(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】立体造形物の製造装置、製造方法、及び製造プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20220323BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220323BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220323BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220323BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220323BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220323BHJP
【FI】
B29C64/35
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B29C64/112
B29C64/393
(21)【出願番号】P 2018029733
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 陽一
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067019(JP,A)
【文献】特開平10-268725(JP,A)
【文献】特開2013-203065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0017393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料からなる造形層を積層して造形を行う造形手段と、
前記造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記廃液管の廃液による詰まりを検出する詰まり検出手段と、
を有
し、
前記第1の廃液保管容器が複数個存在し、それぞれの前記第1の廃液保管容器に対応して、前記廃液管が複数個存在し、複数個存在する前記第1の廃液保管容器のうち、一つの前記第1の廃液保管容器は、平滑化部材により回収された廃液を収容するためのものであり、他の前記第1の廃液保管容器は、パージ処理により回収された廃液を収容するためのものであり、
パージ処理により回収された廃液を収容するための前記第1の廃液保管容器には、前記造形材料を硬化するための光源と前記第1の廃液保管容器との間に、遮光板が配されることを特徴とする立体造形物の製造装置。
【請求項2】
前記詰まり検出手段が、前記重さの比較をした結果、重さの差が、予め設定した閾値より小さい場合、前記廃液管が詰まっていると判定する、請求項1に記載の立体造形物の製造装置。
【請求項3】
前記詰まり検出手段が、前記重さの比較した結果、重さの差が、予め設定した閾値より小さい場合、前記廃液管が詰まっていることを通知する通知手段を有する、請求項1から2のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。
【請求項4】
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を記録する記録手段を有する、請求項1から3のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。
【請求項5】
前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を、前記第2の廃液保管容器に移送する移送手段をさらに有し、
前記詰まり検出手段が、前記移送手段の動作前の、廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、前記移送手段の動作後の、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さとを比較する、請求項1から
4のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。
【請求項6】
前記移送手段は、前記第1の廃液保管容器に所定量の廃液が収容されるまでは動作せず待機しており、廃液が所定量を越えたときに動作するように、前記移送手段の動作タイミングが設定されている、請求項
5に記載の立体造形物の製造装置。
【請求項7】
前記第1の廃液保管容器が、パージ処理により回収された廃液を収容するためのものである場合に、
前記移送手段は、パージ処理の処理回数が所定数を越えたときに動作するように、前記移送手段の動作タイミングが設定されている、請求項
5から
6のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。
【請求項8】
前記重量測定手段は、前記移送手段が動作中には前記重量測定手段による測定は行わず、前記移送手段の動作を停止した後、前記重量測定手段の測定を行うように、前記重量測定手段の測定タイミングが設定されている、請求項
5から
7のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。
【請求項9】
前記重量測定手段は、前記移送手段を複数回動作した後、前記重量測定手段の測定を行うように、前記重量測定手段の測定タイミングが設定されている、請求項
5から
8のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。
【請求項10】
造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、を有する立体造形物の製造装置に用いる、立体造形物の製造プログラムであって、
前記製造装置は、前記第1の廃液保管容器が複数個存在し、それぞれの前記第1の廃液保管容器に対応して、前記廃液管が複数個存在し、複数個存在する前記第1の廃液保管容器のうち、一つの前記第1の廃液保管容器は、平滑化部材により回収された廃液を収容するためのものであり、他の前記第1の廃液保管容器は、パージ処理により回収された廃液を収容するためのものであり、パージ処理により回収された廃液を収容するための前記第1の廃液保管容器には、前記造形材料を硬化するための光源と前記第1の廃液保管容器との間に、遮光板が配されている製造装置であり、
前記造形材料からなる造形層を積層して造形を行い、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から、前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記廃液管の廃液による詰まりを検出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする立体造形物の製造プログラム。
【請求項11】
造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、を有する立体造形物の製造装置に用いる廃液管の詰まり検出プログラムであって、
前記製造装置は、前記第1の廃液保管容器が複数個存在し、それぞれの前記第1の廃液保管容器に対応して、前記廃液管が複数個存在し、複数個存在する前記第1の廃液保管容器のうち、一つの前記第1の廃液保管容器は、平滑化部材により回収された廃液を収容するためのものであり、他の前記第1の廃液保管容器は、パージ処理により回収された廃液を収容するためのものであり、パージ処理により回収された廃液を収容するための前記第1の廃液保管容器には、前記造形材料を硬化するための光源と前記第1の廃液保管容器との間に、遮光板が配されている製造装置であり、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記立体造形物の製造装置における前記廃液管の廃液による詰まりを検出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする廃液管の詰まり検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形物の製造装置、製造方法、及び製造プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体造形物(三次元造形物)を造形する装置として、材料噴射造形方式(マテリアルジェット方式)の造形装置が知られている。
この造形装置において、造形層を形成するときに、造形された層の上面を平滑にするために余分な吐出材料(モデル部形成材料ならびにサポート部形成材料)を除去するためローラ等の平滑化部材を設けることが知られている。
また、吐出材料を強制的に吐出するパージ処理等のメンテナンスを行うことが知られている。
平滑化部材や、パージ処理等による吐出材料の廃液は、一時的に廃液を収容する一次保管容器を経て、その後廃液保管容器に集められる。
【0003】
廃液保管容器である廃液タンク内における廃液の蓄積量が一定量を越えたことを検知する三次元造形装置であって、廃液タンクの一端に配設された廃液管の詰まりを圧力センサによって検出する三次元造形装置の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
一方、インクジェットヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成する画像記録装置において、パージ処理の際に吐出された廃液を、インクパンから廃液タンクへ送る廃液管の液漏れを判断する画像記録装置の提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製造コストの増加を抑制しつつ、廃液管から廃液が流出する前に、廃液管の詰まりを早期に検出することができる立体造形物の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の立体造形物の製造装置は、
造形材料からなる造形層を積層して造形を行う造形手段と、
前記造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記廃液管の廃液による詰まりを検出する詰まり検出手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、製造コストの増加を抑制しつつ、廃液管から廃液が流出する前に、廃液管の詰まりを早期に検出することができる立体造形物の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、立体造形物の製造装置の要部正面の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、造形手順を説明するための造形層の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、立体造形物の製造装置の要部平面の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、立体造形物の製造装置の要部側面の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、立体造形物の製造装置の制御部を説明するためのブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、立体造形物の製造装置の詰まり検出手段を説明するための製造装置の要部の一例を示す模式図である。
【
図6B】
図6Bは、立体造形物の製造装置の詰まり検出手段を説明するための製造装置の要部の他の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、立体造形物の製造装置において、廃液管の詰まり検出プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
吐出材料は、硬化性であるため、硬化した吐出材料が廃液保管容器へ移送するための搬送経路に混入する可能性がある。また、乾燥等の理由で、粘性が高くなり、固化した吐出材料が搬送経路に混入することもある。これら固化した吐出材料が搬送経路に混入した場合、固化した吐出材料は廃液管の内壁面に付着するため、廃液管が詰まる。その結果、廃液管内の圧力が高まり継ぎ手部分などから吐出材料が漏れるという問題が生じる。
そこで、廃液管から廃液が流出する前に、廃液管の詰まりを検出することが求められる。
しかし、上記背景技術欄で挙げた上記特許文献1に記載の技術では、廃液管の詰まりを検出するのに、圧力センサを別途設ける必要がある。
また、圧力で廃液管の詰まりを測定するには、廃液管の経路内はほぼ閉塞されている必要がある。そのため、上記特許文献1に記載の技術では、廃液管の詰まりを早期に検出することは困難である。
さらに、圧力で詰まりが検出できるくらい、圧力が高い状態は、廃液管の継ぎ手部分から廃液が漏れるおそれが高い。廃液が漏れるおそれがある状態は好ましくない。
一方、上記特許文献2には、廃液管を通過した廃液量と、パージ処理の際にインクジェットヘッドの吐出口から吐出された廃液量とを比較し、廃液管の液漏れを判断することが記載されている。
しかし、上記特許文献2は、廃液管に液漏れが生じた際に、その液漏れの有無や程度を判断するものであり、本発明のように廃液管の液漏れを防ぐため、液漏れが生じる前にその原因となる詰まりの程度を検出するというものではない。
そもそも、上記特許文献2では、廃液管に廃液がこびりつく、いわゆる本発明でいう「詰まり」は、廃液量を検知する上で全く考慮されていない。
上記特許文献2の[0015]には、「廃液管へのこびりつきが緩和された後、それまでのこびりつきが生じていた間の累積吐出廃液量や検知された廃液量は考慮しないで液漏れを判断する」旨、記載されている。
つまり、上記特許文献2では、詰まりと液漏れは、何ら関係のない別事象として扱っており、上記特許文献2のようなインクジェットの画像記録装置(2D装置)では、廃液管の詰まりを問題とはしていない。
廃液管の詰まりは、立体造形物の製造装置(3D装置)においては重要な問題である。
そこで、本発明者は、検討を重ねた。その結果、立体造形物の製造装置(3D装置)における廃液管の詰まりを、早期かつ確実に検出し、さらに圧力センサを設けない低コストかつ簡易な機構の装置により検出するために、以下の構成の立体造形物の製造装置が有効であることを見出した。
【0009】
(立体造形物の製造装置、製造方法、製造プログラム)
本発明の立体造形物の製造装置は、造形材料からなる造形層を積層して造形を行う造形手段を有する。
また、本発明の立体造形物の製造装置は、第1の廃液保管容器と、第2の廃液保管容器と、重量測定手段と、詰まり検出手段とを有する。ここで、詰まり検出手段は、廃液が第1の廃液保管容器に収容された状態における第2の廃液保管容器の重さと、廃液が第1の廃液保管容器から、第2の廃液保管容器に移送された後の第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、廃液管の廃液による詰まりを検出する手段である。
さらに、本発明の立体造形物の製造装置は、必要に応じてその他の手段を有してもよい。
本発明の立体造形物の製造方法は、第1の廃液保管容器と、第2の廃液保管容器と、重量測定手段と、を少なくとも有する立体造形物の製造装置を用いて、立体造形物を製造する製造方法である。
本発明の立体造形物の製造方法は、造形材料からなる造形層を積層して造形を行う造形工程を含む。
本発明の立体造形物の製造方法は、廃液が第1の廃液保管容器に収容された状態における第2の廃液保管容器の重さと、廃液が第1の廃液保管容器から、第2の廃液保管容器に移送された後の第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、廃液管の廃液による詰まりを検出する詰まり検出工程を含む。
本発明の立体造形物の製造プログラムは、第1の廃液保管容器と、第2の廃液保管容器と、重量測定手段と、を少なくとも有する立体造形物の製造装置に用いる製造プログラムである。
本発明の立体造形物の製造プログラムは、造形材料からなる造形層を積層して造形を行う、処理をコンピュータに実行させる。
本発明の立体造形物の製造プログラムは、廃液が第1の廃液保管容器に収容された状態における第2の廃液保管容器の重さと、廃液が第1の廃液保管容器から、第2の廃液保管容器に移送された後の第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、廃液管の廃液による詰まりを検出する、処理をコンピュータに実行させる。
本発明の立体造形物の製造装置は、本発明の立体造形物の製造方法を実施することと同義であるので、本発明の製造装置の説明を通じて本発明の製造方法の詳細についても明らかにする。また、本発明の立体造形物の製造プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の立体造形物の製造装置として実現させることから、本発明の製造装置の説明を通じて本発明の製造プログラムの詳細についても明らかにする。
以下、本発明の立体造形物の製造装置を、マテリアルジェッティング方式に従う造形装置の基本的構成部分である造形手段に関する構成部分と、本発明の特徴の一つである詰まり検出手段に関する構成部分とに分けて説明する。
【0010】
<造形手段、造形工程>
造形手段は、造形材料からなる造形層を積層して造形を行う手段である。
造形手段の具体的な内容としては、例えば、以下のとおりである。造形材料からなる液膜を形成し、形成した液膜を硬化させ、液膜の形成と硬化とを複数回繰り返すことにより、硬化した造形層を積層して造形を行う。
ここで、造形材料には、例えば、モデル部形成材料やサポート部形成材料が含まれる。尚、モデル部形成材料やサポート部形成材料の具体的な説明については、後述する。
本発明の立体造形物の製造装置(本明細書において、造形装置ともいう)は、マテリアルジェッティング方式を利用する。
本発明の立体造形物の製造装置は、立体造形物を形成する造形材料(モデル部形成材料)を造形領域に吐出し、造形領域以外の領域に形状支持用のサポート部形成材料を吐出する。次に、モデル部形成材料及びサポート部形成材料を硬化させて、モデル部形成材料が硬化したモデル部の造形物とサポート部形成材料が硬化したサポート部の造形物とを含む層状造形物(造形層)を造形し、係る造形層を順次積層する。そして、積層してなる造形物から、サポート部の造形物を除去することにより、モデル部形成材料からなる立体造形物を造形する。
尚、造形材料を硬化させる際は、各層毎に完全に硬化状態が形成されていなくてもよい。例えば、UV照射をしたときは半硬化状態であっても、積層していくうちに硬化がすすみ、造形物を積層し終えた段階で、造形材料が硬化されていればよい。
【0011】
<<立体造形物の製造装置の実施形態>>
以下、本発明の製造装置(造形装置)の具体的実施形態について、説明する。
図1は、立体造形物の製造装置の要部正面の一例を示す模式図である。
立体造形装置10は、材料噴射造形装置であり、造形層30(30A~30E)が積層されて立体造形物が造形される造形ステージ14と、造形ステージ14上に造形層30を順次積層しながら造形する造形ユニット20とを備えている。
造形ユニット20は、モデル部形成材料を吐出する第1の吐出ヘッド11と、サポート部形成材料を吐出する第2の吐出ヘッド12と、活性エネルギー線としての紫外線を照射するUV照射ユニット13と、造形層30を平滑化するための平滑化部材である平滑化ローラ(平坦化ローラともいう)16を備えている。
ここでは、X方向において、第1の吐出ヘッド11を挟んで2つの第2の吐出ヘッド12を配置し、2つの第2の吐出ヘッド12の外側にそれぞれUV照射ユニット13を配置し、更に、UV照射ユニット13の外側にそれぞれ平滑化ローラ16を配置している。
造形ユニット20はX方向に往復移動されるとともに、造形ステージ14に対してY方向にも相対的に移動可能とされている。
造形ステージ14は、昇降手段15によってZ方向に昇降される。
次に、この立体造形装置10による造形動作の概要について
図2も参照して説明する。
図2は、造形手順を説明するための造形層の構成の一例を示す模式図である。
図2では、便宜上液滴形状を矩形状で示している。
造形ユニット20をX方向に移動させながら、第1の吐出ヘッド11からモデル部形成材料301を造形領域(立体造形物を構成する領域)に吐出させ、第2ヘッド12からサポート部形成材料302を造形領域以外のサポート領域(造形後除去する領域)に吐出させる。
そして、UV照射ユニット13によって、モデル部形成材料301及びサポート部形成材料302上に紫外線を照射して硬化させ、モデル部の造形物17とサポート部の造形物18を含む1層分の造形層30を形成する。
この造形層30を繰り返し造形して順次積層し、モデル部形成材料301をサポート部形成材料302で支持しながらモデル部形成材料301からなる目的とする立体造形物を造形する。
例えば、
図1の例では、造形層30A~30Eの5層を積層した状態を示している。また、
図2の例では、造形層30A~30Cの3層を積層した状態を示している。
【0012】
吐出された造形材料の液層の表面は、ローラ等による平滑化部材により平滑化処理が行われる。
ここで、造形層30を複数層(固定値である必要はない。)積層する毎に、例えば10層積層する毎に、平滑化ローラ16を最表面の造形層30に押し付けて平滑化することで、造形層30の厚み精度や平坦性を確保することができる。
なお、平滑化部材として、平滑化ローラ16のようなローラ形状の部材を使用する場合、X方向における移動方向に対して、平滑化ローラ16を逆転させる方向で回転させることで、平滑化(平坦化)の効果がより有効に発揮される。
平滑化ローラ16に付着した造形材料は、ブレード等を使って、平滑化ローラの表面から除去される。除去された造形材料からなる廃液は一次保管トレイに収容され、その後、廃液保管容器に集められる。尚、これら一次保管トレイや廃液保管容器については、下記<詰まり検出手段、詰まり検出工程>の欄で詳しく説明する。
また、造形ユニット20と最表面の造形層30とのギャップを一定に保つために、ここでは、1層の造形層30を形成する毎に造形ステージ14を昇降手段15によって下降させている。なお、造形ユニット20を上昇させる構成でもよい。
また、立体造形装置10としては、モデル部形成材料301やサポート部形成材料302の回収、リサイクル機構などを備えることができる。
また、第1の吐出ヘッド11、第2の吐出ヘッド12のノズル面を清浄化する清浄化手段や不吐出ノズルを検知する吐出状態検出手段を備えることができる。また、造形時の装置内の環境温度を制御することも好ましい。
【0013】
UV照射ユニット13としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド、LEDなどが挙げられる。
超高圧水銀灯は点光源であるが、光学系と組み合わせて光利用効率を高くしたDeepUVタイプは、短波長領域の照射が可能である。
メタルハライドは、波長領域が広いため着色物に有効であり、Pb、Sn、Fe等の金属のハロゲン化物が用いられ、重合開始剤の吸収スペクトルに合わせて選択できる。
硬化に用いられるランプとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FusionSystem社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販品などを用いることができる。
【0014】
図3は、立体造形物の製造装置の要部平面の一例を示す模式図である。
図4は、立体造形物の製造装置の要部側面の一例を示す模式図である。
立体造形装置10において、造形ユニット20のユニットホルダ21は、X方向に配置されたガイド部材54、55に移動可能に保持されている。
また、造形ユニット20のX方向の一方側には、吐出ヘッド11及び12の維持回復を行うメンテナンス機構61が配置されている。
メンテナンス機構61は、主にキャップ62とワイパ63で構成される。キャップ62を吐出ヘッド11や12のノズル面(ノズルが形成された面)に密着させ、ノズルから造形材料を吸引する。ノズルに詰まった高粘度化した造形材料を排出するためである。その後、ノズルのメニスカス形成(ノズル内は負圧状態である)のため、ノズル面をワイパ63でワイピング(払拭)する。また、メンテナンス機構61は、造形材料の吐出がスムーズに行われるよう、吐出ヘッドのノズル面をキャップ62で覆い、造形材料の乾燥による固化や、光による造形材料の液体の硬化を防止することができる。
【0015】
また、造形ユニット20のユニットホルダ21を保持しているガイド部材54及び55は、両側の側板70、70に保持されている。側板70、70はベース部材7上に配置されたガイド部材71に移動可能に保持されたスライダ部72を有し、造形ユニット20はX方向と直交するY方向に往復移動可能である。
ステージ14は、昇降手段15によってZ方向に昇降される。昇降手段15は、ベース部材7上にX方向に配置されたガイド部材75、76上に移動可能に配置される。
【0016】
第1の吐出ヘッド11には、カートリッジ装着部56に交換可能に装着されるカートリッジ60によって造形材料が供給チューブなどを介して供給される。なお、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラーの造形材料を使用する場合には、第1の吐出ヘッド11に各色の液滴を吐出する複数のノズル列を配置することができる。
【0017】
次に、立体造形装置の制御部の概要について
図5を参照して説明する。
図5は立体造形装置10の制御部を説明するためのブロック図である。
制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係わる制御を含む立体造形動作の制御を実行させるためのプログラムを含む立体造形プログラム、その他の固定データを格納するROM502と、造形データ等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)504を備えている。また、制御部500は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505を備えている。
制御部500は、外部の造形データ作成装置600から造形データを受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/F506を備えている。
図5中、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物(立体造形物)を各造形層毎にスライスしたスライスデータである造形データ(断面データ)を作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
制御部500は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O507を備えている。
制御部500は、造形ユニット20の第1の吐出ヘッド11を駆動制御するヘッド駆動制御部508と、第2の吐出ヘッド12を駆動制御するヘッド駆動制御部509を備えている。
制御部500は、造形ユニット20をX方向(主走査方向)に移動させるX方向走査機構550を構成するモータを駆動するモータ駆動部510と、造形ユニット20をY方向(副走査方向)に移動させるY方向走査機構552を構成するモータを駆動するモータ駆動部511を備えている。
制御部500は、造形ステージ14をZ方向に昇降させる昇降手段15を構成するモータを駆動するモータ駆動部512を備えている。なお、Z方向への昇降は造形ユニット20を昇降させる構成とすることもできる。
制御部500は、平滑化ローラ16を回転駆動するモータ26を駆動するモータ駆動部516、第1の吐出ヘッド11、第2の吐出ヘッド12のメンテナンス機構61を駆動するメンテナンス駆動部518を備えている。
制御部500は、UV照射ユニット13による紫外線照射を制御する硬化制御部519を備えている。
制御部500のI/O507には、装置の環境条件としての温度及び湿度を検出する温湿度センサ560などの検知信号やその他のセンサ類の検知信号が入力される。
制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル522が接続されている。
制御部500は、上述したように、造形データ作成装置600から造形データを受領する。制御部500は、入力された造形データに従い立体造形物を造形するよう駆動処理される。これにより、立体造形装置10において、所望の立体造形物が造形される。
【0018】
モデル部形成材料、及びサポート部形成材料としては、例えば、以下に記載のものが挙げられる。
【0019】
<<モデル部形成材料>>
モデル部形成材料は、モデル部を構成する部分を造形することができる。
本発明において、モデル部とは、立体造形物を造形する本体を構成する部を意味する。
【0020】
モデル部形成材料は、光や熱等のエネルギーを付与することにより硬化する液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。モデル部形成材料は、単官能モノマー、多官能モノマー等の重合性モノマー、オリゴマー、光重合開始剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
モデル部形成材料は、インクジェット用プリンター等に用いられる造形材料吐出ヘッドで吐出できる粘度や表面張力等の液物性を有することが好ましい。
【0021】
<<サポート部形成材料>>
サポート部形成材料は、サポート部を構成する部分を造形することができる。
本発明において、サポート部とは、モデル部が固化するまでの時間、立体造形物を所定の位置に保持するために、モデル部の重力方向に対し支持する部分に配置され、モデル部と接し、モデル部を下方向から支持する部を意味する。
【0022】
サポート部形成材料は、光や熱等のエネルギーを付与することにより硬化する液体であり、液体が硬化した硬化物が溶媒浸漬時に崩壊する材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去コストの点から、硬化物が水崩壊性であることが好ましい。具体的には、サポート部形成材料は、水素結合能を有するモノマー(A)、水素結合能を有する溶媒(B)、及び光重合開始剤(D)を含むことが好ましく、更に水素結合性ポリマー(C)を含んでもよく、更にまた、必要に応じてその他の成分(E)を含むことができる。
【0023】
-水素結合能を有するモノマー(A)-
前記水素結合能を有するモノマー(A)は、水素結合能を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線等の活性エネルギー線の照射によりラジカル重合する重合性を有する単官能モノマーや多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記水素結合能を有するモノマー(A)としては、例えば、アミド基、アミノ基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基、スルホ基等を有するモノマーなどが挙げられる。
【0025】
前記水素結合能を有するモノマー(A)の重合反応としては、例えば、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、開環重合などが挙げられる。これらの中でも、重合反応の制御の点から、ラジカル重合が好ましい。そのため、前記水素結合能を有するモノマー(A)としては、エチレン性不飽和モノマーが好ましく、水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー、水溶性多官能エチレン性不飽和モノマーがより好ましく、硬化物の水崩壊性を向上する点から、水溶性単官能エチレン性不飽和モノマーが特に好ましい。
【0026】
--水素結合能を有する水溶性単官能エチレン性不飽和モノマー--
水素結合能を有する水溶性単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能ビニルアミド基含有モノマー[N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン等];単官能水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等];水酸基含有(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1~4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1~4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEG-PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等];(メタ)アクリルアミド誘導体[(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、光反応性の点から、単官能水酸基含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましい。ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-ヒドロキシプロピルアクリルアミド、N-ヒドロキシブチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドがより好ましい。人体への皮膚低刺激性の点から、アクリロイルモルホリン(分子量:141.17)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(分子量:115.15)が特に好ましい。
【0027】
--水素結合能を有する水溶性多官能エチレン性不飽和モノマー--
水素結合能を有する水溶性多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性二官能エチレン性不飽和モノマー、水溶性三官能エチレン性不飽和モノマーなどが挙げられる。
水溶性二官能エチレン性不飽和モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水溶性三官能エチレン性不飽和モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアリルイソシアネート、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
水素結合能を有するモノマー(A)の分子量としては、70以上2,000以下が好ましく、100以上500以下がより好ましい。前記分子量が70以上2,000以下であると、インクジェット方式に最適な粘度に調整することができる。
【0029】
水素結合能を有するモノマー(A)の含有量としては、サポート部形成材料全量に対して、30質量%以上60質量%以下が好ましい。前記含有量が30質量%以上60質量%以下であると、モデル部の形状を支持するサポート部として、十分な圧縮応力と、水崩壊性とを両立することができる。
【0030】
-水素結合能を有する溶媒(B)-
水素結合能を有する溶媒(B)は、水素結合能を有するモノマー(A)と水素結合能を有し、水素結合能を有するモノマー(A)と水素結合を形成することにより、形状支持用サポート部の機能を発揮することができる。
【0031】
水素結合能を有する溶媒(B)は、水素結合能を有する溶媒であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、炭素数3以上6以下のジオール、カルボン酸化合物、アミン化合物、エステル化合物、ケトン化合物、ウレア化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、炭素数3以上6以下のジオールが好ましい。
【0032】
--炭素数3以上6以下のジオール--
炭素数3以上6以下のジオールとしては、水溶性アクリルモノマーと反応性がないこと、硬化時のラジカル重合反応を阻害しないこと、常温にて流動性があり、水に可溶な材料であることが好ましい。また、炭素数3以上6以下のジオールとしては、単官能性、多官能性のいずれも使用することができる。
炭素数3以上6以下のジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0033】
炭素数3以上6以下のジオールの炭素数としては、3以上6以下であり、3以上5以下が好ましい。炭素数が、3以上であると、25℃の環境下にて1%圧縮時の圧縮応力を向上することができる。炭素数が、6以下であると、サポート部形成材料の粘度を低くすることができる。
なお、前記炭素数3以上6以下のジオールの炭素鎖としては、直鎖でもよく、枝分かれしていてもよい。
【0034】
--カルボン酸化合物--
カルボン酸化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖脂肪族カルボン酸、分岐鎖脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
直鎖脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキシル酸などが挙げられる。
分岐鎖脂肪族カルボン酸としては、例えば、イソブチル酸、t-ブチル酸、イソペンチル酸、イソオクチル酸、2-エチルヘキシル酸などが挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水への溶解性の点から、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、乳酸が好ましく、ブタン酸、乳酸がより好ましい。
【0035】
--アミン化合物--
アミン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1価の1級~3級アミン、2価の1級アミン、3価の1級アミン、脂肪族アミンなどが挙げられる。
1価の1級~3級アミンとしては、例えば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミンなどが挙げられる。
2価の1級アミンとしては、例えば、エチレンジアミンなどが挙げられる。
3価の1級アミンとしては、例えば、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。
脂肪族アミンしては、例えば、ピリジン、アニリンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水素結合による架橋強度、及び水への溶解性の点から、2価の1級アミン、3価の1級アミンが好ましく、エチレンジアミンがより好ましい。
【0036】
--エステル化合物--
エステル化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能エステル、多官能脂肪族エステル、多官能芳香族エステルなどが挙げられる。
単官能エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチルなどが挙げられる。
多官能脂肪族エステルとしては、例えば、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチルなどが挙げられる。
多官能芳香族エステルとしては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水への溶解度、立体造形中の蒸発や臭気、及び安全性の点から、アジピン酸ジメチルが好ましい。
【0037】
--ケトン化合物--
ケトン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能ケトン、多官能ケトンなどが挙げられる。
単官能ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
多官能ケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、2,4,6-ヘプタトリオンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、揮発性や水への溶解度の点から、アセチルアセトンが好ましい。
【0038】
水素結合能を有する溶媒(B)の含有量としては、サポート部形成材料全量に対して、10質量%以上50質量%以下が好ましい。前記含有量が10質量%以上50質量%以下であると、モデル部の形状を支持するサポート部として、十分な圧縮応力と、水崩壊性とを両立することができる。
【0039】
-水素結合性ポリマー(C)-
水素結合性ポリマー(C)としては、水溶性アクリルモノマーと反応性がないこと、光硬化時のラジカル重合反応を阻害しないこと、常温にて流動性があり、水に可溶な材料であることが好ましい。
【0040】
水素結合性ポリマー(C)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素化合物などが挙げられる。
活性水素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能性化合物、多官能性化合物などが挙げられる。
単官能性化合物としては、アルコール、エーテル、アミド、エステルなどが挙げられる。
【0041】
活性水素化合物としては、具体的には、アルキレンオキサイド付加物、1価以上4価以下のアルコール、アミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、アルキレンオキサイド付加物、1価以上2価以下のアルコールが好ましい。
アルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
-光重合開始剤(D)-
光重合開始剤(D)としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができ、紫外線照射装置の紫外線波長に合わせた光重合開始剤を選択することが好ましい。
光重合開始剤(D)としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
光重合開始剤(D)の含有量としては、サポート部形成材料全量に対して、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0044】
-その他の成分(E)-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、重合禁止剤、着色剤などが挙げられる。
【0045】
前記サポート部形成材料の粘度としては、25℃にて100mPa・s以下であり、25℃にて、3mPa・s以上70mPa・s以下が好ましく、6mPa・s以上50mPa・s以下がより好ましい。前記粘度が、100mPa・s以下であると、吐出安定性を向上できる。
なお、粘度は、例えば、回転粘度計(VISCOMATE VM-150III、東機産業株式会社製)を用いて25℃の環境下にて測定することができる。
【0046】
前記サポート部形成材料の粘度変化率は、50℃にて2週間放置した前後の粘度変化率が±20%以下であることが好ましく、±10%以下がより好ましい。前記粘度変化率が、±20%以下であると、保存安定性が適正であり、吐出安定性が良好となる。
前記50℃にて2週間放置した前後の粘度変化率としては、以下のようにして測定することができる。
前記サポート部形成材料をポリプロピレン製広口瓶(50mL)に入れて、50℃の恒温槽中に2週間放置した後、恒温槽から取り出して室温(25℃)になるまで放置して、粘度測定を行う。恒温槽に入れる前のサポート部形成材料の粘度を保存前粘度、恒温槽から取り出した後のサポート部形成材料の粘度を保存後粘度とし、下記式により粘度変化率を算出する。なお、前記保存前粘度及び前記保存後粘度は、例えば、R型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定することができる。
粘度変化率(%)=[(保存後粘度)-(保存前粘度)]/(保存前粘度)×100
【0047】
<詰まり検出手段、詰まり検出工程>
本発明の立体造形物の製造装置は、詰まり検出手段を有する。また、詰まり検出手段を実行するため、本発明の立体造形物の製造装置は、第1の廃液保管容器と、第2の廃液保管容器と、重量測定手段とを有する。
さらに、本発明の立体造形物の製造装置は、好ましい態様として、第1の廃液保管容器に収容された廃液を、第2の廃液保管容器に移送する移送手段を有していてもよい。
本明細書において、廃液とは、造形材料のうち、造形物として実際に造形に供される以外の、造形に使用されずに廃棄される造形材料をいう。廃液は、廃棄されることを目的に廃液保管容器に収容される造形材料である。
本発明の立体造形物の製造装置は、詰まり検出手段を有することにより、廃液管の廃液による詰まりを早期に検出することができる。
【0048】
以下、第1の廃液保管容器、第2の廃液保管容器、重量測定手段、詰まり検出手段、及び移送手段について、詳しく説明する。
【0049】
<<第1の廃液保管容器及び第2の廃液保管容器>>
第1の廃液保管容器は、造形材料からなる廃液を一時的に収容する容器である。
第1の廃液保管容器は、立体造形装置内に、複数個存在していてもよい。例えば、第1の廃液保管容器として、平滑化部材であるローラにより回収された廃液を収容するためのものや、パージ処理等のメンテナンスの際に回収された廃液を収容するためのものが挙げられる。
第2の廃液保管容器は、廃液管を通して、第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する容器である。
ここで、廃液管とは、第1の廃液保管容器と第2の廃液保管容器とを接続するための管である。
【0050】
<<重量測定手段>>
重量測定手段は、第2の廃液保管容器の重さを測定する手段である。
重量測定手段としては、例えば、ロードセル等が挙げられる。
【0051】
<<詰まり検出手段>>
詰まり検出手段は、廃液が第1の廃液保管容器に収容された状態における第2の廃液保管容器の重さと、廃液が第1の廃液保管容器から、第2の廃液保管容器に移送された後の第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、廃液管の廃液による詰まりを検出する手段である。
詰まり検出手段は、廃液が第1の廃液保管容器に収容されている場合(この場合を「廃液移送前」ともいう)と、第2の廃液保管容器に移送された後の場合(この場合を「廃液移送後」ともいう)における、第2の廃液保管容器の重さを比較する。
そして、詰まり検出手段は、より具体的には、廃液移送前後での第2の廃液保管容器の重さを比較することにより、これらの重さの差が予め設定した閾値より大きいか又は小さいかを判定する。
そして、閾値より大きい場合は、詰まりは生じておらず、閾値より小さい場合は、詰まりが生じていると、判定する。
ここで、閾値は、例えば、廃液移送前の第1の廃液保管容器に収容される廃液の量から、作業者やユーザーが任意に設定した値をいう。
【0052】
第1の廃液保管容器が複数個存在するときは、それぞれの第1の廃液保管容器に対応して、廃液管が複数個存在するとよい。
そして、第1の廃液保管容器が複数個存在するとき、第1の廃液保管容器ごとに、第2の廃液保管容器の重さを測定することができる。その場合は、各第1の廃液保管容器に対応した廃液管の詰まりを判定することができる。
【0053】
本発明の立体造形物の製造装置は、さらに、通知手段や記録手段を有してもよい。
通知手段は、廃液管に詰まりが生じている場合に、詰まりを作業者やユーザーに知らせる手段である。廃液移送前後での第2の廃液保管容器の重さを比較した結果、これらの重さの差が、予め設定した値より小さいと判定された場合には、廃液管が詰まっていることを通知する。
ここで、通知手段としては、特に制限はなく、表示により通知しても、音や音声により通知しても、いずれの方法であっても構わない。
記録手段は、廃液が第1の廃液保管容器に収容された状態における第2の廃液保管容器の重さと、廃液が第1の廃液保管容器から、第2の廃液保管容器に移送された後の第2の廃液保管容器の重さとを記録する手段である。
【0054】
<<移送手段>>
上述したように、本発明の立体造形物の製造装置は、好ましい態様として、さらに移送手段を有していてもよい。
移送手段は、第1の廃液保管容器に収容された廃液を、廃液管を通して、第2の廃液保管容器に移送する手段である。
移送手段としては、例えば、ポンプ等が挙げられる。ポンプとしては、チュービングポンプ、ピストンポンプ、ダイアフラムポンプなどを用いることができる。
【0055】
移送手段を有することで、例えば、詰まり検出手段において、廃液移送前後での第2の廃液保管容器の重さを測定する際、移送手段の動作に合わせて、測定タイミングを設定・調整することができる。
具体的には、詰まり検出手段は、移送手段の動作前の、廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、移送手段の動作後の、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さとを比較することができる。
【0056】
さらに、移送手段は、以下の動作タイミングで動作するものであるとより好ましい。
好ましい態様として、例えば、移送手段が、第1の廃液保管容器に所定量の廃液が収容されるまでは動作せず待機しており、廃液が所定量を越えたときに動作するように、設定されていることが挙げられる。第1の廃液保管容器に収容される廃液量が少ないと、第2の廃液保管容器の重量を測定する際、誤検知が生じるおそれがあるからである。そこで、一回で第1の廃液保管容器に収容される廃液が少ない場合でも、十分量の廃液を貯まるまで待機する。その後、その廃液を第2の廃液保管容器へ移送することで、第2の廃液保管容器の重量の測定に誤検知が生じるおそれを防止することができる。
また、例えば、移送手段が、パージ処理の処理回数が所定数を越えたときに動作するように、設定されていることが挙げられる。第1の廃液保管容器に収容される廃液量が少ないと、第2の廃液保管容器の重量を測定する際、誤検知が生じるおそれがあるからである。そこで、メンテナンス動作を複数回実施し、第1の廃液保管容器に十分量の廃液を収容し、その後、その廃液を第2の廃液保管容器へ移送することで、第2の廃液保管容器の重量の測定に誤検知が生じるおそれを防止することができる。
【0057】
またさらに、移送手段の動作と連動し、重量測定手段は、以下の動作タイミングで動作するものであると好ましい。
好ましい態様として、例えば、重量測定手段が、移送手段が動作中には重量測定手段による測定は行わず、移送手段の動作を停止した後、重量測定手段の測定を行うように、重量測定手段の測定タイミングが設定されていることが挙げられる。例えば、移送手段であるポンプの駆動中は、駆動振動により、重量測定手段であるロードセルで重量が正確に測定できない場合がある。係る脈動による重量測定誤差を防止するため、ポンプを停止して、振動が収束するのを待って、第2の廃液保管容器の重量を計測するのが好ましい。
また、例えば、重量測定手段が、移送手段を複数回動作した後、重量測定手段の測定を行うように、重量測定手段の測定タイミングが設定されていることが挙げられる。
例えば、造形物が小さく、平滑化部材である平滑化ローラで回収される廃液が少ない場合、以下のことが起きる場合がある。つまり、重量測定手段であるロードセルで測定可能な分解能を下回り、実際は廃液の詰まりは発生していないが、廃液として回収される量が少ないために、詰まりとして検出されてしまう場合がある。そこで、誤検知を防止するために、ロードセルの分解能を上回る量を搬送する回数、ポンプを駆動させて、廃液を十分第2の廃液保管容器へ移送後、第2の廃液保管容器の重量を測定するとよい。
【0058】
<<詰まり検出手段を有する立体造形装置の実施形態>>
以下、詰まり検出手段を有する本発明の製造装置(造形装置)の具体的実施形態について、説明する。
図6Aは、詰まり検出手段を有する立体造形装置の要部の一例を示す模式図である。
また、
図6Bは、詰まり検出手段を有する立体造形装置の要部の他の一例を示す模式図である。
図6Aと
図6Bの立体造形装置の違いは、移送手段が設けられているか否かである。
図6A中、11はモデル部形成材料を吐出する第1の吐出ヘッドである。12はサポート部形成材料を吐出する第2の吐出ヘッドである。13は、吐出した材料を硬化させる紫外線を照射する光源である。
16は吐出した材料の表面を平滑化するための平滑化ローラである。平滑化ローラ16の回転により、ローラ表面にモデル部形成材料や、サポート部形成材料が付着する。
41は、平滑化ローラ16に付着した造形物材料を平滑化ローラ表面から除去するブレードである。平滑化ローラ16の表面に付着した廃液は、平滑化ローラ16から分離され、42の第1の廃液保管容器である廃液トレイ(本明細書では、一次保管トレイともいう)に収容される。
43は、廃液トレイ42にある吐出された材料を吸引するための吸引口である。廃液トレイ42に収容された廃液が蓄積されて、廃液トレイ42から廃液が溢れることを防ぐために、廃液は、定期的あるいは作業者又はユーザーにより設定されたタイミングで、吸引口43から吸引される。
49は、第1の廃液保管容器から集められた廃液を収容する第2の廃液保管容器である。
50は、第2の廃液保管容器49に保管された廃液である。第2の廃液保管容器49中の廃液は、適当なタイミングで造形装置の外へ廃棄される。
51は、第2の廃液保管容器49の重量を測定するための重量測定手段であるロードセルである。
47は、パージ処理等のメンテナンスを行うことにより、第1の吐出ヘッド11、及び第2の吐出ヘッド12から吐出された廃液を一時的に蓄積するための第1の廃液保管容器である。ヘッドは吐出材料の目詰まりを防ぐために立体造形物の造形前、造形中、造形後に定期的あるいは作業者又はユーザーにより設定されたタイミングで、吐出を行い、ヘッドの目詰まりを防止するメンテンナス動作を行う。メンテナンス処理としては、パージ処理や、ワイピング(払拭)処理等が挙げられる。
46は、第1の廃液保管容器47に保管された廃液である。
45は、第1の廃液保管容器47に備えられた遮光板である。第1の廃液保管容器47に保管された廃液46は、光源13から照射される紫外線に暴露されると硬化する可能性がある。そのため、光源13が紫外線を照射する場合は、廃液46の硬化を防ぐため、遮光板46で第1の廃液保管容器47の上部を覆うことが好ましい。
さらに
図6Bで示される立体造形装置においては、移送手段が設けられている。
図6B中、44は、第1の廃液保管容器42から、廃液を第2の廃液保管容器49に搬送するための移送手段のポンプである。
48は、第1の廃液保管容器47から、廃液を第2の廃液保管容器49に搬送するための移送手段のポンプである。
【0059】
<<詰まり検出手段の検出感度>>
本発明の詰まり検出手段を有する立体造形物の製造装置を使って、該詰まり検出手段による廃液管の詰まり検出感度を確認する実験を行なった。
その結果、下記表1の結果が得られた。表1中、詰まりの検出が可能であったときを○、詰まりの検出ができなかったときを×で表す。
【0060】
【表1】
表1より、廃液管を流れる廃液量の流量が低下してきたとき、本発明の詰まり検出手段を用いれば、早期に詰まりが生じ始めたことを検出することができる。
一方、廃液管の圧力を計測することにより、廃液管の詰まりを検出しようとすると、廃液管内の圧力が一定以上に高くなることで検知するため、流量が低下した時点で詰まりを検出することはできない。
したがって、本発明の詰まり検出手段を有する立体造形物の製造装置を使えば、廃液管の詰まりを早期に検出することができる。
【0061】
<<廃液管の詰まり検出方法、及び検出プログラム>>
上述した詰まり検出手段を使って、廃液管の廃液による詰まりを検出することができる。
廃液管の詰まり検出方法は、廃液移送前後での第2の廃液保管容器の重さを比較することにより、立体造形物の製造装置における廃液管の廃液による詰まりを検出する、詰まり検出工程を含む。
廃液管の詰まり検出プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の立体造形物の製造装置において、廃液管の詰まり検出方法を実行させるものである。
廃液管の詰まり検出プログラムによる処理は、上述した立体造形装置10を構成する制御部500を有するコンピュータを用いて実行することができる。
【0062】
次に、廃液管の詰まり検出プログラムの処理手順を示す。
図7は、立体造形装置10の制御部500における廃液管の詰まり検出プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0063】
ステップS101では、立体造形装置10の制御部500は、廃液移送前の廃液が第1の廃液保管容器に収容された状態における第2の廃液保管容器の重量Aを測定し、処理をS102に移行する。
ステップS102では、制御部500は、測定した第2の廃液保管容器の重量Aの測定結果(測定データ)を、立体造形装置10の記憶部へ記憶し、処理をS103に移行する。
ステップS103では、立体造形装置10の制御部500は、廃液が第1の廃液保管容器から第2の廃液保管容器に移送されていることを検知し、処理をS104に移行する。
この場合、立体造形装置10が移送手段を有している場合は、例えば、立体造形装置10の制御部500は、ポンプを駆動し、第1の廃液保管容器に収容されている廃液を第2の廃液保管容器へ移送を開始し、処理をS104に移行することができる。
ステップS104では、立体造形装置10の制御部500は、廃液の移送が終了したことを検知し、処理をS104に移行する。立体造形装置10が移送手段を有している場合は、例えば、立体造形装置10の制御部500は、ポンプの駆動を終了し、処理をS105に移行する。
ステップS105では、立体造形装置10の制御部500は、廃液移送後の廃液が第1の廃液保管容器から第2の廃液保管容器に移送された後の第2の廃液保管容器の重量Bを測定し、処理をS106に移行する。
ステップS106では、制御部500は、測定した第2の廃液保管容器の重量Bの測定結果(測定データ)を、立体造形装置10の記憶部へ記憶し、処理をS108に移行する。
ステップS107では、制御部500は、重量Aと重量Bとを比較する。具体的には、重量Aと重量Bとの差分をとり、その差分を、予め設定した閾値と比較し、該閾値より大きいか小さいかを判定する。
重量Bが重量Aより重くなっており、重量Bと重量Aとの差分が大きく、その差分が閾値より大きい場合には、処理をS108に移行する。
一方、重量Bが重量Aに対しあまり重量が変わっておらず、重量Bと重量Aとの差分が小さく、その差分が閾値より小さい場合には、処理をS109に移行する。
ステップS108では、制御部500は、廃液管に廃液による詰まりは生じていないと判定し、本処理を終了する。引き続き造形処理を継続して行うことができる。
ステップS109では、制御部500は、廃液管に詰まりが生じていると判定し、処理をS110に移行する。ステップS109では、廃液管に詰まりが生じていることが検出されたときは、その旨、通知する。
ステップS110では、制御部500は、ステップS109における詰まりの検出結果を受けて、造形処理を停止し、本処理を終了する。作業者又はユーザーは、この廃液管に詰まりありとの検出結果を受けて、例えば、廃液管の交換等の対策を講ずることにより、廃液管の詰まりに対して対処することができる。
【0064】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 造形材料からなる造形層を積層して造形を行う造形手段と、
前記造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記廃液管の廃液による詰まりを検出する詰まり検出手段と、
を有することを特徴とする立体造形物の製造装置である。
<2> 前記詰まり検出手段が、前記重さの比較をした結果、重さの差が、予め設定した閾値より小さい場合、前記廃液管が詰まっていると判定する、前記<1>に記載の立体造形物の製造装置である。
<3> 前記詰まり検出手段が、前記重さの比較した結果、重さの差が、予め設定した閾値より小さい場合、前記廃液管が詰まっていることを通知する通知手段を有する、前記<1>から<2>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<4> 廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を記録する記録手段を有する、前記<1>から<3>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<5> 前記第1の廃液保管容器が複数個存在し、それぞれの前記第1の廃液保管容器に対応して、前記廃液管が複数個存在する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<6> 複数個存在する前記第1の廃液保管容器のうち、一つの前記第1の廃液保管容器は、平滑化部材により回収された廃液を収容するためのものであり、他の前記第1の廃液保管容器は、パージ処理により回収された廃液を収容するためのものである、前記<5>に記載の立体造形物の製造装置である。
<7> 前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を、前記第2の廃液保管容器に移送する移送手段をさらに有し、
前記詰まり検出手段が、前記移送手段の動作前の、廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、前記移送手段の動作後の、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さとを比較する、前記<1>から<6>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<8> 前記移送手段は、前記第1の廃液保管容器に所定量の廃液が収容されるまでは動作せず待機しており、廃液が所定量を越えたときに動作するように、前記移送手段の動作タイミングが設定されている、前記<7>に記載の立体造形物の製造装置である。
<9> 前記第1の廃液保管容器が、パージ処理により回収された廃液を収容するためのものである場合に、
前記移送手段は、パージ処理の処理回数が所定数を越えたときに動作するように、前記移送手段の動作タイミングが設定されている、前記<7>から<8>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<10> 前記重量測定手段は、前記移送手段が動作中には前記重量測定手段による測定は行わず、前記移送手段の動作を停止した後、前記重量測定手段の測定を行うように、前記重量測定手段の測定タイミングが設定されている、前記<7>から<9>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<11> 前記重量測定手段は、前記移送手段を複数回動作した後、前記重量測定手段の測定を行うように、前記重量測定手段の測定タイミングが設定されている、前記<7>から<10>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置である。
<12> パージ処理により回収された廃液を収容するための前記第1の廃液保管容器には、前記造形材料を硬化するための光源と前記第1の廃液保管容器との間に、遮光板が配される、前記<6>に記載の立体造形物の製造装置である。
<13> 造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、を有する立体造形物の製造装置を用いて、立体造形物を製造する立体造形物の製造方法であって、
前記造形材料からなる造形層を積層して造形を行う造形工程と、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から、前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記廃液管の廃液による詰まりを検出する詰まり検出工程と、
を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<14> 造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、を有する立体造形物の製造装置に用いる、立体造形物の製造プログラムであって、
前記造形材料からなる造形層を積層して造形を行い、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から、前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記廃液管の廃液による詰まりを検出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする立体造形物の製造プログラムである。
<15> 造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、を有する立体造形物の製造装置を用いて、前記廃液管の前記廃液による詰まりを検出する廃液管の詰まり検出方法であって、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から、前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記立体造形物の製造装置における前記廃液管の廃液による詰まりを検出する、詰まり検出工程、
を含むことを特徴とする廃液管の詰まり検出方法である。
<16> 造形材料からなる廃液を一時的に収容する第1の廃液保管容器と、
廃液管を通して、前記第1の廃液保管容器に収容された廃液を蓄積する第2の廃液保管容器と、
前記第2の廃液保管容器の重さを測定する重量測定手段と、を有する立体造形物の製造装置に用いる廃液管の詰まり検出プログラムであって、
廃液が前記第1の廃液保管容器に収容された状態における前記第2の廃液保管容器の重さと、廃液が前記第1の廃液保管容器から前記第2の廃液保管容器に移送された後の前記第2の廃液保管容器の重さと、を比較することにより、前記立体造形物の製造装置における前記廃液管の廃液による詰まりを検出する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする廃液管の詰まり検出プログラムである。
【0065】
前記<1>から<12>のいずれかに記載の立体造形物の製造装置、前記<13>に記載の立体造形物の製造方法、前記<14>に記載の立体造形物の製造プログラム、前記<15>に記載の廃液管の詰まり検出方法、前記<16>に記載の廃液管の詰まり検出プログラムによれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【文献】特開2013-67019号公報
【文献】特開2013-203065号公報
【符号の説明】
【0067】
10 立体造形装置
11 第1の吐出ヘッド
12 第2の吐出ヘッド
13 UV照射ユニット
14 造形ステージ
16 平滑化ローラ
20 造形ユニット