(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】二次電池用分離膜およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/426 20210101AFI20220322BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220322BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20220322BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20220322BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220322BHJP
【FI】
H01M50/426
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/434
(21)【出願番号】P 2017097561
(22)【出願日】2017-05-16
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2016-0060150
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】金 陳 宇
(72)【発明者】
【氏名】李 政 潤
(72)【発明者】
【氏名】李 相 鎬
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/058369(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/058371(WO,A1)
【文献】特表2014-520378(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40- 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の少なくとも一方の面に位置する接着層と、を含み、
前記接着層は、第1バインダーと、第2バインダーと、フィラーと、を含み、
前記第1バインダーは、ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位を含み、前記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、前記第1バインダーに対して
4重量%以上6重量%以下で含まれ、前記第1バインダーの重量平均分子量は800,000以上1,500,000以下であり、
前記第2バインダーは、ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位を含み、前記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、前記第2バインダーに対して
4重量%以上6重量%以下で含まれ、前記第2バインダーの重量平均分子量は600,000以下である二次電池用分離膜。
【請求項2】
前記第1バインダーは、少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位をさらに含む、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項3】
前記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートの誘導体、イタコン酸またはその誘導体、マレイン酸またはその誘導体およびヒドロキシアルキルアリルエーテルからなるグループより選択された少なくとも一つである、請求項2に記載の二次電池用分離膜。
【請求項4】
前記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位は、前記第1バインダーに対して0.5重量%以上7重量%以下で含まれる、請求項2に記載の二次電池用分離膜。
【請求項5】
前記第1バインダーおよび前記第2バインダーの総含有量に対して、前記第1バインダーは10重量%以上50重量%以下で含まれ、前記第2バインダーは50重量%以上90重量%以下で含まれる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項6】
前記第1バインダーおよび前記第2バインダーの総含有量は、前記接着層に対して50重量%以上70重量%以下である、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項7】
前記フィラーは、前記接着層に対して30重量%以上50重量%以下で含まれる、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項8】
前記フィラーは、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、SrTiO
3、BaTiO
3、Mg(OH)
2、ベーマイト、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項9】
前記多孔性基材は、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の二次電池用分離膜。
【請求項10】
正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に位置する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の二次電池用分離膜と、を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用分離膜およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池用分離膜は、電池内で正極と負極を隔離し、イオンの伝導度を持続的に維持させて電池の充電と、放電とを可能にする中間膜である。電池用分離膜は、正極および負極と接着できるように接着層を含むことができるが、この場合、接着層の接着力と耐熱性および耐久性などが重要である。従来は接着力の中でも電池に電解液が付加された状態での接着力である湿式(wet)接着力を向上させる技術が多く報告されている。近来、大型電池などの場合、電池に電解液が付加されない状態での接着力である乾式(dry)接着力が要求されており、湿式接着力と耐熱性に優れるだけでなく、乾式接着力にも優れた分離膜に対する開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、耐熱性、湿式接着力および乾式接着力などに優れた二次電池用分離膜を提供し、耐熱性、耐久性、寿命特性および安全性などに優れたリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態では、多孔性基材と、上記多孔性基材の少なくとも一方の面に位置する接着層と、を含む二次電池用分離膜であって、上記接着層は、第1バインダーと、第2バインダーと、フィラーと、を含み、上記第1バインダーは、ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位を含み、上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、上記第1バインダーに対して10重量%以下で含まれ、上記第1バインダーの重量平均分子量は800,000以上1,500,000以下であり、上記第2バインダーは、ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位を含み、上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、上記第2バインダーに対して10重量%以下で含まれ、上記第2バインダーの重量平均分子量は600,000以下である二次電池用分離膜を提供する。
【0005】
本発明の他の一実施形態では、正極と、負極と、上記正極と上記負極の間に位置する上記二次電池用分離膜と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態に係る二次電池用分離膜は、耐熱性、湿式接着性および乾式接着性などに優れ、これを含むリチウム二次電池は、耐熱性、耐久性、寿命特性および安定性などの特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る二次電池用分離膜の断面を示す図面である。
【
図2】一実施形態に係るリチウム二次電池の分解斜視図である。
【
図3】製造例1によるリチウム二次電池の寿命特性を示すグラフである。
【
図4】製造例1によるリチウム二次電池の放電効率特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって 制限されず、特許請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0009】
以下、一実施形態に係る二次電池用分離膜を説明する。
図1は、一実施形態に係る二次電池用分離膜を示す図面である。
図1を参照すると、一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、多孔性基材20と、多孔性基材20の一方の面または両面に位置する接着層30とを含む。
【0010】
多孔性基材20は、多数の気孔を有し、通常電気化学素子に用いられる基材であってもよい。多孔性基材20は、非制限的にポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、サイクリックオレフィンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択されたいずれか一つの高分子またはこれらのうちの2種以上の混合物で形成された高分子膜であってもよい。
【0011】
多孔性基材20は、一例としてポリオレフィンを含むポリオレフィン系基材であってもよく、上記ポリオレフィン系基材は、シャットダウン(shut down)機能に優れて電池の安全性向上に寄与することができる。上記ポリオレフィン系基材は、例えば、ポリエチレン単一膜、ポリプロピレン単一膜、ポリエチレン/ポリプロピレンの二重膜、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三重膜およびポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの三重膜から選択されてもよい。また、上記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン樹脂以外に非オレフィン樹脂を含んだり、オレフィンと非オレフィンモノマーの共重合体を含むことができる。
【0012】
多孔性基材20は、約1μm以上40μm以下の厚さを有することができ、例えば1μm以上30μm以下、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下の厚さを有することができる。
【0013】
接着層30は、バインダーと、フィラーとを含む。
【0014】
接着層30は、上記フィラーを含むことによって耐熱性が改善されて、温度上昇により分離膜が急激に収縮したり変形することを防止することができる。上記フィラーは、例えば無機フィラー、有機フィラー、有機-無機複合フィラーまたはこれらの組み合わせであってもよい。上記無機フィラーは、耐熱性を改善できるセラミック物質であってもよく、例えば金属酸化物、半金属酸化物、金属フッ化物、金属水酸化物またはこれらの組み合わせを含むことができる。上記無機フィラーは、例えば、Al2O3、SiO2、TiO2、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、GaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、SrTiO3、BaTiO3、Mg(OH)2、ベーマイト(boehmite)(AlO(OH))またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるのではない。上記有機フィラーは、アクリル化合物、イミド化合物、アミド化合物またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるのではない。上記有機フィラーは、コア-シェル構造を有することができるが、これに限定されるのではない。
【0015】
上記フィラーは、球状、板状、キュービック形、または無定形であってもよい。上記フィラーの平均粒径は、約1nm以上2500nm以下であってもよく、上記範囲内で約100nm以上2000nm以下、または100nm以上1000nm以下であってもよく、例えば約300nm以上800nm以下であってもよい。上記フィラーの平均粒径は、累積分布曲線(cumulative size-distribution curve)において体積比50%の粒子大きさ(D50)であってもよい。上記範囲の平均粒径を有するフィラーを用いることによって接着層30に適切な強度を付与することができる。上記フィラーは種類が異なるか、大きさが異なる2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
上記フィラーは、接着層30に対して10重量%以上99重量%以下で含まれてもよい。一実施形態で上記フィラーは、接着層30に対して20重量%以上90重量%以下、好ましくは30重量%以上75重量%以下、より好ましくは30重量%以上60重量%以下さらに好ましくは30重量%以上50重量%以下で含まれてもよい。上記フィラーが上記範囲で含まれる場合、一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、優れた耐熱性、耐久性、および安定性を示すことができる。
【0017】
上記バインダーは、上記フィラーを多孔性基材20の上に固定する役割を果たすと同時に、接着層30の一方の面で多孔性基材20と良好に付着し、他の方の面で電極と良好に付着されるように接着力を提供することができる。
【0018】
一実施形態で上記バインダーは、第1バインダーと、第2バインダーとを含む。
上記第1バインダーは、ビニリデンフルオライド(vinylidene fluoride)およびヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)から得られる共重合体であってもよい。つまり、上記第1バインダーは、ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位を含むことができる。ここでビニリデンフルオライドから誘導される構造単位とヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位の比率は、ビニリデンフルオライドおよびヘキサフルオロプロピレンの供給比率と実質的に同一であってもよい。
【0019】
上記第1バインダーは、上記構造単位が交互に分布する交互重合体、任意に分布するランダム重合体、または一部構造単位がグラフトされるグラフト重合体など多様な形態であってもよい。また上記第1バインダーは、線状高分子、分岐状(branched)高分子、またはこれらの混合形態であってもよい。
【0020】
上記ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位は、上記第1バインダーに対して90重量%以上99.5重量%以下で含まれてもよく、例えば93重量%以上99重量%以下、好ましくは95重量%以上99重量%以下で含まれてもよい。上記ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位が上記範囲で含まれる場合、上記第1バインダーは優れた接着力および電解液含浸性などを確保することができる。
【0021】
上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、上記第1バインダーに対して0重量%超過、10重量%以下で含まれ、上記範囲内で0.5重量%以上10重量%以下、好ましくは1重量%以上10重量%以下、より好ましくは1重量%以上9重量%以下、さらに好ましくは2重量%以上7重量%以下、最も好ましくは4重量%以上6重量%以下で含まれてもよい。上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位が上記範囲で含まれる場合、上記第1バインダーは、低沸点溶媒に対する優れた溶解度を示し、化学的安定性を確保することができ、優れた接着性を示すことができる。これによって、別途の追加工程なしに低沸点溶媒を用いて接着層を形成することができ、高沸点溶媒を用いることによって不可避に発生し得る通気度の低下を防止することができる。上記低沸点溶媒は、例えば約80℃以下の沸点を有する溶媒であってもよく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサンまたはこれらの混合溶媒であってもよいが、これに限定されるのではない。例えば上記第1バインダーは、80℃以下の沸点を有する溶媒に対して、40℃で約20以下の溶解度を有することができる。
【0022】
上記第1バインダーは、少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位をさらに含むことができる。この場合、上記第1バインダーは優れた接着力を示すことができる。
【0023】
上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位は、上記第1バインダーに対して10重量%以下で含まれてもよく、例えば0.5重量%以上7重量%以下、好ましくは0.5重量%以上5重量%以下、より好ましくは1重量%以上3重量%以下で含まれてもよい。上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位が上記範囲で含まれる場合、上記第1バインダーは優れた接着力を示すことができ、これを含む接着層30は優れた接着力、耐久性および通気度を示すことができる。
【0024】
上記第1バインダーが上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位をさらに含む場合、上記第1バインダーに対して、上記ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位は80重量%以上99重量%以下で含まれてもよく、上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、0.5重量%以上10重量%以下で含まれてもよく、上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位は、0.5重量%以上10重量%以下で含まれてもよい。
【0025】
上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、具体的に、少なくとも一つのヒドロキシ基および少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含むモノマーであってもよい。例えば、上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、ヒドロキシ基およびアクリル基を有するモノマーであってもよく、例えば(メタ)アクリル酸であるか、またはヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートの誘導体であってもよい。あるいは、上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、二つ以上のカルボキシル基および炭素-炭素二重結合を有するモノマーであってもよく、例えばイタコン酸またはその誘導体、またはマレイン酸またはその誘導体であってもよい。また他の例として、上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、ヒドロキシ基およびアリル基を有するモノマーであってもよく、例えばヒドロキシアルキルアリルエーテルであってもよい。また、上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、リン酸基とアクリル基を有するモノマーであるか、硫酸基とアクリル基を有するモノマーなどであってもよい。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、トリクロロアクリル酸のようにハロゲン元素が置換された(メタ)アクリル酸であってもよい。
【0027】
上記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートの誘導体は、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシアルキルフタル酸、(メタ)アクリルオキシアルコキシヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、またはヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドなどであってもよい。
【0028】
ここで、上記アルキル基は、炭素数1以上30以下のアルキル基であってもよく、例えば炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルキル基、または炭素数1以上5以下のアルキル基であってもよい。上記アルキレン基は、例えば炭素数1以上30以下のアルキレン基、好ましくは炭素数1以上20以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数1以上10以下のアルキレン基、さらに好ましくは炭素数1以上5以下のアルキレン基であってもよい。上記アルコキシ基は、炭素数1以上30以下のアルコキシ基であってもよく、好ましくは炭素数1以上20以下のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1以上10以下のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1以上5以下のアルコキシ基であってもよい。上記アリール基は、例えば炭素数6以上30以下のアリール基、好ましくは炭素数6以上20以下のアリール基、より好ましくは炭素数6以上10以下のアリール基であってもよい。
【0029】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えばヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどであってもよく、鎖にハロゲン元素が置換されたものであってもよい。
【0030】
上記カルボキシアルキル(メタ)アクリレートは、例えばカルボキシメチル(メタ)アクリレート、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、カルボキシブチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、カルボキシヘキシル(メタ)アクリレートなどであってもよい。
【0031】
上記(メタ)アクリロイルオキシアルキルコハク酸は、例えば(メタ)アクリロイルオキシメチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸などであってもよく、上記(メタ)アクリロイルオキシアルキルフタル酸は、例えば(メタ)アクリロイルオキシメチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸などであってもよい。
【0032】
上記(メタ)アクリルオキシアルコキシヒドロキシベンゾフェノンは、一例として4-(2-アクリルオキシエトキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノンなどであってもよい。
【0033】
上記ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートは、一例としてポリエチレングリコールモノメタクリレートであってもよく、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、一例としてN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドであってもよい。
【0034】
上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、一例としてイタコン酸、マレイン酸など二つ以上のカルボキシル基を有するモノマーであってもよいが、この場合、上記モノマーはこれらの誘導体であるか、あるいは無水物形態であってもよい。上記マレイン酸誘導体の無水物の例としては、3-メチル-2,5-フランジオン、3-エチル-2,5-フランジオン、3-プロピル-2,5-フランジオン、3-ブチル-2,5-フランジオン、3-ペンチル-2,5-フランジオン、3-ヘキシル-2,5-フランジオン、3-ヘプチル-2,5-フランジオン、3-オクチル-2,5-フランジオンなどが挙げられる。
【0035】
上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、一例としてヒドロキシ基およびアリル基を含むモノマーであってもよく、例えばヒドロキシアルキルアリルエーテルであってもよく、具体的にヒドロキシアルキルモノアリルエーテル、ヒドロキシアルキルジアリルエーテル、またはヒドロキシポリアルコキシアリルエーテルであってもよい。
【0036】
他の例として、上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーは、モノアクリルオキシエチルホスフェート、ビス(2-メタクリルオキシエチル)ホスフェートなどのようにリン酸基とアクリル基を有するモノマーであってもよく、または2-スルホエチルメタクリレート、3-スルホプロピルメタクリレートなどのように硫酸基とアクリル基を有するモノマーであってもよい。
【0037】
上記第1バインダーが上記少なくとも一つのヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位をさらに含む場合、上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、上記ヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位と同一またはそれより多く含まれてもよい。例えば上記共重合体は、上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位と上記ヒドロキシ基を有するモノマーから誘導される構造単位を例えば約1:1以上4:1以下、好ましくは2:1以上4:1以下の重量比で含むことができ、この場合、接着層の接着性および通気性が向上することができる。
【0038】
上記第1バインダーの重量平均分子量は、800,000以上1,500,000以下であり、上記範囲内で800,000以上1,300,000以下、好ましくは900,000以上1,200,000以下であってもよい。上記第1バインダーが上記範囲の重量平均分子量を有する場合、優れた接着力を示すことができる。上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定したポリスチレン換算の平均分子量であってもよい。
【0039】
上記第1バインダーの結晶化度は、35%以上45%以下であってもよく、例えば38%以上45%以下、好ましくは40%以上45%以下であってもよい。この場合、上記第1バインダーは、優れた接着力を示すことができる。上記第1バインダーの結晶化度は、後述する第2バインダーの結晶化度に比べて高いと言える。
【0040】
上記第1バインダーは、乳化重合(emulsion polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)、塊状重合(massive polymerization)、溶液重合(solution polymerization)、またはバルク重合(bulk polymerization)など、公知の多様な方法により製造されてもよく、一例として懸濁重合により製造されてもよい。
【0041】
上記第2バインダーは、ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位、およびヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位を含むことができる。上記第2バインダーは、交互重合体、ランダム重合体、またはグラフト重合体など多様な形態を有することができる。上記第2バインダーは、線状高分子、分岐状高分子、またはこれらの混合形態であってもよく、上記第1バインダーに比べて分岐鎖(branched chain)がより多い高分子であってもよい。
【0042】
上記ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位は、上記第2バインダーに対して90重量%以上99.5重量%以下で含まれてもよく、例えば93重量%以上99重量%以下、好ましくは95重量%以上99重量%以下で含まれてもよい。上記ビニリデンフルオライドから誘導される構造単位が上記範囲で含まれる場合、上記第2バインダーは優れた接着力および電解液含浸性などを確保することができる。
【0043】
上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位は、上記第2バインダーに対して0重量%超過、10重量%以下で含まれ、上記範囲内で0.5重量%以上10重量%以下、好ましくは1重量%以上9重量%以下、より好ましくは2重量%以上8重量%以下、さらに好ましくは3重量%以上7重量%以下、最も好ましくは4重量%以上6重量%以下で含まれてもよい。上記ヘキサフルオロプロピレンから誘導される構造単位が上記範囲で含まれる場合、上記第2バインダーは低沸点溶媒に対する優れた溶解度を示しながら化学的安定性を確保することができ、優れた接着性を示すことができる。これによって、別途の追加工程なしに低沸点溶媒を用いて接着層30を形成することができ、高沸点溶媒を用いることによって不可避に発生し得る通気度の低下を防止することができる。
【0044】
上記第2バインダーの重量平均分子量は、600,000以下であり、上記範囲内で500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは100,000以上であってもよく、550,000以下、好ましくは500,000以下であってもよい。上記第2バインダーの重量平均分子量は、例えば100,000以上600,000以下、好ましくは200,000以上600,000以下、より好ましくは300,000以上500,000以下、さらに好ましくは350,000以上500,000以下であってもよい。上記第2バインダーが上記範囲の重量平均分子量を有する場合、これを含む接着層30は優れた湿式接着力および乾式接着力を示すことができる。上記重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定したポリスチレン換算の平均分子量であってもよい。
【0045】
上記第2バインダーの結晶化度は、35%以上45%以下であってもよく、例えば35%以上40%以下、好ましくは35%以上37%以下であってもよい。上記第2バインダーが上記範囲の結晶化度を有する場合、これを含む接着層30は優れた乾式接着力を示すことができる。上記第2バインダーの結晶化度は、前述した第1バインダーの結晶化度に比べて低いと言える。
【0046】
上記第2バインダーは、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、またはバルク重合など公知の多様な方法により製造されてもよく、一例として乳化重合により製造されてもよい。
【0047】
一実施形態に係る二次電池用分離膜10は、前述したフィラー、第1バインダーおよび第2バインダーを含む接着層30を含むことによって、優れた耐熱性、安定性、湿式接着力および乾式接着力を示すことができる。
【0048】
上記第1バインダーおよび第2バインダーの総含有量に対して、上記第1バインダーは、一例として10重量%以上50重量%以下で含まれてもよく、例えば10重量%以上40重量%以下、好ましくは20重量%以上50重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上40重量%以下で含まれてもよい。また上記第2バインダーは、上記第1バインダーおよび第2バインダーの総含有量に対して50重量%以上90重量%以下で含まれてもよく、例えば50重量%以上80重量%以下、好ましくは60重量%以上90重量%以下、より好ましくは60重量%以上80重量%以下で含まれてもよい。上記第1バインダーおよび第2バインダーが上記範囲で含まれる場合、上記二次電池用分離膜10は、湿式接着力および乾式接着力が同時に向上することができる。
【0049】
接着層30において、上記第1バインダーおよび上記第2バインダーの総含有量は、接着層30に対して50重量%以上70重量%以下であってもよく、例えば55重量%以上70重量%以下、好ましくは50重量%以上65重量%以下、より好ましくは55重量%以上65重量%以下であってもよい。また、接着層30においてフィラーの含有量は、30重量%以上50重量%以下であってもよく、例えば35重量%以上50重量%以下、好ましくは30重量%以上45重量%以下、より好ましくは35重量%以上45重量%以下であってもよい。上記第1バインダー、第2バインダーおよびフィラーが接着層30に上記範囲で含まれる場合、これを含む二次電池用分離膜10は、耐熱性、耐久性、湿式接着力および乾式接着力が共に向上することができる。
【0050】
一方、接着層30は、上記第1バインダーと第2バインダー以外に1種または2種以上のバインダーをさらに含むことができ、例えば架橋構造を有する架橋バインダーをさらに含むことができる。上記架橋バインダーは、熱および/または光に反応できる硬化性作用基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーから得られてもよく、例えば少なくとも二つの硬化性作用基を有する多官能モノマー、多官能オリゴマーおよび/または多官能ポリマーから得られてもよい。上記硬化性作用基は、ビニル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、オキセタン基、エーテル基、シアネート基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されるのではない。
【0051】
上記架橋バインダーは、一例として、少なくとも二つの(メタ)アクリレート基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを硬化して得ることができ、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンヘキサ(メタ)アクリレートまたはこれらの組み合わせを硬化して得ることができる。
【0052】
一例として、上記架橋バインダーは、少なくとも二つのエポキシ基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを硬化して得ることができ、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルまたはこれらの組み合わせを硬化して得ることができる。
【0053】
一例として、上記架橋バインダーは、少なくとも二つのイソシアネート基を有するモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを硬化して得ることができ、例えばジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,2,4)-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルジフェニル-4,4'-ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネートまたはこれらの組み合わせを硬化して得ることができる。
【0054】
接着層30は、例えば非架橋バインダーをさらに含むことができる。上記非架橋バインダーは、例えばビニリデンフルオライド系重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリエチレン-ビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0055】
上記ビニリデンフルオライド系重合体は、具体的にビニリデンフルオライドモノマー由来構造単位だけを含むホモポリマ、またはビニリデンフルオライド由来構造単位と他のモノマー由来構造単位とのコポリマーであってもよい。上記コポリマーは、具体的にビニリデンフルオライド由来構造単位とクロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、四フッ化エチレンおよびエチレンモノマーに由来する構造単位の中の1種以上であってもよいが、これに制限されるのではない。例えば、上記コポリマーは、ビニリデンフルオライドモノマー由来構造単位とヘキサフルオロプロピレンモノマー由来構造単位を含むポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)コポリマーであってもよい。
【0056】
一例として、上記非架橋バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)ホモポリマ、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。この場合、上記多孔性基材20と接着層30の接着力が向上し、二次電池用分離膜10の安定性と電解液含浸性が向上して電池の高率充放電特性などが向上することができる。
【0057】
接着層30は、約0.01μm以上20μm以下の厚さを有することができ、上記範囲内で約1μm以上10μm以下の厚さを有することができ、上記範囲内で約1μm以上5μm以下の厚さを有することができる。
【0058】
二次電池用分離膜10は、公知の多様な方法により製造されてもよい。例えば二次電池用分離膜10は、多孔性基材20の一方の面または両面に接着層形成用組成物を塗布した後に乾燥して形成することができる。上記接着層形成用組成物は、上記第1バインダー、上記第2バインダー、上記フィラーおよび溶媒を含むことができる。
【0059】
上記溶媒は、上記第1バインダー、上記第2バインダーおよび/または上記フィラーを溶解または分散させることができるものであれば特に限定されない。上記溶媒は、例えば80℃以下の沸点を有する低沸点溶媒であってもよく、例えばアセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサンまたはこれらの混合溶媒であってもよいが、これに限定されるのではない。
【0060】
上記塗布は、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、ダイコーティング、スリットコーティング、ロールコーティング、インクジェット印刷などにより行うことができるが、これに限定されるのではない。
【0061】
上記乾燥は、例えば自然乾燥、温風、熱風または低湿風による乾燥、真空乾燥、遠赤外線、電子線などの照射による方法で行うことができるが、これに限定されない。上記乾燥工程は、例えば25℃以上120℃以下の温度で行うことができる。
【0062】
接着層30に架橋バインダーがさらに含まれる場合には、一例として既架橋化された架橋バインダーを含む接着層形成用組成物を多孔性基材20の少なくとも一方の面に塗布した後に乾燥することによって二次電池用分離膜10を製造することもでき、または他の例として、架橋バインダーの前駆体である架橋性化合物を含む接着層形成用組成物を多孔性基材20の少なくとも一方の面に塗布した後に硬化することによって二次電池用分離膜10を製造することもできる。
【0063】
二次電池用分離膜10は、前述した方法以外に、ラミネーション、共押出などの方法で製造することもできる。
【0064】
以下、前述した二次電池用分離膜を含むリチウム二次電池について説明する。
【0065】
リチウム二次電池は、用いる二次電池用分離膜と電解液の種類に応じてリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池などに分類することができ、形態に応じて円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズに応じてバルク型と薄膜型に分類することができる。これらの電池の構造と製造方法は、当該分野に広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【0066】
ここではリチウム二次電池の一例として角型リチウム二次電池を例に挙げて説明する。
図2は、一実施形態に係るリチウム二次電池の分解斜視図である。
図2を参照すると、一実施形態に係るリチウム二次電池100は、正極40と負極50の間に二次電池用分離膜10を介して巻き取られた電極組立体60と、電極組立体60が内蔵されるケース70とを含む。
【0067】
電極組立体60は、例えば二次電池用分離膜10を間に置いて正極40と負極50を巻いて形成したゼリーロール(jelly roll)形態であってもよい。
【0068】
正極40、負極50および二次電池用分離膜10は、電解液(図示せず)に含浸されている。
【0069】
正極40は、正極集電体と、上記正極集電体の上に形成される正極活物質層とを含むことができる。上記正極活物質層は、正極活物質と、バインダーと、選択的に導電剤を含むことができる。
【0070】
上記正極集電体としては、アルミニウム、ニッケルなどを用いることができるが、これに限定されない。
【0071】
上記正極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入および脱離が可能な化合物を用いることができる。具体的にコバルト、マンガン、ニッケル、アルミニウム、鉄またはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物または複合リン酸化物の中から1種以上を用いることができる。例えば、上記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0072】
上記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させるだけでなく、正極活物質を正極集電体に良好に付着させる役割を果たし、具体的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどがあるが、これに限定されない。これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0073】
上記導電剤は、電極に導電性を付与するものであって、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、金属粉末、金属繊維などがあるが、これに限定されない。これらは単独または2種以上混合されて用いることができる。上記金属粉末と上記金属繊維は、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属であってもよい。
【0074】
負極50は、負極集電体と、上記負極集電体の上に形成される負極活物質層とを含むことができる。
【0075】
上記負極集電体としては、銅、金、ニッケル、銅合金などを用いることができるが、これに限定されない。
【0076】
上記負極活物質層は、負極活物質と、バインダーと、選択的に導電剤を含むことができる。上記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入および脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、遷移金属酸化物またはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0077】
上記リチウムイオンを可逆的に挿入および脱離することができる物質としては、炭素系物質が挙げられ、その例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせが挙げられる。上記結晶質炭素の例としては、無定形、板状(plate-shape)、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛が挙げられる。上記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。上記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金が用いることができる。上記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-C複合体、Si-Y合金、Sn、SnO2、Sn-C複合体、Sn-Yなどが挙げられ、またこれらの中から少なくとも一つとSiO2を混合して用いることもできる。上記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。上記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0078】
負極50に用いられるバインダーと導電剤の種類は、前述した正極で用いられるバインダーと導電剤と同一であってもよい。
【0079】
正極40と負極50は、それぞれの活物質およびバインダーと選択的に導電剤を溶媒中に混合して各活物質組成物を製造し、上記活物質組成物をそれぞれの集電体に塗布して製造することができる。この時、上記溶媒は、N-メチルピロリドンなどを用いることができるが、これに限定されない。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。
【0080】
上記電解液は、有機溶媒と、リチウム塩とを含む。
【0081】
上記有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割を果たす。上記有機溶媒としては、例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系または非プロトン性溶媒を用いることができる。上記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどを用いることができ、上記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを用いることができる。上記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを用いることができ、上記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを用いることができる。また上記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを用いることができ、上記非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、C2以上C20以下の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香族環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが用いることができる。
【0082】
上記有機溶媒は、単独または2種以上混合して用いることができ、2種以上混合して用いる場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節することができる。
【0083】
上記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進させる物質である。上記リチウム塩の例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO3C2F5)2、LiN(CF3SO2)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(およびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0084】
上記リチウム塩の濃度は、0.1M以上2.0M以下の範囲内で用いることができる。リチウム塩の濃度が上記範囲内である場合、電解液が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解液性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を通じて前述した本発明の側面をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0086】
実施例および比較例:二次電池用分離膜および電極組立体の製造
【0087】
(1)二次電池用分離膜の製造
93.5重量%のビニリデンフルオライド、5重量%のヘキサフルオロプロピレン、および1.5重量%のアクリル酸を懸濁重合して製造した、重量平均分子量1,120,000の第1バインダーと、95重量%のビニリデンフルオライドおよび5重量%のヘキサフルオロプロピレンを乳化重合して製造した重量平均分子量450,000の第2バインダーとをアセトン溶媒で3:7の重量比率に混合してバインダーを準備した。
【0088】
上記バインダーとアルミナフィラー(ASES-11、住友化学社製)をアセトン溶媒で6:4の重量比率に混合して接着層形成用組成物を製造した。
【0089】
上記接着層形成用組成物を12μm厚さのポリエチレン基材の両面上に片方の面当たり1.5μmの厚さ(総3μmの厚さ)にディップコーティングした後、60℃で数秒間乾燥して二次電池用分離膜を製造した。
【0090】
(2)電極組立体の製造
LiCoO2、ポリビニリデンフルオライドおよびカーボンブラックを96:2:2の重量比にN-メチルピロリドン溶媒に添加してスラリーを製造した。上記スラリーをアルミニウム薄膜に塗布および乾燥し、圧延して正極を製造した。
【0091】
黒鉛、ポリビニリデンフルオライドおよびカーボンブラックを98:1:1の重量比にN-メチルピロリドン溶媒に添加してスラリーを製造した。上記スラリーを銅箔に塗布および乾燥して圧延して負極を製造した。
【0092】
上記製造された正極と負極の間に、上記で製造した二次電池用分離膜を介してワインディング形態のゼリーロール電極組立体を準備した。
【0093】
比較例1
第1バインダーだけを用い、第2バインダーを用いないことを除き、上記実施例1と同様な方法で二次電池用二次電池用分離膜および電極組立体を製造した。
【0094】
比較例2
第2バインダーだけを用い、第1バインダーを用いないことを除き、上記実施例1と同様な方法で二次電池用二次電池用分離膜および電極組立体を製造した。
【0095】
比較例3
第1バインダーおよび第2バインダーを用いず、懸濁重合で製造された重量平均分子量1,000,000のポリビニリデンフルオライド系第3バインダー(クレハ社製、KF9300)を用い、フィラーを用いないことを除き、上記実施例1と同様な方法で二次電池用二次電池用分離膜および電極組立体を製造した。
【0096】
上記実施例1および比較例1~比較例3に適用した二次電池用分離膜の接着層の組成を下記の表1に示した。
【0097】
評価例1:乾式接着力の評価
上記実施例1および比較例1~比較例3で製造したゼリーロール電極組立体を85℃で3kgf/cm2の圧力で4秒間圧搾した後、3ポイントバンディング機械を利用して屈曲強度を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0098】
【0099】
上記表1で、第1バインダー、第2バインダーおよび第3バインダーに対する数値は、バインダー総量に対する各バインダーの重量パーセントであり、バインダーおよびフィラーに対する数値は、上記バインダーとフィラーを合わせた総量に対するそれぞれの重量パーセントである。
【0100】
上記第1バインダーを用いず、上記第2バインダーだけを適用した比較例2の場合、上記ポリエチレン基材に対する上記接着層の結着力が確保されず、接着層が脱離される現象が発生して電極組立体の製造が不可能であった。
【0101】
上記表1に示すように、電解液を注入しない状態での電極組立体の屈曲強度の評価結果を参照すると、実施例1の場合、上記第1バインダーだけを用いた比較例1に比べて屈曲強度が顕著に高く示され、接着層にフィラーを用いず、バインダーだけを適用した比較例3よりも屈曲強度がさらに高く示された。これによって、実施例1の乾式接着力が顕著に優れているということを確認できる。
【0102】
製造例1および比較製造例1~3:リチウム二次電池の製造
上記実施例1および比較例1~3で製造したゼリーロール電極組立体を電池ケースに固定し、電解液を注入し密封してリチウム二次電池を製造した。
【0103】
電解液は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートを3:5:2の体積比に混合した混合溶媒に1.15MのLiPF6を添加したものを用いた。
【0104】
評価例2:寿命特性の評価
実施例1の電極組立体を適用した製造例1のリチウム二次電池に対して以下の方法で寿命特性を評価し、その結果を
図3に示した。
【0105】
(1)ステップ1:0.2C/4.35V/0.02Cカットオフ充電、10分休止、0.2C/2.75Vカットオフ放電、および10分休止で1サイクルを進行する。
(2)ステップ2:0.7C/4.35V/0.1Cカットオフ充電、10分休止、1.0C/3.0Vカットオフ放電、および10分休止で49サイクルを進行する。
(3)上記ステップ1とステップ2を500サイクルまで10回繰り返す。
【0106】
図3を参照すると、製造例1によるリチウム二次電池は、優れた寿命特性を示すことを確認できる。
【0107】
評価例3:レート特性の評価
製造例1のリチウム二次電池に対してC-レートによる放電効率を評価し、その結果を
図4に示した。
図4を参照すると、製造例1のリチウム二次電池は、優れたレート特性を示していることが分かる。
【0108】
評価例4:安全性の評価
製造例1のリチウム二次電池に対して安全性評価を行い、その結果をの下記の表2に示した。
【0109】
【0110】
上記表2を参照すると、製造例1のリチウム二次電池は、すべての項目の安全性評価で満足できる結果が出たことを確認できる。
【0111】
以上で本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0112】
10…二次電池用分離膜、20…多孔性基材、30…接着層、40…正極、50…負極、60…電極組立体、70…ケース