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特許7044516光学フィルム用粘着剤組成物、粘着剤層、光学部材、および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】光学フィルム用粘着剤組成物、粘着剤層、光学部材、および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20220323BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220323BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220323BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220323BHJP
   B32B 7/04 20190101ALI20220323BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220323BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220323BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220323BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J175/04
C09J11/06
C09J7/38
B32B7/04
B32B27/00 M
B32B27/30 A
G02B5/30
G02F1/1335 510
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2017215389
(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公開番号】P2018095843
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2016241643
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】乾 州弘
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利行
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171963(JP,A)
【文献】国際公開第2016/003239(WO,A1)
【文献】特表2014-517082(JP,A)
【文献】特開2016-166316(JP,A)
【文献】特開2013-209600(JP,A)
【文献】特開2008-308549(JP,A)
【文献】特表2010-516855(JP,A)
【文献】特開2012-201733(JP,A)
【文献】特開2014-115468(JP,A)
【文献】特開2005-023169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 7/04,27/00,27/30
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート共重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含む光学フィルム用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位および(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を含み、前記(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位の含有量は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であり、
前記イソシアネート化合物(B)は、数平均分子量が900以上10,000以下であり、かつ、イソシアネートモノマーおよびイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物を反応させてなるものを含有するものであり、
前記イソシアネート化合物(B)の含有量は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上質量部以下である、光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物(B)のNCO%が0.5%以上15%以下である、請求項1に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、前記イソシアネート化合物(B)および過酸化物(F)以外の架橋剤(C):0.01質量部以上10質量部以下をさらに含む、請求項1または2に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)の重量平均分子量が、100万以上250万以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
光学フィルム用粘着剤組成物が、さらに溶剤を含有し、
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が30万以上100万未満であり、
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)を含む固形分含有量が20質量%以上であり、前記溶剤の含有量が80質量%以下であり、かつ
23℃でのB型粘度計20rpmでの粘度が200mPa・s以上5000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、シランカップリング剤(D):0.01質量部以上1質量部以下をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
下記化学式(1)に示される構造を有するシリケートオリゴマー(E)をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物:
【化1】

前記化学式(1)において、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基であり;
およびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、またはフェニル基であり;
nは1以上100以下の整数である。
【請求項8】
前記シリケートオリゴマー(E)はメチルシリケートオリゴマーを含む、請求項7に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記シリケートオリゴマー(E)の重量平均分子量は300以上30,000以下である、請求項7または8に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項10】
前記架橋剤(C)は、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびイソシアネート系架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項3~9のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項11】
らに過酸化物(F)を含有することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項12】
前記過酸化物(F)は、1分間半減期温度が80℃以上125℃以下である請求項11に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項13】
さらに軟化点が60℃以上200℃以下の高軟化点樹脂(G)を含有することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項14】
前記高軟化点樹脂(G)がロジンエステル系樹脂であることを特徴とする請求項13に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項15】
前記共重合体(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位(a’)を含有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項16】
さらに、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)よりも重量平均分子量(Mw)が小さく、かつホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系(共)重合体(H)を含有することを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項17】
前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の重量平均分子量(Mw)が500以上100,000以下の範囲であることを特徴とする請求項16に記載の光学フィルム用粘着剤組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の光学フィルム用粘着剤組成物から形成されてなる、光学フィルム用粘着剤層。
【請求項19】
請求項18に記載の光学フィルム用粘着剤層と、
前記粘着剤層の一方の面に設けられた光学フィルムと、
を有する、光学部材。
【請求項20】
前記光学フィルムと、前記光学フィルム用粘着剤層との間に、少なくとも1層の易接着処理層をさらに有する、請求項19に記載の光学部材。
【請求項21】
前記光学フィルムの、前記光学フィルム用粘着剤層と向き合う側の面に、第一の易接着処理層を有し、
前記光学フィルム用粘着剤層の、前記光学フィルムと向き合う側の面に、第二の易接着処理層を有する、請求項20に記載の光学部材。
【請求項22】
前記光学フィルムが偏光板である、請求項19~21のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項23】
請求項19~22のいずれか1項に記載の光学部材を、少なくとも1つ用いた、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用粘着剤組成物に関する。また、本発明は、当該光学フィルム用粘着剤組成物から形成される粘着剤層、当該粘着剤層を用いた光学部材、および当該光学部材を用いた画像表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の一種である液晶表示装置等の液晶パネルには、必要不可欠な偏光フィルム(偏光板)のほかに、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学フィルム等の光学部材が貼着されている。光学フィルム等の光学部材を液晶パネルに貼着する際、または2枚以上の同種もしくは異種の光学フィルム同士を貼着する際には、通常、粘着剤が使用されている。
【0003】
粘着剤の必要特性としては、環境促進試験として通常行われる加熱および加湿等による耐久試験に対して粘着剤に起因する剥がれや浮き等の不具合が発生しないという、粘着剤の接着状態での耐久性が求められている。特に近年、車載用パネルに使用される光学フィルムにおいては、従来と比べてより高温かつ高湿環境下での耐久試験で、粘着剤に起因する発泡または剥がれ等の不具合が発生しないことが求められている。
【0004】
また、粘着剤を使用して、光学フィルムを液晶パネルに貼り合わせる際、貼り合わせた位置を誤ったり、貼り合わせ面に異物が噛み込んだりしたような場合には、光学フィルムを液晶パネルから剥離し、再度の貼り合わせを行うことが必要である。特に、近年では、従来の液晶表示装置の作製工程に加え、ケミカルエッチング処理されたガラスを用いた薄型液晶パネル等の液晶表示装置の使用が増えていると共に、光学フィルムも薄く脆くなってきており、かような薄型液晶表示装置や薄型光学フィルムに対して、従来の耐久性だけを目指した粘着剤を用いると薄型液晶表示装置や薄型光学フィルムが割れてしまったり、破断してしまったりするという問題が出てきた。このため、係る剥離工程において、液晶表示装置等から糊残りなく、光学フィルムを容易に剥がすことができる再剥離性(「リワーク性」とも称する)という粘着剤の特性が要求されるようになってきている。また、薄型の液晶パネルにおいては、光学フィルムが加熱および加湿等での膨張または収縮により液晶パネルに反りが発生して額縁に接触して表示品位を低下させてしまうなどの問題が発生している。しかし、光学フィルムが加熱および加湿等での膨張または収縮を緩和するために粘着剤の応力緩和性を高めると加工性や打痕が悪化し、工程での不良率が悪化してしまう。
【0005】
またテレビジョン(TV)用等の汎用性の高い製品に使用される粘着型光学フィルムでは、より製造コストの削減が求められており、粘着剤製造のライン速度も高めることが必要になってきている。このように、加工性を確保した上で反り及び打痕を同時に抑制することができ、かつ耐久性及びリワーク性が高く、製造工程面において優れたハンドリング性を有する、品質の良好な粘着型光学フィルムを得ることができる光学フィルム用粘着剤が求められている。
【0006】
そこで、高温環境や高温高湿環境にさらされた後でも被着体から浮きや剥がれを低減し、さらに光漏れ評価が良好な粘着層を作製できる粘着剤として、アクリル系共重合体(A)と、イソシアネート基を有する化合物(B)とを含有する粘着剤であって、前記イソシアネート基を有する化合物(B)が、2官能イソシアネート化合物(b1)と、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有する数平均分子量500以上5000以下の化合物(b2)を反応させてなることを特徴とする粘着剤が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-171963号公報
【文献】特開2014-205843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討によると、上記特許文献1および2に記載の粘着剤組成物を以ってしても、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性が十分に満足できていなかった場合があり、それに加えて、リワーク性も十分ではなかったことが判明した。さらに、上記耐久性やリワーク性が十分でない場合に加えて、反り及び打痕の両方の発生を抑制することができない場合があることが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光学フィルム用の粘着剤組成物において、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立できる手段を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、上記耐久性とリワーク性とを両立した上で、更に反り及び打痕の両方を抑制できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の構成成分を有する粘着剤組成物によって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリレート共重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含む光学フィルム用粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位および(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を含み、前記(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位の含有量は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0.5質量%を超え10質量%以下であり、前記イソシアネート化合物(B)は、数平均分子量(Mn)が900以上10,000以下であり、かつ、イソシアネートモノマーおよびイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物を反応させてなるものを含有するものであり、前記イソシアネート化合物(B)の含有量は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下である、光学フィルム用粘着剤組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一形態によれば、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立することができる光学フィルム用粘着剤組成物が提供される。また、本発明の他の形態によれば、上記耐久性とリワーク性とを両立した上で、更に反り及び打痕を抑制できる光学フィルム用粘着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、説明する。
【0014】
{光学フィルム用粘着剤組成物}
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート共重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)と、を含み、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)は、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位および(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を含み、前記(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位の含有量は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0.5質量%を超え10質量%以下であり、前記イソシアネート化合物(B)は、数平均分子量(Mn)が900以上10,000以下であり、かつ、イソシアネートモノマーおよびイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物を反応させてなるものを含有するものであり、前記イソシアネート化合物(B)の含有量は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下である。
【0015】
かような構成を有する本発明の一形態による光学フィルム用粘着剤組成物によれば、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性と液晶パネルから光学フィルムを容易に剥がすことができるリワーク性とを両立することができる。また、本発明の他の形態による光学フィルム用粘着剤組成物によれば、上記耐久性とリワーク性とを両立した上で、更に反り及び打痕を抑制できる。
【0016】
一般的に、粘着剤層を有する光学フィルムまたは光学部材の耐久性を付与するために、当該粘着剤層を構成する粘着剤組成物の粘着力を一定の範囲まで高めるように工夫する。例えば上述した特許文献1および2では、「粘着力は3N/25mm以上10N/25mm以下であれば、実用上全く問題がない」と示唆されている。しかしながら、粘着力を高めれば高めるほど、また近年の光学フィルムの薄層化のために、係る光学フィルムを容易に剥がすことができ難くなり、よってリワーク性を満足することができなくなる。すなわち、耐久性とリワーク性とを同時に果たすことは困難である。また、特許文献1および2では、85℃で500時間を放置した後の耐熱性と60℃、相対湿度95%RHで500時間放置した後の耐湿熱性とを評価しているが、本発明者らの研究により、本発明のような過酷な環境下、すなわち高温(例えば、105℃で500時間)、高湿(例えば、60℃、相対湿度95%RHで500時間)、ヒートショック(例えば、85℃と-40℃の環境下でそれぞれ30分放置して、繰り返し300時間で処理)のような環境下では、特許文献1および2に開示されている粘着剤組成物の耐久性は十分でないことが分かった。その上、リワーク性も十分ではないことも分かった。また、上記耐久性やリワーク性が十分でない場合があり、さらに反りや打痕の発生を抑制することもできない場合があることがわかった。これに対して、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、特定の構成成分を有することによって、過酷な環境下での耐久性とリワーク性とを両立させることに成功した。また上記耐久性とリワーク性とを両立した上で、更に反り及び打痕を抑制することにも成功した。
【0017】
以下、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0018】
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。また、「(メタ)アクリレート共重合体(A)」を、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)」または「共重合体(A)」とも称する。
【0019】
<(メタ)アクリレート共重合体(A)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、(メタ)アクリレート共重合体(A)を必須に含む。(メタ)アクリレート共重合体(A)が後述のイソシアネート化合物(B)と反応して、さらに後述の架橋剤(C)が存在する場合には、架橋剤(C)とも反応して、架橋構造を形成することにより、接着性(粘着性)が発揮される。本発明では、共重合体(A)の分子量等の物性に基づき、高分子量の第1実施形態と、低分子量でありかつ組成物が所定の粘度等を有する第2実施形態とに分けて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、100万以上250万以下であることが好ましく、130万以上220万以下であることがより好ましく、150万以上200万以下であることがさらに好ましい。これは、上記範囲の高分子量の成分(A)を特定鎖長のイソシアネート化合物(B)で架橋させることでネットワークを緩くして緩やかな網目構造にすることで、高温で偏光板の収縮が大きくなっても剥がれ難くなるからである。これにより、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)でも剥がれが発生しないなど、過酷な環境下での耐久性の大幅な向上が図れるという観点から好ましい。本発明の第1実施形態に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、後述する重合反応で使用する重合開始剤や、反応温度および反応時間などの反応条件等を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は実施例に示す方法によって測定されうる。
【0021】
また、本発明の第1実施形態に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性および塗工時の生産性の向上という観点から、30万以上190万以下であることが好ましく、40万以上170万以下であることがより好ましく、50万以上160万以下であることが特に好ましい。また、本発明の第1実施形態に係る共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、後述する重合反応で使用する重合開始剤や、反応温度および反応時間などの反応条件等を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、実施例に示す方法で測定されうる。
【0022】
また、本発明の第1実施形態に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性および塗工時の生産性の向上という観点から、1.1以上5.0以下であることが好ましく、1.2以上4.0以下であることがより好ましく、1.3以上3.0以下であることが特に好ましい。なお、分散度(Mw/Mn)は、実施例に示す方法で測定されうる。
【0023】
本発明の第1実施形態では、光学フィルム用粘着剤組成物は、上記共重合体(A)や後述するイソシアネート化合物(B)等の必須成分の他に、さらに必要に応じて溶剤を含みうる。かかる場合に、本発明の第1実施形態での光学フィルム用粘着剤組成物における固形分含有量は、特に制限されないが、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性および塗工時の生産性の向上という観点から、光学フィルム用粘着剤組成物の全量100質量%に対して、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上30質量%以下である。一方、本発明の第1実施形態での光学フィルム用粘着剤組成物における溶剤の含有量は、特に制限されないが、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性および塗工時の生産性の向上という観点から、光学フィルム用粘着剤組成物の全量100質量%に対して、好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上88質量%以下である。
【0024】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、30万以上100万未満であることが好ましく、40万以上95万以下であることがより好ましく、50万以上90万以下であることがさらに好ましい。前記成分(A)が上記範囲の低分子量の場合、当該成分(A)の固形分量と溶剤量、更には粘着剤組成物の粘度を調節することにより、成分(A)の分子量は小さいが、特定鎖長のイソシアネート化合物(B)で架橋させてネットワークを形成し網目をかける(網目構造にする)ことで、従来、上記範囲の低分子量の成分(A)を用いた場合には高温で偏光板の収縮が大きくなるとすぐに剥がれていたものが、剥がれ難くなるという格別な効果を奏し得ることを見出したものである。また、成分(A)の低分子量による効果によって反りの発生抑制効果にも優れ、尚且つ低分子量ではあるが網目構造があることにより打痕の発生抑制効果にも優れる。また、成分(A)の低分子量化と粘度調整等の効果によって塗工時の生産性の大幅な向上効果にも優れる。このように過酷な環境下での耐久性(剥がれ抑制効果)および塗工時の生産性の大幅な向上効果に加え、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れるという観点から好ましい。本発明の第2実施形態に係る共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、後述する重合反応で使用する重合開始剤や、反応温度および反応時間などの反応条件等を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。
【0025】
また、本発明の第2実施形態に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、耐久性および塗工時の生産性の大幅な向上効果に加え、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れるという観点から、5万以上40万以下であることが好ましく、7万以上30万以下であることがより好ましく、8万以上20万以下であることが特に好ましい。また、本発明の第2実施形態に係る共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、後述する重合反応で使用する重合開始剤や、反応温度および反応時間などの反応条件等を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。
【0026】
また、本発明の第2実施形態に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、耐久性とリワーク性とが両立し、更に塗工時の生産性の大幅な向上効果に加え、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れるという観点から、2.0以上20以下であることが好ましく、2.5以上15以下であることがより好ましく、3.0以上10以下であることが特に好ましい。なお、分散度(Mw/Mn)は、実施例に示す方法で測定されうる。
【0027】
本発明の第2実施形態では、光学フィルム用粘着剤組成物は、上記共重合体(A)や後述するイソシアネート化合物(B)等の成分の他に、塗工時の生産性の大幅な向上効果等の観点から、溶剤を含むのが好ましい。本発明の第2実施形態での光学フィルム用粘着剤組成物における共重合体(A)を含む固形分含有量は、特に制限されないが、耐久性および塗工時の生産性の大幅な向上効果に加え、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れるという観点から、光学フィルム用粘着剤組成物の全量100質量%に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、22質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましく、23質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。特に上記範囲内に制御することにより、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れ、更に塗工時の固形分が高く塗工速度をこれまで以上に高い水準を確保でき、製造工程面において優れたハンドリング性を有する、品質の良好な粘着型光学フィルムを得ることができる光学フィルム用粘着剤組成物を提供できる。一方、本発明の第2実施形態での光学フィルム用粘着剤組成物における溶剤の含有量は、特に制限されないが、耐久性および塗工時の生産性の大幅な向上効果に加え、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れるという観点から、光学フィルム用粘着剤組成物の全量100質量%に対して、80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上78質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以上77質量%以下であることが特に好ましい。本発明の光学フィルム用粘着剤組成物における固形分含有量は、光学フィルム用粘着剤組成物を構成する各成分量を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。固形分含有量は、光学フィルム用粘着剤組成物から非固形分成分を除去(固液分離)することにより計測することができる。本発明の光学フィルム用粘着剤組成物における溶剤の含有量も、光学フィルム用粘着剤組成物を構成する各成分量を適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。溶剤の含有量は、光学フィルム用粘着剤組成物から溶剤を揮発・乾燥することにより計測することができる。
【0028】
(溶剤)
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、上記第1及び第2実施形態で説明したように、必要に応じて溶剤を含みうる。かかる溶剤としては、特に制限されないが、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0029】
さらに、本発明の第2実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物において、23℃でのB型粘度計20rpmでの粘度は、特に制限されないが、耐久性とリワーク性とを両立し、塗工時の生産性の大幅な向上効果に加え、反りと打痕の発生抑制効果のバランスが特に優れるという観点から、200mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以上4500mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以上4000mPa・s以下であることがさらに好ましく、500mPa・s以上3500mPa・s以下であることが特に好ましい。本発明の第2実施形態に係る光学フィルム用粘着剤組成物の23℃でのB型粘度計20rpmでの粘度は、(メタ)アクリレート共重合体(A)の分子量、固形分、増粘剤などの粘性を調整できる添加剤の添加により適宜調整することによって当業者であれば容易に制御することができる。なお、本明細書において、光学フィルム用粘着剤組成物の23℃でのB型粘度計20rpmでの粘度は、実施例に示す方法で測定されうる。
【0030】
以下、上記した第1及び第2実施形態に共通の各成分について説明する。
【0031】
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体(A)は、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位および(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位を含む。なお、本明細書において、「共重合体Xが、モノマーY由来の構成単位およびモノマーY由来の構成単位を含む」とは、共重合体Xを共重合によって得る際に、使用される原料モノマーとしては、モノマーYとモノマーYとを含むことを意味する。したがって、本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)は、換言すると、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、を共重合してなる共重合体である。
【0032】
以下、本発明に係る共重合体(A)を構成する各モノマー由来の構成単位について順に説明する。
【0033】
〔(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a1)」とも称する)を含む。かような成分(a1)は、本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の構成単位として含まれることによって、粘着性の確保や基本特性を確保する意義を有すると考えられる。
【0034】
本発明において、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの構造は、特に制限されず、(メタ)アクリレートのエステル部位に、アルキル基が導入されている形態であれば、特に制限されない。
【0035】
係るアルキル基の炭素数は特に制限はないが、汎用性、価格および取り扱い等の観点から1以上20以下であることが好ましく、1以上12以下であることがより好ましく、1以上10以下であることがさらに好ましく、1以上8以下であることがよりさらに好ましく、1以上6以下であることが特に好ましい。また、アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のいずれであってもよいが、ガラス転移温度を低くする観点から、直鎖状または分枝鎖状であることが好ましい。なお、アルキル基が環状の場合、炭素数は3以上である。
【0036】
係るアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、t-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、またはオクタデシル基等が挙げられる。特に、粘着性の確保や基本特性を確保する観点から、メチル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基が好ましい。
【0037】
よって、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、加熱耐久性および接着力(特にリワーク性)の向上、反りおよび打痕の発生抑制の観点から、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0038】
本発明に係る共重合体(A)における成分(a1)の含有量(原料モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートモノマーの配合量)は、特に制限されないが、後述する他の原料モノマーの含有量との良好なバランスや、耐久性の向上、反りおよび打痕の発生抑制等の観点から、当該(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、64.5質量%以上99.5質量%未満であることが好ましく、80質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上99質量%以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%」とは、(メタ)アクリレート共重合体(A)を共重合により得る際に、使用される全ての原料モノマーの全量100質量%であることを意味する。
【0039】
〔(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a2)」とも称する)を含む。かような成分(a2)が、分子間架橋剤との反応性に富むため、本発明に係る共重合体(A)の構成単位として含まれることによって、後述する粘着剤層の凝集性や耐熱性を向上する意義を有すると考えられる。また、本発明者らの研究により、共重合体(A)の成分(a2)の部分が本発明に係るイソシアネート化合物(B)と反応し、後述する粘着剤層の架橋密度が上がり粘着剤層が硬くなり、再剥離時の粘着剤層の変形量が小さく(糊引きの長さが小さく)なり、これによって接着力が下がり、望ましいリワーク性が得られ、かつ耐久性においても剥がれを抑制できることがわかった。さらに共重合体(A)の構成単位やその成分量を変えずに重量平均分子量や粘度などを変化させることで反り及び打痕の発生を抑制できることも分かった。
【0040】
本発明において、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの構造は、特に制限されず、(メタ)アクリレートモノマーの一部にヒドロキシル基が導入されている形態であれば、特に制限されない。
【0041】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられ、さらに、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等が挙げられる。なかでも、後述するイソシアネート化合物(B)や架橋剤(C)を使用する際に、架橋点として効率良く機能する観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0042】
本発明に係る共重合体(A)における成分(a2)の含有量(原料モノマーとしてのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの配合量)は、当該(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0.5質量%を超え10質量%以下である。0.5質量%以下であると、架橋反応点が少なくなり過ぎてしまい、耐久性が悪化する。他方で、10質量%を超えると、配合する極性モノマーの割合が相対的に多くなり、形成される粘着剤層の極性も高くなり耐久性が劣ってしまう。
【0043】
成分(a2)の含有量は、本発明の効果をより一層発揮させるという観点から、好ましくは0.6質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5.0質量%以下である。
【0044】
〔(a3)前記(a1)および(a2)以外のモノマー由来の構成単位〕
本発明に係る共重合体(A)は、任意成分として、上述した成分(a1)および(a2)と共重合可能な、前記(a1)および(a2)以外のモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a3)」とも称する)を含むことができる。
【0045】
成分(a3)として、本発明の効果を損なわない限り、公知のものを使用することができる。
【0046】
例えば、成分(a3)として、不飽和カルボン酸を用いることができる。係る不飽和カルボン酸の例として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。なかでも、上述した(メタ)アクリレートモノマーとの重合性が優れている観点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。なお、これらは単独または2種以上混合して用いることができる。本発明において、不飽和カルボン酸は、成分(a3)として含まれる際の含有量は、耐久性とリワーク性との両立化の観点から、(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
また、成分(a3)として、芳香環含有(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。係る芳香環含有(メタ)アクリレートモノマーの具体例として、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p-t-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するものが挙げられる。なかでも、光漏れ等の光学的特性を付与するという観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。本発明において、芳香環含有(メタ)アクリレートモノマーは、成分(a3)に含まれる際の配合量は、光漏れ等の光学的特性を付与するという観点から、(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
さらに、成分(a3)として、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するアクリルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアミノ基を有するアクリルモノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するアクリルモノマー;2-メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスファート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリルモノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2-スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリルモノマー;2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリロイルモロフォリン、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0049】
なお、上述したものは、成分(a3)として単独または2種以上混合して用いることができる。また、本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)を製造する際に、後述する架橋剤との反応を容易に制御できるという観点から、成分(a3)として、共重合性の問題で分子量が高くなりにくいなどの問題から、オレフィン系モノマーを含有しない方が好ましい。
【0050】
本発明に係る共重合体(A)においては、前記(a1)(a2)を含む成分(すなわち、前記成分(a1)~(a3))の中で、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位(以下、単に「成分(a’)」とも称する)を(選択的に)含有するのが好ましい。かような成分(a’)は、打痕耐性が必要となる常温での粘着剤層の硬さを確保でき、かつ反りが発生する加熱耐久性試験温度である80℃以上では軟化して粘着剤層に応力緩和性を持たせて、反りを抑制することが可能であるほか、上述した(メタ)アクリレートモノマーとの重合性が優れ、耐久性および接着力(特にリワーク性)を向上し、反りおよび打痕の発生を抑制できる点で優れている。
【0051】
((メタ)アクリル系(共)重合体(H))
本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物においては、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)とは別に、さらに、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)よりも重量平均分子量(Mw)が小さく、かつホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を含む(メタ)アクリル系(共)重合体(H)を含有するのが好ましい。かような(メタ)アクリル系(共)重合体(H)は、アクリル樹脂としては(メタ)アクリレート共重合体(A)と同じであるが、高軟化点樹脂(G)と同じく別途低分子成分の(メタ)アクリル系(共)重合体(H)として別箇存在するために、当該(メタ)アクリル系(共)重合体(H)を含む光学フィルム用粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層中を自由に動くことができ応力緩和性を付与しやすくなる点で優れている。また高軟化点樹脂(G)とは異なり、(メタ)アクリレート共重合体(A)と同じアクリル成分であるために、相溶性が良好で粘着剤層が、高軟化点樹脂(G)を用いた場合(白濁化は少ないが生じ得る)と比較して白濁化することが少なくなる(好ましくは白濁しなくなる)という点で優れている。そのため、上記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)を加えて、上記したような諸特性を持たせることで、打痕耐性が必要となる常温での粘着剤層の硬さを確保でき、かつ反りが発生する加熱耐久性試験温度である80℃以上では軟化して粘着剤層に応力緩和性を持たせて、反りを抑制することが可能である点で優れている。
【0052】
((メタ)アクリル系(共)重合体(H)の重量平均分子量)
前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の重量平均分子量(Mw)は、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)よりも重量平均分子量(Mw)が小さければ特に制限されないが、500以上100,000以下であることが好ましく、800以上80,000以下であることがより好ましく、1,000以上50,000以下であることがさらに好ましい。これは、上記範囲の低分子量の(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の構成成分は、高分子量の(メタ)アクリレート共重合体(A)と似ているが、低分子成分として別箇に存在するために、粘着剤層中を自由に動くことができ応力緩和性を付与しやすくなる。また、高分子量の(メタ)アクリレート共重合体(A)と同様のアクリル成分であるために、相溶性が良好で粘着剤層が白濁化することが生じ難くなる(好ましくは白濁しなくなる)ため好ましい。
【0053】
本発明に係る光学フィルム用粘着剤組成物では、(メタ)アクリレート共重合体(A)において前記成分(a’)を含有し、さらに前記(メタ)アクリレート共重合体(A)とは別に前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)を含有していてもよい。
【0054】
本発明では、ガラス転移温度が50℃以上の成分である前記成分(a’)および前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の効果を効率よく発揮するには、ガラス転移温度が50℃以上の成分が前記(メタ)アクリレート共重合体(A)の構成成分であってもよいし、前記(メタ)アクリレート共重合体(A)とは別に前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)として存在してもよい。すなわち、他の(メタ)アクリレート共重合体(A)の成分と成分(a’)とを共重合してもよいし、多段階の重合により他の(メタ)アクリレート共重合体(A)と成分(a’)とを重合してもよいし、(メタ)アクリレート共重合体(A)とは別に(メタ)アクリル系(共)重合体(H)をブレンドしてもよい。
【0055】
本発明において、前記成分(a’)または前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)で用いられる、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマーの構造は、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上であれば特に制限されるものではない。
【0056】
このうち前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)としては、下記の構成になる。すなわち、前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には、例えば、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモロフォリン、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、S-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、N-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1~20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。アクリル系オリゴマーの具体例としては、東亞合成株式会社製「ARUFON(アルフォン)(登録商標)」、綜研化学株式会社製「アクトフロー(登録商標)」、BASFジャパン株式会社製「JONCRYL(登録商標)」などが挙げられる。これらの構成の中でホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上200℃以下のものが好適に用いられる。
【0057】
上記した成分(a’)または(メタ)アクリル系(共)重合体(H)で用いられる、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマーの具体例の一部につき、具体的なモノマーの後に括弧書きで当該モノマーを用いたホモポリマーのガラス転移温度を示した具体例を例示するが、これらに制限されるものではない。上記した成分(a’)または前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)で用いられる、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、イソボニルアクリレート(Tg94℃)、ジシクロペンテニルアクリレート(Tg120℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg120℃)、アクリロニトリル(Tg97℃)、アクリルアミド(Tg165℃)、N-メチロールアクリルアミド(Tg150℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg119℃)、N-イソプロピルアクリルアミド(Tg134℃)、ジエチルアクリルアミド(Tg81℃)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(Tg134℃)、ダイアセトンアクリルアミド(Tg77℃)、アクリロイルモロフォリン(Tg145℃)、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸(Tg55℃)、メチルメタリクレート(Tg105℃)、エチルメタクリレート(Tg65℃)、t-ブチルメタクリレート(Tg107℃)、シクロヘキシルメタクリレート(Tg66℃)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(Tg60℃)、ベンジルメタクリレート(Tg54℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg180℃)、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(Tg50℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg175℃)などが挙げられる。なお、これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0058】
本発明に係る共重合体(A)における前記成分(a’)の含有量(原料モノマーとしてのホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマーの配合量)は、当該(メタ)アクリレート共重合体(A)を構成する構成単位の全量100質量%に対して、本発明の効果をより効率的に奏する観点から、好ましくは0質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上15質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。成分(a’)の含有量が20質量%以下であると、打痕と反り抑制の両立をバランス的にとりやすい等の点で好ましい。なお、前記成分(a’)の含有量は、成分(a1)(a2)を含む各成分の含有量の一部(ないし全部)に含まれるものである。
【0059】
本発明に係る前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の含有量は、光学フィルム用粘着剤組成物全量100質量%に対して、本発明の効果をより効率的に奏する観点から、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上15質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の含有量が20質量%以下であると、打痕と反り抑制の両立をバランス的にとりやすい等の点で好ましい。
【0060】
前記成分(a’)または前記(メタ)アクリル系(共)重合体(H)で用いられる(メタ)アクリルモノマーから得られるホモポリマーのガラス転移温度は、50℃以上であればよいが、より打痕と反り抑制のバランスをとれる可能性が高くなる観点から、当該ガラス転移温度は50℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下がより好ましく、60℃以上120℃以下がさらに好ましい。当該ガラス転移温度は、前記ホモポリマー(単独重合体)の示差走査熱量分析によって測定される値である。
【0061】
本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)において、成分(a1)、(a2)および(a3)の合計量は100質量%であるが、任意の成分(a3)の含有量(任意の成分(a3)として複数の成分が配合される場合はその合計の含有量)は、本発明の効果をより効率的に奏する観点から、好ましくは0質量%以上35質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以上25質量%以下である。
【0062】
上述した(メタ)アクリレート共重合体(A)は、1種の共重合体のみを単独で使用してもよいし、2種以上の共重合体を併用しても構わない。
【0063】
〔(メタ)アクリレート共重合体(A)の製造方法〕
次に、(メタ)アクリレート共重合体(A)の製造方法について説明する。本発明において、(メタ)アクリレート共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。重合開始剤は、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれを用いてもよい。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他にまたはそれに加えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。なかでも、熱重合開始剤を用いた溶液重合法または光重合開始剤を用いた塊状重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるため、より好ましい。なお、上記したホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマー由来の構成単位を有する(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の製造方法に関しては、使用するモノマーや重合開始剤の量や種類など重合条件を変更する以外は、(メタ)アクリレート共重合体(A)の製造方法と同様にして製造することができる。
【0064】
熱重合開始剤を用いた溶液重合法では、(メタ)アクリレート共重合体(A)の原料となる(a1)アルキル(メタ)アクリレートモノマーおよび(a2)ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、任意に含まれる(a3)前記(a1)および(a2)以外のモノマーからなる原料モノマー(これらの中には(a’)ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリルモノマーを含んでいてもよい)溶液に熱重合開始剤を添加し、重合反応を行う。より詳細には、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を用い、原料モノマーの合計量100質量%に対して、熱重合開始剤を好ましくは0.01質量%以上1質量%以下を添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度40℃以上90℃以下(あるいは50℃以上90℃以下)で、3時間以上10時間以下反応させる方法が挙げられる。
【0065】
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2.4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェイト ジハイドレイト、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレイト、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ化合物;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。これら熱重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0066】
光重合開始剤を用いた塊状重合法では、例えば、原料モノマーと、光重合開始剤とを添加し、窒素雰囲気下で反応開始温度を20℃以上35℃以下として活性エネルギー線を照射する。反応系内の温度が、反応開始温度から5℃以上15℃以下上昇した段階で、反応系内に空気を導入するなどして反応を停止させ、(メタ)アクリレート共重合体(A)を得る方法が挙げられる。
【0067】
塊状重合法で用いられる活性エネルギー線の例としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などが挙げられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200nm以上400nm以下の紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトなどの光源を用いて照射することができる。照度は3.2mW/cm以上5.6mW/cm以下が好ましい。
【0068】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノンをはじめとするベンゾフェノン類;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどが挙げられる。これら光重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0069】
光重合開始剤は市販品を用いてもよく、市販品の例としては、例えばイルガキュア(登録商標)184、819、907、651、1700、1800、819、369、261、ダロキュア(登録商標)TPO、ダロキュア(登録商標)1173(以上、BASFジャパン株式会社製)、エザキュア(登録商標)KIP150、TZT(以上、DKSHジャパン株式会社製)、カヤキュア(登録商標)BMS、DMBI(以上、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0070】
光重合開始剤の使用量は、原料モノマーの合計量100質量%に対して、好ましくは0.0005質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.002質量%以上0.5質量%以下である。
【0071】
また、(メタ)アクリレート共重合体(A)の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することもできる。例えば、メチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸およびそのエステル、2-エチルヘキシルチオグリコール、チオグリコール酸オクチルなどのメルカプタン類;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;クロルエタン、フルオロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒドなどのカルボニル類;メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、α-メチルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0072】
<イソシアネート化合物(B)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物には、必須成分として、イソシアネート化合物(B)を含む。また、本発明に係るイソシアネート化合物(B)は、数平均分子量(Mn)が900以上10,000以下であり、かつ、イソシアネートモノマーおよびイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物を反応させてなるもの(単に成分(B1)ともいう)を含有するものである。かようなイソシアネート化合物(B)を含むことで、上述した本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)の架橋構造の密集化を抑制しながら、架橋点間距離が長いために緩やかな架橋効果を発現させることができる。これによって、加熱耐久性としての発泡抑制および剥がれの抑制を両立させることができる。さらに、反り及び打痕の発生を抑制することができ、かつ耐久性にも優れる。
【0073】
また、本発明に係るイソシアネート化合物(B)として、数平均分子量(Mn)が900未満のイソシアネート化合物を用いると、架橋点間距離が短く架橋構造の密集化が起こり、数平均分子量(Mn)が10,000を超えるイソシアネート化合物を用いると、架橋点間が長くなりすぎて高度な耐久性を確保することが困難となる。他方で、本発明の効果をより一層発揮させるという観点から、数平均分子量(Mn)は、900以上7,000以下であることが好ましく、1,000以上5,000以下であることがより好ましい。なお、イソシアネート化合物(B)の数平均分子量(Mn)は、実施例に示す(メタ)アクリレート共重合体(A)の数平均分子量の測定方法と同様な方法で求めることができる。
【0074】
また、本発明に係るイソシアネート化合物(B)として、成分(B1)を主要成分として含有することにより、上記した効果を有効に発現することができる。すなわち、本発明では、上記した効果を有効に発現することができる範囲内であれば、成分(B1)のほかにも、イソシアネートモノマーおよびイソシアネート基と反応可能な官能基を1個または3個以上有する化合物を反応させてなるもの(成分(B1)以外のもの)を含有していてもよい。主要成分としての成分(B1)の含有量は、上記した効果を有効に発現する観点から、イソシアネート化合物(B)全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下、特に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0075】
本発明に係るイソシアネート化合物(B)としては、合成して得られるものであってもよく、市販品をそのまま使用されてもよい。
【0076】
例えば、多価アルコールと過剰量のイソシアネートモノマーとを反応させてなるイソシアネート化合物を用いることができる。なお、数平均分子量900以上10,000以下のイソシアネート化合物は、反応させる多価アルコールおよびイソシアネートモノマー等の分子量または反応仕込み比を適宜に調整することによって得られる。また、成分(B1)の原料(合成成分)であるイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物としては、例えば、以下に示す多価アルコールのうち、2価アルコールなどのイソシアネート基と反応可能な官能基を2個有する化合物を用いればよい。またイソシアネート基と反応可能な官能基を1個または3個以上有する化合物としては、例えば、以下に示す多価アルコールのうち、2価アルコール等の化合物以外の化合物を用いればよい。
【0077】
ここで、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;前記2価アルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ポリエチレンアジペートジオール(PEA)、ポリエチレンセバセートジオール(PES)などのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドなどのα-オレフィンエポキシド、ならびにカージュラE10(商品名)(シェル化学社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物と酸とを反応してなる多価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;前記3価以上のアルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、および水添ビスフェノールFなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
すなわち、本発明に係るイソシアネート化合物(B)として、上記の多価アルコールに、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のイソシアネートモノマーを反応させて得られる付加物が挙げられ、例えば、トリレンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのポリエチレンアジペートジオール(PEA)とポリカプロラクトンジオール(PCL)付加物、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、およびトリレンジイソシアネートのポリプロピレングリコール(PPG)付加物などが挙げられる。中でも、トリレンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのポリエチレンアジペートジオール(PEA)およびポリカプロラクトンジオール(PCL)の付加物、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、およびトリレンジイソシアネートのポリプロピレングリコール(PPG)付加物などが、加熱耐久性向上と湿熱耐久性確保の観点から好ましい。また、中でも、トリレンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)付加物、トリレンジイソシアネートのポリプロピレングリコール(PPG)付加物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのポリプロピレングリコール(PPG)付加物などが、反り及び打痕の発生を抑制することができ、かつ耐久性及びリワーク性に優れるという観点から好ましい。
【0079】
本発明に係るイソシアネート化合物(B)は、トリメチロールプロパン由来の骨格のみを構造中に有しないことが好ましい。これは、イソシアネート化合物(B)がトリメチロールプロパン由来の骨格を構造中に有する化合物のみからなる場合、3官能まで架橋密度が大きくなると架橋構造が密集しすぎてしまい、耐久性とのバランスがとれず、加熱耐久性試験時や湿熱耐久性試験時に剥がれが発生する。また、反りが発生するようになる。一方、トリメチロールプロパン由来の骨格のみを構造中に有しない場合には、上記のような問題が発生しにくいため、好ましい。但し、本発明の作用効果を損なわない範囲であれば、成分(B1)以外に上記トリメチロールプロパン由来の骨格を構造中に有するものを含んでいてもよい。その含有量は、イソシアネート化合物(B)全量から上記成分(B1)の含有量を除いた残量であればよい。具体的には、トリメチロールプロパン由来の骨格を構造中に有するものの含有量は、発明の効果を有効に発現する観点から、イソシアネート化合物(B)全量に対して、好ましくは0質量%以上50質量%以下、より好ましくは0質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上20質量%以下、特に好ましくは0質量%以上10質量%以下である。
【0080】
また、イソシアネート化合物(B)を合成する際には、例えば、攪拌装置及び温度制御装置付きの反応容器に、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)を減圧下(4kPa)100℃で1時間脱水後、40℃まで冷却して2,4-トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製「TDI-100」)を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら70℃まで徐々に昇温して同温度で7時間反応させたものなどが挙げられる。反応条件としては、窒素雰囲気下、反応温度60℃以上100℃以下において2時間以上10時間以下反応することが好ましい。
【0081】
本発明に係るイソシアネート化合物(B)(すなわち、数平均分子量が900以上10,000以下であり、かつ主要成分として上記成分(B1)を(上記含有量の範囲で)含むもの)として、市販品を使用する場合には、市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社製の商品名:「サンプレン(登録商標)P-6090」(PTMG/MDI系)、「サンプレン(登録商標)P-7315」(PEA-PCL/MDI系)、「サンプレン(登録商標)P-663L」(PTMG/TDI系)、「サンプレン(登録商標)P-664」(PTMG/TDI系)、「サンプレン(登録商標)P-665」(PTMG/TDI系)、「サンプレン(登録商標)P-667」(PTMG/TDI系)、「サンプレン(登録商標)P-868」(PTMG/HMDI系)、「サンプレン(登録商標)P-870」(PTMG/HMDI系)、「サンプレン(登録商標)C-810」(PPG/TDI系)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明において、イソシアネート化合物(B)のNCO%は、特に限定されないが、0.5%以上20%以下であることが好ましく、0.5%以上15%以下であることがより好ましく、1.0%以上10%以下であることが特に好ましい。NCO%が、0.5%以上であれば、上述した本発明に係る(メタ)アクリレート共重合体(A)を架橋させることが十分にでき、耐熱性(耐発泡性)の効果に寄与できる。また、NCO%が20%以下であれば、加熱時または湿熱時の偏光板の収縮や膨張に耐えることができ、剥がれを抑制する効果に寄与できる。また、打痕の発生を抑制する効果にも寄与できる。なお、NCO%は、実施例に記載の方法によって求めることができる。
【0083】
本発明において、イソシアネート化合物(B)の含有量は、上述した(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下である。0.01質量部未満であると、架橋構造が不足してしまい耐熱性(耐発泡性)が不足する。他方で、20質量部を超えると、架橋構造が密集しすぎてしまい加熱耐久性試験時や湿熱耐久性試験時に剥がれが発生する。また、反りが発生する。
【0084】
イソシアネート化合物(B)の含有量は、本発明の効果をより一層発揮させるという観点から、(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、好ましく0.05質量部以上15質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、特に好ましくは0.2質量部以上8質量部以下である。
【0085】
<架橋剤(C)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、上述したイソシアネート化合物(B)以外の架橋剤(C)をさらに含むことが好ましい。ここで、「イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤(C)」と規定しているのは、(メタ)アクリレート共重合体(A)を架橋する効果を有する「イソシアネート化合物(B)」と区別するためである。なお、本明細書において、「イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤(C)」を、単に「架橋剤(C)」とも称する。上述したように、イソシアネート化合物(B)は、(メタ)アクリレート共重合体(A)を緩やかに架橋させることができるのに対して、ここで、架橋剤(C)をさらに含むことによって、耐久性をより良化できる。また、打痕の発生をより効果的に抑制することができる。
【0086】
本発明において、架橋剤(C)は、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびイソシアネート系架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの架橋剤を含むことで上記した架橋剤(C)の含有効果をより一層発揮させることができるため好ましい。以下では、各種の架橋剤について説明する。
【0087】
〔イソシアネート系架橋剤〕
架橋剤(C)として好適に用いられるイソシアネート系架橋剤は、上述したイソシアネート化合物(B)以外のものであれば、特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のイソシアネートモノマー、またはそのアダクト体、ビュレット体、及びイソシアヌレート体などが挙げられ、架橋速度や(メタ)アクリレート共重合体(A)との相溶性などを考慮すると、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましく、キシリレンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が特に好ましい。また、これらのイソシアネート系架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。かようなイソシアネート化合物系架橋剤を用いる場合には、(メタ)アクリレート共重合体(A)のヒドロキシル基1モルに対して、イソシアネート基が0.05モル以上100モル以下になる比率で含有することが好ましい。
【0088】
また、これらのイソシアネート系架橋剤は、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用しても構わない。
【0089】
市販品としては、例えば、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、コロネート(登録商標)HX、コロネート(登録商標)2030、コロネート(登録商標)2031(以上、東ソー株式会社製)、タケネート(登録商標)D-102、タケネート(登録商標)D-110N、タケネート(登録商標)D-200、タケネート(登録商標)D-202(以上、三井化学株式会社製)、デュラネート(登録商標)24A-100、デュラネート(登録商標)TPA-100、デュラネート(登録商標)TKA-100、デュラネート(登録商標)P301-75E、デュラネート(登録商標)E402-90T、デュラネート(登録商標)E405-80T、デュラネート(登録商標)TSE-100、デュラネート(登録商標)D-101、デュラネート(登録商標)D-201(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、スミジュール(登録商標)N-75、N-3200、N-3300(以上、住化バイエルウレタン株式会社)等が挙げられる。これらの中で、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HL、コロネート(登録商標)HX、タケネート(登録商標)D-110N、デュラネート(登録商標)24A-100、デュラネート(登録商標)TPA-100が挙げられる。なかでも、タケネート(登録商標)D-110N、コロネート(登録商標)L、コロネート(登録商標)HX、デュラネート(登録商標)24A-100が好ましい。
【0090】
また、これらのイソシアネート系架橋剤は、ブロック化されていないイソシアネート化合物の形態で使用されてもよく、イソシアネート基を保護するブロック化剤と反応させて得られるブロックイソシアネート化合物の形態で使用されてもよい。かようなブロック剤を用いたブロックイソシアネート化合物としては、合成で得られたものでもよいし、市販品でもよい。市販品としては、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネート(登録商標)MF-B60X(ブロック1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート)、デュラネート(登録商標)MF-K60X(ブロック1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート)、東ソー株式会社製のコロネート(登録商標)AP-M、2503、2507、2513、2515、ミリオネート(登録商標)MS-50、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)B-830(ブロックトリレンジイソシアネ-ト)、B-815N(ブロック4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))、B-842N(ブロック1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)、B-846N(ブロック1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)、B-874N(ブロックイソホロンンジイソシアネ-ト)、B-882N(ブロック1,6-ヘキサメチレンジイソシアネ-ト)、大日本インキ化学工業株式会社製のバーノック(登録商標)D-500(ブロックトリレンジイソシアネ-ト)、D-550(ブロック1,6-ヘキサメチレンジイソシアネ-ト)、第一工業製薬株式会社製のエラストロン(登録商標)BN-P17(ブロック4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネ-ト)、BN-04、BN-08、BN-44、BN-45(以上、ブロックウレタン変性多価イソシアネート)などが挙げられる。このうち、デュラネート(登録商標)MF-K60Xが特に好ましい。
【0091】
なお、本発明においてはブロックイソシアネートの場合はブロック化剤が外れた時のイソシアネート部分のみの数平均分子量を架橋剤(C)の分子量として扱うこととする。その理由は、本発明の架橋剤においては、高分子鎖のネットワークに取り込まれる架橋剤部分の分子量がその効果に大きな役割を果たすため、架橋反応時に脱離するブロック化剤は数平均分子量には組み込まない方が良いためである。
【0092】
粘着剤組成物の耐久性をより向上させる観点から、イソシアネート系架橋剤は、ブロック化されていないイソシアネート化合物の形態で使用されることが好ましい。
【0093】
〔カルボジイミド系架橋剤〕
本発明において、カルボジイミド系架橋剤は、特に制限されないが、一例を挙げると、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが使用される。
【0094】
上記脱炭酸縮合反応に供されるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0095】
また、上記脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、あるいはこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0096】
上記高分子量ポリカルボジイミドは、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用しても構わない。
【0097】
市販品としては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)シリーズが挙げられる。なかでも、カルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0098】
〔オキサゾリン系架橋剤〕
本発明において、オキサゾリン系架橋剤は、特に制限されないが、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーや、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーといった、オキサゾリン基含有ポリマーが好ましく使用される。
【0099】
オキサゾリン基としては、例えば、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、4-オキサゾリン基などが挙げられ、なかでも、2-オキサゾリン基が好ましい。
【0100】
また、上記オキサゾリン基含有ポリマーは、オキサゾリン基以外に、ポリオキシアルキレン基を有していてもよい。
【0101】
オキサゾリン基含有ポリマーとしては、具体的には、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)WS-300、エポクロス(登録商標)WS-500、エポクロス(登録商標)WS-700などのオキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、例えば、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)K-1000シリーズ、エポクロス(登録商標)K-2000シリーズなどのオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーなどが挙げられる。
【0102】
〔エポキシ系架橋剤〕
本発明において、エポキシ系架橋剤は、特に制限されず、公知のエポキシ系架橋剤を適宜採用することができる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製の「TETRAD-C」、「TETRAD-X」、株式会社ADEKA製の「アデカレジン(登録商標)EPUシリーズ」や「アデカレジン(登録商標)EPRシリーズ」、株式会社ダイセル製の「セロキサイド(登録商標)」などが挙げられる。特に、エポキシ系架橋剤は、液状であることが好ましい。液状のエポキシ系架橋剤は、光学フィルム用粘着剤組成物を製造する際の混合操作が容易になる点で好ましい。
【0103】
〔アジリジン系架橋剤〕
本発明において、アジリジン系架橋剤は、特に制限されないが、アジリジン環を複数有する多官能アジリジン化合物を好適に用いることができる。多官能アジリジン化合物としては、例えば、米国特許第3,225,013号明細書、米国特許第4,490,505号明細書、及び米国特許第5,534,391号明細書、特開2003-104970号明細書に開示された化合物等が挙げられる。
【0104】
また、アジリジン系架橋剤の市販品として、例えば、株式会社日本触媒製のケミタイト(登録商標)PZ-33、ケミタイト(登録商標)DZ-22E等が挙げられる。
【0105】
本発明において、イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤(C)は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびアジリジン系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合において、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。2種以上を併用する場合は、同じ系統の架橋剤を2種以上(例えば、イソシアネート系架橋剤を2種)組み合わせてもよいし、異なる系統の架橋剤をそれぞれ1種以上(例えば、イソシアネート系架橋剤を1種とカルボジイミド系架橋剤を1種)組み合わせても構わない。
【0106】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に、架橋剤(C)を含む場合の、架橋剤(C)の含有量は、特に制限されないが、(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.03質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることが特に好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、加熱耐久性時に発泡を抑制できるという観点で好ましい。また、打痕の発生が抑制できるという観点で好ましい。一方、含有量が10質量部以下であると、架橋構造が密になりすぎずに過酷な環境下でも耐久性を確保できるという観点で好ましい。
【0107】
<シランカップリング剤(D)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、シランカップリング剤(D)をさらに含むことが好ましい。シランカップリング剤(D)は、光学フィルム用粘着剤組成物において、主に耐久性の向上や、被着体がガラスである場合におけるガラスとの密着性向上に寄与しうる。なお、本明細書において、「シランカップリング剤」とは、シロキサン結合(Si-O-Si結合)を有さず、分子内に2以上の反応基を有する化合物を意味する。
【0108】
本発明において、シランカップリング剤(D)は、特に制限されないが、具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス-(3-〔トリエトキシシリル〕プロピル)テトラスルフィド、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。さらには、エポキシ基(グリシドキシ基)、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有するシランカップリング剤と、これらの官能基と反応性を有する官能基とを含有するシランカップリング剤、他のカップリング剤、ポリイソシアネートなどを、各官能基について任意の割合で反応させて得られる加水分解性シリル基を有する化合物も使用できる。
【0109】
上記シランカップリング剤(D)は、合成してもよいし市販品を使用してもよい。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM-303、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-573、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0110】
なお、シランカップリング剤(D)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0111】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物にシランカップリング剤(D)を含む場合の、シランカップリング剤(D)の含有量は、特に制限されないが、(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.005質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.01質量部以上3質量部以下であり、特に好ましくは0.01質量部以上1質量部以下である。含有量が0.001質量部以上であると、過酷な環境下においても耐久性に対する効果が発現できるという観点で好ましい。一方、含有量が10質量部以下であると、低分子量化合物に由来する加熱発泡の悪化がなくなるという観点で好ましい。
【0112】
<シリケートオリゴマー(E)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、シリケートオリゴマー(E)をさらに含むことが好ましい。シリケートオリゴマー(E)は、光学フィルム用粘着剤組成物において、主にリワーク性の向上に寄与しうる。
【0113】
本発明に係るシリケートオリゴマー(E)は、下記化学式(1)に示される構造を有する。
【0114】
【化1】
【0115】
化学式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、またはフェニル基である。XおよびXは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上20以下のアルキル基、またはフェニル基である。nは1以上100以下の整数であり、2以上100以下の整数であることが好ましい。係るアルキル基およびフェニル基は、置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。また、アルキル基は直鎖構造であってもよく、分枝鎖構造であってもよい。
【0116】
本発明において、耐久性とリワーク性とが両立しやすいという観点から、化学式(1)に示される化合物の中でも、RおよびRならびにXおよびXの全てがメチル基である、メチルシリケートオリゴマーであることが好ましい。なお、シリケートオリゴマー(E)としては、上記で示される化合物のうち1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0117】
本発明において、シリケートオリゴマー(E)の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは300以上30,000以下であり、より好ましくは500以上25,000以下であり、さらに好ましくは600以上5,000以下である。重量平均分子量が300以上であると、リワーク性を確保しやすいという観点で好ましい。一方、30,000以下であると、過酷な環境下でも耐久性を確保しやすいという観点で好ましい。なお、重量平均分子量は、実施例に示す(メタ)アクリレート共重合体(A)の重量平均分子量の測定方法と同様な方法で求めることができる。
【0118】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物にシリケートオリゴマー(E)を含む場合の、シリケートオリゴマー(E)の含有量は、特に制限されないが、(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。含有量が0.01質量部以上であると、過酷な環境下においても耐久性に対する効果が発現できる点で好ましい。一方、含有量が50質量部以下であると、リワーク性と耐久性とを両立しやすくなる点で好ましい。
【0119】
<過酸化物(F)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、上記架橋剤(C)以外の架橋剤として、さらに過酸化物(F)を含有することが好ましい。ここで、過酸化物(F)につき「架橋剤(C)以外の架橋剤」と規定しているのは、「架橋剤(C)」と区別するためである。過酸化物(F)は、(メタ)アクリレート共重合体(A)と比較的緩やかに架橋させることができることによって、打痕の発生をより効果的に抑制することができ、高温で偏光板の収縮が大きくなっても、より剥がれにくくでき耐久性をより一層向上できるという点で好ましい。
【0120】
上記架橋剤(C)以外の架橋剤として好適に用いられる過酸化物(F)としては、加熱によりラジカルを発生して粘着剤組成物の架橋を達成できるものであれば使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が好ましくは80℃以上125℃以下、より好ましくは90℃以上125℃以下、さらに好ましくは90℃以上120℃以下の過酸化物を使用すると好ましい。なお、従来、過酸化ベンゾイルのような1分間半減期温度が150℃以上160℃以下のものを使用することが提案されているが、そうした場合には、生産ラインの温度も150℃以上160℃以下の範囲にしなければならない。粘着剤組成物は通常、剥離処理・離型処理されたPETフィルムのセパレータに塗布されているが、150℃以上の高温になると、このセパレータからオリゴマー成分が析出してくるようになる。これにより、当該析出物が異物となり外観を損ねたり歩留まり(生産性)を悪くしたりしていた。一方、過酸化物(F)の1分間半減期温度が上記範囲内、特に125℃以下であれば、そうした異物(析出物)を発生(析出)しない温度域になるため、上記したような問題を生じさせないうえで極めて有用である。一方、1分間半減期温度が80℃より低い過酸化物は実質的に入手が困難である。また、過酸化物が非常に不安定になり、粘着剤組成物の溶液のポットライフが持たなくなり、粘着剤組成物の溶液を配合している間に反応が始まるなど、安定性が悪くなるおそれがある。かかる観点から、過酸化物(F)の1分間半減期温度が上記範囲内、特に80℃以上であれば、多くの過酸化物が入手可能であり、また過酸化物も非常に安定に存在できる温度域になるため、上記したような問題を生じさせないうえで極めて有用である。なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であって、過酸化物の濃度が初期の半分になる時間である。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、例えば、日本油脂株式会社(日油株式会社)発行の有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)に記載されている。
【0121】
かような過酸化物(F)としては、ジイソブチルパーオキサイド(1分間半減期温度85.1℃)、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(同90.6℃)、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(同92.1℃)、ビス-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(同92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(同103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート、(同109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(同110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(同116.4℃)、ビス-n-オクタノイルパーオキシド(同117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同124.3℃)、ビス(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(同128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(同130.0℃)、t-ブチルパーオキシブチレート(同136.1℃)などが挙げられる。なかでも、架橋反応効率に優れるビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートやジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましく用いられる。特に、分解温度の観点からビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度92.1℃)がより好ましい。また、これらの過酸化物(F)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0122】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に、上記架橋剤(C)以外の架橋剤として過酸化物(F)を含む場合の、過酸化物(F)の含有量は、特に制限されないが、(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.02質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがさらに好ましい。含有量が0.02質量部以上であると、架橋により耐久性が確保できるという観点で好ましい。また、打痕の発生が抑制できるという観点で好ましい。一方、含有量が10質量部以下であると、架橋構造が密になりすぎずに過酷な環境下でも耐久性を確保できるという観点で好ましい。
【0123】
<高軟化点樹脂(G)>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、さらに軟化点が60℃以上200℃以下の高軟化点樹脂(G)(単に高軟化点樹脂(G)ともいう)を含有することが好ましい。上記高軟化点樹脂(G)を加えることで、室温ではある程度硬く、高温で軟化する(柔らかくなる)特性を有する粘着剤組成物を提供できるためである。また高軟化点樹脂(G)は、(メタ)アクリレート共重合体(A)とは成分上も大きく異なり、低分子成分として別箇に存在するために、粘着剤層中を自由に動くことができ、応力緩和性を付与しやすくなる点でも優れている。上記高軟化点樹脂(G)を加えて、上記したような諸特性を持たせることで、室温で硬くして打痕の発生を効果的に抑制することができる。また高温では軟化する(柔らかくなる)ことで、(反りの評価を行う)高温(85℃)環境下において応力緩和性を持たせることができるため、反りの発生を効果的に抑制することができる点で好ましい。
【0124】
本発明で用いられる前記高軟化点樹脂(G)は、上記した作用効果を有効に発現し得るという観点から、軟化点が60℃以上200℃以下であればよく、特に制限されるものではないため、従来公知のものを使用することができる。その具体的な例としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、完全水添脂肪族系石油樹脂、完全水添脂環族系炭化水素樹脂、完全水添芳香族系石油樹脂、部分水添脂肪族系石油樹脂、部分水添脂環族系炭化水素樹脂、部分水添芳香族系石油樹脂等の石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン酸、重合ロジン酸およびロジンエステル系樹脂(ロジン酸エステル)等のロジン系樹脂(ロジン類又はロジン誘導体とも称されている)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、油溶性フェノール(樹脂)、またはこれらの変性樹脂などを好ましく挙げることができる。これら高軟化点樹脂(G)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、(メタ)アクリレート共重合体(A)との相溶性が良好であるという観点から、脂環族系炭化水素樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂がより好ましい。また、粘着剤組成物の他の成分との相溶性が非常に良く、光学フィルムに適用した場合に透明性が得られやすいという観点から、ロジンエステル系樹脂であることがより好ましい。
【0125】
ロジンエステル系樹脂として具体的には、パインクリスタル(登録商標、以下同じ) KR-85(軟化点80-87℃)、パインクリスタル KR-612(軟化点80-90℃)、パインクリスタル KR-614(軟化点84-94℃)、パインクリスタル KE-100(軟化点95-105℃)、パインクリスタル KE-311(軟化点90-100℃)、パインクリスタル PE-590(軟化点90-100℃)、パインクリスタル KE-359(軟化点94-104℃)、パインクリスタル KE-604(軟化点124-134℃)、パインクリスタル KR-120(軟化点110-130℃)、パインクリスタル KR-140(軟化点130-150℃)、パインクリスタル KR-614(軟化点84-94℃)、パインクリスタル D-6011(軟化点84-99℃)、パインクリスタル KR-50M(軟化点145-160℃)(いずれも荒川化学工業社製)があり、これらは超淡色ロジンとして、透明性が必要な光学用途には好適に使用される。
【0126】
また他のロジンエステル系樹脂としては、スーパーエステルA-75(軟化点70-80℃)、スーパーエステルA-100(軟化点95-105℃)、スーパーエステルA-115軟化点108-120℃)、スーパーエステルA-125(軟化点120-130℃)(いずれも荒川化学工業社製)も粘着剤には好適に使用される。
【0127】
脂環族系炭化水素樹脂として具体的には、アルコン(登録商標、以下同じ)P-90(軟化点85-95℃)、アルコンP-100(軟化点95-105℃)、アルコンP-115(軟化点110-120℃)、アルコンP-125(軟化点120-130℃)、アルコンP-140(軟化点135-145℃)、アルコンM-90(軟化点85-95℃)、アルコンM-100(軟化点95-105℃)、アルコンM-115(軟化点110-120℃)、アルコンM-135(軟化点130-140℃)(いずれも荒川化学工業社製)も粘着剤には好適に使用される。
【0128】
テルペンフェノール樹脂として具体的には、タマノル(登録商標、以下同じ)803L(軟化点145-160℃)、タマノル901(軟化点125-135℃)、タマノル 460(軟化点182-192℃)(いずれも荒川化学工業社製)、YSポリスター(登録商標、以下同じ)U130(軟化点125-135℃)、YSポリスターU115(軟化点110-120℃)、(軟化点125-135℃)、YSポリスターT160(軟化点155-165℃)、YSポリスターT145(軟化点140-150℃)、YSポリスターT130(軟化点125-135℃)、YSポリスターT115(軟化点110-120℃)、YSポリスターT100(軟化点95-105℃)、YSポリスターT80(軟化点75-85℃)、YSポリスターS145(軟化点140-150℃)、YSポリスターG150(軟化点145-155℃)、YSポリスターG125(軟化点120-130℃)、YSポリスターN125(軟化点120-130℃)、YSポリスターK125(軟化点120-130℃)、YSポリスターTH130(軟化点125-135℃)(いずれもヤスハラケミカル社製)も粘着剤には好適に使用される。
【0129】
テルペン樹脂として具体的には、YSレジン(登録商標、以下同じ)PX1250(軟化点120-130℃)、YSレジンPX1150(軟化点110-120℃)、YSレジンPX1000(軟化点95-105℃)、YSレジンPX800(軟化点75-85℃)、YSレジンPX1150N(軟化点110-120℃)、YSレジンTO125(軟化点120-130℃)、YSレジンTO115(軟化点110-120℃)、YSレジンTO105(軟化点100-110℃)、YSレジンTO85(軟化点80-90℃)(いずれもヤスハラケミカル社製)も粘着剤には好適に使用される。
【0130】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物に、前記高軟化点樹脂(G)を含む場合の、高軟化点樹脂(G)の含有量は、特に制限されないが、(メタ)アクリレート共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上25質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましく、2質量部以上15質量部以下であることが特に好ましい。含有量が0.1質量部以上であると、耐久性試験時に軟化の効果が出る観点で好ましい。また、反りの発生が抑制できるという観点で好ましい。一方、含有量が30質量部以下であると、低分子量物による耐久性の悪化を抑制できるという観点で好ましい。また-25℃以下のような低温領域でも粘着剤組成物の柔軟性低下を効果的に抑制できるなど過酷な環境下でも耐久性を確保できるという観点で好ましい。
【0131】
前記高軟化点樹脂(G)の軟化点は、60℃以上200℃以下が好ましいが、さらに耐熱保持力、粘着性、-25℃以下のような低温領域での柔軟性、耐久性及びリワーク性の向上、反り及び打痕の発生抑制の観点から、より好ましくは70℃以上150℃以下の範囲、さらに好ましくは80℃以上140℃以下の範囲、特に好ましくは85℃以上130℃以下の範囲である。なお、本発明において、前記軟化点は、JIS K6863(1994)に記載の方法(実施例に記載の乾球法)により測定した値を採用するものとする。
【0132】
<その他の添加成分>
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、必要に応じて、架橋促進剤、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加成分(その他の添加成分)を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有してもよい。
【0133】
{光学フィルム用粘着剤組成物の製造(調製)方法}
本発明において、光学フィルム用粘着剤組成物は、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリレート共重合体(A)およびイソシアネート化合物(B)と、任意に含まれうる架橋剤(C)、シランカップリング剤(D)、シリケートオリゴマー(E)、過酸化物(F)、高軟化点樹脂(G)、(メタ)アクリル系(共)重合体(H)、溶媒、およびその他の添加剤とを、混合させることにより調製することができる。なお、上記各成分の混合順や混合温度などついて、特に制限されず、当業者により適宜調整されうる。
【0134】
{用途}
上述した本発明の光学フィルム用粘着剤組成物は、様々な用途に適する。例えば、光学フィルムなどの光学部材に好ましく用いられる。特に、近年、大型の液晶パネルに使用される薄型の粘着型光学フィルムに好ましく用いられる。かような光学フィルムとしては、偏光板、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム等の光学補償フィルム、ディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものが挙げられる。
【0135】
本発明において、光学フィルム用粘着剤組成物により形成されてなる粘着剤層の形態、光学フィルム等に当該粘着剤層が形成されてなる光学部材の形態、当該光学フィルムが偏光板である形態、または、当該光学部材を液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、マイクロLEDディスプレイ、曲面ディスプレイまたはフレキシブルディスプレイ等の画像表示装置などに応用する形態等も提供されうる。以下、それぞれについて説明する。
【0136】
<粘着剤層>
本発明の一形態によると、上述した本発明の光学フィルム用粘着剤組成物から形成されてなる光学フィルム用粘着剤層が提供される。本発明の光学フィルム用粘着剤層によれば、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立することができる。また、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)でも耐久性及びリワーク性を有し、更に反り及び打痕を抑制できる。また、本発明の光学フィルム用粘着剤層によれば、液晶パネル等から糊残りなく光学フィルムを容易に剥がすことができるリワーク性を良好に維持しつつ、再剥離時の汚染や過酷な条件下での剥がれを抑制できる。さらに塗工時の固形分が高く塗工速度をこれまで以上に高い水準を確保でき、製造工程面において優れたハンドリング性を有する品質の良好な粘着型光学フィルムを得ることができる。
【0137】
本発明の粘着剤層の厚さ(乾燥後膜厚)は、その用途により当業者が適宜設定することができるが、好ましくは1μm以上200μm以下であり、より好ましくは3μm以上75μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上40μm以下であり、特に好ましくは7μm以上35μm以下であり、最も好ましくは10μm以上30μm以下である。厚さが上記範囲内であると、耐久性と粘着特性とが良好なバランスが取れるという観点で好ましい。また、耐久性及びリワーク性に加え、反り及び打痕の発生が抑制できるという観点で好ましい。
【0138】
本発明の粘着剤層の乾燥直後のゲル分率は、特に制限されないが、打ち抜き加工やスリット加工を行う観点から、95%以下であることが好ましい。また、乾燥直後の粘着剤層への打痕や反りや耐久性への懸念がなくなりエージング処理を必要としない観点から、40%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。ゲル分率は、架橋剤の量や過酸化物の量を制御することによって調整することができる。
【0139】
〔粘着剤層の製造方法〕
本発明に係る粘着剤層は、特に限定されず、例えば、上述した本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を、剥離処理した離型シート上に塗布し、次いで加熱処理して架橋反応させることにより製造することができる。係る加熱処理は、塗布して得られる塗布膜中の溶剤を乾燥して除去するだけではなく、上述した光学フィルム用粘着剤組成物を架橋反応させる目的も果たすことができる。また、加熱処理の温度は、好ましくは40℃以上150℃以下であり、より好ましくは50℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上120℃以下である。加熱処理の温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。また、加熱処理の時間は、適宜設定されうるが、好ましくは5秒以上20分以下であり、さらに好ましくは5秒以上10分以下であり、特に好ましくは10秒以上5分以下である。
【0140】
また、加熱処理の手段としては、特に制限されず、各種公知の方法が用いられる。例えば、上下同じ方向にフィルムの搬送方向に熱風を送風するパラレル乾燥方式、上下異なる方向にフィルムの搬送方向に熱風を送風するカウンター乾燥方式、フィルムの上下から直接熱風を送風するフロート乾燥方式などの方法が挙げられる。
【0141】
粘着剤組成物を光学フィルムに使用する際には、光学フィルム上に直接粘着剤組成物を塗工し粘着剤層を形成してもよいが、離型性を有するフィルム上に当該粘着剤組成物を塗工し粘着剤層を形成した上で、様々な光学フィルムに転写して使用することが望ましい。また、このようにして製造された粘着剤層付の離型性を有するフィルムも製造工程で一緒に巻き取ってロール状とすることができ、必要に応じて裁断や加工をして、様々な光学フィルムや液晶パネルなどに貼着する際に、当該離型性を有するフィルムを取りはずして使用することができる。さらに、粘着剤層が実用に供されるまで、離型性を有するフィルムは、粘着剤層を保護する役割も果たすことができる。本明細書において、かような離型性を有するフィルムは、離型シート(セパレータ)とも称する。
【0142】
離型シートの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0143】
また、離型シートの厚さは、通常5μm以上200μm以下であり、好ましくは5μm以上100μm以下程度である。
【0144】
更に、離型シートには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型処理および防汚処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をさらに行うことができる。特に、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる観点から、離型シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を行うことが好ましい。
【0145】
本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を剥離処理した離型シート上に塗布する際の、塗布方式としては、特に制限されず、各種公知方法が用いられる。例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0146】
<光学部材>
本発明の一形態によると、上述した光学フィルム用粘着剤層と、当該粘着剤層の一方の面に設けられた光学フィルムと、を有する光学部材が提供される。本発明の光学フィルムによれば、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性及びリワーク性を両立することができる。また、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)においても耐久性及びリワーク性を有し、更に反り及び打痕を抑制できる。また、本発明の光学フィルムによれば、液晶パネル等から糊残りなく光学フィルムを容易に剥がすことができるリワーク性を良好に維持しつつ、再剥離時の汚染や過酷な条件下での剥がれを抑制できる。さらに塗工時の固形分が高く塗工速度をこれまで以上に高い水準を確保でき、製造工程面において優れたハンドリング性を有する品質の良好な粘着型光学フィルムを提供できる。
【0147】
また、本発明の光学部材は、本発明の粘着剤層の前記光学フィルム(第一の光学フィルム)が設けられた面とは反対側の面に、ガラスまたは光学フィルム(第二の光学フィルム)をさらに有することができる。なお、ここで、「第一の光学フィルム」と、「第二の光学フィルム」とは、同じ構成(材料、機能等)を有するフィルムであってもよく、異なる構成(材料、機能等)を有するフィルムであってもよい。また、本発明において、第一の光学フィルム(または第二の光学フィルム)は偏光板である形態も提供される。
【0148】
本発明において、上述した粘着剤組成物は、光学フィルムの片面または両面に直接塗布して粘着剤層を形成して使用されてもよいが、上述した理由で、セパレータなどに粘着剤層を予め形成し、これを光学フィルムの片面または両面に転写することにより使用することが望ましい。また、転写する前に、光学フィルムの表面には、その材質に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、易接着処理層の形成などの下地処理や、帯電防止層の形成などを行ってもよい。また、粘着剤層の表面においても易接着処理を行ってもよい。光学フィルムと粘着剤層とを強固に接着させる観点から、光学フィルムと本発明の光学フィルム用粘着剤層との間に、易接着処理層を有することが好ましい。
【0149】
<易接着処理層(易接着層)>
本発明の光学部材は、前記光学フィルムと、前記光学フィルム用粘着剤層との間に、少なくとも1層の易接着処理層をさらに有することが好ましい。これにより、光学フィルムと粘着剤層とをより強固に接着できるという観点から好ましい。
【0150】
また、より好ましい形態として、本発明の光学部材は、前記光学フィルムの、前記光学フィルム用粘着剤層と向き合う側の面に、第一の易接着処理層を有し、前記光学フィルム用粘着剤層の、前記光学フィルムと向き合う側の面に、第二の易接着処理層を有する。このように光学部材において、第一と第二の易接着処理層の両方を有する構成は、光学フィルムと粘着剤層をより強固に接着させられるという観点から好ましい。なお、ここでいう「第一の易接着処理層」と、「第二の易接着処理層」とは、同じ構成(材料等)を有する易接着処理層であってもよく、異なる構成(材料等)を有する易接着処理層であってもよい。
【0151】
易接着処理層としては、コロナ処理、プラズマ処理など、粘着剤層と接触する部材の表面を処理するものでもよいし、あるいは、プライマー層のような別途の部材を、粘着剤層と接触する部材の表面に設けてもよい。
【0152】
本発明において、プライマー層を構成する材料は、プライマー層と接触する部材と良好な密着性を有し、凝集力に優れる膜を形成するものが好ましい。例えば、各種ポリマー類、金属酸化物のゾル、シリカゾルなどが用いられ、なかでもポリマー類が好ましく用いられる。プライマー層は、帯電防止機能を有していてもよい。
【0153】
プライマー層を構成するポリマー類としては、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類が挙げられる。なかでも、オキサゾリン基含有ポリマーがより好ましく用いられる。
【0154】
オキサゾリン基含有ポリマーは市販品を用いることができる。例えば、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)シリーズ(例えば、エポクロス(登録商標)WS700)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、分子中にアミノ基を含むポリマー類などについては、特開2011-105918号公報の段落「0107」~「0113」に開示されているものが適宜採用されうる。
【0155】
プライマー層の厚さは、10nm以上5000nm以下程度であり、好ましくは50nm以上500nm以下である。上記の範囲内であると、十分な強度および密着性を発揮しつつ、光学特性を維持することができる。
【0156】
プライマー層の形成方法は特に制限されず、プライマー層の原料(下塗り剤)をコーティング法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法を用いて塗布し、乾燥することによってプライマー層を形成することができる。
【0157】
<光学フィルム>
本発明において、光学フィルム(第一の光学フィルムまたは第二の光学フィルム)としては、偏光板、着色防止としての位相差板、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム等の光学補償フィルム、ディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものが挙げられるが、これらに限定されない。特に本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層を適用する観点からは、光学フィルムに偏光板を用いた光学部材が好ましいものの1つである。光学フィルムに偏光板を用いた光学部材では、高温環境下での耐久性に優れる。また、光学部材の液晶パネル等から糊残りなく偏光板(光学フィルム)を容易に剥がすことができるリワーク性を良好に維持しつつ、再剥離時の汚染や過酷な条件下での剥がれを十分に抑制できる。さらに粘着剤層を設けた偏光板の反り及び打痕の発生を抑制できる。また、偏光板への粘着剤組成物の塗工時の固形分が高く塗工速度をこれまで以上に高い水準を確保でき、製造工程面において優れたハンドリング性を有するなど、品質の良好な偏光板を用いた光学部材を提供できる点で優れている。
【0158】
<偏光板>
本発明において、光学フィルムとして好適な偏光板は、従来公知の方法により、保護フィルムと偏光子とを、接着剤を用いて貼り合わせ、加熱乾燥または紫外線、電子線等で硬化することによって製造し得る。塗布した接着剤は、乾燥または紫外線、電子線等で硬化により接着性を発現して接着層を構成する。
【0159】
偏光子としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0160】
このうち、平均重合度2000以上2800以下、ケン化度90モル%以上100モル%以下のポリビニルアルコールフィルムをヨウ素で染色し、3倍以上8倍以下に一軸延伸して製造した偏光子が特に好ましい。より具体的には、このような偏光子は、例えばポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素の水溶液に浸漬して染色し、延伸して得られる。
【0161】
ヨウ素の水溶液に浸漬する方法としては、例えば、0.1質量%以上10質量%以下のヨウ素および/またはヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬することが好ましい。また、必要に応じて50℃以上70℃以下のホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬してもよく、洗浄や染色むら防止のために、25℃以上35℃以下の水に浸漬してもよい。延伸はヨウ素で染色した後に行っても、染色しながら延伸しても、延伸してからヨウ素で染色してもよい。染色および延伸後は、水洗し、35℃以上55℃以下で1分以上10分以下程度乾燥してもよい。かような偏光子は、多種多様のものが市販されている。
【0162】
また、偏光子の厚みは、特に制限されないが、一般的に5μm以上80μm以下である。
【0163】
本発明において、光学フィルムとしてより高度な耐久性が求められるという観点から、光学フィルムとして片面または両面が保護された偏光板が好ましい。保護の方法として、特に制限されず、保護フィルムを貼り合わせるなどの公知方法が適宜採用されうる。
【0164】
保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる材料が好ましい。例えば、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0165】
なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムまたは、保護層として(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
【0166】
偏光板の厚みは、特に制限されないが、一般的に20μm以上200μm以下である。また、本発明において、薄型化の観点から、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。かような薄型偏光板は、本発明の粘着剤組成物の効果をより顕著に発現する観点から好ましい。
【0167】
偏光板の製造方法は、特に限定されず、例えば、接着剤を塗布した後は、偏光子と保護フィルムとをロールラミネーター等により貼り合わせることによって行うことができる。貼り合わせた後に適宜乾燥または紫外線、電子線等で硬化工程を施してもよい。また、接着剤を塗布する際は、保護フィルム、偏光子のいずれに塗布してもよく、双方に塗布してもよい。接着剤は、乾燥後の接着層の厚みが10nm以上10μm以下になるように塗布するのが好ましい。また、接着剤としては、特に限定されず、偏光子の材料に合わせて公知にものから適宜採用されうる。例えば、偏光子としてポリビニルアルコール系フィルムを用いる場合には、ポリビニルアルコール系接着剤または紫外線硬化系接着剤としてアクリル系、エポキシ系、アクリル-エポキシ系を用いることができる。接着剤層の厚さは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得ることから、ポリビニルアルコール系接着剤では10nm以上200nm以下であることが好ましく、紫外線硬化系接着剤では0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0168】
本発明において、粘着剤層が形成されてなる粘着型偏光板も提供されうる。なお、粘着型偏光板の構成や製造などについては、上述した粘着剤層を有する光学フィルムの場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0169】
<画像表示装置>
本発明は、上述した光学部材のうち、少なくとも1つを用いる画像表示装置も提供する。本発明の画像表示装置によれば、過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)においても耐久性を有し、更に光学部材、特に最表面の光学フィルムの反り及び打痕を抑制できる。また、本発明の画像表示装置によれば、液晶パネルや有機ELパネルやPDPパネル、マイクロLEDパネル等の光学部材から糊残りなく光学フィルムを容易に剥がすことができるリワーク性を良好に維持しつつ、再剥離時の汚染や過酷な条件下での剥がれを抑制できる。さらに塗工時の固形分が高く塗工速度をこれまで以上に高い水準を確保でき、製造工程面において優れたハンドリング性を有する光学フィルムを用いた光学部材を備えた画像表示装置を提供できる。
【0170】
画像表示装置としては、特に限定されず、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、マイクロLEDディスプレイ等が挙げられる。また、本発明の粘着剤組成物の効果をより顕著に発現する観点から、特に薄型の画像表示装置が好ましく適用される。
【実施例
【0171】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0172】
また、下記操作において、特記しない限り、操作および物性などの測定は、23℃、相対湿度55%RHの条件で行う。
【0173】
〔製造例1 (メタ)アクリレート共重合体(A1)の調製〕
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、および冷却器を備えた4つ口フラスコに、n-ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)99質量%、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)1質量%、および重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業株式会社製)0.1質量%を、酢酸エチル100質量%と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入した。窒素ガス置換した後に、フラスコ内の液温を55℃付近に制御し、5時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)190万、Mw/Mn=1.9の(メタ)アクリレート共重合体(A1)の溶液を調製した。
【0174】
〔製造例2~15 (メタ)アクリレート共重合体(A2)~(A15)の調製〕
(メタ)アクリレート共重合体を形成する各モノマーの種類およびその組成割合(配合量)を、下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様な操作を行い、(メタ)アクリレート共重合体(A2)~(A15)の溶液を調製した。また、それぞれの重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)の値も表1に示した。
【0175】
なお、上述した各製造例1~15における重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分散度(Mw/Mn)の測定は、以下の方法に従って行った。
【0176】
〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分散度(Mw/Mn)の測定〕
上述した各製造例1~15で調製した各(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分散度(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定、算出した(測定条件は下記参照)。
【0177】
・分析装置:東ソー株式会社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー株式会社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン。
【0178】
製造例1~15のモノマーの種類および組成を下記表1に示す。なお、表1中の空欄は、そのモノマーを使用しなかったことを示す。
【0179】
【表1】
【0180】
〔イソシアネート化合物(B)のNCO%の測定〕
以下の実施例及び比較例で使用するイソシアネート化合物(B)のNCO%の測定方法は、以下の通りである。
【0181】
共栓三角フラスコ中に試料を精密に量り採り、クロロベンゼン25ml、ジ-n-ブチルアミン/オルトジクロロベンゼン(重量比:ジ-n-ブチルアミン/オルトジクロロベンゼン=1/24.8)混合液10mlを加えて溶解させた。これに、メタノール80g、ブロムフェノールブルー試薬を指示薬として加え、0.1Nアルコール性塩酸溶液で滴定した。溶液が黄緑色を呈し、30秒間保持するまで滴定を続けた。NCO%は次式により求めた。
【0182】
【数1】
【0183】
〔シリケートオリゴマー(E)の重量平均分子量の測定〕
以下の実施例及び比較例で使用するシリケートオリゴマー(E)の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した(測定条件は下記参照)。
【0184】
・分析装置:東ソー株式会社製、HLC-8120GPC
・カラム:TSKgel SuperHZM-H/HZ4000/HZ2000
・カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
・カラム温度:40℃
・流量:0.6ml/min
・注入量:20μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン。
【0185】
《第1実施形態の(メタ)アクリレート共重合体(A)を用いた実施例と比較例》
<実施例1>
〔光学フィルム用粘着剤組成物の調製〕
製造例1で得られた(メタ)アクリレート共重合体(A1)溶液の固形分100%(w/w)(すなわち、(メタ)アクリレート共重合体(A1)100質量部)に対して、イソシアネート化合物(B)としてのサンプレン(登録商標)P-663L(三洋化成工業株式会社製、NCO%=2.9%、数平均分子量Mn=2000)0.1質量部、架橋剤(C)としてのイソシアネート架橋剤タケネート(登録商標)D-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、三井化学株式会社製、数平均分子量Mn=700)0.1質量部(有効成分換算)、およびシランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業株式会社製、3-グリシドキシプロピル トリメトキシシラン)0.1質量部を配合して、実施例1の光学フィルム用粘着剤組成物(固形分15質量%、残りは溶剤)を調製した。
【0186】
〔粘着剤層の形成〕
上記で得られた光学フィルム用粘着剤組成物を、シリコーン処理を施した、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、MRF38、オリゴマー防止層なし)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、110℃で2分間加熱処理して、実施例1の粘着剤層を形成した。なお、加熱処理は、フィルムの上下から直接熱風を送風するフロート乾燥方式の方法によって行った。
【0187】
〔光学部材の作製〕
(片面保護偏光板の作製)
以下の工程により、光学フィルムとして片面保護偏光板を作製した。
【0188】
厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3質量%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、3倍まで延伸したフィルムを60℃、4質量%濃度のホウ酸、10質量%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。次いで、6倍まで延伸したフィルムを30℃、1.5質量%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、偏光子を得た。当該偏光子の片面に、厚さ20μmのアクリル系フィルム(ラクトン変性アクリル系樹脂フィルム;保護フィルム)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて合計厚みが27μmの片面保護の薄型偏光板(単に片面保護偏光板ともいう)を作製した。
【0189】
(粘着剤層付片面保護偏光板の作製)
上記で得られた片面保護偏光板の粘着剤層を形成する偏光子側(保護フィルム側とは反対側)にコロナ処理をコロナ放電量80[W・min/m]で処理を行い、易接着処理層を形成した。次に、偏光板の易接着処理層が接触するように、粘着剤層を形成したPETフィルム(シリコーン処理を施した)を転写し、実施例1の光学部材、すなわち粘着剤層付片面保護偏光板を作製した。
【0190】
<実施例2~52および比較例1~9>
下記表2に示すように、光学フィルム用粘着剤組成物を構成する(メタ)アクリレート共重合体(A)、イソシアネート化合物(B)、ならびに必要に応じての架橋剤(C)、シランカップリング剤(D)、シリケートオリゴマー(E)、過酸化物(F)および高軟化点樹脂(G)の、種類および添加量(配合量)、粘着剤層を形成する際の加熱処理の温度および時間を変更したこと以外は、実施例1の操作と同様にして、それぞれの実施例2~52および比較例1~9に対応する粘着剤層付片面保護偏光板を作製した。
【0191】
【表2-1】
【0192】
【表2-2】
【0193】
【表2-3】
【0194】
【表2-4】
【0195】
上記表2において、
1.(B)~(G)成分の配合量(質量部)は、(メタ)アクリレート共重合体(A)を100質量部とした場合の配合量を表す;
2.表中の「-」は、係る成分が配合されていないことを表す;
3.「サンプレンP-663L」、「サンプレンP-664」、「サンプレンP-665」、「サンプレンP-6090」、「サンプレンP-7315」、「サンプレンP-870」および「サンプレンC-810」は、全て三洋化成工業株式会社製である;
4.「V-05」:カルボジイミド系架橋剤であり、日清紡ケミカル株式会社製の商品(カルボジライト(登録商標)V-05)である:
5.「WS-500」:オキサゾリン系架橋剤であり、株式会社日本触媒製の商品(エポクロス(登録商標)WS-500)である:
6.「Tetrad-X」:エポキシ系架橋剤であり、三菱ガス化学株式会社製の商品(商品名TETRAD-X、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン)である;
7.「PZ-33」:アジリジン系架橋剤であり、株式会社日本触媒製の商品(ケミタイト(登録商標)PZ-33、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート)である;
8.「メチルシリケート53A」:コルコート株式会社製の商品(商品名:メチルシリケート53A)である:
9.「D-110N」:三井化学社製のタケネート(登録商標)D-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75重量%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、数平均分子量Mn=700)である;
10.「C-L」:東ソー株式会社製の商品(コロネート(登録商標)L、TDIトリメチロールプロパン付加物の75重量%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、数平均分子量Mn=670)である;
11.「コロネート2094」:東ソー株式会社製の商品(コロネート(登録商標)2094、HDIと水添ビスフェノールA変性体、数平均分子量Mn=570)である;
12.「パインクリスタル KE-100」:軟化点95-105℃(環球法) 超淡色ロジン誘導体 [パインクリスタル(登録商標)] 荒川化学工業株式会社製である;
13.「スーパーエステルA-75」:軟化点70-80℃(環球法) 特殊ロジンエステル [スーパーエステル] 荒川化学工業株式会社製である;
14.「タマノル 460」:軟化点182-192℃(環球法) ロジン変性フェノール樹脂 [タマノル(登録商標)] 荒川化学工業株式会社製である。
【0196】
{評価}
上記の実施例1~52および比較例1~9で作製した光学部材である各粘着剤層付の片面保護偏光板(サンプル)に対して、以下の評価を行った。それぞれの評価結果は、表3に示される。
【0197】
<耐久性>
上記実施例1~52および比較例1~9で作製した光学部材を37インチサイズに切り出してサンプルとし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、イーグルXG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルを、下記(1)~(3)の耐久性試験にそれぞれ供し、各試験後に偏光板とガラスとの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
【0198】
(1)105℃で500時間処理した(加熱試験)
(2)60℃、相対湿度95%RHの雰囲気下で500時間処理した(加湿試験)
(3)85℃の環境で30分放置の後、-40℃の環境で30分放置することを1サイクルとし、1サイクル1時間で300サイクル(300時間)処理した(ヒートショック(HS)試験)。
【0199】
-目視評価-
◎:発泡、剥がれ、浮きなしなどの外観上の変化が全くなし
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0200】
<リワーク性>
上記実施例1~52および比較例1~9で作製した光学部材を幅25mm×長さ100mmに裁断したものをサンプル1、縦420mm×横320mmに裁断したものをサンプル2(3枚作製)とした。このサンプル1およびサンプル2を、それぞれ厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に、ラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理して完全に密着させた(初期)。その後、50℃の乾燥条件下で48時間加熱処理を施した(加熱後)。
【0201】
上記サンプル1の接着力を測定した。接着力は、引張り試験機(オリエンテック社製 テンシロン万能材料試験機 STA-1150)にて、23℃、相対湿度50%RHの条件下、剥離角度180°、剥離速度300mm/minでJIS Z0237(2009)の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、サンプル1を引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定することにより求めた。
【0202】
また、上記サンプル2(3枚)について、人の手によって無アルカリガラス板からサンプルを剥がし、下記基準でリワーク性を評価した(実リワーク性)。
【0203】
-評価-
◎:3枚とも糊残りやフィルムの破断がなく良好に剥離可能
○:3枚中一部はフィルムが破断したが、再度の剥離によって剥がせた
△:3枚ともフィルム破断したが、再度の剥離によって剥がせた
×:3枚とも糊残りが生じるか、または何度剥離してもフィルムが破断して剥がせなかった。
【0204】
以上、接着力および実リワーク性の結果を総合にして各実施例1~52および比較例1~9のサンプルのリワーク性について判断を行った。
【0205】
【表3-1】
【0206】
【表3-2】
【0207】
表3から明らかであるように、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を使用した粘着剤層付の片面保護偏光板(実施例1~52)は、いずれも過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立することができることが分かった。一方、比較例1~9の粘着剤層付の片面保護偏光板は、いずれも過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立することができないことがわかった。
【0208】
《第2実施形態の(メタ)アクリレート共重合体(A)を用いた実施例と比較例》
<実施例53>
〔光学フィルム用粘着剤組成物の調製〕
上記表1に示す製造例10で得られた(メタ)アクリレート共重合体(A10)溶液の固形分100%(w/w)(すなわち、(メタ)アクリレート共重合体(A10)100質量部)に対して、イソシアネート化合物(B)としてのサンプレン(登録商標)P-663L(三洋化成工業株式会社製、NCO%=2.9%、数平均分子量Mn=2000)0.5質量部、架橋剤(C)としてのイソシアネート架橋剤タケネート(登録商標)D-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、三井化学株式会社製、数平均分子量Mn=700)0.1質量部(有効成分換算)、およびシランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業株式会社製、3-グリシドキシプロピル トリメトキシシラン)0.1質量部を配合して、実施例47の光学フィルム用粘着剤組成物(固形分25質量%、残りは溶剤)を調製した。
【0209】
〔粘着剤層の形成〕
上記で得られた光学フィルム用粘着剤組成物を、シリコーン処理を施した、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製、MRF38、オリゴマー防止層なし)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、110℃で2分間加熱処理して、実施例47の粘着剤層を形成した。なお、加熱処理は、フィルムの上下から直接熱風を送風するフロート乾燥方式の方法によって行った。
【0210】
〔光学部材の作製〕
(両面保護偏光板の作製)
以下の工程により、光学フィルムとして両面保護偏光板を作製した。
【0211】
厚さ60μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3質量%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、3倍まで延伸したフィルムを60℃、4質量%濃度のホウ酸、10質量%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。次いで、6倍まで延伸したフィルムを30℃、1.5質量%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、偏光子を得た。当該偏光子の片面に、厚さ40μmのトリアセチルセルロース(TAC)系フィルム(保護フィルム)を、もう一方の片面には厚さ80μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標) 超複屈折タイプ(SRF)のPETフィルム;保護フィルム)をポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて合計厚みが143μmの両面保護の薄型偏光板(単に両面保護偏光板ともいう)を作製した。
【0212】
(粘着剤層付両面保護偏光板の作製)
上記で得られた両面保護偏光板の粘着剤層を形成するTACフィルム(保護フィルム)側にコロナ処理をコロナ放電量80[W・min/m]で処理を行い、易接着処理層を形成した。次に、両面保護偏光板の易接着処理層が接触するように、粘着剤層を形成したPETフィルム(シリコーン処理を施した)を転写し、実施例53の光学部材、すなわち粘着剤層付両面保護偏光板を作製した。
【0213】
<実施例54~78および比較例10~15>
下記表4に示すように、光学フィルム用粘着剤組成物を構成する(メタ)アクリレート共重合体(A)、イソシアネート化合物(B)、ならびに必要に応じての架橋剤(C)、シランカップリング剤(D)、シリケートオリゴマー(E)、過酸化物(F)、高軟化点樹脂(G)、(メタ)アクリル系(共)重合体(H)の、種類および添加量(配合量)、塗液固形分 質量%(光学フィルム用粘着剤組成物の固形分)、粘着剤層を形成する際の加熱処理の温度および時間を変更したこと以外は、実施例53の操作と同様にして、それぞれの実施例54~78および比較例10~15に対応する粘着剤層付両面保護偏光板を作製した。
【0214】
【表4-1】
【0215】
【表4-2】
【0216】
上記表4において、
1.(B)~(H)成分の配合量(質量部)は、(メタ)アクリレート共重合体(A)を100質量部とした場合の配合量を表す;
2.表中の「-」は、係る成分が配合されていないことを表す;
3.各成分の「種類」の欄に示す各市販品の商品名の詳細は、表2の注記1.~14.に記載した通りである;
4.表2の注記1.~14.に記載していないものについては、下記4.1.~4.2.に示す;
4.1.「アルフォン(登録商標)UH-2170」:無溶剤型スチレンアクリルポリマー、重量平均分子量(Mw)14,000、ガラス転移温度(Tg)60℃ 東亞合成株式会社製である;
4.2.TMP(トリメチロールプロパン)系NCO:韓国公開特許第2011-0133657号公報 段落「0077」~「0078」で合成されている架橋剤(化合物3)(イソシアネートモノマーおよびイソシアネート基と反応可能な官能基を3個有する化合物を反応させてなるもの)である。
【0217】
{評価}
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製した粘着剤組成物(粘着剤塗工液)(サンプル)およびこれを用いた光学部材である各粘着剤層付の両面保護偏光板(サンプル)に対して、以下の評価を行った。それぞれの評価結果は、表5に示される。
【0218】
(粘着剤組成物の特性の評価)
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製したアクリル系粘着剤組成物(粘着剤塗工液)の特性の評価として、以下の塗液固形分および粘度を測定した。
【0219】
<塗液固形分>
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製したアクリル系粘着剤組成物(粘着剤塗工液)を150℃30分で加熱乾燥した際の揮発残分を表したものを「塗液固形分(質量%)」とした。
【0220】
<粘度>
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製したアクリル系粘着剤組成物(粘着剤塗工液)を、ブルックフィールド粘度計(B型粘度計)にて回転数20rpmで回転させた際の1分後の数値を読み取って粘度値とした。
【0221】
(光学部材の特性評価)
<反り量>
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製した光学部材(粘着剤層付き両面保護偏光板)を縦100mm×横50mmの大きさの裁断したサンプルとした。このサンプルを、縦75mm×横150mm×厚さ0.5mmの無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、さらに85℃で100時間の加熱処理をそれぞれ施した後、25℃、相対湿度55%RHの条件下で1時間放置してから、反り量が凸になっている面が下側になるように水平面上に置き、角の4点のうちで最も水平面から長い点の距離(mm)を測定した。評価基準は以下のとおりである。
【0222】
-評価基準-
◎:反り量0mm以上0.5mm未満
○:反り量0.5mm以上1.0mm未満
△:反り量1.0mm以上1.5mm未満
×:反り量1.5mm以上。
【0223】
<打痕>
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製した、塗工直後(粘着剤層を形成したPETフィルム(シリコーン処理を施した)を転写して形成した直後;転写形成後10分以内)の光学部材(粘着剤層付き両面保護偏光板)を縦100×横100mmの大きさの裁断し、計300枚の試料片(サンプル)を作製した。これらの試料片を、偏光板のPETフィルム(保護フィルム)面(粘着剤層が形成されていない側の保護フィルム面)を上にして積み重ね、上から1kgの加重をかけ、23℃、相対湿度50%RHの条件下で1日間放置し、打痕の発生深さをキーエンス社製レーザー顕微鏡(VK-X120)で評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0224】
-評価基準-
◎:打痕の深さ0μm以上1μm未満
○:打痕の深さ1μm以上3μm未満
△:打痕の深さ3μm以上5μm未満
×:打痕の深さ5μm以上。
【0225】
<耐久性>
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製した光学部材を37インチサイズに切り出してサンプルとし、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、イーグルXG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルを、下記(1)~(3)の耐久性試験にそれぞれ供し、各試験後に偏光板(粘着剤層が形成されたTACフィルム(保護フィルム)面側)とガラスとの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
【0226】
(1)85℃で500時間処理した(加熱試験)
(2)60℃、相対湿度95%RHの雰囲気下で500時間処理した(加湿試験)
(3)85℃の環境で30分放置の後、-40℃の環境で30分放置することを1サイクルとし、1サイクル1時間で300サイクル(300時間)処理した(ヒートショック(HS)試験)。
【0227】
-目視評価-
◎:発泡、剥がれ、浮きなしなどの外観上の変化が全くなし
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0228】
<リワーク性>
上記の実施例53~78および比較例10~15で作製した光学部材を幅25mm×長さ100mmに裁断したものをサンプル1、縦420mm×横320mmに裁断したものをサンプル2(3枚作製)とした。このサンプル1およびサンプル2を、それぞれ厚さ0.7mmの無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に、ラミネーターを用いて貼り付け、次いで50℃、5atmで15分間オートクレーブ処理して完全に密着させた(初期)。その後、50℃の乾燥条件下で48時間加熱処理を施した(加熱後)。
【0229】
上記サンプル1の接着力を測定した。接着力は、引張り試験機(オリエンテック社製 テンシロン万能材料試験機 STA-1150)にて、23℃、相対湿度50%RHの条件下、剥離角度180°、剥離速度300mm/minでJIS Z0237(2009)の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、サンプル1を引き剥がす際の接着力(N/25mm)を測定することにより求めた。
【0230】
また、上記サンプル2(3枚)について、人の手によって無アルカリガラス板からサンプルを剥がし、下記基準でリワーク性を評価した(実リワーク性)。
【0231】
-評価-
◎:3枚とも糊残りやフィルムの破断がなく良好に剥離可能
○:3枚中一部はフィルムが破断したが、再度の剥離によって剥がせた
△:3枚ともフィルム破断したが、再度の剥離によって剥がせた
×:3枚とも糊残りが生じるか、または何度剥離してもフィルムが破断して剥がせなかった。
【0232】
以上、接着力および実リワーク性の結果を総合にして各実施例53~78および比較例10~15のサンプルのリワーク性について判断を行った。
【0233】
【表5-1】
【0234】
【表5-2】
【0235】
表5から明らかであるように、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物を使用した粘着剤層付の両面保護偏光板(実施例53~78)は、いずれも過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立し、尚且つ反り及び打痕の両方の発生を抑制することができることが分かった。詳しくは、本発明の光学フィルム用粘着剤組成物から得られる粘着剤層を有する光学部材である粘着剤層付の両面保護偏光板(実施例53~78)は、高温高湿環境下での耐久試験に対して粘着剤に起因する剥がれや浮き、発泡がなかった。また光学部材である粘着剤層付の両面保護偏光板を従来よりも薄型化した画像表示装置、例えば大型液晶表示装置の液晶セル等に貼り付けた直後接着力を低くでき、かつ各種の工程を経ることなどによって長時間を経過したり、高温で保存されたりしても、液晶セル等に対する接着力の増大がなく、液晶セル等から光学部材である粘着剤層付の両面保護偏光板を容易には剥離することができた。これにより、リワーク性に優れており、液晶セル等を損傷したり、汚染したりすることなく、再利用することができることが確認できた。また、大型画像表示装置に用いられる液晶セル等では、液晶セル等の反りと粘着剤層の打痕の両方同時の抑制が困難であったが、本発明(実施例53~78)によれば、それらの特性を同時に満足させることができることも確認できた。一方、比較例10~15の粘着剤層付の片面保護偏光板は、いずれも過酷な環境下(高温、高湿、ヒートショック)における耐久性とリワーク性とを両立し、尚且つ反り及び打痕の両方の発生を抑制することができないことがわかった。