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特許7044056感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法
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  • 特許-感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法 図1
  • 特許-感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/031 20060101AFI20220323BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20220323BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20220323BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220323BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20220323BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G03F7/031
G03F7/033
G03F7/027 502
G03F7/004 512
H05K3/06 H
H05K3/18 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018506055
(86)(22)【出願日】2017-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2017011016
(87)【国際公開番号】W WO2017159873
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2016053771
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡出 翔太
(72)【発明者】
【氏名】桃崎 彩
(72)【発明者】
【氏名】李 相哲
(72)【発明者】
【氏名】村松 有紀子
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 賢
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101738861(CN,A)
【文献】特開2011-257632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/031
G03F 7/033
G03F 7/027
G03F 7/004
H05K 3/06
H05K 3/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、
エチレンオキシ基の構造単位数が6未満である下記式(3)で示されるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートと前記ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートとは異なる下記式(4)で示されるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートと、分子内にEO基及びPO基の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとを含む光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
下記式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルエステル基、アミノ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アセチル基、又は(メタ)アクリロイル基を示し、a、b、及びcは、それぞれ独立に、0~5の整数を示す。]
【化2】

[式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XOは、それぞれ独立に、エチレンオキシ基を示す。(XO)m1及び(XO)m2は、それぞれ(ポリ)エチレンオキシ基を示す。m1+m2は0以上6未満である。m1及びm2は、構造単位の構造単位数を示す。]
【化3】

[式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XO及びYOは、それぞれ独立に、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基を示す。(XO)x1、(XO)x2、(YO)y1、及び(YO)y2は、それぞれ(ポリ)エチレンオキシ基又は(ポリ)プロピレンオキシ基を示す。x1、x2、y1、及びy2は、構造単位の構造単位数を示す。
式(4)で示される化合物がプロピレンオキシ基を有する場合、分子中におけるプロピレンオキシ基の構造単位数は、2以上5以下である。
式(4)で表される化合物がエチレンオキシ基を有する場合、分子中におけるエチレンオキシ基の構造単位数は、6以上16以下である。]
【請求項2】
前記バインダーポリマー及び前記光重合性化合物の総量100質量部に対し、
前記バインダーポリマーの含有量が、30~70質量部であり、
前記式(3)で示されるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートの含有量が、1~60質量部であり、
前記式(4)で示されるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートの含有量が、1~65質量部であり、
前記分子内にEO基及びPO基の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量が、1~30質量部である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、下記式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体を含む、請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

[式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基で置換されていてもよいアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基を示し、p及びqは、それぞれ独立に、1~5の整数を示す。]
【請求項4】
支持体と、前記支持体上に設けられた請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いてなる感光層と、を備える感光性エレメント。
【請求項5】
基板上に、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いてなる感光層を形成する工程と、
前記感光層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して、前記領域を光硬化させて硬化物領域を形成する工程と、
前記感光層の前記硬化物領域以外の少なくとも一部を前記基板上から除去して、前記基板上にレジストパターンを形成する工程と、を有するレジストパターン付き基板の製造方法。
【請求項6】
前記活性光線の波長が340~430nmの範囲内である、請求項5に記載のレジストパターン付き基板の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のレジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してエッチング処理を行う工程を有するプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載のレジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してめっき処理を行う工程を有するプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野においては、回路形成用基板に対してエッチング処理又はめっき処理を行う際に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物が広く用いられている。感光性樹脂組成物は、支持体と、該支持体上に設けられた感光性樹脂組成物を用いてなる層(以下、「感光層」ともいう。)と、を備える感光性エレメント(積層体)として用いられることが多い。
【0003】
プリント配線板は、例えば、以下のようにして製造される。まず、回路形成用基板上に、感光性エレメントを用いて感光層を形成する(感光層形成工程)。次に、感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を硬化させる(露光工程)。その後、支持体を剥離し除去した後、感光層の未露光部を基板上から除去(現像)することにより、回路形成用基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成する(現像工程)。形成されたレジストパターンをレジストとして基板に対してエッチング処理又はめっき処理を行うことにより、基板上に導体パターン(回路)を形成した後(回路形成工程)、最終的にレジストパターンを剥離し除去して(剥離工程)、プリント配線板を製造する。
【0004】
露光の方法としては、従来、水銀灯を光源としてフォトマスクを介して露光する方法が用いられている。また、近年、DLP(Digital Light Processing)又はLDI(Laser Direct Imaging)と呼ばれる、パターンを感光層に直接描画する直接描画露光法が提案されている。この直接描画露光法は、フォトマスクを介した露光法よりも位置合わせ精度が良好であり、且つ、高精細なパターンが得られることから、高密度パッケージ基板作製のために導入されている。
【0005】
一般に露光工程では、生産効率の向上のために露光時間を短縮することが望まれる。しかし、上述の直接描画露光法では、光源にレーザ等の単色光を用いるほか、基板を走査しながら光線を照射するため、従来のフォトマスクを介した露光方法と比べて多くの露光時間を要する傾向にある。そのため、露光時間を短縮して生産効率を高めるには、従来よりも感光性樹脂組成物の感度を向上させる必要がある。
【0006】
一方で、近年のプリント配線板の高密度化に伴い、解像度(解像性)及び密着性に優れたレジストパターンを形成可能な感光性樹脂組成物の要求が高まっている。
【0007】
これらの要求に対して、従来、種々の感光性樹脂組成物が検討されている。例えば、特許文献1には、スチリルピリジン化合物を増感色素として用いることで、上述の要求される特性を向上させた感光性樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2~5には、特定のバインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤、及び増感色素を用いることで、上述の要求される特性を向上させた感光性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第101738861号明細書
【文献】特開2005-122123号公報
【文献】特開2007-114452号公報
【文献】国際公開第10/098183号
【文献】国際公開第12/067107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、感光性樹脂組成物により形成されるレジストパターンは、薬液耐性に優れることが好ましい。薬液耐性に乏しいレジストパターンをレジストとして基板に対してめっき処理を行う場合、めっき潜りが生じることがある。ここで、「めっき潜り」とは、レジストパターンと基板との間にめっき液が浸入する現象を意味する。特に、近年ではプリント配線板が高密度化されているため、めっき潜りが生じた場合には、導体パターンが繋がって短絡するおそれがある。
【0010】
しかし、特許文献1~5に記載の感光性樹脂組成物は、感度は比較的高いものの、形成されるレジストパターンの薬液耐性には未だ向上の余地があった。
【0011】
本開示は、薬液耐性に優れるレジストパターンを優れた感度で形成可能な感光性樹脂組成物、並びにこの感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> (メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、
エチレンオキシ基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
下記式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する感光性樹脂組成物。
【0013】
【化1】
【0014】
[式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルエステル基、アミノ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アセチル基、又は(メタ)アクリロイル基を示し、a、b、及びcは、それぞれ独立に、0~5の整数を示す。]
【0015】
<2> 前記光重合開始剤が、下記式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体を含む、<1>に記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
【化2】
【0017】
[式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基で置換されていてもよいアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基を示し、p及びqは、それぞれ独立に、1~5の整数を示す。]
【0018】
<3> 支持体と、前記支持体上に設けられた<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物を用いてなる感光層と、を備える感光性エレメント。
【0019】
<4> 基板上に、<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物を用いてなる感光層を形成する工程と、
前記感光層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して、前記領域を光硬化させて硬化物領域を形成する工程と、
前記感光層の前記硬化物領域以外の少なくとも一部を前記基板上から除去して、前記基板上にレジストパターンを形成する工程と、を有するレジストパターン付き基板の製造方法。
【0020】
<5> 前記活性光線の波長が340~430nmの範囲内である、<4>に記載のレジストパターン付き基板の製造方法。
【0021】
<6> <4>又は<5>に記載のレジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してエッチング処理を行う工程を有するプリント配線板の製造方法。
【0022】
<7> <4>又は<5>に記載のレジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してめっき処理を行う工程を有するプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、薬液耐性に優れるレジストパターンを優れた感度で形成可能な感光性樹脂組成物、並びにこの感光性樹脂組成物を用いた感光性エレメント、レジストパターン付き基板の製造方法、及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】感光性エレメントの一例を示す模式断面図である。
図2】セミアディティブ工法によるプリント配線板の製造工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。「(ポリ)エチレンオキシ基」とは、エチレンオキシ基(以下、「EO基」ともいう。)又は2以上のエチレン基がエーテル結合で連結したポリエチレンオキシ基の少なくとも1種を意味する。「(ポリ)プロピレンオキシ基」とは、プロピレンオキシ基(以下、「PO基」ともいう。)又は2以上のプロピレン基がエーテル結合で連結したポリプロピレンオキシ基の少なくとも1種を意味する。「EO変性」とは、(ポリ)エチレンオキシ基を有する化合物であることを意味し、「PO変性」とは、(ポリ)プロピレンオキシ基を有する化合物であることを意味し、「EO・PO変性」とは、(ポリ)エチレンオキシ基及び(ポリ)プロピレンオキシ基の双方を有する化合物であることを意味する。
【0027】
本明細書において、「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
また、本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0028】
<感光性樹脂組成物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート(以下、「特定光重合性化合物」ともいう。)を含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、(D)成分:式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する。上記感光性樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0029】
(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、特定光重合性化合物を含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、式(1)で示されるスチリルピリジン化合物とを含有することで、薬液耐性(特に、めっき液に対する耐性)に優れるレジストパターンを優れた感度で形成可能な感光性樹脂組成物を構成することができる。上記効果を奏する詳細な理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。疎水性であってレジストパターンの低膨潤性に効果のある特定光重合性化合物と、光増感性に優れるスチリルピリジン化合物とを組み合わせて用いることで、低膨潤性を有しながら反応率を高くして、レジストパターンを形成することができる。これによって、レジストパターンにおける架橋ネットワークがより緻密化され、薬液耐性が向上すると推察している。
【0030】
なお、特開昭58-1142号公報の実施例には、特定の線状共重合体と、EO基の構造単位数が10であるビスフェノールA型ジメタクリレートとを組み合わせて用いることで、めっき液に対する耐性が向上することが開示されている。EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートと、式(1)で示されるスチリルピリジン化合物とを組み合わせて用いることで、薬液耐性(特に、めっき液に対する耐性)が向上することは、驚くべきことである。
【0031】
(A)成分:バインダーポリマー
上記感光性樹脂組成物は、(A)成分として、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマー(以下、「特定バインダーポリマー」ともいう。)を含む。(A)成分は、必要に応じて特定バインダーポリマー以外のバインダーポリマーを更に含んでいてもよい。
【0032】
(メタ)アクリル酸に由来する構造単位の含有率は、現像性及びレジストパターンの密着性にバランスよく優れる点から、特定バインダーポリマーを構成する重合性単量体の全質量を基準(100質量%、以下同様)として、15~40質量%であってもよく、18~38質量%であってもよく、20~35質量%であってもよい。現像性をより向上させる観点からは、この含有率が15質量%以上であってもよく、18質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、レジストパターンの密着性をより向上させる観点からは、この含有率が40質量%以下であってもよく、38質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよい。
【0033】
特定バインダーポリマーは、スチレン又はα-メチルスチレンに由来する構造単位を更に有していてもよい。特定バインダーポリマーがスチレン又はα-メチルスチレンに由来する構造単位を更に有する場合、スチレン又はα-メチルスチレンに由来する構造単位の含有率は、レジストパターンの密着性及び剥離性をより向上させる観点から、特定バインダーポリマーを構成する重合性単量体の全質量を基準として、10~70質量%であってもよく、15~60質量%であってもよく、20~55質量%であってもよい。レジストパターンの密着性をより向上させる観点からは、この含有率が10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、レジストパターンの剥離性をより向上させる観点からは、この含有率が70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよい。
【0034】
特定バインダーポリマーは、上述の構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、例えば、下記のその他の重合性単量体に由来する構造単位を挙げることができる。
【0035】
その他の重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、スチレン、又はα-メチルスチレンと重合可能であり、(メタ)アクリル酸、スチレン、及びα-メチルスチレンとは異なる重合性単量体であれば、特に制限はない。その他の重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシプロピルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシプロピルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルオキシプロピルオキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;α-ブロモアクリル酸、α-クロロアクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体;芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエーテル化合物;マレイン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル;フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等の不飽和カルボン酸誘導体などが挙げられる。これらの重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
特定バインダーポリマーがその他の構造単位を有する場合、その他の構造単位の含有率は、レジストパターンの解像度及び剥離性をより向上させる観点から、特定バインダーポリマーを構成する重合性単量体の全質量を基準として、3~85質量%であってもよく、5~75質量%であってもよく、10~70質量%であってもよく、10~50質量%であってもよい。
【0037】
特定バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体(モノマー)として、(メタ)アクリル酸、更には必要に応じて用いられるスチレン又はα-メチルスチレン及びその他の重合性単量体を、常法により、ラジカル重合させることにより得られる。
【0038】
(A)成分としては、特定バインダーポリマーを1種単独で用いてもよく、2種以上の特定バインダーポリマーを任意に組み合わせて用いてもよい。また、特定バインダーポリマー以外のその他のバインダーポリマーを特定バインダーポリマーとともに用いてもよい。
【0039】
特定バインダーポリマーの酸価は、現像性及びレジストパターンの密着性にバランスよく優れる点から、90~250mgKOH/gであってもよく、100~240mgKOH/gであってもよく、120~235mgKOH/gであってもよく、130~230mgKOH/gであってもよい。現像時間をより短縮する観点からは、この酸価が90mgKOH/g以上であってもよく、100mgKOH/g以上であってもよく、120mgKOH/g以上であってもよく、130mgKOH/g以上であってもよい。また、レジストパターンの密着性をより向上させる観点からは、この酸価が250mgKOH/g以下であってもよく、240mgKOH/g以下であってもよく、235mgKOH/g以下であってもよく、230mgKOH/g以下であってもよい。
【0040】
特定バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)した場合、現像性及びレジストパターンの密着性にバランスよく優れる点から、10000~200000であってもよく、15000~100000であってもよく、20000~80000であってもよく、23000~60000であってもよい。現像時間をより短縮する観点からは、重量平均分子量が200000以下であってもよく、100000以下であってもよく、80000以下であってもよく、60000以下であってもよい。レジストパターンの密着性をより向上させる観点からは、重量平均分子量が10000以上であってもよく、15000以上であってもよく、20000以上であってもよく、23000以上であってもよく、25000以上であってもよい。
【0041】
特定バインダーポリマーの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、レジストパターンの解像度及び密着性をより向上させる観点から、3.0以下であってもよく、2.8以下であってもよく、2.5以下であってもよい。
【0042】
特定バインダーポリマーは、必要に応じて、340~430nmの範囲内の波長を有する光に対して感光性を有する特性基をその分子内に有していてもよい。特性基としては、後述する(D)成分等の増感色素から水素原子を少なくとも1つ取り除いて構成される基を挙げることができる。
【0043】
上記感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、感光層の形成性、感度、及びレジストパターンの解像度をより向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、30~70質量部であってもよく、35~65質量部であってもよく、40~60質量部であってもよい。感光層の形成性をより向上させる観点からは、この含有量が30質量部以上であってもよく、35質量部以上であってもよく、40質量部以上であってもよい。また、感度及びレジストパターンの解像度をより向上させる観点からは、この含有量が70質量部以下であってもよく、65質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよい。
【0044】
(B)成分:光重合性化合物
上記感光性樹脂組成物は、(B)成分である光重合性化合物として、EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート(特定光重合性化合物)の少なくとも1種を含む。(B)成分は、必要に応じて、特定光重合性化合物以外の光重合性化合物を更に含んでいてもよい。
【0045】
特定光重合性化合物において、EO基の構造単位数は6未満である。ここで、EO基(構造単位)の構造単位数とは、分子中にどの程度EO基が付加されているかを示すものともいえる。したがって、単一の分子については整数値を示す。以下、構造単位の構造単位数については同様である。
また、特定光重合性化合物において、EO基の構造単位数は、レジストパターンの薬液耐性を向上させる観点から、4未満であってもよく、3未満であってもよい。また、EO基の構造単位数の下限値は、0以上であり、2以上であってもよい。
【0046】
特定光重合性化合物は、下記式(3)で示される化合物であってもよい。
【0047】
【化3】
【0048】
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XOは、それぞれ独立に、EO基を示す。(XO)m1及び(XO)m2は、それぞれ(ポリ)エチレンオキシ基を示す。m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6未満の数値を採り得る。m1+m2は0以上6未満である。m1及びm2は、構造単位の構造単位数を示す。
【0049】
式(3)で示される化合物の市販品としては、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:4mol(平均値))(日立化成株式会社製、「FA-324ME」)、2,2-ビス(4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:3mol(平均値))(新中村化学工業株式会社製、「ABE-300」)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:2.6mol(平均値))(新中村化学工業株式会社製、「BPE-100」)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:2.3mol(平均値))(新中村化学工業株式会社製、「BPE-80N」)等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記感光性樹脂組成物における特定光重合性化合物の含有量は、硬化後に架橋ネットワーク中の分子運動の抑制により膨潤を抑制させ、薬液耐性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1~60質量部であってもよく、5~55質量部であってもよく、10~50質量部であってもよい。
【0051】
上記感光性樹脂組成物は、(B)成分として、特定光重合性化合物以外のその他の光重合性化合物を含んでいてもよい。その他の光重合性化合物としては、光重合が可能なものであれば特に制限はない。その他の光重合性化合物は、エチレン性不飽和結合基を有する化合物であってもよい。エチレン性不飽和結合基を有する化合物としては、分子内にエチレン性不飽和結合基を1つ有する化合物、分子内にエチレン性不飽和結合基を2つ有する化合物、分子内にエチレン性不飽和結合基を3つ以上有する化合物等が挙げられる。
【0052】
(B)成分がその他の光重合性化合物を含む場合、特定光重合性化合物の含有量は、硬化後に架橋ネットワーク中の分子運動の抑制により膨潤を抑制させ、薬液耐性を向上させる観点から、(B)成分の総量100質量部に対して、1~60質量部であってもよく、6~50質量部であってもよく、10~40質量部であってもよい。
【0053】
(B)成分は、その他の光重合性化合物として、分子内にエチレン性不飽和結合基を2つ有する化合物(但し、特定光重合性化合物を除く)の少なくとも1種を含んでいてもよい。(B)成分がその他の光重合性化合物として、分子内にエチレン性不飽和結合基を2つ有する化合物を含む場合、その含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、5~60質量部であってもよく、5~55質量部であってもよく、10~50質量部であってもよい。
【0054】
分子内にエチレン性不飽和結合基を2つ有する化合物としては、特定光重合性化合物とは異なるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、分子内にEO基及びPO基の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、分子内にウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
(B)成分は、レジストパターンの解像度及び剥離性を向上させる観点から、その他の光重合性化合物として、特定光重合性化合物とは異なるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、並びに分子内にEO基及びPO基の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる分子内にエチレン性不飽和結合基を2つ有する化合物の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0056】
特定光重合性化合物とは異なるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートとしては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0057】
【化4】
【0058】
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XO及びYOは、それぞれ独立に、EO基又はPO基を示す。(XO)x1、(XO)x2、(YO)y1、及び(YO)y2は、それぞれ(ポリ)エチレンオキシ基又は(ポリ)プロピレンオキシ基を示す。x1、x2、y1、及びy2は、それぞれ独立に、0~40の数値を採り得る。x1、x2、y1、及びy2は、構造単位の構造単位数を示す。
【0059】
式(4)で示される化合物がPO基を有する場合、分子中におけるPO基の構造単位数は、レジストパターンの解像度を向上させる観点から、2以上であってもよく、3以上であってもよい。また、分子中におけるPO基の構造単位数は、現像性を向上させる観点から、5以下であってもよい。
【0060】
式(4)で表される化合物がEO基を有する場合、分子中におけるEO基の構造単位数は、現像性を向上させる観点から、6以上であってもよく、8以上であってもよい。また、分子中におけるEO基の構造単位数は、レジストパターンの解像度を向上させる観点から、16以下であってもよく、14以下であってもよい。
【0061】
式(4)で示される化合物の市販品としては、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(EO基:12mol(平均値)、PO基:4mol(平均値))(日立化成株式会社製、「FA-3200MY」)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:10mol(平均値))(新中村化学工業株式会社製、「BPE-500」)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:10mol(平均値))(日立化成株式会社製、「FA-321M」)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:30mol(平均値))(新中村化学工業株式会社製、「BPE-1300」)等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(B)成分が特定光重合性化合物とは異なるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量は、硬化後に架橋ネットワーク中の分子運動の抑制により膨潤を抑制させ、薬液耐性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1~65質量部であってもよく、5~60質量部であってもよく、10~55質量部であってもよい。また、EO基及びPO基の合計の構造単位数が10以下のビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートの含有量は、レジストパターンの解像度、密着性、及び薬液耐性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、55質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、45質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよい。また、EO基及びPO基の合計の構造単位数が10以下のビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートの含有量は、レジストパターンの解像度、密着性、及び薬液耐性を向上させる観点から、(B)成分の総量100質量部に対して、70質量部以下であってもよく、65質量部以下であってもよく、55質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、45質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよい。
【0063】
水添ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)シクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
(B)成分が水添ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量は、硬化後に架橋ネットワーク中の分子運動の抑制により膨潤を抑制させ、薬液耐性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1~50質量部であってもよく、5~40質量部であってもよい。
【0064】
(B)成分は、レジストパターンの屈曲性、解像度、及び密着性をバランスよく向上させる観点から、その他の光重合性化合物として、分子内にEO基及びPO基の少なくとも一方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの少なくとも1種を含んでいてもよい。(B)成分がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む場合、その含有量は、レジストパターンの解像度及び屈曲性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1~30質量部であってもよく、2~20質量部であってもよく、2~15質量部であってもよい。
【0065】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、EO・PO変性ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートであってもよい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの分子内において、(ポリ)エチレンオキシ基及び(ポリ)プロピレンオキシ基は、それぞれ連続してブロック的に存在していても、ランダムに存在していてもよい。なお、(ポリ)プロピレンオキシ基におけるPO基は、n-プロピレンオキシ基及びイソプロピレンオキシ基のいずれであってもよい。また、(ポリ)イソプロピレンオキシ基において、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
【0066】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、(ポリ)n-ブチレンオキシ基、(ポリ)イソブチレンオキシ基、(ポリ)n-ペンチレンオキシ基、(ポリ)ヘキシレンオキシ基、これらの構造異性体等である炭素数4~6程度の(ポリ)アルキレンオキシ基等を有していてもよい。
【0067】
(B)成分は、その他の光重合性化合物として、分子内にエチレン性不飽和結合基を3つ以上有する光重合性化合物の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0068】
エチレン性不飽和結合基を3つ以上有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(EO基の構造単位数が1~5のもの)、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
分子内にエチレン性不飽和結合基を3つ以上有する光重合性化合物の市販品としては、EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート(日立化成株式会社製、「TMPT21E」及び「TMPT30E」)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(サートマー社製、「SR444」及び新中村化学工業株式会社製、「A-TMM-3」)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、「A-DPH」)、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、「ATM-35E」)等が挙げられる。
【0070】
(B)成分が分子内にエチレン性不飽和結合基を3つ以上有する光重合性化合物を含む場合、その含有量は、レジストパターン形状、並びにレジストパターンの解像度、密着性及び剥離性をバランスよく向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、3~30質量部であってもよく、5~25質量部であってもよく、5~20質量部であってもよい。
【0071】
(B)成分は、レジストパターン形状、並びにレジストパターンの解像度、密着性、及び剥離性をバランスよく向上させる観点、又はスカム発生を抑制する観点から、その他の光重合性化合物として、分子内にエチレン性不飽和結合基を1つ有する光重合性化合物を含んでいてもよい。
【0072】
分子内にエチレン性不飽和結合基を1つ有する光重合性化合物としては、例えば、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、フタル酸化合物、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。上記の中でも、レジストパターン形状、並びにレジストパターンの解像度、密着性、及び剥離性をバランスよく向上させる観点から、ノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート又はフタル酸化合物を含んでいてもよい。
【0073】
(B)成分が分子内にエチレン性不飽和結合基を1つ有する光重合性化合物を含む場合、その含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1~20質量部であってもよく、3~15質量部であってもよく、5~12質量部であってもよい。
【0074】
上記感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、30~70質量部であってもよく、35~65質量部であってもよい。(B)成分の含有量が30質量部以上であると、感度及びレジストパターンの解像度が向上する傾向にある。(B)成分の含有量が70質量部以下であると、感光層を形成し易くなり、また、良好なレジストパターン形状が得られ易くなる傾向にある。
【0075】
(C)成分:光重合開始剤
上記感光性樹脂組成物は、(C)成分として、光重合開始剤の少なくとも1種を含有する。(C)成分は、レジストパターンの薬液耐性を維持しつつ、感度、並びにレジストパターンの解像度及び密着性を向上させる点から、下記式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体を含んでいてもよい。
【0076】
【化5】
【0077】
式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基で置換されていてもよいアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基を示し、p及びqは、それぞれ独立に、1~5の整数を示す。但し、pが2以上の場合、複数存在するXはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、qが2以上の場合、複数存在するXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0078】
及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数1~6のアルコキシ基であってもよい。X及びXのうち少なくとも1つは塩素原子であることが好ましい。
及びXの置換位置は特に限定されず、オルト位又はパラ位であることが好ましい。
p及びqは、それぞれ独立に、1~5の整数であり、1~3の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0079】
Ar、Ar、Ar、及びArで表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。
Ar、Ar、Ar、及びArが有していてもよい置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、及び炭素数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基が挙げられる。Ar、Ar、Ar、及びArが、それぞれ独立に上記置換基を有する場合、置換基の数は1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。また、Ar、Ar、Ar、及びArが、それぞれ独立に上記置換基を有する場合、その置換位置は特に限定されず、オルト位又はパラ位であることが好ましい。Ar、Ar、Ar、及びArは、いずれも無置換であることが好ましい。
【0080】
式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(2-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(2-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(4-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。なお、2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
(C)成分が式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体を含有する場合、その含有量は、(C)成分の総量100質量部に対して、25質量部以上であってもよく、50質量部以上であってもよく、75質量部以上であってもよい。
【0082】
(C)成分である光重合開始剤としては、式(2)で示される2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体以外にも、通常用いられるその他の光重合開始剤を含んでいてもよい。その他の光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。
【0083】
上記感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であってもよく、1~7質量部であってもよく、2~6質量部であってもよく、3~5質量部であってもよい。(C)成分の含有量が0.1質量部以上であると、感度、並びにレジストパターンの解像度及び密着性が向上する傾向にある。(C)成分の含有量が10質量部以下であると、良好なレジストパターン形状が得られ易くなる傾向にある。
【0084】
(D)成分:式(1)で示されるスチリルピリジン化合物
上記感光性樹脂組成物は、(D)成分として、下記式(1)で示されるスチリルピリジン化合物の少なくとも1種を含有する。(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
【化6】
【0086】
式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルエステル基、アミノ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アセチル基、又は(メタ)アクリロイル基を示し、a、b、及びcは、それぞれ独立に、0~5の整数を示す。但し、aが2以上の場合、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、bが2以上の場合、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、cが2以上の場合、複数存在するRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、アルキルエステル基の炭素数は、アルキル部分の炭素数を意味する。
【0087】
感度をより向上できる観点から、式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルエステル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基であってもよい。
また、a、b、及びcは、それぞれ独立に、0~5の整数を示し、0~3の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましい。
【0088】
式(1)で示されるスチリルピリジン化合物としては、例えば、3,5-ジベンジリデンジシクロペンタノ[b,e]-4-フェニルピリジン、3,5-ビス(4-メチルベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-メチルフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-メトキシベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-メトキシフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-アミノベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-アミノフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-ジメチルアミノベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-カルボキシベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-カルボキシフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-アセチルベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-アセチルフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-シアノベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-シアノフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-ニトロベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-ニトロフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-アクリロイルベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-アクリロイルフェニル)ピリジン、3,5-ビス(4-(メトキシカルボニル)ベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン、及び3,5-ビス(2,4-ジメトキシベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(2,4-ジメトキシフェニル)ピリジンが挙げられる。
【0089】
式(1)で示されるスチリルピリジン化合物は、例えば、ベンズアルデヒド誘導体、環状アルキルケトン、及び酢酸アンモニウムの縮合反応により合成できる。
【0090】
上記感光性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部であってもよく、0.05~5質量部であってもよく、0.08~3質量部であってもよい。(D)成分の含有量が0.01質量部以上であると、感度及びレジストパターンの解像度が向上し、また、薬液耐性に優れるレジストパターンが得られ易くなる傾向にある。(D)成分の含有量が10質量部以下であると、良好なレジストパターン形状が得られ易くなる傾向にある。
【0091】
(E)成分:アミン化合物
上記感光性樹脂組成物は、(E)成分として、アミン化合物の少なくとも1種を含有していてもよい。アミン化合物としては、ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メタン、ビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]メタン、ロイコクリスタルバイオレット等が挙げられる。これらのアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
上記感光性樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部であってもよく、0.05~5質量部であってもよく、0.1~2質量部であってもよい。(E)成分の含有量が0.01質量部以上であると、充分な感度が得られ易くなる傾向にある。(E)成分の含有量が10質量部以下であると、感光層の形成後に、過剰な(E)成分が異物として析出することが抑制される傾向にある。
【0093】
(他の成分)
上記感光性樹脂組成物は、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、(D)成分以外の他の増感色素、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、メチルバイオレット等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、2-クロロアニリン等の光発色剤、熱発色防止剤、4-トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などの他の成分を含有していてもよい。これらの他の成分は、それぞれの成分について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
上記感光性樹脂組成物がこれらの他の成分を含有する場合、これらの含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、それぞれ0.01~20質量部程度であってもよい。
【0095】
[感光性樹脂組成物の溶液]
上記感光性樹脂組成物は、有機溶剤の少なくとも1種を更に含有していてもよい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記感光性樹脂組成物に含まれる有機溶剤の含有量は目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、感光性樹脂組成物に有機溶剤を含有させて固形分が30~60質量%程度の溶液として用いることができる。以下、有機溶剤を含有する感光性樹脂組成物を「塗布液」ともいう。
【0096】
上記塗布液を、後述する支持体、金属板等の表面上に塗布し、乾燥させることにより、上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光層を形成することができる。金属板としては特に制限されず、目的等に応じて適宜選択できる。金属板としては、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金などの金属板を挙げることができる。金属板として、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金等の金属板が挙げられる。
【0097】
形成される感光層の厚みは特に制限されず、その用途により適宜選択できる。例えば、乾燥後の厚みで1~100μm程度であってもよい。金属板上に感光層を形成した場合、感光層の表面を、保護層で被覆してもよい。保護層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどが挙げられる。
【0098】
上記感光性樹脂組成物は、後述する感光性エレメントの感光層の形成に適用することができる。すなわち、本開示の別の実施形態は、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、(D)成分:式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する感光性樹脂組成物の感光性エレメントへの応用である。
また、上記感光性樹脂組成物は、後述するレジストパターン付き基板の製造方法に使用できる。すなわち、本開示の別の実施形態は、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、(D)成分:式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する感光性樹脂組成物のレジストパターン付き基板の製造方法への応用である。
【0099】
<感光性エレメント>
本実施形態の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に設けられた上記感光性樹脂組成物を用いてなる感光層と、を備える。なお、感光層は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成される塗膜であって、上記感光性樹脂組成物が未硬化状態のものである。感光性エレメントは、必要に応じて保護層等のその他の層を有していてもよい。
【0100】
図1に、感光性エレメントの一例を示す。図1に示す感光性エレメント1では、支持体2、感光層3、及び保護層4がこの順に積層されている。感光性エレメント1は、例えば、以下のようにして得ることができる。支持体2上に、有機溶剤を含有する上記感光性樹脂組成物である塗布液を塗布して塗布層を形成し、これを乾燥することで感光層3を形成する。次いで、感光層3の支持体2とは反対側の面を保護層4で被覆することにより、支持体2と、支持体2上に形成された感光層3と、感光層3上に積層された保護層4と、を備える感光性エレメント1が得られる。感光性エレメント1は、保護層4を必ずしも備えなくてもよい。
【0101】
支持体2としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
【0102】
支持体2の厚みは、1~100μmであってもよく、5~50μmであってもよく、5~30μmであってもよい。支持体2の厚みが1μm以上であると、支持体2を剥離する際に支持体2が破れるのが抑制される傾向にある。また、支持体2の厚みが100μm以下であると、解像度の低下が抑制される傾向にある。
【0103】
保護層4としては、感光層3の保護層4に対する接着力が、感光層3の支持体2に対する接着力よりも小さくなるものが好ましい。また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。ここで、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものを意味する。すなわち、「低フィッシュアイ」とは、フィルム中の上記異物等が少ないことを意味する。
【0104】
具体的に、保護層4としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンなどの耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとしては、王子製紙株式会社製のアルファンMA-410、E-200、信越フィルム株式会社製のポリプロピレンフィルム、帝人株式会社製のPS-25等のPSシリーズのポリエチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられる。なお、保護層4は支持体2と同一のものでもよい。
【0105】
保護層4の厚みは、1~100μmであってもよく、5~50μmであってもよく、5~30μmであってもよく、15~30μmであってもよい。保護層4の厚みが1μm以上であると、保護層4を剥がしながら、感光層3及び支持体2を基板上にラミネートする際、保護層4が破れることを抑制できる傾向にある。保護層4の厚みが100μm以下であると、取扱い性及び廉価性に優れる傾向にある。
【0106】
上記感光性エレメントは、具体的には例えば以下のようにして製造することができる。上記(A)成分:バインダーポリマー、上記(B)成分:光重合性化合物、上記(C)成分:光重合開始剤、及び上記(D)成分:式(1)で示されるスチリルピリジン化合物を上記有機溶剤に溶解した塗布液を準備する工程と、上記塗布液を支持体2上に塗布して塗布層を形成する工程と、上記塗布層を乾燥して感光層3を形成する工程と、を含む製造方法で感光性エレメントを製造することができる。
【0107】
塗布液の支持体2上への塗布は、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により行うことができる。
【0108】
塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。塗布層の乾燥は、70~150℃にて、5~30分間程度行うことが好ましい。乾燥後、感光層3中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下であってもよい。
【0109】
感光性エレメントにおける感光層3の厚みは、用途により適宜選択することができる。感光層3の乾燥後の厚みは、1~100μmであってもよく、1~50μmであってもよく、5~40μmであってもよい。感光層3の厚みが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になる傾向にある。感光層3の厚みが100μm以下であると、レジストパターンの密着性及び解像度が充分に得られる傾向にある。
【0110】
感光層3の紫外線に対する透過率は、波長350~420nmの範囲の紫外線に対して、5~75%であってもよく、10~65%であってもよく、15~55%であってもよい。この透過率が5%以上であると、レジストパターンの密着性が充分に得られる傾向にある。この透過率が75%以下であると、レジストパターンの解像度が充分に得られる傾向にある。なお、上記透過率は、紫外線分光計により測定することができる。紫外線分光計としては、(株)日立製作所製の228A型Wビーム分光光度計が挙げられる。
【0111】
上記感光性エレメントは、更にクッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層などを有していてもよい。これらの中間層としては、例えば、特開2006-098982号公報に記載の中間層を本実施形態においても適用することができる。
【0112】
得られた感光性エレメントの形態は特に制限されない。感光性エレメントは、例えば、シート状であってもよく、巻芯にロール状に巻き取った形状であってもよい。ロール状に巻き取る場合、支持体2が外側になるように巻き取ることが好ましい。巻芯としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。このようにして得られたロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0113】
上記感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターン付き基板の製造方法に好適に用いることができる。
【0114】
<レジストパターン付き基板の製造方法>
上記感光性樹脂組成物を用いて、レジストパターン付き基板を製造することができる。本実施形態のレジストパターン付き基板の製造方法は、(i)基板上に、上記感光性樹脂組成物を用いてなる感光層を形成する工程(感光層形成工程)と、(ii)上記感光層の少なくとも一部の領域に活性光線を照射して、上記領域を光硬化させて硬化物領域を形成する工程(露光工程)と、(iii)上記感光層の上記硬化物領域以外の少なくとも一部を上記基板上から除去して、上記基板上にレジストパターンを形成する工程(現像工程)と、を有する。上記レジストパターン付き基板の製造方法は、必要に応じて更にその他の工程を有していてもよい。
【0115】
(i)感光層形成工程
まず、上記感光性樹脂組成物を用いて感光層3を基板上に形成する。基板としては、例えば、絶縁層と該絶縁層上に形成された導体層とを備える基板(回路形成用基板)を用いることができる。絶縁層としては、例えば、ガラスエポキシ材が挙げられる。導体層としては、例えば、銅箔が挙げられる。
【0116】
感光層3の基板上への形成は、例えば、上記感光性エレメントが保護層4を有している場合には、保護層4を除去した後、感光性エレメントの感光層3を加熱しながら上記基板に圧着することにより行われる。これにより、基板と感光層3と支持体2とがこの順に積層された積層体が得られる。
【0117】
この感光層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の感光層3及び基板の少なくとも一方に対する加熱は、70~130℃の温度で行うことが好ましく、0.1~1.0MPa程度(1~10kgf/cm程度)の圧力で圧着することが好ましい。これらの条件は特に制限されず、必要に応じて適宜選択される。なお、感光層3を70~130℃に加熱すれば、基板を予熱処理しておかなくてもよい。基板を予熱処理することで密着性及び追従性を更に向上させることができる。
【0118】
(ii)露光工程
露光工程では、上記のようにして基板上に形成された感光層3の少なくとも一部の領域に活性光線を照射することで、活性光線が照射された露光部が光硬化して、潜像が形成される。この際、感光層3上に存在する支持体2が活性光線に対して透明である場合には、支持体2を通して活性光線を照射することができる。一方、支持体2が活性光線に対して遮光性を示す場合には、支持体2を除去した後で感光層3に活性光線を照射する。
【0119】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法、DLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0120】
活性光線の光源としては特に制限されず、公知の光源を用いることができる。具体的には、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ、窒化ガリウム系青紫色レーザ等の紫外線、可視光等を有効に放射するものが用いられる。
【0121】
活性光線の波長(露光波長)は、340~430nmの範囲内であってもよく、350~420nmの範囲内であってもよい。活性光線の波長を340~430nmの範囲内とすることで、薬液耐性に優れたレジストパターンを優れた感度でより効率的に形成することができる傾向にある。
【0122】
(iii)現像工程
現像工程では、上記感光層3の未硬化部分が基板上から現像処理により除去されることで、感光層3が光硬化した硬化物であるレジストパターンが基板上に形成される。感光層3上に支持体2が存在している場合には、支持体2を除去してから、未露光部分の除去(現像)を行う。現像処理には、ウェット現像とドライ現像とがあるが、ウェット現像が広く用いられている。
【0123】
ウェット現像による場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0124】
現像液は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。現像液としては、アルカリ性水溶液、有機溶剤現像液等が挙げられる。
【0125】
アルカリ性水溶液は、現像液として用いられる場合、安全且つ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム、又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム、若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩、ホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、モルホリンなどが用いられる。
【0126】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1~5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1~5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。アルカリ性水溶液のpHは9~11の範囲とすることが好ましい。またその温度は、感光層3のアルカリ現像性に合わせて調節される。アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を含有させてもよい。
【0127】
アルカリ性水溶液は、1種以上の有機溶剤を含有していてもよい。用いる有機溶剤としては、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。アルカリ性水溶液が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有率は、アルカリ性水溶液の全量を基準として、2~90質量%とすることが好ましい。
【0128】
有機溶剤現像液に用いられる有機溶剤としては、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤に、引火防止のため、1~20質量%の範囲で水を添加して有機溶剤現像液とすることが好ましい。
【0129】
上記レジストパターン付き基板の製造方法は、未露光部分を除去した後、必要に応じて60~250℃の加熱又は0.2~10J/cmのエネルギー量での露光を行うことにより、レジストパターンを更に硬化する工程を更に有していてもよい。
【0130】
<プリント配線板の製造方法>
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してエッチング処理及びめっき処理の少なくとも一方の処理を行う工程を有する。
つまり、第1実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してエッチング処理を行う工程を有する。
また、第2実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターン付き基板の製造方法によりレジストパターンが形成された基板に対してめっき処理を行う工程を有する。
基板としては、例えば、絶縁層と該絶縁層上に形成された導体層とを備える基板(回路形成用基板)を用いることが好ましい。上記プリント配線板の製造方法は、必要に応じてレジスト除去工程等のその他の工程を有していてもよい。基板のエッチング処理及びめっき処理は、形成されたレジストパターンをマスクとして、基板の導体層等に対して行われる。
【0131】
エッチング処理では、基板上に形成されたレジストパターン(硬化レジスト)をマスクとして、硬化レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。エッチング液としては、塩化第二銅水溶液、塩化第二鉄水溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液等が挙げられる。これらの中でもエッチファクタが良好な点から、塩化第二鉄水溶液を用いることが好ましい。
【0132】
一方、めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターン(硬化レジスト)をマスクとして、硬化レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層上に銅、はんだ等をめっきする。めっき処理の後、硬化レジストを除去し、更にこの硬化レジストによって被覆されていた導体層をエッチング処理して、導体パターンを形成する。めっき処理の方法は、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよい。めっき処理としては、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル-塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケル等のニッケルめっき、ハード金めっき、ソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0133】
エッチング処理及びめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去(剥離)される。レジストパターンの除去は、例えば、現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液を用いて行うことができる。この強アルカリ性の水溶液としては、1~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1~10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。中でも1~10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は1~10質量%水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1~5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は1~5質量%水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。強アルカリ性の水溶液のレジストパターンへの付与方式としては、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、更にエッチング処理によって硬化レジストで被覆されていた導体層を除去し、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0135】
上記プリント配線板の製造方法は、単層プリント配線板のみならず多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【0136】
上記感光性樹脂組成物は、プリント配線板の製造に好適に使用することができる。すなわち、好適な実施形態の一つは、(A)成分:(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、(B)成分:EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤と、(D)成分:式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する感光性樹脂組成物のプリント配線板の製造への応用である。
また、より好適な実施形態は、上記感光性樹脂組成物の高密度パッケージ基板の製造への応用であり、上記感光性樹脂組成物のセミアディティブ工法への応用である。以下に、セミアディティブ工法による配線板の製造工程の一例について、図2を参照しながら説明する。図2における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0137】
図2(a)では、絶縁層15上に導体層10が形成された基板(回路形成用基板)を準備する。導体層10は、例えば、金属銅層である。図2(b)では、上記感光層形成工程により、基板の導体層10上に感光層32を形成する。図2(c)では、感光層32上にマスク20を配置し、上記露光工程により、活性光線50を感光層32に照射して、マスク20が配置された領域以外の領域を露光して、感光層32に光硬化部を形成する。図2(d)では、感光層32において、光硬化部以外の領域を現像工程により基板上から除去することにより、基板上に光硬化部であるレジストパターン30を形成する。図2(e)では、光硬化部であるレジストパターン30をマスクとしためっき処理により、導体層10上にめっき層42を形成する。図2(f)では、光硬化部であるレジストパターン30を強アルカリの水溶液により剥離した後、フラッシュエッチング処理により、めっき層42の一部とレジストパターン30でマスクされていた導体層10とを除去して導体パターン40を形成する。導体層10とめっき層42とでは、材質が同じであっても、異なっていてもよい。
なお、図2ではマスク20を用いてレジストパターン30を形成する方法について説明したが、マスク20を用いずに直接描画露光法によりレジストパターン30を形成してもよい。
【実施例
【0138】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0139】
(実施例1~6及び比較例1~4)
<感光性樹脂組成物の溶液の調製>
表2及び表3に示す各成分を同表に示す配合量(単位:g)で、アセトン9g、トルエン5g、及びメタノール5gと混合することにより、実施例1~6及び比較例1~4の感光性樹脂組成物の溶液をそれぞれ調製した。表2及び表3に示す(A)成分の配合量は不揮発分の質量(固形分量)である。表2及び表3に示す各成分の詳細については、以下のとおりである。なお、「-」は未配合を意味する。
【0140】
(A)バインダーポリマー
[バインダーポリマー(A-1)の合成]
重合性単量体(モノマー)であるメタクリル酸81g、スチレン135g、メタクリル酸ベンジル69g、及びメタクリル酸メチル15g(質量比:27/45/23/5)と、アゾビスイソブチロニトリル1.5gとを混合して得た溶液を「溶液a」とした。
【0141】
メチルセロソルブ60g及びトルエン40gの混合液(質量比:3:2)100gに、アゾビスイソブチロニトリル0.5gを溶解して得た溶液を「溶液b」とした。
【0142】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート、及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルセロソルブ180g及びトルエン120gの混合液(質量比:3:2)300gを投入し、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みつつ撹拌しながら加熱し、80℃まで昇温させた。
【0143】
フラスコ内の上記混合液に、上記溶液aを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃にて2時間保温した。次いで、フラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。更に、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃まで昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A-1)の溶液を得た。
バインダーポリマー(A-1)の不揮発分(固形分)は41.5質量%であり、重量平均分子量は44000であり、酸価は176mgKOH/gであり、分散度は2.2であった。
【0144】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
【0145】
GPC条件
ポンプ:日立 L-6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:以下の計3本、カラム仕様:10.7mmφ×300mm
Gelpack GL-R440
Gelpack GL-R450
Gelpack GL-R400M(以上、日立化成株式会社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:固形分が40質量%の樹脂溶液を120mg採取し、5mLのTHFに溶解して試料を調製した。
測定温度:40℃
注入量:200μL
圧力:49kgf/cm(4.8MPa)
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L-3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0146】
[バインダーポリマー(A-2)の合成]
重合性単量体(モノマー)であるメタクリル酸81g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル9g、スチレン141g、及びメタクリル酸ベンジル69g(質量比:27/3/47/23)と、アゾビスイソブチロニトリル2.4gとを混合して得た溶液を「溶液c」とし、溶液aの代わりに溶液cを用いたほかは、バインダーポリマー(A-1)の溶液を得るのと同様にして、バインダーポリマー(A-2)の溶液を得た。
バインダーポリマー(A-2)の不揮発分(固形分)は41.7質量%であり、重量平均分子量は38000であり、酸価は176mgKOH/gであり、分散度は1.8であった。
【0147】
バインダーポリマー(A-1)及び(A-2)について、重合性単量体(モノマー)の質量比(%)、酸価、重量平均分子量、及び分散度を表1に示す。なお、「-」は未配合を意味する。
【0148】
【表1】
【0149】
(B)光重合性化合物
・BPE-100(新中村化学工業株式会社製):2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:2.6mol(平均値))
・BPE-80N(新中村化学工業株式会社製):2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:2.3mol(平均値))
・FA-324ME(日立化成株式会社製):2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:4mol(平均値))
・ABE-300(新中村化学工業株式会社製):2,2-ビス(4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:3mol(平均値))
・FA-321M(日立化成株式会社製):2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(EO基:10mol(平均値))
・FA-3200MY(日立化成株式会社製):2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン(EO基:12mol(平均値)、PO基:4mol(平均値))
・FA-024M(日立化成株式会社製):(PO)(EO)(PO)変性ポリプロピレングリコール#700ジメタクリレート
なお、EO基及びPO基についてのmol数は、各EO基又はPO基の構造単位数を意味する。
【0150】
(C)光重合開始剤
・B-CIM(Hampford社製):2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール[2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体]
【0151】
(D)式(1)で示されるスチリルピリジン化合物
・2,4-DMOP-DSP:3,5-ビス(2,4-ジメトキシベンジリデンジシクロペンタノ[b,e])-4-(2,4-ジメトキシフェニル)ピリジン
【0152】
(D)成分以外の他の増感色素
・PYR-1(株式会社日本化学工業所製):1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)ピラゾリン
・EAB(保土谷化学工業株式会社製):4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン
・H-MOP-DSP:4,6-ビス(4-メトキシベンジリデンジシクロヘキサノ[b,e])-5-(4-メトキシフェニル)ピリジン
【0153】
(E)アミン化合物
・LCV(山田化学工業株式会社製):ロイコクリスタルバイオレット
【0154】
染料
・MKG(大阪有機化学工業株式会社製):マラカイトグリーン
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
<感光性エレメントの作製>
上記で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、それぞれ厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、「FB-40」)(支持体)上に塗布し、70℃及び110℃の熱風対流式乾燥器で順次乾燥処理して、乾燥後の膜厚が25μmである感光層を形成した。この感光層上にポリエチレンフィルム(王子製紙株式会社製、「E-200K」)(保護層)を貼り合わせ、支持体と感光層と保護層とが順に積層された感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0158】
<積層基板の作製>
ガラスエポキシ材と、その両面に形成された銅箔(厚さ16μm)とからなる銅張積層板(日立化成株式会社製、「MCL-E-679F」)(以下、「基板」という。)を加熱して80℃に昇温させた後、実施例1~6及び比較例1~4に係る感光性エレメントを、基板の銅表面にラミネート(積層)した。ラミネートは、保護層を除去しながら、各感光性エレメントの感光層が基板の銅表面に密着するようにして、温度110℃、ラミネート圧力4kgf/cm(0.4MPa)の条件下で行った。このようにして、基板の銅表面上に感光層及び支持体が積層された積層基板を得た。得られた積層基板は23℃まで放冷した。
【0159】
<感度の評価>
上記積層基板の支持体上に、濃度領域0.00~2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールを配置させた。波長405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(ビアメカニクス株式会社製、「DE-1UH」)を使用して、所定のエネルギー量(露光量)でフォトツール及び支持体を介して感光層に対して露光した。なお、照度の測定には、405nm対応プローブを適用した紫外線照度計(ウシオ電機株式会社製、「UIT-150」)を用いた。
【0160】
露光後、積層基板から支持体を剥離して感光層を露出させ、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃にて60秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。このようにして、基板の銅表面上に感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成した。レジストパターン(硬化膜)として得られたステップタブレットの残存段数(ステップ段数)を測定することにより、感光性樹脂組成物の感度を評価した。感度は、100mJ/cmで露光した際の上記ステップ段数により示され、この数値が高いほど感度が良好であることを意味する。結果を表4及び表5に示す。
【0161】
<解像度及び密着性の評価>
ライン幅(L)/スペース幅(S)(以下、「L/S」と記す。)が3/3~30/30(単位:μm)である描画パターンを用いて、41段ステップタブレットの残存段数が14段となるエネルギー量で上記積層基板の感光層に対して露光(描画)した。露光後、上記感度の評価と同様の現像処理を行った。
【0162】
現像後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、且つライン部分(露光部分)が蛇行、欠け等の不良を生じることなく形成されたレジストパターンにおけるライン幅/スペース幅の値のうちの最小値により、解像度及び密着性を評価した。この数値が小さいほどレジストパターンの解像度及び密着性が共に良好であることを意味する。なお、得られたレジストパターンは、光学顕微鏡を用いて、倍率1000倍で拡大して観察することで不良の有無を確認した。結果を表4及び表5に示す。
【0163】
<反応率の評価>
41段ステップタブレットの残存段数が14段となるエネルギー量で上記感光性エレメントの感光層に対して露光し、光硬化物を得た。露光前後に、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)装置(ブルカー・オプティクス株式会社製、「VERTEX70」)を用いて、感光層又はその光硬化物のFT-IR測定を行った。そして、1570cm-1における芳香族に由来するピークを内部標準とし、1637cm-1に観察されるビニル基に由来するピークから、以下の式に従って反応率(%)を算出した。結果を表4及び表5に示す。
反応率(%)=(1-I/I)×100
I:露光後におけるピーク強度
:露光前におけるピーク強度
【0164】
<めっき液耐性(薬液耐性)の評価>
フレキシブルプリント配線板用銅張積層板(ニッカン工業株式会社製、「F30VC1」)を加熱して80℃に昇温させた後、実施例1~6及び比較例1~4に係る感光性エレメントを、基板の銅表面にラミネート(積層)した。ラミネートは、保護層を除去しながら、各感光性エレメントの感光層が基板の銅表面に密着するようにして、温度110℃、ラミネート圧力4kgf/cm(0.4MPa)の条件下で行った。このようにして、基板の銅表面上に感光層及び支持体が積層された評価用積層体を得た。得られた評価用積層体は23℃まで放冷した。
【0165】
上記評価用積層体の支持体上に、L/Sが5/5、8/8、10/10、及び15/15(単位:μm)の配線パターンを有するガラス製フォトツールを密着させ、現像後の残存ステップ段数が14段となるエネルギー量により露光した。次いで、支持体を剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃にてスプレーすることにより未露光部分を除去し、評価用基板を得た。現像時間は、最短現像時間(未露光部が除去される最短時間)の2倍に相当する時間とした。
【0166】
上記評価用基板に対して、脱脂液(メルテックス株式会社製、「PC-455」、25質量%)に5分間浸漬、水洗、ソフトエッチ液(過硫酸アンモニウム150g/L)に2分間浸漬、水洗、10質量%硫酸に1分間浸漬の順で順次前処理を行った。そして、硫酸銅めっき液(硫酸銅75g/L、硫酸190g/L、塩素イオン50質量ppm、メルテックス株式会社製、「カパーグリームPCM」、5mL/L)に入れ、1A/dmの条件でめっき厚みが12μmになるまで銅めっき処理を行った。
【0167】
銅めっき処理後の評価用基板を水洗し乾燥した後、50℃の剥離液(三菱ガス化学株式会社製、「R-100」、0.2体積%)に浸漬することによりレジストパターンを剥離し、下地銅を0.1質量%硫酸及び0.1質量%過酸化水素を含む水溶液でエッチングした。その後、上方から光学顕微鏡を用いてめっき潜りの確認を行い、めっき潜りが生じていないものを「A(優良)」、めっき潜りが生じたものを「C(不良)」として評価した。なお、めっき潜りが生じた場合、レジストパターンでマスクされていた領域に銅めっきにより析出した金属銅が観察される。結果を表4及び表5に示す。
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
表4及び表5から明らかなように、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有するバインダーポリマーと、EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含む光重合性化合物と、光重合開始剤と、式(1)で示されるスチリルピリジン化合物と、を含有する感光性樹脂組成物を用いた実施例1~6は、感光性樹脂組成物の感度、並びにレジストパターンの解像度、密着性、及び薬液耐性のいずれにも優れていた。
【0171】
一方、EO基の構造単位数が6未満であるビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートを含有しない感光性樹脂組成物を用いた比較例1は、感光性樹脂組成物の感度には優れていたものの、レジストパターンの解像度、密着性、及び薬液耐性が実施例1~6よりも劣っていた。
また、式(1)で示されるスチリルピリジン化合物を含有しない感光性樹脂組成物を用いた比較例2~4は、感光性樹脂組成物の感度及びレジストパターンの薬液耐性が実施例1~6よりも劣っており、特に比較例3~4は、レジストパターンの解像度及び密着性にも劣っていた。
【0172】
2016年3月17日に出願された日本国特許出願2016-053771号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0173】
1…感光性エレメント、2…支持体、3…感光層、4…保護層、10…導体層、15…絶縁層、20…マスク、30…レジストパターン、32…感光層、40…導体パターン、42…めっき層
図1
図2