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特許7044468光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
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  • 特許-光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220323BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220323BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220323BHJP
   C08G 64/16 20060101ALI20220323BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220323BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/02 103
B32B27/36 102
C08G64/16
G02F1/1335 510
G02F1/13363
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017014146
(22)【出願日】2017-01-30
(65)【公開番号】P2017142492
(43)【公開日】2017-08-17
【審査請求日】2019-11-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2016021299
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】角村 浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
(72)【発明者】
【氏名】並木 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】平見 優一
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】下村 一石
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212818(JP,A)
【文献】国際公開第2004/057381(WO,A1)
【文献】特開2006-131789(JP,A)
【文献】特開平9-166778(JP,A)
【文献】特開2015-25111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む偏光板と、該偏光板に隣接して配置された位相差層と、該位相差層の偏光板と反対側の表面に直接形成された導電層と、を備え、
該位相差層は、ポリカーボネート樹脂で構成されており、面内位相差Re(550)が100nm~180nmであり、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たし、ならびに、ガラス転移温度(Tg)が163℃以上180℃以下であり、光弾性係数の絶対値が20×10-12(m/N)以下であり、
該位相差層の遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度が35°~55°であり、
該ポリカーボネート樹脂が、下記式(1)または(2)で表される構造単位を少なくとも含有する、光学積層体
【化1】
【化2】
(式(1)及び(2)中、R ~R は、それぞれ独立に、直接結合、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基であり、R ~R は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数4~10のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のビニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R ~R は、互いに同一であっても、異なっていてもよく、R ~R のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(3)で表される構造単位を少なくとも含有する、請求項1に記載の光学積層体:
【化3】
(式(3)中、R10~R15はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、又はハロゲン原子を示す。)
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂が、下記式(4)で表される構造単位を少なくとも含有する、請求項1または2に記載の光学積層体:
【化4】
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂の、測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が、3000Pa・s以上、7000Pa・s以下である、請求項からのいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂の、ナトリウムd線(589nm)における屈折率が、1.49以上、1.56以下である、請求項からのいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記偏光板が、前記偏光子の前記位相差層と反対側に貼り合わされた保護層をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の光学積層体。
【請求項7】
前記偏光板が、前記偏光子と前記位相差層との間に保護層をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の光学積層体。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の光学積層体を視認側に備え、該光学積層体の偏光子が視認側に配置されている、画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表されるスマートデバイス、またデジタルサイネージやウィンドウディスプレイなどの表示装置が強い外光の下使用される機会が増加している。それに伴い、表示装置自体または表示装置に用いられるタッチパネル部やガラス基板、金属配線等の反射体による外光反射や背景の映り込み等の問題が生じている。特に、近年実用化されてきている有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置は、反射性の高い金属層を有するため、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、位相差フィルム(代表的にはλ/4板)を有する円偏光板を視認側に反射防止フィルムとして設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。
【0003】
さらに、近年、スマートフォンに代表されるように、画像表示装置がタッチパネル型入力装置を兼ねるタッチパネル型入力表示装置が急増している。特に、表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置が実用化されている。このようなインナータッチパネル型入力表示装置においては、タッチパネル電極として機能する透明導電層は、等方性基材付導電層として位相差フィルム(代表的にはλ/4板)に積層されることにより導入されている。表示装置の薄型化の観点からは透明導電層を位相差フィルムに直接形成することが望ましいが、透明導電層を形成する際のスパッタリングおよびその後処理における高温環境で位相差フィルムの光学特性が所望の特性から大きくずれてしまうので、スパッタリング用の基材を用いざるを得ないからである。このように、透明導電層を位相差フィルムに直接形成できる技術が強く望まれている。また、フレキシブルディスプレイに対応していくために、ディスプレイの屈曲部に適用しても表示特性を損なわない円偏光板が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-69158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、導電層が位相差層に直接形成されており、非常に薄く、かつ、優れた反射防止機能を有し、さらに、画像表示装置の屈曲部に適用しても優れた表示特性を実現し得る光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学積層体は、偏光子と、位相差層と、該位相差層に直接形成された導電層と、を備え、該位相差層は、面内位相差Re(550)が100nm~180nmであり、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たし、ならびに、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上であり、光弾性係数の絶対値が20×10-12(m/N)以下であり、該位相差層の遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度が35°~55°である。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記の光学積層体を視認側に備え、該光学積層体の偏光子が視認側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、所定の面内位相差を有し、逆分散の波長依存性を示し、かつ、所定のガラス転移温度および光弾性係数を有する位相差フィルムを位相差層として用いることにより、導電層を位相差層表面に直接形成することができ、かつ、このような導電層の形成にもかかわらず位相差層の所望の光学特性を維持することができる。結果として、非常に薄く、かつ、優れた反射防止機能を有する光学積層体を実現することができる。さらに、このような光学積層体は、画像表示装置の屈曲部に適用しても優れた表示特性を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(450)」は、23℃における波長450nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0011】
A.光学積層体の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。本実施形態の光学積層体100は、偏光子10と、位相差層20と、位相差層20に直接形成された導電層30と、を備える。光学積層体100は、実用的には図示例のように、偏光子10の位相差層20と反対側に貼り合わされた保護層40をさらに備えていてもよい。また、偏光子10と位相差層20との間に保護層(図示せず)をさらに備えていてもよい。このような構成によれば、光学積層体は、表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)と偏光子との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。
【0012】
各層(各光学フィルム)は、任意の適切な接着層(代表的には、接着剤層、粘着剤層)を介して貼り合わせられている。一方、導電層30は、上記のとおり位相差層20に直接形成されている。本明細書において「直接形成される」とは、接着層を介在させることなく積層されていることをいう。代表的には、導電層30は、位相差層20の表面にスパッタリングにより形成され得る。図示例では、導電層30は位相差層20の偏光子10と反対側(位相差層の下側)に形成されているが、位相差層20と偏光子10との間(位相差層の上側)に形成されてもよい。なお、位相差層と導電層との間に目的に応じてインデックスマッチング(IM)層および/またはハードコート(HC)層が形成される場合があるところ(いずれも図示せず)、このような場合には、導電層はIM層またはHC層にスパッタリングにより直接形成される。このような形態も、「直接形成される」形態に包含される。IM層およびHC層は、当業界で通常用いられる構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【0013】
本発明の実施形態においては、位相差層20は、代表的には位相差フィルムで構成されている。したがって、位相差層は、偏光子の保護層(内側保護層)としても機能し得る。その結果、光学積層体(結果として、画像表示装置)の薄型化に貢献し得る。なお、上記のとおり、必要に応じて、偏光子と位相差層との間に内側保護層(内側保護フィルム)が配置されてもよい。位相差層は、その面内位相差Re(550)が100nm~180nmであり、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。さらに、位相差層は、そのガラス転移温度(Tg)が150℃以上であり、光弾性係数の絶対値が20×10-12(m/N)以下である。このような位相差層であれば、スパッタリングおよびそれに付随する後処理における高温環境においても所望の光学特性を維持することができる。したがって、位相差層表面に、導電層をスパッタリングにより直接形成することができる。その結果、製造効率が格段に向上し、かつ、スパッタリング用の基材および導電層/基材の積層体を貼り合わせるための粘着剤層を省略することができるので、光学積層体(結果として、画像表示装置)のさらなる薄型化に貢献し得る。さらに、このような光学積層体は、画像表示装置の屈曲部に適用しても優れた表示特性を実現し得る。より詳細には、屈曲部と平面部との色味の変化を抑制することができる。
【0014】
位相差層20の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は、代表的には35°~55°である。当該角度がこのような範囲であれば、位相差層の面内位相差を上記のような範囲とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する光学積層体が得られ得る。
【0015】
必要に応じて、導電層30の位相差層20と反対側(光学積層体の最外側)にアンチブロッキング(AB)層を設けてもよい。AB層のヘイズ値は、好ましくは0.2%~4%である。
【0016】
光学積層体の総厚み(例えば、保護層/接着層/偏光子/接着層/保護層/接着層/位相差層/導電層の合計厚み)は、好ましくは50μm~200μmであり、より好ましくは80μm~170μmである。本発明の実施形態によれば、導電層を位相差層表面に直接形成することができ、スパッタリング用の基材を省略することができるので、顕著な薄型化を実現することができる。
【0017】
1つの実施形態においては、本発明の光学積層体は長尺状である。長尺状の光学積層体は、例えば、ロール状に巻回されて保管および/または運搬され得る。
【0018】
上記の実施形態は適宜組み合わせてもよく、上記の実施形態における構成要素に当業界で自明の改変を加えてもよく、上記の実施形態における構成を光学的に等価な構成に置き換えてもよい。
【0019】
以下、光学積層体の構成要素について説明する。
【0020】
B.偏光子
偏光子10としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0021】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0022】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0023】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0024】
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。さらに、偏光子の厚みがこのような範囲であれば、光学積層体(結果として、有機EL表示装置)の薄型化に貢献し得る。
【0025】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0026】
C.位相差層
位相差層20の面内位相差Re(550)は、上記のとおり100nm~180nmであり、好ましくは120nm~160nmであり、より好ましくは135nm~155nmである。すなわち、位相差層は、いわゆるλ/4板として機能し得る。
【0027】
位相差層は、上述のとおり、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たす。すなわち、位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示す。位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.7以上1.0未満であり、より好ましくは0.8以上1.0未満であり、さらに好ましくは0.8以上0.95未満であり、特に好ましくは0.8以上0.9未満である。Re(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0028】
位相差層は、代表的には屈折率特性がnx>nyの関係を示し、遅相軸を有する。位相差層20の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は、上記のとおり35°~55°であり、より好ましくは38°~52°であり、さらに好ましくは42°~48°であり、特に好ましくは約45°である。当該角度がこのような範囲であれば、位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する光学積層体が得られ得る。
【0029】
位相差層は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率楕円体(屈折率特性)を示す。好ましくは、位相差層の屈折率楕円体は、nx>ny≧nzまたはnx>nz>nyの関係を示す。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.2~2.0であり、より好ましくは0.2~1.5であり、さらに好ましくは0.2~1.0である。このような関係を満たすことにより、光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0030】
位相差層は、そのガラス転移温度(Tg)が上記のとおり150℃以上である。ガラス転移温度の下限は155℃以上がより好ましく、157℃以上がさらに好ましく、160℃以上がよりさらに好ましく、163℃以上が特に好ましい。一方、ガラス転移温度の上限は180℃以下が好ましく、175℃以下がさらに好ましく、170℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、スパッタリングおよびそれに付随する後処理の高温環境において光学特性に所望でない変化が生じる場合がある。ガラス転移温度が高すぎると、位相差層形成時の成形安定性が悪くなる場合があり、また、位相差層の透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0031】
位相差層は、その光弾性係数の絶対値が上記のとおり20×10-12(m/N)以下であり、好ましくは1.0×10-12(m/N)~15×10-12(m/N)であり、より好ましくは2.0×10-12(m/N)~12×10-12(m/N)である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、スパッタリング前後の色味の変化を抑制することができる。さらに、光学積層体を画像表示装置の屈曲部に適用した場合に、当該屈曲部においても優れた表示特性を実現し得る。
【0032】
位相差層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは10μm~70μmであり、さらに好ましくは20μm~65μmであり、特に好ましくは20μm~60μmであり、最も好ましくは20μm~50μmである。
【0033】
位相差層は、上記のような特性を満足し得る任意の適切な樹脂を含む位相差フィルムで構成される。位相差フィルムを形成する樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂は、複数種のモノマーを用いて共重合体を合成することが比較的容易であり、種々の物性バランスを調整するための分子設計が可能である。また、耐熱性や延伸性、機械物性なども比較的良好である。尚、本発明においてポリカーボネート樹脂とは、構造単位にカーボネート結合を有する樹脂のことを総称し、例えば、ポリエステルカーボネート樹脂を含む。ポリエステルカーボネート樹脂とは、当該樹脂を構成する構造単位としてカーボネート結合およびエステル結合を有する樹脂のことを言う。
【0034】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、下記式(1)又は(2)で表される構造単位を少なくとも含有することが好ましい。
【化1】
【化2】
(式(1)及び(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、直接結合、置換基を有していてもよい炭素数1~4のアルキレン基であり、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数4~10のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のビニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R~Rは、互いに同一であっても、異なっていてもよく、R~Rのうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0035】
上記構造単位は樹脂中の含有量が少量でも効率良く逆波長分散性を発現させることができる。また、上記構造単位を含有する樹脂は耐熱性も良好で、延伸することによって高い複屈折が得られるため、本発明に用いられる位相差層に適した特性を有している。
【0036】
前記式(1)又は(2)で表される構造単位の樹脂中の含有量は、位相差フィルムとして最適な波長分散特性を得るためには、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、1重量%以上、50重量%以下含有することが好ましく、3重量%以上、40重量%以下がより好ましく、5重量%以上、30重量%以下が特に好ましい。
【0037】
前記式(1)及び(2)で表される構造単位のうち、好ましい構造としては具体的に下記[A]群に例示される骨格を有する構造が挙げられる。
[A]
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0038】
上記[A]群の中でも、(A1)及び(A2)のジエステル構造単位の性能が高く、(A1)が特に好ましい。前記特定のジエステル構造単位は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物由来の構造単位よりも熱安定性が良好であり、逆波長分散の発現性や光弾性係数などの光学特性についても良好な特性を示す傾向がある。尚、本発明に係るポリカーボネート樹脂がジエステルの構造単位を含有する場合、そのような樹脂をポリエステルカーボネート樹脂と称する。
【0039】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、前記式(1)又は(2)で表される構造単位とともに、他の構造単位を共に含有することで、本発明に用いられる位相差層に要求される種々の物性を満足する樹脂を設計することができる。特に重要な物性である高い耐熱性を付与するためには、下記式(3)で表される構造単位を含有することが好ましい。
【化9】
(式(3)中、R10~R15はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~12のアルキル基、アリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、又はハロゲン原子を示す。)
【0040】
前記式(3)で表される構造単位は高いガラス転移温度を有する成分であり、さらに、芳香族構造にも関わらず、光弾性係数が比較的低く、本発明に用いられる位相差層に求められる特性を満足している。
【0041】
前記式(3)で表される構造単位の樹脂中の含有量は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、1重量%以上、30重量%以下含有することが好ましく、2重量%以上、20重量%以下がより好ましく、3重量%以上、15重量%以下が特に好ましい。この範囲であれば、十分な耐熱性を付与しつつ、樹脂が過度に脆くならず、加工性に優れた樹脂を得ることができる。
【0042】
前記式(3)で表される構造単位は、該構造単位を含有するジヒドロキシ化合物を重合することで樹脂中に導入することができる。該ジヒドロキシ化合物としては、物性が良好であり、入手のしやすさの観点からも、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダンを用いることが特に好ましい。
【0043】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、下記式(4)で表される構造単位をさらに含有することが好ましい。
【化10】
【0044】
前記式(4)で表される構造単位は、樹脂を延伸した時の複屈折の発現性が高く、光弾性係数も低い特性を有している。前記式(4)で表される構造単位を導入可能なジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられるが、これらの中でも、入手及び重合反応性の観点からISBを用いるのが最も好ましい。
【0045】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、要求される物性を応じて、前述した構造単位以外に、その他の構造単位を含んでいてもよい。その他の構造単位を含有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、アセタール環を含有するジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族成分を含有するジヒドロキシ化合物、ジエステル化合物等が挙げられる。種々の物性のバランスが良好であることや、入手のしやすさの観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMと略記することがある)、トリシクロデカンジメタノール(以下、TCDDMと略記することがある)、スピログリコール(以下、SPGと略記することがある)等のジヒドロキシ化合物が好ましく用いられる。
【0046】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる熱安定剤、酸化防止剤、触媒失活剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、染顔料、衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、無機充填剤、発泡剤等が含まれても差し支えない。
【0047】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、機械特性や耐溶剤性等の特性を改質する目的で、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等の合成樹脂やゴム等の1種又は2種以上と混練してなるポリマーアロイとしてもよい。
【0048】
前記の添加剤や改質剤は、本発明に用いられる樹脂に前記成分を同時に、又は任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができるが、中でも押出機、特には二軸押出機により混練することが、分散性向上の観点から好ましい。
【0049】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の下限は、通常0.25dL/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましく、0.32dL/g以上が特に好ましい。還元粘度の上限は、通常0.50dL/g以下が好ましく、0.45dL/g以下がより好ましく、0.40dL/g以下が特に好ましい。還元粘度が前記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる場合がある。一方、還元粘度が前記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下するという問題が生じる場合がある。
【0050】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度が、1000Pa・s以上、9000Pa・s以下であることが好ましい。溶融粘度の下限は2000Pa・s以上がより好ましく、2500Pa・s以上がさらに好ましく、3000Pa・s以上が特に好ましい。溶融粘度の上限は8000Pa・s以下がより好ましく、7000Pa・s以下がさらに好ましく、6500Pa・s以下がよりさらに好ましく、6000Pa・s以下が特に好ましい。
【0051】
本発明に用いられる位相差層は高い耐熱性が求められており、通常、耐熱性(ガラス転移温度)を高くするほど樹脂は脆くなる方向であるが、上記のような溶融粘度範囲とすることで、樹脂の加工時に最低限必要な機械物性を保持しつつ、樹脂を溶融加工することも可能となる。
【0052】
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂は、ナトリウムd線(589nm)における屈折率が、1.49以上、1.56以下であることが好ましい。さらに好ましくは、屈折率は1.50以上、1.55以下である。
【0053】
本発明に用いられる位相差層に求められる光学特性を付与するためには、樹脂中に芳香族構造を導入する必要がある。しかし、芳香族構造は屈折率を高めることで位相差層の透過率の低下を招く。また、一般的に芳香族構造は高い光弾性係数を有しており、光学特性を全般的に低下させる。本発明に用いられるポリカーボネート樹脂には、求められる特性を効率良く発現する構造単位を選択し、樹脂中の芳香族構造の含有量を最小限に抑えることが好ましい。
【0054】
本発明に用いられる位相差層は、上記ポリカーボネート樹脂からフィルムを形成し、さらにそのフィルムを延伸することにより得られる。ポリカーボネート樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。中でも得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができる押出成形法、又はキャスト塗工法が好ましい。キャスト塗工法では残存溶媒による問題が生じるおそれがあるため、特に好ましくは押出成形法、中でもTダイを用いた溶融押出成形法がフィルムの生産性や、後の延伸処理のし易さの観点から好ましい。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。
【0055】
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、得られる位相差フィルムの所望の厚み、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm~300μmである。
【0056】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。
【0057】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0058】
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、樹脂フィルムを一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより作製される。固定端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。延伸倍率は、好ましくは1.1倍~3.5倍である。
【0059】
別の実施形態においては、位相差フィルムは、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に対して所定の角度の方向に連続的に斜め延伸することにより作製され得る。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長手方向に対して所定の角度の配向角(所定の角度の方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光子との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。さらに、導電層が位相差層(位相差フィルム)に直接形成できることとの相乗的な効果により、製造効率が格段に向上し得る。なお、上記所定の角度は、光学積層体において偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度であり得る。当該角度は、上記のとおり、好ましくは35°~55°であり、より好ましくは38°~52°であり、さらに好ましくは42°~48°であり、特に好ましくは約45°である。
【0060】
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
【0061】
上記延伸機において左右の速度をそれぞれ適切に制御することにより、上記所望の面内位相差を有し、かつ、上記所望の方向に遅相軸を有する位相差フィルム(実質的には、長尺状の位相差フィルム)が得られ得る。
【0062】
斜め延伸の方法としては、例えば、特開昭50-83482号公報、特開平2-113920号公報、特開平3-182701号公報、特開2000-9912号公報、特開2002-86554号公報、特開2002-22944号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0063】
上記フィルムの延伸温度は、位相差フィルムに所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg-30℃~Tg+30℃、さらに好ましくはTg-15℃~Tg+15℃、最も好ましくはTg-10℃~Tg+10℃である。このような温度で延伸することにより、本発明において適切な特性を有する位相差フィルムが得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
【0064】
D.導電層
導電層30は、代表的には透明である(すなわち、導電層は透明導電層である)。位相差層の偏光子と反対側に導電層を形成することにより、光学積層体は、表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)と偏光子との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。
【0065】
導電層は、必要に応じてパターン化され得る。パターン化によって、導通部と絶縁部とが形成され得る。結果として、電極が形成され得る。電極は、タッチパネルへの接触を感知するタッチセンサ電極として機能し得る。パターンの形状はタッチパネル(例えば、静電容量方式タッチパネル)として良好に動作するパターンが好ましい。具体例としては、特表2011-511357号公報、特開2010-164938号公報、特開2008-310550号公報、特表2003-511799号公報、特表2010-541109号公報に記載のパターンが挙げられる。
【0066】
導電層の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0067】
導電層の密度は、好ましくは1.0g/cm~10.5g/cmであり、より好ましくは1.3g/cm~3.0g/cmである。
【0068】
導電層の表面抵抗値は、好ましくは0.1Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは0.5Ω/□~500Ω/□であり、さらに好ましくは1Ω/□~250Ω/□である。
【0069】
導電層の代表例としては、金属酸化物を含む導電層が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム-スズ複合酸化物、スズ-アンチモン複合酸化物、亜鉛-アルミニウム複合酸化物、インジウム-亜鉛複合酸化物が挙げられる。なかでも好ましくは、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)である。
【0070】
導電層の厚みは、好ましくは0.01μm~0.05μm(10nm~50nm)であり、より好ましくは0.01μm~0.03μm(10nm~30nm)である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる導電層を得ることができる。
【0071】
E.保護層
保護層40は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0072】
本発明の光学積層体は、後述するように代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層40は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層40には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層40には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0073】
保護層の厚みは、好ましくは20μm~200μm、より好ましくは30μm~100μm、さらに好ましくは35μm~95μmである。
【0074】
内側保護層を設ける場合には、当該内側保護層は、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0075】
内側保護層の材料および厚み等は、保護層40に関して上記で説明したとおりである。
【0076】
F.アンチブロッキング層
アンチブロッキング層は、代表的には凹凸表面を有する。凹凸表面は、微細な凹凸表面であってもよく、平坦部と隆起部とを有する表面であってもよい。1つの実施形態においては、アンチブロッキング層は、その表面の算術平均粗さRaが好ましくは50nm以上である。凹凸表面は、例えば、アンチブロッキング層を形成する樹脂組成物に微粒子を含有させること、および/または、アンチブロッキング層を形成する樹脂組成物を相分離させることにより形成され得る。
【0077】
樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂が挙げられる。紫外線硬化型樹脂が好ましい。簡単な加工操作にて効率よくアンチブロッキング層を形成することができるからである。
【0078】
紫外線硬化型樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。具体例としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。紫外線硬化型樹脂は、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマーを包含する。本発明の実施形態においては、紫外線硬化型樹脂としてウレタン(メタ)アクリレートが好適に用いられ得る。
【0079】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールおよびジイソシアネートを構成成分として含有するものが用いられ得る。例えば、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方のモノマーとポリオールとを用いて水酸基を1個以上有するヒドロキシ(メタ)アクリレートを作製し、当該ヒドロキシ(メタ)アクリレートをジイソシアネートと反応させることによりウレタン(メタ)アクリレートを製造することができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、一種類を単独で使用でもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0080】
微粒子としては、任意の適切な微粒子を用いることができる。微粒子は、好ましくは透明性を有する。このような微粒子を構成する材料としては、金属酸化物、ガラス、樹脂が挙げられる。具体例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム等の無機系微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、ポリカーボネート等の有機系微粒子、シリコーン系粒子などが挙げられる。微粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは有機系微粒子であり、より好ましくはアクリル系樹脂の微粒子である。屈折率が適切だからである。
【0081】
微粒子の最頻粒子径は、アンチブロッキング層のアンチブロッキング性、ヘイズ等に応じて適切に設定することができる。微粒子の最頻粒子径は、例えば、アンチブロッキング層の厚さの±50%の範囲内である。なお、本明細書において「最頻粒子径」とは、粒子分布の極大値を示す粒径をいい、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、製品名「FPTA-3000S」)を用いて、所定条件下(Sheath液:酢酸エチル、測定モード:HPF測定、測定方式:トータルカウント)で測定することによって求められる。測定試料としては、粒子を酢酸エチルで1.0重量%に希釈し、超音波洗浄機を用いて均一に分散させた分散液が用いられ得る。
【0082】
微粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分100重量部に対して、好ましくは0.05重量部~1.0重量部であり、より好ましくは0.1重量部~0.5重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~0.2重量部である。微粒子の含有量が少なすぎると、アンチブロッキング性が不十分となる場合がある。微粒子の含有量が多すぎると、アンチブロッキング層のヘイズが高くなり、光学積層体(最終的には画像表示装置)の視認性が不十分となる場合がある。
【0083】
樹脂組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、反応性希釈剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤が挙げられる。添加剤の数、種類、組み合わせ、添加量等は目的に応じて適切に設定され得る。
【0084】
アンチブロッキング層は、代表的には、樹脂組成物を基材30の表面に塗布し、硬化させることにより形成され得る。塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。塗布方法の具体例としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、押出コート法が挙げられる。
【0085】
硬化方法は、樹脂組成物に含まれる樹脂の種類に応じて適切に選択され得る。例えば、紫外線硬化樹脂を用いる場合には、例えば150mJ/cm以上、好ましくは200mJ/cm~1000mJ/cmの露光量で紫外線を照射することにより、樹脂組成物を適切に硬化させてアンチブロッキング層を形成することができる。
【0086】
アンチブロッキング層の厚みは、好ましくは0.5μm~2.0μmであり、より好ましくは0.8μm~1.5μmである。このような厚みであれば、光学積層体に所望される光学特性に悪影響を与えることなく、良好なアンチブロッキング性を確保することができる。
【0087】
アンチブロッキング層のヘイズ値は、上記のとおり好ましくは0.2%~4%であり、より好ましくは0.5%~3%である。ヘイズ値がこのような範囲であれば、視認性を失うことなくフィルム同士のブロッキングを防止できるという利点を有する。
【0088】
アンチブロッキング層の構成、材料、形成方法等の詳細は、例えば、特開2015-115171号公報、特開2015-141674号公報、特開2015-120870号公報、特開2015-005272号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0089】
G.画像表示装置
上記A項からF項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置を包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、その視認側に上記A項からF項に記載の光学積層体を備える。光学積層体は、導電層が表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)側となるように(偏光子が視認側となるように)配置されている。画像表示装置は、1つの実施形態においては屈曲可能(ベンダブル)であり、別の実施形態においては折り畳み可能(フォルダブル)である。
【実施例
【0090】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0091】
(1)厚み
導電層については、大塚電子製MCPD2000を用いて干渉膜厚測定法によって測定した。その他のフィルムについては、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製KC-351C)を用いて測定した。
【0092】
(2)位相差層の位相差値
実施例および比較例で用いた位相差層(位相差フィルム)の屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA-WPR)により計測した。面内位相差Reの測定波長は450nmおよび550nmであり、厚み方向位相差Rthの測定波長は550nmであり、測定温度は23℃であった。
【0093】
(3-1)反射色相
得られた有機EL表示装置代替品に光学積層体を実装し、コニカミノルタ社製の分光測色器CM-2600dを用いて反射色相を測定した。a、bともに絶対値が10以下かつ反射率Yが30%以下である場合は「○」、a、bおよび反射率の少なくとも1つがその範囲を超えた場合は「×」とした。
(3-2)屈曲部色ムラ評価
得られた曲面表示装置代替品に実装した光学積層体の色味を目視により観察し、屈曲部と平面部との色変化が小さいものを「○」、色変化が大きいものを「×」とした。
【0094】
(4)光弾性係数
実施例および比較例で用いた位相差フィルムを、20mm×100mmのサイズに切り出して試料を作製した。この試料をエリプソメーター(日本分光社製、M-150)により波長550nmの光で測定し、光弾性係数を得た。
【0095】
(5)還元粘度
樹脂試料を塩化メチレンに溶解させ、精密に0.6g/dLの濃度の樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t、及び溶液の通過時間tを測定した。得られたt及びtの値を用いて次式(i)により相対粘度ηrelを求め、さらに、得られた相対粘度ηrelを用いて次式(ii)により比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t (i)
ηsp=(η-η)/η=ηrel-1 (ii)
その後、得られた比粘度ηspを濃度c[g/dL]で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。
【0096】
(6)ガラス転移温度
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計DSC6220を用いて測定した。約10mgの樹脂試料を同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から220℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び220℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。
【0097】
(7)溶融粘度
ペレット状の樹脂試料を90℃で5時間以上、真空乾燥させた。乾燥したペレットを用いて、(株)東洋精機製作所製キャピラリーレオメーターで測定を行った。測定温度は240℃とし、剪断速度9.12~1824sec-1間で溶融粘度を測定し、91.2sec-1における溶融粘度の値を用いた。尚、オリフィスには、ダイス径がφ1mm×10mmLのものを用いた。
【0098】
(8)屈折率
後述の実施例と比較例において作製した未延伸フィルムから、長さ40mm、幅8mmの長方形の試験片を切り出して測定試料とした。589nm(D線)の干渉フィルターを用いて、(株)アタゴ製多波長アッベ屈折率計DR-M4/1550により屈折率nを測定した。測定は界面液としてモノブロモナフタレンを用い、20℃で行った。
【0099】
(9)全光線透過率
上記の未延伸フィルムを測定試料に用いて、日本電色工業(株)製濁度計COH400を用いて全光線透過率を測定した。
【0100】
(モノマーの合成例)
[合成例1]ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン(BPFM)の合成
特開2015-25111に記載の方法で合成した。
[合成例2]6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(SBI)の合成
特開2014-114281に記載の方法で合成した。
【0101】
[ポリカーボネート樹脂の合成例、及び特性評価]
以下の実施例、及び比較例で用いた化合物の略号等は以下の通りである。
・BPFM:ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン
・BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
・BHEPF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・SBI:6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン
・SPG:スピログリコール(三菱ガス化学(株)製)
・PEG:ポリエチレングリコール 数平均分子量:1000(三洋化成(株)製)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
【0102】
[実施例1]
(位相差層の作製)
SBI 6.04重量部(0.020mol)、ISB 59.58重量部(0.408mol)、BPFM 34.96重量部(0.055mol)、DPC 79.39重量部(0.371mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.53×10-4重量部(4.27×10-6mol)を反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として220℃まで30分かけて昇温し、60分間常圧にて反応した。次いで圧力を常圧から13.3kPaまで90分かけて減圧し、13.3kPaで30分間保持し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで反応2段目の工程として熱媒温度を15分かけて245℃まで昇温しながら、圧力を0.10kPa以下まで15分かけて減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止し、生成したポリエステルカーボネート樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。得られた樹脂の還元粘度は0.375dL/g、ガラス転移温度は165℃、溶融粘度は5070Pa・s、屈折率は1.5454、光弾性係数は15×10-12/Nであった。
100℃で5時間以上、真空乾燥をした樹脂ペレットを、いすず化工機(株)製単軸押出機(スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:255℃)を用い、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)から押し出した。押し出したフィルムを、チルロール(設定温度:155℃)により冷却しつつ巻取機でロール状にし、未延伸フィルムを100μm厚のフィルムを作製した。上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、120mm×150mmの長方形の試験片を安全カミソリで切り出し、バッチ式二軸延伸装置(ブルックナー社製)で、長手方向に延伸温度171℃、延伸速度5mm/secで1×2.4倍の一軸延伸を行った。
【0103】
以上のようにして、位相差フィルム(厚み64μm)を得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は147nm、Rth(550)は147nmであり、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。また、得られた位相差フィルムのRe(450)/Re(550)は0.81であった。位相差フィルムの遅相軸方向は、長手方向に対して0°であった。
【0104】
(位相差層/導電層の積層体の作製)
上記位相差フィルム(位相差層)表面に、インジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電層(厚み20nm)をスパッタリングにより形成し、位相差層/導電層の積層体を作製した。具体的な手順は以下のとおりである:ArおよびO(流量比はAr:O=99.9:0.1)を導入した真空雰囲気下(0.40Pa)で、10重量%の酸化スズと90重量%の酸化インジウムとの焼結体をターゲットとして用いて、フィルム温度を130℃とし、水平磁場を100mTとするRF重畳DCマグネトロンスパッタリング法(放電電圧150V、RF周波数13.56MHz、DC電力に対するRF電力の比(RF電力/DC電力)は0.8)を用いた。得られた透明導電層を150℃温風オーブンにて加熱して結晶転化処理を行った。
【0105】
(偏光子の作製)
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
【0106】
(偏光板の作製)
上記偏光子の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、TACフィルムを貼り合わせ、保護層/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0107】
(光学積層体の作製)
上記で得られた偏光板の偏光子面と上記で得られた位相差層/導電層の積層体の位相差層面とを、アクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。なお、位相差フィルムは、貼り合せた際に、その遅相軸と偏光子の吸収軸が45度の角度をなすように切り出した。また偏光子の吸収軸は長手方向に平行となるように配置した。このようにして、保護層/偏光子/位相差層/導電層の構成を有する光学積層体を得た。
【0108】
(画像表示装置代替品の作製)
有機EL表示装置の代替品を以下のようにして作製した。ガラス板に、アルミ蒸着フィルム(東レフィルム加工社製、商品名「DMS蒸着X-42」、厚み50μm)を粘着剤で貼り合せ、有機EL表示装置の代替品とした。得られた光学積層体の導電層側にアクリル系粘着剤で粘着剤層を形成し、寸法50mm×50mmに切り出し、有機EL表示装置代替品に実装し、その反射色相を上記(3-1)の手順で測定した。その際、コントロールとして、導電層を形成しなかったこと以外は上記と同様にして作製した保護層/偏光子/位相差層の構成を有する光学積層体を用いた実装品についても同様に、その反射色相を上記(3-1)の手順で測定した。
【0109】
(曲面表示装置代替品の作製)
曲面表示装置の代替品を以下のように作製した。卓上ネームプレート(プラス社製、L型カード立て、幅寸法×奥行き寸法×高さ寸法が120mm×29mm×60mm)に、上記アルミ蒸着フィルム「DMS蒸着X-42」を粘着剤で貼り合せ、曲面表示装置の代替品とした。導電層を形成しなかったこと以外は上記と同様にして作製した保護層/偏光子/位相差層の構成を有する光学積層体を、当該代替品にアクリル系粘着剤を介して貼り合わせて実装品を得た。なお、光学積層体において、位相差フィルム(位相差層)は、その遅相軸と偏光子の吸収軸が45度の角度をなすように切り出した。また、光学積層体は、位相差層の遅相軸と屈曲部が延びる方向が直交するように配置した。実装品における屈曲部および平面部の色味を目視により観察し、上記(3-2)の基準で評価した。
【0110】
画像表示装置代替品および屈曲表示装置代替品における上記(3-1)および(3-2)の評価指標から、スパッタを直接形成する円偏光板の実力指標とした。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例2]
SBI 15.10重量部(0.049mol)、ISB 42.27重量部(0.289mol)、SPG 15.10重量部(0.050mol)、BPFM 26.22重量部(0.041mol)、DPC 75.14重量部(0.351mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物2.05×10-3重量部(1.16×10-5mol)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を得た。得られた樹脂の還元粘度は0.334dL/g、ガラス転移温度は157℃、溶融粘度は3020Pa・s、屈折率は1.5360、光弾性係数は12×10-12/Nであった。
【0112】
上記のポリエステルカーボネート樹脂を用い、および、長手方向に延伸温度162℃、延伸速度5mm/secで1×2.4倍の一軸延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルム(厚み65μm)を得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は140nm、Rth(550)は140nmであり、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。また、得られた位相差フィルムのRe(450)/Re(550)は0.86であった。位相差フィルムの遅相軸方向は、長手方向に対して0°であった。
【0113】
[比較例1]
位相差層として市販のポリカーボネート樹脂フィルム(帝人社製、商品名「ピュアエースWR」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体および有機EL表示装置代替品を作製した。得られた有機EL表示装置代替品を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0114】
[比較例2]
SPG 60.43重量部(0.199mol)、BCF 32.20重量部(0.085mol)、DPC 64.40重量部(0.301mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物2.50×10-3重量部(1.42×10-5mol)を用い、最終重合温度を260℃とした以外は実施例1と同様に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。得られた樹脂の得られた樹脂の還元粘度は0.499dL/g、ガラス転移温度は135℃、溶融粘度は2940Pa・s、屈折率は1.5334、光弾性係数は13×10-12/Nであった。このポリカーボネート樹脂から形成したフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体および有機EL表示装置代替品を作製した。得られた有機EL表示装置代替品を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0115】
[比較例3]
位相差層として市販のシクロオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR」、面内位相差147nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体および有機EL表示装置代替品を作製した。得られた有機EL表示装置代替品を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0116】
[比較例4]
比較例1で用いた位相差層を実施例1で用いた偏光板に貼り合わせ、保護層/偏光子/位相差層の構成を有する円偏光板を得た。一方、市販のシクロオレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ZEONOR」、面内位相差3nm)を基材として用い、当該基材の表面に、実施例1と同様にしてインジウム-スズ複合酸化物からなる透明導電層をスパッタリングにより形成した。円偏光板の位相差層面と基材/導電層の積層体の導電層面とをアクリル系粘着剤で貼り合わせ、保護層/偏光子/位相差層/導電層/基材の構成を有する光学積層体を得た。この光学積層体を用いたこと以外は実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。得られた有機EL表示装置を実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
[評価]
表1から明らかなように、位相差層のTg、光弾性係数および波長依存性を組み合わせて所定の範囲に設定することにより、スパッタリングで導電層を表面に直接形成しても、所望の光学特性を維持できることがわかる。光弾性係数が大きい位相差層を用いた比較例1では、屈曲部の色ムラが不良である。Tgが低い位相差層を用いた比較例2では、導電層の形成(スパッタリング)により反射色相が不良となっている。フラットな波長分散特性を有する位相差層を用いた比較例3では、導電層(スパッタリング)の有無にかかわらず反射色相が不良となっている。基材に導電層を形成し基材/導電層の積層体を貼り合わせた比較例4では、基材および貼り合わせのための粘着剤層の厚み分が分厚くなっている。さらに、比較例4では、屈曲部の色ムラが不良となっている。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の光学積層体は画像表示装置(代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置)に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0120】
10 偏光子
20 位相差層(位相差フィルム)
30 導電層
40 保護層
100 光学積層体
図1