(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】布地をセットする方法、位置出し用治具、布地保持部材、印刷装置、印刷対象をセットする方法
(51)【国際特許分類】
D06H 1/00 20060101AFI20220323BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
D06H1/00
D06B11/00 A
(21)【出願番号】P 2018013938
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】尾ケ口 宗之
(72)【発明者】
【氏名】上野 智志
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148970(JP,A)
【文献】特開2016-107474(JP,A)
【文献】特開2013-221229(JP,A)
【文献】特開2013-022858(JP,A)
【文献】特開2016-177731(JP,A)
【文献】特開2005-035015(JP,A)
【文献】特開2013-094871(JP,A)
【文献】特開2018-119234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B1/00-23/30
D06C3/00-29/00
D06G1/00-5/00
D06H1/00-7/24
D06J1/00-1/12
D06P1/00-7/00
B41J2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
11/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材にセットする方法であって、
前記布地に対し、前記プラテン部材に配置された複数の発光手段に対応する位置にマークを付する工程と、
前記布地を前記プラテン部材に載せ置き、前記布地の前記マークを、発光している前記発光手段に合わせた状態にして、前記布地を前記プラテン部材にセットする工程と、を行う
ことを特徴とする布地をセットする方法。
【請求項2】
前記布地にマークを付する工程において、
前記プラテン部材の複数の発光手段に対応する位置にそれぞれマーキング用穴が設けられた位置出し用治具を前記布地の印刷を施す部分に合わせ、
前記マーキング用穴を介して筆記具で前記マークを付する
ことを特徴とする
請求項1に記載の布地をセットする方法。
【請求項3】
布地の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材に前記布地をセットするときに使用する位置出し用治具であって、
前記プラテン部材に配置された複数の発光手段にそれぞれ対応する位置に複数のマーキング用穴が設けられている
ことを特徴とする位置出し用治具。
【請求項4】
前記プラテン部材と同じ大きさである
ことを特徴とする請求項3に記載の位置出し用治具。
【請求項5】
位置調整用目盛部材を有している
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の位置出し用治具。
【請求項6】
布地の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材を有する布地保持部材と、
前記布地を保持する
前記布地保持部材を着脱可能に保持する受け部材と、
前記布地に印刷する印刷手段と、
前記布地の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材に前記布地をセットするときに使用する位置出し用治具と、を含む印刷装置であって、
前記布地保持部材の前記プラテン部材には複数の発光手段が配置され、
前記位置出し用治具には、前記プラテン部材に配置された複数の発光手段にそれぞれ対応する位置に複数のマーキング用穴が設けられている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
印刷対象の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材にセットする方法であって、
前記印刷対象に対し、前記プラテン部材に配置された複数の発光手段に対応する位置にマークを付する工程と、
前記印刷対象を前記プラテン部材に載せ置き、前記印刷対象の前記マークを、発光している前記発光手段に合わせた状態にして、前記印刷対象を前記プラテン部材にセットする工程と、を行う
ことを特徴とする印刷対象をセットする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布地をセットする方法、位置出し用治具、布地保持部材、印刷装置、印刷対象をセットする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット捺染装置として、布地を支持する支持部は、該支持部に対する布地の位置合わせのために、少なくとも一部が支持された布地の外形線より外側にはみ出た位置合わせ用基準部を有するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示の構成にあっては、布地の印刷を施す部分(領域)を正確に支持部(プラテン部材)にセットすることができないという課題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、印刷を施す部分を正確にセットできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る布地をセットする方法は、
布地の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材にセットする方法であって、
前記布地に対し、前記プラテン部材に配置された複数の発光手段に対応する位置にマークを付する工程と、
前記布地を前記プラテン部材上に載せ置き、前記布地の前記マークを、発光している前記発光手段に合わせた状態にして、前記布地を前記プラテン部材にセットする工程と、を行う
構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷を施す部分を正確にセットできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る印刷装置の一例のカセットを取り外した状態の外観斜視説明図である。
【
図2】同印刷装置にカセットを装着した状態の外観斜視説明図である。
【
図3】同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図である。
【
図4】同じく
図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
【
図5】布地保持部材であるカセットの斜視説明図である。
【
図6】同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図である。
【
図7】同じく
図5の面S1における断面に相当するカセットの短手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図8】布地保持部材であるカセットに布地をセットするときに使用する位置出し用治具の平面説明図である。
【
図9】本発明に係る布地をセットする方法における布地の印刷を施す部分にマーキングする方法の説明に供する説明図である。
【
図10】同じくマーキングした布地をカセットに載置した状態の斜視説明図である。
【
図11】同じく布地をカセットに位置決めした状態の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る印刷装置の一例について
図1ないし
図4を参照して説明する。
図1は同印刷装置から布地保持部材であるカセットを取り外した状態の外観斜視説明図、
図2は同印刷装置にカセットを装着した状態の外観斜視説明図、
図3は同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図、
図4は同じく
図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
【0010】
印刷装置1は、装置本体100内に、布地400を着脱自在に保持する布地保持部材であるカセット200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材であるステージ111と、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する印刷手段112とを備えている。
【0011】
ここで、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地にも用いることができる。
【0012】
ステージ111は、装置本体100に対して矢印Y方向(送り方向)に移動可能に保持された搬送構造体113上に設けられている。ここでは、装置本体100の底部筐体部114に矢印Y方向に沿って搬送ガイド部材115が配置され、搬送構造体113のスライダ部116が搬送ガイド部材115によって移動可能に保持されている。
【0013】
印刷手段112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121と、キャリッジ121に搭載されたヘッド122とを備えている。キャリッジ121は、矢印X方向に沿って配置されたガイド部材123で移動可能に保持され、駆動モータ124によってタイミングベルト125などの走査機構部を介して矢印X方向に往復移動される。ヘッド122は液体吐出ヘッドを用いて、インクを布地表面に吐出して画像の形成を行っているが、これに限るものではない。
【0014】
この印刷装置1においては、カセット200のプラテン部材300に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向への移動とヘッド122の矢印X方向への往復移動を繰り返すことで、布地400に所要の画像を印刷する。
【0015】
次に、カセットの概要について
図5ないし
図7も参照して説明する。
図5は同カセットの斜視説明図、
図6は同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図、
図7は同じく
図5の面S1における断面に相当するカセットの短手方向に沿う概略断面説明図である。
【0016】
カセット200は、ベース部材201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材300とを有している。
【0017】
プラテン部材300は、プラテン構造体302と、布地400を平坦な状態で保持する面を構成する断熱部材301とで構成されている。断熱部材301は、加熱装置による加熱に対して耐熱性を有する。
【0018】
そして、ベース部材201には、外周カバー部材202の一端部がヒンジ203で回転可能に取り付けられ、外周カバー部材202はベース部材201に対して介して矢印方向に開閉可能に設けられている。
【0019】
外周カバー部材202は、プラテン部材300に対応する部分に開口部202aを有する枠部202bを備え、枠部202bとプラテン部材300の外周部分のフランジ部300aとの間で布地400を押さえる。
【0020】
また、ベース部材201には、装置本体100のステージ111に対する着脱方向と直交する方向の両端部に、ステージ111の両端部を抱え込んでステージ111の両端部に移動可能に嵌め込まれるガイドレール部211が設けられている。
【0021】
プラテン部材300はベース部材201に対して支持部311で支持して、プラテン部材300とベース部材201との間には布地400の余剰部分400aを収容できる収容空間312を形成している。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、すそ等が該当する。
【0022】
ここで、プラテン部材300はベース部材201から着脱可能であり交換可能に形成されている。これによりプラテン部材300を複数用意し、印刷動作中に別のプラテン部材300に衣類を巻き付けておくことができ、印刷、定着終了後にプラテン部材300を交換するだけで速やかに次の布地の印刷を開始することができる。
【0023】
このカセット200に布地400をセットするときには、詳細は後述するが、布地400をセットするユーザーは、
図6に示すように、外周カバー部材202を開いて、プラテン部材300上に布地400をセット(保持)する。このとき、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを、
図7に示すように、収容空間312内に収容した状態で、布地400をセットするユーザーは、
図5に示すように、外周カバー部材202を閉じる。
【0024】
そして、布地400に印刷するときには、カセット200をセットするユーザーは、布地400をセットしたカセット200を印刷装置1の装置本体100のステージ111上に装着する(セットする)。このとき、カセット200をステージ111の移動方向からステージ111に装着することができるので、カセット200をステージ111の直上からステージ111に装着する構成に比べて、ステージ111全体を装置本体100から外に露出させる必要がなく、装置の小型化を図れる。
【0025】
このように、カセット200は装置本体100から全体を取り出した状態にして印刷対象である布地400をプラテン部材300上にセットすることができるので、プラテン部材300への布地400のセット作業が容易になる。
【0026】
このようなカセット200は印刷装置1で印刷が完了した後、布地400を保持したまま、加熱装置にセットし(移して)、画像が印刷された布地400を加熱して定着することができる。
【0027】
次に、布地保持部材であるカセットにおける布地をセットするときの位置出しに関する構成について前述した
図5及び
図6参照して説明する。
【0028】
まず、カセット200のプラテン部材300の布地保持面(表面)303には、複数のLEDなどの発光手段320が配置されている。ここでは、4個の発光手段320を配置しているが、3個でも、5個以上でもよい。
【0029】
この場合、カセット200に例えば電池などの電源を備え、外周カバー部材202がベース部材201から開かれたときに電源から給電して発光手段320を発光させ、外周カバー部材202が閉じられたときに給電を遮断して発光手段320の発光を停止させるスイッチ手段を備えることが好ましい。
【0030】
次に、布地保持部材であるカセットに布地をセットするときに使用する位置出し用治具について
図8を参照して説明する。
図8は同位置出し用治具の平面説明図である。
【0031】
位置出し用治具700は、プラテン部材300の布地保持面303とほぼ同じ(同じを含む。)大きさの位置出し調整板701を有している。位置出し調整板701には、プラテン部材300の発光手段320が設けられた位置に対応して貫通穴からなるマーキング用穴702が設けられている。
【0032】
また、位置出し調整板701の両側には位置出し調整用目盛部材704が取付けられている。位置出し調整用目盛部材704を用いて、布地400の中心出しや端から何mmの位置に印刷するなどの調整を行うことができる。
【0033】
布地400にマーキング用穴702を介してマーキングを行うには、例えばマーキング用水性チャコペン(チャコールペンシル)705を用いてマーキングする。マーキング用水性チャコペン705は印刷後でも水で洗えば簡単に落ちる性質を有している。
【0034】
次に、本発明に係る布地をセットする方法について
図9ないし
図11を参照して説明する。
図9は布地の印刷を施す部分にマーキングする方法の説明に供する説明図、
図10はマーキングした布地をカセットに載置した状態の斜視説明図、
図11は同じく布地をカセットに位置決めした状態の平面説明図である。
【0035】
まず、
図9(a)に示すように、印刷対象となる布地400の印刷を施す部分に位置出し用治具700を載せ置き、マーキング用水性チャコペン705などの筆記具で位置出し調整板701のマーキング用穴702を介して、
図9(b)に示すように4カ所にマーク710を付ける(マーキングする)。
【0036】
次いで、
図10に示すように、布地400をプラテン部材300の布地保持面303に載せ置く。このとき、発光手段320が点灯することで、布地400には発光手段320の光320aが透けて写り、布地400の四点が光った状態になる。
【0037】
そこで、
図11に示すように、布地400に付与したマーク710を、布地400に透けて写った発光手段320の四点の光320aに合わせて、外周カバー部材202を閉じて、布地400をプラテン部材300にセットする。
【0038】
これにより、布地400の印刷を施す部分を正確にカセット200のプラテン部材300の布地保持面303にセットすることができる。
【0039】
なお、上記実施形態では主に布地で説明しているが、布地以外の印刷対象であっても本発明を同様に適用することができる。この場合には、前記実施形態における「布地」が「印刷対象」となる。
【符号の説明】
【0040】
1 印刷装置
111 ステージ
112 印刷手段
200 カセット(布地保持部材)
202 外周カバー部材
300 プラテン部材
320 発光手段
400 布地
700 位置出し用治具
701 位置出し調整板
702 マーキング用穴