固定力を示すことができる。
【0033】
具体的には、前記第2繰り返し単位は、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリレート系単量体から由来し得、このような単量体としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、または2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0034】
また、前記第2繰り返し単位は、カルボキシ基を含む(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレート系単量体から由来し得、このような単量体としては(メタ)アクリル酸((meth)acrylic acid)、クロトン酸(crotonic acid)、イソクロトン酸、マレイン酸(maleic acid)、フマル酸(fumaric acid)、イタコン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、またはカルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用することができる。また、前記第2繰り返し単位は、ニトリル基、窒素含有ビニル基(N-vinyl group)、またはアクリルアミド基などのような窒素含有官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体から由来し得、このような単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムまたは3-(N-メチルアミノプロピル)メタクリルアミドなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0035】
前記架橋性単量体由来の第2繰り返し単位は、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂総重量に対して10~80重量%で含まれ得る。前記第2繰り返し単位の含有量が10重量%未満であれば、粘着剤組成物の耐久信頼性が低下する恐れがあり、80重量%を超えると、粘着力および剥離力が低下する恐れがある。より具体的には、前記架橋性単量体由来の第2繰り返し単位は、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂総重量に対して10~70重量%、より具体的には20~40重量%で含まれ得る。
【0036】
また、前記第2繰り返し単位の一部は、光反応性官能基、具体的には、炭素-炭素間二重結合を含む官能基としてビニル基、アリル基または(メタ)アクリロイル基などを側鎖に含み得る。
【0037】
前記第2繰り返し単位の側鎖に導入された光反応性官能基は、紫外線照射時光開始剤によって反応して3次元架橋構造を形成し、その結果として粘着剤のモジュラスが上昇する作用により粘着剤組成物の粘着力を大きく低下させる。そのため粘着剤組成物が残留せず容易な剥離が可能である。
【0038】
前記光反応性官能基は、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂形成用単量体、一例としてシリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系単量体と、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含む架橋性単量体の共重合後、前記架橋性単量体での前記官能基と付加反応可能な官能基および光反応性官能基を含む化合物を、付加または縮合反応させることによって第2繰り返し単位の側鎖に導入され得る。前記架橋性単量体での反応性官能基と付加反応可能な官能基としてはイソシアネート基、エポキシ基、またはアジリジン基などが挙げられ、第2繰り返し単位に含まれた官能基の種類によって適宜選択することができる。
【0039】
前記光反応性官能基の導入のための化合物の具体的な例としては、第2繰り返し単位でのヒドロキシ基と反応できる化合物として、(メタ)アクリロイルオキシイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシメチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、m-プロペニル-α、α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、またはアリルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物を(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルと反応させて得られる(メタ)アクリロイルジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物などが挙げられる。また、第2繰り返し単位のカルボキシル基と反応できる化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレートまたはアリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0040】
上記した光反応性官能基は、第2繰り返し単位全体重量に対して20~95重量%の第2繰り返し単位に置換されて含まれ得る。光反応性官能基が導入された第2繰り返し単位の含有量が20重量%未満の場合、紫外線照射による接着力低下が充分でなく、95重量%を超える場合、紫外線照射前粘着剤組成物の凝集力が低下する恐れがある。光反応性官能基の導入による剥離力改善効果の顕著さを考慮すると、前記光反応性官能基が導入された第2繰り返し単位は、第2繰り返し単位全体重量に対して60~95重量%、より具体的には70~95重量%の第2繰り返し単位に光反応性官能基が含まれ得る。
【0041】
また、本発明における前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、前述した(a1)の第1繰り返し単位および(a2)の第2繰り返し単位の他に、選択的に(a3)その他(メタ)アクリレート系化合物由来の第3繰り返し単位をさらに含み得る。
【0042】
前記(a3)第3繰り返し単位は、前述した特定官能基、具体的にはシリコン系官能基、ヒドロキシ基、カルボキシ基および窒素含有官能基を含まない、(メタ)アクリレート系化合物由来の繰り返し単位として、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環族(メタ)アクリレート、または芳香族(メタ)アクリレートなどから由来した構造を含む繰り返し単位でありうる。
【0043】
前記脂肪族(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、またはイソノニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0044】
前記脂環族(メタ)アクリレートとしては、炭素数3~30のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、具体的には、イソボルニルアクリレート(IBOA)、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、またはジシクロペンテニルオキシメタクリレートなどが挙げられる。
【0045】
前記芳香族(メタ)アクリレートとしては、炭素数6~30の芳香族基を有するアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、具体的には、フェニルプロピル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO(メタ)アクリレート、3-フェニルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、またはフェノールEO(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
その中でも接着剤組成物の凝集力が低下することなく粘着力を容易に制御することができ、粘着剤組成物のウェハ表面に対するぬれ性、耐水性および剥離性をより上昇させることができる点で、炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート化合物由来の繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。
【0047】
前記(a3)第3繰り返し単位は、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂総重量に対して5~70重量%で含まれ得る。前記第3繰り返し単位の含有量が5重量%未満であれば、粘着剤組成物の耐久信頼性が低下する恐れがあり、70重量%を超えると粘着力および剥離力が低下する恐れがある。
【0048】
より具体的には、前記(a3)第3繰り返し単位がさらに含まれる場合、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂総重量に対して前記(a1)の第1繰り返し単位20~80重量%、(a2)の第2繰り返し単位10~70重量%、そして前記(a3)の第3繰り返し単位5~70重量%を含んでよく、より具体的には前記(a1)の第1繰り返し単位20~40重量%、(a2)の第2繰り返し単位20~40重量%、そして前記(a3)の第3繰り返し単位40~60重量%が含まれ得る。シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂内の各繰り返し単位が上記した含有量の範囲で含まれる時、粘着剤組成物の耐久信頼性低下の恐れなく、より優れた粘着力および紫外線照射後の剥離力を示すことができる。
【0049】
本発明における前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、各繰り返し単位を提供する単量体の混合物に対する重合反応後、光反応性官能基の導入により製造することができる。
【0050】
具体的には、前記重合反応は溶液重合、光重合、バルク重合、懸濁重合またはエマルジョン重合などが用いられ、その中でも工程が容易で、製造される重合体が優れた均一性を有し得る点で熱開始剤を用いた溶液重合方法によって行われ得る。前記溶液重合は、シリコン系官能基を含む(メタ)アクリレート系化合物と、架橋性単量体、そして選択的にその他の(メタ)アクリレート系化合物を含む単量体が均一に混合された状態で開始剤を混合後、50~140℃の重合温度で行われ得る。この時、開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのようなアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイルまたは過酸化アセチルなどのような過酸化物系開始剤などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用することができる。
【0051】
前記重合反応の完了後、結果の重合反応物に架橋性単量体由来の第2繰り返し単位の一部に光反応性官能基を導入するために、前述したように、前記架橋性単量体での反応性官能基と付加反応可能な官能基および光反応性官能基を含む化合物を添加し、縮合または付加反応させることによって、シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を製造することができる。
【0052】
本発明における前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、その製造時単量体物質の種類および含有量、そして重合条件などの制御により粘着剤組成物に適用時より優れた効果を奏させるように重量平均分子量およびガラス転移温度などの物性を調整することができる。具体的には本発明における前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、50,000g/mol~2,000,000g/molであってよく、好ましくは700,000g/mol~1,500,000g/mol、あるいは1,000,000g/mol~1,200,000g/molでありうる。前記範囲の重量平均分子量を有する場合、適正コーティング性と凝集力を示し、剥離段階で被着剤に残余物が残るなどの問題が発生しないため好ましい。
【0053】
また、本明細書における重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minのflow rateが挙げられる。
【0054】
また、本発明における前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、-100℃~-5℃、好ましくは-70℃~-10℃、あるいは-45~-30℃でありうる。前記範囲のガラス転移温度を有する場合、適正コーティング性と凝集力を示し、初期接着段階で付着作業性に優れ、剥離段階で被着剤に残余物が残るなどの問題が発生しないため好ましい。
【0055】
本発明における前記シリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimer)で測定した。
【0056】
また、本発明における前記(a)のバインダ樹脂は、上記したシリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂の他に、従来の粘着剤組成物でバインダ樹脂として用いられる化合物をさらに含み得る。この場合、前記化合物は、本発明での効果を阻害しない範囲内で、具体的にはバインダ樹脂総重量に対して20重量%以下、より具体的には10~5重量%でさらに含み得る。
【0057】
前記のような構成を有する(a)バインダ樹脂は、粘着剤組成物総重量に対して50~97重量%で含まれ得る。バインダ樹脂の含有量が50重量%未満であれば、コーティング性および作業性を確保することが難しく、また、97重量%を超えると十分な粘着力を得ることが難しい。より具体的には(a)バインダ樹脂は粘着剤組成物総重量に対して70~90重量%で含まれ得る。
【0058】
(b)光開始剤
一方、本発明における(b)光開始剤は、250nm以上の波長で活性を有する成分であり、前述した基材フィルムから透過した波長で光重合を開始して粘着層の粘着力を容易に低下させる成分であり、後述するアミン化合物と組み合わせて用いられる場合には、光硬化による粘着力低下の効果をより向上させることができる。
【0059】
前記(b)光開始剤は、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンおよび2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどが挙げられる。好ましくは、イソプロピルチオキサントン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドを使用することができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。上記した光開始剤は基材フィルムを介して透過する紫外線による活性に優れ、また、後述する三級アミン化合物と組み合わせ使用時にはシナジー効果で光硬化段階で十分な粘着力低下を実現することができる。
【0060】
本発明における前記(b)光開始剤は、前記(a)バインダ樹脂100重量部に対し、0.1~40重量部、好ましくは1~20重量部で含まれてよく、前記含有量の範囲で含まれる場合、効果的な硬化反応を誘導し、硬化後残存成分による物性低下などを防止することができる。光開始剤の含有量が0.1重量部未満であれば、硬化反応を十分に誘導することが難しく、また、40重量部を超える場合、十分な粘度を有することができず、コーティング性が低下する恐れがある。
【0061】
(c)多官能性架橋剤
また、本発明における(c)多官能性架橋剤は、前記(a)バインダ樹脂成分のうちシリコン系官能基および光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂内に含まれた官能基と反応し、粘着剤組成物の凝集力を向上させる作用をする。
【0062】
具体的にはイソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物および金属キレート系化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物が使用され得、前記イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物および金属キレート系化合物は当分野で通常使用される化合物であれば、特に制限なしに使用することができる。
【0063】
前記イソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートおよび前記のうちいずれか一つのポリオール(例.トリメチロールプロパン)との反応物からなる群より選ばれた一つ以上が挙げられる。また、アジリジン系化合物の例としては、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)およびトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドからなる群より選ばれた一つ以上が挙げられる。前記エポキシ系化合物の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N,N-テトラグリシジエチレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれた一つ以上が挙げられ、また、前記金属キレート系化合物の例としては、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウムおよび/またはバナジウムのような多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルなどに配位している化合物を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明における前記(c)多官能性架橋剤は、前記(a)バインダ樹脂100重量部に対して0.01~30重量部で含まれてよく、好ましくは0.1~10重量部で含まれ得る。前記多官能性架橋剤の含有量が0.01重量部未満の場合、粘着層の凝集力が低下して高温工程中に凝集破壊が起きる恐れがあり、30重量部を超える場合、粘着層が光硬化以前に粘着力を十分に確保できず剥離や浮き現象が発生する恐れがある。
【0065】
(d)三級アミン化合物
一方、本発明における粘着剤組成物は、上記した(a)~(c)の成分と共に、(d)三級アミン化合物を選択的にさらに含み得る。
【0066】
前記(d)三級アミン化合物は、前述した(b)光開始剤と組み合わせて使用時シナジー効果により高温工程後にも硬化反応上昇を実現することができる。具体的には、前記(d)三級アミン化合物の場合、水素供与剤の役割をしてラジカル生成により光開始剤とのシナジー効果を実現することができる。
【0067】
前記(d)三級アミン化合物は、例えば、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、メチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-p-ジメチルアミノベンゾエート、オクチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジンなどが挙げられ、好ましくは、エチル-p-ジメチルアミノベンゾエート、または2-エチルヘキシル-p-ジメチルアミノベンゾエートを使用することができる。これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
本発明における前記三級アミン化合物は、上記した光開始剤100重量部に対して100~2000重量部の含有量で含まれてよく、より好ましくは200~1500重量部の含有量で含まれ得る。上記した含有量の範囲で含まれる場合、組み合わせによるシナジー効果を最大化することができる。前記三級アミン化合物の含有量が100重量部未満の場合、光開始剤に対して十分な反応性を与えるには足りず、2000重量部を超える場合、粘着剤組成物が十分な粘度を有することができずコーティング性が低下する恐れがある。
【0069】
また、本発明における前記粘着剤組成物は、発明の効果に影響を及ぼさない範囲内で、粘着性付与樹脂、開始剤、低分子量体、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色剤、補強剤、消泡剤、界面活性剤、発泡剤、有機塩、増粘剤および難燃剤からなる群から選ばれた1種以上の添加剤を選択的にさらに含み得る。
【0070】
II.臨時固定用粘着シート
本発明の他の一実施例によれば、基材フィルムと粘着層を含み、前記粘着層は、上記した粘着剤組成物を含む臨時固定用粘着シートが提供される。
【0071】
前記粘着層は、上記した粘着剤組成物によって製造されることによって、高温の条件下でも半導体の製造工程中の十分な粘着力を実現し、剥離段階で光硬化による粘着力低下が容易である。特に、バインダ樹脂としてシリコン系官能基と光反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系樹脂を使用することによって、基材フィルムから相対的に低い透過率で波長が透過しても、優れた光開始効率および高温工程後にも優れた粘着力低下効果を実現することができる。また、さらにアミン系化合物をさらに含む場合、光開始剤とのシナジー効果により高温工程後にも硬化反応上昇を実現することができる。
【0072】
具体的には、本発明における前記臨時固定用粘着シートは、下記数式1により定義される粘着層の粘着力変化率が30%以下である。
【0073】
[数1]
粘着層の粘着力変化率(%)=A2×100/A1
前記数式1において、A1は240~260℃で1~20分間熱処理した後の前記粘着層の粘着力であり、
A2は前記熱処理された粘着層に200nm~500nm領域の複合波長の紫外線を100mJ/cm~2000mJ/cm光量で照射した後に測定した粘着層の粘着力である。
【0074】
前記数式1の粘着層の粘着力変化率は、半導体の製造工程中の高温の条件を経ても優れた粘着力を実現し、光硬化による剥離段階で十分な粘着力低下効果を奏する指標であって、本発明による臨時固定用粘着シートは、前記数式1の粘着力変化率値が30%以下を満足することによって、半導体の製造工程に適用され、工程効率を顕著に向上させ、高品質の半導体を製造することができる。
【0075】
基材フィルム
本発明の臨時固定用粘着シートにおいて、前記基材フィルムは、高分子基材フィルムであってよく、好ましくはガラス転移温度(Tg)が60℃以上である高分子基材フィルムでありうる。前記基材フィルムのガラス転移温度が60℃以上を満足することによって、十分な耐熱性を示し、そのため、高温工程中にシワおよび変形などの問題が発生せず半導体工程が容易に行われるようにする。
【0076】
本発明において、前記基材フィルムのガラス転移温度が60℃未満である場合、半導体の製造工程中に発生する高温の条件下での劣化および変形などの問題によって工程に影響を及ぼしうる。そのため半導体工程上の不良が発生しうる。前記基材フィルムのガラス転移温度は、好ましくは70℃以上または90℃以上でありうる。この場合、前述した効果をより向上させることができる。
【0077】
本発明において、前記高分子基材フィルムとしては、例えば、ポリイミド(polyimide)、ポリアミドイミド(polyamideimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)およびポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate)、ポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene sulfide)およびポリアミド(Polyamide)からなる群より選ばれる1種以上の高分子化合物を含み得る。好ましくは、ポリイミド、ポリアミドまたはポリアミドイミドを含み得る。
【0078】
本発明において、基材フィルムが2種以上の高分子が混合物が含まれる場合、前述した高分子をそれぞれ含むフィルムが2層以上積層された構造のフィルムまたは前述した高分子が2以上含まれた単一層がフィルムをすべて含むものである。
【0079】
また、前記基材フィルムは、前述した耐熱性高分子成分を含むと同時に300nm以上の波長で透過率が50%以上を満足することによって、後述する粘着層内の光開始剤が容易に光重合反応を開始できるようにする。
【0080】
前記基材フィルムが、300nm以上の波長で透過率が50%未満である場合、粘着層の光開始剤の光吸収が充分でないため、粘着シートを分離する段階で粘着力の低下が充分でない。
【0081】
前記基材フィルムの厚さは特に限定されず、通常5~500μmの厚さで形成され得、好ましくは10~300μmの厚さまたは25~100μmの厚さで形成され得る。この場合、半導体の高温工程で支持が可能であり、粘着シートの剥離段階で損傷なく剥離が可能である。
【0082】
前記基材フィルムは、本発明が目的とする効果に影響を及ぼさない範囲内で性能を向上させるためのさらなる処理を経たものでありうる。例えば、基材フィルムの表面にマット処理、コロナ放電処理、プライマー処理または架橋処理などの慣用的な物理的または化学的処理を加えることができる。
【0083】
粘着層
本発明の臨時固定用粘着シートにおける粘着層は、前記基材フィルムの一面に形成され得、前述した粘着剤組成物を含む。
前記のような成分を含む粘着層を基材フィルム上に形成する方法は、特に限定されず、例えば基材フィルム上に直接本発明の粘着層形成用組成物を塗布して粘着層を形成する方法、または剥離性基材上にまず粘着層形成用組成物を塗布して粘着層を製造し、前記剥離性基材を使用して粘着層を基材フィルム上に転写する方法などを用いることができる。
【0084】
この時、粘着層形成用組成物を塗布および乾燥する方法は、特に限定されず、例えば前記それぞれの成分を含む組成物をそのまま、または適宜の有機溶剤に希釈してコンマコーター、グラビアコーター、ダイコーターまたはリバースコーターなどの公知の手段で塗布した後、60℃~200℃の温度で10秒~30分間溶剤を乾燥させる方法を用いることができる。また、前記過程では粘着剤の十分な架橋反応を進行させるためのエイジング(aging)工程をさらに行うこともできる。
【0085】
前記粘着層の厚さは、特に限定されないが、具体的には5~100μmの厚さで形成することができる。前記厚さ範囲で形成される場合、半導体の高温工程で支持が可能であり、粘着シートの剥離段階で損傷することなく剥離が可能である。
【0086】
また、本発明における前記臨時固定用粘着シートは、前記粘着層上に形成された離型フィルムをさらに含み得る。使用され得る離型フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムなどの一種または二種以上のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0087】
前記のような離型フィルムの表面は、アルキド系、シリコン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系またはワックス系などの一種または二種以上で離型処理されていてもよい。その中で特に耐熱性を有するアルキド系、シリコン系またはフッ素系などの離型剤が好ましい。
【0088】
前記離型フィルムは、通常10μm~500μm、好ましくは20μm~200μm程度の厚さで形成されるが、これに制限されるものではない。
【0089】
本発明による臨時固定用粘着シートは、半導体工程の保護およびキャリアフィルムとして使用することができる。
【0090】
また、本発明による臨時固定用粘着シートは、粘着層は1個以上含み得、そのため基材フィルムに対して一面または両面に形成され得る。
【0091】
また、前記臨時固定用粘着シートを製造する方法は、特に限定されず、例えば、基材フィルム上に粘着層および離型フィルム(必要に応じて)を順に形成する方法、または基材フィルムに粘着層が形成された離型フィルムを別に製造した後、これをラミネーションさせる方法などが用いられる。
【0092】
前記ラミネーション方法は、特に限定されず、ホットロールラミネートまたは積層プレス法を用いることができ、その中で連続工程の可能性および効率性の側面からホットロールラミネート法が好ましい。ホットロールラミネート法は、10℃~100℃の温度で0.1Kgf/cm~10Kgf/cmの圧力で行われるが、これに制限されるものではない。
【0093】
図1A図1B、および図2A図2Bはそれぞれ本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10の断面図を示す図である。
【0094】
図1Aを参照すると、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は基材フィルム100および粘着層200が積層された構造でありうる。
【0095】
前記粘着シート10が半導体の製造工程に適用される場合、前記粘着層200の基材フィルム100が形成されていない面200(a)が半導体装置の所定の部分に付着し得る。
【0096】
図1Bを参照すると、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、基材フィルム100、粘着層200および離型フィルム300が順次積層された構造でありうる。
【0097】
前記粘着シート10が半導体の製造工程に適用される場合、前記粘着層200から離型フィルム300を剥離した後、離型フィルム300が剥離された粘着層200の一面が半導体装置の所定の部分に付着し得る。
【0098】
図2Aを参照すると、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、基材フィルム100の両面に2個の粘着層(210,220)がそれぞれ形成された構造でありうる。
【0099】
この場合、第1粘着層210、基材フィルム100、第2粘着層220が順に積層された構造でありうる。
【0100】
前記粘着シート10が半導体の製造工程に適用される場合、粘着層のいずれか一つの基材フィルム100が形成されていない面が半導体装置の所定の部分に付着し得る。例えば、前記第2粘着層220の基材フィルム100が形成されていない面220(a)が半導体装置の所定の部分に付着し得る。
【0101】
図2Bを参照すると、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10は、第1離型フィルム310、第1粘着層210、基材フィルム100、第2粘着層220および第2離型フィルム320が順次積層された構造でありうる。
【0102】
前記粘着剤シート10が半導体の製造工程に適用される場合、前記第2粘着層220から 第2離型フィルム320を剥離した後、 第2離型フィルム320が剥離された 第2粘着層220の一面が半導体装置の所定の部分に付着し得る。
【0103】
その後、前記粘着シート10の剥離段階において、第1粘着層210側に紫外線を照射して下部基材フィルム100を通過し、第2粘着層220を光硬化させることができる。そのため、 第2粘着層220の粘着力が低下して半導体装置から臨時固定用粘着シート10が容易に剥離される。
【0104】
通常、半導体装置の製造中には高温の条件下に行われる工程が含まれ、この場合、基材フィルムや粘着層が熱分解されたり、粘着層内に含まれる添加剤などが脱離する問題があった。このような場合、半導体の製造工程中に十分な粘着力を実現することができないか、または粘着シートの光硬化による剥離段階で十分な粘着力低下を実現することができなかった。
【0105】
本発明による臨時固定用粘着シートは、紫外線透過性がある耐熱性高分子で基材フィルムを形成し、前記基材フィルムの透過波長領域での光重合開始および反応性を向上させ得る特定の成分で粘着層を形成することによって、前述した問題をすべて改善することができ、そのため、半導体の製造工程効率が向上して製造された半導体の品質を改善することができる。
【発明の効果】
【0106】
本発明による粘着剤組成物は、半導体製造工程中には適正粘着力を示し、光硬化時には粘着力が十分に低下して剥離が容易である。高温工程後にも気泡および浮きが発生しない。そのため本発明による粘着剤組成物は、臨時固定用粘着シートの製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1図1Aは、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10の断面構造を概略的に示す図である。図1Bは、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10の断面構造を概略的に示す図である。
図2図2Aは、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10の断面構造を概略的に示す図である。図2Bは、本発明の一実施形態による臨時固定用粘着シート10の断面構造を概略的に示す図である。
図3】実施例1による臨時固定用粘着シートに対する熱処理工程後の外観を観察した写真である。
図4】比較例1による臨時固定用粘着シートに対する熱処理工程後の外観を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、発明の理解を深めるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのであり、発明はこれらにのみ限定するものではない。
【0109】
<粘着剤組成物の製造>
製造例1
窒素ガスが還流されて温度調整が容易であるように冷却装置を設置した反応器にエチルヘキシルアクリレート(EHA)62.5g、シリコン(メタ)アクリレート(JNC社製のSilaplane(登録商標) FM-0721)20gとヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5gで構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準に溶剤として酢酸エチル(EAc)200gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で60分以上十分に混合した。その後温度は65℃に上昇維持し、反応開始剤であるAzobisisobutylonitrile(Wako Pure Chemical Industries社製のV-60(登録商標))0.1gを分割投入して反応を開始させた後6時間重合させて1次反応物を製造した。
【0110】
前記1次反応物にメタクリロイルイソシアネート(MOI)20g(1次反応物内のHEAに対して85.5モル%)および触媒(dibutyltin dilaurate,DBTDL)を0.08gを配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化機を導入してバインダ樹脂(a-1)を製造した。
【0111】
前記バインダ樹脂(a-1)100gに多官能性架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(isopropyl thioxanthone,ITX)1.2g、およびアミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着剤組成物を製造した。
【0112】
製造例2
窒素ガスが還流されて温度調整が容易であるように冷却装置を設置した反応器にエチルヘキシルアクリレート(EHA)52.5g、シリコン(メタ)アクリレート(JNC社製のSilaplane(登録商標) FM-0721)30gとヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5gで構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準に溶剤として酢酸エチル(EAc)200gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で60分以上十分に混合した。その後温度は65℃に上昇維持し、反応開始剤であるAzobisisobutylonitrile(Wako Pure Chemical Industries社製のV-60(登録商標))0.1gを分割投入して反応を開始させた後6時間重合させて1次反応物を製造した。
【0113】
前記1次反応物にメタクリロイルイソシアネート(MOI)20g(1次反応物内のHEAに対して85.5モル%)および触媒(dibutyltin dilaurate,DBTDL)を0.08gを配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化機を導入してバインダ樹脂(a-2)を製造した。
【0114】
前記バインダ樹脂(a-2)100gに多官能性架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(ITX)1.2g、および三級アミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着剤組成物を製造した。
【0115】
製造例3
窒素ガスが還流されて温度調整が容易であるように冷却装置を設置した反応器にエチルヘキシルアクリレート(EHA)37g、ブチルアクリレート(BA)25.5g、シリコン(メタ)アクリレート(JNC社製のSilaplane(登録商標) FM-0721)20gとヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5gで構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準に溶剤として酢酸エチル(EAc)200gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で60分以上十分に混合した。その後温度は65℃に上昇維持し、反応開始剤であるAzobisisobutylonitrile(Wako Pure Chemical Industries社製のV-60(登録商標))0.1gを分割投入して反応を開始させた後6時間重合させて1次反応物を製造した。
【0116】
前記1次反応物にメタクリロイルイソシアネート(MOI)20g(1次反応物内のHEAに対して85.5モル%)および触媒(dibutyltin dilaurate,DBTDL)を0.08gを配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化機を導入してバインダ樹脂(a-3)を製造した。
【0117】
前記バインダ樹脂(a-3)100gに多官能性架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(ITX)1.2g、および三級アミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着剤組成物を製造した。
【0118】
比較製造例1
窒素ガスが還流されて温度調整が容易であるように冷却装置を設置した反応器にエチルヘキシルアクリレート82.5g、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5gで構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準に溶剤として酢酸エチル(EAc)200gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で60分以上十分に混合した。その後温度は65℃に上昇維持し、反応開始剤であるV-60(Azobisisobutylonitrile)0.1gを分割投入して反応を開始させた後6時間重合させて1次反応物を製造した。
【0119】
前記1次反応物にメタクリロイルイソシアネート(MOI)20g(1次反応物内のHEAに対して85.5モル%)および触媒(DBTDL:dibutyl tin dilaurate)0.08g配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化機を導入して(メタ)アクリレート系バインダ樹脂(b-1)を製造した。
【0120】
前記(メタ)アクリレート系バインダ樹脂(b-1)100gにTDI系イソシアネート硬化剤2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(Isopropyl thioxanthone,ITX)1.2gおよび三級アミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着層形成用組成物を製造した。
【0121】
比較製造例2
窒素ガスが還流されて温度調整が容易であるように冷却装置を設置した反応器にエチルヘキシルアクリレート62.5g、シリコン(メタ)アクリレート20g(JNC社製のSilaplane(登録商標) FM-0721)とヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5gで構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準に溶剤として酢酸エチル(EAc)200gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で60分以上十分に混合した。その後温度は65℃に上昇維持し、反応開始剤であるV-60(Azobisisobutylonitrile)0.1gを分割投入して反応を開始させた後6時間重合させて1次反応物を製造した。
【0122】
前記1次反応物にメタクリロイルイソシアネート(MOI)10g(1次反応物内のHEAに対して42.7モル%)および触媒(DBTDL:dibutyl tin dilaurate)を0.045gを配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化機を導入してバインダ樹脂(b-2)を製造した。
【0123】
前記バインダ樹脂(b-2)100gに多官能性架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(ITX)1.2g、および三級アミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着剤組成物を製造した。
【0124】
比較製造例3
窒素ガスが還流されて温度調整が容易であるように冷却装置を設置した反応器にエチルヘキシルアクリレート62.5g、シリコン(メタ)アクリレート20gとヒドロキシエチルアクリレート(HEA)17.5gで構成される単量体の混合物を投入した。次いで、前記単量体混合物100gを基準に溶剤として酢酸エチル(EAc)200gを投入し、前記反応器内に酸素を除去するために窒素を注入しながら30℃で60分以上十分に混合した。その後温度は65℃に上昇維持し、反応開始剤であるV-60(Azobisisobutylonitrile)0.1gを分割投入して反応を開始させた後6時間重合して1次反応物を製造した。
【0125】
前記1次反応物にメタクリロイルイソシアネート(MOI)22.9g(1次反応物内のHEAに対して97モル%)および触媒(DBTDL:dibutyl tin dilaurate)を0.091gを配合し、40℃で24時間反応させて1次反応物内の重合体側鎖に紫外線硬化機を導入してバインダ樹脂(b-3)を製造した。
【0126】
前記バインダ樹脂(b-3)100gに多官能性架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(ITX)1.2g、および三級アミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着剤組成物を製造した。
【0127】
比較製造例4
粘着剤組成物の製造時、バインダ樹脂として前記比較製造例1でのバインダ樹脂(b-1)を使用し、また、シリコン(メタ)アクリレートをさらに添加することを除いては前記製造例1と同様の方法により粘着剤組成物を製造した。
【0128】
詳細には、前記比較製造例1で製造したバインダ樹脂(b-1)80gに、シリコン(メタ)アクリレート20g、多官能性架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI)2.0g、光開始剤としてイソプロピルチオキサントン(Isopropyl thioxanthone,ITX)1.2g、およびアミン系化合物としてエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート6.0gを混合して粘着剤組成物を製造した。
【0129】
前記製造例1~3および比較製造例1~3で製造したバインダ樹脂内の各繰り返し単位の含有量と物性(MwおよびTg)を分析および測定し、その結果を下記表1に示した。
【0130】
下記表1において、バインダ樹脂内の各繰り返し単位の含有量はNMR分析により計算した。また、MwはGPCを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量であり、TgはDSCで測定したガラス転移温度である。
【0131】
【表1】
【0132】
<臨時固定用粘着シートの製造>
実施例1
前記製造例1の粘着剤組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、ガラス転移温度:120℃)上に塗布した後110℃で3分間乾燥して約30μm厚さの粘着層を形成した。形成された粘着層を50μm厚さの基材フィルムポリイミドに合紙した後エイジングを経て臨時固定用粘着シートを得た。
【0133】
実施例2~3および比較例1~4
下記表2の成分および使用量を適用したことを除いては実施例1と同様の方法で臨時固定用粘着シートを製造した。
【0134】
【表2】
【0135】
実験例:粘着力および剥離力評価
実施例および比較例により製造された臨時固定用粘着シートに対し、下記の方法で粘着力および光硬化による剥離力を評価し、その結果を表3に記載した。
実施例および比較例で製造された臨時固定用粘着シートを幅25mmになるようにカットした後シリコンウェハに2kgのローラを用いて付着せさたサンプルA(熱処理前)を準備した。
【0136】
次に、シリコンウェハに付着した臨時固定用粘着シートを250℃のオーブンで10分間放置して熱処理したサンプルB(熱処理後)を準備した。
前記で準備した熱処理をしなかったサンプルAと熱処理を施行したサンプルBに対してそれぞれ光量1000mJ/cm条件の紫外線(200nm~500nm領域の複合波長を有する水銀ランプ使用)を基材フィルム側で照射して粘着力を測定した。
【0137】
粘着力は、Stable Micro Systems.社のTexture Analyzerを用いて300mm/minの速度、180度角度で粘着力(gf/25mm)を測定し、その結果を下記表3に記載した。
また、測定した粘着力から下記数式1により粘着層の粘着力変化率を計算した。
【0138】
[数1]
粘着層の粘着力変化率(%)=A2×100/A1
(前記数式1において、A1は250℃で10分間熱処理した後前記粘着層の粘着力であり、
A2は前記熱処理された粘着層に200nm~500nm領域の複合波長の紫外線を100mJ/cm~2000mJ/cmの光量で照射した後測定した粘着層の粘着力である)
【0139】
また、熱処理したサンプルBでの気泡発生および浮きを肉眼で観察した。その結果を図3および4にそれぞれ示した。図3および図4はそれぞれ前記実施例1および比較例1の臨時固定用粘着シートに対する熱処理工程後の外観を観察した写真である。
【0140】
【表3】
【0141】
前記表3において、NDは測定されていないことを意味する。
前記表3の熱処理後サンプルBに対する実験の結果から確認できるように、本発明により製造された実施例1~3の臨時固定用粘着シートは、高温の熱工程後の粘着力低下が大きく、シリコンウェハから剥離時に粘着剤残余物なしに除去が可能であることを確認した。また、実施例1~3の臨時固定用粘着シートは、250℃の高温での熱処理工程後にも気泡発生や浮きなど外観特性の低下がなかった。これに反し、バインダ樹脂としてシリコン系官能基なしに光反応性官能基のみを含む(メタ)アクリレート系樹脂を使用して製造した比較例1の臨時固定用粘着シートは、熱処理工程後にも高い粘着力を示し、シリコンウェハから剥離時の粘着剤残余物が発生し、また、熱処理工程後の表面に気泡および浮きが発生した。
【0142】
また、バインダ樹脂として、シリコン系官能基とともに光反応性官能基を含む(メタ)アクリレート系樹脂を使用するが、前記光反応性官能基が導入された第2繰り返し単位の含有量が、(メタ)アクリレート系樹脂内の第2繰り返し単位総重量に対して20重量%未満の含有量で含む比較例2の臨時固定用粘着シートは、熱処理工程後にも高い粘着力を示し、シリコンウェハから剥離時の粘着剤残余物が発生し、比較例1と同様に熱処理工程後の表面に気泡および浮きが発生した。
【0143】
また、前記光反応性官能基が導入された第2繰り返し単位の含有量が、(メタ)アクリレート系樹脂内の第2繰り返し単位総重量に対して95重量%を超えて過量含む比較例3の臨時固定用粘着シートの場合、熱処理工程後の転写が発生し、比較例1および2と同様に熱処理工程後の表面に気泡および浮きが発生した。
【0144】
一方、シリコン系官能基なしに光反応性官能基のみを含む(メタ)アクリレート系バインダ樹脂をシリコン(メタ)アクリレートと単純混合して製造した比較例4の粘着剤は、攪拌工程中の(メタ)アクリレート系バインダ樹脂とシリコン(メタ)アクリレートとの低い相容性により相分離およびゲル化が進行し、粘着シートの製造が不可能であった。
【符号の説明】
【0145】
10 臨時固定用粘着シート
100 基材フィルム
200 粘着層
300 離型フィルム
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4