IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】皮膚洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20220323BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220323BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220323BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/63
A61Q19/10
A61K31/4174
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017245775
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019112331
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩明
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-018508(JP,A)
【文献】特開2006-131597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/49
A61K 8/34
A61K 8/63
A61Q 19/10
A61K 31/4174
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ミコナゾール及び/又はその塩と、(B)イソプロピルメチルフェノールと、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩と、(D)水とを含む、皮膚洗浄用組成物(但し、ホップ抽出物、アセンヤク抽出物、キラヤ樹皮抽出物、ビワ葉抽出物、地楡抽出物、クマザサ抽出物及びタンニン酸からなる群より選択される1種又は2種以上を含む場合を除く)
【請求項2】
さらに(E)界面活性剤を含む、請求項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
【請求項3】
前記(E)成分が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
【請求項4】
(A)ミコナゾール及び/又はその塩と(D)水とを含む皮膚洗浄用組成物(但し、ホップ抽出物、アセンヤク抽出物、キラヤ樹皮抽出物、ビワ葉抽出物、地楡抽出物、クマザサ抽出物及びタンニン酸からなる群より選択される1種又は2種以上を含む場合を除く)における析出物生成を抑制する方法であって、
皮膚洗浄用組成物に、前記(A)成分及び前記(D)成分と共に、(B)イソプロピルメチルフェノールと(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩とを配合する、析出物生成を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚洗浄用組成物に関する。より具体的には、本発明は、ミコナゾール及び/又はその塩と水とを含み、析出物の生成が抑制された皮膚洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ミコナゾール硝酸塩はイミダゾール系抗真菌剤の一種であり、医薬品、医薬部外品または化粧品の有効成分として広く用いられている。例えば、特許文献1には、ミコナゾール硝酸塩が配合された、抗真菌活性を有する洗浄用組成物が開示されている。
【0003】
ミコナゾール硝酸塩は結晶性の粉体であり、水をはじめとする各種溶媒に難溶性である。そこで、ミコナゾール硝酸塩の析出を抑制する製剤処方が検討されている。例えば、特許文献2には、ミコナゾール硝酸塩等のアゾール系抗真菌剤およびカチオン界面活性剤等を含有する毛髪化粧料において、アシル化加水分解コラーゲンを配合することによって、優れた製剤安定性を備えさせることが開示されている。また、特許文献3には、ミコナゾール硝酸塩等のアゾール系抗真菌剤およびカチオン界面活性剤等を含有する毛髪化粧料において、pHを3.0~5.5とすることによって、優れた製剤安定性を備えさせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-277227号公報
【文献】特開2011-032212号公報
【文献】特開2011-032213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び特許文献3に記載された製剤処方は、カチオン界面活性剤を含有する毛髪化粧料に特化している。しかしながら、カチオン界面活性剤は皮膚刺激性が強いため、当該製剤処方を皮膚洗浄用組成物に適用することは好ましくない。このため、新たな処方設計によって皮膚洗浄用組成物の製剤安定性を向上させる技術の開発が求められる。
【0006】
そこで、本発明は、ミミコナゾール及び/又はその塩を含みながらも析出物の生成が抑制された皮膚洗浄用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、イソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムが、それぞれ単独で配合された場合はミコナゾール硝酸塩を含む皮膚洗浄用組成物の析出物を生じやすくするにも関わらず、それらの両方が配合されることよって、ミコナゾール硝酸塩を含む皮膚洗浄用組成物の析出物生成を抑制することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ミコナゾール及び/又はその塩と、(B)イソプロピルメチルフェノールと、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩と、(D)水とを含む、皮膚洗浄用組成物。
項2. さらに(E)界面活性剤を含む、項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
項3. 前記(E)成分が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
項4. (A)ミコナゾール及び/又はその塩と(D)水とを含む皮膚洗浄用組成物における析出物生成を抑制する方法であって、
皮膚洗浄用組成物に、前記(A)成分及び前記(D)成分と共に、(B)イソプロピルメチルフェノールと(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩とを配合する、析出物生成を抑制する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚洗浄剤組成物によって、ミコナゾール及び/又はその塩を含みながらも析出物生成を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.皮膚洗浄用組成物
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(A)ミコナゾール及び/又はその塩(以下、(A)成分と表記することがある)と、(B)イソプロピルメチルフェノール(以下、(B)成分と表記することがある)と、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩(以下、(C)成分と表記することがある)と、(D)水(以下、(D)成分と表記することがある)とを含むことを特徴とする。以下、本発明の皮膚洗浄用組成物について詳述する。
【0011】
(A)ミコナゾール及び/又はその塩
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(A)成分として、ミコナゾール及び/又はその塩を含有する。ミコナゾール及び/又はその塩は、真菌に対する殺菌効果を有するイミダゾール系抗真菌剤として公知の薬剤である。
【0012】
ミコナゾールは、1-[2,4-ジクロロ-β-[(2,4-ジクロロベンジル)オキシ]フェネチル]イミダゾールとも称される化合物である。ミコナゾールの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されないが、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸の塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分として、ミコナゾール及びミコナゾールの塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これら(A)成分の中でも、好ましくはミコナゾールの塩が挙げられ、より好ましくはミコナゾール硝酸塩が挙げられる。
【0014】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分の含有量については特に限定されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で0.1~20重量%が挙げられる。薬効及び析出物の生成抑制性をより良好に得る観点から、(A)成分の含有量としては、(A)成分の総量で好ましくは0.2~15重量%、更に好ましくは0.5~10重量%が挙げられる。
【0015】
(B)イソプロピルメチルフェノール
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(B)成分として、イソプロピルメチルフェノールを含有する。(B)成分は、(C)成分と共に配合されることで、(A)成分の溶解性を高め、皮膚洗浄用組成物における析出物生成を抑制することができる。
【0016】
イソプロピルメチルフェノールは、4-イソプロピル-3-メチルフェノールとも称さる化合物であり、殺菌作用を有することが知られている公知の薬剤である。
【0017】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(B)成分の含有量については特に限定されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~10重量%が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用組成物における析出物の生成抑制性をより良好に得る観点から、(B)成分の含有量としては、好ましくは0.05~8重量%、更に好ましくは0.05~5重量%が挙げられる。
【0018】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率としては特に限定されないが、析出物の生成抑制性をより良好に得る観点から、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が例えば0.01~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部、更に好ましくは0.1~0.2重量部が挙げられる。
【0019】
(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(C)成分として、グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩を含有する。
【0020】
グリチルリチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0021】
グリチルリチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されないが、具体的には、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル等が挙げられる。これらのグリチルリチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
グリチルリチン酸、及び/又はその誘導体の塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(C)成分として、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸の塩、グリチルリチン酸の誘導体、グリチルリチン酸の誘導体の塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
これらの(C)成分の中でも、好ましくはグリチルリチン酸、グリチルリチン酸の塩;さらに好ましくはグリチルリチン酸の塩;より一層好ましくはグリチルリチン酸ジカリウムが挙げられる。
【0025】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(C)成分の含有量については、特に制限されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で、0.01~10重量%が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用組成物における析出物の生成抑制性をより良好に得る観点から、(C)成分の含有量としては、好ましくは0.05~8重量%、更に好ましくは0.05~5重量%が挙げられる。
【0026】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率としては特に限定されないが、析出物の生成抑制性をより良好に得る観点から、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が例えば0.01~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部、更に好ましくは0.1~0.4重量部が挙げられる。
【0027】
(D)水
本発明の皮膚洗浄用組成物は、基剤として水を含有する。前記の(A)成分は水に難溶性であり、水性組成物における析出物生成を引き起こすが、本発明の皮膚洗浄用組成物によれば、このような析出物生成を抑制することができる。
【0028】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(D)成分の含有量については、製剤形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、30~98重量%、好ましくは40~95重量%、更に好ましくは50~93重量%が挙げられる。
【0029】
(E)界面活性剤
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(E)成分として界面活性剤を含有する。界面活性剤としては特に限定されないが、皮膚への刺激を抑制する観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の中から1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また、界面活性剤としては、本発明の皮膚洗浄用組成物における析出物の生成抑制性をより好ましく得る観点から、より好ましくはアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。さらに、本発明の皮膚洗浄用組成物における経時による析出物の生成抑制性(製剤安定性)をより好ましく得る観点から、より好ましくはアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられ、特にさらに好ましくはアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0030】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシカリセッケン等の脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸及びその塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等の高級アルコールの硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン等のN-アシルアミン酸塩;N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ脂肪酸メチルタウリンナトリウム(ココイルメチルタウリンナトリウム)、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルアミドエーテルスルホン酸ナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ロート油などの硫酸化油、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、及びカゼインナトリウム等の高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、脂肪酸アミドエーテル硫酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、スルホコハク酸塩等の硫酸エステル塩型またはスルホン酸塩型界面活性剤;エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、N-アシルイミノジ酢酸、N-アシルアミノ酸塩等のカルボン酸型界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、本発明の皮膚洗浄用組成物の製剤安定性をより好ましく得る観点から、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルアミン酸塩が好ましく挙げられ、N-アシルアミン酸塩がより好ましく挙げられる。
【0032】
これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノミリスチン酸エステル等のアルキレングリコールモノ脂肪酸エステル類;グリセリンモノドデシルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノドデシルエーテル等のアルキル多価アルコールエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン分鎖オクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン;ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ラウリン酸メチルグルカミド、ヤシ脂肪酸メチルグルカミド等のアシルメチルグルカミド;その他アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。
【0034】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、本発明の皮膚洗浄用組成物の製剤安定性をより好ましく得る観点から、脂肪酸アルカノールアミドが好ましく挙げられる。
【0035】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
両性界面活性剤としては、具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
これらの両性界面活性剤の中でも、本発明の皮膚洗浄用組成物における析出物の生成抑制性をより好ましく得る観点から、ベタイン型両性界面活性剤が好ましく挙げられる。
【0038】
これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の皮膚洗浄剤組成物における(E)成分の含有量については、皮膚洗浄用組成物の形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(E)成分の総量として、0.1~60重量%、好ましくは0.5~50重量%、更に好ましくは1~40重量%が挙げられる。
【0040】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分に対する(E)成分の比率としては特に限定されないが、析出物の生成抑制性をより良好に得る観点から、(A)成分1重量部当たり、(E)成分の総量が例えば1~60重量部、好ましくは3~50重量部、更に好ましくは5~40重量部、特に好ましくは8~35重量部が挙げられる。
【0041】
他の成分
本発明の皮膚洗浄用組成物には、前述する(A)~(E)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、皮膚洗浄用組成物の形態に応じて、当該技術分野で通常使用される添加成分を含有していてもよい。このような添加成分としては、例えば、美白剤、細胞賦活剤、消炎剤(上記(C)成分以外)、抗菌剤(上記(A)成分及び(B)成分以外)、保湿剤、清涼化剤、無機粉体、香料、着色剤、消臭剤、増粘剤、pH調整剤、基剤、溶剤、酸化防止剤、パール剤、キレート剤等が挙げられる。
【0042】
形態
本発明の皮膚洗浄剤組成物の形態については特に制限されず、例えば、液状、乳液状、及びクリーム状が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用組成物の形態として、好ましくは液状及び乳液状、さらに好ましくは乳液状が挙げられる。
【0043】
用途
本発明の皮膚洗浄用組成物は、適量の水と混合して泡立てて、身体部位の洗浄に使用される。本発明の皮膚洗浄用組成物の洗浄対象となる身体部位については、特に制限されず、あらゆる身体部位の洗浄剤として使用できるが、カチオン性界面活性剤を含まなくても析出物の生成抑制性に優れていることから、洗顔料、ボディーソープ、ハンドソープ等として好適に使用される。また、本発明の皮膚洗浄用組成物は、抗菌剤である(A)成分の析出が安定的に抑制されることで有効成分の析出による効能減弱が抑制されるため、皮脂分泌が多くざ瘡が出来やすい背中や胸の中央部などを洗浄するボディーソープとして特に好適に使用される。
【0044】
製造方法
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、前述する(A)~(D)成分、及び必要に応じて配合される他の成分を混合して、所定の性状に調製することによって製造される。
【0045】
2.析出物生成を抑制する方法
前述するように、イソプロピルメチルフェノールとグリチルリチン酸類(グリチルリチン酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩)は、ミコナゾール及び/又はその塩と水とを含む皮膚洗浄用組成物における析出物生成を抑制することができる。従って、本発明は、更に、(A)成分であるミコナゾール及び/又はその塩と(D)成分である水とを含む皮膚洗浄用組成物における析出物生成を抑制する方法であって、皮膚洗浄用組成物に、前記(A)成分及び前記(D)成分と共に、(B)成分であるイソプロピルメチルフェノールと(C)成分であるグリチルリチン酸類とを配合する、析出物生成を抑制する方法を提供する。
【0046】
なお、本発明において、析出物生成を抑制するとは、ミコナゾール及び/又はその塩と水とを含む皮膚洗浄用組成物において、イソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸類の少なくともいずれかを含まない場合に比べてミコナゾール及び/又はその塩の溶解性が向上し、ミコナゾール及び/又はその塩を含む析出物の生成を抑制することをいう。本発明においては、経時による析出物の生成を抑制すること(製剤安定性により優れること)がより好ましい。
【0047】
前記析出物生成を抑制する方法は、(B)成分であるイソプロピルメチルフェノールと(C)成分であるグリチルリチン酸類とを利用して、(A)成分であるミコナゾール及び/又はその塩と(D)成分である水とを含む皮膚洗浄用組成物における析出物生成を抑制する方法である。
【0048】
前記析出物生成を抑制する方法において、使用する成分の種類や使用量、皮膚洗浄用組成物の形態等については、前記「1.皮膚洗浄用組成物」の欄に示す通りである。
【実施例
【0049】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
試験例1
<皮膚洗浄用組成物の調製>
表1に示す組成の成分を秤量し、必要量の精製水を加え、約80℃に保温しながら攪拌した後、攪拌しながら冷却することで、均一な皮膚洗浄用組成物を得た。なお、表1において、各成分の量を示す数値の単位は、重量%である。
【0051】
<析出物の生成抑制性の評価>
得られた各皮膚洗浄用組成物をスクリュー管(マルエム製、No.5、直径27mm、高さ55mm)に入れ、室温で1時間保管し、性状を目視にて観察した。表2に、析出物が良好に抑制された状態の代表例(析出物なし)と、析出物が抑制されていない状態の代表例(析出物浮遊及び析出物沈殿)とを示す。なお、析出物浮遊と析出物沈殿との両方が同時に生じる場合もある。なお、析出物の有無に関わらず、相の分離が生じた場合は分離が生じた旨も記載した。相の分離は、ミコナゾール硝酸塩を含む相と含まない相とが分離することにより生じていると考えられる。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
参考例1に示すように、ミコナゾール硝酸塩を含む皮膚洗浄用組成物では、製剤後1時間では析出物が認められなかった。比較例1及び比較例2に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか一方を配合した皮膚洗浄用組成物では、製剤後1時間で析出物が認められたため、析出抑制性が悪化することが示された。これに対し、実施例1に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムの両方を加えた本発明の皮膚洗浄用組成物では、製剤後1時間で析出物は認められなかった。
【0055】
なお、参考例1の皮膚洗浄用組成物は、2時間後には析出物の沈殿が認められ、さらに1週間後には著しく多量の析出物の沈殿が認められた。そこで、本発明の皮膚洗浄用組成物について、より長時間での製剤安定性を検討するために、後述の試験例2を示す。
【0056】
試験例2
<皮膚洗浄用組成物の調製>
表3に示す組成の成分を秤量し、必要量の精製水を加え、約80℃に保温しながら攪拌した後、攪拌しながら冷却することで、均一な皮膚洗浄用組成物を得た。なお、表3において、各成分の量を示す数値の単位は、重量%である。
【0057】
<析出物の生成抑制性の評価>
保管条件を室温1週間としたことを除いて、試験例1と同様に析出の生成抑制性を評価した。
【0058】
【表3】
【0059】
比較例3及び比較例4に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか一方を配合した皮膚洗浄用組成物では、製剤後1週間で析出物が認められ、従って、析出物の生成抑制性が不良であった。これに対し、実施例2に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムの両方を含む本発明の皮膚洗浄用組成物では、製剤後1週間経過しても析出物が認められず、析出物の生成抑制性が良好であったため、優れた製剤安定性が得られた。なお、実施例2、比較例3及び比較例4の保管後の皮膚洗浄用組成物の外観が、それぞれ、表2の析出物なし、析出物浮遊、及び析出物沈殿に相当する。
【0060】
試験例3
他のアニオン性界面活性剤を用いた場合について試験を行った。具体的には、表4及び表5(いずれの表においても、各成分の量を示す数値の単位は、重量%である。)に示す組成の皮膚洗浄用組成物の調製と析出物の生成抑制性の評価とを、試験例2と同様に行った。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
比較例5~比較例7に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか一方を配合した皮膚洗浄用組成物では、製剤後1週間で析出物が認められ、従って、析出物の生成抑制性が不良であった。これに対し、実施例3に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムの両方を含む本発明の皮膚洗浄用組成物では、製剤後1週間経過しても僅かに析出物が浮遊するのみで、析出物の生成がほとんど抑制されており、良好な製剤安定性が得られた。さらに、実施例4~実施例8の本発明の皮膚洗浄用組成物では、製剤後1週間経過しても析出物が認められなかったため、析出物の生成抑制性が良好であり、優れた製剤安定性が得られた。
【0064】
試験例4
他の界面活性剤(両性界面活性剤又は非イオン界面活性剤)を用いた場合について試験を行った。具体的には、表6(表中、各成分の量を示す数値の単位は、重量%である。)に示す組成の皮膚洗浄用組成物を試験例2と同様にして調製し、保管期間を30分としたことを除いて試験例2と同様に析出物の生成抑制性の評価を行った。
【0065】
【表6】
【0066】
比較例8及び比較例9に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか一方を配合した皮膚洗浄用組成物では、大量の析出物が認められ、従って、析出物の生成抑制性が著しく不良であった。これに対し、実施例9に示すように、ミコナゾール硝酸塩にイソプロピルメチルフェノール及びグリチルリチン酸ジカリウムの両方を含む本発明の皮膚洗浄用組成物では、析出物が認められず、従って、析出物の生成抑制性が良好であった。また、実施例10の本発明の皮膚洗浄用組成物では、僅かに上相が分離し、大部分を占める下層に僅かに析出物が浮遊するのみで、析出物の生成がほとんど抑制されていた。さらに実施例10の皮膚洗浄用組成物は、製剤後2時間後でも析出物の生成がほとんど抑制されている状態が良好に維持されていた。