(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置及び液体を吐出する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2018039727
(22)【出願日】2018-03-06
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】松木 佑典
(72)【発明者】
【氏名】矢仲 厚志
(72)【発明者】
【氏名】目▲崎▼ 大輔
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206324(JP,A)
【文献】特開2015-085648(JP,A)
【文献】特開2014-117799(JP,A)
【文献】特開2010-132739(JP,A)
【文献】特開2003-285422(JP,A)
【文献】米国特許第08851609(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0124017(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0207223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体に吐出された液体に硬化線を照射する照射部と、
前記記録媒体と前記照射部との間に設けられ、前記照射部から照射される硬化線の照射面積を可変させる照射面積可変部と、を備え、
前記記録媒体の搬送方向と垂直な方向を主走査方向とし、前記記録媒体の搬送方向と平行な方向を副走査方向としたとき、前記液体吐出ヘッド、前記照射部及び前記照射面積可変部は主走査方向に走査され、
前記照射面積可変部は、副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御する
とともに、前記液体の表面張力の値と、前記記録媒体の表面エネルギーの値の大小に応じて照射面積を可変させることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体に吐出された液体に硬化線を照射する照射部と、
前記記録媒体と前記照射部との間に設けられ、前記照射部から照射される硬化線の照射面積を可変させる照射面積可変部と、を備え、
前記記録媒体の搬送方向と垂直な方向を主走査方向とし、前記記録媒体の搬送方向と平行な方向を副走査方向としたとき、前記液体吐出ヘッド、前記照射部及び前記照射面積可変部は主走査方向に走査され、
前記照射面積可変部は、副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御するとともに、前記記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれるか否かに応じて照射面積を可変させることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記照射面積可変部は、前記記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれる場合、照射面積を拡大し、前記記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれない場合、照射面積を縮小することを特徴とする請求項
2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体に吐出された液体に硬化線を照射する照射部と、
前記記録媒体と前記照射部との間に設けられ、前記照射部から照射される硬化線の照射面積を可変させる照射面積可変部と、を備え、
前記記録媒体の搬送方向と垂直な方向を主走査方向とし、前記記録媒体の搬送方向と平行な方向を副走査方向としたとき、前記液体吐出ヘッド、前記照射部及び前記照射面積可変部は主走査方向に走査され、
前記照射面積可変部は、副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御するとともに、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出してから前記照射部が液体に硬化線を照射するまでの時間に応じて照射面積を可変させることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項5】
液体吐出ヘッドにより記録媒体に液体を吐出する吐出工程と、
前記記録媒体に吐出された液体に照射部により硬化線を照射する照射工程と、
前記記録媒体と前記照射部との間に設けられた照射面積可変部により、前記照射部から照射される硬化線の照射面積を可変させる照射面積可変工程と、を有し、
前記記録媒体の搬送方向と垂直な方向を主走査方向とし、前記記録媒体の搬送方向と平行な方向を副走査方向としたとき、前記液体吐出ヘッド、前記照射部及び前記照射面積可変部を主走査方向に走査させ、
前記照射面積可変部は、副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御する
とともに、前記液体の表面張力の値と、前記記録媒体の表面エネルギーの値の大小に応じて照射面積を可変させることを特徴とする液体を吐出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置及び液体を吐出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置における作像方式、特にUVインクを搭載する装置については、インクの吐出からUV光照射までの時間間隔や光源出力を制御することで記録画像の最表面の形状を制御することが知られている。
【0003】
インク吐出直後に光源から光照射を行い、インクを硬化して記録画像を形成する方法が一般的であるが、インク吐出後に時間間隔を空けてから光照射を行う作像方法もある。例えばコーティングと呼ばれる手法では、記録媒体にインクを吐出して一定時間経過後にUV光を照射させる方法により、硬化したインク表面を平滑にすることで光沢感を付与している。また、インクを吐出してからUV光を照射するまでの時間を調整することで光沢感を制御している。
【0004】
しかし、従来では、UV光を照射するまでの時間の調整は、光照射のON/OFFによるものである。例えば、インク吐出時のスキャン(1回の走査)では光源をOFFにし、次のスキャンでインクを吐出せずにUV光を照射することで前のスキャンで吐出されたインクを硬化させる。この場合、インクがUV光を受けて化学反応する際に、インクの硬化収縮に起因して、硬化部と未硬化部の境界が生じてしまう。このような境界はヘッドの走査方向に沿って帯状に生じることとなり、いわゆる記録画像のバンディングが生じる。
【0005】
バンディングを抑制するためには、記録画像よりも大型かつ長尺の光源を装置に搭載する必要があり、装置の大型化や複雑化になる。また、このような光源を別工程で用意する場合、産業用途としてインライン化することが難しくなる。
【0006】
特許文献1では、光源から照射された光の照射面積を記録ヘッドによるインク吐出に対応するように調整する照射面積調整手段を備える光照射装置が開示されている。しかし、特許文献1では、インク吐出量によりドット径を調整する際に光照射をも調整することにで、正確かつ迅速なドット径の検出を必要とせず装置構成を簡素化することができるが、吐出されたインクに対してピンポイントでの光量制御を必要とするため、光量を大きくした場合は、副走査方向に隣接する1つ前のスキャンで印刷した画像に対して、漏れ光による影響を与えてしまい、バンディングを発生させてしまうという問題がある。
【0007】
特許文献2では、紫外線照射部を、多数の紫外線発光ダイオードのチップをマトリックス状に配置した構成とし、紫外線硬化型インク、紫外線硬化型透明インクの吐出範囲に対応する位置のLED体を照射部とし、照射部の各LED体の光量を制御することが開示されている。しかし、特許文献2でも、光量を大きくした場合は、副走査方向に隣接する1つ前のスキャンで印刷した画像に対して、漏れ光による影響を与えてしまい、バンディングを発生させてしまうという問題がある。
【0008】
また、透明なインクは、表面保護の目的の他に光沢感を付与するために用いられることがあり、得られる画像の光沢感を制御するには透明インクの使用有無やインクの種類を変えることで例えば光沢感のある画像とマッド感のある画像を選定していた。しかし、この場合、インクの種類に制限が生じる、工程数が増える等の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、良好な画像が得られるとともに、吐出する液体が同一であっても光沢感のある画像とマッド感のある画像を簡易に選定できる液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記記録媒体に吐出された液体に硬化線を照射する照射部と、前記記録媒体と前記照射部との間に設けられ、前記照射部から照射される硬化線の照射面積を可変させる照射面積可変部と、を備え、前記記録媒体の搬送方向と垂直な方向を主走査方向とし、前記記録媒体の搬送方向と平行な方向を副走査方向としたとき、前記液体吐出ヘッド、前記照射部及び前記照射面積可変部は主走査方向に走査され、前記照射面積可変部は、副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御するとともに、前記液体の表面張力の値と、前記記録媒体の表面エネルギーの値の大小に応じて照射面積を可変させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な画像が得られるとともに、吐出する液体が同一であっても光沢感のある画像とマッド感のある画像を簡易に選定できる液体を吐出する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る液体を吐出する装置の一例における全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る液体を吐出する装置の一例におけるハードウェア構成のブロック図である。
【
図3】本発明に係る液体を吐出する装置の一例における正面図である。
【
図4】本発明に係る液体を吐出する装置の一例における平面図である。
【
図5】主走査方向、副走査方向及び記録媒体の搬送方向を説明するための上面図(A)及び側面図(B)である。
【
図6】液体の吐出、硬化線の照射、更に液体の吐出を模式的に説明するための側面図(A)~(C)である。
【
図7】本発明に係る液体を吐出する装置の一例における要部を模式的に説明するための上面図(A)及び側面図(B)である(パターン1)。
【
図8】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例における要部を模式的に説明するための上面図(A)及び側面図(B)である(パターン2)。
【
図9】本発明に係る液体を吐出する装置の一例における正面図である。
【
図10】本発明に係る液体を吐出する装置の一例における側面図である(パターン1)。
【
図11】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例における側面図である(パターン2)。
【
図12】液体の濡れ広がり方の違いを説明するための断面模式図である。
【
図13】本発明によって得られた画像の一例を説明するための断面模式図である。
【
図14】本発明によって得られた画像の他の例を説明するための断面模式図である。
【
図15】照射ユニットの一例を説明するための模式図である。
【
図16】照射ユニットの他の例を説明するための模式図である。
【
図17】照射面積を可変する方法の他の例を説明するための模式図である。
【
図18】照射面積を可変する方法の他の例を説明するための模式図である。
【
図19】照射面積を可変する方法の他の例を説明するための模式図である。
【
図20】照射面積を可変する方法の他の例を説明するための模式図である。
【
図21】本発明における照射部の他の例を説明するための模式図である。
【
図22】本発明における照射部の他の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置及び液体を吐出する方法法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
(液体を吐出する装置及び液体を吐出する方法)
まず、本発明に係る液体を吐出する装置の一実施形態について、全体構成を説明する。
図1は、液体吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図であって、
図1(A)は装置前面側から見た斜視図、
図1(B)は装置背面側から見た斜視図である。
【0015】
このインクジェット記録装置10は、キャリッジ200と、記録媒体を載置するステージ13と、を備える。キャリッジ200は、複数のノズルが設けられた複数の液体吐出ヘッドを備えたインクジェット方式のキャリッジであり、液体を記録ヘッドのノズルから吐出することによって画像を形成する。ノズルは、ステージ13との対向面に設けられている。なお、本実施形態では、液体は、一例として、紫外線硬化性を有する。
【0016】
また、キャリッジ200のステージ13との対向面には、紫外線を照射する光源である照射ユニット400が設けられている。照射ユニット400(照射部の一例)は、ノズルから吐出された液体を硬化させる波長の光を照射する。
【0017】
左右の側板18a,18bにはガイドロッド19が架け渡されており、ガイドロッド19は、キャリッジ200をX方向(主走査方向)に移動可能に保持している。また、キャリッジ200、ガイドロッド19、及び側板18a,18bは一体となって、ステージ13の下部に設けられたガイドレール29に沿ってY方向(副走査方向)に移動可能となっている。更に、キャリッジ200は、Z方向(上下方向)に移動可能に保持されている。
【0018】
次に、他の実施形態についてハードウェア構成の例を示しつつ説明する。
図2は、本実施形態の液体吐出装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図であり、
図3は、本実施形態の液体吐出装置1の正面図の一例を示す模式図であり、
図4は、本実施形態の液体吐出装置1の平面図の一例を示す模式図である。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の液体吐出装置1は、コントローラユニット3と、検知群4と、搬送部である搬送ユニット100と、キャリッジ200と、ヘッドユニット300(液体吐出ヘッドの一例)と、照射ユニット400(照射部の一例)と、メンテナンスユニット500と、を備える。また、コントローラユニット3は、ユニット制御回路31と、メモリ32と、CPU(Central Processing Unit)33と、I/F34と、を備える。なお、硬化装置は、
図2の破線で示すように、少なくともコントローラユニット3と照射ユニット400とを含む装置であればよい。
【0020】
I/F34は、液体吐出装置1を外部のPC(Personal Computer)2と接続するためのインタフェースである。液体吐出装置1とPC2との接続形態はどのようなものであってもよく、例えば、ネットワークを介した接続や通信ケーブルで両者を直接接続する形態などが挙げられる。
【0021】
検知群4は、例えば、
図3及び
図4に示す高さセンサ41など液体吐出装置1に備えられている各種センサなどが挙げられる。
【0022】
CPU33は、メモリ32を作業領域に用いて、液体吐出装置1の各ユニットの動作を、ユニット制御回路31を介して制御する。具体的には、CPU33は、PC2から受信する記録データ及び検知群4により検知されたデータに基づいて、各ユニットの動作を制御し、記録媒体101(基材などとも称する)上に液体塗布面102である画像を形成する。
【0023】
なお、PC2には、プリンタドライバがインストールされており、このプリンタドライバにより画像データから、液体吐出装置1に送信される記録データが生成される。記録データは、液体吐出装置1の搬送ユニット100などを動作させるコマンドデータと、画像(液体塗布面102)に関する画素データと、を含む。画素データは、画素ごとに2ビットのデータで構成されており、4階調で表現される。
【0024】
搬送ユニット100は、ステージ130及び吸着機構120を有する。吸着機構120は、ファン110及びステージ130に設けられた複数の吸着孔100aを有する。吸着機構120は、ファン110を駆動して吸着孔100aから記録媒体101を吸着することにより、記録媒体101を搬送ユニット100に一時的に固定する。吸着機構120は静電吸着を用いて用紙を吸着してもよい。搬送ユニット100は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)の移動が制御される。
【0025】
搬送ユニット100は、
図4に示すように搬送制御部210、ローラ105、及びモータ104を有する。搬送制御部210は、モータ104を駆動してローラ105を回転することで、記録媒体101をY軸方向(副走査方向)に移動する。
【0026】
搬送ユニット100は、記録媒体101ではなく、キャリッジ200をY軸方向(副走査方向)に移動してもよい。すなわち、搬送ユニット100は、記録媒体101とキャリッジ200とをY軸方向(副走査方向)に相対的に移動させる。
【0027】
例えば、搬送ユニット100は、
図4の右側に示すように、キャリッジ200をX軸方向(主走査方向)に案内する二本のガイド201を支持する側板407bと、側板407bを支持する台406と、台406に固定されたベルト404と、ベルト404が掛け回された駆動プーリ403及び従動プーリ402と、駆動プーリ403を回転駆動するモータ405と、搬送制御部210とを有する。
【0028】
更に、搬送ユニット100は、
図4の左側に示すように、キャリッジ200をX軸方向(主走査方向)に案内する二本のガイド201を支持する側板407aと、側板407aをスライド移動可能に支持する台408と、台408に形成され、側板407aを副走査方向に案内する溝409と、を有する。
【0029】
搬送ユニット100は、搬送制御部210でモータ405を駆動することにより、駆動プーリ403を回転させ、ベルト404をY軸方向(副走査方向)に移動する。キャリッジ200が支持された台406がベルト404の移動と共にY軸方向(副走査方向)に移動することで、キャリッジ200をY軸方向(副走査方向)に移動することができる。側板407aは台406のY軸方向(副走査方向)への移動に伴い、台408の溝409に沿ってY軸方向(副走査方向)に移動する。
【0030】
ヘッドユニット300は、K、C、M、Y、CL、WのUV硬化型インク(液体の一例)をそれぞれ吐出するヘッド300K、300C、300M、300Y、300CL、300Wにより構成されており、キャリッジ200の下面に備えられている。各ヘッドはピエゾを備えており、CPU33(ユニット制御回路31)によりピエゾに駆動信号が印加されると、ピエゾは、収縮運動を起こし、収縮運動による圧力変化が生じることにより、UV硬化型インクを記録媒体101上に吐出する。これにより、記録媒体101上には、液体塗布面102(液体塗布面の一例)が形成される。
なお、ヘッドの個数、配置はこれに限られるものではなく、適宜変更することができる。
【0031】
本実施形態に好適なUV硬化型インクとして、例えば、メタクリレート系モノマーを含むインクを挙げることができる。メタクリレート系モノマーは皮膚感さ性が比較的弱いという利点があるが、一般のインクに比べ硬化収縮の度合いが大きいという特性がある。
【0032】
照射ユニット400は、キャリッジ200の側面(X軸方向の面)に備えられており、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、UV光を照射する。照射ユニット400は、主として、UV光を照射するUV照射ランプにより構成されている。
【0033】
キャリッジ200は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Z軸方向(高さ方向)及びX軸方向(主走査方向)の移動が制御される。
【0034】
キャリッジ200は、ガイド201に沿って主走査方向(X軸方向)に走査移動する。走査部206は、駆動プーリ203、従動プーリ204、駆動ベルト202、及びモータ205を有する。キャリッジ200は、駆動プーリ203及び従動プーリ204の間に掛け回された駆動ベルト202に固定されている。モータ205で駆動ベルト202を駆動することにより、キャリッジ200は主走査方向に左右に走査移動する。ガイド201は、装置本体の側板211A及び211Bに支持されている。高さ調整部207はモータ209及びスライダ208を有する。高さ調整部207は、モータ209を駆動してスライ
ダ208を上下動させることで、ガイド201を上下させる。ガイド201が上下移動することによりキャリッジ200が上下動し、キャリッジ200の記録媒体101に対する高さを調整することができる。
【0035】
以下、液体吐出装置1の画像形成動作について説明する。
まず、搬送ユニット100は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)に移動し、記録媒体101を、画像(液体塗布面102)を形成させるための初期位置に位置させる。
【0036】
続いて、キャリッジ200は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、ヘッドユニット300によるUV硬化型インクの吐出に適した高さ(例えば、ヘッドユニット300と記録媒体101とのヘッド間ギャップが1mmとなる高さ)に移動する。なお、ヘッドユニット300の高さは、高さセンサ41により検知されることで、CPU33に把握される。
【0037】
続いて、キャリッジ200は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、X軸方向(主走査方向)に往復移動し、この往復移動の際に、ヘッドユニット300は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、UV硬化型インクを吐出する。これにより、記録媒体101上には、1走査分の画像(液体塗布面102)が形成される。
【0038】
続いて、記録媒体101上に1走査分の画像(液体塗布面102)が形成されると、搬送ユニット100は、CPU33(ユニット制御回路31)からの駆動信号に基づいて、Y軸方向(副走査方向)に1走査分移動する。
【0039】
以下、画像(液体塗布面102)の形成が完了するまで、1走査分の画像(液体塗布面102)を形成する動作と搬送ユニット100をY軸方向へ1走査分移動させる動作とが交互に行われる。
【0040】
そして、記録媒体101上での画像(液体塗布面102)の形成が完了すると、UV硬化型インクが平滑化される時間(以下、「レベリング時間」と称する場合がある)まで待機され、この後、照射ユニット400によるUV光の照射が行われる。
【0041】
<第一の実施形態>
次に、本実施形態の液体を吐出する装置の詳細を説明する。
本実施形態の画像形成の一例を
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、主走査方向、副走査方向及び記録媒体の搬送方向を説明するための上面図(A)及び側面図(B)である。
図5(A)では、記録媒体101、照射ユニット400(照射部の一例)が図示されている。照射ユニット400は主走査方向Xに走査され、硬化線420を照射する。また、
図5(B)は
図5(A)における側面図であり、照射ユニット400から硬化線420が照射される。なお、硬化線420は模式的に図示するものである。
【0042】
図6は、液体の吐出、硬化線の照射、更に液体の吐出の一例を模式的に説明するための側面図(A)~(C)であり、
図6における(A)~(C)は時間の経過を表している。
図示されるキャリッジ200は、液体吐出及び光照射を行う部材を備えており、主走査方向X、すなわち副走査方向Yと直交する方向(紙面の奥方向)に走査される。
なお、主走査方向(a)の一端から他端へ走査する処理をスキャンとも称する。
【0043】
まず、
図6(A)に示されるように、スキャン時に液体60の吐出のみを行う。この時点では、硬化線を照射しないため、液体60は硬化せず、表面張力により液滴の表面が平滑になる。この工程をレベリングなどとも称する。
【0044】
次いで、
図6(B)に示されるように、次のスキャンでは硬化線420の照射のみを行う。液体の吐出と硬化線の照射をスキャンごとに分けることで、液体の表面形状が平滑になる。一方、液体を吐出しながら硬化線を照射した場合、液体が滴の状態で硬化するため、表面形状が凹凸になる。
【0045】
次いで、
図6(C)に示されるように、上記の硬化線420の照射により、硬化膜62が形成され、次のスキャンでは
図6(A)のように液体60の吐出のみが行われる。
【0046】
従来技術では、画像形成環境、液体や記録媒体の種類等により液体の濡れ広がり具合が変化することに対応できておらず、硬化線を照射させた場合に適切な照射面積にできないことがあり、硬化線を照射する1スキャンの際に硬化部と未硬化部が生じることがある。このように硬化部と未硬化部が生じた場合、硬化部と未硬化部の境界が生じ、記録画像に帯状の不具合いわゆるバンディングが発生するという問題があった。これは液体が硬化線を受けて化学反応する際に、硬化収縮することも要因の一つであると推察されている。
【0047】
また、照射ユニット400は副走査方向に対してある一定の余分な光(漏れ光)を照射しながら走査する。この漏れ光が例えば液体吐出ヘッドやメンテナンスユニットなどに照射されると、液体が硬化するため各部材の故障につながる。そのため、上述のバンディングを抑制するには、単に照射面積を大きくすればよいというわけにもいかない。なお、従来では、漏れ光制御の開発は主に他の部材への弊害を考慮して開発するケースが多く、バンディング発生の背景にもなっている。
【0048】
本発明者らは詳細を検討し、硬化線の面積を所定の方向に可変させて、副走査方向の漏れ光を制御することで、上記の不具合を抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0049】
本発明の液体を吐出する装置は、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記記録媒体に吐出された液体に硬化線を照射する照射部と、前記記録媒体と前記照射部との間に設けられ、前記照射部から照射される硬化線の照射面積を可変させる照射面積可変部と、を備え、前記記録媒体の搬送方向と垂直な方向を主走査方向とし、前記記録媒体の搬送方向と平行な方向を副走査方向としたとき、前記液体吐出ヘッド、前記照射部及び前記照射面積可変部は主走査方向に走査され、前記照射面積可変部は、副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御することを特徴とする。
【0050】
本発明によれば、バンディングを抑制するために装置が大型化することはなく、簡易な構成でよいという優れた効果がある。本発明ではバンディングが抑制された高品質の画像を得ることができる。
また、本発明では漏れ光を単に遮断するだけではなく、照射面積可変部により副走査方向の硬化線の照射面積を可変させているため、得られる画像の光沢感を制御することができ、吐出する液体が同一であっても光沢感のある画像とマッド感のある画像を簡易に選定できる。
【0051】
次に、
図7~
図11を用いて、照射面積可変部が副走査方向の照射面積を可変させ、副走査方向の漏れ光を制御する態様について説明する。
【0052】
図7(A)及び
図8(A)は、本実施形態の液体を吐出する装置の要部について模式的に説明するための上面図であり、照射ユニット400が硬化線420を照射している場合の一例が示されている。照射ユニット400は、図中矢印に示されるように、主走査方向Xに走査される。また、記録媒体101は副走査方向Yの方向に搬送される。
【0053】
図7(B)及び
図8(B)は、本実施形態の液体を吐出する装置の要部について模式的に説明するための側面図である。実線で図示される照射ユニット400及び硬化線420は現スキャンを示し、破線で図示される照射ユニット400’及び硬化線420’は前スキャンを示す。
【0054】
図7及び
図8において、実線で図示される照射ユニット400及び硬化線420は現スキャンを示し、破線で図示される照射ユニット400’及び硬化線420’は前スキャンを示す。
【0055】
図9は、本実施形態における要部を模式的に説明するための正面図である。
図10及び
図11は、本実施形態における要部を模式的に説明するための側面図であり、それぞれ
図7(B)及び
図8(B)の別の側面図であり、液体60をあわせて示している。
【0056】
ここでは、照射面積を縮小させる
図7及び
図10をパターン1と称し、照射面積を拡大させる
図8及び
図11をパターン2と称して説明する。
なお、本実施形態において照射面積を拡大、縮小とあるのは、照射面積を増加させる方向に可変させた場合を拡大とし、照射面積を減少させる方向に可変させた場合を縮小としている。
【0057】
パターン1とパターン2を比べると、硬化線420の副走査方向Yに対する照射面積が相違しており、パターン1では小さく、パターン2では大きくなっている。
パターン1では、
図10に示すように、吐出された液体が滴状の形状で硬化線を照射しており、縮小された照射面積で硬化線420が照射され、液体を硬化させている。これにより、液体は凹凸形状を有した状態で硬化する。
【0058】
一方、パターン2では、
図11に示すように、吐出された液体が濡れ広がった状態で硬化線を照射しており、拡大された照射面積で硬化線420が照射され、液体を硬化させている。これにより、液体は濡れ広がった状態で硬化し、パターン1に比べて表面がより平滑になる。
【0059】
また、パターン1及びパターン2ともに、副走査方向の漏れ光が制御されているので、液体吐出ヘッドやメンテナンスユニットなどに照射されることにより生じる各部材の故障を防止することができる。
吐出された液体の副走査方向の面積よりも大きな面積で硬化線を照射した結果、硬化に寄与しない硬化線が生じる。本実施形態では、この硬化線のことを副走査方向の漏れ光と称する。
また、本実施形態において漏れ光を制御するとは、吐出された液体の副走査方向の面積以上、かつ、硬化に寄与しない硬化線が十分に低減された照射面積の硬化線を照射することを意味する。
【0060】
次に、本実施形態により得られる画像について
図12~
図14を用いて説明する。
図12は、液体60が記録媒体上に吐出された場合の断面模式図である。例えば、記録媒体に吐出されてからの時間の経過、液体の表面張力と記録媒体の表面エネルギーとの関係等により、液体60の形状が滴状、濡れ広がった形状のように違いが生じる。紙面左側の液体60aは滴状であり、紙面右側の液体60bは濡れ広がった形状である。
【0061】
図13は、
図7及び
図10に示されるパターン1で得られた画像の一例を模式的に示した断面図である。パターン1では、記録媒体に吐出された液体が濡れ広がる前の滴状で硬化させている。そのため、硬化した液体の形状は
図13に示すように球の状態を維持する。球の状態では光が入り込んだ際に反射光の角度も大きくなるため、肉眼でこの光を捉えた場合に光沢感のない、マッド感のある画像として認識される。
【0062】
一方、
図14は、
図8及び
図11に示されるパターン2で得られた画像の一例を模式的に示した断面図である。パターン2では、記録媒体に吐出された液体が濡れ広がった状態で硬化させている。そのため、硬化した液体の形状は
図14に示すように濡れ広がった形状となる。このように液体が記録媒体上で濡れ広がった状態で光照射した場合は、表面形状が平滑な状態で硬化される。このため反射光の角度が小さくなり光沢感のある画像として認識される。
【0063】
本実施形態における照射面積を制御する方法について、
図15及び
図16を用いて説明する。
図15及び
図16は照射ユニット400を記録媒体101側から見た場合の上面図を模式的に示す図である。
【0064】
本実施形態の照射ユニットは内部に光源を有し、記録媒体に対して略垂直に光源から硬化線を照射する。光源は何層かの透明なガラスフィルター等で保護されており、外気と触れる最表面を窓面410とする。
【0065】
本実施形態における照射面積可変部はシャッター411(遮蔽部)を有している。シャッター411を副走査方向Yに対して開閉可能にする構成により、硬化線の照射面積を可変させる。
【0066】
図15は、シャッター411が窓面410の一部を遮蔽し、照射面積を縮小させている場合の一例である。
図16は、シャッター411が窓面410を遮蔽せず、照射面積を拡大させている場合の一例である。ここでは、副走査方向における窓面410の長さLを照射面積として表している。
なお、シャッター411としては、硬化線を遮蔽できればよく、材質等は適宜変更することができる。
【0067】
【0068】
図17は、液体の吐出と硬化線の照射を1スキャンで行う場合、又は、液体の吐出を行った次のスキャンで硬化線の照射を行う場合の例である。この場合、副走査方向の硬化線の照射面積を縮小させ、液体を硬化させる。
【0069】
図18は、液体の吐出を行ったスキャンと同時に又は次のスキャンで、硬化線の照射を行わず、副走査方向に液体吐出ヘッドが移動して液体の吐出を行った後に、硬化線の照射を行う場合の例である。ここでは、2ライン分の液体に対して同時に硬化線を照射している。この場合、副走査方向の硬化線の照射面積を拡大させ、液体を硬化させる。
【0070】
このように、硬化線の照射面積を可変させる機構を有することにより、連続したスキャンで液体の吐出を行い、その後のスキャンで一括して硬化線を照射する等の画像形成方法にも対応することができる。この場合においても、バンディングの発生が抑制された良好な画像を得ることができる。
【0071】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0072】
本実施形態における照射面積可変部は、液体の表面張力の値と、記録媒体の表面エネルギーの値の大小に応じて照射面積を可変させる。
【0073】
液体の表面張力の値と、記録媒体の表面エネルギーの値の大小の違いにより、記録媒体に吐出された液体は
図12のように形状に違いが生じる。液体60aの表面張力が記録媒体の表面エネルギーよりも大きい(液体の表面張力>記録媒体の表面エネルギー)場合は、例えば
図12左側の液体60aのようになる。一方、液体60bの表面張力が記録媒体の表面エネルギーよりも小さい(液体の表面張力<記録媒体の表面エネルギー)場合は、例えば
図12右側の液体60bのようになる。
【0074】
このため、液体の表面張力が記録媒体の表面エネルギーよりも大きい場合は、上述のパターン1(
図7、
図10)のように、照射面積を縮小させて硬化線を照射し、液体60aを硬化させる。一方、液体の表面張力が記録媒体の表面エネルギーよりも大きい場合は、上述のパターン2(
図8、
図11)のように、照射面積を拡大させて硬化線を照射し、液体60bを硬化させる。
【0075】
また、照射面積可変部は、液体の表面張力の値が記録媒体の表面エネルギーの値よりも大きい場合、照射面積を拡大することが好ましい。一方、照射面積可変部は、液体の表面張力の値が記録媒体の表面エネルギーの値よりも小さい場合、照射面積を縮小することが好ましい。
なお、本実施形態において照射面積を拡大するとは、液体の表面張力と記録媒体の表面エネルギーが略等しい場合に比べて照射面積を大きくすることを意味し、照射面積を縮小するとは、液体の表面張力と記録媒体の表面エネルギーが略等しい場合に比べて照射面積を小さくすることを意味する。
【0076】
本実施形態によれば、副走査方向の余分な硬化線をより抑制することができ、副走査方向に対して液体の未硬化部分と硬化部分が生じることを更に抑制することができる。
【0077】
記録媒体の表面エネルギーに関しては特に、記録媒体の凹凸にもよるが仮に無視できるとすると、組成が有機物であるか、無機物であるかに大別される。
【0078】
高分子化合物が含まれる場合は表面エネルギーが大きくなる傾向がある。プラスチックのシートやフィルム、表面処理された金属などがこれに該当する。表面エネルギーが大きい場合は液体が濡れ広がりやすくなるため、上述したように照射面積を拡大させることが好ましい。
【0079】
一方、記録媒体が金属のような無機物の場合は、表面エネルギーが小さくなる傾向にあるため、インクが媒体に着弾した後も濡れ広がりにくく、液体が球形を維持した状態になる。このため、照射幅が大きいと他の画像領域に漏れ光が照射されるリスクがあるため、照射面積を縮小させるよう制御させることが好ましい。
【0080】
上記を考慮し、これに制限されるものではないが、記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれるか否かに応じて照射面積を可変させることが好ましい。
分子量1000以上の有機物としては、例えば木材等が挙げられる。
【0081】
記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれる場合、
図10(パターン1)に示すように縮小された照射面積で硬化線を照射することが好ましい。記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれない場合、
図11(パターン2)に示すように拡大された照射面積で硬化線を照射することが好ましい。
【0082】
ここで、記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれる場合とは、記録媒体の平均分子量が1000以上であることを意味する。
また、液体液体の表面張力及び記録媒体の表面エネルギーは、公知の方法や装置により測定でき、例えば表面張力はWilhelmy法(プレート法)、表面エネルギーはiGC-SEA.インバースガスクロマトグラフィーを用いて測定する。
【0083】
また、照射面積可変部は、記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれる場合、照射面積を拡大することが好ましい。一方、記録媒体に分子量1000以上の有機物が含まれない場合、照射面積を縮小することが好ましい。
この場合、副走査方向の余分な硬化線をより抑制することができ、副走査方向に対して液体の未硬化部分と硬化部分が生じることを更に抑制することができる。
なお、本実施形態において、照射面積を拡大するとは、1000以上の有機物を含まない場合を基準としたときよりも大きくすることを意味し、照射面積を縮小するとは、1000以上の有機物を含む場合を基準としたときよりも小さくすることを意味する。
【0084】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0085】
本実施形態における照射面積可変部は、液体吐出ヘッドが記録媒体上の同じ位置を走査する回数(印字パス数、パス数とも称する)に応じて照射面積を可変させる。
【0086】
本実施形態について、
図19及び
図20を用いて説明する。
図19及び
図20は、本実施形態における照射面積の可変を模式的に説明するための図である。
図19及び
図20における照射ユニット400は、記録媒体101側から見た場合を模式的に示している。
【0087】
図19は、印字パス数が2回である場合の例である。印字パス数とは、液体吐出ヘッドが記録媒体上の同じ位置を走査する回数を意味するものであり、主走査方向における記録媒体上の一端から他端へ走査した場合を1パスとする。このとき、他端から一端へ戻る経路については、通常1パスとしてカウントしない。すなわち、主走査方向に対して液体吐出ヘッドが往復走査される場合において、往路のみを1パスとしてカウントする。
ただし、復路においても液体の吐出を行う場合は、復路についても1パスとしてカウントする。
【0088】
本実施形態ではパス数に応じて照射面積を可変させる。
図19に示されるパス数が2回の例では、副走査方向における照射面積を液体吐出ヘッドのノズル面の投影面積以上かつ最大値の1/2以下にすることが好ましい。
なお、図では、照射面積を窓面410の長さで表記しており、副走査方向における照射面積の最大値をL
M、照射面積の1/2をLで表している。
【0089】
印字パス数が多くなると1回の走査時の使用ノズル数が少なくなるため、1パスでの画像面積が小さくなる。これにより、余剰な硬化線を必要とせず、照射面積を制御できる。
なお、パス数が3回である場合も、パス数が2回である場合と同様に照射面積を可変させる。
【0090】
また、パス数が増えるにつれて、照射面積を小さくすることが好ましい。例えば、パス数が4回以上である場合、副走査方向における照射面積を液体吐出ヘッドのノズル面の投影面積以上かつ最大値の1/4以下とすることが好ましい。
図20ではパス数が4回である場合の例が示されており、照射面積を1/4にしている。
【0091】
本実施形態によれば、副走査方向の余分な硬化線をより抑制することができ、副走査方向に対して液体の未硬化部分と硬化部分が生じることを更に抑制することができる。
【0092】
<第4の実施形態>
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0093】
本実施形態における照射部は、複数のLED光源を有し、該複数のLED光源を部分点灯させることにより、副走査方向の照射面積を可変させる。すなわち、本実施形態では、照射面積可変部が照射面積を可変させることに加えて、照射部が照射面積を可変させている。
【0094】
本実施形態について、
図21及び
図22を用いて説明する。
図21及び
図22は、本実施形態における照射面積の可変を模式的に説明するための図であり、照射ユニット400は、記録媒体101側から見た場合を模式的に示している。
【0095】
図21は画像形成の一例としてのパターン3を示すものである。パターン3では、1回のスキャンにおいて液体の吐出と硬化線の照射を行う。そのため、液体の吐出の直後に硬化線の照射が行われることとなる。この場合、1スキャンに相当する幅の照射面積となるようにLED光源を部分点灯させ、使用しない部分は消灯させる。
パターン3では主に光沢感のない、マッド感のある画像が得られる。
【0096】
図22は画像形成の一例としてのパターン4を示すものである。
図22(A)は、ある時点のスキャン(第1スキャンと称する)を示し、
図22(B)は更にその次のスキャン(第2スキャンと称する)を示す。パターン4では、
図22(A)に示されるように、第1スキャンに液体の吐出のみを行い、吐出された液体にすぐに硬化線を照射しない。次いで、液体吐出ヘッド及び照射ユニットが副走査方向に移動し、移動した後で行う第2スキャンのタイミングで硬化線の照射を行う。このとき、
図21と同様に使用ヘッドの幅の分だけLED光源を部分点灯させ、液体を硬化させる。パターン4では液体が記録媒体上で濡れ広がった状態で硬化されるので主に光沢感のある画像が得られる。
【0097】
このように、照射面積可変部が照射面積を可変させることに加えて、照射部が照射面積を可変させることで、漏れ光の範囲だけでなく漏れ光の強さ(光量)も正確に調節することができ、光沢感のある画像と、光沢感のないマッドな画像を選定することができるとともに、より高レベルでバンディングの発生を抑制することができる。
【0098】
<第5の実施形態>
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
【0099】
本実施形態における照射面積可変部は、液体吐出ヘッドが液体を吐出してから照射部が液体に硬化線を照射するまでの時間に応じて照射面積を可変させる。
【0100】
本実施形態では、液体が記録媒体に着弾した後に硬化線を照射するタイミング、すなわち、液体を硬化させるタイミングによって、記録媒体上の液体の形状を制御する。
例えば、上記の第1の実施形態で述べたように、着弾後すぐに穂刈照射してインクを硬化させる方法ではインクが塗れ広がる前に硬化するため、硬化した液体の形状は
図13に示すように球の状態を維持する。一方で、液体が記録媒体上で濡れ広がった状態で光照射した場合は、
図14に示すように液体が平滑な状態で硬化される。
【0101】
従来の技術では、液体を吐出してから硬化線を照射するタイミングを調整するものはあるが、この場合、副走査方向における漏れ光を生じさせながら硬化を行うものとなる、照射面積が足りず、硬化部分と未硬化部分を生じさせるといった不具合が生じる。
【0102】
これに対し、本実施形態によれば、液体が記録媒体上で濡れ広がることを考慮し、照射面積を液体の濡れ広がり方に応じて可変させることで、副走査方向の漏れ光を抑制しつつ、十分な照射面積で液体を硬化させることができる。このため、バンディングの発生を抑えた良好な画像が得られるとともに、同一の液体で得られる画像の光沢感を制御することができる。
【符号の説明】
【0103】
60 液体
62 硬化膜
101 記録媒体
200 キャリッジ
300 液体吐出ヘッド
400 照射ユニット
410 窓面
411 シャッター
412a、412b LED光源
420 硬化線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】
【文献】特開2006-224337号公報
【文献】特開2014-117799号公報