(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】位置検出装置、画像形成装置、および方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
G03G21/00 510
(21)【出願番号】P 2018012074
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】二角 大祐
(72)【発明者】
【氏名】中澤 政元
(72)【発明者】
【氏名】池本 龍馬
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001069(JP,A)
【文献】特開2007-314273(JP,A)
【文献】特開2012-128268(JP,A)
【文献】特開平10-224616(JP,A)
【文献】特開2008-053880(JP,A)
【文献】特開2005-311946(JP,A)
【文献】特開2005-209037(JP,A)
【文献】米国特許第05555084(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から読取対象に照射した光の反射光を読み取るイメージセンサと、
前記イメージセンサから主走査位置毎に黒補正データを生成する黒補正データ生成部と、前記イメージセンサの出力信号
を前記黒補正データにより黒補正
する黒補正部とを有する黒補正処理部と、
前記
黒補正処理部により黒補正処理された黒補正処理後の出力信号から前記読取対象の媒体の位置を検出する位置検出部と、
前記読取対象の媒体の媒体情報を記憶する記憶部と、
前記読取対象の媒体に対応する媒体情報に基づき、前記媒体の種類に応じて、前記イメージセンサまたは前記黒補正処理部に対して異なる動作条件を設定して動作する制御部と、
を有
し、
前記制御部は、前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせる動作条件において、前記読取対象の媒体の種類に応じて前記イメージセンサの動作条件が変更になる場合には前記黒補正データを再生成する
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせる動作条件を設定して動作する第1のモードを有し、
前記位置検出部は、前記第1のモードによる動作時に前記黒補正処理後の出力信号から前記媒体の位置を検出する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記読取対象の媒体が前記媒体情報に高濃度媒体として設定されている場合に、前記第1のモードで動作する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
さらに、
前記制御部は、前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせない第2のモードを有し、
前記位置検出部は、前記第2のモードによる動作時に前記黒補正処理が行われていない出力信号から前記媒体の位置を検出する、
ことを特徴とする請求項
2または
3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記動作条件の設定により前記イメージセンサの単位時間あたりの受光量を調整する、
ことを特徴とする請求項
1乃至
4の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記動作条件の設定により前記イメージセンサの出力信号量を増幅または減衰させる、
ことを特徴とする請求項
1乃至
5の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記出力信号量の増幅または減衰より
も受光量の調整を優先的に適用する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記動作条件として、前記読取対象の媒体の種類に応じて前記黒補正データを生成するライン数を設定して動作する、
ことを特徴とする請求項
2乃至
7の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記媒体の種類は、3段階の濃度に分類した高濃度媒体、中濃度媒体、および低濃度媒体である、
ことを特徴とする請求項
1乃至
8の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記イメージセンサで基準濃度部材を読み取ったときの白補正データにより前記イメージセンサの出力信号に白補正処理を行う白補正処理部を、
さらに備えたことを特徴とする請求項1乃至
9の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記動作条件として、前記読取対象の媒体の種類に応じて前記白補正処理の補正係数を設定して動作する、
ことを特徴とする請求項1
0に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記白補正データを格納するための不揮発性メモリを備え、
前記白補正処理部は、前記不揮発性メモリに格納された白補正データにより前記イメージセンサの出力信号に白補正処理を行う、
ことを特徴とする請求項1
0または1
1に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記黒補正データ生成部は、
前記媒体の領域外の迷光成分により前記位置が誤検出される場合には、前記媒体を読み取る前に前記光源を点灯した状態で前記イメージセンサの出力信号から黒補正データを生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至
9の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記読取対象の媒体が黒紙または透明紙である場合に
前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせる動作条件を設定して動作する、
ことを特徴とする請求項
2乃至1
3の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記媒体が反射光の指向性が高い記録媒体である場合に
前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせる動作条件を設定して動作する、
ことを特徴とする請求項
2乃至1
4の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項16】
前記位置検出部による前記読取対象の媒体の検出結果に基づき前記媒体の主走査方向における位置ずれを補正する補正手段を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至1
5の内の何れか一項に記載の位置検出装置。
【請求項17】
請求項1
6に記載の位置検出装置と、
前記位置検出装置の前記補正手段により位置ずれが補正された記録媒体としての前記媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項18】
媒体の位置ずれを検出する方法であって、
記憶部に記憶されている媒体情報に基づき、前記媒体の種類に応じて、イメージセンサまたは黒補正処理部に対して異なる動作条件を設定するステップと、
光源から読取対象に照射した光の反射光をイメージセンサが読み取るステップと、
前記イメージセンサから主走査位置毎に黒補正データを生成し、前記イメージセンサの出力信号
を前記黒補正データにより黒補正する、黒補正処理を行うステップと、
前記黒補正処理後の出力信号から読取対象の媒体の位置を検出するステップと、
前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせる動作条件において、前記読取対象の媒体の種類に応じて前記イメージセンサの動作条件が変更になる場合には前記黒補正データを再生成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置、画像形成装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、記録媒体の搬送経路に配置した光学的なセンサにより閾値を基準に記録媒体の主走査方向の端部を検出し、検出した端部の位置から主走査レジストのズレ量やスキュー量を算出する技術が既に知られている。
【0003】
端部検出センサとしてイメージセンサを用い、記録媒体の端部を検出するものがある。転写紙は紙色によって反射率が大きく異なるため、紙色によっては端部の検出の際に閾値を上回る十分な反射光量が得られず、端部を精度良く検出することができない。閾値を低く設定しておくことも考えられるが、この場合には誤差が大きくなってしまう。そこで、波長の異なる複数の光源を用い、紙色に応じて光源の波長や光量などを変えるようにした画像形成装置の開示がある(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、黒紙やOHPシートなどのように反射光量が非常に乏しく各画素から十分な信号出力が得られない記録媒体においては、イメージセンサが画素毎に有する固定パターンノイズの影響により、依然として記録媒体の端部の検出精度が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高濃度で低反射率の記録媒体などのようにイメージセンサにおける受光量が乏しい記録媒体であっても記録媒体の端部を精度良く検出することが可能な位置検出装置、画像形成装置、および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一実施の形態の位置検出装置は、光源から読取対象に照射した光の反射光を読み取るイメージセンサと、前記イメージセンサから主走査位置毎に黒補正データを生成する黒補正データ生成部と、前記イメージセンサの出力信号を前記黒補正データにより黒補正する黒補正部とを有する黒補正処理部と、前記黒補正処理部により黒補正処理された黒補正処理後の出力信号から前記読取対象の媒体の位置を検出する位置検出部と、前記読取対象の媒体の媒体情報を記憶する記憶部と、前記読取対象の媒体に対応する媒体情報に基づき、前記媒体の種類に応じて、前記イメージセンサまたは前記黒補正処理部に対して異なる動作条件を設定して動作する制御部と、を有し、前記制御部は、前記黒補正処理部に前記黒補正処理を行わせる動作条件において、前記読取対象の媒体の種類に応じて前記イメージセンサの動作条件が変更になる場合には前記黒補正データを再生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高濃度で低反射率の記録媒体などのようにイメージセンサにおける受光量が乏しい記録媒体であっても記録媒体の端部を精度良く検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、画像形成装置において、記録媒体のエッジ位置を検出する読取デバイスの配置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、記録媒体の濃度により異なる光の各波長についての反射率(分光反射率)の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、高濃度(低反射率)の記録媒体を読み取った場合にエッジ位置が誤検出されることを示す説明図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、位置検出ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、読取デバイスの構成ブロックの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、媒体情報格納部に格納されている記録媒体情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、位置検出ユニットによる位置調整のための動作フローの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、高濃度(低反射率)の記録媒体で黒補正データによる補正(黒補正)を実施した場合における検出精度向上の効果を説明するための図である。
【
図10】
図10は、読取デバイスの出力信号量の調整によって生じる上記弊害の説明図である。
【
図11】
図11は、変形例1にかかる記録媒体情報の設定を示す図である。
【
図12】
図12は、変形例1にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、蓄積時間(ライン同期信号周期)の拡大に伴う黒補正データ生成期間の長期化についての説明図である。
【
図14】
図14は、変形例2にかかる記録媒体情報の設定を示す図である。
【
図15】
図15は、変形例2にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、変形例3にかかる記録媒体情報の設定を示す図である。
【
図17】
図17は、変形例3にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【
図18】
図18は、記録媒体のエッジ位置の検出における第2の課題について説明するための図である。
【
図19】
図19は、第2の実施の形態にかかる位置検出ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、第2の実施の形態にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2の実施の形態の変形例1にかかる記録媒体情報の設定を示す図である。
【
図22】
図22は、補正係数αの設定変更による効果の説明図である。
【
図23】
図23は、第2の実施の形態の変形例1にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【
図24】
図24は、第2の実施の形態の変形例2にかかる位置検出ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図25】
図25は、第2の実施の形態の変形例2にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【
図26】
図26は、記録媒体の領域外の不要成分による誤検出の発生のケースについて説明する図である。
【
図27】
図27は、記録媒体の領域外の不要成分の影響を除去するメカニズムを示す説明図である。
【
図28】
図28は、第2の実施の形態の変形例3にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下に添付図面を参照して、位置検出装置、画像形成装置、および方法の実施の形態を詳細に説明する。ここで、位置検出装置とは、媒体の位置を検出するユニット装置、或いは当該ユニット装置を含む所定目的の装置のことである。所定目的の装置とは、例えば、記録紙などの記録媒体(媒体)の位置を検出して媒体上に画像を形成する画像形成装置や、製造ラインにおいてベルトコンベア上の部品等(媒体)の位置を検出して自動組み立てを行うFA装置などである。以下では、上記位置検出装置として、画像形成装置(電子写真方式やインクジェット方式など)への適用例を示す。
【0010】
(概要説明)
画像形成装置において、搬送手段により搬送されてきた記録媒体が、画像形成位置において主走査方向に位置ずれしていると、画像が記録媒体に対して所定の基準位置からずれて形成されてしまう。そのため、本実施の形態にかかる画像形成装置では、記録媒体に画像を形成する前に、その記録媒体の主走査方向に交差するエッジ(「媒体」の「端部」に相当する)の位置を検出し、検出したエッジ位置に基づいて主走査方向の位置ずれを調整する。この調整により、例えば、設計上発生する搬送誤差(主走査レジストレーション誤差)や、記録媒体の搬送時において記録媒体ごとに生じたずれなどを補正することができる。本実施の形態において、記録媒体のエッジ位置の検出は、位置検出ユニットである位置検出装置が行う。記録媒体のエッジ位置の検出の概要を
図1~
図3を用いて以下に説明する。
【0011】
図1は、画像形成装置において、記録媒体のエッジ位置を検出する読取デバイスの配置の一例を示す図である。
図1には、上記位置検出装置が備える読取デバイス2と、読取デバイス2の位置を通過する記録媒体1とを示している。記録媒体1は、搬送方向(矢印s)に搬送される。
図1において、記録媒体1の搬送方向(矢印s)と副走査方向(Y)とは同じ向きであり、記録媒体1の平面において副走査方向(Y)に直交する向きが主走査方向(X)である。
【0012】
読取デバイス2は、例えば、複数のイメージセンサ(例えばCMOSイメージセンサ)をライン状に並べたCIS(Contact Image Sensor:密着型イメージセンサ)である。
図1において読取デバイス2は、読取面を記録媒体1の片面に対向する方向に向け、当該片面に近接して設けられている。読取デバイス2の各イメージセンサ2a、2b、・・・は、主走査方向(X)にライン状に配列されている。読取デバイス2は、照明光を読取対象に照射し、それぞれの位置から反射する光を、主走査方向(X)のイメージセンサ2a、2b、・・・の各位置(主走査位置)でフォトダイオードにより受光し、光電変換後の各主走査位置の画素信号を主走査方向(X)の信号列(画像信号)として出力する。
【0013】
読取デバイス2の対向位置には、読取デバイス2からの照明光を遮光・吸光する専用の遮光部材が配置されている。また、読取デバイス2は、
図1に示すように記録媒体1のエッジ1aを主走査方向(X)に跨ぐように配置されている。この構成により、読取デバイス2と遮光部材との間を記録媒体1が通過する期間において記録媒体1から反射光を受光しない部分の主走査位置(画素番号)の光の読取値が微小になる。
【0014】
図1には、読取デバイス2の主走査方向(X)に対応させ、各主走査位置(画素番号)の出力値を示すグラフGを示している。グラフGに示すように、記録媒体1の通過中における読取デバイス2の各主走査位置(画素番号)の出力値(読取値)はエッジ1aを境に急な変化を示す。記録媒体1の反射率が高ければ高いほど、エッジ1aでの出力値の差が大きくなり、各主走査位置の出力値と予め設定した閾値とを比べることでエッジ1aの位置(エッジ位置)を検出することができる。一方、記録媒体1の反射率が低いものになると、エッジ1aでの出力値の差が小さくなり、各主走査位置の出力値と所定の閾値との比較だけではエッジ位置の誤検出が高まり、エッジ位置を精度良く検出することができない。
【0015】
図2は、記録媒体1の濃度により異なる光の各波長についての反射率(分光反射率)の一例を示す図である。
図2(a)には、記録媒体1が「白紙」と「黒紙」の場合の分光反射率を示している。
図2(a)に示す実線のグラフが、白紙の分光反射率を示す値である。この例では、可視光域(
図2においては400nm~760nmとした)内のほとんどの波長域において概ね70~90%の高い反射率を示すことが分かる。これに対し、破線のグラフは、白紙とは濃度が相対的な黒紙の分光反射率を示したものである。
【0016】
図2(b)には、
図2(a)と別のレンジで黒紙の分光反射率を示している。
図2(b)に示すように、黒紙の場合には、上記可視光域において1~2%の低い分光反射率を示すものも存在することが分かっている。
【0017】
各主走査位置の画素の、受光した光の出力信号量は、記録媒体1の各濃度間の分光反射率の比に概ね比例する。従って、黒紙を読み取った場合に得られる出力信号量は、白紙と比べると、白紙:黒紙≒80:1であるため、非常に小さい。
【0018】
各主走査位置の画素の出力信号には、各画素のフォトダイオードの固定パターンノイズである暗電流の出力(暗出力)が重畳されている。密着型イメージセンサに代表されるようなラインセンサの光電変換素子としては、主にCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサが用いられるが、いずれのセンサも、固定パターンノイズによる信号出力のばらつきが生じることで知られている。固定パターンノイズの代表的な発生要因としては、センサ内のフォトダイオードに流れる暗電流のばらつきが挙げられる。暗電流に起因する固定パターンノイズは、フォトダイオードへの入射光が無くても定常的に発生し、そのノイズ成分は光蓄積時間に比例し、かつ、温度依存性を持つことで知られている。
【0019】
このように暗出力の大きさはフォトダイオードごとに異なるため、画素によりばらつきがある。記録媒体1として高濃度のものが対象になる場合、濃度が高濃度であればあるほど、各画素の出力信号に含まれる反射光の信号量が少なくなり、相対的に暗出力の信号量に近づくことになる。
【0020】
図3は、高濃度(低反射率)の記録媒体を読み取った場合にエッジ位置が誤検出されることを示す説明図である。
図3(a)は、閾値が低い設定で誤検出される場合の例であり、
図3(b)は、閾値が高い設定で誤検出される場合の例である。
【0021】
図3(a)および
図3(b)には、高濃度(低反射率)の記録媒体1を読み取った場合における各主走査位置の画素の出力成分の比率の一例を示している。各図において、網掛け領域g1が暗出力(暗出力成分)を表し、白領域g2が明出力(明出力成分)を表す。ここで、明出力成分とは、反射光成分のことを指す。
【0022】
暗出力成分は、各画素のフォトダイオードが同一のものではないため、各主走査位置で大小のばらつきがあり、主走査方向において一定にならない。明出力成分は、記録媒体1が高濃度(低反射率)の場合において微小となり、最大値が暗出力成分の影響を受けるようになる。
【0023】
この場合、
図3(a)に示すように、記録媒体1以外での出力(暗出力成分)が記録媒体1のエッジ1aでの出力(暗出力成分+明出力成分)を上回ることが考えられる。このケースのように低い閾値Th1を設定すると、主走査先端から画素毎に所定の閾値を越えるか否かを判定する検出方式の場合、真のエッジ位置よりも先に記録媒体1以外の位置で出力値が閾値Th1を超え、真のエッジ位置以外がエッジ位置として誤検出されることになる。
【0024】
これを回避するために、
図3(b)に示すように、全画素内で画素の暗出力成分の最大値を見込んだ上で、高い閾値Th2を設定する。しかし、その場合においても、暗出力成分の最大値をエッジ1aでの出力(暗出力成分+明出力成分)が下回る場合は、真のエッジ位置で出力値が閾値Th2を超えることができず、エッジ1aから遠ざかる位置で記録媒体1内の位置の出力値が閾値Th2を超え、真のエッジ位置以外がエッジ位置として誤検出されることになる。
【0025】
このように、記録媒体のエッジ位置周辺の暗出力が他の主走査位置の暗出力よりも小さい場合、高濃度(低反射率)の記録媒体では反射光成分を十分に確保できないため、暗出力成分と明出力成分との総和でも他の暗出力が大きい位置の総出力を上回ることができないことがある。従って、高濃度(低反射率)の記録媒体を読取対象とする場合、閾値の設定を変えただけでは、真のエッジ位置以外がエッジ位置として誤検出されることが起こり得る。主走査位置によって暗出力の値にばらつきがあることは、特に高濃度(低反射率)の記録媒体のエッジ位置を検出する上で致命的である。
【0026】
本実施の形態では、照明を消灯した状態において各画素の暗出力を示す黒シェーディングデータ(黒補正データ)を生成、つまり読取デバイスの暗時出力データを生成し、記録媒体を照明して読み取ったときの出力値から黒補正データの値を差し引く。このようにすることにより、暗時出力データがもつ画素毎の固定パターンノイズの影響を相殺し、様々な種類の記録媒体、特に高濃度(低反射率)用紙に代表される、イメージセンサ受光量が乏しい記録媒体の端部位置(エッジ)を高精度に検出する。
【0027】
図4は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の全体構成の一例を示す図である。
図4には、画像形成装置の一例として印刷システムの全体構成を模式的に示している。
図4に示す印刷システム10は、印刷装置100と位置検出ユニット200とスタッカ400とにより構成されている。
【0028】
印刷装置100は、オペレーションパネル101と、タンデム式の電子写真方式の作像部103Y、103M、103C、103Kと、転写ベルト105と、二次転写ローラ107と、給紙部109と、搬送ローラ対102と、定着ローラ104と、反転パス106とを備えている。これらの内、主に作像部103Y、103M、103C、103Kと、転写ベルト105と、二次転写ローラ107と、搬送ローラ対102と、定着ローラ104とが「画像形成手段」に相当する。
【0029】
オペレーションパネル101は、印刷装置100や位置検出ユニット200に対して各種操作入力を行ったり、各種画面を表示したりする操作表示部である。
【0030】
作像部103Y、103M、103C、103Kは、それぞれ、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、及びクリーニング工程)を有し、作像プロセスでトナー像を形成し、そのトナー像を転写ベルト105に転写する。
図1に示す形態では、作像部103Y上にイエロー色のトナー像が形成され、作像部103M上にマゼンタ色のトナー像が形成され、作像部103C上にシアン色のトナー像が形成され、作像部103K上にブラック色のトナー像が形成され、作像部103Y、103M、103C、及び103Kから各色のトナー像が転写ベルト105に重畳して転写される。なお、トナーの色の種類や数を、これに限定するものではない。トナーの色の種類や数は適宜変形してもよい。
【0031】
転写ベルト105は、所定の方向に走行し、作像部103Y、103M、103C、及び103Kから重畳して転写されたトナー像(フルカラーのトナー画像)を二次転写ローラ107の二次転写位置に搬送する。例えば、転写ベルト105は、反時計回りに走行し、イエロー色のトナー像、マゼンタ色のトナー像、シアン色のトナー像、ブラック色のトナー像の順に重畳して転写されて、フルカラーのトナー画像が二次転写位置に搬送される。
【0032】
給紙部109は、被搬送物で処理対象となる複数の記録媒体1を重ね合わせて収容した給紙トレイを有し、給紙トレイから1枚ずつ記録媒体1を繰り出して搬送路a上に給紙する。記録媒体1は、例えば記録紙(転写紙)であるが、この他、例えば、コート紙、厚紙、OHP(Overhead Projector)シート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔など画像を記録可能な媒体であれば他のものであっても良い。
【0033】
なお、給紙部109の他に、外部オプションとして、記録媒体1の異なる種類のものを収容可能な給紙部を更に接続し、処理対象の記録媒体を、給紙部109を含む複数の給紙部から交互に或いは選択により切り替えて搬送するようにしてもよい。
【0034】
搬送ローラ対102は、給紙部109により給紙された記録媒体1を搬送路aの矢印s方向に搬送する。
【0035】
二次転写ローラ107は、転写ベルト105により搬送されたフルカラーのトナー画像を、搬送ローラ対102により搬送された記録媒体1上に二次転写位置で一括転写する。
【0036】
定着ローラ104は、トナー画像が転写された記録媒体1を加熱及び加圧することにより、トナー画像を記録媒体1に定着させる。
【0037】
印刷装置100は、片面印刷の場合、トナー画像が定着された記録媒体1をスタッカ400へ送り、両面印刷の場合、トナー画像が定着された記録媒体1を反転パス106へ送る。
【0038】
反転パス106は、送られてきた記録媒体1をスイッチバックすることにより記録媒体1の表裏を反転して矢印t方向に搬送する。反転パス106により搬送された記録媒体1は、搬送ローラ対102により矢印s方向に再び搬送され、二次転写ローラ107により反対側の面にトナー画像が転写され、定着ローラ104によるトナー画像の定着後、スタッカ400へと送られる。
【0039】
スタッカ400は、印刷装置100から排紙された記録媒体1をトレイ401にスタックする。
【0040】
位置検出ユニット200は、記録媒体1の主走査方向(X)に複数のイメージセンサを配列した読取デバイス2(
図1参照)を、読取面を記録媒体1の搬送路aに向けて有する。位置検出ユニット200は、処理対象の記録媒体1の副走査方向(Y)に沿うエッジの位置を読取デバイス2からの出力値に基づいて検出し、記録媒体1の主走査方法(X)の位置ずれを補正する。
【0041】
図5は、位置検出ユニット200の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、位置検出ユニット200は、媒体情報格納部201と、CPU(Central Processing Unit)202と、制御部203と、読取デバイス2と、黒シェーディング補正部204と、黒補正データ生成・格納部205と、端部位置検出部206と、搬送位置制御部207と、搬送位置調整ユニット208とを有する。これらの内の主に黒シェーディング補正部(「黒補正部」に相当)204と黒補正データ生成・格納部(「黒補正データ生成部」に相当)205とが「黒補正処理部」に相当する。また、主にCPU202と端部位置検出部206とが「位置検出部」に相当する。また、主に媒体情報格納部201が「記憶部」に相当する。また、主に搬送位置調整ユニット208が「補正手段」に相当する。
【0042】
媒体情報格納部201は、印刷ジョブにおいて使用する給紙部109、及び、給紙部109にセットされる記録媒体1に関する情報(記録媒体情報d1)を格納する。各情報は、オペレーションパネル101(
図4参照)などのユーザーインターフェースを介して設定される。なお、給紙部109にセットされる記録媒体情報d1の詳細については後述する。
【0043】
CPU202は、媒体情報格納部201から、印刷ジョブにおいて使用する記録媒体情報d1を取得して制御部203に通知する。
【0044】
制御部203は、CPU202から通知された記録媒体情報d1に応じ、制御信号m1にて読取デバイス2の動作条件設定を行い、制御信号m2にて黒シェーディング補正部204の動作条件設定を行い、制御信号m3にて黒補正データ生成・格納部205の動作条件設定を行う。
【0045】
読取デバイス2は、制御部203から制御信号m1により入力された所定の動作条件設定で動作し、読み取った画像信号D1を黒シェーディング補正部204と黒補正データ生成・格納部205に出力する。
【0046】
黒補正データ生成・格納部205は、制御信号m3が入力した任意のタイミングを起点に所定ライン数分の画像信号D1を取得し、その取得した画像信号D1に基づいて黒補正データDbを生成する。例えば、制御部203が有するレジスタに予め画像信号の取得ライン数を設定しておき、制御部203が制御信号m3により、設定されているライン数に応じた制御信号(黒補正データ生成領域信号)をアサートする。黒補正データ生成・格納部205は、所定ライン数分の画像信号D1を取得し、画素毎に所定ライン数分の平均値や最頻値を演算するなどして、ランダムノイズ成分の除去された黒補正データDbを生成する。なお、この方式は一例であり、黒補正データDbの生成方式がこれに限定されるものではない。
【0047】
また、黒補正データ生成・格納部205は、RAM(Random Access Memory)を備えており、生成した黒補正データDbを当該RAMに格納して保持する。
【0048】
なお、所定ライン数のデータを用いて画素毎に黒補正データDbを生成する場合、高精度な黒補正データを得ることが可能になるが、画素数分のラインメモリ容量が必要となる。このような実情から、ラインメモリ容量を削減するべく、黒補正データDbを複数画素の単位で生成する方式であってもよい。例えば、密着型イメージセンサ(CIS)のように、複数画素が配列されたセンサICチップが主走査方向に複数個配列されている構成の読取デバイスの場合、センサICチップ毎に黒補正データDbを生成する方式が一例として挙げられる。
【0049】
黒シェーディング補正部204は、次の式(1)により画像の黒補正を行う。具体的に、黒シェーディング補正部204は、予め黒補正データ生成・格納部205が格納し保持している黒補正データDbを読み出し、読取デバイス2から出力された画像信号D1から当該黒補正データDbを減算する黒補正を行う。黒補正後の画像信号D2は、端部位置検出部206に出力される。
【0050】
D2(n)=D1(n)-Db(n) ・・・(1)
ただし、nは画素番号とする。
【0051】
なお、式(1)は、画素毎に黒補正データDbを減算する計算式となっているが、複数の画素毎に生成する方式など、黒補正データの生成方式に応じて計算式を適宜変形してもよい。
【0052】
黒シェーディング補正部204には、制御部203から制御信号m2が入力される。上記黒補正の処理は、制御信号m2により実行するか、実行しないかを適宜切り替え可能にしていてもよい。
【0053】
端部位置検出部206は、CPU202から制御信号m4により検出開始命令を受信すると、黒シェーディング補正部204から入力した画像信号D2を用いてエッジ位置の検出処理を行い、その検出結果(位置検出結果)d2をCPU202に通知する。
【0054】
CPU202は、端部位置検出部206の検出結果d2に基づいて、搬送路a上の基準位置との差分量を抽出し、その記録媒体1の搬送位置情報d3を搬送位置制御部207に出力する。
【0055】
搬送位置制御部207は、CPU202からの搬送位置情報d3に従い、位置の調整を行う制御信号m5で搬送位置調整ユニット208の駆動を制御する。
【0056】
搬送位置調整ユニット208は、制御信号m5による制御により、搬送路a上の記録媒体1の主走査方向(X)のずれを記録媒体1の位置調整により基準位置に補正する。この補正により、基準位置へと補正された記録媒体1が二次転写ローラ107へ送られるようになる。なお、搬送位置調整ユニット208は、位置検出ユニット200に備えてもよいし、印刷装置100に備えてもよい。印刷装置100に備えた場合、位置検出ユニット200の搬送位置制御部207により搬送位置調整ユニット208を制御できるように構成する。
【0057】
図6は、読取デバイス2の構成ブロックの一例を示す図である。
図6に示す読取デバイス2は、主に、センサ301と、A/D変換部302と、ゲインアンプ303と、光源304と、光源駆動部305とを有する。
【0058】
センサ301は、記録媒体1などの読取対象Aからの反射光を各画素でフォトダイオードにより受光し、各画素で光電変換した読取値をアナログ信号出力するセンサである。
【0059】
A/D変換部302は、センサ301からアナログ信号出力された各画素の読取値をデジタル信号に変換する回路である。
【0060】
ゲインアンプ303は、A/D変換部302によるデジタル変換後の信号レベルを増幅または減衰により調整するゲインアンプである。
【0061】
光源304は、読取対象Aに照明光を照射する光源である。
【0062】
光源駆動部305は、光源304の点灯や、消灯や、発光量などの調整を行うための回路である。
【0063】
図6に示すように、制御信号m1には、センサ301、光源駆動部305、およびゲインアンプ303の各制御信号が含まれている。
【0064】
センサ301の制御信号は、任意周期で駆動・制御するためのライン同期信号(≒光蓄積時間)である。
【0065】
光源駆動部305の制御信号は、点灯と消灯のタイミングを示す信号や、発光量を示す信号である。
【0066】
ゲインアンプ303の制御信号は、ゲインアンプの増幅・減衰量を設定する制御信号である。
【0067】
なお、
図6には、ゲインアンプ303をA/D変換部302の後段に配置した構成のものを示しているが、センサの出力信号量を調整(増幅・減衰)できる構成であればよい。従って、ゲインアンプ303をA/D変換部302の前段に配置し、アナログ信号量を調整する構成としてもよい。
【0068】
イメージセンサの出力信号をゲインアンプ303等によって増幅することにより、より高濃度(低反射率)の記録媒体1への対応が可能となり、より一層、信頼性の高い位置検出が実現できる。
【0069】
また、センサの単位時間あたりの受光量を調整する方法として、光源(例えばLED)に流れる電流値の調整や、ライン同期信号周期(光蓄積時間)の調整や、ライン同期信号の1ライン周期内の点灯時間(光蓄積時間)の調整等の方式が挙げられる。
【0070】
信号出力を高めるという意味では、ゲイン(増幅率)を同じ信号出力比となるように変更する方式も考えられるが、蓄積時間を2倍にすると信号出力が2倍になり、信号出力に含まれる光ショットノイズ成分がルート2倍になる。また、ゲインを2倍にすると信号出力が2倍になり、信号出力に含まれる光ショットノイズ成分が2倍になることが一般的に知られている。つまり、画像データのS/N比を極力損なわずにイメージセンサの出力信号量を調整するには、信号出力に含まれるノイズ成分まで同じ増幅率で増幅してしまうゲインアンプを用いるより、光源の発光量や、センサの光蓄積時間などで信号出力量を調整することが望ましい。このため、ゲインよりも光源の発光量やセンサの光蓄積時間などの調整を優先的に実施する。これにより、信号品質(S/N比)の劣化をできるだけ損なわずに、イメージセンサ出力信号量の調整を行うことが可能となる。
【0071】
図7は、媒体情報格納部201に格納されている記録媒体情報d1の一例を示す図である。
図7には、記録媒体1の種類を高濃度媒体と低濃度媒体の2種類に分類し、それぞれに対応する動作条件を決める設定、この例では黒シェーディング補正の実施有無と、光蓄積時間と、ゲインの設定値とを、一覧で示している。
【0072】
多種多様な記録媒体が存在する中、例えば、赤、青、緑、黒等の色紙(特に高濃度色)や、光透過率の高い(反射率の低い)OHPシート、クリアファイル/ホルダー等の記録媒体が、プロダクションプリンティングなどの印刷市場において、印刷品質向上の要求が年々高まっている。色紙の中でも特に黒紙、OHPシート、鏡面反射成分(正反射成分)が支配的で拡散反射成分が乏しい光沢用紙/メタリック用紙などの品質向上の要求は高い。このような記録媒体がエッジ検出の対象となる場合、光源から照射される光の波長や、記録部材の材質や色などの記録媒体に起因する条件によっては記録媒体からの反射光が不十分となる。特に、黒紙やOHPシートなどは、その反射光量が非常に乏しく、センサで十分な信号出力が得られない。このため、
図7に示す例では、黒紙やOHPシート等を「高濃度媒体」に分類し、一般的な白紙等を「低濃度媒体」に分類している。
【0073】
図7に示す設定では、黒シェーディング補正を「実施する(ON)」設定と、黒シェーディング補正を「実施しない(OFF)」設定とを示している。「低濃度媒体」では、暗出力に比べて明出力の出力レベルが非常に高く、閾値によるエッジ位置の検出精度が高い。このため、「低濃度媒体」が選択された場合に黒シェーディング補正を「実施しない(OFF)」設定とする。
【0074】
また、「低濃度媒体」が選択されている場合、主に白紙などにおいては、読取デバイス2からの明出力が暗出力に比べて非常に高くエッジ位置を検出する上で必要十分であることが期待できる。このため、「低濃度媒体」の設定では、蓄積時間2(200μsec)と、ゲイン2(1倍)に示すように、低い値を設定している。
【0075】
一方、「高濃度媒体」が選択されている場合には、読取デバイス2からの明出力が位置検出する上で必要十分でない可能性がある。このため、「高濃度媒体」の設定では、蓄積時間1(600μsec)、ゲイン1(2倍)に示すように高い値を設定している。すなわち、「高濃度媒体」が選択されると、「低濃度媒体」が選択された場合に比べ、信号出力量が6倍になるように動作することを意味する。
【0076】
なお、
図7に示す設定は一例であり、動作条件を決める設定を、当該設定に限定するものではない。使用する読取デバイス2の仕様に基づいて適切な設定を決定すればよい。
【0077】
図8は、位置検出ユニット200による位置調整のための動作フローの一例を示す図である。
図8に示すように、読取デバイス2に電源が供給された後(S801)、CPU202は、ユーザーからの印刷ジョブ開始命令を受けるまで、待機状態をとる(S802:No判定)。
【0078】
印刷ジョブの開始が操作キーなどにより確定されると(S802:Yes判定)、CPU202は、当該ジョブにおいて使用する給紙部109と、給紙部109にセットされる記録媒体1に関する情報(記録媒体情報d1)を、媒体情報格納部201から取得し、制御部203へ通知する(S803)。
【0079】
制御部203は、CPU202から通知された記録媒体情報d1から、記録媒体1が高濃度媒体か否かを判定する(S804)。以下において、制御部203は、記録媒体情報d1の黒シェーディング補正の機能がONの場合、第1のモードで動作し、記録媒体情報d1の黒シェーディング補正の機能がOFFの場合、第2のモードで動作するものとする。
【0080】
制御部203は、記録媒体1が高濃度媒体であると判定した場合(S804:Yes判定)、制御信号m1により読取デバイス2に蓄積時間1(ライン同期信号周期)とゲイン1を設定する(S805、S806)。
【0081】
また、制御部203は、制御信号m2により黒シェーディング補正部204の機能をONに設定する(S807)。
【0082】
そして、制御部203は、制御信号m3により黒補正データ生成・格納部205にて黒補正データを生成させる(S808)。このタイミングでは、光源304が消灯状態であるため、読取デバイス2から出力される画像信号D1は、各主走査位置の暗出力を示すデータとなる。黒補正データ生成・格納部205は、その主走査位置の暗出力を示すデータを黒補正データDbとして保持する。
【0083】
一方、制御部203は、記録媒体1が高濃度媒体でない低濃度媒体と判定した場合(S804:No判定)、制御信号m1により読取デバイス2に蓄積時間2(ライン同期信号周期)とゲイン2を設定する(S809、S810)。
【0084】
また、制御部203は、制御信号m2により黒シェーディング補正部204の機能をOFFに設定する(S811)。
【0085】
なお、ステップS808やステップS811に示す処理は、給紙部109によって給紙された記録媒体1が、エッジの位置検出の実行位置(エッジ位置検出実行位置)まで搬送されるまでの間に実行する。
【0086】
ステップS808やステップS811の処理後、制御部203は、制御信号m1により読取デバイス2の光源304を点灯する(S812)。この点灯から、読取デバイス2から読取対象の反射光成分である明出力を含む画像信号D1が出力される。黒シェーディング補正部204から端部位置検出部206に出力される画像信号D2は、黒シェーディング補正部204の機能がONの場合、黒補正データ生成・格納部205が保持している黒補正データDbを減算した明出力成分の出力となる。また、黒シェーディング補正部204の機能がOFFの場合は、読取デバイス2が出力する画像信号D1、つまり(暗出力成分+明出力成分)の出力となる。
【0087】
CPU202は、記録媒体1が上記エッジ位置検出実行位置に搬送されると端部位置検出部206からエッジ位置の検出結果d2を取得する(S813)。具体的に、CPU202は、記録媒体1が上記エッジ位置検出実行位置に搬送されたタイミングで端部位置検出部206に制御信号m4により検出開始命令を送信する。端部位置検出部206は、検出開始命令の受信により、そのときに入力される画像信号D2に基づいて記録媒体1のエッジ位置の検出を行い、その検出結果d2をCPU202に通知する。
【0088】
CPU202は、端部位置検出部206によるエッジ位置の検出が完了すると、点灯した光源304を消灯する(S814)。
【0089】
そして、CPU202は、検出結果d2が示すエッジ位置から、搬送上の基準位置との差分量を抽出し、当該差分量を搬送位置情報d3として搬送位置制御部207に通知する(S815)。
【0090】
この搬送位置情報d3に基づき、搬送位置制御部207が制御信号m5により搬送位置調整ユニット208を制御し、記録媒体1の主走査方向のずれを基準位置に調整する(S816)。これにより、基準位置に調整された状態で記録媒体1が二次転写ローラ107に搬送されることになる。
【0091】
続いて、CPU202は、記録媒体1の次ページの記録媒体1が存在するか否かを判定する(S817)。次ページの記録媒体1が存在しない場合は(S817:No判定)、当該ジョブを終了する。次ページの記録媒体1が存在する場合は(S817:Yes判定)、S803に移行して同様にエッジ位置の調整処理を行う。
【0092】
図9は、高濃度(低反射率)の記録媒体で黒補正データによる補正(黒補正)を実施した場合における検出精度向上の効果を説明するための図である。
図9(a)は、高濃度(低反射率)の記録媒体で黒補正を実施しなかった場合の図(効果の比較図)であり、
図9(b)は、高濃度(低反射率)の記録媒体で黒補正を実施した場合の図である。
【0093】
図9(a)では、前にも述べたように、暗出力のばらつきにより、閾値Thを適切に選択しても記録媒体1の真のエッジ位置を検出することができず、暗出力の値が大きい位置で誤検出する。
【0094】
図9(b)は、黒補正の実施により、暗出力成分が除去され、記録媒体1からの反射光成分である明出力のみが信号出力成分として残る。したがって、記録媒体1以外の出力値を低く抑えることができ、また、記録媒体1において主走査方向の信号出力変動も小さく抑えることができる。この場合、真のエッジ位置のみで出力差が大きく変化するので、閾値Thの設定範囲を広げることができ、常に記録媒体1の真のエッジ位置=端部検出位置という結果を得ることができる。
【0095】
なお、高濃度媒体とは異なる低濃度媒体を対象とする場合には、暗出力に比べて明出力の出力値が非常に高い。このため、黒補正データの生成と黒補正の実行を行わなくても真のエッジ位置を精度良く検出することができる。記録媒体1の濃度に合わせて黒補正についての動作条件を異ならせることにより、黒補正に要する処理時間の短縮を図ることができる。印刷市場、特にプロダクションプリンティング分野において、印刷速度(生産性)は非常に重要な要素であり、黒補正についての動作条件を変える設定が印刷速度向上に寄与する。
【0096】
以上のように、本実施の形態では、様々な種類の記録媒体、特に黒紙やOHPシート等の様な高濃度(低反射率)用紙に代表されるイメージセンサでの受光量が乏しい記録媒体についても、エッジ位置を高精度に検出することができるようになる。印刷市場では、絶対的に拡散反射率が乏しい黒紙や透明紙(OHPシート、クリアファイル/ホルダーなど)が多用されるため、このような記録媒体を対象にして上述の第1のモードを適用することにより、高精度、高信頼性の位置検出が実現できる。
【0097】
因みに、固定パターンノイズの影響による検出精度悪化を回避する手段として、予め記録媒体のサイズを把握しておき、搬送路構成の設計上、発生し得る主走査方向の搬送位置のずれ量に基づいて、記録媒体の端部位置検出範囲(主走査範囲)を制限する方法が考えられる。このような手法によって、イメージセンサの暗出力に含まれる固定パターンノイズの影響を、ある程度、軽減することは可能かも知れない。
【0098】
しかしながら、上記したとおり、固定パターンノイズは読取デバイス毎に異なる性質を持つため、主走査方向の信号出力分布(主走査分布)は、読取デバイス個体毎にどのようになるかは不明である。よって、端部位置検出範囲を制限したところで、端部位置検出範囲内において固定パターンノイズの影響を受けない保証はない。
【0099】
反面、本発明では、暗出力がいかなる主走査分布であっても、あらかじめ暗出力に基づいて黒補正データを生成・保持することにより、読取デバイス個体毎に暗出力の主走査分布(固定パターンノイズ)を把握し、端部位置検出の際に黒補正データを減算して除去している。したがって、暗出力の主走査分布、および、その個体差の影響を受けることは無く、高信頼・高精度な位置検出精度を確保することが可能であり、位置検出精度の向上という点において、より優れた手法であることは言うまでもない。
【0100】
なお、信号出力量を増やす場合、暗出力を再取得して黒補正データを生成することが望ましい。出力信号量を増やす方法として次の2つが挙げられるが、黒補正データを再取得した暗出力から生成しない場合に弊害を招く可能性がある。
【0101】
(1)出力信号量を増やす方法の一つに読取デバイス2内のセンサが受光する受光量を調整(拡大)する方法がある。この場合、例えば光蓄積時間の拡大によって、それに比例してセンサに流れる暗電流も増加する。このため、結果的に蓄積時間変更前後で固定パターンノイズが変化し、蓄積時間変更前後で暗出力が異なる値を示すことになる。つまり、蓄積時間を変更する場合において、変更前の暗出力で生成した黒補正データは、変更後のものに対応しない。蓄積時間変更前後で同じ黒補正データを使用すると、検出精度劣化(または誤検出)という弊害を招いてしまう。
【0102】
(2)出力信号量を増やす方法の他の一つに、センサからの出力信号をゲインアンプによって増幅する方法がある。この場合も、増幅前後で同じ黒補正データを使用すると同様の弊害が考えられる。この弊害について
図10を用いて説明する。
【0103】
図10は、読取デバイス2の出力信号量の調整によって生じる上記弊害の説明図である。
図10には、ゲインアンプにより増幅率を1倍から2倍に変更したときの出力成分(暗出力と明出力)の変化の様子を示している。
図10(a)は増幅率が1倍のときのものであり、
図10(b)は増幅率が2倍のときのものである。
【0104】
図10(a)および
図10(b)から、ゲインアンプにより増幅率を1倍から2倍に変更すると、全画素の出力値が2倍になることが分かる。例えば、
図10X(a)に示すように画素番号=Naの主走査全画素中のピーク値=Aが、2倍の増幅により、
図10X(b)に示すようにピーク値=2Aとなる。
【0105】
このようなケースにおいて、増幅率2倍のときに、増幅率1倍のときの暗出力で生成した黒補正データで黒補正(暗出力成分の除去)を実施すると、増幅率2倍のときの暗出力が完全には除去しきれず、検出精度劣化という弊害を招く可能性がある。
【0106】
従って、読取対象とする記録媒体(紙種)に応じて読取動作条件を変化させる場合、その都度、暗出力を再取得し、その再取得した暗出力に基づいて黒補正データを再生成する。こうすることにより、一層の検出精度の向上が期待できる。
【0107】
(変形例1)
第1の実施の形態の変形例1として、記録媒体情報d1(
図7参照)と、そのときの動作フロー(
図8参照)の変形例について示す。なお、以下では、主に第1の実施の形態と異なる部分について説明し、共通する部分については同一の番号を付すなどして説明を適宜省略するものとする。
【0108】
図11は、変形例1にかかる記録媒体情報d1の設定を示す図である。変形例1にかかる記録媒体情報d1の設定は、「低濃度媒体」についての黒シェーディング補正の設定を「実施しない(OFF)」から「実施する(ON)」に変更している点で異なる。つまり、変形例1では、記録媒体の種類によらず全ての種類に対して黒補正を実施する。
【0109】
図12は、変形例1にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、制御部203が、
図8のステップS804に対応するステップS904で低濃度媒体と判定(S904:No判定)し、
図8のステップS809とステップS810とに対応するステップS907とステップS908で「蓄積時間2」と「ゲイン2」とを設定した後において、
図8のステップS807に対応するステップS909の処理に移行して
図8のステップS808に対応するステップS910の処理を行ってから
図8のステップS812に対応するステップS911の処理を行うという流れが異なる。
【0110】
すなわち、制御部203は、低濃度媒体において、「蓄積時間2」と「ゲイン2」の設定後、制御信号m2により黒シェーディング補正部204の機能をONに設定して黒補正データを生成し、それから、光源304を点灯する。
【0111】
その他のフローは、第1の実施の形態の動作フロー(
図8参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0112】
このように変形例1では記録媒体1の種類に依らず黒補正データを生成し、黒補正を実施する。ただし、暗出力に影響する蓄積時間やゲインの設定が完了した後に行うようにしている。
【0113】
つまり、変形例1では黒補正データの生成時の動作条件を記録媒体1の種類に応じて異ならせているため、常に適切な黒補正データを生成することができる。従って、高濃度媒体のみならず、低濃度媒体に対してもより一層の検出精度の向上が期待できる。
【0114】
(変形例2)
変形例1では、低濃度媒体および高濃度媒体において共に黒補正を実施する設定とし、黒補正データの生成時の動作条件として低濃度媒体と高濃度媒体とで蓄積時間を異ならせるものについて示した。変形例2では、蓄積時間の変更に応じて取得ライン数を変更する例を示す。なお、以下では、主に第1の実施の形態および変形例1と異なる部分について説明し、共通する部分については同一の番号を付すなどして説明を適宜省略するものとする。
【0115】
図13は、蓄積時間(ライン同期信号周期)の拡大に伴う黒補正データ生成期間の長期化についての説明図である。黒補正データの生成にあたっては、第1の実施の形態で説明したように、例えば、制御部203が有するレジスタに予め画像信号の取得ライン数を設定しておき、制御部203が制御信号m3により、設定されているライン数に応じた制御信号(黒補正データ生成領域信号)をアサートする。
【0116】
変形例1の記録媒体情報d1(
図11参照)の設定に示すように、蓄積時間2(200μs)から蓄積時間1(600μs)にライン同期信号周期を拡大したとする。この場合、
図13(a)に示すように、読取デバイス2から有効画素群の出力信号を取得するまでの時間が長期化する。例えば、
図13(a)では、蓄積時間2から、蓄積時間2の3倍の蓄積時間の蓄積時間1へ変更すると、有効画素群の出力に3倍の時間がかかることを示している。従って、生成ライン数が固定で蓄積時間が変更されると、黒補正データ生成領域信号が長期化する。
【0117】
図13(b)には、生成ライン数と黒補正データ生成時間との対応関係を示している。
図13(b)に示すように、例えば黒補正データの生成ライン数が60ラインに固定化されていると、蓄積時間2から蓄積時間1への変更に伴い、黒補正データ生成領域信号がライン同期信号周期に比例して長期化、つまり黒補正データ生成時間が長期化する。
【0118】
そこで、蓄積時間2から蓄積時間1への変更に伴い、生成ライン数を変更し、黒補正データ生成時間を短縮する。
【0119】
図13(c)には、生成ライン数を変更した後の黒補正データ生成時間の関係を示している。この例では、生成ライン数を60ラインから1/3の20ラインに変更した場合について示している。このように生成ライン数を変更することにより、蓄積時間を蓄積時間2から蓄積時間1に拡大した場合においても黒補正データ生成時間を短縮し、この例では蓄積時間の変更前後において一定(同等)に保つことが可能になる。つまり、生成ライン数の変更は、連続印刷ジョブにおいては、生産性の向上の一要因となり得る。
【0120】
図14は、変形例2にかかる記録媒体情報d1の設定を示す図である。
図14に示す記録媒体情報d1には、黒補正データ生成時間(生成ライン数)の設定を更に含めている点で他と異なる。
【0121】
図14に示す設定例は、
図13に基づく設定であり、蓄積時間1と蓄積時間2との比(3:1)に従い、生成時間1と生成時間2とを比(1:3)となるように20ラインと60ラインとに設定している。なお、生産性低下を招かなければ、生成時間を必ずしも蓄積時間の比に合わせる必要はなく、例えば、生成時間1と生成時間2とを比(1:2)などの関係になるように設定にしてもよい。
【0122】
図15は、変形例2にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、制御部203が、
図12のステップS906とステップS908にそれぞれ対応するステップS1306とステップS1309の後に黒補正データ生成時間を設定するステップ(それぞれステップS1307とステップS1310)を加えた点が異なる。
図15に示す例では、高濃度媒体に対して黒補正データ生成時間を「生成時間1」に設定し(S1307)、低濃度媒体に対して黒補正データ生成時間を「生成時間2」に設定する(S1310)。
【0123】
その他のフローは、変形例1の動作フロー(
図12参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0124】
このように変形例2では記録媒体1の種類(高濃度/低濃度)に応じて黒補正データ生成時間(生成ライン数)を適切に切り替えることができるようにした。この切り替えにより、連続印刷時における生産性と、高い位置検出精度との両立が可能になる。
【0125】
(変形例3)
これまでは、記録媒体1の種類を高濃度と低濃度とに分類した例を示したが、分類を高濃度と低濃度の2種類に限定するものではない。分類は、3種類以上であってもよい。変形例3では、その一例として、3種類(高濃度、中濃度、低濃度)に分類した場合の例を示す。
【0126】
図16は、変形例3にかかる記録媒体情報d1の設定を示す図である。変形例3にかかる記録媒体情報d1の設定は、「中濃度媒体」についての設定を設けている点で変形例1と異なる。中濃度媒体とは、例えば、黒色以外の色紙(赤、青、黄、緑・・・など)、特定の波長域において比較的高い分光反射率(低濃度)を示す記録媒体を指している。
【0127】
図16に示す中濃度媒体の設定には、低濃度媒体との差分として、蓄積時間のみ高濃度媒体と同じ値に設定したものを示している。なお、
図16に示す高濃度媒体、中濃度媒体、および低濃度媒体の各設定は一例であり、各設定は、読取デバイス2の仕様と読取対象とする記録媒体1の濃度との関係などから適切設定してよい。
【0128】
図17は、変形例3にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、制御部203が、
図12のステップS904に対応するステップS1704のNo判定、つまり高濃度媒体でないという判定の後に、中濃度媒体かの判定(S1705)と、中濃度媒体の設定処理(S1708とS1709)とを加えた点が異なる。
【0129】
本動作フローにおいて、制御部203は、ステップS1705において中濃度媒体と判定(Yes判定)すると、制御信号m1により、読取デバイス2に低濃度媒体の設定として蓄積時間1とゲイン2とを設定する(S1708、S1709)。なお、制御部203は、ステップS1705において中濃度媒体ではないと判定(No判定)、つまり低濃度媒体と判定した場合、
図12のステップS907とステップS908の低濃度媒体における設定をステップS1710とステップS1711において行う。
【0130】
高濃度媒体、中濃度媒体、および低濃度媒体のいずれにおいても、蓄積時間とゲインの設定後は、
図12のステップS909に対応するステップS1712において黒補正の機能がONに設定される。
【0131】
その他のフローは、変形例1の動作フロー(
図12参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0132】
このように変形例3では記録媒体1の種類(高濃度/中濃度/低濃度)に応じて設定を切り替えることができるようにした。この切り替えにより、記録媒体1の種類に応じたきめ細やかな処理が可能になる。
【0133】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、画像信号D2を端部位置検出部206にて取り込み、端部位置検出部206が所定の閾値を越える画素番号を主走査方向(X)におけるエッジ位置として検出する構成について示した。
【0134】
ところで、一般的に、CIS(密着型イメージセンサ)に代表される読取デバイスでは、主走査方向(X)に分光反射率が均一である読取対象を読み取った際に得られる出力信号量は、主走査方向(X)において変化する特性を示すことで知られている。このような主走査方向(X)における変化(以下、主走査照度分布と呼ぶ)が発生する要因としては、LEDなどの光源を入射させて主走査方向(X)に渡り光を読取対象に照射する導光体の形状や、導光体とその他周辺部品と組立位置関係、読取対象との位置関係、センサ自身の感度特性ばらつき等、様々である。
【0135】
第2の実施の形態では、記録媒体1のエッジ位置の検出における第2の課題を示し、第2の課題を解決するための具体的な実施の形態について示す。
【0136】
図18は、記録媒体1のエッジ位置の検出における第2の課題について説明するための図である。
図18には、主走査照度分布特性が悪い読取デバイス(ケース1)と、これに対して主走査照度分布特性が良好な読取デバイス(ケース2)についての、エッジ位置近辺のセンサ出力の比較図を示している。なお、
図18に示すケース1とケース2との比較図において、記録媒体1の分光反射率は主走査方向に均一で、読取デバイス2と記録媒体1のエッジ1aとの相対位置関係はケース1とケース2とにおいて同じものとする。
【0137】
図18(a)には、ケース1とケース2のそれぞれについて、主走査方向(X)の照度分布図(H11、H12)と、記録媒体1の搬送位置を示す搬送位置図(H21、H22)と、読取デバイス2からの各画素の出力を示す出力分布図(H31、H32)とを対応付けて示している。
【0138】
ケース1では、主走査照度分布特性が悪いため、照度分布
図H11は、主走査方向(X)において原稿面照度にばらつきがある。一方、ケース2では、主走査照度分布特性が良好なため、照度分布
図H12は、主走査方向(X)において原稿面照度が安定している。
【0139】
出力分布
図H31、H32が示すように、巨視的に見れば、ケース1とケース2のいずれの場合も記録媒体1のエッジ1aの位置近辺でセンサ出力が同様に大きく変化しているが、微視的に見ると両者には明確な差異がある。
【0140】
図18(b)には、ケース1およびケース2のエッジ位置近辺の枠300のセンサ出力の拡大図を示している。
図18(b)において、実線のグラフがケース1のセンサ出力カーブを示し、一点鎖線のグラフがケース2のセンサ出力カーブを示している。
【0141】
ケース1の照度分布
図H11に示すように、搬送位置
図H21の記録媒体1のエッジ位置1aの近傍では、照度分布に大きな変化がある。このため、
図18(b)に示すケース1のセンサ出力カーブは、エッジ位置1aの近傍において傾きが緩やかになる。
【0142】
一方、ケース2については、照度分布
図H12に示すように、搬送位置
図H21の記録媒体1のエッジ位置1aの近傍で、照度分布の変化が微小で安定している。このため、
図18(b)に示すケース2のセンサ出力カーブは、エッジ位置1aの近傍においてケース1よりも傾きが急になる。
【0143】
図18(b)に示すエッジ位置近傍の出力カーブの違いから、主走査方向(X)において所定の閾値(A/2)を越える主走査位置が厳密には異なることが明らかである。従って、記録媒体1の真のエッジ位置1aに対する位置検出結果がケース1とケース2との比較に示すように読取デバイスに応じて異なるという課題がある。このような課題は、読取デバイス2の信号出力が比較的高い低濃度媒体に対して大きな影響を与える。
【0144】
図19は、第2の実施の形態にかかる位置検出ユニット200の構成の一例を示す図である。以下、第1の実施の形態と共通する部分については同一の番号を付すなどして説明を省略し、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。
【0145】
第2の実施の形態にかかる位置検出ユニット200においては、更に、白シェーディング補正部211と白補正データ生成・格納部212とを有する。白シェーディング補正部211と白補正データ生成・格納部212とは「白補正処理部」に相当する。
【0146】
白補正データ生成・格納部212は、CPU202からの制御信号m6により任意のタイミングを起点に所定ライン数分の画像信号D2を取得し、その取得した画像信号D2に基づいて白補正データDwを生成する。また、白補正データ生成・格納部212は、RAMを備えており、生成した白補正データを当該RAMに格納して保持する。
【0147】
白補正データ生成・格納部212は、例えば、読取デバイス2の対向に位置する基準濃度部材(主走査全域に均一濃度の部材)に光を照射して得られる画像信号を所定ライン数分だけ取得し、画素毎に所定ライン数分の平均値や最頻値を演算する等でランダムノイズ成分を除去するなどして白補正データDwを生成する。なお、この方式は一例であり、白補正データDwの生成方式を当該方式に限定するものではない。
【0148】
白シェーディング補正部211は、白シェーディング補正処理(「白補正処理」に相当)を実行する。例えば、白シェーディング補正部211は、予め白補正データ生成・格納部212に保持されている白補正データDwを読み出し、黒シェーディング補正部204から出力される画像信号D2に対して以下の式(2)で示される演算を実行し、白シェーディング補正された画像信号D3を後段の端部位置検出部206に出力する。
【0149】
D3(n)=D2(n)/Dw(n)×α(nは画素番号)・・・(2)
【0150】
ここで、αは補正係数であり、例えば255(8bit)や、1023(10bit)など、ハードウェア構成に応じたデジタル値として表現できれば、特に限定されない。
【0151】
なお、式(2)に示す白シェーディング補正の演算では、画像信号D2に対して白補正データDwを画素毎に演算するが、白シェーディング補正の演算方式を画素毎の演算方式に限定するものではない。例えば、白補正データDwを複数画素毎に生成・保持し、複数画素毎に白シェーディング補正の演算を行ってもよい。
【0152】
図20は、第2の実施の形態にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、第1の実施の形態の変形例3にかかる動作フロー(
図17参照)において、光源点灯のステップS1814(
図17のステップS1714に対応)の直後にCPU202から制御信号m6が出力されて白補正データ生成・格納部212が白補正データを生成および保持する処理を加えている点が異なる。
【0153】
本動作フローでは、光源点灯(S1814)の後に、CPU202から制御信号m6が出力され、白補正データ生成・格納部212が白補正データを生成および保持する(S1815)。その後、CPU202から制御信号m4が出力され、端部位置検出部206が、白シェーディング補正部211から出力される画像信号D3を対象にエッジ位置を検出する(S1816)。
【0154】
その他のフローは、変形例3の動作フロー(
図17参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0155】
上記課題を解決するために、主走査方向(X)の全域に渡って主走査位置毎に光量を調整し、原稿面照度を均一化することは技術的には可能であるが、膨大なコストアップを招きかねず現実的な手段とは言えない。つまり、読取デバイス毎に異なる主走査照度分布を、光量調整やゲイン調整で補正することはできない。このように第2の実施の形態では、読取デバイス2が個体毎に持つ主走査照度分布(照明ムラ)を、白シェーディング補正を実施することで除去するようにした。このため、センサ感度のばらつきに加えて主走査照度分布(照明ムラ)の課題も解決することができ、記録媒体の位置検出精度のより一層の向上が期待できる。
【0156】
(第2の実施の形態の変形例1)
第2の実施の形態の変形例1として、記録媒体1の種類(濃度)に応じて補正係数αの設定を切り替えるための構成について説明する。ここでは、補正係数αの設定を切り替えるための構成として、記録媒体情報d1の設定例と、そのときの動作フローとを示す。また、補正係数αの切り替えを可能にした場合の効果について説明する。
【0157】
図21は、第2の実施の形態の変形例1にかかる記録媒体情報d1の設定を示す図である。第2の実施の形態の変形例1にかかる記録媒体情報d1の設定は、「補正係数α」の設定を設けている点で第1の実施の形態の変形例3と異なる。この例では、記録媒体1の濃度に応じて補正係数αの設定を変えているものを示している。
【0158】
図22は、補正係数αの設定変更による効果の説明図である。ここでは、例えば8bit階調(0~255digit)のデジタル信号量における補正係数αと閾値との間の関係を示す。
【0159】
読取デバイス2の仕様(イメージセンサの受光感度特性、光源光量など)によっては、蓄積時間(ライン同期信号周期)調整やゲインアンプ増幅率調整だけでは記録媒体1のエッジ位置で閾値を越える十分な信号出力が得られないケースも往々にして考えられる。
【0160】
例えば、
図22に示すように、白シェーディング補正時の補正係数αの設定値を「255」とした場合、記録媒体1の領域の信号出力(デジタル出力)は70digitであり、閾値128digitに到達しない。この場合、記録媒体1のエッジ位置を検出することはできない。
【0161】
これに対して、補正係数αの設定を「511(255の約2倍)」に変更する。この場合、記録媒体1の領域の信号出力(デジタル出力)は70digitの2倍の140digitを確保することができ、その結果、記録媒体1のエッジ位置を検出することができるようになる。
【0162】
このように、補正係数αの設定も記録媒体1の種類(濃度)に応じて適切に設定値を切り替えることにより、特に高濃度媒体が選択されている場合に、その効果が発揮される。
【0163】
図23は、第2の実施の形態の変形例1にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、第2の実施の形態の動作フロー(
図20参照)において、ステップS1807、ステップS1809、ステップS1811のそれぞれの直後に、それぞれの補正係数αを設定する処理(それぞれ、ステップS2301、ステップ2302、ステップ2303)を加えた点で異なる。この処理により、記録媒体1の濃度に応じて白シェーディング補正部211に適切な補正係数αが設定される。
【0164】
その他のフローは、第2の実施の形態の動作フロー(
図20参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0165】
このように、第2の実施の形態の変形例1では、記録媒体の種類に応じて白シェーディング補正の演算時に使用する補正係数αの設定値を切り替える。これにより、画像信号出力の増幅・減衰(調整)範囲を拡大することが可能になり、記録媒体1の対応濃度範囲が拡大する。
【0166】
(第2の実施の形態の変形例2)
第2の実施の形態の変形例2として、システムへの給電が遮断(OFF)されても情報(データ)を記憶可能な不揮発性メモリを備える構成のものを示す。
【0167】
図24は、第2の実施の形態の変形例2にかかる位置検出ユニット200の構成の一例を示す図である。以下、第2の実施の形態の変形例1と共通する部分については同一の番号を付すなどして説明を省略し、第2の実施の形態の変形例1と異なる部分について説明する。
【0168】
第2の実施の形態の変形例2にかかる位置検出ユニット200においては、更に、不揮発性メモリ222を有する。不揮発性メモリ222は、例えばシリアルFlashROMなど安価で高容量な情報記憶媒体などが挙げられる。
【0169】
不揮発性メモリ222を設けることにより、白補正データ生成・格納部212は、画像信号D2に基づいて生成し、内部RAMに格納した白補正データDwを、CPU202からの制御信号m6による実行命令を受けて不揮発性メモリ222にライトすることができる。
【0170】
また、白補正データ生成・格納部212は、CPU202からの制御信号m6による実行命令を受けて、不揮発性メモリ222に格納された白補正データDwをリードして、内部RAMに格納(ライト)することもできる。
【0171】
図25は、第2の実施の形態の変形例2にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、第2の実施の形態の変形例1にかかる動作フロー(
図23参照)において、不揮発性メモリ222からの白補正データのリードの処理(S2501)を加えている点と、白補正データの生成処理(S1815)を削除している点とが異なる。第2の実施の形態の変形例2にかかる位置検出ユニット200は、給電遮断後も白補正データを保持し続けられる不揮発性メモリ222を有する。このため、位置検出ユニット200は、予め生成した白補正データを不揮発性メモリ222からリードして利用することができ、通常印刷動作時における白補正データの生成処理を省略することができる。
【0172】
その他のフローは、第2の実施の形態の変形例1の動作フロー(
図23参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0173】
第2の実施の形態の変形例2では、給電遮断後においても白補正データを保持する不揮発性メモリを有するため、例えば、製品の工場出荷時に基準濃度部材を読み取って生成した白補正データを不揮発性メモリに格納・保持するようにすることもできる。この場合には、通常の印刷動作時において、不揮発性メモリに格納されている白補正データを使用して白シェーディング補正を行うことが可能になる。従って、読取デバイス2の対向位置に基準濃度部材を常時設置しておく必要がなくなり、装置全体の低コスト化、および、省スペース化の効果が得られる。更には、通常の印刷動作時において、白補正データの生成に要する時間を省くことができるため、連続印刷時における生産性と、高い位置検出精度とを両立することが可能となる。
【0174】
(第2の実施の形態の変形例3)
読取デバイス2の周辺のメカ構成次第では、記録媒体1の領域外の主走査位置において、本来不要な反射光(例えば、機内において光源から出射される光線が周辺メカ部品間で乱反射して生じる迷光成分)がイメージセンサに入射する場合が考えられる。第2の実施の形態の変形例3では、この不要成分を考慮した場合の変形例について示す。
【0175】
図26は、記録媒体1の領域外の不要成分による誤検出の発生のケースについて説明する図である。
【0176】
イメージセンサへの不要成分の入射は、例えば機内において、光源から出射された光線が周辺メカ部品間で乱反射し、その迷光成分が入射するケースがある。また、読取デバイス2の対向位置にある黒遮光・吸光部材の反射率を0%にすることは現実的に困難であり、その不完全性から、イメージセンサへ僅かに反射光が入射するケースがある。
【0177】
従って、特に記録媒体1が高濃度である場合、記録媒体1からの反射光による信号出力成分と閾値との関係性次第では、
図26に示すように記録媒体1の領域外において閾値を超えた位置をエッジ位置として誤検出する可能性があり、不要成分の存在を無視できない。
【0178】
図27は、記録媒体1の領域外の不要成分の影響を除去するメカニズムを示す説明図である。
図27(a)には、記録媒体1が無い状態で光源304を点灯した場合における各イメージセンサから得られる信号出力の成分分布の一例を示している。
図27(a)に示すように、不要な反射光成分による明出力が暗出力に加算されている。この明出力成分は、周辺のメカ構成や周辺部材によって、主走査位置によって僅かに異なっており、必ずしも主走査方向に一様では無い。
【0179】
そのため、光源304の非点灯状態にて得られる暗出力から黒補正データを生成し、その黒補正データで暗出力を除去した場合、不要成分が残ってしまう。
【0180】
図27(b)には、黒補正後の不要成分が残っている状態の各主走査位置の出力値の様子を示している。
図27(b)に示すように、記録媒体1の領域外において不要成分が除去されずに残り、明出力として分布しているのが分かる。この場合、閾値の設定次第では、記録媒体1の領域外の位置で明出力の出力値が閾値を超えるため、真のエッジ位置ではない位置がエッジ位置として誤検出される可能性がある。
【0181】
この課題を解決するためには、光源304を点灯し、暗出力に不要成分の明出力が重畳した状態の信号出力から黒補正データを生成する。
図27(c)には、点灯状態で生成した黒補正データを使用して黒補正を行った後の各主走査位置の出力値の様子を示している。点灯状態で生成した黒補正データを使用して黒補正を行うと、記録媒体1の領域外では暗出力と反射光成分の明出力とが共に除去され、記録媒体1の領域外では各主走査位置の出力値が0またはその付近の値を示すようになる。
【0182】
図27(c)では、不要な明出力成分の影響により、記録媒体1の領域内の信号出力の均一性は僅かに損なわれているが、記録媒体1の領域外の信号出力は完全に除去されている。従って、記録媒体1の領域外ではなく真のエッジ位置において出力値が閾値を越えるようになり、高い検出精度でエッジ位置が得られる。
【0183】
図28は、第2の実施の形態の変形例3にかかる位置調整の動作フローの一例を示す図である。本動作フローでは、第2の実施の形態の変形例2にかかる動作フロー(
図25参照)において、黒補正データの生成(ステップS1813)と光源304の点灯(ステップS1814)との順番を入れ替えた点で異なる。これらの順番の入れ替えにより、光源304の点灯状態において黒補正データが生成される。その他のフローは、第2の実施の形態の変形例2の動作フロー(
図25参照)に対応している。従って、これ以上の説明は繰り返しの説明になるため省略する。
【0184】
第2の実施の形態の変形例3では、読取デバイス2の周辺のメカ構成の影響によって生じる記録媒体1の領域外の不要な光成分を含めて黒補正データとして生成し保持する。これにより、特に高濃度媒体に対する位置検出精度が向上し、記録媒体対応濃度範囲が拡大することができる。
【0185】
(第2の実施の形態の変形例4)
第2の実施の形態の変形例4は、媒体が反射光の指向性が高い記録媒体である場合において、制御部203が第1のモードで動作することを特徴とする。汎用的な読取デバイスは、被写体からの拡散反射光を受光して、信号出力する構成となっているのがほとんどである。したがって、反射率は高いものの、その反射光の指向性が高いために(正反射成分が多い)、その反射光を受光できず、十分な信号出力が期待できない光沢紙、メタリック紙などを用いる場合に、第1のモードを適用することによって、高精度、高信頼性の位置検出が実現できる。
【符号の説明】
【0186】
2 読取デバイス
200 位置検出ユニット
201 媒体情報格納部
202 CPU
203 制御部
204 黒シェーディング補正部
205 黒補正データ生成・格納部
206 端部位置検出部
207 搬送位置制御部
208 搬送位置調整ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0187】