(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】検出判定用デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220323BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220323BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20220323BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20220323BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20220323BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C12N15/11 Z
C12M1/34 B
C12N15/10 Z
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2019552430
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018042044
(87)【国際公開番号】W WO2019093530
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2017218552
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017224014
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017226081
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017226082
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017226084
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017226086
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】川島 優大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 みちえ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸栄
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 優介
(72)【発明者】
【氏名】海野 洋敬
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 学
(72)【発明者】
【氏名】和泉 賢
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-069999(JP,A)
【文献】特表2009-515531(JP,A)
【文献】特開2016-019495(JP,A)
【文献】PUGLIESE N.et al.,Validation of a seminested PCR approach for rapid detection of Salmonella enterica subsp.enterica serovar Gallinarum,Journal of Microbiological Methods,2011年,Vol.85,p.22-27,Materials and methods
【文献】白土佳子ら,COBAS AMPLICOR(TM)法におけるMycobacterium属菌検出に関する各種核酸抽出法の検討,臨床病理,2001年,Vol.49, No.6,p.608-612,全文,特に第608頁右欄第2行~第609頁左欄第4行,第609頁右欄第14~33行
【文献】日和佐 敬一,PCR検査用自動測定装置「コバスアンプリコア」によるNeisseria gonorrhoeae測定の基礎的検討,医学検査,1998年,Vol.47, No.5,p.52-55,全文,特に表3,第55頁左欄第2段落
【文献】大河内 惠ら,ノロウイルス遺伝子検査<糞便直接RT-PCR法について>,広島県臨床検査技師会誌,2009年,No.104,p.33-36,全文,特に第33頁【測定原理・特徴】~第34頁【結果】,第36頁,
図1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12M 1/00-3/10
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の検査対象、及び
核酸を、増幅することにより、検査対象を検出する際に、
前記
核酸が増幅され、かつ前記検査対象が増幅される場合には、前記検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記
核酸が増幅され、かつ前記検査対象が増幅されない場合には、前記検査対象は不存在又は少なくとも前記
核酸の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を、含む検出判定方法に用いられ、
少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内の前記
核酸が
1,000以下の特定コピー数であり、
前記核酸が、細胞に組み込まれ、かつ、前記細胞が前記ウェル内に配され、前記細胞から抽出された核酸であり、
前記特定コピー数の標準偏差σを平均コピー数xで除した変動係数CVが平均コピー数xに対し、CV<1/√xを満たすことを特徴とする検出判定用デバイス。
【請求項2】
前記特定コピー数に関する情報を
識別可能な識別手段を有し、
前記特定コピー数に関する情報が、前記特定コピー数の不確かさの情報及び前記特定コピー数の変動係数CVの少なくともいずれかである請求項1に記載の検出判定用デバイス。
【請求項3】
前記
核酸が、ノロウイルスゲノムの塩基配列の一部の核酸である請求項1から2のいずれかに記載の検出判定用デバイス。
【請求項4】
前記ウェル内の組成が異なる前記ウェルの群を2以上有する請求項1から3のいずれかに記載の検出判定用デバイス。
【請求項5】
前記特定コピー数の
核酸を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
前記ウェルに配される前記
核酸は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有する、
又は、
前記
核酸を前記特定コピー数で配した前記ウェルの群であって、
前記
核酸の前記特定コピー数を互いに異ならせた前記ウェルの群を2以上有する請求項4に記載の検出判定用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出判定用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分析技術の高感度化により、測定対象をコピー数単位で測定することが可能となっており、食品、環境検査、及び医療へ、微量核酸を検出する遺伝子検出技術の産業利用が求められている。特に、病原体や未承認の遺伝子組み換え食品は、検体中に含まれていないことを確認することが多く、高いレベルでの検出精度が要求される。
【0003】
例えば、分子生物学研究分野で多く使用されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、その技術特性から、理論上1コピーの核酸からでも増幅が可能とされている。
このような微量の遺伝子検出においては、定量解析を行う場合に、標準試薬を用いる必要があり、例えば、特定の塩基配列を有するDNA断片を限界希釈し、得られた希釈液のリアルタイムPCRの結果から、目的とするコピー数を含む希釈液を選別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、特定のコピー数のDNA断片を細胞に遺伝子組み換え技術により導入し、培養した細胞を単離することにより、目的のコピー数のDNA断片を含有する標準試薬の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、定量PCR法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の過程でDNA増幅に対応した蛍光量を適宜検出する技術であり、DNA、cDNA、RNAの初期量を間接的に定量する方法である。この定量には核酸試料系列とそれに対する測定値との関係を示した検量線が必要である。
【0005】
正確な定量値を得るためには、各々の測定値のばらつきは変動係数CVにして20%以内に収まっており、核酸試料系列が3水準以上、同一水準の測定点数が5点以上必要であると報告されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。このような核酸試料系列は、既知濃度の核酸試料の系列希釈法により作製される。
例えば、系列希釈法により核酸試料系列を作製し、複数の試料充填部が設けられた容器の該試料充填部に、異なる複数充填コピー数水準の核酸試料が密封されているPCR反応プレート用容器が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、最近、標的核酸配列を導入した細胞をマニピュレーターによって1個ずつ分取することにより、極微量の核酸分子を計測・充填可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、核酸の定性評価、定量評価などに用いられている。また、近年では、PCRは遺伝子組み換え作物・食品(GMO)否定試験、ウイルス混入否定試験などにも利用されていることから、結果に対する信頼性を保証することが求められている。
これらの結果を保証するための、装置性能保証及び測定系の管理は、装置の温度制御管理やユーザーのメンテナンス管理によって担われていた。
【0007】
核酸の定性評価及び定量評価に用いられる核酸試料系列は、既知濃度の核酸試料の系列希釈法により作製されている。例えば、特定の塩基配列を有するDNA断片を限界希釈し、得られた希釈液のリアルタイムPCRの結果から、目的とするコピー数を含む希釈液を選別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、異なる濃度に系列希釈した標準核酸溶液を複数の試料充填部に密封した標準核酸キットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、測定系の管理には、PCR反応時の温度管理によって測定結果の保証を行うことが提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
また、近年、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)は、遺伝子検査の定性及び定量においてますます重要になってきており、その性能評価、特に装置間、施設間の性能評価は重要である。現状では、吸光度を用いた外部標準による検量線を用いているが、核酸の絶対数を正確に規定するものではなく、特に低コピー数ではその影響が顕著となる。
【0009】
このような検量線の核酸試料系列は、既知濃度の核酸試料の系列希釈法により作製されている。例えば、特定の塩基配列を有するDNA断片を限界希釈し、得られた希釈液のリアルタイムPCRの結果から、目的とするコピー数を含む希釈液を選別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また最近では、特定のコピー数のDNA断片を細胞に遺伝子組み換え技術により導入し、培養した細胞をマニュピレートで単離することにより、目的の塩基配列を有するDNAを1コピー含む試料の調製方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、近年、分析技術の高感度化により、測定対象を分子数単位で測定することが可能となっており、食品、環境検査、及び医療へ、微量核酸を検出する遺伝子検出技術の産業利用が求められている。特に、病原体やウイルス、未承認の遺伝子組み換え食品は、検体試料中に含まれていないことを確認することが多く、高いレベルでの検出、及びその検出結果の判定が要求される。
【0011】
感染症における病原体検出及び病態の診断や、遺伝子組み換え作物の混入検査、ウイルス否定試験などにおける遺伝子診断においてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が用いられている。PCR法は、DNAを段階的に増幅させる技術で、検体試料から任意の部分塩基配列を特異的に増やすことができることから、広く遺伝子検査等に使用されている。
検体試料を検査した際、試料のうちで標的とする核酸が検出されない場合には、その検出結果は、陰性と判断される。しかし、陰性と判断された場合に、検査対象である核酸が実際、検体試料中には存在していない、即ち陰性との判定が正しいのか、それとも核酸が実際には存在するが判別できず存在しない(陰性である)と誤って判断された、即ち偽陰性であるのか、確定できないという問題があった。
そこで、偽陰性の判定を回避するためのPCR検査方法が、各種提案されている。
第1のプライマー対、及び第2のプライマー対の2対の異なるプライマーセットを一反応系にいれ、PCR反応を行う微生物検出方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
また、目的のDNAのある一定部分を増幅するプライマーと同じプライマーで増幅され、目的部分のDNAと塩基長などによって区別できるDNAを合成する。そして、その合成DNAを加えてPCRを行うのと、合成DNAを加えないでPCRを行うのとから、偽陰性等の問題を改善するDNAの検出法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0012】
特に、ノロウイルスは、カキなどの二枚貝に含まれる病原体であり、冬型胃腸炎や食中毒の原因として知られている。また、ノロウイルスは、冬型胃腸炎や食中毒に感染した感染者より排泄された糞便及び吐物を介して第三者に感染する、極めて強い伝搬性を有する。したがって、冬型胃腸炎や食中毒の感染拡大を防ぐため、感染源となる病原体を厳密に特定する検査が必要である。
ノロウイルスの検査には、一般的にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が用いられる。PCR法は、核酸を段階的に増幅させる技術で、検体試料から任意の部分塩基配列を特異的に増やすことができることから、広く使用されている。
【0013】
PCR法を用いて検体試料中の検査対象を検出する方法が各種提案されている。
複数の遺伝子組換え体系統を含む試料における遺伝子組換え体の存在比を定量するための定量的検知方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、特定の分子(コピー)数の対象配列を有するDNA断片と同じ対象配列を有する標準試料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2014-33658号公報
【文献】特開2015-195735号公報
【文献】特開2008-141965号公報
【文献】特開2011-223940号公報
【文献】特開平9-224699号公報
【文献】国際公開WO2002/034943号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】U.S. Food and Drug Administration.“Guidance for Industry:Bioanalytical Method Validation.”:〈http://www.fda.gov/downloads/Drugs/Guidance Compliance Regulatory Information/Guidances/UCM070107.pdf〉, cited 5 September,2014.
【文献】European Medicines Agency.“Guideline on Bioanalytical Method Validation.”:〈http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2011/08/WC500109686.pdf〉,cited 5 September,2014.
【文献】ISO/TS 20836:2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、試料に含まれる検査対象の検出において、特にこの検査対象が低コピー数である場合であっても、偽陰性が生まれる状況をより確実に回避でき、陰性の判定精度をより向上させた検出判定を行うことができる検出判定用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための手段としての本発明の検出判定用デバイスは、試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に、前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅される場合には、前記検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅されない場合には、前記検査対象は不存在又は少なくとも前記増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を、含む検出判定方法に用いられ、少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つの前記ウェル内の前記増幅可能な試薬が特定コピー数である
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、試料に含まれる検査対象の検出において、特にこの検査対象が低コピー数である場合であっても、偽陰性が生まれる状況をより確実に回避でき、陰性の判定精度をより向上させた検出判定を行うことができる検出判定用デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、ポアソン分布に基づくばらつきを持ったコピー数と変動係数CVとの関係を示すグラフである。
【
図2】
図2は、本発明のデバイスの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明のデバイスの一例を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の他の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明のデバイスの一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の他の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、検出判定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、検出判定装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、検出判定プログラム処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、特定コピー数が100未満及び100以上の場合における平均特定コピー数xと変動係数のCV値との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の他の一例を示す図である。
【
図19】
図19は、ノロウイルスのGI型を発現する核酸と、ノロウイルスのGII型を発現する核酸とを細胞に導入する際の配列の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、本発明のデバイスの一例を示す平面図である。
【
図21】
図21は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図22】
図22は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図23】
図23は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図24】
図24は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図26】
図26は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図27】
図27は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図28】
図28は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図29】
図29は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図30】
図30は、本発明のデバイスの他の一例を示す平面図である。
【
図31】
図31は、調製者の技能評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図32】
図32は、調製者の技能評価装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図33】
図33は、調製者の技能評価プログラム処理の一例を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、検査装置の性能評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図35】
図35は、検査装置の性能評価装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図36】
図36は、検査装置の性能評価プログラム処理の一例を示すフローチャートである。
【
図37】
図37は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。
【
図41】
図41は、ウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置の一例を示す概略図である。
【
図43】
図43は、
図42の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。
【
図45】
図45は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図46】
図46は、液滴形成装置の変形例を示す模式図である。
【
図47】
図47は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。
【
図48A】
図48Aは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。
【
図48B】
図48Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。
【
図49】
図49は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。
【
図50】
図50は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。
【
図51】
図51は、液滴形成装置の他の一例を示す模式図である。
【
図52】
図52は、マイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法の一例を示す模式図である。
【
図53】
図53は、吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法の一例を示す模式図である。
【
図54】
図54は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。
【
図56A】
図56Aは、実施例2の貝に含まれるノロウイルス否定試験において、96穴プレートに(1)IJで600G酵母を10細胞(コピー)打ち、そこにノロウイルスが含まれるサンプルを添加したもの(本発明の実施)のサンプルをPCRで増幅した後にアガロース電気泳動した結果を示す図である。
【
図56B】
図56Bは、(2)ノロウイルスが含まれるサンプルのみをPCRで増幅した後にアガロース電気泳動した結果を示す図である。
【
図56C】
図56Cは、実施例2の貝に含まれるノロウイルス否定試験において、(3)600Gプラスミドを希釈し、それを96穴プレートの1ウェルあたり10コピー相当の容量を手技により分注し、そこにノロウイルスが含まれるサンプルを添加した(IJに対する比較例)それぞれのサンプルをPCRで増幅した後にアガロース電気泳動した結果を示す図である。
【
図57】
図57は、本発明の実施例及び比較例における核酸のサンプルの配置の一例を示す図である。
【
図58】
図58は、本発明の実施例における定量的PCRの結果の示す図である。
【
図59】
図59は、本発明の比較例における定量的PCRの結果の示す図である。
【
図60】
図60は、リアルタイムPCRの温度制御方法の一例を示す図である。
【
図61】
図61は、リアルタイムPCRを行うプレートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(検出判定用デバイス)
<第1実施形態>
本発明の検出判定用デバイスは、試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に、前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅される場合には、前記検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅されない場合には、前記検査対象は不存在又は少なくとも前記増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を、含む検出判定方法に用いられ、少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つの前記ウェル内の前記増幅可能な試薬が特定コピー数であり、さらに、識別手段、基材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
なお、本明細書においては、「検出判定用デバイス」を単に「デバイス」及び「検査デバイス」などと称することもある。
【0021】
従来の標準試料では、低コピー数の核酸を含む試料から検体を採取する際に、含まれる核酸の量に応じてポアソン分布に従うランダムなばらつきが発生するため、検査装置自体の精度を向上させることが困難であった。
【0022】
また、従来の精度管理に用いる低コピー数の核酸標準物質では、低コピー数の核酸標準物質を作製する際に生じる不確かさが示されておらず、精度管理の信頼性を保証することができないことがあった。
【0023】
本発明のデバイスを用いると、低コピー数の増幅可能な試薬を含む試料から目的の試薬を検出する際に、測定結果の信頼性を評価することができる。なお、本発明において「低コピー数」とは、増幅可能な試薬の「コピー数が少ないこと」を意味する。
【0024】
また、上記特許文献4では、2対の異なるプライマーセットを一反応系にいれ、標的遺伝子の検出を行うことで、実験工程の成否を保証し、実験の失敗を原因とする偽陰性判定を回避しようとしている。しかし、上記特許文献4では、コントロールに用いる参照用DNAのコピー数を規定していない。そのため、保証されるのは実験工程の成否のみであり、他の原因、例えば、標的遺伝子が実験工程の検出限界以下であった場合など(詳しくは後述する)、による偽陰性を回避することはできない。即ち、偽陰性が生まれる状況をより確実に回避することができる検査方法としては十分なものとはいえなかった。
例えば、極少量の検体試料を用いる場合(試料に含まれる検査対象が低コピー数である場合)には、検査対象が検出されず、「検査対象がない」(陰性)と判断されても、以下のいずれの場合であるか確定できなかった。つまり、検体試料中に検査対象が存在していないのか(陰性)、それとも存在するが判別できず陰性と誤って判定したのか(偽陰性)、上記特許文献4の方法では、確定できなかった。
また、上記特許文献5では、目的のDNAと同じプライマー対で増幅するが、増幅産物の塩基長や塩基配列などで目的のDNAと区別し得るDNAを合成する。そして、その合成DNAを加えてPCRを行うのと、合成DNAを加えないでPCRを行うのとから、偽陰性判定を回避しようとしている。しかし、上記特許文献5では、参照用の合成DNAのコピー数が規定できていない。そのため、偽陰性をより確実に回避することができる検査方法としては十分なものとはいえなかった。例えば、極少量の検体試料を用いる場合(試料に含まれる検査対象が低コピー数である場合)には、検査対象が検出されず、「検査対象がない」(陰性)と判断されても、以下のいずれの場合であるか確定できなかった。つまり、検体試料中に検査対象が存在していないのか(陰性)、それとも存在するが判別できず陰性と誤って判定したのか(偽陰性)、上記特許文献5の方法では、確定できなかった。
【0025】
そこで、本発明では、極少量の検体試料を用いる場合(検査対象が低コピー数である場合)であっても、偽陰性が生まれる状況をより確実に回避し、陰性の判定精度をより向上させることができる検査方法に好適に使用することができるデバイスを提供する。
本発明では、一定の精度で特定コピー数の増幅可能な試薬を充填する少なくとも1つの試料充填用ウェルを有し、各ウェルに一定以上の変動係数で増幅可能な試薬を分注したデバイスを用いる。
【0026】
コピー数とは、前記ウェルに含まれる増幅可能な試薬中の標的もしくは特定の塩基配列の数を意味している。
標的の塩基配列とは、少なくともプライマー及びプローブ領域の塩基配列が決まっているものを指し、特に、塩基配列の全長が定められているものを特定の塩基配列とも呼称する。
特定コピー数とは、前記コピー数のうち、標的の塩基配列の数が一定以上の精度で特定されていることを意味する。
すなわち、実際にウェルに含まれている標的の塩基配列の数として既知ということができる。つまり、本願における特定コピー数は、従来の系列希釈により得られる所定のコピー数(算出推定値)よりも、数としての精度、信頼性が高く、特に、1,000以下の低コピー数領域であってもポアソン分布によらない制御された値となる。制御された値は、概ね、不確かさを表す変動係数CVが平均コピー数xに対し、CV<1/√xもしくはCV≦20%のどちらか値の大きさの中に収まっていることが好ましい。それゆえ、当該特定コピー数の標的の塩基配列を含むウェルを有するデバイスを用いることで、従来よりも正確に標的の塩基配列を有する試料の定性的、定量的な検査を行うことが可能となる。
なお、ここで標的の塩基配列の数とその配列を有する核酸の分子数とが一致する場合には、「コピー数」と「分子数」は対応付けられる場合もある。
具体的には、例えば、ノロウイルスの場合は、ウイルスの個数=1なら核酸分子数=1、コピー数=1で、GI期の酵母の場合は、酵母数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=1、コピー数=1で、G0/GI期のヒト細胞の場合は、ヒト細胞数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=2、コピー数=2である。
さらに、標的の塩基配列を2箇所に導入したGI期の酵母の場合は、酵母数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=1、コピー数=2となる。
また、本発明においては、増幅可能な試薬の特定コピー数は、増幅可能な試薬の絶対数と称することもある。
増幅可能な試薬の特定コピー数は、1コピー以上1,000コピー以下が好ましく、100コピー以下が好ましく、20コピー以下がより好ましく、10コピー以下がさらに好ましい。
増幅可能な試薬の特定コピー数は、異なる2種類以上の整数であることが好ましい。
増幅可能な試薬の特定コピー数の組み合わせとしては、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の場合、1、3、5、7、9の場合、2、4、6、8、10の場合などが挙げられる。
また、増幅可能な試薬の特定コピー数の組み合わせは、例えば、1、10、100、1,000の4水準としてもよい。複数の異なる特定コピー数の組み合わせによる本発明のデバイスを用いて、検量線の作成を行うことができる。
ただし、増幅可能な試薬を含むウェルが複数存在する場合には、各ウェル内に含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数は同一であればよい。
増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であるとは、デバイスに増幅可能な試薬を充填する際に生じる増幅可能な試薬の数のばらつきが許容範囲内であることを意味する。増幅可能な試薬の数のばらつきが許容範囲内にあるか否かについては、以下に示す不確かさの情報に基づいて判断することができる。
【0027】
増幅可能な試薬の特定コピー数に関する情報としては、デバイスにおける増幅可能な試薬に関わる情報であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不確かさの情報、後述する担体の情報、増幅可能な試薬の情報などが挙げられる。
【0028】
「不確かさ」とは、「測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ」であるとISO/IEC Guide99:2007[国際計量計測用語-基本及び一般概念並びに関連用語(VIM)]に定義されている。
ここで、「合理的に測定量に結びつけられ得る値」とは、測定量の真の値の候補を意味する。即ち、不確かさとは、測定対象の製造に係る操作、機器などに起因する測定結果のばらつきの情報を意味する。不確かさが大きいほど、測定結果として予想されるばらつきが大きくなる。
不確かさとしては、例えば、測定結果から得られる標準偏差であってもよく、真の値が所定の確率以上で含まれている値の幅として表す信頼水準の半分の値としてもよい。
不確かさを算出する方法としては、Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement(GUM:ISO/IEC Guide98-3)、及びJapan Accreditation Board Note 10 試験における測定の不確かさに関するガイドラインなどに基づき算出することができる。不確かさを算出する方法としては、例えば、測定値などの統計を用いたタイプA評価法と、校正証明書、製造者の仕様書、公表されている情報などから得られる不確かさの情報を用いたタイプB評価法の2つの方法を適用することができる
不確かさは、操作及び測定などの要因から得られる不確かさを全て標準不確かさに変換することにより、同じ信頼水準で表現することができる。標準不確かさとは、測定値から得られた平均値のばらつきを示す。
不確かさを算出する方法の一例としては、例えば、不確かさを引き起こす要因を抽出し、それぞれの要因の不確かさ(標準偏差)を算出する。さらに、算出したそれぞれの要因の不確かさを平方和法により合成し、合成標準不確かさを算出する。合成標準不確かさの算出において、平方和法を用いるため、不確かさを引き起こす要因の中で不確かさが十分に小さい要因については無視することができる。
【0029】
さらに、本発明のデバイスにおいては、不確かさの情報としては、ウェル内に充填される増幅可能な試薬の変動係数を用いてもよい。
変動係数とは、細胞を凹部に充填する際に生じる各凹部に充填される細胞数(又は、増幅可能な試薬の数)のばらつきの相対値を意味する。即ち、変動係数とは、凹部に充填した細胞(又は、増幅可能な試薬)の数の充填精度を意味する。変動係数とは、標準偏差σを平均値xで除した値である。ここでは、標準偏差σを平均コピー数(平均充填コピー数)xで除した値を変動係数CVとすると、下記式1の関係式になる。
【0030】
【0031】
一般的に、細胞(又は、増幅可能な試薬)は分散液中でポアソン分布のランダムな分布状態を取っている。そのため、段階希釈法、即ち、ポアソン分布におけるランダムな分布状態では、標準偏差σは、平均コピー数xと下記式2の関係式を満たすとみなすことができる。これより、細胞(又は、増幅可能な試薬)の分散液を段階希釈法により希釈した場合、標準偏差σと平均コピー数xとから平均コピー数xの変動係数CV(CV値)を、上記式1及び式2から導出された下記式3を用いて求めると、表1及び
図1に示すようになる。なお、ポアソン分布に基づくばらつきを持ったコピー数の変動係数のCV値は
図1から求めることができる。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
表1及び
図1の結果から、例えば、ウェルに100コピー数の増幅可能な試薬を段階希釈法により充填する場合には、最終的に反応溶液中に充填される増幅可能な試薬のコピー数はその他の精度を無視しても、少なくとも10%の変動係数(CV値)を持つことがわかる。
【0036】
増幅可能な試薬のコピー数としては、変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たすことが好ましく、CV<1/2√xを満たすことがより好ましい。
【0037】
不確かさの情報としては、増幅可能な試薬を含むウェルが複数存在し、ウェルに含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数に基づく、デバイス全体としての不確かさの情報を有することが好ましい。
【0038】
不確かさを引き起こす要因としてはいくつか考えられ、例えば、目的の増幅可能な試薬を細胞に導入して当該細胞を計数及び分注して作製する場合には、細胞内の増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の細胞周期など)、細胞をデバイスに配置する手段(インクジェット装置、又はその装置の動作のタイミングなどの装置における各部位の動作による結果を含む。例えば、細胞懸濁液を液滴化した時の液滴に含まれる細胞数など)、細胞がデバイスの適切な位置に配置された頻度(例えば、ウェル内に配置された細胞数など)、細胞が細胞懸濁液中で破壊されることにより増殖可能な試薬が細胞懸濁液中に混入することによるコンタミネーション(夾雑物の混入、以下、「コンタミ」と記載することがある)などが挙げられる。
【0039】
増幅可能な試薬の情報としては、例えば、増幅可能な試薬の数に関する情報としては、デバイスに含まれる増幅可能な試薬の数の不確かさの情報などが挙げられる。
【0040】
<ウェル>
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、核酸などを配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、基板上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、少なくとも1つであり、2以上の複数であることが好ましく、5以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
ウェルの数が1つであるものとしては、例えば、PCRチューブなどが挙げられる。
ウェルの数が2以上であるものとしては、例えば、マルチウェルプレートが好適に用いられる。
マルチウェルプレートとしては、例えば、24、48、96、384、又は1,536のウェルプレートが挙げられる。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、1μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ウェルの色としては、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光などが挙げられる。
ウェルの濡れ性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撥水性であることが好ましい。ウェルの濡れ性が、撥水性であると、ウェル内壁への増幅可能な試薬の吸着を低減化できる。また、ウェルの濡れ性が、撥水性であると、ウェル内の増幅可能な試薬及びプライマー、増幅試薬を溶液状態で移動することができる。
ウェル内壁の撥水化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ふっ素系樹脂被膜を形成する方法、ふっ素プラズマ処理、エンボス加工が挙げられる。特に、接触角が100°以上となる撥水化処理を施すことで、液体の取りこぼしによる増幅可能な試薬の減少及び不確かさ(又は変動係数)の増大を抑えることができる。
【0041】
<基材>
デバイスは、ウェルが基材に設けられたプレート状のものが好ましいが、8連チューブ等の連結タイプのウェルチューブであってもよい。
基材としては、その材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
プラスチックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板状、プレート状などが好ましい。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
【0042】
<識別手段>
デバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数及びその不確かさの情報を識別可能な識別手段を有することが好ましい。
識別手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
識別手段を設ける位置及び識別手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
識別手段に記憶させる情報としては、増幅可能な試薬の特定コピー数及びその不確かさの情報以外にも、例えば、分析結果(活性値、発光強度等)、増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の数)、細胞の生死、特定塩基配列のコピー数、複数のウェルのうちどのウェルに増幅可能な試薬が充填されているのか、増幅可能な試薬の種類、測定日時、測定者の氏名などが挙げられる。
識別手段に記憶された情報は、各種読取手段を用いて読み取ることができ、例えば、識別手段がバーコードであれば読取手段としてバーコードリーダーが用いられる。
【0043】
識別手段に情報を書き込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手入力、ウェルに増幅可能な試薬を分注する際に増幅可能な試薬の個数を計数する液滴形成装置から直接データを書き込む方法、サーバに保存されているデータの転送、クラウドに保存されているデータの転送などが挙げられる。
【0044】
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、密閉部材などが挙げられる。
【0045】
-密閉部材-
デバイスは、ウェルへの異物混入は充填物の流出などを防ぐために、密閉部材を有することが好ましい。
密閉部材としては、少なくとも1つのウェルを密閉可能であり、1つ1つのウェルを個別に密閉乃至開封できるように、切り取り線により切り離し可能に構成することが好ましい。
密閉部材の形状としては、ウェル内壁径と一致するキャップ状、又はウェル開口部を被覆するフィルム状であることが好ましい。
密閉部材の材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
密閉部材としては、全てのウェルを一度に密閉可能なフィルム状であることが好ましい。また、使用者の誤使用を低減化できるように再開封が必要なウェルと不必要なウェルとの接着強度が異なるように構成されていることが好ましい。
【0046】
前記ウェルは、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基~30塩基の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、例えば、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5~9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
【0047】
デバイスは、増幅可能な試薬が0コピーのネガティブコントロールのウェル、増幅可能な試薬が10コピー以上のポジティブコントロールのウェルを有していることが好ましい。
ネガティブコントロールで検出が検知されたとき、及びポジティブコントロールで不検出が検知されたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
【0048】
前記ウェル内の増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の状態は、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液又は固体のいずれかの状態であってもよい。使用性の観点からは、特に、溶液状態であることが好ましい。溶液状態であると、使用者はすぐに試験に用いることができる。輸送上の観点からは、特に、固体状態であることが好ましく、乾燥状態がより好ましい。固体乾燥状態であると、分解酵素等による増幅試薬可能な試薬の分解の反応速度を低減化することができ、増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の保存性を向上させることができる。
また、固体乾燥状態のデバイスの使用直前に、バッファーや水に溶解させることで、すぐに反応液として用いることができるよう、適正量の増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬が充填されていることが望ましい。
乾燥方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凍結乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、吸引乾燥、赤外線乾燥、バレル乾燥、スピン乾燥などが挙げられる。
【0049】
ここで、
図2は、本発明のデバイス1の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2のデバイス1の側面図である。デバイス1は、基材2に複数のウェル3が設けられており、ウェル3内(ウェルを構成するウェル壁面で囲まれる内側の空間領域)に増幅可能な試薬としての核酸4が特定コピー数で充填されている。このデバイス1は増幅可能な試薬の特定コピー数及び当該増幅可能な試薬の特定コピー数の不確かさの情報が関連付けられている。なお、
図2及び
図3はデバイス1が、密閉部材5にてウェル3の開口部が被われている例を示している。
例えば、
図2及び
図3に示すように、各ウェル3に充填する試薬の数とその数の不確かさ(確からしさ)の情報、もしくはこれらの情報と関連付けられた情報を記憶するICチップまたはバーコード(識別手段6)が、密閉部材5と基材2との間で且つウェルの開口部以外の位置に配置されている。これは、識別手段の意図しない改変等を防止するのに好適である。
また、デバイスが識別手段を有することで、識別手段を有しない一般のウェルプレートとの区別可能である。このため、取り違えを防止することが可能である。
【0050】
図4は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の一例を示す図である。
図4中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表す。
図4中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
図5は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の他の一例を示す図である。
図5中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表す。
図5中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
【0051】
増幅可能な試薬は核酸であることが好ましい。核酸が細胞の核中に組み込まれていることが好ましい。
【0052】
-核酸-
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、核酸の断片、あるいはこれら核酸又はその断片のアナログなども含まれる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNAなどが挙げられる。
【0053】
核酸又は核酸断片としては、生物から得られる天然物又はそれらの加工物であってもよく、また、遺伝子組換技術を利用して製造されたもの、化学的に合成された人工合成核酸などでもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。人工合成核酸とすることにより、不純物が少なくなり、低分子化することが可能となるため、初期反応効率を向上させることができる。
なお、人工合成核酸としては、天然に存在するDNA又はRNAと同様の構成成分(塩基、デオキシリボース、リン酸)からなる核酸を人工的に合成した核酸を意味する。人工合成核酸としては、例えば、タンパク質をコードする塩基配列を有する核酸に限らず、任意の塩基配列を有する核酸を含む。
【0054】
核酸又は核酸断片のアナログとしては、核酸又は核酸断片に非核酸成分を結合させたもの、核酸又は核酸断片を蛍光色素や同位元素等の標識剤で標識したもの(例えば、蛍光色素や放射線同位体で標識されたプライマーやプローブ)、核酸又は核酸断片を構成するヌクレオチドの一部の化学構造を変化させた人工核酸(例えば、PNA、BNA、LNAなど)。
【0055】
核酸の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二本鎖核酸、一本鎖核酸、部分的に二本鎖又は一本鎖核酸などが挙げられ、環状又は直鎖状のプラスミドも使用することができる。
また、核酸は修飾又は変異されていてもよい。
【0056】
核酸は、標的の塩基配列を有することが好ましい。特定とは、特に定められていることを意味する。
標的の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない非天然の塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列、真菌の細胞由来の塩基配列、細菌由来の塩基配列、ウイルス由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
非天然の塩基配列を用いる場合、GC含有率が標的の塩基配列の30%以上70%以下であることが好ましく、GC含量が一定であることが好ましい(例えば、配列番号1など参照)。
標的の塩基配列の塩基長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20塩基対(又はmer)以上10,000塩基対(又はmer)以下の塩基長などが挙げられる。
感染症検査に用いられる塩基配列を用いる場合、その感染症特有の塩基配列を含んでいれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公定法や通知法で指定されている塩基配列を含んでいることが好ましい(例えば、配列番号2及び3など参照)。
【0057】
核酸としては、使用する細胞由来の核酸であってもよく、遺伝子導入により導入された核酸であってもよい。核酸として、遺伝子導入により導入された核酸、及びプラスミドを使用する場合は、1細胞に1コピーの核酸が導入されていることを確認することが好ましい。1コピーの核酸が導入されていることの確認方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、PCR法、サザンブロット法などを用いて確認することができる。
【0058】
遺伝子導入により導入される標的の塩基配列を有する核酸の種類は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、遺伝子導入により導入される核酸の数が1種類の場合にも、目的に応じてタンデムに同様の塩基配列を導入してもよい。
【0059】
遺伝子導入の方法としては、標的の核酸配列が狙いの場所に狙いのコピー数導入できれば特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、相同組換え、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1、TALEN、Zinc finger nuclease、Flip-in、Jump-inなどが挙げられる。これらの中でも、酵母菌の場合は、効率の高さ、及び制御のしやすさの点から、相同組換えが好ましい。
【0060】
-担体-
増幅可能な試薬は、担体に担持された状態で扱われることが好ましい。なお、増幅可能な試薬が核酸である場合には、核酸が粒子形状をした担体(担体粒子)に担持(より好ましくは内包)されている態様などが好ましい。
担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、樹脂、リポソーム、マイクロカプセルなどが挙げられる。
【0061】
--細胞--
細胞は、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
真核細胞としては、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、藻類、原生動物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞、真菌が好ましい。
【0063】
接着性細胞としては、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、組織や器官から直接採取した初代細胞を何代か継代させたものでもよく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分化した細胞、未分化の細胞などが挙げられる。
【0064】
分化した細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞;星細胞;クッパー細胞;血管内皮細胞;類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞;繊維芽細胞;骨芽細胞;砕骨細胞;歯根膜由来細胞;表皮角化細胞等の表皮細胞;気管上皮細胞;消化管上皮細胞;子宮頸部上皮細胞;角膜上皮細胞等の上皮細胞;乳腺細胞;ペリサイト;平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞;腎細胞;膵ランゲルハンス島細胞;末梢神経細胞、視神経細胞等の神経細胞;軟骨細胞;骨細胞などが挙げられる。
【0065】
未分化の細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞;単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞;iPS細胞などが挙げられる。
【0066】
真菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カビ、酵母菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞周期を調節することができ、1倍体を使用することができる点から、酵母菌が好ましい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
【0067】
酵母菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、G0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されているものが好ましい。
また、酵母菌としては、例えば、細胞周期をG1期に制御するフェロモン(性ホルモン)の感受性が増加したBar-1欠損酵母が好ましい。酵母菌がBar-1欠損酵母であると、細胞周期が制御できていない酵母菌の存在比率を低くすることができるため、ウェル内に収容された細胞の特定の核酸の数の増加等を防ぐことができる。
【0068】
原核細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真正細菌、古細菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
細胞としては、死細胞が好ましい。死細胞であると、分取後に細胞分裂が起こることを防ぐことができる。
細胞としては、光を受光したときに発光可能な細胞であることが好ましい。光を受光したときに発光可能な細胞であると、細胞の数を高精度に制御してウェル内に着弾させることができる。
受光とは、光を受けることを意味する。
光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
【0070】
--光を受光したときに発光可能な細胞--
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
【0071】
--蛍光色素--
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
【0072】
蛍光色素としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、商品名:EosinY(和光純薬工業株式会社製)、商品名:エバンスブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:トリパンブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン6G(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミンB(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン123(和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0073】
--蛍光タンパク質--
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
--蛍光標識抗体--
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4-FITC、CD8-PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
細胞の体積平均粒径としては、遊離状態において、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下が特に好ましい。体積平均粒径が、30μm以下であれば、インクジェット法やセルソーターなどの液滴吐出手段に好適に用いることができる。
【0076】
細胞の体積平均粒径としては、例えば、下記の測定方法で測定することができる。
作製した染色済み酵母分散液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せ、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いることにより体積平均粒径を測定することができる。なお、細胞数も同様の測定方法により求めることができる。
【0077】
細胞懸濁液における細胞の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5×104個/mL以上5×108個/mL以下が好ましく、5×104個/mL以上5×107個/mL以下がより好ましい。細胞数が、5×104個/mL以上5×108個/mL以下であると、吐出した液滴中に細胞を確実に含むことができる。細胞数としては、体積平均粒径の測定方法と同様にして、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いて測定することができる。
【0078】
核酸を有する細胞の細胞数は、複数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0079】
-樹脂-
樹脂としては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を担持することができれば、その材質、形状、大きさ、構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
-リポソーム-
リポソームとは、脂質分子を含む脂質二重層から形成される脂質小胞体であり、具体的には、脂質分子の疎水性基と親水性基の極性に基づいて生じる脂質二重層により外界から隔てられた空間を有する閉鎖された脂質を含む小胞体を意味する。
リポソームは、脂質を用いた脂質二重膜で形成される閉鎖小胞体であり、その閉鎖小胞の空間内に水相(内水相)を有する。内水相には、水等が含まれる。リポソームはシングルラメラ(単層ラメラ、ユニラメラ、二重層膜が一重)であっても、多層ラメラ(マルチラメラ、タマネギ状の構造をした多数の二重層膜で、個々の層は水様の層で仕切られている)であってもよい。
リポソームとしては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することのできるリポソームが好ましく、その形態は特に限定されない。「内包」とは、リポソームに対して核酸が内水相および膜自体に含まれる形態をとることを意味する。例えば、膜で形成された閉鎖空間内に核酸を封入する形態、膜自体に内包する形態などが挙げられ、これらの組合せでもよい。
リポソームの大きさ(平均粒子径)は、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができれば特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとることが好ましい。
リポソームの脂質二重層を構成する成分(膜成分)は、脂質から選ばれる。脂質として、水溶性有機溶媒及びエステル系有機溶媒の混合溶媒に溶解するものであれば任意に使用することができる。脂質として、具体的には、リン脂質、リン脂質以外の脂質、コレステロール類及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの成分は、単一種又は複数種の成分から構成されてよい。
【0081】
-マイクロカプセル-
マイクロカプセルとは、壁材と中空構造とを有する微小な粒体を意味し、中空構造に増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができる。
マイクロカプセルとしては、特に制限はなく、適宜目的に応じて、壁材、大きさ等を選択することができる。
マイクロカプセルの壁材としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素、ポリ尿素-ポリウレタン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシリ、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
マイクロカプセルの大きさとしては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
マイクロカプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、in-situ法、界面重合法、コアセルベーション法などが挙げられる。
【0082】
試料充填用ウェルは、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基~30塩基の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、例えば、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5~9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
【0083】
また、増幅可能な試薬の塩基配列は、検査対象の塩基配列とは異なっていてもよい。検査対象と増幅可能な試薬との増幅反応を同じウェル中で行う上で、好ましい態様といえる。
増幅可能な試薬の塩基配列と検査対象の塩基配列とが異なることにより、試料充填用ウェルにも、検査対象を増幅するプライマー対、及び増幅可能な試薬を増幅するプライマー対を導入する態様が好ましい。
【0084】
本発明のデバイスとして、試料充填用ウェルとは別のウェルに、検査対象の塩基配列と同じ塩基配列のポジティブコントロールが所定量充填された態様も含む。ここで、所定量とは、十分に検出可能な量であるとよい。別のウェルに、ポジティブコントロールを充填することで、ポジティブコントロールの増幅が認められれば、表2における上記(1)と上記(2)の場合の判定が正しいことをより保証することができる。
【0085】
本発明のデバイスは、少なくとも1つの試料充填用ウェルを有し、識別手段、基材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
本発明では、プレートには、試料充填用に使用するウェル以外にも、以下で記載するポジティブコントロールを充填するウェルを配してもよく、以下では、試料充填用ウェルを含むウェル全般について説明する。
【0086】
本発明の検出判定用デバイスは、特に、ウイルス、細菌、又は食肉の動物種判定を検査対象とする遺伝学的検査に好適に用いられる。
【0087】
ここで、
図6は、本発明のデバイスの一例を示す斜視図である。
図7は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。
図8は、
図7のデバイスの側面図である。
デバイス1は、基材2に複数のウェル3が設けられており、ウェル3内(ウェルを構成するウェル壁面で囲まれる内側の空間領域)に増幅可能な試薬としての核酸4が特定コピー数で充填されている。このデバイス1は増幅可能な試薬の絶対数及び当該増幅可能な試薬の絶対数の不確かさの情報が関連付けられている。なお、
図7及び
図8はデバイス1が、密閉部材5にてウェル3の開口部が被われている例を示している。
例えば、
図7及び
図8に示すように、各ウェル3に充填する試薬の数とその数の不確かさ(確からしさ)の情報、もしくはこれらの情報と関連付けられた情報を記憶するICチップ又はバーコード(識別手段6)が、密閉部材5と基材2との間で且つウェルの開口部以外の位置に配置されている。これは、識別手段の意図しない改変等を防止するのに好適である。
また、デバイスが識別手段を有することで、識別手段を有しない一般のウェルプレートとの区別可能である。このため、取り違えを防止することが可能である。
図9は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。この
図9のデバイスでは、増幅可能な試薬のコピー数水準が1、2、3、4、5の5水準設けられている。
【0088】
図10は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の一例を示す図である。
図10中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表す。
図10中の数字が記載していないウェルには、例えば、ポジティブコントロールを充填してもよい。
図11は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの位置の他の一例を示す図である。
図11中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表す。
図11中の数字が記載していないウェルには、例えば、ポジティブコントロールを充填してもよい。
【0089】
ここで、本発明の検出判定用デバイスを用いる検出判定方法と、当該検出判定方法に好適に用いることができる検出判定装置及び検出判定プログラムについて、詳細に説明する。
【0090】
[検出判定方法、検出判定装置、及び検出判定プログラム]
検出判定方法は、試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に用いる検出判定方法であって、増幅可能な試薬は、特定コピー数であり、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合には、検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合には、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を含み、増幅可能な試薬の増幅結果、及び検査対象の増幅結果を取得する、取得工程と、増幅可能な試薬の増幅結果と検査対象の増幅結果とを分析する、分析工程とを含むことがより好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0091】
検出判定装置は、試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に用いる検出判定装置であって、増幅可能な試薬は、特定コピーであり、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合には、検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合には、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定手段を有し、増幅可能な試薬の増幅結果、及び検査対象の増幅結果を取得する、取得手段と、増幅可能な試薬の増幅結果と検査対象の増幅結果とを分析する、分析手段とを有することがより好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0092】
検出判定プログラムは、試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に用いる検出判定プログラムであって、増幅可能な試薬は、特定コピー数であり、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合には、検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合には、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、処理をコンュータに実行させることが好ましい。
【0093】
検出判定装置における制御部等が行う制御は、検出判定方法を実施することと同義であるので、検出判定装置の説明を通じて検出判定方法の詳細についても明らかにする。また、検出判定プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、検出判定装置として実現させることから、検出判定装置の説明を通じて検出判定プログラムの詳細についても明らかにする。
【0094】
検出判定方法、検出判定装置、及び検出判定プログラムは、本発明では、一定の精度で特定のコピー数の増幅可能な試薬を各ウェルに一定以上の変動係数で分注したデバイスを用いることを前提とする。デバイスについての詳しい説明は、以下で記載する。
本発明のデバイスを用いて、試料中の検査対象を検出することにより、試料に含まれる検査対象の検出において、特にこの検査対象が低コピー数である場合であっても、偽陰性の判定をより確実に回避することができる。
また、本発明によれば、陰性との判定結果となった場合には、検査対象が存在するとしても、少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であることを保証する。つまり、本発明は、検査対象が存在しなかったという曖昧な「陰性」という判定結果に対し、量的な観点からも保証している。
【0095】
本発明に係る検出判定は、低コピー数の検査対象を含む試料に対し、より効果を発揮するものである。例えば、検査対象の特定コピー数は200以下が好ましく、100以下がより好ましく、10以下が特に好ましい。即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の場合、特に好ましい。検査対象としては、現在の技術で増幅可能である点から核酸が好ましい。
【0096】
-判定工程及び判定部-
判定工程は、特定コピー数の増幅可能な試薬を用い、増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合には、検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、
増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合には、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する工程であり、判定部により実施される。
上記特許文献4又は5に記載のように、コントロールに用いる参照用DNAのコピー数が特定できていない場合には、例えば、検査対象の増幅結果及び増幅可能な試薬の増幅結果から、検査対象の検出について判定すると、下記表2で示されるような結果となる。
【0097】
【0098】
表2で示されるように、増幅反応結果には、(1)試料中の核酸、及び増幅可能な試薬である参照用の核酸の両方に増幅が認められる場合と、(2)増幅可能な試薬である参照用の核酸には増幅が認められ、試料中の核酸には増幅が認められない場合と、(3)試料中の核酸には増幅が認められ、増幅可能な試薬である参照用の核酸には増幅が認められない場合と、(4)試料中の核酸、及び増幅可能な試薬である参照用の核酸の両方に増幅が認められない場合の4通りのパターンが存在する。
表2で示されるように、増幅可能な試薬のコピー数が特定できていない場合には、上記(1)から(4)の結果に対し、以下のように判定できる。
(1)の場合は、増幅可能な試薬である参照用の核酸に増幅が認められているため、PCR反応による実験が成功したことが確認できる。さらに、試料中の核酸に増幅が認められているため、試料中に検査対象である核酸が存在していることが確認できる。
(2)の場合は、増幅可能な試薬である参照用の核酸に増幅が認められているため、PCR反応による実験が成功したことが確認できる。しかし、試料中の核酸に増幅が認められないため、試料中に検査対象である核酸が存在していないと一般には判断される。ただし、増幅可能な試薬である参照用の核酸のコピー数が特定できていないので、試料中に検査対象である核酸が本当に存在していないのか(陰性)、それとも存在するが試料中の検査対象である核酸が微量なため実験では判別できず陰性と誤って判定したのか(偽陰性)、いずれの場合であるか特定できない。特に、核酸のコピー数が低コピー数である場合には、この陰性か偽陰性かの判断はより困難となる。
(3)及び(4)の場合は、増幅可能な試薬である参照用の核酸に増幅が認められないことから、何らかの原因(例えば、反応温度条件、増幅可能な試薬の調製、サーマルサイクラー、及びリアルタイムPCR装置の設定など)によりPCR反応が進行しなかったこと、又は増幅可能な試薬のコピー数が検出限界値に対して不十分であったことなどが想定され、「PCR反応系や増幅可能な試薬のコピー数を見直す必要あり」と判定される。増幅可能な試薬のコピー数が特定できていない場合には、コピー数のばらつきが大きいため、検出限界値以上のコピー数である確率が低下し、必然的に(3)及び(4)の試験結果となる頻度が増大する。そのため、増幅可能な試薬のコピー数が特定できていない場合には、検出限界値よりも2~3倍程度多いコピー数で試験を行うこと必要がある。
【0099】
一方、本発明のように、増幅可能な試薬である参照用の核酸のコピー数が特定できている場合、即ち特定コピー数である場合には、例えば、検査対象の増幅結果及び増幅可能な試薬の増幅結果から、検査対象の検出について判定すると、下記表3で示されるような結果となる。
【0100】
【0101】
表3で示されるように、増幅可能な試薬である参照用の核酸のコピー数が特定されている場合には、上記(1)から(4)の結果に対し、以下のように判定できる。
(1)の場合は、増幅可能な試薬である参照用の核酸に増幅が認められているため、PCR反応による実験が成功したことが確定できる。さらに、試料中の核酸に増幅が認められているため、試料中に検査対象である核酸が存在していることが確定できる。核酸のコピー数が低コピー数の場合であっても、「陽性」との判定結果を保証することができる。
(2)の場合は、増幅可能な試薬である参照用の核酸に増幅が認められているため、PCR反応による実験が成功したことが確認できる。しかし、試料中の核酸に増幅が認められないため、試料中の核酸は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であると確定できる。即ち、試料中に検査対象である核酸は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果としては、検査対象は存在せずとの「陰性」又は「少なくとも特定コピー数未満」であると判定できる。上記表3において、(2)の場合には、陰性か偽陰性か特定できなかったのが、本発明による表3の結果では、増幅可能な試薬である参照用の核酸のコピー数が特定できているため、以上のように「陰性」又は「少なくとも特定コピー数未満」であると結論付けることが可能になる。
本発明により、偽陰性をより確実に排除でき、陰性の判定精度をより向上させることができる。本発明は、偽陰性を低減化するとともに、少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であるとして「陰性」という判定結果を保証することができる。
(3)及び(4)の場合は、増幅可能な試薬である参照用の核酸に増幅が認められないことから、何らかの原因(例えば、反応温度条件、増幅可能な試薬の調製、サーマルサイクラー、及びリアルタイムPCR装置の設定など)によりPCR反応が進行しなかったこと、又は増幅可能な試薬のコピー数が検出限界値に対して不十分であったことなどが想定され、「PCR反応系や増幅可能な試薬のコピー数を見直す必要あり」と判定される。
【0102】
検出判定方法において、コピー数による検出限界値が存在する場合、検査対象である核酸の検出限界値と、増幅可能な試薬である核酸の検出限界値とは同等であるとよい。
それにより、増幅可能な試薬である参照用の核酸の増幅結果をもとに得られた検出限界値を使って、検査対象である核酸の検出限界値とみなすことができる。
【0103】
検出判定方法は、以下に記載のデバイスを用いて、検査対象である核酸、及び増幅可能な試薬である核酸の増幅反応を行うとよい。
デバイスは、試料を充填する少なくとも1つの試料充填用ウェルを有し、試料充填用ウェルが特定コピー数の増幅可能な試薬を更に含み、増幅可能な試薬の特定コピー数が特定の自然数である。
つまり、デバイスを用いて、試料を充填する試料充填用ウェルの中に増幅可能な試薬を充填し、検査対象、及び増幅可能な試薬を同じ試料充填用ウェルの中で増幅反応を行うとより好ましい。同じウェルの中で、検査対象と増幅可能な試薬との増幅反応を行うことで、これにより、反応条件のばらつきを抑制し、増幅結果の信頼性を高めることができる。
【0104】
また、検出判定方法において、検査対象と、増幅可能な試薬は、互いに異なる、塩基配列の核酸を用いて、増幅反応を行うとよい。
更にまた、検出判定方法において、試料充填用ウェルとは別のウェルに、検査対象の塩基配列と同じ塩基配列のポジティブコントロールを一定量充填し、増幅反応を行うとよい。ここで、一定量とは、十分に検出可能な量であるとよい。
別のウェルに、ポジティブコントロールを充填することで、ポジティブコントロールの増幅が認められれば、表3における上記(1)と上記(2)の場合の判定が正しいことをより保証することができる。
なお、検出判定方法に用いるデバイスについては、以下で詳しく説明する。
【0105】
-検出結果取得工程及び検出結果取得部-
検出結果取得工程は、増幅可能な試薬である核酸の増幅結果と、検査対象である核酸の増幅結果とを取得する工程であり、検出結果取得部により実施される。
検出結果取得部131は、PCR反応により得られた、増幅可能な試薬である核酸の増幅結果と、検査対象である核酸の増幅結果とを取得する。なお、かかる取得した増幅結果のデータは、検出結果データベース141に記憶される。
【0106】
-検出結果分析工程及び検出結果分析部-
検出結果分析工程は、取得した増幅可能な試薬である核酸の増幅結果と、取得した検査対象である核酸の増幅結果とを分析する工程であり、検出結果分析部により実施される。
検出結果分析部132は、検出結果データベース141に記憶された増幅結果のデータを取得する。そして、そのデータをもとに、増幅可能な試薬である核酸について増幅が認められたか否か、検査対象である核酸について増幅が認められたか否かを分析する。
【0107】
検出判定プログラムによる処理は、検出判定装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行することができる。
以下、検出判定装置のハードウェア構成、及び機能構成について説明する。
【0108】
-検出判定装置のハードウェア構成-
図12は、検出判定装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図12で示すように、検出判定装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、出力装置104、入力装置105の各部を有する。これらの各部は、バス106を介してそれぞれ接続されている。
CPU101は、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU101は、主記憶装置102などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。即ち、CPU101は、本実施例では、検出判定プログラムを実行することにより、検出判定装置100の制御部130として機能する。
また、CPU101は、検出判定装置100全体の動作を制御する。なお、本実施例では、検出判定装置100全体の動作を制御する装置をCPU101としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。
【0109】
検出判定プログラムや各種データベースは、必ずしも主記憶装置102や、補助記憶装置103などに記憶されていなくともよい。インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを介して、検出判定装置100に接続される他の情報処理装置などに検出判定プログラムや各種データベースを記憶させてもよい。検出判定装置100がこれら他の情報処理装置から検出判定プログラムや各種データベースを取得して実行するようにしてもよい。
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶し、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。
主記憶装置102は、図示しない、ROM(Reed Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
ROMは、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶している。
RAMは、ROMに記憶された各種プログラムがCPU101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが挙げられる。また、補助記憶装置103は、例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。
【0110】
出力装置104は、ディスプレイやスピーカーなどを用いることができる。ディスプレイとしては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが挙げられる。
入力装置105は、検出判定装置100に対する各種要求を受け付けることができれば、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。
以上のようなハードウェア構成によって、検出判定装置100の処理機能を実現することができる。
【0111】
-検出判定装置の機能構成-
図13は、検出判定装置100の機能構成の一例を示す図である。
この
図13に示すように、検出判定装置100は、入力部110、出力部120、制御部130、記憶部140、を有する。
制御部130は、検出結果取得部131と、検出結果分析部132と、判定部133と、を有する。制御部130は、検出判定装置100全体を制御する。
記憶部140は、検出結果データベース141と、判定結果データベース142と、を有する。以下、「データベース」を「DB」と称することもある。
【0112】
検出結果取得部131は、PCR反応により得られた、増幅可能な試薬である核酸の増幅結果と、検査対象である核酸の増幅結果とを取得する。制御部130は、係る取得した増幅結果のデータを、検出結果DB141へ記憶する。
検出結果分析部132は、記憶部140の検出結果DB141で記憶されている増幅結果のデータを用い、増幅可能な試薬である核酸の増幅結果と、検査対象である核酸の増幅結果とを分析する。
判定部133は、検出結果分析部132での分析結果をもとに、以下の分類に該当する場合には、「陽性」、及び「陰性」と判定する。
(1)増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合には、検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定する。
(2)増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合には、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する。
なお、判定部133は、上記(1)及び(2)の判定を行う他に、更に上記表3の(3)や(4)に該当する場合について、「PCR反応系や増幅可能な試薬のコピー数を見直す必要あり」等の判定を行ってもよい。
制御部130は、判定部133において行われた判定結果を、判定結果DB142へ記憶する。
【0113】
次に、検出判定プログラムの処理手順を示す。
図14は、検出判定装置100の制御部130における検出判定プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0114】
ステップS101では、検出判定装置100の制御部130の検出結果取得部131は、PCR反応により得られた、増幅可能な試薬である核酸の増幅結果と、検査対象である核酸の増幅結果とを取得し、処理をS102に移行する。ステップS101では、制御部130は、検出結果取得部131で取得した増幅結果のデータを、記憶部140にある検出結果DB141へ記憶する。
ステップS102では、検出判定装置100の制御部130の検出結果分析部132は、検出結果DB141に記憶された増幅結果のデータを取得する。そして、検出結果分析部132は、増幅可能な試薬である核酸について増幅が認められたか否か、検査対象である核酸について増幅が認められたか否か、それぞれの結果を分析し、処理をS103に移行する。
ステップS103では、検出判定装置100の制御部130の判定部133は、検出結果分析部132での分析結果を用いて、増幅可能な試薬である核酸について増幅が認められた場合には、処理をS104に移行する。一方、増幅可能な試薬である核酸について増幅が認められない場合には、処理をS107に移行する。
ステップS104では、判定部133は、検出結果分析部132での分析結果を用いて、検査対象である核酸について増幅が認められた場合には、処理をS105に移行する。
一方、検査対象である核酸について増幅が認められない場合には、処理をS106に移行する。
ステップS105では、判定部133は、増幅可能な試薬である核酸が増幅され、かつ検査対象である核酸が増幅された結果をもとに、検査対象は存在、検出結果は陽性であるとの判定を行い、処理をS110に移行する。
ステップS106では、判定部133は、増幅可能な試薬である核酸が増幅され、かつ検査対象である核酸が増幅されない結果をもとに、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定を行い、処理をS110に移行する。
ステップS107では、判定部133は、検出結果分析部132での分析結果を用いて、検査対象である核酸について増幅が認められた場合には、処理をS108に移行する。
一方、検査対象である核酸について増幅が認められない場合には、処理をS109に移行する。
ステップS108では、判定部133は、増幅可能な試薬である核酸が増幅されず、かつ検査対象である核酸が増幅された結果をもとに、検出結果は「PCR反応系や増幅可能な試薬のコピー数を見直す必要あり」との判定を行い、処理をS110に移行する。
ステップS109では、判定部133は、増幅可能な試薬である核酸が増幅されず、かつ検査対象である核酸が増幅されない結果をもとに、検出結果は「PCR反応系や増幅可能な試薬のコピー数を見直す必要あり」との判定を行い、処理をS110に移行する。
ステップS110では、制御部130は、判定部133により判定された結果を記憶部140の判定結果DB142に記憶し、本処理を終了する。
なお、本発明では、上記ステップS105とステップS106の判定が行われればよく、増幅可能な試薬である核酸について増幅が認められない場合には、処理をS107に移行することなく、本処理を終了する態様でも構わない。
【0115】
<第2実施形態>
本発明のデバイスは、第1実施形態において、増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルと、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルと、を有する態様とすることもできる。
【0116】
第2実施態様は、従来の核酸試料の系列希釈法による検量線を用いた未知濃度試料の定量では、極微量核酸の定量精度が著しく低下してしまうという知見に基づくものである。
【0117】
増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値は、前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たし、CV<1/2√xを満たすことが好ましい。また、平均特定コピー数の値に関わらず、増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値は、20%以下であること好ましく、10%以下がより好ましい。この範囲において、特定コピー数が100未満であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値は20%以下が好ましい。この範囲において、特定コピー数が100以上であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
【0118】
増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であって、特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たすことが好ましい。
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値は、20%以下であることが好ましい。
これにより、デバイスは、
図15に示す関係を満たす。
図15は、特定コピー数(ウェルに充填された核酸のコピー数)と変動係数との関係について説明する図である。
図15において、平均特定コピー数xと変動係数のCV値との関係式:及びCV=1/√x及びCV=1/2√xと、特定コピー数が100と、CV値20%とをそれぞれ示す。
図15から、(1)増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であって、当該特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たす領域と、(2)増幅可能な試薬の平均特定コピー数が100以上であって、当該特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV>1/√xかつCV≦20%を満たす領域とが得られる。これにより、デバイスは、低コピー数から高コピー数の幅広い範囲において高い精度で測定することができる。
【0119】
ウェルの数が2以上であり、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数と、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数とが互いに異なる2水準以上であることが好ましく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の場合、1、3、5、7、9の場合、2、4、6、8、10の場合などが挙げられる。
ウェルの数が2以上であり、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が10N1であり、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が10N2である、(ただし、N1及びN2は互いに連続した整数である)ことが好ましく、例えば、1、10、100、1,000の場合、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000の場合などが挙げられる。これにより、デバイスは、低コピー数から高コピー数までの広い範囲における検量線の作成が容易に行える。
【0120】
図16は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。この
図16のデバイスでは、増幅可能な試薬のコピー数水準が10
0、10
2、10
4、10
6、10
8の5水準設けられている。
【0121】
図17は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の一例を示す図である。
図17中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表し、1、2、3、10、50の特定コピー数が100未満のウェルと、10
2、10
3、10
4、10
5、10
6の特定コピー数100以上のウェルが設けられている。
図17中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
図18は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の他の一例を示す図である。
図18中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表し、1、3、5、10、50の特定コピー数が100未満のウェルと、10
2、10
3、10
4、10
5、10
6の特定コピー数100以上のウェルが設けられている。
図18中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
【0122】
第2実施形態におけるデバイスの製造方法としては、以下の「希釈法による増幅可能な試薬の調製」と「吐出法による増幅可能な試薬の調製」とがあり、1つのプレート内において、両者を同時に行ってもよく、順次別々に行ってもよい。
【0123】
[希釈法による増幅可能な試薬の調製]
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定コピー数は、100以上であり、100~1010が好ましい。
希釈法としては、試料調製手段によって系列希釈を作製する方法などが挙げられる。
試料調製手段としては、例えば、ピペットを用いたマニュアル操作、マイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製)、ピペットマン(エッペンドルフ株式会社製)などが挙げられる。
【0124】
<<吐出法による増幅可能な試薬の調製>>
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定コピー数は、100未満であり、50以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
吐出法としては、例えば、インクジェット吐出法、セルソーター、又はフローサイトメーターなどが挙げられる。吐出法による増幅可能な試薬の調製については、後述する「デバイスの製造方法」における方法を同様の方法を用いることができる。
【0125】
本発明のデバイスを第2実施形態とすることにより、低コピー数から高コピー数の幅広い範囲において高い精度で測定することができるデバイスを提供することができる。
【0126】
<第3実施形態>
本発明のデバイスは、第1実施形態において、増幅可能な試薬をノロウイルスゲノムの塩基配列の一部の核酸に変更したウェルを少なくとも1つ有する態様とすることもできる。
【0127】
第3実施態様は、従来のデバイスでは、ウェルに含まれるノロウイルスの核酸のコピー数が特定されていないため、増幅反応に供しても、そのノロウイルスの核酸の増幅結果の信頼性が低いという知見に基づくものである。
本発明のデバイスは、一定の精度で特定コピー数のノロウイルスの核酸が各ウェルに一定以上の充填精度で配されている。
本発明のデバイスは、ウェルに含まれるノロウイルスの核酸のコピー数が特定数であるため、偽陰性の判定をより確実に回避でき、陰性の判定精度をより向上させた定性検査に用いることができる。つまり、本発明のデバイスは、陽性又は陰性の正確な定性検査に用いることができる。また、本発明のデバイスは、ウェルに含まれるノロウイルスの核酸のコピー数が特定数であるため、試料に含まれるノロウイルスの正確な定量検査に用いることができる。
【0128】
<<ノロウイルスの核酸>>
ウェルは、特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む。
ノロウイルスの核酸としては、担体に含まれていることが好ましい。
担体としては、例えば、細胞、ファージ、ウイルスが挙げられる。
細胞としては、例えば、酵母菌、動物、植物が挙げられる。
尚、細胞については、下記「-細胞-」の項に記載の内容を参照することができる。
【0129】
ノロウイルスとしては、生物から採取されたノロウイルスでもよいし、ノロウイルスの感染者より排泄された糞便、吐物などからから採取されたノロウイルスでもよい。
生物としては、例えば、二枚貝などが挙げられる。
二枚貝としては、例えば、カキ、アサリ、シジミなどが挙げられる。
【0130】
ノロウイルスとしては、GI型、GII型、GIII型、GIV型、及びGV型が知られている。また、ヒトに感染する可能性があるのは、GI型、及びGII型であることが知られている。このことから、前記ウェルに含まれる、特定コピー数の核酸のノロウイルスとしては、GI型を発現する核酸、及びGII型を発現する核酸の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0131】
ノロウイルスは、遺伝子配列として、プラス鎖の一本鎖RNAからなる核酸を有する。ノロウイルスの核酸は、修飾又は変異されていてもよい。
核酸は、ウェル内で剥き出しの状態でもよいし、担体に担持された状態でもよいが、担体に担持された状態が好ましい。
担体としては、核酸を担持することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、リポソーム、マイクロカプセル、ファージ、ウイルスなどが挙げられる。これらの中でも、細胞が好ましい。
細胞自身の核酸の中に、ノロウイルスの核酸から抽出した塩基配列の一部をRNA、及びDNAとして遺伝子導入した後、1担体中に1核酸を有することから、遺伝子導入した前記担体の数を測定することにより、ノロウイルスの核酸の塩基配列の存在数を求めることができる。
【0132】
ウェルに含まれる特定コピー数のノロウイルスの核酸において、前記GI型を発現する核酸、及び前記GII型を発現する核酸をいずれも含む場合、これらの順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、GI型を発現する核酸の後にGII型を発現する核酸を直接つなげる場合、GII型を発現する核酸の後にGI型を発現する核酸を直接つなげる場合、GI型を発現する核酸とGII型を発現する核酸との間に任意の塩基配列を有する場合、GI型を発現する核酸の前後、及びGII型を発現する核酸の前後に、任意の塩基配列を有する場合などが挙げられる。
例えば、GI型を発現する核酸と、GII型を発現する核酸とを細胞に導入する際の配列の一例を、
図19に示す。
【0133】
増幅反応としてPCR法を用いる場合、プライマーとして、厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知(食安監発第1105001号)に規定された塩基配列を含むことが好ましい。
【0134】
ノロウイルスの核酸としては、GI型を発現する核酸を検出する塩基配列、及びGII型を発現する核酸を検出する塩基配列の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
GI型を発現する核酸を検出する塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配列番号8、配列番号9などが挙げられる。
GII型を発現する核酸を検出する塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配列番号10、配列番号11などが挙げられる。
【0135】
ノロウイルスの核酸としては、配列番号8、9、10、及び11のいずれか2以上の塩基配列を含むことが好ましい。
また、ノロウイルスの核酸としては、全長が50塩基以上の塩基配列を有することが好ましい。
【0136】
ノロウイルスの核酸としては、GI型を発現する核酸の塩基配列、及びGII型を発現する核酸の塩基配列の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
GI型を発現する核酸の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配列番号4などが挙げられる。
GII型を発現する核酸の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配列番号5などが挙げられる。
【0137】
ノロウイルスの核酸としては、配列番号4の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列、及び、配列番号5の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列の少なくともいずれかの塩基配列を含むことが好ましい。
【0138】
前記配列番号4の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列、及び前記配列番号5の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列の順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5’末端側から配列番号4の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列の後に、配列番号5の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列を有してもよいし、5’末端側から配列番号5の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列の後に、配列番号4の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列を有してもよい。
【0139】
ノロウイルスの核酸としては、(i)配列番号4の塩基配列と、5’末端側、又は3’末端側に1,000塩基以下の任意の長さの塩基配列とを含む塩基配列X、及び前記塩基配列Xに対し相同性が80%以上である塩基配列、並びに、(ii)配列番号5の塩基配列と、5’末端側、又は3’末端側に1,000塩基以下の任意の長さの塩基配列とを含む塩基配列Y、及び前記塩基配列Yに対し相同性が80%以上である塩基配列、の少なくともいずれかの塩基配列を含むことが好ましい。
【0140】
前記配列番号4の塩基配列と、5’末端側、又は3’末端側に1,000塩基以下の任意の長さの塩基配列とを含む塩基配列Xとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配列番号6などが挙げられる。
前記配列番号5の塩基配列と、5’末端側、又は3’末端側に1,000塩基以下の任意の長さの塩基配列とを含む塩基配列Yとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配列番号7などが挙げられる。
【0141】
前記(i)の塩基配列、及び前記(ii)の塩基配列の順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5’末端側から前記(i)の塩基配列の後に、前記(ii)の塩基配列を有してもよいし、5’末端側から前記(ii)の塩基配列の後に、前記(i)の塩基配列を有してもよい。
【0142】
遺伝子導入により導入されたノロウイルスの核酸は、1細胞に1コピー(1分子数)のノロウイルスの核酸が導入されていることを確認することが好ましい。なお、ここでノロウイルスの核酸(特定の塩基配列)のコピー数とその配列を有する核酸の分子数が一致する場合には、「コピー数」と「分子数」は対応付けられる場合もある。
1コピー(1分子数)のノロウイルス核酸が導入されていることの確認方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、PCR法、サザンブロット法などを用いて確認することができる。
遺伝子導入により導入されるノロウイルスの核酸の数は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、遺伝子導入により導入される核酸の数が1種類の場合にも、目的に応じてタンデムに同様の塩基配列を導入してもよい。
【0143】
遺伝子導入の方法としては、ノロウイルスの核酸配列が狙いの場所に狙いのコピー数導入できれば特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、相同組換え、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1、TALEN、Zinc finger nuclease、Flip-in、Jump-inなどが挙げられる。これらの中でも、前記担体が酵母菌の場合は、遺伝子導入の効率の高さ、及び制御のしやすさの点から、相同組換えが好ましい。
【0144】
前記デバイスは、前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む前記ウェルの数が2以上であり、一の前記ウェルにおける前記ノロウイルスの核酸の特定コピー数と、他の前記ウェルにおける前記ノロウイルスの核酸の特定コピー数とが異なることが好ましい。
【0145】
本発明のデバイスは、特定コピー数のノロウイルスの核酸を配するウェル以外に検査対象のノロウイルスの核酸を配するウェルを有する。また、検査対象のノロウイルスの核酸が配されるウェルには、前記検査対象のノロウイルスの核酸とは異なる増幅可能な試薬を所定量充填してもよい。ここで、所定量とは、十分に検出可能な量であるとよい。増幅可能な試薬が増幅されれば、増幅可能な試薬が配されているウェルにおいて、増幅反応が成功していると認められる。そのため、その増幅可能な試薬と同じウェルにおける検査対象のノロウイルスの増幅結果の信頼性がより担保される。
【0146】
<第4実施形態>
本発明のデバイスは、第1実施形態において、複数のウェルを有し、前記ウェル内の組成が異なる前記ウェルの群を2以上有する態様とすることもできる。
また、第4実施形態に係るデバイスは、複数のウェルを有し、特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有することが好ましい。さらに、第4実施形態に係るデバイスは、複数のウェルを有し、増幅可能な試薬を特定のコピー数で配した前記ウェルの群であって、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数を互いに異ならせた前記ウェルの群を2以上有することが好ましい。
【0147】
第4実施形態は、従来の希釈法では、確率的に充填されていない部分があることや配置絶対数が1コピーのみであり設計値どおりに配置できないため、測定系の性能評価を高精度に行うことができないという知見に基づくものである。
また、本発明のデバイスは、従来の標準核酸キットでは、低コピー数領域における試料核酸の確率的なばらつきを考慮していないという課題が解決できていないという知見に基づくものである。
更に、本発明のデバイスは、従来の測定系の評価方法では、温度という間接的な要因でしか測定系の評価を行っていないため、手技による測定系への影響を適正に評価することができないという知見に基づくものである。
本発明のデバイスによると、試薬組成物に含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であり、かつ試薬組成物の特定コピー数以外の組成を異ならせたウェルの群を2以上有することにより、試薬組成物を調製する調製者の技能を適正に評価するのに用いることができる。
【0148】
また、第4実施形態は、従来の希釈法では、確率的に充填されていない部分があることや配置する絶対数が1コピーのみであり設計値どおりに配置できないため、検査装置の面内特性や定量評価には使用できないという知見に基づくものである。
また、本発明のデバイスは、従来のマニュピレートを用いた方法では、試料溶液の調製方法に関する技術であって、検査装置の性能評価について記載も示唆もされておらず、更に、スループットの点で課題があるという知見に基づくものである。
本発明のデバイスによると、複数のウェルに配される増幅可能な試薬を特定コピー数で配したウェルの群であって、増幅可能な試薬の特定コピー数を互いに異ならせたウェルの群を2以上有してなることにより、検査装置の面内均一性、検査装置間の性能、及び検査施設間の性能を適正に評価することができる。
【0149】
第4の実施形態に係るデバイスは、複数のウェルを有し、特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を複数のウェルに配している。
特定コピー数(特定配列の数)とは、前記ウェルに含まれる増幅可能な試薬の特定配列のコピー数が一定以上の精度(不確かさが小さい)で特定されていることを意味し、実際にウェルに含まれている特定配列の数として既知ということができる。つまり、本発明における特定コピー数は、従来の濃度希釈により得られる所定のコピー数(算出推定値)よりも、数としての精度、信頼性が高く、特に1,000以下の低コピー数領域であってもポアソン分布によらない制御された値となる。それゆえ、当該特定コピー数の特定配列を含むウェルを有するデバイスを用いることで、従来よりも正確な増幅可能な試薬の定性的、定量的検査を行うことが可能となる。
なお、ここで増幅可能な試薬の核酸(特定の塩基配列)のコピー数とその配列を有する核酸の分子数が一致する場合には、「コピー数」と「分子数」は対応付けられる場合もある。
また、本発明においては、増幅可能な試薬の特定コピー数は、増幅可能な試薬の絶対数と称することもある。
【0150】
試薬組成物は、特定コピー数の増幅可能な試薬以外にも、増幅可能な試薬(例えば、核酸)の増幅に必要な要素を含み、例えば、プライマー、増幅試薬などを含有する。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基以上30塩基以下の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5~9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
【0151】
デバイスにおいて、増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせたウェルグループ(群)を2以上有する。例えば、デバイスの基材が、複数のウェルを有するプレートの場合には、プレート上で各グループにより各グループ「領域」が形成される。なお、試薬組成物における増幅可能な試薬の特定コピー数が異なる2以上の領域は、隣接していてもよく、離れていても構わない。
増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成が異なるとは、例えば、増幅可能な試薬としての核酸以外のプライマー及び増幅試薬が入っているか否かの組合せを設けることができることを意味する。例えば、デバイスの第1の群には(1)核酸、プライマー、及び増幅試薬の組成、また第2の群には(2)核酸及びプライマーの組成、更に第3の群には(3)核酸のみの組成とする。(2)及び(3)の組成には、調製者が手技によりプライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを加え、試薬組成物を調製し、PCR反応を行う。これにより、デバイスは、例えば、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価することができる。
調製者の技能としては、増幅可能な試薬として核酸を用いた場合では、例えば、ピペッティング操作、増幅試薬の調製量、及びウェルプレートへの試薬の添加などが挙げられる。
なお、調製者は、調製を行う際に、使用するデバイスの各々の群に含まれる核酸、プライマー(もしくは複数種類のプライマーからなるプライマーセット)、増幅試薬について、予め、それぞれの種類、量や濃度を把握しておく。その上で、調製者は、それぞれの群において、各々の群で、種類、量や濃度を合わせるように調製し、PCR反応を行うことも可能である。このようにすることで、調製者の技能をより適切に評価することが可能となる。
【0152】
更に、デバイスは、複数のウェルを有し、増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の少なくともいずれかの組成を含む試薬組成物を前記複数のウェルに配しており、前記試薬組成物は前記組成を異ならせてなる2以上の群である態様としてもよい。
上記の構成のようにすることで、任意の組成を調整する調製者の技能を評価することができる。
【0153】
更に、デバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数が互いに異なる群を有することが好ましい。即ち、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数と、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数とが互いに異なる2以上であることが好ましく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の場合、1、3、5、7、9の場合、2、4、6、8、10の場合などが挙げられる。
また、本発明のデバイスは、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が10N1であり、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が10N2である、(ただし、N1及びN2は互いに連続した整数である)ことが好ましく、例えば、1、10、100、1,000の場合、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000の場合などが挙げられる。これにより、本発明のデバイスは、低コピー数から高コピー数までの広い範囲における検量線を容易に作成することができる。
【0154】
本発明のデバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数が異なる2以上のウェルのグループ(群)を有する。例えば、デバイスの基材が、複数のウェルを有するプレートの場合には、プレート上で各グループにより各グループ「領域」が形成される。なお、増幅可能な試薬の特定コピー数が異なる2以上のグループで形成される「領域」は、ウェル同士が隣接していてもよく、また、離れていても構わない。
これにより、例えば、本発明のデバイスを用いて検査装置の性能評価の一つであるリアルタイムPCRを行って得られた結果において、異なる位置の特定コピー数が同じウェルを比較し使用に適さないウェル(不適合ウェル)があった場合に、再度リアルタイムPCRの校正を行うか、実際のサンプルでは不適合ウェルにおけるサンプルは適用除外として運用するかの判断ができる。また、本発明のデバイスを用いて、定期的に検査装置の計測を行うことにより、検査装置の面内位置におけるCt値の経時変化の情報を得ることができ、それによって、検査装置の面内特性を評価することができる。更に、同じ特定コピー数を配置したデバイスを用いることにより、測定を行った検査装置、及び異なる検査装置間の比較をすることができる。
【0155】
前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が検出限界付近である群であることが好ましい。
【0156】
検出限界(Limit of Detection;LOD)とは、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を検出できる手法において、検出できる最少の増幅可能な試薬のコピー数を表し、特に制限はなく、測定法に応じて適宜選択することができ、例えば、平均値+3σなどが挙げられる。
本明細書においては、特定コピー数のサンプル21個のサンプル中の未検出が1個の場合(95%の確率で判定した2σに相当)のうち、最少のコピー数に相当数するものを検出限界として用いることができる。
【0157】
検出限界付近とは、上記検出限界のコピー数の±1までの範囲のコピー数を意味する。
本発明のデバイスが、増幅可能な試薬の特定のコピー数が検出限界付近である群を少なくとも有する場合には、例えば、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が、それぞれ「1」、「2」、「3」、「4」、「5」である群を有する場合には、ある検査装置について性能評価を行うと、当該検査装置では「3」以上の群では前記増幅可能な試薬を増幅可能であるが、「2」以下の群では前記増幅可能な試薬を増幅不能であって、当該検査装置における前記増幅可能な試薬の特定のコピー数についての検出限界の下限値が「3」であることを明らかにすることができる。また、同様の別の検査装置について性能評価を行うと、当該検査装置では「4」以上の群では前記増幅可能な試薬を増幅可能であるが、「3」以下の群では前記増幅可能な試薬を増幅不能であって、当該検査装置における前記増幅可能な試薬の特定のコピー数についての検出限界の下限値が「4」であることを明らかにすることができ、検査装置の検出可能な最少の増幅可能な試薬の特定のコピー数を判断することができる。
【0158】
また、増幅可能な試薬を特定コピー数で配したウェルの群の内の少なくとも1つの群は、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数が定量下限を超えるコピー数である群であることが好ましい。
【0159】
定量下限(Limit of qualification;LOQ)とは、増幅可能な試薬(例えば、核酸)の定量が可能な手法において、定量が可能な(定量結果が十分な信頼性を有することのできる)最少の増幅可能な試薬のコピー数を表し、特に制限はなく、測定法に応じて適宜選択することができる。
【0160】
本明細書においては、複数の分子種からなるサンプル(例えば、特定のコピー数が異なる複数の核酸試料)より、検量線を作成し、その検量線の直線性から外れるコピー数の値を定量下限としてもよい。もしくは検量線の不確かさをCV値で表し、横軸にコピー数をとり、縦軸にCt値をとってCV値をプロットしたグラフにおいて、例えば、CV値が5%又は10%を切る値(コピー数)を定量下限とすることができる。
また、定量的な評価の場合には、Ct値そのものではなく、校正曲線及びPCR効率からCt値に対応したコピー数(コピー数又は濃度)を求めることができるため、コピー数(コピー数又は濃度)に換算したCV値から定量下限を設定してもよい。
【0161】
本発明のデバイスが、増幅可能な試薬(例えば、核酸)の特定コピー数が定量下限を超えるコピー数である群を少なくとも有する場合には、例えば、ある検査装置では増幅可能な試薬の特定のコピー数が10以上であれば定量的な検出を保証できることがわかり、別の検査装置では核酸の特定のコピー数が20以上であれば定量的な検出を保証できることがわかるといったように、検査装置の定量的な検出を保証できる最少の増幅可能な試薬の特定のコピー数を判断することができる。
【0162】
本発明のデバイスは、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定のコピー数が0であるネガティブコントロール群であることがより好ましい。
本発明のデバイスにおいて、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定のコピー数が0であるネガティブコントロール群であることにより、ネガティブコントロール群で、増幅可能な試薬の検出がなされたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。デバイス内にネガティブコントロール群を設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちに問題に気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
【0163】
また、本発明のデバイスは、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるポジティブコントロール群であることが好ましい。
本発明のデバイスにおいて、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるポジティブコントロール群であることにより、ポジティブコントロール群で増幅可能な試薬が不検出とされたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。デバイス内にポジティブコントロール群を設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
【0164】
本発明のデバイスは、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、ネガティブコントロール群を除いて最も少ないコピー数を持つ群(最少コピー数の群)であり、この最少コピー数群が、少なくともデバイスの略外周のウェルに配置されていることがさらに好ましい。
ここで、略外周とは、デバイス上に2次元的に配列されたウェルの少なくとも最外周を含む内側の数列を意味する。最外周を含む内側の数列としては、例えば、1列以上47列以下などが挙げられる。
デバイスの最外周に位置するウェルは、デバイスの中心付近に位置するウェルとは異なり、外側にはウェルが存在せず、デバイスとデバイスの外部との境界となっているため、(1)熱伝導に対してデバイス上物理的に不均等になっていること、(2)PCR装置の構成要素である温度制御部材の外周に配置されることから装置の温度変動要因の影響を受けやすい。そのため、本発明のデバイスにおいて、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、ネガティブコントロール群を除いて最も少ないコピー数を持つ群(最少コピー数の群)であり、この最少コピー数の群が、少なくともデバイスの略外周のウェルに配置されていることにより、装置の不具合をより高感度に検出することができる。
【0165】
ここで、
図20は、本発明のデバイスの一例を示す平面図である。この
図20のデバイスは、96穴プレートに、特定コピー数が10コピーである核酸とプライマーをほぼ全面に配置している。また、中央部にネガティブコントロール(NTC)として0コピーを2箇所、ポジティブコントロール(PC)として1,000コピーの核酸とプライマーと増幅試薬を2箇所配置している。
この
図20のデバイスを用いて、リアルタイムPCRを行い、測定したCt(Threshold Cycle)値の結果を
図21に示す。平均Ct値は37.1、Ct値の標準偏差は1.00、CV値[(標準偏差/平均Ct値)×100]は2.70である。なお、
図21中「UD」はCt値が不検出であることを意味する。
リアルタイムPCRは、例えば、まず、デバイス中の各サンプルに対して、マスターミックス(Thermo Fisher社製、TaqMan Universal PCR Master Mix)1μL、特定の塩基配列を増幅するためのフォワードプライマー及びリバースプライマーをそれぞれ0.5nmol、プローブ0.4nmolを加える。その後、リアルタイムPCR装置(Thermo Fisher社製、QuantStudio 7 Flex)を用いて増幅及び検出を行うことができる。
【0166】
Ct値は、反応の蛍光シグナルがThreshold Lineと交差する時点のサイクル数である。Ct値はターゲットの初期量に比例するため、DNAの初期コピー数を算出することができる。
Threshold Lineは、算出したベースラインシグナルに対して、統計学的に有意な増加が見られるシグナルレベルであり、リアルタイムPCR反応の閾値を意味する。
このようにデバイスの面内特性は、平均Ct値、Ct値の標準偏差、CV値[(標準偏差/平均Ct値)×100]、[(Ct値(Max)-Ct値(min))/2平均Ct値]×100などから評価することができる。
【0167】
図22のデバイスは、96穴プレートに、特定コピー数が3コピーの核酸とプライマーと増幅試薬をほぼ全面に配置し、ネガティブコントロール(NTC)0コピーをプレート中央部に4箇所に配置している。
図22のデバイスを用い、リアルタイムPCRを行ってCt値を測定し、平均Ct値を算出した。特定コピー数(3コピー)のウェルのCt値が平均Ct値の10%以内であれば「○」、特定コピー数(3コピー)のウェルのCt値が平均Ct値の10%より大きい場合を「×」で示した。結果を
図23に示した。なお、
図23中「UD」はCt値を不検出である。
その結果、96穴プレート中、外周の4箇所のウェルで、平均Ct値の10%を超える値となった。これら外周の4箇所は低コピー数での使用には不適であることがわかった。このため、再度リアルタイムPCRの校正を行うか、実際のサンプルではこれら外周の4箇所のウェルを使用しないとする判断が可能となる。
【0168】
例えば、
図20~
図23を用いて説明したデバイスを用いて、一定期間の計測を行うことにより、Ct値の経時変化を得ることができる。それによって、検査装置の面内特性と同様に、各ウェルのCt値が平均Ct値の10%を超える数値が得られた場合は、検査装置の校正を行うか、その計測場所を使用しないという対応をとることができる。また、配置された特定コピー数が絶対値であることから、同じ特定コピー数を配置したデバイスを用いることにより、検査装置間の性能を比較することができる。
【0169】
図24に示すように、96穴プレートに、特定コピー数が2コピー、3コピー、5コピー、10コピー、20コピー、50コピー、及び100コピーの核酸とプライマーと増幅試薬を配置し、ネガティブコントロール(NTC)として0コピー、ポジティブコントロール(PC)として500コピーの核酸とプライマーを中央部に配置した。
図24のデバイスを用いて、リアルタイムPCRを行ってCt値を測定した。これらのCt値を縦軸に、横軸にコピー数をプロットした検量線を
図25に示す。検査装置の性能を表す指標として、相関係数(R
2)があり、この場合は0.99である。相関係数はデータがどの程度検量線に合致しているかを示す値であり、検量線の直線性を反映している。また、最少コピー数(この場合は2コピー)は最外周に配置されていることで、面内均一性の指標とすることができる。
【0170】
図26のデバイスは、96穴プレート内の中央部に、特定コピー数が2コピー、10コピー、及び100コピーの核酸とプライマーと増幅試薬を配置し、ネガティブコントロール(NTC)として0コピー、ポジティブコントロール(PC)として500コピーの核酸とプライマーを中央部に配置したものである。最少コピー数(この場合は2コピー)は最外周とその内側横に1列、縦に2列の略外周に配置されていることで、面内均一性の指標とすることができる。
【0171】
図27のデバイスは、96穴プレート内に、特定コピー数が2コピー、10コピー、及び100コピーの核酸とプライマーと増幅試薬をそれぞれ20ウェル配置し、最外周に最少コピー数(この場合は2コピー)を配置し、特定コピー数が100コピーのウェルがポジティブコントロール(PC)を兼ねている。最少コピー数(この場合は2コピー)は最外周に配置されていることで、面内均一性の指標とすることができる。
【0172】
図28のデバイスは、96穴プレート内に、特定コピー数が3コピー、5コピー、10コピー、及び100コピーの核酸とプライマーを配置し、最少コピー数(この場合は2コピー)を最外周及び十字に配置したものである。ネガティブコントロール(NTC)として0コピー、ポジティブコントロール(PC)として500コピーの核酸とプライマーと増幅試薬を配置している。
【0173】
図29のデバイスは、96穴プレート内に、特定コピー数が2コピー、5コピー、10コピー、及び100コピーの核酸とプライマーを配置し、最外周に最少コピー数(この場合は2コピー)を配置したものである。ネガティブコントロール(NTC)として0コピー、ポジティブコントロール(PC)として500コピーの核酸とプライマーを中央部に配置している。
【0174】
図30のデバイスは、384穴プレート内に、特定コピー数が2コピー、10コピー、及び100コピーの核酸とプライマーと増幅試薬を中央部に配置し、それ以外に最少コピー数(この場合は2コピー)を配置したものである。最少コピー数(この場合は2コピー)は最外周とその内側横に5列、縦に8列の略外周に配置されていることで、面内均一性の指標とすることができる。
【0175】
図24及び
図26~
図30のデバイスを用いて、一定期間の計測を行うことにより、Ct値の経時変化を得ることができる。これによって、検査装置の面内特性と同様にして、品質管理値から逸脱した数値が得られた場合は、検査装置の校正を行うか、その計測場所を使用しないなどの対応をとることができる。また、配置されたコピー数が絶対値であることから、同じコピー数を配置したデバイスを用いることにより、検査装置間の性能を比較することができる。
【0176】
ここで、第4実施形態に係るデバイスにおいて、試薬組成物に含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であり、かつ試薬組成物の特定コピー数以外の組成を異ならせたウェルの群を2以上有するデバイスを用いた調製者の技能評価方法、調製者の技能評価装置、及び調製者の技能評価プログラムについて説明する。
【0177】
[調製者の技能評価方法、調製者の技能評価装置、及び調製者の技能評価プログラム]
調製者の技能評価方法は、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価方法であって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
取得したCt値の情報に基づき調製者の技能を評価する技能評価工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0178】
調製者の技能評価装置は、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価装置であって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
取得したCt値の情報に基づき調製者の技能を評価する技能評価部と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0179】
調製者の技能評価プログラムは、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価プログラムであって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
取得したCt値の情報に基づき調製者の技能を評価する処理をコンピュータに実行させる。
【0180】
調製者の技能評価装置における制御部等が行う制御は、調製者の技能評価方法を実施することと同義であるので、調製者の技能評価装置の説明を通じて調製者の技能評価方法の詳細についても明らかにする。また、調製者の技能評価プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、調製者の技能評価装置として実現させることから、調製者の技能評価装置の説明を通じて調製者の技能評価プログラムの詳細についても明らかにする。
【0181】
<Ct値情報取得工程及びCt値情報取得部>
Ct値情報取得工程は、本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得する工程であり、Ct値情報取得部により実施される。
Ct値は、反応の蛍光シグナルがThreshold Lineと交差する時点のサイクル数である。Ct値はターゲットの初期量に比例するため、DNAの初期コピー数を算出することができる。
Threshold Lineは、算出したベースラインシグナルに対して、統計学的に有意な増加が見られるシグナルレベルであり、リアルタイムPCR反応の閾値を意味する。
ベースラインとは、蛍光シグナルにほとんど変動がない、PCRの初期サイクルにおけるシグナルレベルを意味する。
Ct値の情報としては、例えば、Ct値、平均Ct、標準偏差、CV値[標準偏差/平均Ct)×100]、[(Ct(Max)-Ct(min))/2平均Ct]×100などが挙げられる。
【0182】
<技能評価工程及び技能評価部>
技能評価工程は、Ct値の情報に基づき調製者の技能を評価する工程であり、技能評価部により実施される。
調製者の技能としては、例えば、調製者がデバイス中の核酸以外の組成について手技により試薬組成物を調製する技能などが挙げられる。
本発明のデバイスを用いて、調製した試薬組成物についてPCR反応を行い、得られるCt値の情報を比較することにより、調製者の技能を評価することができる。
なお、調製者の技能評価を行う際には、調製者のサンプルは比較する標準試料と同一のデバイス上に調製してもよいし、異なるデバイス上に調製してもよい。比較する標準試料と同一のデバイス上に調製者のサンプルを調製して調製者の技能評価を行う方法としては、例えば、自動分注機又は技術認定者によって試薬の調製を行ったウェルと、評価される調製者によって試薬の調製を行ったウェルとを同一のデバイス上の異なるウェル内に調製し、各ウェルにおけるPCR反応から得られるCt値を比較することにより、調製者の技能を評価することができる。また、比較する標準試料と異なるデバイスに調製者のサンプルを調製して調製者の技能評価を行う方法としては、例えば、第一のデバイスは自動分注機又は技術認定者が試薬の調製を行い、第二のデバイスに評価される調製者が試薬の調製を行い、調製した第一及び第二のデバイス用いたPCR反応から得られるCt値を比較することにより、評価される調製者の技能を評価することができる。
【0183】
<その他の工程及びその他の部>
前記その他の工程及びその他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表示工程及び表示部などが挙げられる。
【0184】
本発明の調製者の技能評価プログラムによる処理は、調製者の技能評価装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行することができる。
以下、調製者の技能評価装置のハードウェア構成、及び機能構成について説明する。
【0185】
<調製者の技能評価装置のハードウェア構成>
図31は、調製者の技能評価装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図31で示すように、調製者の技能評価装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、出力装置104、入力装置105、通信インターフェイス(通信I/F)106の各部を有する。これらの各部は、バス107を介してそれぞれ接続されている。
CPU101は、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU101は、主記憶装置102などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。即ち、CPU101は、本実施例では、調製者の技能評価プログラムを実行することにより、調製者の技能評価装置100の制御部130として機能する。
また、CPU101は、調製者の技能評価装置100全体の動作を制御する。なお、本実施例では、調製者の技能評価装置100全体の動作を制御する装置をCPU101としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。
【0186】
調製者の技能評価プログラムや各種データベースは、必ずしも主記憶装置102や、補助記憶装置103などに記憶されていなくともよい。インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを介して、調製者の技能評価装置100に接続される他の情報処理装置などに調製者の技能評価プログラムや各種データベースを記憶させてもよい。調製者の技能評価装置100がこれら他の情報処理装置から調製者の技能評価プログラムや各種データベースを取得して実行するようにしてもよい。
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶し、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。
主記憶装置102は、図示しない、ROM(Reed Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
ROMは、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶している。
RAMは、ROMに記憶された各種プログラムがCPU101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが挙げられる。また、補助記憶装置103は、例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。
【0187】
出力装置104は、ディスプレイやスピーカーなどを用いることができる。ディスプレイとしては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが挙げられる。
入力装置105は、調製者の技能評価装置100に対する各種要求を受け付けることができれば、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。
通信インターフェイス(通信I/F)106は、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
以上のようなハードウェア構成によって、調製者の技能評価装置100の処理機能を実現することができる。
【0188】
<調製者の技能評価装置の機能構成>
図32は、調製者の技能評価装置100の機能構成の一例を示す図である。
この
図32に示すように、調製者の技能評価装置100は、入力部110、出力部120、制御部130、記憶部140を有する。
制御部130は、Ct値情報取得部131と、技能評価部132とを有する。制御部130は、調製者の技能評価装置100全体を制御する。
記憶部140は、Ct値情報データベース141、技能評価結果データベース142を有する。以下、「データベース」を「DB」と称することもある。
【0189】
Ct値情報取得部131は、記憶部140のCt値情報DB141で記憶されているCt値の情報のデータを用い、Ct値の情報を取得する。Ct値情報DB141には、例えば、上述したように予め実験により得られたCt値のデータが記憶されている。なお、デバイスに紐付けられているCt値の情報が、Ct値情報DB141に記憶されていてもよい。DBへの入力は、調製者の技能評価装置100に接続される他の情報処理装置から行っても、作業者が行っても構わない。
技能評価部132は、Ct値の情報に基づき、調製者の技能を評価する。なお、調製者の技能を評価する具体的な手法は、例えば、得られたCt値から標準偏差を算出し、算出した標準偏差に基づき評価する方法などが挙げられる。
技能評価部132において求められた調製者の技能評価結果は、記憶部140の技能評価結果DB142へ記憶される。
【0190】
次に、本発明の調製者の技能評価プログラムの処理手順を示す。
図33は、調製者の技能評価装置100の制御部130における調製者の技能評価プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【0191】
ステップS110では、調製者の技能評価装置100の制御部130のCt値情報取得部131は、記憶部140のCt値情報DB141に記憶されたCt値の情報データを取得し、処理をS111に移行する。
ステップS111では、調製者の技能評価装置100の制御部130の技能評価部132は、取得したCt値情報に基づき調製者の技能を評価し、処理をS112に移行する。
ステップS112では、調製者の技能評価装置100の制御部130は、得られた調製者の技能評価結果を記憶部140の技能評価結果DB142へ保存し、本処理を終了する。
【0192】
ここで、第4実施形態に係るデバイスにおいて、複数のウェルを有し、増幅可能な試薬を特定のコピー数で配した前記ウェルの群であって、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数を互いに異ならせた前記ウェルの群を2以上有するデバイスを用いた検査装置の性能評価方法、検査装置の性能評価装置、及び検査装置の性能評価プログラムについて説明する。
【0193】
[検査装置の性能評価方法、検査装置の性能評価装置、及び検査装置の性能評価プログラム]
検査装置の性能評価方法は、検査対象を検査する検査装置の性能を評価する検査装置の性能評価方法であって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
Ct値の情報に基づき検査装置の性能を評価する性能評価工程と、含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0194】
検査装置の性能評価装置は、検査対象を検査する検査装置の性能を評価する検査装置の性能評価装置であって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
Ct値の情報に基づき検査装置の性能を評価する性能評価部と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0195】
検査装置の性能評価プログラムは、検査対象を検査する検査装置の性能を評価する検査装置の性能評価プログラムであって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
Ct値の情報に基づき検査装置の性能を評価する処理をコンピュータに実行させる。
【0196】
検査装置の性能評価装置における制御部等が行う制御は、検査装置の性能評価方法を実施することと同義であるので、検査装置の性能評価装置の説明を通じて検査装置の性能評価方法の詳細についても明らかにする。また検査装置の性能評価プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、検査装置の性能評価装置として実現させることから、検査装置の性能評価装置の説明を通じて検査装置の性能評価プログラムの詳細についても明らかにする。
【0197】
<Ct値情報取得工程及びCt値情報取得部>
Ct値情報取得工程は、本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得する工程であり、Ct値情報取得部により実施される。
Ct値は、本発明のデバイスを用い、リアルタイムPCRを行うことにより求めることができる。
Ct値の情報としては、例えば、平均Ct値、Ct値の標準偏差、CV値[(標準偏差/平均Ct値)×100]、[(Ct値(Max)-Ct値(min))/2平均Ct値]×100などが挙げられる。
Ct値の情報は、デバイスの増幅可能な試薬の特定コピー数が異なる2以上の群毎に求めることができる。
【0198】
<性能評価工程及び性能評価部>
性能評価工程は、Ct値の情報に基づき検査装置の性能を評価する工程であり、性能評価部により実施される。
【0199】
定性的な評価では、本発明のデバイスを用い、リアルタイムPCRを行ってCt値を測定し、平均Ct値を算出する。各ウェルのCt値が平均Ct値の10%以内であれば「○」、各ウェルのCt値が平均Ct値の10%より大きい場合を「×」として、面内特性を評価することができる。
また、本発明のデバイスを用い、一定期間の計測を行うことにより、Ct値の経時変化を得ることができる。それによって、面内特性と同様に、各ウェルのCt値が平均Ct値の10%を超える場合は、検査装置の校正を行うか、その計測場所を使用しないという対応をとることができる。また、配置された特定コピー数が絶対値であることから、同じ特定コピー数を配置したデバイスを用いることにより、検査装置間の性能を比較することができる。
【0200】
定量的な評価では、本発明のデバイスを用い、一定期間の計測を行うことにより、Ct値の経時変化を得ることができる。それによって、面内特性と同様に、品質管理値から逸脱した数値が得られた場合は、検査装置の校正を行うか、その計測場所を使用しないという対応をとることができる。また、配置されたコピー数が絶対値であることから、同じコピー数を配置したデバイスを用いることにより、検査装置間の性能を比較することができる。
また、定量的な評価の場合には、Ct値そのものではなく、校正曲線及びPCR効率からCt値に対応したコピー数(コピー数又は濃度)を求めることができるため、コピー数(コピー数又は濃度)、又はコピー数(コピー数又は濃度)に換算したCV値、コピー数(コピー数又は濃度換算)の(Max-Min)/2平均値×100などの数値を用いて検査装置間の性能を評価してもよい。
【0201】
<その他の工程及びその他の部>
その他の工程及びその他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表示工程及び表示部などが挙げられる。
【0202】
本発明の検査装置の性能評価プログラムによる処理は、検査装置の性能評価装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行することができる。
以下、検査装置の性能評価装置のハードウェア構成、及び機能構成について説明する。
【0203】
<検査装置の性能評価装置のハードウェア構成>
図34は、検査装置の性能評価装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図34で示すように、検査装置の性能評価装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、出力装置104、入力装置105、通信インターフェイス(通信I/F)106の各部を有する。これらの各部は、バス107を介してそれぞれ接続されている。
CPU101は、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU101は、主記憶装置102などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。即ち、CPU101は、本実施例では、検査装置の性能評価プログラムを実行することにより、検査装置の性能評価装置100の制御部130として機能する。
また、CPU101は、検査装置の性能評価装置100全体の動作を制御する。なお、本実施例では、検査装置の性能評価装置100全体の動作を制御する装置をCPU101としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。
【0204】
検査装置の性能評価プログラムや各種データベースは、必ずしも主記憶装置102や、補助記憶装置103などに記憶されていなくともよい。インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを介して、検査装置の性能評価装置100に接続される他の情報処理装置などに検査装置の性能評価プログラムや各種データベースを記憶させてもよい。検査装置の性能評価装置100がこれら他の情報処理装置から検査装置の性能評価プログラムや各種データベースを取得して実行するようにしてもよい。
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶し、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。
主記憶装置102は、図示しない、ROM(Reed Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
ROMは、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶している。
RAMは、ROMに記憶された各種プログラムがCPU101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが挙げられる。また、補助記憶装置103は、例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。
【0205】
出力装置104は、ディスプレイやスピーカーなどを用いることができる。ディスプレイとしては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが挙げられる。
入力装置105は、検査装置の性能評価装置100に対する各種要求を受け付けることができれば、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。
通信インターフェイス(通信I/F)106は、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
以上のようなハードウェア構成によって、検査装置の性能評価装置100の処理機能を実現することができる。
【0206】
<検査装置の性能評価装置の機能構成>
図35は、検査装置の性能評価装置100の機能構成の一例を示す図である。
この
図35に示すように、検査装置の性能評価装置100は、入力部110、出力部120、制御部130、記憶部140を有する。
制御部130は、Ct値情報取得部131と、性能評価部132とを有する。制御部130は、検査装置の性能評価装置100全体を制御する。
記憶部140は、Ct値情報データベース141、性能評価結果データベース142を有する。以下、「データベース」を「DB」と称することもある。
【0207】
Ct値情報取得部131は、記憶部140のCt値情報DB141で記憶されているCt値の情報のデータを用い、Ct値の情報を取得する。Ct値情報DB141には、例えば、上述したように予め実験により得られたCt値のデータが記憶されている。なお、デバイスに紐付けられているCt値の情報が、Ct値情報DB141に記憶されていてもよい。DBへの入力は、検査装置の性能評価装置100に接続される他の情報処理装置から行っても、作業者が行っても構わない。
性能評価部132は、Ct値の情報に基づき、検査装置の性能を評価する。なお、検査装置の性能を評価する具体的な手法は、上述したとおりである。
性能評価部132において求められた検査装置の性能評価結果は、記憶部140の性能評価結果DB142へ記憶される。
【0208】
次に、本発明の検査装置の性能評価プログラムの処理手順を示す。
図36は、検査装置の性能評価装置100の制御部130における検査装置の性能評価プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【0209】
ステップS110では、検査装置の性能評価装置100の制御部130のCt値情報取得部131は、記憶部140のCt値情報DB141に記憶されたCt値の情報データを取得し、処理をS111に移行する。
ステップS111では、検査装置の性能評価装置100の制御部130の性能評価部132は、取得したCt値情報に基づき検査装置の性能を評価し、処理をS112に移行する。
ステップS112では、検査装置の性能評価装置100の制御部130は、得られた検査装置の性能評価結果を記憶部140の性能評価結果DB142へ保存し、本処理を終了する。
【0210】
<デバイスの製造方法>
以下、増幅可能な試薬として特定の核酸を有する細胞を用いたデバイスの製造方法について説明する。
本発明のデバイスの製造方法は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を生成する細胞懸濁液生成工程と、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる液滴着弾工程と、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、前記液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する細胞数計数工程と、ウェル内の細胞から核酸を抽出する核酸抽出工程と、を含み、各工程の不確かさを算出する工程、出力工程、記録工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0211】
<<細胞懸濁液生成工程>>
細胞懸濁液生成工程は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を生成する工程である。
溶剤とは、細胞を分散させるために用いる液体を意味する。
細胞懸濁液における懸濁とは、細胞が溶剤中に分散して存在する状態を意味する。
生成とは、作り出すことを意味する。
【0212】
-細胞懸濁液-
細胞懸濁液は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含み、添加剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特定の核酸を有する複数の細胞については、上述したとおりである。
【0213】
--溶剤--
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、培養液、分離液、希釈液、緩衝液、有機物溶解液、有機溶剤、高分子ゲル溶液、コロイド分散液、電解質水溶液、無機塩水溶液、金属水溶液、及びこれらの混合液体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、緩衝液が好ましく、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris-EDTA緩衝液(TE)がより好ましい。
【0214】
--添加剤--
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、核酸、樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0215】
界面活性剤は、細胞同士の凝集を防止し、連続吐出安定性を向上することができる。
【0216】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性及び失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0217】
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
【0218】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Triton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
【0219】
界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、細胞懸濁液全量に対して、0.001質量%以上30質量%以下が好ましい。含有量が、0.001質量%以上であると、界面活性剤の添加による効果を得ることができ、30質量%以下であると、細胞の凝集を抑制することができるため、細胞懸濁液中の核酸のコピー数を厳密に制御することができる。
【0220】
核酸としては、検出対象の核酸の検出に影響しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ColE1 DNAなどが挙げられる。核酸であると、標的の塩基配列を有する核酸が、ウェルの壁面などに付着することを防ぐことができる。
【0221】
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンイミドなどが挙げられる。
【0222】
--その他の材料--
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、分散剤などが挙げられる。
【0223】
[細胞を分散する方法]
細胞を分散する方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーズミル等のメディア方式、超音波ホモジナイザー等の超音波方式、フレンチプレス等の圧力差を利用する方式などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから超音波方式がより好ましい。メディア方式では、解砕能力が強く、細胞膜や細胞壁を破壊する可能性やメディアがコンタミネーションとして混入することがある。
【0224】
[細胞のスクリーニング方法]
細胞のスクリーニング方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式分級、セルソーター、フィルタによるスクリーニングなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから、セルソーター、フィルタによるスクリーニングが好ましい。
【0225】
細胞は、細胞の細胞周期を測定することにより、細胞懸濁液に含まれる細胞数から標的の塩基配列を有する核酸の数を推定することが好ましい。
細胞周期を測定するとは、細胞分裂による細胞数を数値化することを意味する。
核酸の数を推定するとは、細胞数から、核酸のコピー数を求めることを意味する。
【0226】
計数対象が細胞数ではなく標的の塩基配列が何個入っているかであってもよい。通常は、標的の塩基配列は細胞1個につき1つの領域が入っているものを選択する、あるいは遺伝子組み換えにより導入するため、標的の塩基配列の数は細胞数と等しいと考えてよい。ただし、細胞は特定の周期で細胞分裂を起こすために細胞内で核酸の複製が行われる。細胞周期は細胞の種類によって異なるが、細胞懸濁液から所定量の溶液を抜き取り複数細胞の周期を測定することによって、細胞1個中に含まれる標的の塩基配列の数に対する期待値及びその不確かさを算出することが可能である。これは、例えば、核染色した細胞をフローサイトメーターによって観測することによって可能である。
不確かさとは、測定対象の製造に係る操作、機器などに起因する測定結果のばらつきの情報を意味する。
算出とは、計算して求める数値を出すことを意味する。
【0227】
図37は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。
図37に示すように、ヒストグラム上でDNAの複製有無により2つのピークが現れるため、DNA複製済みの細胞がどの程度の割合で存在するかを算出することが可能である。この算出結果から1細胞中に含まれる平均的な標的の塩基配列の数を算出することが可能であり、前述の細胞数計数結果に乗じることにより、標的の塩基配列の推定数を算出することが可能である。
また、細胞懸濁液を作製する前に細胞周期を制御する処理を行うことが好ましく、前述のような複製が起きる前、又は後の状態に揃えることによって、標的の塩基配列の数を細胞数からより精度良く算出することが可能になる。
【0228】
推定する特定コピー数は、不確かさを算出することが好ましい。不確かさを算出することにより、これらの数値に基づき不確かさを分散又は標準偏差として表現して出力することが可能である。複数因子の影響を合算する場合には、一般的に用いられる標準偏差の二乗和平方根を用いることが可能である。例えば、因子として吐出した細胞数の正答率、細胞内のDNA数、吐出された細胞がウェル内に着弾する着弾率などを用いることができる。これらの中で影響の大きい項目を選択して算出することもできる。
【0229】
<<液滴着弾工程>>
液滴着弾工程は、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりデバイスのウェル内に液滴を順次着弾させる工程である。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。
吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
順次とは、次々に順序どおりにすることを意味する。
着弾とは、液滴をウェルに到達させることを意味する。
【0230】
吐出手段としては、細胞懸濁液を液滴として吐出する手段(以下、「吐出ヘッド」とも称することがある)を好適に用いることができる。
【0231】
細胞懸濁液を液滴として吐出する方式としては、例えば、インクジェット法におけるオンデマンド方式、コンティニュアス方式などが挙げられる。これらの中でもコンティニュアス方式の場合、安定的な吐出状態に至るまでの空吐出、液滴量の調整、ウェル間を移動する際にも連続的に液滴形成を行い続ける等の理由から、用いる細胞懸濁液のデッドボリュームが多くなる傾向にある。本発明では細胞数を調整する観点からデッドボリュームによる影響を低減させることが好ましく、そのため上記2つの方式では、オンデマンド方式の方がより好適である。
【0232】
オンデマンド方式としては、例えば、液体に圧力を加えることによって液体を吐出する圧力印加方式、加熱による膜沸騰によって液体を吐出するサーマル方式、静電引力によって液滴を引っ張ることによって液滴を形成する静電方式等の既知の複数の方式などが挙げられる。これらの中でも、以下の理由から、圧力印加方式が好ましい。
【0233】
静電方式は、細胞懸濁液を保持して液滴を形成する吐出部に対向して電極を設置する必要がある。本発明のプレート生成方法では、液滴を受けるためのプレートが対向して配置されており、プレート構成の自由度を上げるため電極の配置は無いほうが好ましい。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物やプレートの用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
【0234】
圧力印加方式としては、ピエゾ素子を用いて液体に圧力を加える方式、電磁バルブ等のバルブによって圧力を加える方式などが挙げられる。細胞懸濁液の液滴吐出に使用可能な液滴生成デバイスの構成例を
図38A~
図38Cに示す。
図38Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液室11a、細胞懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、
図38Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室11b、細胞懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、プレートの生成のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として
図38Cに示した構成などが挙げられる。
図38Cは、
図38Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。
図38Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室11c、細胞懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図38Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
【0235】
オンデマンド方式以外の方式としては、例えば、連続的に液滴を形成させるコンティニュアス方式などが挙げられる。コンティニュアス方式では、液滴を加圧してノズルから押し出す際に圧電素子やヒーターによって定期的なゆらぎを与え、それによって微小な液滴を連続的に作り出すことができる。更に、飛翔中の液滴の吐出方向に電圧を印加することによって制御することにより、ウェルに着弾させるか、回収部に回収するかを選ぶことも可能である。このような方式は、セルソーター、又はフローサイトメーターで用いられており、例えば、ソニー株式会社製の装置名:セルソーターSH800を用いることができる。
【0236】
図39Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。また、
図39Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。
図7Aは、液滴を形成するための駆動電圧を示す。電圧(V
A、V
B、V
C)の強弱により、液滴を形成することができる。
図39Bは、液滴の吐出を行わずに細胞懸濁液を撹拌するための電圧を示している。
【0237】
液滴を吐出しない期間中に、液滴を吐出するほどには強くない複数のパルスを入力することによって、液質内の細胞懸濁液を撹拌することが可能であり、細胞沈降による濃度分布の発生を抑制することができる。
【0238】
本発明において使用することができる吐出ヘッドの液滴形成動作に関して、以下に説明する。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。
図40A~
図40Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。
図40Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室11c内に保持された細胞懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。
次に、
図40Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。
最後に、
図40Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に細胞懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
【0239】
デバイスの製造方法では、ウェルが形成されたプレートを移動可能なステージ上に固定し、ステージの駆動と吐出ヘッドとからの液滴形成を組み合わせることにより、凹部に順次液滴を着弾させる。ここで、ステージの移動としてプレートを移動させる方法を示したが、当然のことながら吐出ヘッドを移動させてもよい。
【0240】
プレートとしては、特に制限はなく、バイオ分野において一般的に用いられるウェルが形成されたものを用いることが可能である。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
【0241】
図41は、プレートのウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置400の一例を示す概略図である。
図41に示すように、液滴を着弾させるための分注装置400は、液滴形成装置401と、プレート700と、ステージ800と、制御装置900とを有している。
【0242】
分注装置400において、プレート700は、移動可能に構成されたステージ800上に配置されている。プレート700には液滴形成装置401の吐出ヘッドから吐出された液滴310が着滴する複数のウェル710(凹部)が形成されている。制御装置900は、ステージ800を移動させ、液滴形成装置401の吐出ヘッドとそれぞれのウェル710との相対的な位置関係を制御する。これにより、液滴形成装置401の吐出ヘッドからそれぞれのウェル710中に順次、蛍光染色細胞350を含む液滴310を吐出することができる。
【0243】
制御装置900は、例えば、CPU、ROM、RAM、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、制御装置900の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。ただし、制御装置900の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御装置900は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0244】
吐出する液滴としては、ウェル内に細胞懸濁液を着弾させる際に、複数の水準を得るように液滴をウェル内に着弾させることが好ましい。
複数の水準とは、標準となる複数の基準を意味する。
複数の水準としては、ウェル内に特定の核酸を有する複数の細胞が所定の濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配を有することにより、検量線用試薬として好適に使用することができる。複数の水準は、センサによって計数される値を用いて制御することができる。
【0245】
プレートとしては、1穴マイクロチューブ、8連チューブ、96穴、384穴のウェルプレートなどを用いることが好ましいが、ウェルが複数である場合には、これらのプレートにおけるウェルには同じ個数の細胞を分注することも可能であるし、異なる水準の個数を入れることも可能である。また、細胞が含まれないウェルが存在していてもよい。特に核酸の量を定量的に評価するリアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の評価に用いるプレートを作成する際には、複数水準の数の核酸が分注されたものを用いることが好ましい。例えば、細胞(又は核酸)が、おおよそ1個、2個、4個、8個、16個、32個、64個の7水準で分注したプレートを作製することが考えられる。このようなプレートを用いることによって、リアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の定量性、線形性、評価下限値などを調べることが可能である。
【0246】
<<細胞数計数工程>>
細胞数計数工程は、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する工程である。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
計数とは、数を数えることを意味する。
【0247】
細胞数計数工程としては、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を含んでもよい。
【0248】
液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数の計数としては、液滴がプレートのウェルに確実に入ることが予測されるウェル開口部の直上の位置にあるタイミングにて液滴中の細胞を観測することが好ましい。
【0249】
液滴中の細胞を観測する方法としては、例えば、光学的に検出する方法、電気的・磁気的に検出方法などが挙げられる。
【0250】
-光学的に検出する方法-
図42、
図46、及び
図47を用いて、光学的に検出する方法に関して以下に述べる。
図42は、液滴形成装置401の一例を示す模式図である。
図46、及び
図47は、液滴形成装置401A、401Bの他の一例を示す模式図である。
図42に示すように、液滴形成装置401は、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、光源30と、受光素子60と、制御手段70とを有する。
【0251】
図42では、細胞懸濁液として細胞を特定の色素によって蛍光染色した後に所定の溶液に分散した液を用いており、吐出ヘッドから形成した液滴に光源から発せられる特定の波長を有する光を照射し細胞から発せられる蛍光を受光素子によって検出することによって計数を行う。このとき、蛍光色素によって細胞を染色する方法に加え、細胞中に元々含まれる分子が発する自家蛍光を利用してもよいし、細胞に蛍光タンパク質(例えば、GFP(Green Fluorescent Protein))を生産するための遺伝子を予め導入しておき細胞が蛍光を発するようにしておいてもよい。
光を照射とは、光をあてることを意味する。
【0252】
吐出ヘッド10は、液室11と、メンブレン12と、駆動素子13とを有しており、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を液滴として吐出することができる。
【0253】
液室11は、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を保持する液体保持部であり、下面側には貫通孔であるノズル111が形成されている。液室11は、例えば、金属やシリコン、セラミック等から形成することができる。蛍光染色細胞350としては、蛍光色素によって染色された無機微粒子や有機ポリマー粒子などが挙げられる。
【0254】
メンブレン12は、液室11の上端部に固定された膜状部材である。メンブレン12の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
【0255】
駆動素子13は、メンブレン12の上面側に設けられている。駆動素子13の形状は、メンブレン12の形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12の平面形状が円形である場合には、円形の駆動素子13を設けることが好ましい。
【0256】
駆動素子13に駆動手段20から駆動信号を供給することにより、メンブレン12を振動させることができる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を、ノズル111から吐出させることができる。
【0257】
駆動素子13として圧電素子を用いる場合には、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段20から圧電素子の上下電極間に電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わり、メンブレン12を紙面上下方向に振動させることができる。圧電材料としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、或いはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
【0258】
光源30は、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。なお、飛翔中とは、液滴310が液滴吐出手段10から吐出されてから、着滴対象物に着滴するまでの状態を意味する。飛翔中の液滴310は、光Lが照射される位置では略球状となっている。又、光Lのビーム形状は略円形状である。
【0259】
ここで、液滴310の直径に対し、光Lのビーム直径が10倍~100倍程度であることが好ましい。これは、液滴310の位置ばらつきが存在する場合においても、光源30からの光Lを確実に液滴310に照射するためである。
【0260】
ただし、液滴310の直径に対し、光Lのビーム直径が100倍を大きく超えることは好ましくない。これは、液滴310に照射される光のエネルギー密度が下がるため、光Lを励起光として発する蛍光Lfの光量が低下し、受光素子60で検出し難くなるからである。
【0261】
光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましく、例えば、固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が好適に用いられる。光Lがパルス光である場合のパルス幅は10μs以下が好ましく、1μs以下がより好ましい。単位パルス当たりのエネルギーとしては、集光の有無等、光学系に大きく依存するが、概ね0.1μJ以上が好ましく、1μJ以上がより好ましい。
【0262】
受光素子60は、飛翔中の液滴310に蛍光染色細胞350が含有されていた場合に、蛍光染色細胞350が光Lを励起光として吸収して発する蛍光Lfを受光する。蛍光Lfは、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられるため、受光素子60は蛍光Lfを受光可能な任意の位置に配置することができる。この際、コントラストを向上するため、光源30から出射される光Lが直接入射しない位置に受光素子60を配置することが好ましい。
【0263】
受光素子60は、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光できる素子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液滴に特定の波長を有する光を照射して液滴内の細胞からの蛍光を受光する光学センサが好ましい。受光素子60としては、例えば、フォトダイオード、フォトセンサ等の1次元素子が挙げられるが、高感度な測定が必要な場合には、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードを用いることが好ましい。受光素子60として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCD等の2次元素子を用いてもよい。
【0264】
なお、光源30が発する光Lと比較して蛍光染色細胞350の発する蛍光Lfが弱いため、受光素子60の前段(受光面側)に光Lの波長域を減衰させるフィルタを設置してもよい。これにより、受光素子60において、非常にコントラストの高い蛍光染色細胞350の画像を得ることができる。フィルタとしては、例えば、光Lの波長を含む特定波長域を減衰させるノッチフィルタ等を用いることができる。
【0265】
また、前述のように、光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましいが、光源30から発せられる光Lを連続発振の光としてもよい。この場合には、連続発振の光が飛翔中の液滴310に照射されるタイミングで受光素子60が光を取り込み可能となるように制御し、受光素子60に蛍光Lfを受光させることが好ましい。
【0266】
制御手段70は、駆動手段20及び光源30を制御する機能を有している。また、制御手段70は、受光素子60が受光した光量に基づく情報を入手し、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する機能を有している。以下、
図43~
図48を参照し、制御手段70の動作を含む液滴形成装置401の動作について説明する。
【0267】
図43は、
図42の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。
図44は、
図42の液滴形成装置の制御手段の機能ブロックを例示する図である。
図45は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0268】
図43に示すように、制御手段70は、CPU71と、ROM72と、RAM73と、I/F74と、バスライン75とを有している。CPU71、ROM72、RAM73、及びI/F74は、バスライン75を介して相互に接続されている。
【0269】
CPU71は、制御手段70の各機能を制御する。記憶手段であるROM72は、CPU71が制御手段70の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM73は、CPU71のワークエリア等として使用される。また、RAM73は、所定の情報を一時的に記憶することができる。I/F74は、液滴形成装置401を他の機器等と接続するためのインターフェイスである。液滴形成装置401は、I/F74を介して、外部ネットワーク等と接続されてもよい。
【0270】
図44に示すように、制御手段70は、機能ブロックとして、吐出制御手段701と、光源制御手段702と、細胞数計数手段(細胞数検知手段)703とを有している。
【0271】
図44及び
図45を参照しながら、液滴形成装置401の細胞数(粒子数)計数について説明する。まず、ステップS11において、制御手段70の吐出制御手段701は、駆動手段20に吐出の指令を出す。吐出制御手段701から吐出の指令を受けた駆動手段20は、駆動素子13に駆動信号を供給してメンブレン12を振動させる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310が、ノズル111から吐出される。
【0272】
次に、ステップS12において、制御手段70の光源制御手段702は、液滴310の吐出に同期して(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号に同期して)光源30に点灯の指令を出す。これにより、光源30が点灯し、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。
【0273】
なお、ここで、同期するとは、液滴吐出手段10による液滴310の吐出と同時に(駆動手段20が液滴吐出手段10に駆動信号を供給するのと同時に)発光することではなく、液滴310が飛翔して所定位置に達したときに液滴310に光Lが照射されるタイミングで、光源30が発光することを意味する。つまり、光源制御手段702は、液滴吐出手段10による液滴310の吐出(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号)に対して、所定時間だけ遅延して発光するように光源30を制御する。
【0274】
例えば、液滴吐出手段10に駆動信号を供給した際に吐出する液滴310の速度vを予め測定しておく。そして、測定した速度vに基づいて液滴310が吐出されてから所定位置まで到達する時間tを算出し、液滴吐出手段10に駆動信号を供給するタイミングに対して、光源30が光を照射するタイミングをtだけ遅延させる。これにより、良好な発光制御が可能となり、光源30からの光を確実に液滴310に照射することができる。
【0275】
次に、ステップS13において、制御手段70の細胞数計数手段703は、受光素子60からの情報に基づいて、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する。ここで、受光素子60からの情報とは、蛍光染色細胞350の輝度値(光量)や面積値である。
【0276】
細胞数計数手段703は、例えば、受光素子60が受光した光量と予め設定された閾値とを比較して、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。この場合には、受光素子60として1次元素子を用いても2次元素子を用いても構わない。
【0277】
受光素子60として2次元素子を用いる場合は、細胞数計数手段703は、受光素子60から得られた2次元画像に基づいて、蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積を算出するための画像処理を行う手法を用いてもよい。この場合、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。
【0278】
なお、蛍光染色細胞350は、細胞や染色細胞であってもよい。染色細胞とは、蛍光色素によって染色された細胞、又は、蛍光タンパク質を発現可能な細胞を意味する。
【0279】
染色細胞において、蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類、アゾ類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0280】
このように、液滴形成装置401では、蛍光染色細胞350を縣濁した細胞懸濁液300を保持する液滴吐出手段10に、駆動手段20から駆動信号を供給して、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を吐出させ、飛翔中の液滴310に光源30から光Lを照射する。そして、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350が光Lを励起光として蛍光Lfを発し、蛍光Lfを受光素子60が受光する。更に、受光素子60からの情報に基づいて、細胞数計数手段703が、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を計数(カウント)する。
【0281】
つまり、液滴形成装置401では、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を実際にその場で観察するため、蛍光染色細胞350の個数の計数精度を従来よりも向上することが可能となる。又、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350に光Lを照射して蛍光Lfを発光させて蛍光Lfを受光素子60で受光するため、高いコントラストで蛍光染色細胞350の画像を得ることが可能となり、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を低減できる。
【0282】
図46は、
図42の液滴形成装置401の変形例を示す模式図である。
図46に示すように、液滴形成装置401Aは、受光素子60の前段にミラー40を配置した点が、液滴形成装置401(
図10参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0283】
このように、液滴形成装置401Aでは、受光素子60の前段にミラー40を配置したことにより、受光素子60のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0284】
例えば、ノズル111と着滴対象物を近づけた際に、
図42のレイアウトでは着滴対象物と液滴形成装置401の光学系(特に受光素子60)との干渉が発生するおそれがあるが、
図46のレイアウトにすることで、干渉の発生を回避することができる。
【0285】
図46に示すように、受光素子60のレイアウトを変更することにより、液滴310が着滴する着滴対象物とノズル111との距離(ギャップ)を縮めることが可能となり、着滴位置のばらつきを抑制することができる。その結果、分注の精度を向上することが可能となる。
【0286】
図47は、
図42の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。
図47に示すように、液滴形成装置401Bは、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lf
1を受光する受光素子60に加え、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lf
2を受光する受光素子61を設けた点が、液滴形成装置401(
図42参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0287】
ここで、蛍光Lf1及びLf2は、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられる蛍光の一部を示している。受光素子60及び61は、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる任意の位置に配置することができる。なお、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる位置に3つ以上の受光素子を配置してもよい。又、各受光素子は同一仕様としてもよいし、異なる仕様としてもよい。
【0288】
受光素子が1つであると、飛翔する液滴310に複数個の蛍光染色細胞350が含まれる場合に、蛍光染色細胞350同士が重なることに起因して、細胞数計数手段703が液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を誤計数する(カウントエラーが発生する)おそれがある。
【0289】
図48A及び
図48Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光染色細胞が含まれる場合を例示する図である。例えば、
図48Aに示すように、蛍光染色細胞350
1と350
2とに重なりが発生する場合や、
図48Bに示すように、蛍光染色細胞350
1と350
2とに重なりが発生しない場合があり得る。受光素子を2つ以上設けることで、蛍光染色細胞が重なる影響を低減することが可能である。
【0290】
前述のように、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光粒子の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光粒子の個数を計数することができる。
【0291】
受光素子を2つ以上設置する場合,それぞれの受光素子から得られる輝度値或いは面積値のうち、最大値を示すデータを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能である。これに関して、
図49を参照して、より詳しく説明する。
【0292】
図49は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。
図49に示すように、液滴内の粒子同士の重なりがない場合には、Le=Liとなる。例えば、細胞1個の輝度値をLuとすると、細胞数/滴=1個の場合はLe=Luであり、粒子数/滴=n個の場合はLe=nLuである(n:自然数)。
【0293】
しかし、実際には、nが2以上の場合には粒子同士の重なりが発生し得るため、実測される輝度値はLu≦Le≦nLu(
図16Aの網掛部分)となる。そこで、細胞数/滴=n個の場合、例えば閾値を(nLu-Lu/2)≦閾値<(nLu+Lu/2)と設定することができる。そして、複数の受光素子を設置する場合、それぞれの受光素子から得られたデータのうち最大値を示すものを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能となる。なお、輝度値に代えて面積値を用いてもよい。
【0294】
また、受光素子を複数設置する場合、得られる複数の形状データを基に、細胞数を推定するアルゴリズムにより粒子数を決定づけてもよい。
このように、液滴形成装置401Bでは、蛍光染色細胞350が異なる方向に発した蛍光を受光する複数の受光素子を有しているため、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を更に低減できる。
【0295】
図50は、
図42の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。
図50に示すように、液滴形成装置401Cは、液滴吐出手段10が液滴吐出手段10Cに置換された点が、液滴形成装置401(
図42参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0296】
液滴吐出手段10Cは、液室11Cと、メンブレン12Cと、駆動素子13Cとを有している。液室11Cは、液室11C内を大気に開放する大気開放部115を上部に有しており、細胞懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部115から排出可能に構成されている。
【0297】
メンブレン12Cは、液室11Cの下端部に固定された膜状部材である。メンブレン12Cの略中心には貫通孔であるノズル121が形成されており、液室11Cに保持された細胞懸濁液300はメンブレン12Cの振動によりノズル121から液滴310として吐出される。メンブレン12Cの振動の慣性により液滴310を形成するため、高表面張力(高粘度)の細胞懸濁液300でも吐出が可能である。メンブレン12Cの平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
【0298】
メンブレン12Cの材質としては特に限定はないが、柔らか過ぎるとメンブレン12Cが簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さがある材質を用いることが好ましい。メンブレン12Cの材質としては、例えば、金属材料やセラミック材料、ある程度硬さのある高分子材料等を用いることができる。
【0299】
特に、蛍光染色細胞350として細胞を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料であることが好ましい。細胞の付着性は一般的に材質の水との接触角に依存性があると言われており、材質の親水性が高い又は疎水性が高いときには細胞の付着性が低い。親水性の高い材料としては各種金属材料やセラミック(金属酸化物)を用いることが可能であり、疎水性が高い材料としてはフッ素樹脂等を用いることが可能である。
【0300】
このような材料の他の例としては、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム等や、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等を挙げることができる。これ以外にも、材料表面をコーティングすることで細胞接着性を低下させることも考えられる。例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば、日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることが可能である。
【0301】
ノズル121は、メンブレン12Cの略中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。この場合、ノズル121の径としては特に限定はないが、蛍光染色細胞350がノズル121に詰まることを避けるため、蛍光染色細胞350の大きさの2倍以上とすることが好ましい。蛍光染色細胞350が例えば動物細胞、特にヒトの細胞である場合、ヒトの細胞の大きさは一般的に5μm~50μm程度であるため、ノズル121の径を、使用する細胞に合わせて10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
【0302】
一方で、液滴が大きくなり過ぎると微小液滴を形成するという目的の達成が困難となるため、ノズル121の径は200μm以下であることが好ましい。つまり、液滴吐出手段10Cにおいては、ノズル121の径は、典型的には10μm~200μmの範囲となる。
【0303】
駆動素子13Cは、メンブレン12Cの下面側に形成されている。駆動素子13Cの形状は、メンブレン12Cの形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12Cの平面形状が円形である場合には、ノズル121の周囲に平面形状が円環状(リング状)の駆動素子13Cを形成することが好ましい。駆動素子13Cの駆動方式は、駆動素子13と同様とすることができる。
【0304】
駆動手段20は、メンブレン12Cを振動させて液滴310を形成する吐出波形と、液滴310を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させる撹拌波形とを駆動素子13Cに選択的に(例えば、交互に)付与することができる。
【0305】
例えば、吐出波形及び撹拌波形を何れも矩形波とし、吐出波形の駆動電圧よりも撹拌波形の駆動電圧を低くすることで、撹拌波形の印加により液滴310が形成されないようにすることができる。つまり、駆動電圧の高低により、メンブレン12Cの振動状態(振動の程度)を制御することができる。
【0306】
液滴吐出手段10Cでは、駆動素子13Cがメンブレン12Cの下面側に形成されているため、駆動素子13Cによりメンブレン12が振動すると、液室11Cの下部方向から上部方向への流れを生じさせることが可能である。
【0307】
この時、蛍光染色細胞350の動きは下から上への運動となり、液室11C内で対流が発生して蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300の撹拌が起きる。液室11Cの下部方向から上部方向への流れにより、沈降、凝集した蛍光染色細胞350が液室11Cの内部に均一に分散する。
【0308】
つまり、駆動手段20は、吐出波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300をノズル121から液滴310として吐出させることができる。又、駆動手段20は、撹拌波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300を撹拌することができる。なお、撹拌時には、ノズル121から液滴310は吐出されない。
【0309】
このように、液滴310を形成していない間に細胞懸濁液300を撹拌することにより、蛍光染色細胞350がメンブレン12C上に沈降、凝集することを防ぐと共に、蛍光染色細胞350を細胞懸濁液300中にムラなく分散させることができる。これにより、ノズル121の詰まり、及び吐出する液滴310中の蛍光染色細胞350の個数のばらつきを抑えることが可能となる。その結果、蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300を、長時間連続して安定的に液滴310として吐出することができる。
【0310】
また、液滴形成装置401Cにおいて、液室11C内の細胞懸濁液300中に気泡が混入する場合がある。この場合でも、液滴形成装置401Cでは、液室11Cの上部に大気開放部115が設けられているため、細胞懸濁液300中に混入した気泡を、大気開放部115を通じて外気に排出できる。これによって、気泡排出のために大量の液を捨てることなく、連続して安定的に液滴310を形成することが可能となる。
【0311】
即ち、ノズル121の近傍に気泡が混入した場合や、メンブレン12C上に多数の気泡が混入した場合には吐出状態に影響を及ぼすため、長い時間安定的に液滴の形成を行うためには、混入した気泡を排出する必要がある。通常、メンブレン12C上に混入した気泡は、自然に若しくはメンブレン12Cの振動によって上方に移動するが、液室11Cには大気開放部115が設けられているため、混入した気泡を大気開放部115から排出可能となる。そのため、液室11Cに気泡が混入しても不吐出が発生することを防止可能となり、連続して安定的に液滴310を形成することができる。
【0312】
なお、液滴を形成しないタイミングで、液滴を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させ、積極的に気泡を液室11Cの上方に移動させてもよい。
【0313】
-電気的又は磁気的な検出する方法-
電気的又は磁気的な検出する方法としては、
図51に示すように、液室11’から細胞懸濁液を液滴310’としてプレート700’に吐出する吐出ヘッドの直下に、細胞計数のためのコイル200がセンサとして設置されている。細胞は特定のタンパク質によって修飾され細胞に接着することが可能な磁気ビーズによって覆うことにより、磁気ビーズが付着した細胞がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の細胞の有無を検出することが可能である。一般的に、細胞はその表面に細胞特有のタンパク質を有しており、このタンパク質に接着することが可能な抗体を磁気ビーズに修飾することによって、細胞に磁気ビーズを付着させることが可能である。このような磁気ビーズとしては既製品を用いることが可能であり、例えば、株式会社ベリタス製のDynabeads(商標登録)が利用可能である。
【0314】
[吐出前に細胞を観測する処理]
吐出前に細胞を観測する処理としては、
図52に示すマイクロ流路250中を通過してきた細胞350’をカウントする方法や、
図53に示す吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法などが挙げられる。
図52はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800を用いることができる。
図52では、マイクロ流路250中に光源260からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ265を用いて検出器255により検出することによって細胞の有無や、細胞の種類を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路250中に通過した細胞の数から所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することが可能である。
また、
図53に示す吐出ヘッド10’としては、Cytena社製のシングルセルプリンターを用いることが可能である。
図53では、吐出前において、ノズル部近傍のレンズ265’を介して、画像取得部255’において画像取得した結果からノズル部近傍の細胞350”が吐出されたと推定することや、吐出前後の画像から差分により吐出されたと考えられる細胞の数を推定することによって、所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することができる。
図52に示すマイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法では、液滴が連続的に生成されるのに対して、
図53は、オンデマンドで液滴形成が可能であるため、より好ましい。
【0315】
[着弾後の細胞をカウントする処理]
着弾後の細胞をカウントする処理としては、プレートにおけるウェルを蛍光顕微鏡などにより観測することにより、蛍光染色した細胞を検出する方法を取ることが可能である。この方法は、例えば、Sangjun et al.,PLoS One,Volume 6(3),e17455などに記載されている。
【0316】
液滴の吐出前及び着弾後に、細胞を観測する方法では、以下に述べる問題があるが、生成するプレートの種類によっては吐出中の液滴内の細胞を観測することがもっとも好ましい。吐出前に細胞を観測する手法においては、流路中を通過した細胞数や吐出前(及び吐出後)の画像観測から、着弾したと思われる細胞数を計数するため、実際にその細胞が吐出されたのかどうかの確認は行われておらず、思いがけないエラーが発生することがある。例えば、ノズル部が汚れていることにより液滴が正しく吐出せず、ノズルプレートに付着し、それに伴い液滴中の細胞も着弾しない、といったケースが発生する。他にも、ノズル部の狭い領域に細胞が残留することや、細胞が吐出動作によって想定以上に移動し観測範囲外に出てしまうといった問題の発生も起こりうる。
また、着弾後のプレート上の細胞を検出する手法においても問題がある。まず、プレートとして顕微鏡観察が可能であるものを準備する必要がある。観測可能なプレートとして、一般的に底面が透明かつ平坦なプレート、特に底面がガラス製となっているプレートが用いられるが、特殊なプレートとなってしまうため、一般的なウェルを使用することができなくなる問題がある。また、細胞数が数十個など多いときには、細胞の重なりが発生するため正確な計数ができなくなる問題もある。そのため、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサ及び粒子数(細胞数)計数手段によって計数することに加えて、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を行うことが好ましい。
【0317】
また、受光素子としては1又は少数の受光部を有する受光素子、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管を用いることが可能であるし、その他に2次元アレイ状に受光素子が設けられたCCD(Charge Copuled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCDなど二次元センサを用いることも可能である。
1又は少数の受光部を有する受光素子を用いる際には、蛍光強度から細胞が何個入っているかを予め用意された検量線を用いて決定することも考えられるが、主として飛翔液滴中の細胞有無を二値的に検出することが行われる。細胞懸濁液の細胞濃度が十分に低く、液滴中に細胞が1個又は0個しかほぼ入らない状態で吐出を行う際には、二値的な検出で十分精度よく計数を行うことが可能である。細胞懸濁液中で細胞はランダムに配置していることを前提とすれば、飛翔液滴中の細胞数はポアソン分布に従うと考えられ、液滴中に細胞数が2個以上入る確率P(>2)は下記式(1)で表される。
図54は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。ここで、λは液滴中の平均細胞数であり、細胞懸濁液中の細胞濃度に吐出液滴の体積を乗じたものになる。
P(>2)=1-(1+λ)×e
-λ ・・・ 式(1)
【0318】
二値的な検出で細胞計数を行う場合には、確率P(>2)が十分小さい値であることが精度を確保する上では好ましく、確率P(>2)が1%以下となるλ<0.15であることが好ましい。光源としては、細胞の蛍光を励起できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水銀ランプやハロゲンランプなどの一般的なランプに特定の波長を照射するようにフィルタをかけたものや、LED(Light Emitting Diode)、レーザーなどを用いることが可能である。ただし、特に1nL以下の微小な液滴を形成するときには、狭い領域に高い光強度を照射する必要があるため、レーザーを用いるのが好ましい。レーザー光源としては、固体レーザーやガスレーザー、半導体レーザーなど一般的に知られている多種のレーザーを用いることが可能である。また、励起光源としては、液滴が通過する領域を連続的に照射したものであってもよいし、液滴の吐出に同期して液滴吐出動作に対して所定時間遅延を付けたタイミングでパルス的に照射するものであってもよい。
【0319】
<<不確かさ算出工程>>
不確かさ算出工程は、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞計数工程などそれぞれの工程における不確かさを算出する工程である。
当該不確かさの算出は、細胞懸濁液生成工程における不確かさと同様に算出することができる。
なお、不確かさの算出タイミングは、細胞計数工程の次工程で、纏めて算出してもよいし、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞計数工程などの各工程の最後に算出し、細胞計数工程の次工程で各不確かさを合成して算出してもよい。言い換えれば、上記各工程での不確かさは、合成算出までに適宜算出しておけばよい。
【0320】
<<出力工程>>
出力工程は、ウェル内に着弾した細胞懸濁液に含まれる細胞数を、センサにより測定された検出結果に基づいて粒子数計数手段にて計数された値を出力する工程である。
計数された値とは、センサにより測定された検出結果から、粒子数計数手段にて当該ウェルに含まれる細胞数を意味する。
出力とは、原動機、通信機、計算機などの装置が入力を受けて計数された値を外部の計数結果記憶手段としてのサーバに電子情報として送信することや、計数された値を印刷物として印刷することを意味する。
【0321】
出力工程は、プレートの生成時に、プレートにおける各ウェルの細胞数又は核酸数を観察又は推測し、観測値又は推測値、外部の記憶部に出力する。
出力は、細胞数計数工程と同時に行ってもよく、細胞数計数工程の後に行ってもよい。
【0322】
<<記録工程>>
記録工程は、出力工程において、出力された観測値又は推測値を記録する工程である。
記録工程は、記録部において好適に実施することができる。
記録は、出力工程と同時に行ってもよく、出力工程の後に行ってもよい。
記録とは、記録媒体に情報を付与することだけでなく、記録部に情報を保存することも含む意味である。
【0323】
<<核酸抽出工程>>
核酸抽出工程は、ウェル内の細胞から核酸を抽出する工程である。
抽出とは、細胞膜や細胞壁などを破壊し、核酸をぬき出すことを意味する。
【0324】
細胞から核酸を抽出する方法としては、90℃~100℃で熱処置する方法が知られている。90℃以下で熱処理するとDNAが抽出されない可能性があり、100℃以上で熱処理するとDNAが分解される可能性がある。このとき界面活性剤を添加し熱処理することが好ましい。
【0325】
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性・失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0326】
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
【0327】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Totiton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
【0328】
界面活性剤の含有量としては、ウェル中の細胞懸濁液全量に対して、0.01質量%以上5.00質量%以下が好ましい。含有量が、0.01質量%以上であると、DNA抽出に対して効果を発揮でき、5.00質量%以下であると、PCRの際に増幅の阻害を防止することができるため、両方の効果を得られる数値範囲として上記0.01質量%以上5.00質量%以下が好適である。
細胞壁を保有している細胞に関しては、上記の方法で十分にDNA抽出されないことがある。その場合、例えば、浸透圧ショック法、凍結融解法、酵素消化法、DNA抽出用キットの使用、超音波処理法、フレンチプレス法、ホモジナイザーなどの方式などが挙げられる。これらの中でも、抽出DNAのロスが少ないことから、酵素消化法が好ましい。
【0329】
<<その他の工程>>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素失活工程などが挙げられる。
【0330】
-酵素失活工程-
酵素失活工程は、酵素を失活させる工程である。
酵素としては、例えば、DNase、RNase、核酸抽出工程において核酸を抽出するために使用した酵素などが挙げられる。
酵素を失活させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を好適に用いることができる。
【0331】
本発明のデバイスは、バイオ関連産業、ライフサイエンス産業、及び医療産業等において幅広く使用され、例えば、装置校正や検量線作成、検査装置の精度管理、PCR装置の精度評価などに好適に用いることができる。
デバイスとしては、感染症に対して実施する場合は公定法や通知法などに定められている方法に適用することができる。
【0332】
また、本発明のデバイスは、デバイスに含まれる増幅可能な試薬を、規定の増幅条件で増幅した際に、Ct値が30以上であるウェルにおける標準偏差σが3以下であり、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2以下であり、特に好ましくは1.5以下である。また、Ct値が30以上のウェルにおいて、Ct値が小さいウェルほど、標準偏差も小さいことが望ましい。
【0333】
規定の増幅条件としては、例えば、以下に記載のものなどが挙げられる。
<増幅条件>
・PCR装置:QuantStudio
TM 12K Flex Real-Time PCR System
・試薬:Applied Biosystems
TM TaqMan
TM Universal Master Mix II
・温度:
図24
【0334】
なお、上記第4実施態様においては、さらに、以下に説明する増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程を含んでいることが好ましい。
【0335】
<<増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程>>
増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程としては、例えば、増幅可能な試薬としての核酸以外のプライマー及び増幅試薬が入っているか否かの組合せを設けることができることを意味する。具体的には、あるウェルには(1)核酸、プライマー、及び増幅試薬の組成、他のウェルには(2)核酸及びプライマーの組成、更に他のウェルには(3)核酸のみの組成とする。(2)及び(3)の組成には、試薬組成物を調製する調製者が手技によりプライマー及び増幅試薬を加え、試薬組成物を調製し、PCR反応を行う。
増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程としては、手技ではなく機械で分注するにより行うことで、プライマー及び増幅試薬を正確に分注することができる。
これにより、デバイスは、例えば、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価することができる。
【実施例】
【0336】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0337】
(実施例1)
<デバイスの作製>
<<核酸試料の調製>>
-高濃度核酸試料希釈系列の作製-
高濃度核酸試料は、濃厚核酸試料としてDNA600-G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205-a)と、希釈溶媒としてUltraPure DNase/RNase-Free-Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977-015、以下、「NFW」という)とを用いて系列希釈試料を調製した。
系列希釈試料の濃度は、電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、BM-22)による濃厚溶液と希釈溶媒の重量計測に基づいて決定した。
【0338】
-低濃度核酸試料系列用酵母懸濁液の作製-
--遺伝子組換え酵母--
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。特定核酸配列は濃厚核酸試料 DNA600-G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205-a、配列番号1参照)とし、選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。なお、DNA600-Gには、DNA600-Gの製品情報として、核酸濃度に関する不確かさ情報を有している。
【0339】
---培養及び細胞周期制御---
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN-630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190-144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1-Mating Factor acetate salt(Sigma-Aldrich社製、T6901-5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次に、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR-23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。同調細胞の細胞周期の確認は、SYTOX Green Nucleic Acid Stain(装置名:S7020、Thermofisher社製)を用いて染色し、フローサイトメーター(装置名:SH800Z、ソニー株式会社製)を用いたフローサイトメトリーにて、励起波長488nmで、G0/G1期に同調していることを確認した。G1期の割合は99.5%、G2期の割合は0.5%であった。
【0340】
---固定化---
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO-50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。
得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062-01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより、固定化済みの酵母懸濁液を得た。
【0341】
---核染色---
固定化済みの酵母懸濁液は、固定化済み酵母懸濁液を200μL分取し、DPBSで1回洗浄した後、480μLのDPBSに再懸濁した。
次に、20μLの20mg/mL RNase A(株式会社ニッポンジーン製、318-06391)を添加後、バイオシェイカーを用いて37℃で2時間インキュベートした。
次に、25μLの20mg/mLプロテイナーゼK(タカラバイオ株式会社製、TKRー9034)を添加し、プチクール(ワケンビーテック株式会社製、プチクール MiniT-C)を用いて、50℃で2時間インキュベートした。
最後に、6μLの5mM SYTOX Green Nucleic Acid Stain(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、S7020)を加えて、遮光下で30分間染色した。
【0342】
---分散---
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1mL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、再度DPBS1mLに懸濁して酵母懸濁インクを得た。
【0343】
<<核酸試料の充填>>
-高濃度核酸試料希釈系列の充填-
高濃度核酸試料希釈系列は、マイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製、3120000011)により、充填容器(96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846-96-FS))の各ウェルに2.5μLずつ充填した。
【0344】
-分注酵母からの核酸抽出-
酵母からの核酸抽出は、充填容器を37℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁を溶解(核酸抽出)した後、95℃で2分間熱処理した。
【0345】
<<充填試料の値付け>>
-高濃度核酸試料系列の不確かさ算出-
充填された高濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定コピー数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因(1):DNA600-G原液の濃度に関する不確かさ
本核酸試料は、同位体希釈質量分析法(IDMS)による核酸塩基測定と、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によるりん測定によって、総核酸の質量分率が決定された不確かさが値付けされている。
要因(2):希釈溶媒及び濃厚核酸試料溶液の密度の不確かさ
要因(3):重量計測時の電子天秤の不確かさ
要因(4):ポアソン分布に基づく不確かさ
要因(5):核酸試料充填時のマイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製)の不確かさ
これらの要因の1つずつの不確かさを表4に示した。
不確かさの合成は、一般的な不確かさの合成手法により合成し、最終的に充填される特定コピー数水準の平均特定コピー数と不確かさを算出した。結果を表5に示した。
【0346】
【表4】
*表4中要因(3)の「x」は任意の計量値(重量)、要因(4)の「x」は分取した平均特定コピー数(平均充填コピー数)である。
【0347】
【表5】
*表5中の略号は、以下の内容である。
・2G:DNA600G原液の希釈液
・200M:2Gの希釈液
・20M:200Mの希釈液
・2M:20Mの希釈液
・200k:2Mの希釈液
・20k:200kの希釈液
・4k:20kの希釈液
・1k:4kの希釈液
・250:1kの希釈液
・70:250の希釈液
・NFW:UltraPure DNase/RNase-Free-Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977-015
表5の結果から、充填する核酸試料の平均核酸コピー数とその不確かさを値付けることができた。
【0348】
-各充填部位への不確かさの値付け-
上記「高濃度核酸試料系列の不確かさ算出」により算出された不確かさを各ウェルへ値付けした。
以上より、高濃度核酸試料系列の平均コピー数とその不確かさ算出し、各ウェルへの値付けをすることができた。
【0349】
低濃度核酸試料系列の充填においては、以下に示すようにインクジェット方式を用いてデバイスを作製することもできる。なお、酵母懸濁液の固定化までは、上述したものと同一の方法を用いたため、記載を省略する。
【0350】
-染色-
固定化済み酵母懸濁液を1.5mL遮光チューブ(ワトソン株式会社製、131-915BR)に500μL移し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、1mM EDTA(TOCRIS社製、200-449-4)となるように調製したDPBS(1mM EDTA)を400μL添加し、ピペッティングでよく懸濁した後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去することにより酵母ペレットを得た。得られたペレットに1mg/mLに調製したエバンスブルー水溶液(和光純薬工業株式会社製、054-04061)を1mL添加し、ボルテックスを用いて5分間撹拌後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBS(1mM EDTA)を添加し、ボルテックスで撹拌することにより染色済み酵母懸濁液を得た。
【0351】
-分散-
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1mL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、再度DPBS1mLに懸濁して酵母懸濁インクを得た。
【0352】
-分注及び細胞計測-
以下のようにして、液滴中の酵母菌の数を計数(カウント)して、各ウェルに特定コピー数として1、2、4、8、16、21、64、128細胞ずつ吐出して細胞数が既知のプレートを作製した。具体的には、
図47に示す液滴形成装置を用いて、96プレート(商品名:MicroAmp 96-well Reaction plate、Thermofisher社製)の各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE-532-200-KE)を用い、撮影した画像の粒子計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、細胞数の既知プレートを作製した。
【0353】
-核酸抽出-
Tris-EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312-00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665-55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、37.2℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、参照デバイスを作製した。
【0354】
次に、細胞数既知プレートから得られる結果の信頼性を考慮するために、特定コピー数の細胞をウェルに分注した細胞数既知プレートを製造し、1細胞数における不確かさを算出する。なお、特定コピー数毎に以下に示す方法を用いることにより、様々なコピー数における不確かさを算出することができる。
【0355】
-不確かさの算出-
本実施例では、不確かさの要因として、液滴中の細胞数、細胞中の増幅可能な試薬のコピー数、ウェル内の細胞数、コンタミネーションを用いた。
液滴中の細胞数は、吐出手段より吐出された液滴の画像を解析し計数した液滴中の細胞数と、吐出手段で吐出した液滴をスライドガラスに着弾させ着弾した液滴毎に顕微鏡観察し得られた細胞数とを用いた。
細胞中の核酸コピー数(細胞周期)は、細胞周期のG1期に該当する細胞の割合(99.5%)、G2期に該当する細胞の割合(0.5%)とを用いて算出した。
ウェル内の細胞数は、吐出した液滴がウェル内に着弾する数を計数したが、96サンプルの計数においてすべての液滴がウェル内に着弾していたため、ウェル内の細胞数の要因は不確かさの計算から除外した。
コンタミネーションは、インクのろ液4μLをリアルタイムPCRで細胞中の増幅可能な試薬以外の核酸がインク液中に混入していないか3回の試行を行い確認した。その結果、3回すべてにおいて検出下限値となったため、コンタミネーションの要因についても不確かさの掲載から除外した。
不確かさは各要因の測定値から標準偏差を求め、感度係数を乗じて測定量の単位に統一した標準不確かさを平方和法により合成標準不確かさを求める。合成標準不確かさでは、正規分布の約68%の範囲の値しか含まれないため、合成標準不確かさを2倍した拡張不確かさとすることにより正規分布の約95%の範囲を考慮した不確かさを得ることができる。下記表8のバジェットシートに結果を示す。
【0356】
【0357】
表8中、「記号」とは、不確かさの要因に対応付けた任意の記号を意味する。
表8中、「値(±)」とは、平均値の実験標準偏差であり、算出した実験標準偏差をデータの数の平方根の値で除したものである。
表8中、「確率分布」とは、不確かさの要因がもつ確率分布であり、Aタイプの不確かさ評価の場合には空欄とし、Bタイプの不確かさ評価には、正規分布又は矩形分布のいずれかを記入する。本実施例においてはAタイプの不確かさ評価のみを行っているため、確率分布の欄は空欄となっている。
表8中、「除数」とは、それぞれ要因から得られる不確かさを正規化する数を意味する。
表8中、「標準不確かさ」とは「値(±)」を「除数」で除した値である。
表8中、「感度係数」とは、測定量の単位に統一するために用いられる値を意味する。
【0358】
次に、ウェルに充填した核酸試料の平均特定コピー数及び不確かさを算出した。結果を表9に示す。変動係数CV値は不確かさの値を平均特定コピー数で除することにより算出した。
【0359】
【0360】
インクジェット方式において、特定コピー数が1、即ち、1コピーの核酸試料(1つの酵母)をウェルに分注する精度は、±0.1281コピーであることが得られた。ウェルに1コピー以上を充填する場合には、特定コピー数の核酸試料が充填される精度は、この精度の積み重ねにより決定される
【0361】
以上の結果から、得られた拡張不確かさを測定のばらつきの指標として、デバイスのデータとして記憶させることで、実験で使用する者が不確かさの指標をウェル毎の測定結果の信頼性の判断基準として用いることができる。上記の信頼性の判断基準を用いることにより、分析検査の性能評価を高精度に行うことができる。
【0362】
<作製したデバイスにおけるCt値の確認>
次に、0.2mL、96穴プレートに上記方法で作製したデバイスを用いて、表10に示す試薬の組成を分注し、PCR装置(A社の機種a1及びa2、B社の機種b1、C社の機種c1)のそれぞれの性能を
図55に示す条件でqPCRを行い、表11に示す各機種のCt値管理表に従って、正常かどうかの性能評価を実施し、評価した。結果を表12に示す。
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
性能評価プレートは、同程度の細胞数が配置されており、各機種で定められるCt値管理表に従い、正常かどうかの性能評価を実施した。
本管理表に従い、判定するとC社の機種c1のみ不合格となった。
【0367】
(実施例2)
<検体の検出判定1>
上記のようにして作製した、増幅可能な試薬である核酸が充填された試料充填用ウェルに、試料を充填した。その後、検査対象である核酸と増幅可能な試薬である核酸とを同一のウェル内で、PCR法による増幅反応に供した。
増幅可能な試薬の増幅結果、及び検査対象の増幅結果をもとに、上述した検出結果取得部、及び検出結果分析部を経て、判定部にて、検査対象の存在の有無を判定した。下記(1)に該当した場合、「陽性」と、下記(2)に該当した場合、「陰性」と判定した。
(1)増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合、検査対象は存在、検出結果は陽性である、
(2)増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性である。
【0368】
<検体の検出判定2>
<<貝に含まれるノロウイルス否定試験>>
貝に含まれているノロウイルスを検査する方法を実施例として下記に示す。
まず、貝の外套膜を切り取り、中腸線についた脂肪部分を丁寧に取り除いた。ホモジナイザー用のサンプリングバッグに中腸線を入れ、7倍~10倍のPBS(-)を加えて粉砕した。粉砕した試料を10,000rpm,20分間冷却遠心した。超遠心用遠心管に30質量%ショ糖溶液を遠心管量の10質量%程度入れ、それに冷却遠心済みの試料の上清を静かに重層させ、35,000rpm、180分間で冷却遠心した。アスピレーターで液相を吸引した後、管壁をPBS(-)で軽く洗った。沈渣に200μLのDDWを加え、浮遊させた。これをウイルスRNA抽出に用いる試料とした。
次に、Super Script II(Invitrogen)を用いて逆転写反応を行った。試料7.5μL、5X SSII Buffer 2.25μL、10mM dNTPs 0.75μL、Random Primer(1.0μg/μL)0.375μL、Ribonuclease Inhibitor(33unit/μL)0.5μL、100mM DTT 0.75μL、Super Script II RT(200unit/μL)0.75μL、Distilled water 2.125μL、合計15μLの反応液を調製した。反応は42℃で1時間インキュベートした。次いで、99℃で5分間加熱し、酵素を失活させた。その後、氷上に静置した。
【0369】
上記実施例1と同様にして作製した、増幅可能な試薬である核酸が充填された試料充填用ウェルに、逆転写反応まで終えた試料を5.0μL充填した。その後、検査対象である核酸と増幅可能な試薬である核酸とを同一のウェル内で、PCR法による増幅反応に供した。反応液の組成は、Distilled water 33.75μL、10x Ex TaqTM buffer 5.0μL、dNTP(2.5mM)4.0μL、NVプライマーF(50μM)0.5μL、NVプライマーR(50μM)0.5μL、増幅可能な試薬である核酸を増幅するプライマーF(50μM)0.5μL、増幅可能な試薬である核酸を増幅するプライマーR(50μM)0.5μL、cDNA(試料)5.0μL、Ex Taq(5unit/μL)0.25μL、合計50μLであった。
増幅可能な試薬の増幅はT100TM Thermal Cycler(Bio-rad社)を用い、PCRで行った。まず、50℃で2分間、次いで、95℃で10分間のインキュベートを行った。その後、95℃で30秒間、61℃で2分間の2ステップからなる35回の温度サイクルを行った。最後に61℃で2分間インキュベートした後、4℃まで冷却し、反応を終了させた。
結果の確認はMother E-BaseTM Device(InvitrogenTM)とE-GelTM 48 Agarose Gels, 4%(InvitrogenTM)を用いてアガロース電気泳動を行った。泳動は100Vで20分間行った。
上記により得られた検査対象の増幅結果をもとに、検査対象の存在の有無を判定した。下記(1)に該当した場合、「陽性」と、下記(2)に該当した場合、「陰性」と判定した。
(1)増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合、検査対象は存在、検出結果は陽性である、
(2)増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性である。
【0370】
本実施例においては、96穴プレートに(1)インクジェット法(IJ)で1ウェルあたり600G酵母を10細胞(コピー)ずつ充填し、そこにノロウイルスが含まれるサンプルを添加したもの(本発明の実施例)、(2)ノロウイルスが含まれるサンプルのみ、(3)600Gプラスミドを希釈し、それを96穴プレートの1ウェルあたり10コピー相当の容量を手技により分注し、そこにノロウイルスが含まれるサンプルを添加したもの(IJに対する比較例)を用意した。
【0371】
図56Aは、実施例2の貝に含まれるノロウイルス否定試験において、(1)IJで600G酵母を10細胞(コピー)打ち、そこにノロウイルスが含まれるサンプルを添加したもの(本発明の実施)のサンプルをPCRで増幅した後にアガロース電気泳動した結果を示す図である。
図56Bは、(2)ノロウイルスが含まれるサンプルのみをPCRで増幅した後にアガロース電気泳動した結果を示す図である。
図56Cは、実施例2の貝に含まれるノロウイルス否定試験において、(3)600Gプラスミドを希釈し、それを1ウェルあたり10コピー相当の容量を手技により分注し、そこにノロウイルスが含まれるサンプルを添加した(IJに対する比較例)それぞれのサンプルをPCRで増幅した後にアガロース電気泳動した結果を示す図である。
(1)では、
図56Aから
図56Cに示すように、600Gの増幅産物(105bp、上段)とNoro GIの増幅産物(85bp、下段)の両者が二本のバンドで見て取れる。
(2)では、
図56Aから
図56Cに示すように、Noro GIの増幅産物(85bp)のみがバンドとしてみられる。16番目のサンプルはバンドが見られず陰性であるが、検査対象であるNoro GIが実際、検体試料中には存在していない、即ち陰性との判定が正しいのか、それともNoro GIが実際には存在するが判別できず存在しない(陰性である)と誤って判断された、即ち偽陰性であるのか、確定できない。
(3)は、
図56Aから
図56Cに示すように、希釈により作製した陽性対照サンプルを用いて本発明の判定方法を試みたものであるが、16番目のサンプルにおいて陽性対照サンプルである600Gの増幅産物(105bp)のバンドが見られなかった。これは希釈によるばらつきにおいて陽性対照サンプル自身が偽陰性となってしまった実施例である。本発明の判定方法を実施するためには本発明で示した高い充填精度を持つことが好ましいことを意味する。
【0372】
(実施例3)
<ノロウイルス検出用デバイスの作製>
以下のようにして、デバイスを作製した。デバイスにおいて、1ウェルあたり1×10
3コピー数超の核酸を有する高濃度核酸試料希釈系列(1×10
4コピー/ウェル、及び1×10
5コピー数/ウェル)と、1ウェルあたり1×10
3コピー数以下の核酸を有する低濃度核酸試料希釈系列(1×10
0コピー数/ウェル、1×10
1コピー数/ウェル、1×10
2コピー数/ウェル、及び1×10
3コピー数/ウェル)とを調製した。調製した各核酸希釈系列を
図57に示す位置でデバイス上に配置した。
【0373】
-高濃度核酸試料希釈系列の作製-
実施例1において、使用した参照用の核酸試料をDNA600-GからGI型のノロウイルスゲノムの一部の配列(合成メーカー:株式会社ファスマック、配列番号4参照)を選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように人工合成(合成メーカー:株式会社ファスマック)した配列を、濃度をデジタルPCR(装置名:QX200TM AutoDGTM Droplet DigitalTM PCR システム、Bio-Rad社製)で濃度を測定し、所望の濃度(1×104コピー数/ウェル及び1×105コピーコピー数/ウェル)に段階希釈を行って調製した以外は、実施例1と同様にして、高濃度核酸試料希釈系列を作製した。なお、本実施例では特定核酸配列としてGI型のノロウイルスゲノムの一部の配列のみを使用したが、その他の特定核酸配列を各ウェルに配して1プレート(デバイス)上で同時に複数の検体に対して検査を行うこともできる。
【0374】
-低濃度核酸試料希釈系列の作製-
--遺伝子組換え酵母--
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。
特定核酸配列は、GI型のノロウイルスゲノムの一部の配列(合成メーカー:株式会社ファスマック、配列番号4参照)と選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。なお、本実施例では特定核酸配列としてGI型のノロウイルスゲノムの一部の配列のみを使用したが、その他の特定核酸配列を各ウェルに配して1プレート(デバイス)上で同時に複数の検体に対して検査を行うこともできる。
【0375】
--培養及び細胞周期制御--
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN-630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190-144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1-Mating Factor acetate salt(Sigma-Aldrich社製、T6901-5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次いで、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR-23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。
【0376】
-固定化-
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO-50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。
得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062-01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより、固定化済みの酵母懸濁液を得た。
【0377】
-核染色-
固定化済みの酵母懸濁液は、固定化済み酵母懸濁液を200μL分取し、DPBSで1回洗浄した後、480μLのDPBSに再懸濁した。
次に、20μLの20mg/mL RNase A(株式会社ニッポンジーン製、318-06391)を添加後、バイオシェイカーを用いて37℃で2時間インキュベートした。
次に、25μLの20mg/mLプロテイナーゼK(タカラバイオ株式会社製、TKRー9034)を添加し、プチクール(ワケンビーテック株式会社製、プチクール MiniT-C)を用いて、50℃で2時間インキュベートした。
最後に、6μLの5mM SYTOX Green Nucleic Acid Stain(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、S7020)を加えて、遮光下で30分間染色した。
【0378】
-分散-
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理して、酵母懸濁インクを得た。
【0379】
<核酸試料の充填>
【0380】
-低濃度核酸試料希釈系列の充填-
--酵母懸濁液の個数計測分注--
低濃度の核酸試料系列は、充填容器(96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846-96-FS))に予め細胞壁溶解用の溶解液を各ウェルに4μLずつ充填した後に、以下のようにして、液滴中の酵母菌の数を計数(カウント)して、各ウェルに1細胞ずつ吐出して細胞数が既知のプレートを作製した。具体的には、
図47に示す液滴形成装置を用いて、96プレート(商品名:MicroAmp 96-well Reaction plate、Thermofisher社製)の各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては、高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE-532-200-KE)を用い、撮影した画像の粒子計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、1細胞数の既知プレートを作製した。
【0381】
-核酸抽出-
Tris-EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312-00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665-55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、372℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、デバイスを作製した。
【0382】
<検量線の作成>
作製したデバイスについて、下記に示す組成のPCR反応液を1ウェルあたり16μL添加した。
[PCR反応液(Cocktail)]
・TaqMan 2×Universal PCR Master Mix*1
:10μL
・Foward primer(10μM) :1μL
・Reverse primer(10μM) :1μL
・TaqMan probe*2 :2μL
・DW :2μL
計(1ウェルあたり)16μL
*1:Thermo Fisher Scientific Inc.社製
*2:5’FAM, 3’TAMRAで修飾
なお、プライマー・プローブ配列は、厚生労働省 医薬食品局 食品安全部 監視安全課より通知された「ノロウイルスの検出法について」(平成15年11月5日付け食安監発1105001号別添)(最終改正:平成25年10月22日付け食安監発1022第1号)(以下「公定法」と記載する)と同じ塩基配列のGI検出用プライマーならびにプローブを使用している。
【0383】
次に、調製したデバイスを以下の条件で定量的PCR反応と測定を行った。反応と測定はThermo Fisher Scientific Inc.社製のQuantStudio5にて行った。
[反応条件]
-pre heat-
・50℃ 2分間
・95℃ 10分間
-cycle-(50cycle)
・95℃ 30秒間
・61℃ 1分間
【0384】
結果は、Baseline Thresholdを定めず、Autoの設定で解析を行った。結果を
図58に示す。
【0385】
本願発明のデバイスでは、103コピー数/ウェル以下の濃度を、インクジェット方式で個数をカウントしながら細胞を分注することで、1コピー数まで正確にウェルに収容することができ、10コピー数以下の所望の濃度でも、10コピー数以上の所望の濃度の場合と同じ検量線に載っていることを確認することができた。
【0386】
(比較例3-1)
次に、市販のノロウイルス定量キット(東洋紡株式会社製、ノロウイルス定量キット(G1/G2、原液:2×106コピー数/μL)のGI型の核酸と添付のコントロール希釈液(以下、希釈液と称することがある)を用いて、下記のように段階希釈した以外は、実施例と同様にして検量線を作成した。なお、このノロウイルス定量キットでは、GI及びGIIの濃度コントロールが、DNAの状態で2x106コピー/μLで提供されている。
[ノロウイルス定量キットの段階希釈]
1:2×106コピー数/μL (原液)
2:2×105コピー数/μL (1の溶液:3μL+希釈液:27μL)
3:2×104コピー数/μL (2の溶液:3μL+希釈液:27μL)
4:2×103コピー数/μL (3の溶液:3μL+希釈液:27μL)
5:2×102コピー数/μL (4の溶液:3μL+希釈液:27μL)
6:2×101コピー数/μL (5の溶液:3μL+希釈液:27μL)
7:2×100コピー数/μL (6の溶液:3μL+希釈液:27μL)
8:2×10-1コピー数/μL (7の溶液:3μL+希釈液:27μL)
【0387】
調製した希釈液1~8をそれぞれ、ノロウイルス定量キットに付属の試薬(反応液、酵素液、希釈液)を用いて、下記に示す組成のPCR反応液を調製した。PCR反応液は、1種類の希釈液に対して3サンプルずつ作成した。
[PCR反応液]
・反応液 :10μL
・酵素液 :5μL
・プライマー液*3 :2.5μL
・プローブ液*3 :2.5μL
・希釈液 :5μL
計(1ウェルあたり)25μL
*3:プライマー液及びプローブ液は、実施例にて用いたものと同様のものを用いた。
【0388】
なお、上記希釈液1~8のPCR反応液中の理論上の核酸のコピー数は表13のようになる。
【表13】
【0389】
次に、調製したノロウイルス核酸の希釈液を以下の条件で定量的PCR反応と測定を行った。反応と測定はBio-Rad社製のCFX96 TouchTM Deep Wellにて行った。
[反応条件]
・逆転写反応:50℃ 5分間
・プレ変性 :95℃ 30秒間
-cycle-(40cycle)
・変性 :95℃ 5秒間
・会合・伸長:54℃ 30秒間(検出)
【0390】
結果は、Baseline ThresholdのUser Definedを20.0に設定した上で解析した。結果を
図59に示す。
【0391】
比較例の結果より、各希釈系列(濃度)において、結果はそれほど大きくはばらついていないが、1コピーの場合において、測定不能であり、実施には増幅が認められなかった。そのため、比較例では、10コピー以下の濃度では、検量線が、10コピー以上の検量線と同じ直線上にあるのか否かが判断できなかった。
【0392】
実施例と比較例とから、比較例では、サンプル数を3つずつ(N=3)使用していたのに対し、本発明のデバイスにかかる実施例はN=8で解析したが、本発明のデバイスから得られたばらつきは小さいことがわかった。
【0393】
以上の結果から、本発明のデバイスから得られる検量線では、比較例に係る市販キットでは出せない1コピーでのCt値が出るために、10コピー以下の検量線が信頼性を持って作成できることがわかった。実施例及び比較例では、同じプライマー及び同じプローブで実施しているため、両者とも1コピーを増やす性能がある測定系を同じように使用している。それにもかかわらず、市販キットでだけ1コピーが増幅できなくなっているのは、市販キットの希釈系列の1コピー/5μLの中に、ターゲットの核酸分子が含まれていないということが考えられる。即ち、希釈を繰り返す各段階で生じる濃度の誤差が積り積もって、極低コピー領域の濃度が想定した濃度(所望の核酸濃度)から外れてしまったと言える。一方、本発明のインクジェット方式によって個数をカウントしながら分注コピー数を規定する方式では、1コピーを分注することが可能なので、たとえN=8で試験しても、全て陽性となり、正確度の高いCt値を得ることができる。
このように、本発明を使用することで、定量的PCRの1反応中に10コピー以下のターゲットが添加された場合に、試験が適当であったのか否かを判断できる。また、ノロウイルスのように極微量の病原体の混入も見逃したくない検査には有効な精度管理ツールとして使用することができる。なお、本実施例では特定核酸配列としてGI型のノロウイルスゲノムの一部の配列のみを使用したが、その他の特定核酸配列を各ウェルに配して1プレート(デバイス)上で同時に複数の検体に対して検査を行うこともできる。
【0394】
(実施例4)
実施例1において、1ウェル当たりに分注する細胞数を10細胞に変更した以外は上述したものと同様の方法を用いて細胞数が既知のデバイス(プレート)を作製した。
【0395】
作製したプレートに対して、
図60に示すプロトコールにしたがってリアルタイムPCRにより増幅及び検出を行った。リアルタイムPCRで測定するために、まず、(1)添加済み群(
図61中、1~4列目、組成:核酸、プライマー、増幅試薬)、(2)プライマーを添加する群(
図61中、5~8列目、組成:核酸、増幅試薬)、(3)プライマー及び増幅試薬を添加する群(
図61中、9~12列目、組成:核酸)の組成となるように、手技によりプライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを添加する。ただし、
図61中「0」はネガティブコントロールであり、核酸を含まないウェルを表す。
増幅試薬の組成としては、以下の通りである。
・マスターミックス(Thermo Fisher社製、TaqMan Universal PCR Master Mix):1μL
・特定の塩基配列を増幅するためのフォワードプライマー及びリバースプライマー(10μM):0.5nmol
・TaqMan Probe(Thermo Fisher Scientific社製、製品名:Taqman Universal PCR Master Mix):0.4nmol
・酵母細胞壁溶解酵素(MCフードスペシャリティーズ株式会社製、製品名:Zymolyase):4μL
・NFW(Thermo Fisher Scientific社製、製品名:UltraPure DNase/RNase-Free Distilled Water):2μL
プレートの調製後、リアルタイムPCR装置(Thermo Fisher社製、QuantStudio 7Flex)を用いて増幅及び検出を行った。結果を
図62~
図64に示す。
【0396】
図62は、
図61に示すプレートにおける各ウェルにおけるCt値の情報を示す図である。
図63は、
図62から得られた(1)~(3)それぞれの組成におけるCt値の平均値と標準偏差を示す図である。
図64は、
図62から得られたCt値の情報に基づいて作製したCt値の正規分布曲線を示す図である。
図62~
図64の結果より、(1)及び(2)の組成に比べて、調製者によりプライマー及び増幅試薬を添加した(3)の組成においてCt値の平均値及び標準偏差が大きいことがわかった。これにより、本発明のデバイスを用いることにより、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価できることがわかった。
【0397】
実施例1~4に示すとおり、デバイスにおいてウェル内に配した核酸の数(コピー数)が、所望の数に限りなく高い精度で正確に配置されていることにより、検体、特にノロウイルスの偽陰性判定、調製者の技能評価、検査装置の性能評価などを正確に行うことができる。これらの実施例を組合せてより精度の高い検体、特にノロウイルスの偽陰性判定、調製者の技能評価、検査装置の性能評価など行うことも可能である。
【0398】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<A1> 試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に、
前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅される場合には、前記検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅されない場合には、前記検査対象は不存在又は少なくとも前記増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を、含む検出判定方法に用いられ、
少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内の前記増幅可能な試薬が特定コピー数であることを特徴とする検出判定用デバイスである。
<A2> 前記特定コピー数に関する情報を有し、
前記特定コピー数に関する情報が、前記特定コピー数の不確かさの情報及び前記特定コピー数の変動係数CVの少なくともいずれかである前記<A1>に記載の検出判定用デバイスである。
<A3> 前記増幅可能な試薬が、ノロウイルスゲノムの塩基配列の一部の核酸である前記<A1>から<A2>のいずれかに記載の検出判定用デバイスである。
<A4> 前記ウェル内の組成が異なる前記ウェルの群を2以上有する前記<A1>から<A3>のいずれかに記載の検出判定用デバイスである。
<A5> 前記特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有する、
又は、
前記幅可能な試薬を前記特定コピー数で配した前記ウェルの群であって、
前記増幅可能な試薬の前記特定コピー数を互いに異ならせた前記ウェルの群を2以上有する前記<A4>に記載の検出判定用デバイスである。
<B1> 少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内の増幅可能な試薬が特定コピー数含まれることを特徴とするデバイスである。
<B2> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数に関する情報を有する前記<B1>に記載のデバイスである。
<B3> 前記特定コピー数に関する情報として不確かさの情報を有し、
前記不確かさの情報が、前記増幅可能な試薬の変動係数CVの情報を含み
前記変動係数CVが、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとの関係式、CV<1/√xを満たす前記<2>のいずれかに記載のデバイスである。
<B4> 前記増幅可能な試薬を含むウェルが複数存在し、かつ各前記ウェル内に含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数が同一である前記<1>から<3>のいずれかに記載のデバイスである。
<B5> 前記増幅可能な試薬を含むウェルが複数存在し、前記ウェルに含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数に基づく、デバイス全体としての不確かさの情報を有する前記<B1>から<B4>のいずれかに記載のデバイスである。
<B6> 前記特定コピー数が、1コピー以上1,000コピー以下である前記<B1>から<B5>のいずれかに記載のデバイスである。
<B7> 前記特定コピー数に関する情報を識別するための識別手段をさらに有する前記<B1>から<B6>のいずれかに記載のデバイスである。
<B8> 前記増幅可能な試薬が担体に内包されている前記<B1>から<B7>のいずれかに記載のデバイスである。
<B9> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<B1>から<B8>のいずれかに記載のデバイスである。
<B10> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<B9>に記載のデバイスである。
<B11> 前記ウェル内に、さらにプライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含む前記<B1>から<B10>のいずれかに記載のデバイスである。
<B12> PCR装置の精度評価に用いられる前記<1>から<11>のいずれかに記載のデバイスである。
<B13> 少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内に増幅可能な試薬を含むデバイスであって、
前記増幅可能な試薬を、規定の増幅条件で増幅した際に、Ct値が30以上であるウェルにおける標準偏差σが3以下であるデバイスである。
<B14> 少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内に増幅可能な試薬が含まれるデバイスであって、
前記増幅可能な試薬の数に関する情報を有するデバイスである。
<B15> 前記数に関する情報として不確かさの情報を有する前記<B14>に記載のデバイスである。
<B16> 前記<B1>から<B15>のいずれかに記載のデバイスを用いる検査方法である。
<C1> 試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に用いる検出判定方法であって、
前記増幅可能な試薬は、200以下の特定コピー数であり、
増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅される場合には、検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、
増幅可能な試薬が増幅され、かつ検査対象が増幅されない場合には、検査対象は不存在又は少なくとも増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を、
含むことを特徴とする検出判定方法である。
<C2> 前記増幅可能な試薬が、核酸である前記<C1>に記載の検出判定方法である。
<C3> 前記増幅可能な試薬である核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<C2>に記載の検出判定方法である。
<C4> 前記細胞が酵母である前記<3>に記載の検出判定方法である。
<C5> 前記検査対象の検出限界と前記増幅可能な試薬の検出限界が同等である前記<C1>から<C4>のいずれかに記載の検出判定方法である。
<C6> 試料を充填する試料充填用ウェルの中に前記増幅可能な試薬を充填し、前記検査対象、及び前記増幅可能な試薬を同じ試料充填用ウェルの中で増幅する前記<C1>から<C5>のいずれかに記載の検出判定方法である。
<C7> 前記検査対象の塩基配列と、前記増幅可能な試薬の塩基配列とは異なるものである前記<C2>から<C6>のいずれかに記載の検出判定方法である。
<C8> 前記試料充填用ウェルとは別のウェルに、前記検査対象の塩基配列と同じ塩基配列のポジティブコントロールを所定量充填し、増幅処理に供する前記<7>に記載の検出判定方法である。
<C9> ウイルス、細菌、又は食肉の動物種判定を検査対象とする遺伝学的検査である前記<C8>に記載の検出判定方法である。
<C10> 前記増幅可能な試薬の前記特定コピー数が、既知の数である前記<C1>から<C9>のいずれかに記載の検出判定方法である。
<C11> 試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に用いる検出判定装置であって、
前記増幅可能な試薬は、200以下の特定コピー数であり、
前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅される場合には、前記検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅されない場合には、前記検査対象は不存在又は少なくとも前記増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、判定手段を、
有することを特徴とする検出判定装置である。
<C12> 試料中の検査対象、及び増幅可能な試薬を、増幅することにより、検査対象を検出する際に用いる検出判定プログラムであって、
前記増幅可能な試薬は、200以下の特定コピー数であり、
前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅される場合には、前記検査対象は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記増幅可能な試薬が増幅され、かつ前記検査対象が増幅されない場合には、前記検査対象は不存在又は少なくとも前記増幅可能な試薬の特定コピー数未満であり、検出結果は陰性であると判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする検出判定プログラムである。
<C13> 前記<C1>から<C10>のいずれかに記載の検出判定方法に用いられるデバイスであって、
試料を充填する少なくとも1つの試料充填用ウェルを有し、
前記試料充填用ウェルが特定コピー数の増幅可能な試薬を更に含み、
前記増幅可能な試薬の特定コピー数が200以下であることを特徴とするデバイスである。
<C14> 前記特定コピー数である場合の変動係数CVと、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとの関係が、次式、CV<1/√xを満たす前記<C13>に記載のデバイスである。
<C15> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以下である前記<C13>から<C14>のいずれかに記載のデバイスである。
<C16> 前記試料充填用ウェルが、前記増幅可能な試薬の特定コピー数及び前記増幅可能な試薬の特定コピー数の不確かさ情報を有する前記<13>から<15>のいずれかに記載のデバイスである。
<C17> 前記試料充填用ウェルの開口部を密閉する密閉部材を有する前記<C13>から<C16>のいずれかに記載のデバイスである。
<C18> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<C13>から<C17>のいずれかに記載のデバイスである。
<C19> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<C18>に記載のデバイスである。
<C20> 前記細胞が酵母である前記<C19>に記載のデバイスである。
<C21> 前記検査対象の塩基配列と、前記増幅可能な試薬の塩基配列とは異なるものである前記<C18>から<C20>のいずれかに記載のデバイスである。
<C22> 前記試料充填用ウェルが、前記検査対象を増幅するプライマー対、及び前記増幅可能な試薬を増幅するプライマー対を有する前記<C13>から<C21>のいずれかに記載のデバイスである。
<C23> 前記<C1>から<C10>のいずれかに記載の検出判定方法に使用することを特徴とするデバイスである。
<D1> 増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満である増幅可能な試薬を含むウェルと、
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上である増幅可能な試薬を含むウェルと、をそれぞれ少なくとも1つ以上有し、
前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たすことを特徴とするデバイスである。
<D2> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値が20%以下である前記<D1>に記載のデバイスである。
<D3> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値が10%以下である前記<D1>から<D2>のいずれかに記載のデバイスである。
<D4> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であって、前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV>1/√xを満たす前記<D1>から<D3>のいずれかに記載のデバイスである。
<D5> 前記ウェルに充填される前記増幅可能な試薬の特定コピー数が2水準以上である前記<D1>から<D4>のいずれかに記載のデバイスである。
<D6> 更に、前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬が特定コピー数である場合の前記特定コピー数における不確かさの情報を有する前記<D1>から<D5>のいずれかに記載のデバイスである。
<D7> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値の情報、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値の情報、及び前記特定コピー数における不確かさの情報の少なくともいずれかを識別可能な識別手段を有する前記<D6>に記載のデバイスである。
<D8> 前記ウェルの開口部を密閉する密閉部材を有する前記<D1>から<D7>のいずれかに記載のデバイスである。
<D9> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<D8>に記載のデバイスである。
<D10> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<D9>に記載のデバイスである。
<D11> 前記細胞が酵母である前記<10>に記載のデバイスである。
<D12> 前記ウェルが、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを有する前記<D1>から<D11>のいずれかに記載のデバイスである。
<D13> 前記ウェルが複数であって、
前記各ウェル内の核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさを各ウェル毎の情報として有する前記<D6>から<D12>のいずれかに記載のデバイスである。
<D14> 前記ウェルが保持される基材を有し、前記識別手段は、前記密閉部材と前記基材との間に配置される前記<D8>から<D13>のいずれかに記載のデバイスである。
<D15> 核酸を増幅可能なPCR装置の評価に用いられるデバイスであって、
少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内の核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさの情報を有することを特徴とするデバイスである。
<D16> 前記デバイスによる核酸増幅の結果と、前記核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさの情報とを、前記PCR装置の管理に用いる前記<D15>に記載のデバイスである。
<E1> 少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェルが特定s数のノロウイルスの核酸を含み、
前記ノロウイルスの核酸の特定コピー数が1,000以下であることを特徴とするデバイスである。
<E2> 前記ノロウイルスの核酸が、担体に含まれている前記<E1>に記載のデバイスである。
<E3> 前記担体が、細胞、ファージ、及びウイルスのいずれかである前記<E2>に記載のデバイスである。
<E4> 前記細胞が、酵母、動物、及び植物のいずれかである前記<E3>に記載のデバイスである。
<E5> 前記ノロウイルスが、GI型を発現する核酸、及びGII型を発現する核酸の少なくともいずれかを含む前記<E1>から<E4>のいずれかに記載のデバイスである。
<E6> 前記ノロウイルスの核酸が、配列番号8、9、10、及び11のいずれか2以上の塩基配列を含み、
全長が50塩基以上の塩基配列を有する前記<E1>から<E5>のいずれかに記載のデバイスである。
<E7> 前記ノロウイルスの核酸が、
配列番号4の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列、及び、
配列番号5の塩基配列に対し相同性が80%以上である塩基配列の少なくともいずれかの塩基配列を含む、前記<E1>から<E6>のいずれかに記載のデバイスである。
<E8> 前記ノロウイルスの核酸が、
(i)配列番号4の塩基配列と、5’末端側、又は3’末端側に1,000塩基以下の任意の長さの塩基配列とを含む塩基配列X、及び前記塩基配列Xに対し相同性が80%以上である塩基配列、並びに、
(ii)配列番号5の塩基配列と、5’末端側、又は3’末端側に1,000塩基以下の任意の長さの塩基配列とを含む塩基配列Y、及び前記塩基配列Yに対し相同性が80%以上である塩基配列、
の少なくともいずれかの塩基配列を含む、前記<E1>から<E6>のいずれかに記載のデバイスである。
<E9> 前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む前記ウェルが、
プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを有する前記<E1>から<E8>のいずれかに記載のデバイスである。
<E10> 前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む前記ウェルの開口部を密閉する密閉部材を有する前記<1>から<9>のいずれかに記載のデバイスである。
<E11> 前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む前記ウェルの数が2以上であり、
一の前記ウェルにおける前記ノロウイルスの核酸の特定コピー数と、
他の前記ウェルにおける前記ノロウイルスの核酸の特定コピー数とが異なる前記<E1>から<E10>のいずれかに記載のデバイスである。
<E12> 前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む前記ウェルとは異なるウェルであって、検査対象のノロウイルスの核酸が配されるウェルが、
前記検査対象のノロウイルスの核酸とは異なる増幅可能な試薬を含む前記<E1>から<E11>のいずれかに記載のデバイスである。
<E13> 前記ノロウイルスの核酸の前記特定コピー数が、既知の数である請求項1から12のいずれかに記載のデバイスである。
<E14> 前記<E1>から<E13>のいずれかに記載のデバイスを用い、検査対象のノロウイルスの核酸、及び特定コピー数のノロウイルスの核酸を、増幅反応に供することにより、検査対象のノロウイルスの核酸を検出することを特徴とするノロウイルスの検査方法である。
<E15> 前記特定コピー数のノロウイルスの核酸、及び前記検査対象のノロウイルスの核酸のいずれも増幅される場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸が増幅され、前記検査対象のノロウイルスの核酸が増幅されない場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は不存在または検出限界以下であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を含む前記<E14>に記載のノロウイルスの検査方法である。
<E16> 前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含むウェルとは異なるウェルであって、検査対象のノロウイルスの核酸が配されるウェルに対し、前記検査対象のノロウイルスの核酸とは異なる増幅可能な試薬を充填し、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸、前記検査対象のノロウイルスの核酸、及び前記増幅可能な試薬を、増幅反応に供することにより、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸、前記増幅可能な試薬、及び前記検査対象のノロウイルスの核酸のいずれも増幅される場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸、及び前記増幅可能な試薬が増幅され、前記検査対象のノロウイルスの核酸が増幅されない場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は不存在または検出限界以下であり、検出結果は陰性であると判定する、判定工程を含む前記<E14>から<E15>のいずれかに記載のノロウイルスの検査方法である。
<E17> 前記デバイスにおける、前記特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む前記ウェルが、所定の特定コピー数のノロウイルスの核酸を含む一のウェルと、前記一のウェルにおける特定コピー数と異なる特定コピー数の前記ノロウイルスの核酸を含む他のウェルとを含み、
特定コピー数が異なる前記一のウェル及び前記他のウェルにおける前記ノロウイルスの核酸と、前記検査対象のノロウイルスの核酸とを増幅反応に供することにより、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸の増幅結果と、前記検査対象のノロウイルスの核酸の増幅結果とを比較することにより、前記検査対象のノロウイルスの核酸の量を判定する前記<E14>から<E16>のいずれかに記載のノロウイルスの検査方法である。
<E18> 特定コピー数のノロウイルスの核酸、及び試料中の検査対象のノロウイルスの核酸を増幅反応に供することにより、検査対象のノロウイルスを検出する際に用いるノロウイルスの検査プログラムであって、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸、及び前記検査対象のノロウイルスの核酸のいずれも増幅される場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸が増幅され、前記検査対象のノロウイルスの核酸が増幅されない場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は不存在または検出限界以下であり、検出結果は陰性であると判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするノロウイルスの検査プログラムである。
<E19> 特定コピー数のノロウイルスの核酸、及び試料中の検査対象のノロウイルスの核酸を増幅反応に供することにより、検査対象のノロウイルスを検出する際に用いるノロウイルスの検査装置であって、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸、及び前記検査対象のノロウイルスの核酸のいずれも増幅される場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は存在、検出結果は陽性であると判定し、
前記特定コピー数のノロウイルスの核酸が増幅され、前記検査対象のノロウイルスの核酸が増幅されない場合には、前記検査対象のノロウイルスの核酸は不存在または検出限界以下であり、検出結果は陰性であると判定する、判定手段を、
有することを特徴とするノロウイルスの検査装置である。
<F1> 複数のウェルを有し、
前記ウェル内の組成が異なる前記ウェルの群を2以上有することを特徴とするデバイスである。
<F2> 複数のウェルを有し、
特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有することを特徴とするデバイスである。
<F3> 前記特定コピー数が互いに異なる群を有する前記<F2>に記載のデバイスである。
<F4> 複数のウェルを有し、
増幅可能な試薬を特定のコピー数で配した前記ウェルの群であって、
前記増幅可能な試薬の特定のコピー数を互いに異ならせた前記ウェルの群を2以上有することを特徴とするデバイスである。
<F5> 前記ウェルの群の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数が検出限界付近である群である前記<F2>から<F4>のいずれかに記載のデバイスである。
<F6> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数が定量下限を超えるコピー数である群である前記<F2>から<F4>のいずれかに記載のデバイスである。
<F7> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数が0であるネガティブコントロール群である前記<F2>から<F6>のいずれかに記載のデバイスである。
<F8> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定のコピー数が100以上であるポジティブコントロール群である前記<F2>から<F7>のいずれかに記載のデバイスである。
<F9> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記ネガティブコントロール群を除いて最も少ないコピー数を持つ群であり、少なくともデバイスの略外周のウェルに配置されている前記<F2>から<F8>のいずれかに記載のデバイスである。
<F10> 前記ウェルがプライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを有する前記<F2>から<F9>のいずれかに記載のデバイスである。
<F11> 前記ウェル内の前記増幅可能な試薬の特定のコピー数の情報を識別可能な識別手段を有する前記<F2>から<F10>のいずれかに記載のデバイスである。
<F12> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<F2>から<F11>のいずれかに記載のデバイスである。
<F13> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<F12>に記載のデバイスである。
<F14> 前記細胞が酵母である前記<F13>に記載のデバイスである。
<F15> 前記特定のコピー数が、計数された増幅可能な試薬のコピー数である前記<F2>から<F14>のいずれかに記載のデバイスである。
<F16> 前記細胞が、インクジェット法により吐出された前記<F13>から<F15>のいずれかに記載のデバイスである。
<F17> 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価方法であって、
前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイスを用い、
前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する技能評価工程と、
を含むことを特徴とする調製者の技能評価方法である。
<F18> 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価プログラムであって、
前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする調製者の技能評価プログラムである。
<F19> 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価装置であって、
前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する技能評価部と、
を有することを特徴とする調製者の技能評価装置である。
<F20> 検査対象を検査する検査装置の性能を評価する検査装置の性能評価方法であって、
前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
前記Ct値の情報に基づき前記検査装置の性能を評価する性能評価工程と、
を含むことを特徴とする検査装置の性能評価方法である。
<F21> 検査対象を検査する検査装置の性能を評価する検査装置の性能評価プログラムであって、
前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
前記Ct値の情報に基づき前記検査装置の性能を評価する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする検査装置の性能評価プログラムである。
<F22> 検査対象を検査する検査装置の性能を評価する検査装置の性能評価装置であって、
前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
前記Ct値の情報に基づき前記検査装置の性能を評価する性能評価部と、
を有することを特徴とする検査装置の性能評価装置である。
【0399】
前記<A1>から<A5>に記載の検出判定用デバイス、前記<B1>から<B15>のいずれかに記載のデバイス及び前記<B16>に記載の検査方法、前記<C1>から<C10>のいずれかに記載の検出判定方法、前記<C11>に記載の検出判定装置、前記<C12>に記載の検出判定プログラム、及び前記<C13>から<C23>のいずれかに記載のデバイス、前記<D1>から<D14>のいずれかに記載のデバイス、前記<D15>から<D16>のいずれかに記載のデバイス、前記<E1>から<E13>のいずれかに記載のデバイス、前記<E14>から<E17>のいずれかに記載のノロウイルスの検査方法、前記<E18>に記載のノロウイルスの検査プログラム、及び前記<E19>に記載のノロウイルスの検査装置、並びに、前記<F1>から<F16>のいずれかに記載のデバイス、前記<F17>に記載の調製者の技能評価プログラム、前記<F18>に記載の調製者の技能評価方法、前記<F19>に記載の調製者の技能評価装置、前記<F20>に記載の検査装置の性能評価方法、前記<F21>に記載の検査装置の性能評価プログラム、及び前記<F22>に記載の検査装置の性能評価装置によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0400】
1 検査デバイス
2 基材
3 ウェル
4 増幅可能な試薬
5 密閉部材
【配列表】