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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-18
(45)【発行日】2022-03-29
(54)【発明の名称】表面処理液、及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20220322BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20220322BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20220322BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220322BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C23C26/00 A
C09D201/02
C09D7/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017211379
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019081878
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】神園 喬
(72)【発明者】
【氏名】先崎 尊博
(72)【発明者】
【氏名】野口 拓也
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165915(JP,A)
【文献】特開2017-061682(JP,A)
【文献】特開2009-126948(JP,A)
【文献】特表2018-519993(JP,A)
【文献】特開昭56-014504(JP,A)
【文献】特表2004-518783(JP,A)
【文献】特表2019-535880(JP,A)
【文献】特開昭62-036409(JP,A)
【文献】米国特許第06197919(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C23C 26/00
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化に用いられる表面処理液であって、
前記表面処理液が、(A)樹脂と、(B)溶媒とを含み、
前記(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下であり、
前記(A)樹脂が、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、前記官能基I以外の親水性基である官能基IIとを有し、
前記官能基IIが有する親水性基が、アニオン部と、前記(A)樹脂に結合するカチオン部とからなるカチオン性基を有するか、下記式(A1):
-NH-R ・・・(A1)
(式(A1)中、R は、アミノ基、スルホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1~4のアルキル基、
下記式(A-I):
-R 4a -N 1a 2a 3a ・X ・・・(A-I)
(式(A-I)中、R 1a 、R 2a 、及びR 3a は、それぞれ独立にN に結合する炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、R 1a 、R 2a 、及びR 3a のうちの2つは互いに結合して環を形成してもよく、R 4a は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基であり、X は1価のアニオンである。)
で表される4級アンモニウム塩基、又は
水素原子である。)
で表される基であり、
ただし、前記官能基IIが水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、前記(A)樹脂は前記官能基Iを有していなくてもよい、表面処理液。
【請求項2】
(A)樹脂と、(B)溶媒とを含み、
前記(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下であり、
前記(A)樹脂が、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、親水性基である官能基IIとを有し、ただし、前記官能基IIが水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、前記(A)樹脂は前記官能基Iを有していなくてもよく、
前記(A)樹脂が、アニオン部と、前記(A)樹脂に結合するカチオン部とからなるカチオン性基を有し、
pHが5以上14以下、である、表面処理液。
【請求項3】
前記カチオン部が、含窒素カチオン部である、請求項1又は2に記載の表面処理液。
【請求項4】
前記カチオン性基が、下記式(A-I):
-R4a-N1a2a3a・X・・・(A-I)
(式(A-I)中、R1a、R2a、及びR3aは、それぞれ独立にNに結合する炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、R1a、R2a、及びR3aのうちの2つは互いに結合して環を形成してもよく、R4aは炭素原子数1以上4以下のアルキレン基であり、Xは1価のアニオンである。)
で表される基である、請求項に記載の表面処理液。
【請求項5】
前記(A)樹脂が、下記式(A4)
CH=CR-CO-NH-R4a-N1a2a3a・X・・・(A4)
(式(A4)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R1a、R2a、R3a、R4a、及びXは前記式(A-I)と同様である。)
で表される単量体に由来する構造単位を有する、請求項に記載の表面処理液。
【請求項6】
被処理体におけるポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材を親水化させる表面処理方法であって、
前記基材の表面の少なくとも一部に、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理液を塗布することを含む、表面処理方法。
【請求項7】
前記ポリオルガノシロキサンがポリジメチルシロキサンである、請求項に記載の表面処理方法。
【請求項8】
前記被処理体が、バイオチップ、マイクロ流路デバイス、コンタクトレンズ、又は医療用器具である、請求項6又は7に記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々の物品の表面の性質を改質するために、様々な表面処理液が使用されている。表面改質の中でも、物品の表面の親水化についての要求は大きく、親水化用の薬剤や表面処理液について多数提案されている。
【0003】
かかる親水化用の薬剤に関して、例えば、メルカプト基を有するポリビニルアルコール樹脂ブロックと1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基及び/又はスルホン酸基を有する重合性モノマーが重合してなるポリアニオン樹脂ブロックとのブロック共重合体、及びポリアクリル酸を含む親水化処理剤が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-126948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の親水化処理剤を用いて、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化処理を行う場合、処理直後には高度な親水化効果を得られても、数時間から数日経過した後には、親水化の効果が大きく損なわれてしまう問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みなされたものであって、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材を、長期間にわたり安定して親水化できる表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、(A)樹脂と、(B)溶媒とを含む表面処理液において、(A)樹脂として、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、官能基I以外の親水性基である官能基IIとを有する樹脂を用いるとともに、(A)樹脂の全構造単位におけるアニオン性基を有する構造単位の比率を5モル%以下とするか、又はアニオン部と、(A)樹脂に結合するカチオン部とからなるカチオン性基を有する樹脂を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化に用いられる表面処理液であって、
表面処理液が、(A)樹脂と、(B)溶媒とを含み、
(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下であり、
(A)樹脂が、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、官能基I以外の親水性基である官能基IIとを有し、ただし、官能基IIが水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、(A)樹脂は官能基Iを有していなくてもよい、表面処理液である。
【0009】
本発明の第2の態様は、(A)樹脂と、(B)溶媒とを含み、
(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下であり、
(A)樹脂が、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、親水性基である官能基IIとを有し、ただし、官能基IIが水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、(A)樹脂は官能基Iを有していなくてもよく、
(A)樹脂が、アニオン部と、前記(A)樹脂に結合するカチオン部とからなるカチオン性基を有し、
pHが5以上14以下、である、表面処理液である。
【0010】
本発明の第3の態様は、被処理体におけるポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材を親水化させる表面処理方法であって、
基材の表面の少なくとも一部に、第1の態様、又は第2の態様にかかる表面処理液を塗布することを含む、表面処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材を、長期間にわたり安定して親水化できる表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪第1の表面処理液≫
以下、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化に用いられる表面処理液であって、
表面処理液が、(A)樹脂と、(B)溶媒とを含み、
(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下であり、
(A)樹脂が、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、官能基I以外の親水性基である官能基IIとを有し、ただし、官能基IIが水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、(A)樹脂は官能基Iを有していなくてもよい、表面処理液について、「第1の表面処理液」として説明する。
以下、第1の表面処理液の説明において、単に「処理液」と記載する場合、「第1の表面処理液を意味する。
【0013】
第1の表面処理液は、前述の通り、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化に用いられる。基材の表面が、その少なくとも一部にポリオルガノシロキサンを含む場合、従来知られる親水化用の処理液で表面処理を行っても、長期間にわたる安定した親水化の効果を得にくい。ポリオルガノシロキサンから揮発する、加水分解縮合性のシラン化合物や、そのオリゴマーが基板表面に再付着することにより、表面処理直後の高い親水化の効果を長期にわたって維持することが難しいと考えらえる。
しかし、上記の所定の要件を満たす処理液を用いる場合、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材を、長期間にわたって高度に親水化することができる。
【0014】
ポリオルガノシロキサンとしては特に限定されない。ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルプロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、及びポリメチルブチルシロキサン等が挙げられる。
これらの中では、入手が容易であることや、従来の処理液を用いる場合に長期間にわたる安定した親水化が特に難しいことから、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0015】
以下、第1の表面処理液に含まれる成分について説明する。
【0016】
<(A)樹脂>
(A)樹脂は、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iを有する。また、(A)樹脂は、官能基I以外の親水性基である官能基IIを有する。親水性基を有する(A)樹脂を含む処理液を用いることにより親水化処理できる。
親水性基は、従来から、当業者に親水性基であると認識されている官能基であれば特に限定されず、その中から適宜選択できる。
【0017】
(A)樹脂の種類は、(A)樹脂が、所定の官能基を有し、且つ(B)溶媒に可溶である限り特に限定されない。(A)樹脂の例としては、(メタ)アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中では、官能基の導入や、官能基を有する単位の含有比率の調整が容易である事から(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0018】
親水性基の具体例としては、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基等)、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基等があげられる。また、これらの基を含む有機基も親水性基として好ましい。
【0019】
さらに、アニオン部と、(A)樹脂に結合するカチオン部とからなるカチオン性基も親水性基として好ましい。カチオン性基を構成するカチオン部としては、含窒素カチオン部、含イオウカチオン部、含ヨウ素カチオン部、及び含リンカチオン部等が挙げられる。
【0020】
アニオン部を構成するアニオンとしては特に限定されない。アニオンの価数は特に限定されず、1価アニオン又は2価アニオンが好ましく、1価アニオンがより好ましい。
アニオン部としての1価アニオンの好適な例としては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、種々の有機カルボン酸又は有機スルホン酸に由来する有機酸イオン等が挙げられる。これらの中では、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオンがより好ましく、塩化物イオン、及び臭化物イオンがさらにより好ましく、塩化物イオンが特に好ましい。
【0021】
カチオン性基の好ましい例としては、4級アンモニウム塩基を含む基、含窒素芳香族複素環基の塩を含む基、スルホニウム塩基を含む基、ヨードニウム塩基を含む基、ホスホニウム塩基を含む基等が挙げられる。
これらのカチオン性基の中では、(A)樹脂への導入が容易であることや、親水化の効果が高いこと等から、4級アンモニウム塩基を含む基が好ましい。
【0022】
カチオン性基としての4級アンモニウム塩基としては、下記式(A-I):
-R4a-N1a2a3a・X・・・(A-I)
(式(A-I)中、R1a、R2a、及びR3aは、それぞれ独立にNに結合する炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、R1a、R2a、及びR3aのうちの2つは互いに結合して環を形成してもよく、R4aは炭素原子数1以上4以下のアルキレン基であり、Xは1価のアニオンである。)
で表される基が好ましい。
【0023】
1a、R2a、及びR3aとしての炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。R1a、R2a、及びR3aの好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びn-ブチル基が挙げられる。
【0024】
4aとしての炭素原子数1以上4以下のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。R4aの好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、及びブタン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0025】
の好適な例は、前述のアニオン部を構成するアニオンの好適な例と同様である。
【0026】
なお、(A)樹脂が、親水性基として、カルボキシ基、スルホン酸基等のアニオン性基を有する場合、(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下である。
【0027】
(A)樹脂が、官能基IIとして、水酸基、及び/又はシアノ基を含む親水性基を有する場合、当該親水性基に含まれる水酸基、及び/又はシアノ基は、官能基Iとしての役割も果たす。
このため、(A)樹脂が、官能基IIとして、水酸基、及び/又はシアノ基を含む親水性基を有する場合、(A)樹脂は、官能基Iを有していなくてもよい。
なお、水酸基を含む親水性基には、水酸基そのものが含まれる。
【0028】
処理液の親水化効果が優れる点で、親水性基としては、下記式(A1):
-NH-R・・・(A1)
(式(A1)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1~4のアルキル基、前述の式(A-I)で表される4級アンモニウム塩基、又は水素原子である。)
で表される基が好ましい。
【0029】
式(A1)で表される親水性基の具体例としては、アミノ基と、下記式で表されるRを有する基と、が挙げられる。
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
上記の式(A1)で表される親水性基の具体例のうち、より好ましい基としては、下記式で表されるRを有する基が挙げられる。
【化4】
【0033】
上記の式(A1)で表される親水性基の具体例のうち、特に好ましい基としては、下記式で表されるRを有する基が挙げられる。
【化5】
【0034】
(A)樹脂としては、種々の官能基を導入しやすく、官能基量の調整が容易である事から、不飽和結合を有する単量体の重合体であるのが好ましい。かかる重合体は、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。
【0035】
この場合、(A)樹脂が有する官能基Iは、下式(A2):
CH=CR-(R-CO-R・・・(A2)
(式(A2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは2価の炭化水素基であり、aは0又は1であり、Rは、-OH、-O-R、又は-NH-Rであり、Rは、水酸基、及び/又はシアノ基で置換された炭化水素基である。)
で表される単量体に由来する基であるのが好ましい。
【0036】
上記式(A2)中、Rは2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(A)樹脂の入手や調製が容易である事から、Rとしての2価の炭化水素基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましく、1以上6以下が最も好ましい。
【0037】
としての2価の炭化水素基は、脂肪族基でも、芳香族基でも、脂肪族部分と芳香族部分とを含む炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基が、脂肪族基である場合、当該脂肪族基は、飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。また、当該脂肪族基の構造は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でも、これらの構造の組み合わせであってもよい。
【0038】
の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基、n-ヘキサン-1,6-ジイル基、n-ヘプタン-1,7-ジイル基、n-オクタン-1,8-ジイル基、n-ノナン-1,9-ジイル基、n-デカン-1,10-ジイル基、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-2,7-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ビフェニル-4,4’-ジイル基等が挙げられる。
【0039】
は、-OH、-O-R、又は-NH-Rであり、Rは、水酸基、及び/又はシアノ基で置換された炭化水素基である。
の基の主骨格を構成する炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上12以下がより好ましい。
直鎖状、又は分岐鎖状の脂肪族基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
環状の脂肪族基の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基や、これらのポリシクロアルカンのC1-C4アルキル置換体から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、及びビフェニリル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基は、メチル基、エチル基等のC1-C4アルキル基で置換されていてもよい。
【0040】
式(A2)で表される単量体に由来する単位の特に好ましい具体例としては、下記a2-1~a2-8の単位が挙げられる。下記a2-1~a2-8の単位の中では、a2-1~a2-3の単位がより好ましい。
【化6】
【0041】
また、(A)樹脂における、親水性基である官能基IIは下式(A3):
CH=CR-CO-NH-R・・・(A3)
(式(A3)中、Rは、アミノ基、スルホン酸基、及び水酸基からなる群より選択される1以上の基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基、前述の式(A-I)で表される4級アンモニウム塩基、又は水素原子であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
で表される単量体に由来するのが好ましい。
【0042】
式(A3)中、Rについては、前述した通りである。Rとしては、前述の式(A-I)で表される4級アンモニウム塩基が好ましい。
【0043】
つまり、(A)樹脂が、上記の式(A3)で表される単量体に由来する単位として、下記式(A4):
CH=CR-CO-NH-R4a-N1a2a3a・X・・・(A4)
(式(A5)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、R1a、R2a、R3a、R4a、及びXは前述の式(A-I)と同様である。)
で表される単量体に由来する構造単位を有するのが好ましい。
【0044】
式(A3)で表される単量体に由来する、親水性基を有する単位の特に好ましい具体例としては、下記a3-1~a3-5の単位が挙げられる。
【化7】
【0045】
(A)樹脂が不飽和結合を有する単量体の重合体である場合、かかる重合体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、前述の式(A2)で表される単量体に由来する単位、及び式(A3)で表される単量体に由来する単位以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
【0046】
その他の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、N-イソペンチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ペンチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びクロルスチレン等の単量体に由来する構成単位が挙げられる。
【0047】
(A)樹脂が不飽和結合を有する単量体の重合体である場合、かかる重合体に含まれる全構成単位中の式(A2)で表される単量体に由来する構成単位の比率は、0.1モル%以上50モル%以下が好ましく、1モル%以上20モル%以下がより好ましく、1モル%以上15モル%以下が特に好ましい。
【0048】
(A)樹脂が不飽和結合を有する単量体の重合体である場合、かかる重合体に含まれる全構成単位中の(A3)で表される単量体に由来する構成単位のモル比率は、50モル%以上99.9モル%以下が好ましく、60モル%以上99モル%以下がより好ましく、70モル%以上99モル%以下が特に好ましい。
ただし、式(A3)で表される単量体に由来する構成単位が水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、重合体に含まれる全構成単位中の式(A3)で表される単量体に由来する構成単位の比率は100%であってもよい。
【0049】
(A)樹脂の重量平均分子量は、100,000以上であるのが好ましい。かかる分子量を有する(A)樹脂を用いる場合、処理液による処理時に、官能基Iと非処理体表面との反応又は相互作用に起因して、(A)樹脂が被処理体表面に結合ないし付着しやすい。
(A)樹脂の重量平均分子量は、表面処理効果が良好である点から、200,000以上が好ましく、300,000以上がより好ましい。(A)樹脂が、後述する(B)溶媒に可溶である限りにおいて、(A)樹脂の重量平均分子量は1,000,000以上であってもよい。
(A)樹脂の重量平均分子量の上限は、(A)樹脂が(B)溶媒に可溶である限りにおいて特に限定されない。(A)樹脂の重量平均分子量は、例えば、250万以下であってよく、400万以下であってよい。
【0050】
処理液に含まれる(A)樹脂の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、処理液の塗布性等を勘案して適宜定められる。典型的には、処理液中の(A)樹脂の量は、処理液中の(A)樹脂の量と、後述する(B)溶媒の量との関係は、以下の関係である量が好ましい。
処理液中の(A)樹脂の質量を100質量部とする場合に、後述する(B)溶媒の量が100質量部以上10000質量部以下であるのが好ましく、500質量部以上8000質量部以下であるのがより好ましく、1000質量部以上6000質量部以下であるのが特に好ましい。
【0051】
<(B)溶媒>
(B)溶媒は、(A)樹脂が可溶である溶媒であれば特に限定されない。処理液中に、(A)樹脂が、所定量溶解していれば、処理液は、溶解していない状態の(A)樹脂と、(B)強酸とを含んでいてもよい。(A)樹脂は、処理液に完全に溶解しているのが好ましい。
処理液が、不溶物を含む場合、表面処理時に、被処理体の表面に不溶物が付着する場合がある。この場合、表面処理された被処理体の表面を、後述するような方法でリンスすることにより、被処理体の表面に付着する不溶物を除去することができる。
【0052】
(B)溶媒は、水であっても、有機溶媒であっても、有機溶媒の水溶液であってもよい。
【0053】
(B)溶媒として使用される有機溶媒の具体例としては、
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;
N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;
N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;
ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;
2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-i-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸-i-ブチル、ぎ酸-n-ペンチル、酢酸-i-ペンチル、プロピオン酸-n-ブチル、酪酸エチル、酪酸-n-プロピル、酪酸-i-プロピル、酪酸-n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸-n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
β-プロピロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-ペンチロラクトン等のラクトン類;
n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、メチルオクタン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;等が挙げられる。
【0054】
(B)溶媒が、水と有機溶媒との混合溶媒である場合、(B)溶媒中の有機溶媒の含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0055】
<その他の成分>
処理液は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記した(A)樹脂、及び(B)溶媒以外に、種々の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、pH調整剤、着色剤、界面活性剤、消泡剤、粘度調整剤等が挙げられる。
【0056】
pH調整剤としては、特に限定されず、種々の酸、又は塩基を使用することができる。親水化の効果が良好であることから、処理液のpHは、5以上14以下に調整されるのが好ましく、5以上12以下に調整されるのがより好ましく、5以上10以下に調整されるのが特に好ましい。
【0057】
<処理液の調製方法>
処理液を調製する方法は特に限定されない。処理液は、典型的には、それぞれ所定量の(A)樹脂と、(B)溶媒と、必要に応じてその他の成分を、均一に混合することにより調製される。
【0058】
以上説明した処理液は、例えば、細胞培養器具、バイオチップ、コンタクトレンズ、医療用器具、細胞等の生体試料を含む液体を流通させるマイクロ流路デバイス等の表面処理、種々の物品への防汚性や防曇性の付与等の目的での表面処理等に好適に使用される。
【0059】
≪第2の表面処理液≫
以下、(A)樹脂と、(B)溶媒とを含み、
(A)樹脂の全構造単位における、アニオン性基を有する構造単位の比率が5モル%以下であり、
(A)樹脂が、水酸基、及び/又はシアノ基である官能基Iと、親水性基である官能基IIとを有し、ただし、官能基IIが水酸基、及び/又はシアノ基を含む場合、(A)樹脂は前記官能基Iを有していなくてもよく、
(A)樹脂が、アニオン部と、(A)樹脂に結合するカチオン部とからなるカチオン性基を有し、
pHが5以上14以下、である、表面処理液について、「第2の表面処理液」として説明する。
【0060】
第2の表面処理液について、pHが5以上14以下であることが必須である点と、その使用目的がポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化に限定されないこととを除き、第1の表面処理液と同様である。
pHの調製方法についても、第1の表面処理液について説明した通りである。
【0061】
第2の表面処理液は、種々の基材の親水化に好適に用いられるが、第1の表面処理液と同様、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化に特に好ましく用いられる。
【0062】
≪表面処理方法≫
以上説明した表面処理液(第1の表面処理液、又は第2の表面処理液)を用いる表面処理は、前述の通り、ポリオルガノシロキサンを表面の少なくとも一部に含む基材の親水化処理であるのが好ましい。ポリオルガノシロキサンについては、第1の表面処理方法について説明した通りである。
【0063】
表面処理方法は、通常、被処理体である基材の表面への表面処理液の塗布を含む。表面処理液の塗布方法は特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられる。被処理体が基板である場合、表面処理液を均一に塗布することで、基材表面を均一に親水化できることから、塗布方法としてスピンコート法が好ましい。
【0064】
被処理体としての基材の表面処理液が塗布される面がポリオルガノシロキサン以外の材質を含む場合、ポリオルガノシロキサン以外の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
有機材料としては、PET樹脂やPBT樹脂等のポリエステル樹脂、各種ナイロン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂等、種々の樹脂材料が挙げられる。
また、種々のレジスト材料に含まれる感光性の樹脂成分や、アルカリ可溶性の樹脂成分も有機材料として好ましい。
無機材料としては、ガラス、シリコンや、銅、アルミニウム、鉄、タングステン等の種々の金属が挙げられる。金属は、合金であってもよい。
【0065】
表面処理液が塗布される面の材質が有機材料を含む場合は、官能基Iとして水酸基を有する(A)樹脂を含む表面処理液を用いるのが好ましい。
表面処理液が塗布される面の材質が無機材料を含む場合は、官能基Iとして水酸基及び/又はシアノ基を有する(A)樹脂を含む表面処理液を用いるのが好ましい。
【0066】
被処理体としての基材の形状は特に限定されない。基材は平坦な基板であってもよく、例えば、球状や、柱状等の立体形状であってもよい。また、被処理体の表面は、平滑であっても、規則的又は不規則な凹凸を有していてもよい。
【0067】
表面処理液を、被処理体の表面に塗布した後は、必要に応じて塗布膜を加熱して(B)溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0068】
被処理体上の表面処理液が塗布された箇所はリンスされるのが好ましい。特に、重量平均分子量が100,000以上であり、所定の官能基を有する(A)樹脂を含む表面処理液を被処理体の表面に塗布すると、被処理体の表面に(A)樹脂が良好に付着又は結合しやすい。しかし、被処理体の表面には、当該表面に付着又は結合していない(A)樹脂もある程度の量存在している。したがって、(A)樹脂の、被処理体の表面特性に与える影響を極力低減させるために、リンスにより、被処理体の表面に付着又は結合していない(A)樹脂を洗い流すのが好ましい。
【0069】
表面処理液が(B)溶媒として水を含む場合、水によりリンスを行うのが好ましい。また、表面処理液が(B)溶媒として有機溶媒を含む場合、有機溶媒によりリンスを行うのも好ましい。有機溶媒によりリンスを行う場合、表面処理液に含まれる有機溶媒と同種の有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0070】
表面処理液の塗布後、又はリンス後に、被処理体の表面を乾燥させることにより、良好に親水化された物品が得られる。
【実施例
【0071】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
〔実施例1、実施例2、及び比較例1〕
実施例1では、下記のResin 1を用い、実施例2では下記のResin 2を用い、比較例1では下記のResin 3を用いた。下記式中、括弧の右下の数字は、樹脂中の全構造単位における各構造単位のモル%を表す。
【化8】
【0073】
上記の樹脂を、水に、固形分濃度が1質量%となるように溶解させて、実施例1、実施例2、及び比較例1の表面処理液を得た。なお、実施例1で得られた表面処理液のpHは6であり、実施例2で得られた表面処理液のpHは7であり、比較例1で得られた表面処理液のpHは2であった。
【0074】
(表面処理効果の評価)
以上の方法により得られた、実施例1、実施例2、及び比較例1の表面処理液を用いて、以下の方法にしたがって被処理体の表面処理を行った。
被処理体としては、ポリジメチルシロキサンからなる基板を用いた。
【0075】
まず、被処理体に、処理液を浸漬塗布した後、オーブンで5分間被処理体を乾燥させた。
乾燥後、被処理体の表面を純水で洗浄し、次いで風乾させて、表面処理された被処理体を得た。
【0076】
風乾燥直後、風乾から1時間後、3時間後、及び12時間後の、被処理体の表面の水の接触角を測定し、親水化効果の経時変化を評価した。
水の接触角の測定は、Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用い表面処理された基板の表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下10秒後における接触角として測定した。
【0077】
上記の評価の結果、実施例1の表面処理液で処理された基板では、いずれの測定時間でも、水の接触角は10°未満で安定していた。また、実施例2の表面処理液で処理された基板では、風乾直後の水の接触角が20°弱であるのに対して、3時間後の時点での水の接触角が40°弱まで上昇したが、12時間後の時点でも水の接触角は40°を超えなかった。
【0078】
他方、比較例1の表面処理液で処理された基板では、風乾直後の水の接触角が60°弱であるのに対して、1時間後の時点での水の接触角が80°強まで上昇し、3時間後及び12時間後の時点では、水の接触角が約110°まで上昇し、親水化の効果は失われていた。