(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】評価用リチウムイオン二次電池の製造方法、および評価用リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20220322BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220322BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220322BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220322BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20220322BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220322BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220322BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20220322BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/04 Z
H01M10/0525
H01M10/0566
H01M50/10
H01M50/409
(21)【出願番号】P 2016056661
(22)【出願日】2016-03-22
【審査請求日】2018-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光国
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-262768(JP,A)
【文献】特開2016-9677(JP,A)
【文献】特開2015-56308(JP,A)
【文献】特開2010-86753(JP,A)
【文献】特開2003-123724(JP,A)
【文献】特開2015-187929(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147647(WO,A1)
【文献】特開2007-134244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M2/14-2/18
H01M4/13-4/62
H01M10/04
H01M2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に正極活物質層が形成された正極を作製する工程と、
負極集電体に負極活物質層が形成された負極を作製する工程と、
前記正極および前記負極の間に、セパレーターを介挿する工程と、
前記正極、前記負極、および前記セパレーターを電解液とともにラミネートフィルムで封止して、ラミネートセルを組み立てる工程とを含み、
前記負極活物質層は負極活物質とバインダーからなり、
前記負極活物質は、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のいずれか一種以上からなり、
前記負極活物質層における前記バインダーの含有量は10質量%であり、
前記負極活物質層は、空隙率が21.9%以上36%以下であ
り、
5V級リチウムイオン電池の正極材料の特性評価に用いられることを特徴とする評価用リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記ラミネートセルを組み立てる際に、前記正極および前記負極の一方の端部側に空隙部を設けることを特徴とする請求項1記載の評価用リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記正極および前記負極の間に、前記セパレーターを介挿する工程では、該セパレーターおよび該正極の間に、セルロースセパレーターをさらに介挿し、
前記セルロースセパレーターは、前記ラミネートセルの長手方向に沿って延在し、前記正極および前記負極より長いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の評価用リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記正極活物質層を構成する材料を溶媒とともに湿式混合したスラリーを、前記正極集電体上に塗工し乾燥することにより、該正極活物質層が形成された正極を作製することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の評価用リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
正極集電体に正極活物質層が形成された正極と、
負極集電体に負極活物質層が形成された負極と、
前記正極および前記負極の間に介挿され
たセパレーターと、
前記正極、前記負極、および前記セパレーターを電解液とともに封止するラミネートフィルムとを備え、
前記負極活物質層は負極活物質とバインダーからなり、
前記負極活物質は、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のいずれか一種以上からなり、
前記負極活物質層における前記バインダーの含有量は10質量%であり、
前記正極および前記負極の一方の端部側は、空隙部が設けられ、
前記負極活物質層は、空隙率が21.9%以上36%以下であ
り、
5V級リチウムイオン電池の正極材料の特性評価に用いられることを特徴とする評価用リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価用リチウムイオン二次電池の製造方法、および評価用リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は高いエネルギー密度をもつため、近年小型化や軽量化を要求される携帯電話やノートパソコンのような携帯電子機器に広く利用されている。また自動車用途ではクリーンなエネルギー源として開発が盛んであり、小型、軽量、高容量、高出力などの高性能化や低コスト化が求められている。その中で、4V以上の高い電位で作動する5V級正極材料は電池の高エネルギー密度化や、組電池の電池個数を減少できる利点があり、ハイブリッド車および電気自動車用電池の正極材料として開発が進んでいる。
【0003】
これらの開発を迅速かつ低コストで進めるためには評価手段が重要な要素の一つであり、リチウムイオン二次電池正極材料の開発における評価の重要性は益々高まっている。具体的な評価方法としては、組成分析やXRD、SEM EDX、XPSなどのいわゆる分析評価方法による、正極材料の組成、粒度分布、粒子形状、結晶構造、構成元素の配置等と電池性能との相関評価があるが、実際に電池を作製して電池特性の評価を行うことは不可欠である。しかし、5V級リチウムイオン二次電池の特性評価では、電解液の分解やガス発生などによって正確な評価結果を得ることが難しくなっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、4.5V以上の作動電位を有する(5V級)スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物について、電解液と反応することにより発生するガスの発生量を抑制するため、16dサイトと32eサイトとの原子間距離の比率を所望の値とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、主たる電池特性にはエネルギー密度、充放電サイクル特性(耐久特性)、出力特性、熱安定性などがあるが、これらの特性の優先順位は使われる機器、使用方法により異なる。車載用電池においては加速時に短時間で大きなエネルギーを必要とする出力特性と、長期の耐用年数が必要であることから寿命と直結する充放電サイクル特性(耐久特性)が特に重要な特性となる。
【0007】
車載用電池の重要特性であるサイクル特性の評価は、充放電サイクルを数百~数千サイクル繰り返し、初期の放電容量とサイクル末期の放電容量を比べ容量の低下率によって評価することが一般的である。
【0008】
非水系電解質二次電池は、通常、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極とがセパレーターを介し対向配置した電極部と、前記電極部に含浸される非水系電解液から構成されている。
【0009】
これらに用いられる非水系電解液は、現在、市場に広く普及しているLiCoO2などの4V級正極活物質において十分な性能を示すが、5V級正極を作動させるには耐酸化性において適当でない。よって、一般的なリチウムイオン用電解液を用いて5V級正極材料の電池特性を評価しようとした場合、充電時に正極活物質と電解液の界面で電解液の過剰な酸化分解が起こり、CO2ガスとH2Oが生成する。発生したH2Oは、電解液中に含まれる支持電解質であるLiPF6と反応しフッ酸(HF)を生成する。強酸であるHFは正極の溶出、Al集電体の腐食やCu集電体と負極塗工膜との剥離、セパレーターやバインダーの劣化など電池構成部材の多くの部材に対して悪影響を与え電池を急激に劣化させることから、正極材料の評価を安定的に行なうことは難しい。
【0010】
また、上述した特許文献1には、強酸であるHFの滞留を低減することにより、非水系電解質二次電池に構成される部材の劣化を抑制するための技術について記載されていない。
【0011】
現在、有意義な電気化学測定が可能な電位領域を示す、電位窓の広い電解液の開発も進められているが、まだ、実用化レベルには至っておらず、5V級正極材料の評価は電解液の分解反応やHFによる劣化を含めた評価となっている。
【0012】
5V級正極材料の長期サイクル評価を精度高く安定しておこなうためには、正極活物質表面で酸化分解により発生するHFを抑制することが重要である。そのためには耐酸化性の高い電解液を用いることが好ましいが、現在、入手可能な耐酸化性の高い電解液は耐還元性が十分でなく負極で電解液が分解されるなどの問題が発生する。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、5V級リチウムイオン二次電池の正極材料の電池特性を評価する際に、非水系電解液の分解により発生した強酸であるHFによる電池部材の劣化を低減し、電池特性の精度高い評価結果を得ることが可能な、新規かつ改良された評価用リチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、HFの発生を抑制するのではなく、負極内部の間隙を減らすことで正極集電体と負極集電体の間、具体的には「正極集電体-正極活物質層-セパレーター-負極活物質層-負極集電体」の構成部分(以下、「集電体間」ともいう。)に存在するHF量を低減させることを見出した。
【0015】
集電体間の間隙を減らす方法としては、ロールプレス、油圧プレスなど圧延、圧縮機械を使って電極を圧延して密度を高める方法がある。これらの方法を用いて電極の空隙率を小さくすると、当然、電極内部に保液できる電解液量は減少する。電解液が正極表面で酸化分解しCO2などのガスが発生する5V級正極材料においてはガス化により正極活物質層内部の電解液が枯渇し、容量が低下するといった問題を招いてしまう。そこで、実施形態では電解液の酸化分解がおこらない負極の間隙を減らすことで集電体間に存在するHF滞留量を低減しサイクル特性などを向上させた。
【0016】
すなわち、本発明の一態様に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法は、正極集電体に正極活物質層が形成された正極を作製する工程と、負極集電体に負極活物質層が形成された負極を作製する工程と、前記正極および前記負極の間に、セパレーターを介挿する工程と、前記正極、前記負極、および前記セパレーターを電解液とともにラミネートフィルムで封止して、ラミネートセルを組み立てる工程とを含み、前記負極活物質層は負極活物質とバインダーからなり、前記負極活物質は、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のいずれか一種以上からなり、前記負極活物質層における前記バインダーの含有量は10質量%であり、前記負極活物質層は、空隙率が21.9%以上36%以下であり、5V級リチウムイオン電池の正極材料の特性評価に用いられることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記ラミネートセルを組み立てる際に、前記正極および前記負極の一方の端部側に空隙部を設けることが好ましい。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記正極および前記負極の間に、前記セパレーターを介挿する工程では、該セパレーターおよび該正極の間に、セルロースセパレーターをさらに介挿し、前記セルロースセパレーターは、前記ラミネートセルの長手方向に沿って延在し、前記正極および前記負極より長いことが好ましい。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記正極活物質層を構成する材料を溶媒とともに湿式混合したスラリーを、前記正極集電体上に塗工し乾燥することにより、該正極活物質層が形成された正極を作製することが好ましい。
【0020】
また、本発明の一態様では、5V級リチウムイオン電池の特性評価に用いられることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明の他の態様に係る評価用リチウムイオン二次電池は、正極集電体に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体に負極活物質層が形成された負極と、前記正極および前記負極の間に介挿されたセパレーターと、前記正極、前記負極および前記セパレーターを電解液とともに封止するラミネートフィルムとを備え、前記負極活物質層は負極活物質とバインダーからなり、前記負極活物質は、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類のいずれか一種以上からなり、前記負極活物質層における前記バインダーの含有量は10質量%であり、前記正極および前記負極の一方の端部側は、空隙部が設けられ、前記負極活物質層は、空隙率が21.9%以上36%以下であり、5V級リチウムイオン電池の正極材料の特性評価に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、集電体間に滞留するHF量を低減することができるので、電池特性について正極活物質の性能を精度高く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の特性評価方法に用いられる評価用リチウムイオン二次電池を示す図であり、(A)はラミネートセルの概略説明図であり、(B)はラミネートセルの正面図である。
【
図3】従来の評価用リチウムイオン二次電池を示す図であり、(A)はラミネートセルの概略説明図であり、(B)はラミネートセルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0025】
[1.評価用リチウムイオン電池の製造方法]
本発明の一実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示すフローチャートである。
図2は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の特性評価方法に用いられる評価用リチウムイオン二次電池を示す図であり、(A)はラミネートセルの概略説明図であり、(B)はラミネートセルの正面図である。
【0026】
本発明の一実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法は、
図1に示すように、正極集電体に正極活物質層が形成された正極を作製する工程S1と、負極集電体に負極活物質層が形成された負極を作製する工程S2と、正極および負極の間に、セパレーターを介挿する工程S3と、正極、負極、および前記セパレーターを電解液とともにラミネートフィルムで封止して、ラミネートセルを組み立てる工程S4とを含むものである。そして、負極活物質層は、空隙率36%以下であることを特徴とする。
【0027】
まず、本実施形態では、
図2(A)に示すように、正極集電体に正極活物質層(以下、「正極膜」ともいう。)が形成された正極10を作製する(工程S1)。
【0028】
正極活物質層内に含有される正極活物質は、LiNi0.5Mn1.5O4に代表される5V級正極材料がその態様に従って、調製されたものを用いる。例えば、成分組成、粒度、表面などの正極活物質の特性に影響する各因子を考慮して作製した正極活物質を用いる。
【0029】
正極10は、正極活物質の他に、導電材やバインダー(結着剤)などから構成され、これらを混合して正極合材として用いられる。電池を評価する場合にも、これらの構成材料の影響を受けることから適正なものを用いて評価用リチウムイオン二次電池を作製する。
【0030】
導電材は、半導体である正極活物質粒子間の電気伝導性を高め、正極10の充放電反応を効率的に行うためのものであり、一般的な非水系電解質二次電池で使用されている導電材であればよく、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)やアセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料などの炭素材料を単体、もしくは複合して用いることができる。
【0031】
バインダーは、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱加塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
【0032】
正極10の作製方法として、例えば、塗工法、あるいはシート法を用いることができる。
【0033】
シート法は、正極活物質を導電材、バインダーとともに乾式混合し、得られた混合物を正極集電体とともにロールプレスなどを用い、集電体上正極膜が形成されたシートを作製した後、所望のサイズに打ち抜いて正極を得るものである。シート法では、塗工法による電極作製法と比べ、正極10を迅速に作製できるメリットがある。
【0034】
例えば、シート法により得られる正極10を3cm×5cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出す。そして、その帯状部から上記正極活物質層を除去し、アルミニウム箔を露出させる。これより、
図2(A)に示すように、正極集電体に正極活物質層が形成された正極10を作製する。そして、この正極10には、正極端子部11が形成されている。
【0035】
また、塗工法は、正極活物質を導電材、バインダー、溶媒とともに湿式混合し混練してスラリー化し、得られたスラリーを正極集電体上に塗布し乾燥して正極膜を形成した後、所望のサイズに打ち抜いて正極10を得るものである。塗工法は、塗工厚みを薄くすることが可能である。リチウムイオンの拡散が律速となるリチウムイオン二次電池において、塗工厚みを薄くしてリチウムの拡散距離を短くすることで、高レートでの充放電が可能となり、長期サイクル評価を効率的におこなうことができる。
【0036】
乾式および湿式の混合は、乾式混合方式であれば、乾式ボールミル、乾式ビーズミル、ブレード遊星運動型の混合機、容器回転型の遊星運動混合機、撹拌機、ホモジナイザーなどが利用できるが、特に容器回転型の遊星運動混合機を用いると均質な正極膜が得られやすい。
【0037】
次に、本実施形態では、
図2(A)に示すように、負極集電体に負極活物質層(以下、「負極膜」ともいう。)が形成された負極20を作製する(工程S2)。
【0038】
負極活物質層内に含有される負極活物質は、金属リチウムを用いると不活性なデントライトが発生し、長期のサイクル特性評価ができないことから、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な黒鉛などの負極活物質であるコークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類の材料を単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0039】
それらを集積させ銅等の金属箔集電体上に所望の厚み、形態で接着させるためのバインダーとしては一般的な非水系電解質二次電池で使用されているものであればよく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱加塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。粉末状の負極活物質は、上記バインダーを混合し、Nメチル-2-ピロリジノン(NMP)などの溶剤を加え、正極と同様に、湿式混合し混練してスラリー化した後、銅等の金属箔集電体の表面に塗工し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高め空隙率を下げるべく圧縮して形成したものを所望のサイズに切り出す、あるいは打ち抜いて用いることができる。
【0040】
空隙率の求め方は、負極活物質層を構成する負極活物質とバインダーの真密度とそれらの混合比から負極活物質層の真密度を算出し、実測した負極活物質層の嵩密度との差異から求めることができる。
【0041】
例えば、シート法により得られる負極20を3cm×5cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出す。そして、その帯状部から上記負極活物質層を除去し、アルミニウム箔を露出させる。これにより、
図2(A)に示すように、負極集電体に負極活物質層が形成された負極20を作製する。そして、この負極20には、負極端子部21が形成されている。
【0042】
本実施形態では、負極活物質とバインダーを含む負極活物質層は、空隙率が36%以下であることを特徴とするものである。また、負極活物質層の空隙率は30%以下が好ましい。ここで、負極活物質層の空隙率は、例えば、ロールプレスの際に圧力を調整することにより36%以下にすることができる。ここで、空隙率は、下記数式1に基づいて算出される。
【0043】
空隙率=(1-(電極密度/真密度))×100(%)・・・(数式1)
【0044】
次に、本実施形態では、
図2(A)に示すように、正極10および負極20の間に、セパレーター30を介挿する(工程S3)。
【0045】
セパレーター30は、
図2(A)に示すように、正極10および負極20の間に挟み込んで配置される。セパレーター30は、正極10および負極20を分離し、正極10および負極20の短絡を防止する機能と電解液を保持するものであり、セパレーター30としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。それらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0046】
また、工程S3では、セパレーター30および正極10の間に、セルロースセパレーター(不図示)をさらに介挿してもよい。セルロースセパレーターは、ラミネートセル1の長手方向に沿って延在し、正極10および負極20より長いことが好ましい。セルロースセパレーターの長さは、正極10および負極20より1.2倍以上2.0倍以下が特に好ましい。
【0047】
電解液(非水系電解液)は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2等、およびそれらの複合塩を用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
【0049】
次に、本実施形態では、
図2(A)に示すように、正極10、負極20およびセパレーター30を電解液とともにラミネートフィルム40で封止して、
図2(B)に示すラミネートセル1を組み立てる(工程S4)。
【0050】
電極にアルミニウム製集電体に正極活物質層が形成された正極端子部11を有する正極シート(正極10)と、銅製集電体に負極活物質層が形成された負極端子部21を有する負極シート(負極20)を用い、その間に、セパレーター30を介挿して、積層シートを形成する。この積層シートを、二つ折りになっているラミネートシート40の間に挟み、正極端子部11および負極端子部21が、予め準備したラミネートセル1の外装(アルミラミネート外装)の端縁から突出した状態になるように収容する。
【0051】
そして、ラミネートセル1の外装の2辺を熱融着で密封する。次いで、残った辺の開口からラミネートセル1の外装内を真空引きした後、電解液を注入し、その開口も熱融着で密封し、ラミネートセル1を作製する。
【0052】
また、ラミネートセル1を組み立てる際に、正極10および負極20の一方の端部側に空隙部50を設けることが好ましい。この正極10および負極20の一方の端部側とは、後述するようにラミネートセル1を組み立てた場合に、ラミネートフィルム40で覆われラミネートセル1の内側にある正極10および負極20の端部をいう。これにより、ラミネートセル1は、
図2(B)に示すように、空隙部50が設けられる。この空隙部50の形状は、特に限定されないが、例えば長方形状や正方形状が挙げられる。さらに、この空隙部50は、所定の面積以上を有するものであり、HFを逃がすスペースを確保するため、空隙部50の面積と電極の面積との比率は、1:1以上1:5以下が好ましい。
【0053】
ラミネートセル1に空隙部50が設けられることにより、集電体間のHFを滞留しないよう、この空隙部50にHFを移行させることができる。電極部材と接触するHF量が少ないため、電極部材の腐食が軽減される。このため、長期サイクル評価などといった電池特性の影響がほとんどない。この結果、本実施形態では、電池特性について正極活物質の性能を精度高く測定することができる。
【0054】
図3は、従来の評価用リチウムイオン二次電池を示す図であり、(A)はラミネートセルの概略説明図であり、(B)はラミネートセルの正面図である。従来のラミネートセル100は、
図3(A)に示すように、下から負極端子部111が形成された負極110、セパレーター120、正極端子部131が形成された正極130の順で積層した後、得られた積層体をラミネートフィルム140で覆って、
図3(B)に示すラミネートセル100を作製している。
【0055】
本実施形態で用いられるラミネートセル1と従来のラミネートセル100の構成を比較した場合、
図3(B)に示す従来のラミネートセル100には、
図2(B)のラミネートセル1と異なり、空隙部50が存在しない。このため、従来のラミネートセル100では、電極部にHFを滞留しないよう逃すスペースが存在しない。その結果、HFによりラミネートセルの電池部材が腐食してしまい、電池特性を評価するのが困難となる。
【0056】
したがって、本実施形態では、ラミネートセル1を組み立てる際に、正極10および負極20の一方の端部側に空隙部50を設ける構成としている。
【0057】
以上のように、正極10および負極20を、セパレーター30を介して積層させて電極部とし、得られた電極部に、電解液を含浸させる。そして、熱融着などの一般的な方法により電池筐体内に密閉して、リチウム二次電池の評価用として、ラミネートセル1を作製することができる。
【0058】
本実施形態で作製される評価用リチウム二次電池は、エネルギー密度、充放電サイクル特性(耐久特性)、出力特性や熱安定性などを評価することができる。中でも充放電サイクル特性を評価するのに適している。
【0059】
充放電サイクル評価方法は、本実施形態で作製される評価用リチウム二次電池を用いて、正極活物質の充放電サイクル特性(電池寿命)を測定するものである。測定方法としては、所望の温度に制御した恒温槽に評価用電池を入れ、充放電装置を接続し、リチウムイオン二次電池用正極材料の充放電特性にあったカットオフ電圧範囲で充放電サイクルを数百~数千サイクル繰り返す。その際の電流レートは、高い方が測定時間を短縮できることから効率的である。充放電サイクル特性(耐久性)は、初期放電容量からサイクル末期の放電容量の維持率と定義される。
【0060】
さらに、本実施形態で作製される評価用リチウム二次電池は、リチウムイオン電池の特性評価に用いることができ、特に5V級リチウムイオン電池の特性評価に用いられることが好ましい。なお、市場に広く普及しているLiCoO2などの4V級正極活物質に用いられる非水系電解液を使用しても、HFの発生による電極部材の腐食が5V級リチウムイオン電池の特性評価に影響をほとんど与えない。
【0061】
以上より、本実施形態により製造された評価用リチウムイオン二次電池は、5V級正極材料の長期サイクル評価を、一般的に用いられているリチウムイオン二次電池用の非水系電解液を用いた場合においても十分な容量維持率を維持し、かつ安定的に評価することができる。したがって、本実施形態では、電池特性について正極活物質の性能を精度高く評価することができる。
【0062】
[2.評価用リチウムイオン二次電池]
本発明の一実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池は、
図2(A)および(B)に示すように、正極集電体に正極活物質層が形成された正極10と、負極集電体に負極活物質層が形成された負極20と、正極10および負極20の間に介挿され、セパレーター30と、正極10、負極20、およびセパレーター30を電解液とともに封止するラミネートフィルム40とを備えるものである。そして、正極10および負極20の一方の端部側は、空隙部50が設けられ、負極活物質層は、空隙率が36%以下であることを特徴とする。
【0063】
本実施形態では、ラミネートセル1に空隙部50が形成されることにより、集電体間のHFを滞留しないよう、この空隙部50にHFを移行させることができる。さらに、負極活物質層の空隙率が小さいので、負極活物質層内部に含浸した電解液量が少ないため、正極で発生した水と反応して発生するHF量も軽減される。電極部材と接触するHF量が少ないため、電極部材の腐食が軽減される。このため、長期サイクル評価などといった電池特性の影響がほとんどない。この結果、この評価用リチウムイオン二次電池は、電池特性について正極活物質の性能を精度高く測定することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0065】
実施例1~4および比較例1では、本実施形態に係る評価用リチウムニ次電池の製造方法により、ラミネートセルをそれぞれ作製した後、ラミネートセルの放電容量維持率をそれぞれ評価した。以下、詳細について示す。
【0066】
(実施例1)
実施例1では、負極は、三菱化学製のリチウムイオン二次電池用負極材(天然黒鉛系)とPVDF(バインダー)を質量比90:10となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ15μmの銅泊(負極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり3.1mg/cm2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥し、乾燥後の電極を、ロールプレスを用いて線圧390kgf/cm(3.82kN/cm2)で圧延して、負極シートを得た。その結果、負極活物質層の密度が1.72g/ccの電極を得た。また、黒鉛の真密度を2.25g/cm3、PVDFの真密度を1.76g/cm3を基にした場合に、負極活物質層の真密度が2.20g/cm3であった。下記数式1には、この負極活物質層の真密度および表1に示す電極密度をそれぞれ代入して、負極活物質層の空隙率を算出した。その結果、負極活物質層の空隙率は21.9%と算出された。
【0067】
空隙率=(1-(電極密度/真密度))×100(%)・・・(数式1)
【0068】
得られた負極シートを3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出した。そして、その帯状部から上記負極活物質層を除去し、銅箔を露出させて端子部を形成し、端子付きの負極シートを得た。
【0069】
正極は、正極活物質LiNi0.5Mn1.5O4をアセチレンブラック(導電材)とPVDF(バインダー)を質量比85:10:5となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり5mg/cm2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥し、ロールプレスにて線圧180kgf/cm(1.77kN/cm)の荷重で圧延して、正極シートを得た。その結果、正極活物質層の密度が3.05g/ccの電極を得た。
【0070】
得られた正極シートを3cm×5cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出した。そして、その帯状部から上記正極活物質層を除去し、アルミニウム箔を露出させて端子部を形成し、端子付きの正極シートを得た。
【0071】
セパレーターは、リチウムイオン二次電池で一般的に用いられる厚さ20μmのポロプロピレン製微多孔膜セパレーターシートを5.8cm×3.4cmにカットしたものを、負極側に用いた。また、正極側には、6cm×7cmにカットしたセルロースセパレーターを用いた。
【0072】
非水系電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を容積比でEC/DMC=3:7の混合液にLiPF6(1mol/L)を溶解した電解液を用いた。
【0073】
上述した材料を80℃で8h間減圧乾燥したのち、露点-60℃未満のドライルームに持ち込み、外装サイズ80mm×90mmのラミネートセル型電池を組み立てた。
【0074】
コンディショニング処理として、25℃に制御された恒温槽の中で、電極部に対し、1kgf/cm2(9.81N/cm2)の荷重をかけた状態で拘束し、12時間保管した。その後、充放電試験装置(会社名:北斗電工製、製品名:HJ1001SD8)を用いて0.2Cのレート(5時間で満充電となる電流値)で5Vまで充電する操作と、0.2Cのレートで3.5Vまで放電させる操作を行った。なお、充電、放電後間の休止時間は、10分とした。
【0075】
サイクル特性評価として、コンディショニング後の電池に対して電極部に対して1kgf/cm2(9.81N/cm2)の荷重をかけて拘束した状態で、恒温槽の温度を25℃から60℃に変更し、恒温槽の中で、4.1Vまで2Cのレートで充電する操作と、3.5Vまで2Cのレートで放電する操作を200回繰り返した。1サイクル目の放電容量を100%とし、200サイクル後の放電容量維持率をサイクル特性とした。
【0076】
その結果、表1に示すように、この空隙率21.9%の負極を用いたラミネート電池の200サイクル後の容量維持率は、65.2%と、高い容量維持率が得られた。
【0077】
(実施例2)
実施例2では、負極は、三菱化学製のリチウムイオン二次電池用負極材(天然黒鉛系)とPVDF(バインダー)が質量比90:10となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ15μmの銅泊(負極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり3.1mg/cm2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥をおこなった。乾燥後の電極を、ロールプレスを用いて線圧260kg/cm(2.55kN/cm)で圧延して、負極シートを得た。その結果、塗工部の密度が1.67g/ccの電極を得た。また、負極活物質層の空隙率は、24.1%と算出された。
【0078】
得られた負極シートを3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出し、その帯状部から上記活物質層を除去し、銅箔を露出させて端子部を形成し端子付きの負極シートを得た。
【0079】
負極以外の作製条件およびコンディショニング並びに測定条件は、実施例1と同様とした。
【0080】
その結果、表1に示すように、この空隙率24.1%の負極を用いたラミネート電池の200サイクル後の容量維持率は、61.2%であった。
【0081】
(実施例3)
実施例3では、負極は、三菱化学製のリチウムイオン二次電池用負極材(天然黒鉛系)とPVDF(バインダー)が質量比90:10となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ15μmの銅泊(負極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり3.1mg/cm2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥をおこなった。乾燥後の電極を、ロールプレスを用いて線圧130kg/cm(1.27kN/cm)で圧延して、負極シートを得た。その結果、塗工部の密度は1.58g/ccであった。また、負極活物質層の空隙率は、28.2%と算出された。
【0082】
得られた負極シートを3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出し、その帯状部から上記活物質層を除去し、銅箔を露出させて端子部を形成し端子付きの負極シートを得た。
【0083】
負極以外の作製条件およびコンディショニング並びに測定条件は、実施例1と同様とした。
【0084】
その結果、表1に示すように、この空隙率28.2%の負極を用いたラミネート電池の200サイクル後の容量維持率は、58.6%であった。
【0085】
(実施例4)
実施例4では、負極は、三菱化学製のリチウムイオン二次電池用負極材(天然黒鉛系)とPVDF(バインダー)が質量比90:10となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ15μmの銅泊(負極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり3.1mg/cm2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥をおこなった。乾燥後の電極を、ロールプレスを用いて線圧65kg/cm(0.64kN/cm)で圧延して、負極シートを得た。その結果、塗工部の密度は1.41g/ccであった。また、負極活物質層の空隙率は、35.9%と算出された。
【0086】
実施例4では、得られた負極シートを3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出し、その帯状部から上記活物質層を除去し、銅箔を露出させて端子部を形成し端子付きの負極シートを得た。
【0087】
負極以外の作製条件およびコンディショニング並びに測定条件は、実施例1と同様とした。
【0088】
その結果、表1に示すように、この空隙率35.9%の負極を用いたラミネート電池の200サイクル後の容量維持率は、54.0%であった。
【0089】
(比較例1)
比較例1では、負極は、三菱化学製のリチウムイオン二次電池用負極材(天然黒鉛系)とPVDF(バインダー)が質量比90:10となるように混合し、NMP中に分散させてスラリー化した。このスラリーを、厚さ15μmの銅泊(負極集電体)にアプリケーターを用い、単位面積当たり3.1mg/cm2に塗工した。その後、送風乾燥機で120℃×30分乾燥おこなった。比較例1では、ロールプレスによる電極圧延をしない負極を作製した。塗工部の密度は、0.91g/ccであった。また、負極活物質層の空隙率は、58.7%と算出された。
【0090】
得られた負極シートを3.2cm×5.2cmで一角が幅10mmの帯状部(端子)が出た長方形に切り出し、その帯状部から上記活物質層を除去し、銅箔を露出させて端子部を形成し端子付きの負極シートを得た。
【0091】
負極以外の作製条件およびコンディショニング並びに測定条件は、実施例1と同様とした。
【0092】
その結果、表1に示すように、この空隙率58.7%の負極を用いたラミネート電池の200サイクル後の容量維持率は、3.6%であった。
【0093】
【0094】
実施例1~4では、負極活物質層の空隙率を21.9%以上36%以下に形成することにより、ラミネート電池の200サイクル後の容量維持率が50%を超えていた。
【0095】
これにより、本実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法により作製されたラミネートセルは、精度高くサイクル特性を観察することができた。このため、本実施形態に係る評価用リチウムイオン二次電池の製造方法は、有用であることが確認された。
【0096】
一方、比較例1では、負極物質層の空隙率を、36%を超えて形成することにより、ラミネート電池の200サイクル後の容量維持率が一桁台を観察した。
【0097】
このように、5V級正極材料のサイクル評価には、空隙率が高い負極は適さないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本実施形態に係る評価用リチウム二次電池の製造方法は、二次電池の正極材料に関する特性を評価するために使用されるリチウム二次電池を作製する方法として適している。
【符号の説明】
【0099】
1 ラミネートセル、10 正極、11 正極端子部、20 負極、21 負極端子部、30 セパレーター、40 ラミネートフィルム、50 空隙部、100 ラミネートセル、110 負極、111 負極端子部、120 セパレーター、130 正極、131 正極端子部、140 ラミネートフィルム