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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220323BHJP
【FI】
B41J2/165
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018124402
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020001321
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】川端 陽一
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0085873(US,A1)
【文献】特開2016-193538(JP,A)
【文献】特開2009-061755(JP,A)
【文献】特開2009-255386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載して水平方向に移動するとともに垂直方向に移動可能なキャリッジと、
前記液体吐出ヘッドの維持回復を行い、前記垂直方向に移動可能なメンテナンス部と、
前記キャリッジおよび前記メンテナンス部の移動を制御する制御手段と、
前記キャリッジに搭載され、前記キャリッジと前記記録媒体との前記垂直方向における距離である第一距離、および、前記キャリッジと前記メンテナンス部との前記垂直方向における距離である第二距離を検出する検出器と、を備え、
前記制御手段は、前記キャリッジを前記検出器が前記記録媒体の上方に位置するように移動させ、前記検出器が検出した前記第一距離を用いて、前記キャリッジを前記垂直方向に移動させた後に、前記キャリッジを前記検出器が前記メンテナンス部の上方に位置するように移動させ、前記検出器が検出した前記第二距離を用いて、前記メンテナンス部を前記垂直方向に移動させ、複数の異なる厚さの記録媒体について、前記第一距離と前記第二距離との複数の組み合わせを検出し、前記第一距離に対する前記第二距離の近似式を求め、前記メンテナンス部の前記垂直方向の移動時の駆動パラメータを補正することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記キャリッジと前記記録媒体との前記垂直方向における距離が第一所望値となるように、前記キャリッジを前記垂直方向に移動させ、前記キャリッジと前記メンテナンス部との前記垂直方向における距離が第二所望値となるように、前記メンテナンス部を前記垂直方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記キャリッジを移動させる第一駆動部を、前記第一距離を用いて制御し、前記第一駆動部とは異なる第二駆動部を、前記第二距離を用いて制御して前記メンテナンス部を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記メンテナンス部の取り付け時および交換時に、前記近似式を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットベッド機のような大型機械の液体を吐出する装置では、画像形成をより効率よく行うために、キャリッジだけでなくメンテナンス部も昇降機能を有する。
ここで、厚みのある記録媒体に画像形成を行うときには、液体を吐出する装置は記録媒体の厚さに応じてキャリッジを上昇させる。このとき、キャリッジの上昇に伴って、メンテナンス部も上昇させる必要がある。
例えば、特許文献1には、キャリッジに搭載されたセンサーで、キャリッジのノズル面とメンテナンス部間との距離を測定し、それに基づきキャリッジの昇降を行い、距離を調節する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、メンテナンス部が昇降機能を有する技術を開示するものではない。また、キャリッジとメンテナンス部とを昇降させるときに、制御手段がキャリッジおよびメンテナンス部の両方に、記録媒体の厚さに基づいて上昇させる距離(例えば、数ミリメートル)を指示したとしても、寸法誤差等によりキャリッジとメンテナンス部の位置が必ずしも一致しないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、キャリッジとメンテナンス部とが個別に昇降可能な液体を吐出する装置において、記録媒体の厚さに基づいて、キャリッジおよびメンテナンス部を調節する精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載して水平方向に移動するとともに垂直方向に移動可能なキャリッジと、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行い、前記垂直方向に移動可能なメンテナンス部と、前記キャリッジおよび前記メンテナンス部の移動を制御する制御手段と、前記キャリッジに搭載され、前記キャリッジと前記記録媒体との前記垂直方向における距離である第一距離、および、前記キャリッジと前記メンテナンス部との前記垂直方向における距離である第二距離を検出する検出器と、を備え、前記制御手段は、前記キャリッジを前記検出器が前記記録媒体の上方に位置するように移動させ、前記検出器が検出した前記第一距離を用いて、前記キャリッジを前記垂直方向に移動させた後に、前記キャリッジを前記検出器が前記メンテナンス部の上方に位置するように移動させ、前記検出器が検出した前記第二距離を用いて、前記メンテナンス部を前記垂直方向に移動させ、複数の異なる厚さの記録媒体について、前記第一距離と前記第二距離との複数の組み合わせを検出し、前記第一距離に対する前記第二距離の近似式を求め、前記メンテナンス部の前記垂直方向の移動時の駆動パラメータを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、キャリッジとメンテナンス部とが個別に昇降可能な液体を吐出する装置において、記録媒体の厚さに基づいて、キャリッジおよびメンテナンス部を調節する精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態の液体を吐出する装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図であり、(A)は装置前面側から見た斜視図、(B)は装置背面側から見た斜視図である。
図2】一実施形態のキャリッジと維持回復機構とを説明する模式図である。
図3】一実施形態のキャリッジと維持回復機構とを説明する他の模式図である。
図4】一実施形態の制御手段の構成例を説明するブロック図である。
図5】記録媒体への液体吐出を模式的に示す説明図である。
図6】記録媒体への液体吐出を模式的に示す他の説明図である。
図7】一実施形態の制御手段が維持回復機構を駆動させるときの駆動パラメータを説明する図である。
図8】一実施形態の液体を吐出する装置の一例として画像形成装置の他の構成例を説明する図である。
図9】記録ヘッドの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略または簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0008】
図1は、一実施形態の液体を吐出する装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成を示す斜視図であり、(A)は装置前面側から見た斜視図、(B)は装置背面側から見た斜視図である。
【0009】
インクジェット記録装置10は、キャリッジ12と、記録媒体を載置するステージ13と、を備える。キャリッジ12は、複数のノズルが設けられた複数の記録ヘッド(「液体吐出ヘッド」とも称する)11を備えたインクジェット方式のキャリッジであり、液体を記録ヘッド11のノズルから吐出することによってドットを記録する。ノズルは、ステージ13との対向面に設けられている。なお、本実施形態では、液体は、一例として、紫外線硬化性を有する。
【0010】
また、キャリッジ12のステージ13との対向面には、紫外線を照射する光源である照射部33が設けられている。照射部33は、ノズルから吐出された液体を硬化させる波長の光を照射する。
【0011】
左右の側板18a、18bにはガイドロッド19が架け渡されており、ガイドロッド19は、キャリッジ12をX方向(主走査方向)に移動可能に保持している。また、キャリッジ12、ガイドロッド19、および側板18a、18bは一体となって、ステージ13の下部に設けられたガイドレール29に沿ってY方向(副走査方向)に移動可能となっている。さらに、キャリッジ12は、Z方向(垂直方向、上下方向)に移動可能に保持されている。
【0012】
すなわち、インクジェット記録装置10のキャリッジ12は、X方向およびY方向への走査が可能であるとともに、垂直方向への昇降が可能となっている。
【0013】
次に、図2、3を参照して一実施形態のキャリッジと維持回復機構とについて説明する。
キャリッジ12は、記録ヘッド11a、11b(二つを区別しないときは「記録ヘッド11」という)と検出器16とを搭載して水平方向に移動するとともに垂直方向に移動する。
維持回復機構20は、ワイパ部21a、21b(二つを区別しないときは「ワイパ部21」という)、キャップ部22a、22b(二つを区別しないときは「キャップ部22」という)、基準面24、および、これらを搭載する維持回復機構筐体25を少なくとも備える。
図2は、キャリッジ12と記録媒体14との垂直方向における距離を検出する状態を説明する図であり、図3は、キャリッジ12とメンテナンス部23との垂直方向における距離を検出する状態を説明する図である。
【0014】
記録ヘッド11は、記録媒体14に液体を吐出する液体吐出ヘッドである。
検出器16は、対象物までの距離を測定するセンサーであり、測定したセンサー情報を出力する。検出器16は、例えば、キャリッジ12と記録媒体14との垂直方向における距離である第一距離および、キャリッジ12とメンテナンス部23との垂直方向における距離である第二距離を検出する。
【0015】
ワイパ部21は、記録ヘッド11のノズル面を払拭する。
キャップ部22は、記録ヘッド11のノズル面をキャピングする。
メンテナンス部23は、記録ヘッド11の維持回復を行うものであり、図2、3の構成例では、ワイパ部21とキャップ部22とを有する例を示している。
基準面24は、検出器16がキャリッジ12とメンテナンス部23との垂直方向の距離を検出するときに基準とする面である。基準面24は、キャリッジ12に対向する表面を基準とする面とし、ワイパ部21またはキャップ部22と同じ高さとなる面により形成される。基準面24は、ワイパ部21またはキャップ部22の任意の面を用いてもよく、基準面24の設置を省略してもよい。
【0016】
一実施形態の液体を吐出する装置は、次の手順により、記録媒体14の厚さに応じて、キャリッジ12およびメンテナンス部23の高さ(垂直方向の位置)を調整する。
(1)まず、キャリッジ12に搭載された検出器16で、検出器16と記録媒体14との間の距離(第一距離)を測定し、測定した第一距離を用いてキャリッジ高さを調節する。
(2)次に、キャリッジ12がメンテナンス部23の上方に移動し、キャリッジ12に搭載された検出器16で、キャリッジ12とメンテナンス部23との間の距離(第二距離)を測定し、第二距離を用いてメンテナンス部23を調節する。
【0017】
一実施形態の液体を吐出する装置は、キャリッジ12とメンテナンス部23との移動、および検出器16を制御して、上述した手順を実行させる制御手段を備える。
図4は制御手段100の構成例を説明するブロック図である。
図4に示すように、制御手段100は、CPU101、RAM102、ROM103、HDD104、第一制御部105、第二制御部106、およびI/O(Input/Output)部107を有して構成されている。
【0018】
制御手段100は、例えば、その一部または全部をプログラムにより実現する場合には、記憶媒体(ROM103またはHDD104など)に格納したプログラムをRAM102に読み出し、CPU101にプログラムの命令群を実行させる。また、制御手段は、その一部あるいは全部をハードウェアにより構成してもよい。例えば、組み込みシステムのように、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実現してもよく、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアのいずれか、あるいは、これらの二つ以上の組合せで構成してもよい。
【0019】
CPU(Central Processing Unit)101は、制御手段100の全体的な動作制御を司る制御機構である。CPU101は、ROM(Read Only Memory)103に記憶されている制御用のプログラム等を読み出して実行することにより、制御手段100全体の動作を制御する。
【0020】
RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行する制御用のプログラムの実行時の作業領域として用いられる記憶媒体である。RAM102は、例えば、画像データ等を一時格納する。
【0021】
ROM103およびHDD(Hard Disk Drive)104は、CPU301が実行するプログラム等を記憶する記憶媒体である。ROM103は、例えば、上記制御用のプログラム、本実施形態において使用する閾値、その他の固定データを格納する。
【0022】
第一制御部105は、第一駆動部15を制御する。第一駆動部15は、キャリッジを水平方向および垂直方向に移動させる駆動機構であり、例えばモータを用いる。
第二制御部106は、第二駆動部26を制御する。第二駆動部26は、メンテナンス部を備える維持回復機構20を垂直方向に移動させる駆動機構であり、例えばモータを用いる。第二駆動部26は、第一駆動部15と異なる駆動機構とする。
I/O部107は、検出器16が測定したセンサー情報を受け取る。
【0023】
制御手段100は、例えば次の処理を実行する。
第一制御部105は、第一駆動部15にキャリッジ12を検出器16が記録媒体14の上方に位置するように移動させ、検出器16に第一距離を検出させる。検出器16は、検出器16から記録媒体14の表面までの垂直方向の長さを第一距離として測定する。第一制御部105は、検出器16が検出した第一距離をI/O部107を介して取得し、第一距離を用いて、検出器16と記録媒体14との垂直方向における距離が第一所望値となるように、第一駆動部15にキャリッジ12を垂直方向に昇降させる。
【0024】
その後、第一制御部105は、第一駆動部15にキャリッジ12を維持回復機構20に設けられた高さ検出面としての基準面24の上方に移動させ、検出器16に第二距離を検出させる。検出器16は、キャリッジ12と基準面24の表面までの垂直方向の長さを第二距離として測定する。第二制御部106は、検出器16が検出した第二距離をI/O部107を介して取得し、第二距離を用いて、検出器16とメンテナンス部23との垂直方向における距離が第二所望値となるように、第二駆動部26にメンテナンス部23を配置した維持回復機構20を垂直方向に昇降させる。
【0025】
ここで、第一所望値および第二所望値は、予め設定される数値であり、制御手段100が参照可能な記憶領域(例えば、ROM103)に保持されている。第一所望値は、キャリッジ12と記録媒体14(記録媒体14がキャリッジ12に対向する表面)と間の垂直方向における距離の所望値である。第二所望値は、キャリッジ12と維持回復機構の基準面24との垂直方向における距離の所望値である。
【0026】
なお、制御手段100の構成や形態は特に限定されない。例えば、ワイパ部21およびキャリッジ12の位置を読み取り可能とするために、例えばエンコーダーセンサとエンコーダースリットを搭載することができる。また、液体を吐出する装置に必要な情報の入力受付及び表示を行なうための操作/表示部を備え、I/O部を介して外部と情報の入出力を行ってもよい。
【0027】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0028】
「液体を吐出する装置」として、例えば、インクを吐出させて記録媒体(用紙)に画像を形成する装置である画像形成装置(インクジェット記録装置)等がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。
【0029】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。「液体が付着可能なもの」としては、例えば、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどが挙げられる。特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものであってもよい。「液体が付着可能なもの」の材質としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能なものが挙げられる。
【0030】
「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。「液体」としては、例えば、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0031】
本実施形態の液体を吐出する装置において吐出される液体は、刺激硬化性を有する。刺激は、例えば、光(紫外線、赤外線など)、熱、電気などである。例えば、光によって硬化する液体が挙げられ、具体的には、光照射により硬化する光硬化型インクが挙げられる。また、液体を光によって硬化させる手段の一例としてUV光源(図1に示す照射部33)が挙げられる。
【0032】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが挙げられる。
【0033】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0034】
「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品単体である。また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。液体を吐出するエネルギー発生源として、例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが挙げられる。
【0035】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0036】
以下、一実施形態の液体を吐出する装置の一例として、光硬化型インクを吐出するインクジェット記録装置について説明する。ここでは、上述した制御手段100による、キャリッジ12と維持回復機構20の高さ調整が必要であることを説明する。
【0037】
インクジェット記録装置における記録技術は、記録媒体に非接触な状態で画像記録を行うことができるという特徴がある。非接触印字により、紙やフィルムなどの平滑な媒体のみならず、表面に凹凸のある媒体や厚みのある媒体であっても画像記録することができるため、近年では多様な産業分野においてインクジェット記録装置が導入されている。
【0038】
非接触印字を可能としたのは、インク滴を液体吐出ヘッド(記録ヘッド)から吐出する技術である。吐出する原理としては、電気的または熱エネルギーにより記録ヘッド内の液室を押圧することにより、任意のインク滴をマイクロスケールのノズル口から飛翔させるものである。上述の各部材が関連性を持ってインク滴の吐出が行われるため、いずれかに不具合が生じた場合は狙いの画像が得られない。また、インク滴の吐出が行われても、記録媒体へ正確に着弾しなければ狙いの画像は得られない。
記録媒体へのインク滴の着弾に関し、特に重要な要因として記録ヘッド(液体吐出ヘッド)と記録媒体との距離(ギャップ)が挙げられる。このギャップが乱れることによって記録画像に不具合が生じるという問題の対策について、図5、6に基づき説明する。
【0039】
図5、6は、記録媒体への液体吐出を説明する模式図である。
図5では、液体を吐出する装置の側面図であり、ステージ13上に記録媒体14が載置され、記録媒体14に対して記録ヘッド11からインク滴41が矢印41aで示す方向に吐出されている状態を模式的に示したものである。
記録ヘッド11から記録媒体14までのギャップは、常に一定にすることが好ましい。記録ヘッド11から記録媒体14までのギャップは、適用するインクや記録ヘッド11の特性値により最適な値が決まっているため、装置に応じた最適なギャップをユーザが変更することは難しい。
【0040】
記録ヘッド11から記録媒体14までのギャップは、記録媒体14の厚みtによって変化するため、この厚みtに応じてキャリッジ12が昇降するシステムを備えることが好ましい。
例えば、図5(A)に示す厚みt1が1mmの記録媒体14を印刷する場合のキャリッジ12の高さを基準とする。このとき、図5(B)に示す厚みt2が、例えば30mmの記録媒体14を印刷する場合には、キャリッジ12の高さを図5(A)よりも29mm上昇(矢印D2の方向へ移動)させることでギャップを一定に維持し、同品質の画像を得ることができる。
【0041】
このようにギャップを一定にするために、液体が吐出される記録媒体14の厚みを検出する検出手段(例えば、図2、3の検出器16)を備え、該検出手段の検出結果に応じてキャリッジ12の昇降距離が調節されることが好ましい。検出手段を備える例を図6に示す。
【0042】
図6は、図5と同様に液体を吐出する装置の側面図であり、ステージ13上に記録媒体14が載置され、記録媒体14に対して記録ヘッド11からインク滴41が吐出されている状態を模式的に示したものである。
図6(A)は、記録媒体14の厚みt1(例えば、1mm)に対して過剰に高い位置にキャリッジ12が位置している例である。ギャップを調整することなく記録ヘッド11のノズルからインク滴41を矢印41aに示す方向に吐出した場合、インク滴41は記録媒体14に着弾する前に空気中でインクミスト42となり、画像形成には関係しないものとなる。
空気中でインクミスト42となったインク滴41は、装置内の不特定部位に付着して照射光により硬化し定着する。記録媒体14に付着した場合に画像の品質低下を招き、装置の部材に付着した場合は故障の原因となる可能性がある。
【0043】
これに対し図6(B)は、記録媒体14の厚みt1を検出する検出手段17の検出結果(例えば上述した第一距離)に応じて、キャリッジ12をD2で示す方向に降下させ、ギャップを調整した状態を示している。
図6(B)の例では、最適なギャップとなるようにキャリッジの位置を調整することにより、所望の品質の画像を形成することができる。
【0044】
検出手段17としては、例えば、レーザー光を照射し、物体から反射した反射光により距離が算出される装置を用いることができる。なお、本実施態様ではレーザー反射光を用いる検出手段17を搭載しているが、記録媒体14の厚みを検出可能な手段であれば特に限定されず、例えば、記録媒体14に接触する検出部位を備え、物理的な戻り量で記録媒体14の厚さを計測するような検出装置であってもよい。
【0045】
一実施形態の液体を吐出する装置においては、キャリッジ12が昇降した距離と同じ距離を維持回復機構20が昇降することが好ましい。記録媒体14の厚さに合わせてキャリッジ12の昇降がなされ、鮮明な画像を形成できたとしても、維持回復機構20が同じ高さになければノズル面に対する払拭を実施できないためである。維持回復機構20の高さが変動しない場合、画像記録毎にキャリッジ12が当初の位置まで戻る必要が生じ、動作の無駄が多くなる。
【0046】
一実施形態では、図3を参照して説明したように、維持回復機構20の位置を調整するときにも、検出器16が検出した検出結果(第二距離)を用いて維持回復機構20の位置を調整する。これにより、記録媒体14の厚さに応じて、維持回復機構20を適切な位置に調整することが可能になる。
【0047】
また、以下に説明するように、制御手段100は、複数の異なる記録媒体14の厚さに対応する維持回復機構20の高さの近似式を求め、維持回復機構20の高さを調整するときに用いる駆動パラメータを算出する手法をとることも可能である。図2、3を参照して説明する。
【0048】
上述した図2、3を参照して説明した液体を吐出する装置は、例えば、厚さが大きい記録媒体14に記録するために、記録ヘッド11を担架したキャリッジ12に設けられた検出器16が記録媒体14の厚さを検知して、昇降可能なキャリッジ12を有する。液体を吐出する装置は、複数の異なる厚さの記録媒体14の高さに対する維持回復機構20の高さを検出して、記録媒体14の厚さに対する維持回復機構20の検出高さの近似式を求めて維持回復機構20の昇降時の駆動パラメータを補正することができる。このような液体を吐出する装置として、例えば、インクジェット方式を用いたフラットベッド式の画像形成装置がある。
【0049】
維持回復機構20において、基準となる高さ(基準面24の高さ)およびモータ駆動(第二駆動部26の駆動機構の一例)による昇降時の高さは、部品の公差や精度によって同じモータ駆動量でも高さにばらつきが生じる。
このため、厚さの大きい記録媒体14を設置した状態で維持回復機構20のメンテナンス部23によるメンテナンスを実施した場合に、昇降時の駆動パラメータに対して実際の昇降量がばらついてメンテナンス動作に支障が出る可能性がある。
【0050】
一実施形態では、制御手段100は、記録ヘッド11を担架したキャリッジ12に設けられた検出器16を用いて、複数の厚さの記録媒体14に対して印刷する時の維持回復機構20の基準面24の高さから、記録媒体14の厚さに対する維持回復機構の検出高さに基づく近似式を求める。近似式に基づいて、維持回復機構20の昇降時の駆動パラメータを補正することで、維持回復機構20の昇降量を維持回復機構のユニット毎に最適化できる。
【0051】
例えば、制御手段100は、複数の異なる厚さの記録媒体について、第一距離と第二距離との複数の組み合わせを検出し、複数の異なる厚さの記録媒体に対応する第二距離の近似式、または第一距離に対応する第二距離の近似式を求め、メンテナンス部23の垂直方向の移動時の駆動パラメータを補正する。駆動パラメータは、例えば、第二制御部106から第二駆動部26へ指示するパラメータとなる。
これにより、記録媒体14の厚さに対する維持回復機構20の検出高さの近似式を求め、維持回復機構20の昇降時の駆動パラメータを補正することで、維持回復機構20の昇降量をユニット毎に最適化できる。
【0052】
図7は、一実施形態の制御手段が維持回復機構を駆動させるときの駆動パラメータを説明する図である。維持回復機構20のユニット設計値に基づいて、記録媒体14の厚さと維持回復機構20の高さとを対応づけている。図7では、維持回復機構20のユニット設計値と、二つのユニットA、Bの近似式とを示している。
【0053】
詳細には、制御手段100は、維持回復機構20のユニットの設計値を用いて、次の手順により近似式を求める。
(イ)記録媒体14または計測用部材に対してキャリッジ12に備えられた感圧式の検知機構(例えば、検出器16)で検知を行い、キャリッジ12の高さを記憶する。計測用部材は、例えば、キャリッジ12の高さを検知するために基準となる部材である。
(ロ)(イ)で検知したキャリッジ12の高さに対して、キャリッジ12の検出器16が検知するまで維持回復機構20を上昇させる。
(ハ)キャリッジ12の検出器16が維持回復機構20を検知したところで、(イ)で記録したキャリッジ12の高さの値を元に、維持回復機構20の基準面24からの高さを求めて記憶する。
(ニ)(イ)から(ハ)の手順を厚さの異なる2種類以上の記録媒体14または計測用部材で検出し、2点以上の値から近似式を導出して、維持回復機構20の昇降パラメータに適用する。
上記手順により、キャリッジ12の高さに応じて維持回復機構20を正確に昇降させることが可能となる。
【0054】
また、制御手段100は、メンテナンス部を備える維持回復機構20のユニット交換後に基準面24の高さを検出器16によって再検出上述した近似式を求めることが好ましい。
維持回復機構20の基準面24の高さ及びモータ駆動による昇降時の高さは部品の公差や精度によって同じモータ駆動量でも高さにばらつきが生じる。
そこで、維持回復機構20のユニット交換を行った後に、制御手段は、検出器16によって基準面24の高さを再検出して維持回復機構20の検出高さの近似式を求め、維持回復機構20の昇降時の駆動パラメータを補正し直す。これにより、異なる特性のユニットに交換した後に維持回復機構20の昇降量を最適化できる。
【0055】
次に、一実施形態の画像形成装置の記録ヘッドの詳細およびインクの供給に関して説明する。
図8は、一実施形態の画像形成装置の他の構成例を説明する図である。図9は、記録ヘッドの構成例を説明する図である。
画像形成装置10Aは、往路方向D21及び復路方向D22に往復移動(双方向走査)するキャリッジ92と、記録媒体94を搬送する搬送ステージ93とを備えている。キャリッジ92には、インク滴を吐出する複数の吐出ヘッドを有する記録ヘッド50k、50c、50m、50y(色を区別しないときは「記録ヘッド50」という)を備え、記録媒体94の搬送方向に対して直交する方向に走査して画像を形成する。
【0056】
さらに、画像形成装置10Aの本体前面の一端部側には、記録に使用するインクを装填するためのメインタンク装填部60を備える。メインタンク装填部60には色の異なる記録液(インク)、例えばブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の随時交換可能な記録液のメインタンクであるメインタンク61k、61c、61m、61y(色を区別しないときは「メインタンク61」という)を装填可能とする。
【0057】
キャリッジ92は主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって符号D21、D22の矢印方向(キャリッジ主走査方向)に往復移動走査する。
キャリッジ92は、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド50k、50c、50m、50yを複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0058】
図9に示す記録ヘッド50を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
記録ヘッド50は、ドライバICを搭載し、図示しない制御手段(例えば、図4の制御手段100)との間でハーネス(フレキシブルプリントケーブル)を介して接続している。
【0059】
また、記録ヘッド50は、フレーム部51の両側部に設けられた2つのインクポート52a、52bとインクポート52a、52bに連通した共通液室53を備え、共通液室53の下部には圧力発生手段としてアクチュエータ54を備え、個別液室55(図9の符号55a、55b、55c・・・)に対してアクチュエータ54で圧力を発生させることで、個別液室55内部の記録液(インク)をノズル56(図9の符号56a、56b、56c・・・)から吐出させる。
【0060】
キャリッジ92には、記録ヘッド50に各色のインクを供給するための各色のサブタンク71k、71c、71m、71y(色を区別しないときは「サブタンク71」という)を搭載している。
各色のサブタンク71には各色のインク供給チューブ72k、72c、72m、72y(色を区別しないときは「インク供給チューブ72」という)を介して、前述したようにメインタンク装填部60に装着された各色のメインタンク61から各色のインクが補充供給される。
【0061】
サブタンク71上部には、サブタンク内部の圧力を負圧に保つことで、吐出安定性を確保するための負圧形成手段として、エアポンプユニット73k、73c、73m、73y(色を区別しないときは「エアポンプ73」という)が設けられている。
なお、このメインタンク装填部60にはメインタンク61内のインクを送液するための供給ポンプユニット62k、62c、62m、62y(色を区別しないときは「供給ポンプ62」という)が設けられる。
【0062】
キャリッジ92の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド50の吐出安定状態を維持、回復するための維持回復機構80を配置している。
この維持回復機構80には、記録ヘッド50の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という)81a、81b、81c、81d(区別しないときは「キャップ81」という)を備えている。
【0063】
キャップ81は、記録ヘッド50にキャッピングさせた状態で、ポンプを駆動させてキャップ81内部に負圧を発生し、記録ヘッド50のノズル56からインクを吸引することで、記録ヘッド50の吐出状態を回復させるための吸引ポンプ82を備えている。
なお、図8の画像形成装置10Aの構成例では、吸引ポンプ82は1つのポンプを使用して、4つの記録ヘッド50を順次吸引するため、吸引可能なキャップはキャップ81kのみで、キャップ81c、81m、81yは非印字時に記録ヘッド50のノズル56の乾燥や異物の付着を防止するための保護キャップとして機能する構成であるが、各色の記録ヘッドの数だけ吸引ポンプを備えた構成でも良い。
そして、この維持回復機構80による維持回復動作で生じた、キャップ81から排出されたインクは、廃液収容ユニットである廃液タンク83に排出されて収容される。
【0064】
以上説明したように、本発明に係る好適な実施形態によれば、キャリッジの高さおよびメンテナンス部の高さを、同じ検出器が計測し、実際に計測した値に基づいて、キャリッジおよびメンテナンス部を昇降することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 インクジェット記録装置
11、11a、11b、50k、50c、50m、50y 記録ヘッド
12、92 キャリッジ
13、93 ステージ
14、94 記録媒体
15 第一駆動部
16 検出器
17 検出手段
20、80 維持回復機構
21、21a、21b ワイパ部
22、22a、22b、81a、81b、81c、81d キャップ部
24 基準面
25 維持回復機構筐体
26 第二駆動部
100 制御手段
105 第1制御部
106 第2制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【文献】特開2010-000439号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9