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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】化学強化ガラス板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20220323BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/087
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019501352
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2018006076
(87)【国際公開番号】W WO2018155456
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017033812
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 幹通
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 準一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 光
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0210749(US,A1)
【文献】国際公開第2015/080095(WO,A1)
【文献】特開2006-206400(JP,A)
【文献】特開2009-088503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 21/00
C03C 3/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および前記第1の主面に対向する第2の主面を有し、前記第1の主面および前記第2の主面に表面圧縮応力が形成され、内部に引張応力が形成された化学強化ガラス板であって、
前記第1の主面の可視光反射率R1(単位:%)と前記第2の主面の可視光反射率R2(単位:%)との差の絶対値ΔRが0.6%以上であり、
前記第1の主面および前記第2の主面のうち、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaが0.4nm以上であり、
前記第1の主面および前記第2の主面の平均表面粗さRaが20nm以下であることを特徴とする化学強化ガラス板。
【請求項2】
ヘーズが0.4%以下である請求項1に記載の化学強化ガラス板。
【請求項3】
Alを酸化物基準のモル百分率表示で20%以下含み、ZrOを実質的に含まない請求項1または2に記載の化学強化ガラス板。
【請求項4】
前記第1の主面および前記第2の主面のうち少なくとも一方の主面のCSが250~500MPaである請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラス板。
【請求項5】
前記第1の主面および前記第2の主面のうち少なくとも一方の主面におけるDOLが15~100μmである請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラス板。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の化学強化ガラス板を得る化学強化ガラス板の製造方法であって、
ガラス板を製造するガラス板製造工程と、
前記ガラス板を溶融塩に浸漬し、前記ガラス板の表面に圧縮応力を形成する化学強化処理工程とを有し、
前記ガラス板製造工程において、フロート法によりガラス板が製造され、
前記化学強化処理工程における前記ガラス板を浸漬する前の前記溶融塩を冷却して前記溶融塩1gをイオン交換水に溶解した100ml定容の水溶液のNO の質量が、2500μg以上であることを特徴とする化学強化ガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス板を浸漬する前の前記溶融塩を冷却してイオン交換水に溶解し、10質量%水溶液としたときの前記水溶液の水素イオン指数(pH)が8~11である請求項に記載の化学強化ガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記化学強化処理工程において、
前記第1の主面および前記第2の主面のうち少なくとも一方の主面における、
前記溶融塩に前記ガラス板を浸漬する前の前記ガラス板の平均表面粗さRa1を、前記溶融塩に前記ガラス板を浸漬した後の前記ガラス板の平均表面粗さRa2から減じた値ΔRaが0.2nm以上である請求項またはに記載の化学強化ガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化ガラス板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板の強度を向上させるために、ガラス板の主面に圧縮応力、内部に引張応力を形成した強化ガラス板が知られている。強化ガラスには、ガラス板を加熱した後に急冷し主面と内部とに温度差を形成することで得られる物理強化ガラスと、ガラス板を溶融塩に浸漬して主面側のイオン半径の小さなイオンと溶融塩側のイオン半径の大きいイオンとのイオン交換による化学強化ガラスとがある。
【0003】
化学強化ガラス板は、主面に形成される圧縮応力が物理強化ガラス板に比べて大きいため、突発的な衝撃に強いことから、古くは腕時計のカバーガラス、近年ではスマートフォン等のカバーガラスに用いられてきている。また、特許文献1には、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓として用いられる化学強化ガラス板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/168246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化学強化ガラス板は、建築窓、車両窓等の各種用途に用いるために、美観がよいことが求められる。ここで、ガラス板は、入射した光を表面および裏面で反射する。そのため、表面および裏面で反射した光による2重像が発生し、美観が悪くなる。
【0006】
本発明は、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよい化学強化ガラス板、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化学強化ガラス板は、第1の主面および前記第1の主面に対向する第2の主面を有し、前記第1の主面および前記第2の主面に表面圧縮応力が形成され、内部に引張応力が形成された化学強化ガラス板であって、
前記第1の主面の可視光反射率R1(単位:%)と前記第2の主面の可視光反射率R2(単位:%)との差の絶対値ΔRが0.6%以上であり、
前記第1の主面および前記第2の主面のうち、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaが0.4nm以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の化学強化ガラス板の製造方法は、上記化学強化ガラス板を得る化学強化ガラス板の製造方法であって、
ガラス板を製造するガラス板製造工程と、
前記ガラス板を溶融塩に浸漬し、前記ガラス板の表面に圧縮応力を形成する化学強化処理工程とを有し、
前記ガラス板製造工程において、フロート法によりガラス板が製造され、
前記化学強化処理工程における前記ガラス板を浸漬する前の前記溶融塩を冷却して前記溶融塩1gをイオン交換水に溶解した100ml定容の水溶液のNO の質量が、2500μg以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化学強化ガラス板は、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の斜視図を示す。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の平面図である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第1の主面11aに対向する第2の主面11bを有し、第1の主面11aおよび第2の主面11bに表面圧縮応力が形成され、内部に引張応力が形成された化学強化ガラス板であって、第1の主面11aの可視光反射率R1(単位:%)と第2の主面11bの可視光反射率R2(単位:%)との差の絶対値ΔRが0.6%以上であり、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaが0.4nm以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、例えば、建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラス、車両窓として好適に用いられる。建築窓としては、住宅、ビル等の窓が例示される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板は、建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラス、車両窓等の各種用途に単板のガラスとして使用できる。また、別の実施形態では、2枚以上のガラス板を中間層フィルムで貼り合わせた合わせガラスとして使用できる。
【0016】
さらに別の実施形態では、間隔を開けて2枚以上のガラス板を配置し、複層ガラスとして使用できる。さらに別の実施形態では、ガラス板表面にコーティングをして使用できる。
【0017】
合わせガラスや複層ガラスの構成では、少なくとも1枚以上に本発明の化学強化ガラス板を使用できる。複層ガラスは、一般的に多重反射することがあるため、本発明の化学強化ガラス板を使用することが好ましい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、主面11a、11bに表面圧縮応力が形成されている。
【0019】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、CSは250MPa以上が好ましい。CSが250MPa以上であれば、化学強化ガラス板の機械的強度は高い。CSは、300MPa以上がより好ましく、350MPa以上がさらに好ましく、380MPa以上が特に好ましい。
【0020】
一方、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、CSは500MPa以下が好ましい。CSが500MPa以下であれば、内部引っ張り応力が極端に高くなりにくい。また、化学強化処理工程が高温の溶融塩への短時間浸漬であってもよく、化学強化ガラス板10を得るのが容易である。さらに、化学強化ガラス板10を切断するときに、ホイールカッターによる切込み線の形成が容易になる。CSは480MPa以下がより好ましく、460MPa以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面において、DOLが15μm以上が好ましい。DOLが15μm以上であれば、充分な強度が得られ、衝撃に耐えられる。DOLは、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましく、30μm以上が特に好ましく、40μm以上が最も好ましい。
【0022】
一方、DOLは、100μm以下が好ましい。DOLが100μm以下であれば、溶融塩への浸漬が短時間であってもよく、化学強化ガラス板10を得るのが容易である。DOLは、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0023】
ここで、CS(表面圧縮応力値)およびDOL(圧縮応力層の板厚方向の深さ)は、表面応力計により測定できる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、主面11a、11bとともに端面12にも圧縮応力が形成されていてもよい。化学強化後に所望の形状にガラス板を切断する場合には、端面12に圧縮応力を有さない場合もある。
【0025】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aの可視光反射率R1(単位:%)と第2の主面11bの可視光反射率R2(単位:%)との差の絶対値ΔRが0.6%以上である。ここで、ΔRは下記式(1)を満足する。
【0026】
ΔR=|R1-R2| 式(1)
【0027】
また、可視光反射率R1、R2は、ISO9050(2003)により規定される可視光反射率であり、測定面と対向する面に反射防止のための黒色塗料を塗布して測定される。ΔRが0.6%以上であれば、表面または裏面の内、一方の面の反射像が他方の面の反射像よりも鮮明に映るため、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよい。ΔRは、0.8%以上が好ましく、0.9%以上がより好ましく、1.0%以上がさらに好ましい。また、ΔRは、典型的には4%以下となる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち、可視光反射率が小さい方の主面の可視光反射率RSが4.2%以下であることが好ましい。RSが4.2%以下であれば、反射像が発生しにくく美観がよい。RSは4.0%以下がより好ましく、3.8%以下がさらに好ましく、3.6%以下が特に好ましい。また、RSは、典型的には0.5%以上となる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaが0.4nm以上である。ここで、平均表面粗さRaは、JIS B 0601(1994)により規定される値である。可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaが0.4nm以上であれば、疑似的に表面の屈折率が低下し、可視光反射率を低下させることができるため、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよい。可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaは、0.5nm以上が好ましく、0.6nm以上がより好ましく、0.7nm以上がさらに好ましく、0.8nm以上が特に好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの平均表面粗さRaが20nm以下であることが好ましい。第1の主面11aおよび第2の主面11bの平均表面粗さRaが20nm以下であれば、ヘーズが充分に低くなり、美観がよい。第1の主面11aおよび第2の主面11bの平均表面粗さRaは、10nm以下がより好ましく、5nm以下がさらに好ましい。
【0031】
化学強化ガラス板10を合わせガラスとして使用する場合、2枚の化学強化ガラス板の第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち、可視光反射率が大きい方の主面同士を合わせた合わせガラスとすることにより、合わせガラスの両方の主面の可視光反射率が低くなり、両方の主面の反射像が視認しにくくなり、美観がよい。
【0032】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの日射反射率が4.2%以下であることが好ましい。日射反射率は、ISO9050(2003)により規定される日射反射率であり、測定面と対向する面に反射防止のための黒色塗料を塗布して測定される。
【0033】
日射反射率が4.2%以下であれば、化学強化ガラス板10を太陽電池用カバーガラスとして使用する場合、発電効率がよい。日射反射率は4.0%以下がより好ましく、3.8%以下がさらに好ましく、3.6%以下が特に好ましい。また、日射反射率は典型的には0.5%以上となる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、ヘーズが0.4%以下であることが好ましい。ここで、ヘーズは、JIS K7136(2000)に従い測定された値である。ヘーズが0.4%以下であれば、化学強化ガラス板10の美観が良い。ヘーズは0.3%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、ヘーズは0%以上であってよく、0.05%以上であってよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積が0.5m以上であることが好ましい。面積が0.5m以上であれば、建築窓、外壁、太陽電池カバーガラス、車両窓等の各種用途に好適に用いられる。化学強化ガラス板10の面積は、0.7m以上であってもよく、1m以上であってもよく、2m以上であってもよく、3m以上であってもよく、5m以上であってもよく、7m以上であってもよく、9m以上であってもよい。
【0036】
一方、第1の主面11aおよび第2の主面11bの面積は、12m以下が好ましい。面積が12m以下であれば、化学強化ガラス板の取り扱いが容易になり、例えば化学強化ガラス板の設置時の周辺部材との接触による破損を抑制できる。面積は、10m以下であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bが矩形であることが好ましい。矩形であれば、例えば建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラスとして設置しやすい。ここで、矩形とは、概略直角四辺形であり、任意の1つの辺から対向して位置する辺までの距離を測定した時、長辺、短辺ともに、測定位置による誤差が各々0.3%以内に収まり、コーナー部に曲率や切欠き等がある形状を含む。
【0038】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、矩形である場合において、第1の主面11aおよび第2の主面11bの長辺の長さbが、700mm以上であってもよく、1000mm以上であってもよく、1300mm以上であってもよく、1500mm以上であってもよく、1800mm以上であってもよく、2100mm以上であってもよく、2500mm以上であってもよい。第1の主面11aおよび第2の主面11bの長辺の長さbは、5000mm以下であってもよい。ここで、長辺の長さbとは、図2に示す対向する2つの短辺間の最短距離bである。
【0039】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、矩形である場合において、第1の主面11aおよび第2の主面11bの短辺の長さaが、500mm以上であってもよく、700mm以上であってもよく、800mm以上であってもよく、1300mm以上であってもよく、1500mm以上であってもよく、1800mm以上であってもよく、2100mm以上であってもよい。第1の主面11aおよび第2の主面11bの短辺の長さaは、3000mm以下であってもよい。ここで、短辺の長さaとは、図2に示す対向する2つの長辺間の最短距離aである。
【0040】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の板厚は、強度やハンドリング性などから2mm以上であってよい。板厚は、3mm以上であってもよく、4mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、6mm以上であってもよい。一方、板厚が25mm以下であれば、軽量であるため好ましい。板厚は22mm以下がより好ましく、19mm以下がさらに好ましい。
【0041】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、重量が1000kg以下であることが好ましい。重量が1000kg以下であれば、軽量であるため好ましい。重量は500kg以下がより好ましい。また、重量は、強度などの観点から2kg以上が好ましい。重量は、5kg以上がより好ましく、10kg以上がさらに好ましい。
【0042】
また、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、第1の主面11aおよび第2の主面11bの一方または両方に、熱線反射膜や防汚膜等の機能膜を形成してもよい。
【0043】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10のガラス転移点Tgは、530℃以上が好ましい。これによって、イオン交換時の表面圧縮応力の緩和を抑止できる。540℃以上がより好ましく、550℃以上がさらに好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の粘度が10dPa・sとなる温度T2は、1550℃以下が好ましく、1490℃以下がより好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の粘度が10dPa・sとなる温度T4は、1050℃以下が好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の比重は、2.45~2.55が好ましい。
【0047】
上記した数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「~」は、同様の意味をもって使用される。
【0048】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10のヤング率は、65GPa以上が好ましい。これによって、剛性や破壊強度が充分となる。ヤング率は70GPa以上であってもよい。一方、ヤング率が90GPa以下であれば、化学強化ガラス板が脆くなる事を抑制し、化学強化ガラス板の切削、ダイシング時の欠けを抑制できる。ヤング率は85GPa以下であってもよく、80GPa以下であってもよい。
【0049】
ここで、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10は、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを56~75%、Alを0~20%、NaOを8~22%、KOを0~10%、MgOを0~14%、ZrOを0~5%、CaOを2~12%含有することが好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示含有量を示す。
【0050】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10において、ガラス組成を上記範囲に限定した理由を以下に説明する。
【0051】
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分であり、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、56%以上が好ましく、63%以上がより好ましく、66%以上がさらに好ましく、68%以上が特に好ましい。また、SiOの含有量は、75%以下が好ましく、73%以下がより好ましく、72%以下がさらに好ましい。SiOの含有量が56%以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が75%以下であると熔解性および成形性の点で優位である。
【0052】
Alは、必須ではないが、化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用があり、特にCSを大きくする作用が大きいため含有させてもよい。また、ガラスの耐候性を向上する。Alを含有する場合は、0.4%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましく、0.8%以上がさらに好ましい。また、屈折率が低くなり、反射率が低下する。また、Alの含有量が20%以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きくは上昇しないため、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。Alの含有量は、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましく、2%以下が最も好ましい。
【0053】
SiOおよびAlの含有量の合計SiO+Alは、68%以上が好ましい。68%以上であると、圧痕がついた時のクラック耐性が向上する。また、屈折率が低くなり、反射率が低下する。SiO+Alは、70%以上がより好ましい。また、SiO+Alは、80%以下が好ましい。80%以下では高温でのガラスの粘性が低下し、溶融が容易となる。76%以下がより好ましく、74%以下がさらに好ましい。
【0054】
NaOは、イオン交換により表面圧縮応力を形成させる成分であり、DOLを深くする作用がある。またガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上がさらに好ましい。また、NaOの含有量は、22%以下が好ましく、16%以下がより好ましく、14%以下がさらに好ましい。NaOの含有量が8%以上であると、イオン交換により所望の表面圧縮応力を形成しやすい。一方、NaOの含有量が22%以下であると、充分な耐候性が得られる。
【0055】
Oは、イオン交換速度を増大しDOLを深くする効果があるため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎると充分なCSが得られなくなる。KOを含有する場合は、10%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。KOの含有量が10%以下であると、充分なCSが得られる。
【0056】
MgOは、必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。MgOを含有する場合は、2%以上が好ましく、4%以上がより好ましく、6%以上がさらに好ましい。また、MgOの含有量は、14%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐薬品性が良好になる。高温での熔解性が良好になり、失透が起こり難くなる。一方、MgOの含有量が14%以下であると、失透の起こりにくさが維持され、充分なイオン交換速度が得られる。
【0057】
ZrOは屈折率を高くする成分であり、屈折率を低くし反射率を低下させるために実質的に含有しないことが好ましい。なお、本明細書において「実質的に含有しない」とは、原料等から混入する不可避的不純物以外には含有しないこと、すなわち、意図的に含有させないことを意味する。しかし、ZrOは、化学強化ガラスのCSを大きくする作用があるため、含有させてもよい。含有する場合は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0058】
CaOは、ガラスを安定化させる成分である。CaOはアルカリイオンの交換を阻害する傾向があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有量を減らすことが好ましい。一方、耐薬品性を向上させるためには、CaOの含有量は、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、7%以上がさらに好ましい。CaOを含有する場合の量は、12%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、9%以下がさらに好ましい。CaOの含有量が12%以下であると、充分なイオン交換速度が保たれ、所望のDOLが得られる。
【0059】
SrOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。SrOは、イオン交換効率を低下させる作用があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有しないことが好ましい。含有する場合のSrO量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0060】
BaOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。BaOは、ガラスの比重を重くする作用があるため、軽量化を意図する場合には含有しないことが好ましい。含有する場合のBaO量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0061】
ZnOは、フロート法でガラス板を成形するときに、フロートバスで還元され製品欠点となるため、実質的に含有しないことが好ましい。
【0062】
この他、ガラスの熔融の清澄剤として、硫酸塩、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。
【0063】
本発明のガラスは、本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下、典型的には1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
【0064】
は、高温での熔融性またはガラス強度の向上のために、1%未満の範囲で含有してもよい。一般的には、NaOまたはKOのアルカリ成分とBを同時に含有すると揮散が激しくなり、煉瓦を著しく浸食するので、Bは実質的に含有しないことが好ましい。
【0065】
LiOは、歪点を低くして応力緩和を起こりやすくし、その結果、安定した表面圧縮応力を得られなくする成分であるので含有しないことが好ましく、含有する場合であってもその含有量は、1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.01%以下が特に好ましい。
【0066】
次に、本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法について説明する。
【0067】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10を製造する場合、ガラス板製造工程、化学強化処理工程を経る。
【0068】
ガラス板製造工程では、例えば種々の原料を適量調合し、約1400~1800℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、フロート法によって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断してガラス板が製造される。
【0069】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板の製造方法は、フロート法によりガラス板が製造される。フロート法により成形されたガラス板は、ガラス板の一方の主面が溶融錫面に接触する(以下、溶融錫面に接触した主面をB面といい、他方の主面をT面という)。
【0070】
後述する化学強化処理工程において、ガラス板が溶融塩に浸漬されたときに表面改質が起こり、T面の平均表面粗さRaは大きくなる。これにより、ガラス板の表面の屈折率が低くなり、可視光反射率が低くなる。ここで、T面の可視光反射率は、B面の可視光反射率よりも低くなるという特徴がある。
【0071】
また、フロート法により成形されたガラス板を用いることにより、ガラス板が溶融塩に浸漬される時に、化学強化ガラス板の一方の主面の平均表面粗さRaが特に大きくなり、可視光反射率が低くなる。
【0072】
したがって、化学強化ガラス板10の第1の主面11aの可視光反射率R1(単位:%)と第2の主面11bの可視光反射率R2(単位:%)との差の絶対値ΔRが0.6%以上となり、化学強化ガラス板の表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよい。
【0073】
なお、フロート法により成形されたガラス板は、紫外線が照射されたとき、B面は錫を有するため蛍光発色で白濁し、T面は白濁しない。ガラス板の両方の主面に紫外線を照射し観察することにより、ガラス板がフロート法により成形されたかを判別することができる。
【0074】
化学強化処理工程では、得られたガラス板を溶融塩に浸漬し、ガラス板の表面に所望の表面圧縮応力を有する圧縮応力を形成する。化学強化処理工程は、予熱工程、化学強化工程、徐冷工程を経る。
【0075】
予熱工程では、化学強化処理を行う前に、ガラス板を予熱する。予熱は、例えば常温の電気炉にガラス板を入れ、電気炉を予熱温度まで昇温し、一定時間保持することにより行われる。化学強化工程でのサーマルショックによる割れを防ぐ為、昇温終了後にガラス板を予熱温度にて一定時間保持するとよい。この保持時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましく、40分以上が特に好ましい。
【0076】
化学強化工程では、予熱されたガラス板を、溶融塩、例えば加熱された硝酸カリウム溶融塩に浸漬し、ガラス表層のNaと溶融塩中のKとをイオン交換する。なお、本発明において硝酸カリウム溶融塩は、KNO、KNOの他、10質量%以下のNaNOを含有するものなどを含む。
【0077】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法において、ガラス板を浸漬する前の溶融塩を冷却して溶融塩1gをイオン交換水に溶解した100ml定容の水溶液のNO の質量(以下、水溶液のNO の質量という)が2500μg以上である。水溶液のNO の質量は3000μg以上が好ましく、3400μg以上がさらに好ましく、4000μg以上が特に好ましく、4500μg以上が最も好ましい。
【0078】
水溶液のNO の質量が2500μg以上であれば、溶融塩のNO 濃度が大きく、フロート法により成形されたガラス板のT面の屈折率が充分に低下し、可視光反射率が充分に低下するため、得られる化学強化ガラス板10の一方の主面の可視光反射率が充分に低くなり、化学強化ガラス板10の第1の主面11aの可視光反射率R1(単位:%)と第2の主面11bの可視光反射率R2(単位:%)との差の絶対値ΔRが0.6%以上となり、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さRaが0.4nm以上となる。
【0079】
また、水溶液のNO の質量は、10000μg以下が好ましい。水溶液のNO の質量が10000μg以下であれば、溶融塩のNO 濃度を小さくすることができ、環境によい。水溶液のNO の質量は、8000μg以下がより好ましく、6000μg以下がさらに好ましい。硝酸塩の水溶液のNO の質量は、KNO、KNO等の添加量、および溶融塩の高温での保持時間により調整することができる。
【0080】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法において、ガラス板を浸漬する前の溶融塩を冷却してイオン交換水に溶解し、10質量%水溶液としたときの水溶液の水素イオン指数(以下、水溶液のpHという)は、8~11が好ましい。
【0081】
水溶液のpHが8以上であれば、溶融塩の水素イオン指数が大きく、フロート法により成形されたガラス板のT面の屈折率が低下し、反射率が低下するため、得られる化学強化ガラス板10の一方の主面の反射率が低くなる。水溶液のpHは9以上がより好ましい。
【0082】
また、水溶液のpHが11以下であれば、溶融塩の亜硝酸濃度を低く抑えることができ、環境によい。水溶液のpHは10以下がより好ましい。水溶液のpHは、KNO、KNO等の添加量、および溶融塩の高温での保持時間により調整することができる。
【0083】
ガラス板に所望の表面圧縮応力を形成するための化学強化処理条件は、ガラス板の板厚などによっても異なるが、350~550℃の硝酸カリウム溶融塩等の溶融塩に2~50時間、ガラス板を浸漬させる条件が典型的である。経済的な観点からは、350~500℃、2~40時間ガラス板を浸漬させる条件が好ましく、より好ましい浸漬時間は、2~30時間である。
【0084】
徐冷工程では、溶融塩から取り出されたガラス板を徐冷する。溶融塩から取り出されたガラス板は、直ちに徐冷するのではなく、ガラス板の主面に温度分布が生じにくくするために、一定時間、均一な温度で保持されることが好ましい。
【0085】
保持温度は、溶融塩の温度との差が100℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましく、10℃以下が特に好ましい。また、保持時間は、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上がさらに好ましい。
【0086】
溶融塩から取り出されたガラス板は、ガラス板が100℃となるまでの徐冷速度が300℃/時以下となるように徐冷することが好ましい。徐冷速度は200℃/時以下がより好ましく、100℃/時以下がさらに好ましい。
【0087】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法において、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面における、溶融塩にガラス板を浸漬する前の可視光反射率(溶融塩浸漬前の可視光反射率)と、溶融塩にガラス板を浸漬した後の可視光反射率(溶融塩浸漬後の可視光反射率)との差の絶対値RDが0.3%以上であることが好ましい。ここで、RDは下記式(2)を満足する。
【0088】
RD=|(溶融塩浸漬前の可視光反射率)-(溶融塩浸漬後の可視光反射率)| 式(2)
【0089】
ガラス板が溶融塩に浸漬されることにより、RDが大きくなる。溶融塩のNO 濃度が濃いほど、RDは大きい。RDは、0.4%以上がより好ましく、0.6%以上がさらに好ましく、0.7%以上が特に好ましい。
【0090】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法において、第1の主面11aおよび第2の主面11bのうち少なくとも一方の主面における、溶融塩にガラス板を浸漬する前のガラス板の平均表面粗さRa1を、溶融塩にガラス板を浸漬した後のガラス板の平均表面粗さRa2から減じた値ΔRaが0.2nm以上であることが好ましい。ここで、ΔRaは、下記式(3)を満足する値である。
【0091】
ΔRa=Ra2-Ra1 式(3)
【0092】
ガラス板が溶融塩に浸漬されることにより、ガラス板の平均表面粗さが大きくなる。硝酸塩のNO 濃度が濃いほど、ΔRaは大きい。ΔRaは、0.3nm以上がより好ましく、0.4nm以上がさらに好ましい。
【0093】
本発明の一実施形態に係る化学強化ガラス板10の製造方法において、ΔRaが0.2nm以上となる主面はT面であってよい。
【0094】
以上説明した本実施形態の化学強化ガラス板にあっては、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよい。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
例1~3は実施例であり、例4は比較例である。
【0097】
表1に示すガラス組成になるように、珪砂等の各種のガラス原料を調合し、1400~1500℃の温度で溶融し、得られた溶融ガラスをフロート法で板状に成形し、表2に示す大きさの矩形のガラス板を得た。得られたガラス板のガラス転移点Tg(単位:℃)、T2(単位:℃)、T4(単位:℃)、比重、ヤング率(単位:GPa)、可視光反射率、平均表面粗さを測定した。その結果を表1に示す。
【0098】
次に、水溶液のNO の質量およびpHを測定した。ガラス板を300℃の電気炉に入れ30分間予熱し、500℃の硝酸カリウム溶融塩に6時間浸漬させた。ガラス板を溶融塩から取り出し、300℃で10分間保持した後、電気炉から取り出して自然冷却させ、化学強化ガラス板を得た。
【0099】
得られた化学強化ガラス板の可視光反射率R1、R2を測定し、ΔR、RD、RSを算出した。また、得られた化学強化ガラス板の平均表面粗さを測定し、ΔRaを算出した。さらに、得られた化学強化ガラス板のCS、DOL、ヘーズ、およびT面の日射反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0100】
平均表面粗さにおいては、可視光反射率が低い方の主面(T面)における溶融塩に浸漬する前の平均表面粗さRa1および溶融塩に浸漬した後の平均表面粗さRa2を示す。
【0101】
以下に各物性の測定方法を示す。
【0102】
(ガラス転移点Tg)
JIS R3103-3(2001年)に規定されている方法に従い、TMAを用いて測定した。
【0103】
(T
回転粘度計を用いて粘度を測定し、10d・Pa・sとなるときの温度T2(℃)を測定した。
【0104】
(T
回転粘度計を用いて粘度を測定し、10d・Pa・sとなるときの温度T4(℃)を測定した。
【0105】
(比重)
泡を含まない約20gのガラス塊をアルキメデス法によって測定した。
【0106】
(ヤング率)
超音波パルス法により測定した。
【0107】
(可視光反射率、日射反射率)
ISO 9050(2003年)に規定されている方法に従い、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製:UH4150)を用いて測定した。黒色塗料[サンデーペイント社製:アクリルラッカースプレー(つや消し黒色)]を測定面と対向する面に塗布し、裏面の反射を防止した。
【0108】
(平均表面粗さ)
JIS B 0601(1994)に規定されている方法に従い、原子間力顕微鏡(パークシステムズ社製:XE-HDM)により測定した。プローブとしてPPP-NCHR(バネ定数:40N/m)を使用し、NON-CONTACTモード、SourceはTopography、Date Width 256pxl、Date Height 128pxl、Scan rate 0.5Hz、測定視野として、50×25μmにて測定した。
【0109】
(ヘーズ)
JIS K 7136(2000)に規定されている方法に従い、濁度計(日本電色工業社製:NDH7000SP)により測定した。ヘーズ算出に用いられる全光線透過率は、JIS K 7361-1(1997)に従い、測定した。
【0110】
(CS、DOL)
表面応力計(折原製作所製:FSM-7000H)を用いて観察される干渉縞の本数とその間隔から算出した。算出に当たり、化学強化ガラス板の屈折率を1.518、光学弾性定数を27.1[(nm/cm)/MPa]とした。
【0111】
(水溶液のNO の質量)
ガラス板を浸漬する前の溶融塩を冷却して溶融塩1gをイオン交換水に溶解した100ml定容の水溶液のNO の質量を、イオンクロマトグラフィ(ダイオネクス社製:ICS1000)により測定した。
【0112】
(水溶液のpH)
ガラス板を浸漬する前の溶融塩を冷却してすり鉢で粉砕後、イオン交換水で10倍に希釈し、pHメーター(堀場製作所社製:D-50)により測定した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表2に示すように、実施例である例1~3の化学強化ガラス板は、水溶液のNO の質量が2500μg以上であるため、T面の可視光反射率が低下し、ΔRが0.6%以上、かつ、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さが0.4nm以上となり、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しにくく、美観がよかった。
【0116】
一方、比較例である例4の化学強化ガラス板は、水溶液のNO の質量が2500μg未満であるため、ΔRが0.6%未満、可視光反射率が小さい方の主面の平均表面粗さが0.4nm未満であり、表面および裏面で反射した光による2重像が発生しやすく、美観が悪かった。
【0117】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2017年2月24日付けで出願された日本特許出願(特願2017-33812)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の化学強化ガラス板は、例えば、建築窓、外壁、手摺材、太陽電池カバーガラス、車両窓として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0119】
10 化学強化ガラス板
11a 第1の主面
11b 第2の主面
図1
図2