(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法、フィルム捲回装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20220323BHJP
B65H 43/04 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
G01N21/892 A
B65H43/04
(21)【出願番号】P 2018030069
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】加集 功士
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-245055(JP,A)
【文献】特開平10-325809(JP,A)
【文献】特開2012-151064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 18/00-18/28
B65H 43/00-43/08
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを捲回巻芯に捲回する捲回工程を備えたフィルムの製造方法であって、
前記捲回工程は、
前記フィルムにおける注視点を検出する注視点検出工程と、
前記捲回巻芯の捲回数を計測する捲回数計測工程と、
前記フィルムの搬送方向における前記注視点の位置を
、当該注視点を検出した時点と当該注視点が前記捲回巻芯に捲回された時点との間の何れかの時点における前記捲回巻芯の捲回数と紐づけて記憶する捲回記憶工程とを備えたフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記捲回工程は、前記フィルムを前記搬送方向に沿って、複数の短冊フィルムに切断するスリット工程をさらに備え、
前記捲回工程において、複数の前記短冊フィルムは、複数の前記捲回巻芯にそれぞれ捲回され、
前記捲回記憶工程において、複数の前記捲回巻芯のそれぞれにおける前記注視点の有無を、前記位置および前記捲回数と紐づけて記憶する請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記捲回巻芯に捲回された前記フィルムを捲き出し、捲き返し巻芯に捲回する捲き返し工程をさらに備え、
前記捲き返し工程において、前記捲回巻芯の捲出数を計測する捲出数計測工程と、該捲出数計測工程において、前記位置が紐づけられた前記捲回巻芯の捲回数に対応する前記捲回巻芯の捲出数の計測を行った場合に、前記フィルムの捲き返しを一時停止する停止工程とを備えた請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記捲回工程に先立ち、前記フィルムを捲出巻芯から捲き出す捲出工程と、
前記捲出工程に先立ち、前記位置を
、前記フィルムを前記捲出巻芯に捲回したときに前記注視点を検出した時点と前記注視点が前記捲出巻芯に捲回された時点との間の何れかの時点における前記捲出巻芯の捲回数と紐づけて記憶する捲出記憶工程とをさらに備え、
前記捲出工程は、前記捲出巻芯の捲出数を計測する捲出数計測工程を備えた請求項1から3の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記捲出数計測工程において前記位置と紐づけられた前記捲出巻芯の捲回数に対応する前記捲出巻芯の捲出数を計測した場合にのみ、前記注視点検出工程における検出が実行される請求項4に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記捲出記憶工程において前記位置と紐づけられた前記捲出巻芯の捲回数と、前記捲回記憶工程において前記位置と紐づけられた前記捲回巻芯の捲回数とを同期させる請求項4または5に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムが、非水電解液二次電池用セパレータである請求項1から6の何れか1項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
フィルムを捲回巻芯に捲回するフィルム捲回装置であって、
前記フィルムにおける注視点を検出する注視点センサと、前記捲回巻芯の捲回数を計測する捲回数計測センサと、前記フィルムの搬送方向における前記注視点の位置を
当該注視点を検出した時点と当該注視点が前記捲回巻芯に捲回された時点との間の何れかの時点における前記
捲回巻芯の捲回数と紐づけて記憶する記憶装置とを備えたフィルム捲回装置。
【請求項9】
前記捲回巻芯が、側面に目印を備え、前記捲回数計測センサが、前記目印の検出により、前記捲回数を計測する請求項8に記載のフィルム捲回装置。
【請求項10】
前記捲回巻芯が、外周面に前記フィルムが捲回される外周部と、内側に捲回軸が挿入される内周部と、中心から周囲方向に延び、前記外周部と前記内周部とを接続する複数のリブとを備え、前記捲回数計測センサが、前記リブの検出により、前記捲回数を計測する請求項8に記載のフィルム捲回装置。
【請求項11】
前記フィルムが、非水電解液二次電池用セパレータである請求項8から10の何れか1項に記載のフィルム捲回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムの製造方法、および当該フィルムを捲回するフィルム捲回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィルムの製造装置において、フィルムにおける注視点の位置を検出する方法が記載されている。特許文献1においては、注視点として、フィルムの製造において発生するフィルムの欠陥が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-240816号公報(2014年12月25日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、フィルムの搬送方向における、注視点に対応した位置に、当該注視点の位置情報を印字する。このとき、特許文献1においては、フィルムへの印字のために、フィルムの搬送速度の減速を必要とする場合がある。また、上記印字のためには、印字ヘッド等が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフィルムの製造方法は、フィルムを捲回巻芯に捲回する捲回工程を備えたフィルムの製造方法であって、前記捲回工程は、前記フィルムにおける注視点を検出する注視点検出工程と、前記捲回巻芯の捲回数を計測する捲回数計測工程と、前記フィルムの搬送方向における前記注視点の位置を前記捲回巻芯の捲回数と紐づけて記憶する捲回記憶工程とを備える。
【0006】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフィルム捲回装置は、フィルムを捲回巻芯に捲回するフィルム捲回装置であって、前記フィルムにおける注視点を検出する注視点センサと、前記捲回巻芯の捲回数を計測する捲回巻芯センサと、前記フィルムの搬送方向における前記注視点の位置を前記捲回数と紐づけて記憶する記憶装置とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、注視点の位置を、フィルムの捲回数と紐づけて記憶することにより、フィルムにおける注視点の特定のために、フィルムに印字する必要がなく、フィルムの搬送速度を落とす必要がない。また、フィルムにおける注視点の特定に、印字ヘッド等の装置を不要とできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係るセパレータ捲回装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るセパレータの捲回工程を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態1に係る捲回巻芯を示す概略側面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る他のセパレータ捲回装置を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るセパレータのスリット工程を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態1に係るセパレータ捲き返し装置を示す概略図と、当該捲き返し装置を使用した、欠陥の処理について説明するための概略図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係るセパレータの捲き返し工程を説明するためのフローチャートである。
【
図8】巻芯に捲回されたセパレータ原反の巻き締まりによる、セパレータ原反捲回体の変形について説明するための概略図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係るセパレータ捲回装置を示す概略図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係るセパレータ捲回装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
本明細書において、フィルムにおける注視点とは、フィルムに対して何らかの処理を行う必要がある、フィルムの箇所を示すものであり、フィルムの製造工程の何れかの工程において検出し、位置を特定する必要のある箇所を指す。
【0010】
図1は、本発明の実施形態1に係るフィルム捲回装置の例として、セパレータ捲回装置10を示す概略図である。セパレータ捲回装置10は、巻芯11と、テープセンサ12と、計測センサ13と、欠陥センサ14と、計算装置15と、記憶装置16とを備える。本実施形態においては、セパレータ捲回装置10を用いて、フィルムとしてセパレータ原反Wを搬送し、巻芯11にセパレータ原反Wを捲回する場合について説明する。
【0011】
本実施形態において、セパレータ原反Wは、例えば、リチウムイオン二次電池に使用されるセパレータの、製品幅にスリットされる前の状態を指す。本実施形態において、セパレータ原反Wは、始端テープSTと、終端テープFTと、少なくとも1つの欠陥Dを有する。始端テープSTと、終端テープFTとは、セパレータ原反Wの製造中に付されるものであってもよい。始端テープSTと終端テープFTとは、テープセンサ12によって検出できるものであれば特に限定されず、マーカ、コード、またはレーザー印字等を用いてもよい。また、始端テープSTと終端テープFTとの寸法および形状についても、テープセンサ12によって検出できるものであれば、特に限定されない。
【0012】
本実施形態における注視点である欠陥Dは、本実施形態においては、セパレータ原反Wの長手方向における、始端テープSTと、終端テープFTとの間に発生したとする。欠陥Dは、例えば、セパレータ原反Wの製造中に発生した、セパレータ原反Wの基材に施される塗工の剥がれ、凝集、またはセパレータ原反Wの穴あき等であってもよい。
【0013】
本実施形態における捲回巻芯である巻芯11は、略円筒形状を有し、本実施形態においては、巻芯11の内側に図示しない捲回軸が挿入され、捲回軸が回転することにより、巻芯11の外周面にセパレータ原反Wが捲回される。巻芯11は、側面に目印17を少なくとも1つ有する。
【0014】
テープセンサ12は、セパレータ原反Wの少なくとも一面に付された、始端テープSTと終端テープFTとを検出するためのセンサである。
【0015】
計測センサ13は、捲回数計測センサとして、巻芯11の側面の目印17を検出し、巻芯11の捲回数を計測するためのセンサである。計測センサ13は、動作している間、巻芯11の捲回数を常に記録する。巻芯11は、巻芯11の1回転分だけセパレータ原反Wが捲回されると、計測センサ13の検出範囲を、目印17が1回通過するように配置される。このため、計測センサ13の検出範囲を、目印17が1回通過すると、計測センサ13が、記録している捲回数を1回分増加させる。なお、目印17は、巻芯11の内側にある捲回軸の側面に設けられていてもよい。さらに、セパレータ原反Wの幅より長い巻芯11にセパレータ原反Wを捲回する場合、目印17は、セパレータ原反Wが捲回されない巻芯11の表面に設けられていてもよい。また、計測センサ13が目印17を読み取ることができるかぎり、目印17の材質、形状、および付与方法等は、特に限定されない。
【0016】
欠陥センサ14は、注視点センサとして、セパレータ原反Wの注視点である欠陥Dを検出するためのセンサである。本実施形態においては、欠陥センサ14の検出範囲を、セパレータ原反Wの表面の全幅としているが、これに加えて、セパレータ原反Wの裏面の全幅においても、欠陥Dの検出を行ってもよい。なお、セパレータ原反Wが欠陥センサ14の検出範囲を通過してから巻芯11に捲回されるまでに、セパレータ原反Wは距離R1だけ搬送される。
【0017】
計算装置15は、テープセンサ12と、計測センサ13と、欠陥センサ14とのそれぞれの検出結果を集約し、互いに紐づける計算を行う装置である。計算装置15は、テープセンサ12、計測センサ13、および欠陥センサ14と、データのやり取りが相互に可能であるように接続されている。
【0018】
記憶装置16は、計算装置15によって紐づけられた、テープセンサ12、計測センサ13、および欠陥センサ14のそれぞれの検出結果の情報を記憶する装置である。計算装置15と記憶装置16とは、データのやり取りが相互に可能であるように接続されている。
【0019】
計算装置15は、欠陥センサ14が欠陥Dを検出した際に、計測センサ13によって記録された捲回数を、当該欠陥Dに対応する捲回数として、記憶装置16に記録する。すなわち、記憶装置16は、欠陥Dの位置を当該欠陥Dに対応する捲回数と紐づけて記憶する。ここで、セパレータ原反Wから複数の欠陥Dが検出された場合は、それぞれの欠陥Dに対応する捲回数が、記憶装置16に記録される。さらに、計算装置15は、テープセンサ12が終端テープFTの検出された時点における捲回数の情報を、記憶装置16に記録する。すなわち、記憶装置16は、セパレータ原反Wの総捲回数を記憶する。なお、記憶装置16は、欠陥Dに対応する捲回数の他に、欠陥センサ14が検出した、欠陥Dに関する、大きさまたは種類等の情報を記憶してもよい。
【0020】
図2は、本実施形態に係るセパレータ捲回装置10を使用して、セパレータ原反Wを捲回する方法を説明するためのフローチャートである。
図1および
図2を参照して、セパレータ原反Wを巻芯11に捲回する具体的な方法を説明する。
【0021】
始めに、巻芯11の回転を開始し、セパレータ捲回装置10に搬送されてきたセパレータ原反Wの捲回を開始する(ステップS10)。セパレータ原反Wは、巻芯11に捲回されることにより、矢印MDの方向に搬送される。ここで、例えば、セパレータ捲回装置10は、セパレータ原反Wの基材に機能層を形成するための塗工装置の直後に配置されていてもよい。また、セパレータ原反Wの捲回の開始と同時に、テープセンサ12と、計測センサ13と、欠陥センサ14との動作を開始してもよい。
【0022】
次いで、セパレータ原反Wに付された始端テープSTを、テープセンサ12が検出する(ステップS11)。計算装置15は、テープセンサ12が始端テープSTを検出した時点を、計測センサ13による、巻芯11の回転数の計数開始の基準とする。これにより、セパレータ捲回装置10によるセパレータ原反Wの捲回数の計測を開始する(ステップS12)。
【0023】
上記捲回数の計測の間、テープセンサ12は、終端テープFTの検出の有無を監視し続ける(ステップS13)。テープセンサ12が、終端テープFTを検出しない場合には、欠陥センサ14は、欠陥Dの検出の有無を監視し続ける(ステップS14)。
【0024】
欠陥センサ14が欠陥Dを検出した場合には、計算装置15が、当該検出時点における、計測センサ13が計数した巻芯11の回転数を読み出すことにより、当該検出時点における捲回数を算出する。その後、計算装置15は、算出した捲回数を、欠陥Dの情報と紐づけて、記憶装置16に記録する(ステップS15)。この後、捲回数の計測が継続され(ステップS16)、再びステップS13に移行する。ステップS14において欠陥Dが検出されない場合には、直接ステップS16に移行する。
【0025】
なお、ステップS15における捲回数の記録は、欠陥センサ14が欠陥Dを検出した時点から、セパレータ原反Wが、距離R1だけ搬送された時点における捲回数を記録してもよい。これにより、セパレータ原反Wが巻芯11に捲回された時点における欠陥Dの位置を、より正確に特定することが可能である。
【0026】
セパレータ捲回装置10は、セパレータ原反Wが距離R1だけ搬送されたことを、セパレータ原反Wの搬送速度と、欠陥センサ14が欠陥Dを検出した時点からの時間経過とから割り出してもよい。また、セパレータ原反Wが、距離R1だけ搬送されたことを検出するために、セパレータ捲回装置10は、セパレータ原反Wの搬送距離を測定するロータリーエンコーダを備えていてもよい。
【0027】
なお、セパレータが距離R1だけ搬送される間において生じるセパレータの伸縮は僅少である。したがって、ロータリーエンコーダ等によりセパレータの搬送距離を測定しても、捲回数による欠陥Dの管理に与える影響は、ほとんどないと考えられる。
【0028】
また、計測センサ13によって計測される捲回数は、小数点以下まで計測してもよい。捲回数を小数点以下まで計測するには、例えば、以下の内容を計算装置15内で実施する方法が挙げられる。まず、上述のロータリーエンコーダにて、n回転目における1回転あたりのセパレータ流動長を計測し、その結果を記録する。ここで、n+1回転目における1回転あたりのセパレータ流動長を、n回転目における1回転あたりのセパレータ流動長と同一と近似する。次いで、n回転目以降のセパレータ流動長の増分を、n回転目における1回転あたりのセパレータ流動長(n+1回転目における1回転あたりのセパレータ流動長の近似値)によって割る。これにより、n+1回転目における小数点以下の回転数に相当する値を得ることができる。上記のように、小数点以下まで捲回数を計測することにより、捲回数と欠陥位置との紐付けをより正確に行うことができる。
【0029】
ステップS13において、テープセンサ12が、終端テープFTを検出した場合、計算装置15は、テープセンサ12が終端テープFTを検出した時点を、計測センサ13による、巻芯11の回転数の計数終了の基準とする。これにより、セパレータ捲回装置10によるセパレータ原反Wの捲回数の計測を終了する(ステップS17)。
【0030】
このステップS17の直後に、計算装置15は、捲回数の計測の終了時点における捲回数、すなわち、セパレータ原反Wの総捲回数を記憶装置16に記録する(ステップS18)。最後に、巻芯11の回転を停止することにより、セパレータ捲回装置10によるセパレータ原反Wの捲回が終了する(ステップS19)。
【0031】
例えば、捲回数50回目において、欠陥センサ14が欠陥Dを1回だけ検出し、総捲回数が100回だったとする。この場合には、記憶装置16は、欠陥Dに対応する捲回数として50、総捲回数として100のデータを記憶する。これにより、セパレータ原反Wの搬送方向における欠陥Dの位置を、捲回数と紐づけて記憶することが可能である。
【0032】
図3は、本実施形態に係る巻芯11、および当該巻芯11にセパレータ原反Wを捲回した捲回体の構造を説明するための側面概略図である。巻芯11は、外周面にセパレータ原反Wが捲回される外周部11aと、内側に捲回軸が挿入される内周部11bと、中心から周囲方向に延び、外周部11aと内周部11bとを接続する、複数のリブ11cとを備える。本実施形態においては、リブ11cが、巻芯11の全周を略8等分する位置に8個形成されている。また、目印17は、外周部11aの側面に形成されている。
【0033】
本実施形態においては、計測センサ13が目印17を検出することにより、セパレータ原反Wの捲回数の計測を行った。しかしながら、これに限られず、計測センサ13がリブ11cを検出する度に捲回数を増加させることにより、セパレータ原反Wの捲回数の計測を行ってもよい。これにより、セパレータ原反Wの長手方向において、欠陥Dの位置を、より細かい範囲内において特定することができる。また、リブ11cを検出する代わりに、巻芯11の側面に付与する目印17の数を増やし、複数の目印17を計測センサ13によって読み取ることによっても、上述の効果を得ることができる。このとき、巻芯11の側面に付与される目印17は、それぞれ略等間隔に設けられるのが好ましい。
【0034】
図4は、本実施形態に係る他のセパレータ捲回装置20について説明するための概略図である。セパレータ捲回装置20は、複数の巻芯21と、テープセンサ22と、計測センサ23と、欠陥センサ24と、カッタ28とを備える。
【0035】
セパレータ捲回装置20は、セパレータ捲回装置20による捲回に先立ち、前述のセパレータ捲回装置10によってセパレータ原反Wが捲回された、巻芯11を有している。セパレータ捲回装置20は、捲出巻芯である巻芯11からセパレータ原反Wを捲き出した上、短冊フィルムである複数のスリットセパレータSにスリットし、捲回巻芯である巻芯21に、当該スリットセパレータSを捲回するセパレータ捲回装置である。セパレータ捲回装置20は、スリッタであってもよい。
【0036】
巻芯21は、スリットセパレータSが捲回される外周面の幅を除いて、前述の巻芯11と同一の形状および寸法を有していてもよいが、互いに径が異なっていてもよい。また、本実施形態においては、複数の巻芯21に同じ捲回軸を挿入しているが、複数の巻芯21が異なる捲回軸に挿入され、スリットセパレータSがそれぞれ捲回されてもよい。巻芯21においても、側面に目印27を備える。
【0037】
テープセンサ22および計測センサ23は、前述のテープセンサ12および計測センサ13とそれぞれ同一の構成および機能を有していてもよい。欠陥センサ24は、欠陥センサ14と比較して、セパレータ原反Wの幅方向における欠陥Dの位置を測定できる点においてのみ異なっている。
【0038】
カッタ28は、搬送されるセパレータ原反Wを、所定の幅を有する複数のスリットセパレータSにスリットする。本実施形態においては、セパレータ捲回装置20が4枚のカッタ28を有するため、セパレータ捲回装置20によって、1枚のセパレータ原反Wから5本のスリットセパレータSが得られる。しかし、これに限られず、カッタ28はこれより多くとも少なくともよく、カッタ28の枚数に応じてスリットセパレータSの本数が増減してもよい。
【0039】
なお、セパレータ原反Wが欠陥センサ24の検出範囲を通過してから巻芯21に捲回されるまでに、セパレータ原反WおよびスリットセパレータSは距離R2だけ搬送される。
【0040】
本実施形態においては、セパレータ捲回装置20の使用において、捲出側、すなわち巻芯11側において、テープセンサ12および計測センサ13を引き続き使用してもよい。この場合、テープセンサ12は捲き出されるセパレータ原反Wのテープを検出し、計測センサ13は、セパレータ原反Wの捲出数を計測する捲出数計測センサとして機能する。
【0041】
テープセンサ12・22、計測センサ13・23、欠陥センサ24、および計算装置15は、それぞれのセンサの検出結果、または捲回数のデータを相互にやり取りできる。また、記憶装置16は、計算装置15とデータを相互にやり取りでき、上述のセパレータ捲回装置10におけるセパレータ原反Wの捲回によって得られたデータを保持している。
【0042】
図5は、本実施形態に係るセパレータ捲回装置20を使用して、巻芯11に捲回されたセパレータ原反Wをスリットして得られた複数のスリットセパレータSを、巻芯21にそれぞれ捲回する方法を説明するためのフローチャートである。
図4および
図5を参照して、セパレータ原反Wのスリット方法、およびスリットセパレータSの捲回方法を具体的に説明する。
【0043】
始めに、巻芯11に捲回されたセパレータ原反Wの捲出および巻芯21へのスリットセパレータSの捲回を開始する(ステップS20)。ここで、セパレータ原反Wが捲回された巻芯11においては、始端テープSTが付された箇所が内側に、終端テープFTが付された箇所が外側にあるため、テープセンサ12は先に終端テープFTを検出する(ステップS21)。計算装置15は、テープセンサ12が終端テープFTを検出した時点を、計測センサ13による、巻芯11の回転数の計数開始の基準とする。これにより、セパレータ捲回装置20によるセパレータ原反Wの捲出数の計測を開始する(ステップS22)。
【0044】
この際、捲出数の計測は、計算装置15が記憶装置16から、セパレータ原反Wの総捲回数を呼び出し、当該総捲回数から、捲出数を逆に減らすことにより行ってもよい。例えば、上述した例を挙げると、捲出数の計測は、1回転分の捲出が計測センサ13によって検出される度に、総捲回数である100から1回ずつ捲回数を減らすことにより行われてもよい。
【0045】
この後、セパレータ原反Wはカッタ28により複数のスリットセパレータSにスリットされ、それぞれ複数の巻芯21に捲回される。このため、捲回側、すなわち巻芯21側においても、テープセンサ22が終端テープFTを検出する(ステップS23)。計算装置15は、テープセンサ22が終端テープFTを検出した時点を、計測センサ23による、巻芯21の回転数の計数開始の基準とする。これにより、セパレータ捲回装置20によるスリットセパレータSの捲回数の計測を開始する(ステップS24)。なお、それぞれの巻芯21における捲回速度を一定に揃えれば、1つの巻芯21における捲回数を検出することにより、全ての巻芯21におけるスリットセパレータSの捲回数を同時に検出することが可能である。
【0046】
上記捲出数の計測の間、テープセンサ12は、始端テープSTの検出の有無を監視し続ける(ステップS25)。テープセンサ12が、始端テープSTを検出しない場合には、計測センサ13は、欠陥Dに対応する捲出数を計測するまで、捲出数を計測し続ける(ステップS26)。
【0047】
計測センサ13が、欠陥Dに対応する捲出数を計測した場合には、欠陥センサ24が動作を開始する(ステップS27)。上述の例を挙げると、総捲回数である100から、欠陥Dと紐づけられた50まで捲出数が減算された場合において、欠陥センサ24は動作を開始する。この後、欠陥センサ24によって欠陥Dが検出されると同時に、セパレータ原反Wの幅方向における当該欠陥Dの位置が検出される(ステップS28)。
【0048】
この後、計算装置15が、欠陥センサ24による欠陥Dの検出時点における、計測センサ23が計数した巻芯21の回転数を読み出すことにより、当該検出時点における捲回数を算出する。当該算出と併せて、計算装置15は、欠陥センサ24による欠陥Dの検出結果から、欠陥DをどのスリットセパレータSが含むかを割り出す。
【0049】
次いで、計算装置15は、記憶装置16に、欠陥Dを有するスリットセパレータSのデータと、計測センサ23からのスリットセパレータSの捲回数のデータとを、紐づけて記録する(ステップS29)。すなわち、記憶装置16は、複数の巻芯21のそれぞれにおける欠陥Dの有無を、スリットセパレータSの搬送方向における欠陥Dの位置およびスリットセパレータSの捲回数と紐づけて記憶する。
【0050】
例えば、捲回数60回目において、欠陥センサ24が欠陥Dを1回だけ検出し、当該欠陥が2番目のスリットセパレータSに含まれることが分かり、総捲回数が120回だったとする。この場合には、記憶装置16は、欠陥Dに対応する捲回数として60、当該欠陥のあるスリットセパレータSのデータとして2、総捲回数として120のデータを記憶する。これにより、スリットセパレータSの搬送方向における欠陥Dの位置および欠陥Dが含まれるスリットセパレータSのデータを、捲回数と紐づけて記憶することが可能である。
【0051】
なお、ステップS29における捲回数の記録は、欠陥センサ24が欠陥Dを検出した時点から、セパレータ原反WおよびスリットセパレータSが、距離R2だけ搬送された時点における捲回数を記録してもよい。セパレータ捲回装置20は、セパレータ原反WおよびスリットセパレータSが距離R2だけ搬送されたことを、セパレータ捲回装置10における、セパレータ原反Wが距離R1だけ搬送されたことを判断する方法と、同様の方法によって判断してもよい。
【0052】
次いで欠陥センサ24は動作を停止し(ステップS30)、計測センサ13による捲出数の計測が継続される(ステップS31)。ステップS26において欠陥Dに対応する捲出数が検出されない場合には、直接ステップS31に移行する。
【0053】
ステップS25~S31の間、テープセンサ22は、始端テープSTの検出の有無を監視し続ける(ステップS32)。テープセンサ22が、始端テープSTを検出しない場合には、計測センサ13は捲回数を計測し続ける(ステップS33)。
【0054】
ステップS25において、テープセンサ12が、始端テープSTを検出した場合、計測センサ13が動作を終了することにより、セパレータ捲回装置20によるセパレータ原反Wの捲出数の計測を終了する(ステップS34)。同様に、ステップS32において、テープセンサ22が、始端テープSTを検出した場合、計測センサ23が動作を終了することにより、セパレータ捲回装置20によるスリットセパレータSの捲回数の計測を終了する(ステップS35)。
【0055】
このステップS35の直後に、計算装置15は、捲回数の計測の終了時点における捲回数、すなわち、スリットセパレータSの総捲回数を記憶装置16に記録する(ステップS36)。ステップS34および36が完了した後、巻芯11および巻芯21の回転を停止することにより、セパレータ捲回装置20によるセパレータ原反Wの捲出、およびスリットセパレータSの捲回が終了する(ステップS37)。
【0056】
図6は、本実施形態に係る捲き返し装置30を示す概略図であり、(a)から(c)の順に、本実施形態における欠陥Dに対する処理を説明している。捲き返し装置30は、捲き返し巻芯として巻芯31を備える。捲き返し装置30は、欠陥Dを有するスリットセパレータSが捲回された巻芯21から、スリットセパレータSを捲出して、巻芯31に捲回し直し、当該捲回の間に欠陥DをスリットセパレータSから除去するための装置である。このため、欠陥Dを備えていないスリットセパレータS、例えば、上述の例においては、2番目を除く巻芯21に捲回されたスリットセパレータSに対しては、捲き返し装置30を使用した処理を行う必要は必ずしも存在しない。
【0057】
巻芯31は、巻芯21と同一であってもよく、互いに径が異なっていてもよい。また、巻芯31は、スリットセパレータSが捲回される外周面の幅を除いて、前述の巻芯11と同一の形状および寸法を有していてもよく、互いに径が異なっていてもよい。なお、巻芯31においては、側面に目印を備えていなくともよい。
【0058】
本実施形態においては、捲き返し装置30の使用において、捲出側、すなわち巻芯21側において、テープセンサ22および計測センサ23を引き続き使用してもよい。この場合、テープセンサ22は捲き出されるスリットセパレータSのテープを検出し、計測センサ23は、スリットセパレータSの捲出数を計測する捲出数計測センサとして機能する。
【0059】
テープセンサ22、計測センサ23、および計算装置15は、それぞれのセンサの検出結果、または捲出数のデータを相互にやり取りできる。また、記憶装置16は、計算装置15とデータを相互にやり取りでき、上述のセパレータ捲回装置20におけるスリットセパレータSの捲回によって得られたデータを保持している。
【0060】
図7は、本実施形態に係る捲き返し装置30を使用して、巻芯21に捲回された、欠陥Dを有するスリットセパレータSを、巻芯31に捲回し直す方法を説明するためのフローチャートである。
図6および
図7を参照して、スリットセパレータSの捲回し直す方法を具体的に説明する。
【0061】
始めに、巻芯21に捲回されたスリットセパレータSの捲出および巻芯31へのスリットセパレータSの捲回を開始する(ステップS40)。ここで、スリットセパレータSが捲回された巻芯21においては、始端テープSTが付された箇所が外側に、終端テープFTが付された箇所が内側にあるため、
図6の(a)に示すように、テープセンサ22は先に始端テープSTを検出する(ステップS41)。計算装置15は、テープセンサ22が始端テープSTを検出した時点を、計測センサ23による、巻芯21の回転数の計数開始の基準とする。これにより、捲き返し装置30によるスリットセパレータSの捲出数の計測を開始する(ステップS42)。
【0062】
この際、捲出数の計測は、計算装置15が記憶装置16から、スリットセパレータSの総捲回数を呼び出し、当該総捲回数から、捲出数を逆に減らすことにより行ってもよい。例えば、上述した例を挙げると、捲出数の計測は、1回転分の捲出が計測センサ23によって検出される度に、総捲回数である120から1回ずつ捲回数を減らすことにより行われてもよい。
【0063】
上記捲出数の計測の間、テープセンサ22は、終端テープFTの検出の有無を監視し続ける(ステップS43)。テープセンサ22が、終端テープFTを検出しない場合には、計測センサ23は、欠陥Dに対応する捲出数を計測するまで、捲出数を計測し続ける(ステップS44)。
【0064】
計測センサ23が、欠陥Dに対応する捲出数を計測した場合には、巻芯21および31の回転が停止することにより、捲き返しが一時停止する(ステップS27)。上述の例を挙げると、総捲回数である120から、欠陥Dと紐づけられた60まで捲出数が減算された場合において、捲き返し装置30はスリットセパレータSの捲き返しを一時停止する。このため、
図6の(b)に示すように、欠陥Dが存在する位置が、巻芯21と巻芯31との間に現れた状態において、スリットセパレータSが静止する。
【0065】
捲き返し装置30による捲き返しが一時停止している間には、欠陥Dを有するスリットセパレータSに対する処理が行われる(ステップS46)。始めに、例えば、作業員によって、スリットセパレータSの搬送方向における、欠陥Dの前後の幅方向、すなわち、例えば、
図6の(b)に示す切断線C1および切断線C2に沿って、スリットセパレータSが切断される。次いで、欠陥Dを有するスリットセパレータSの切片を廃棄し、切断されたスリットセパレータS同士を接合線C3において接合する。これにより、
図6の(c)に示す、上述の欠陥Dが除去された1本のスリットセパレータSが得られ、スリットセパレータSに対する処理が完了する。なお、必要に応じ、切断された巻芯31側のスリットセパレータSを、切断部において接合しないことにより、上述の捲き返しを終了してもよい。この場合、巻芯21側のスリットセパレータSの切断部から、別の巻芯31に捲き返しを再開してもよい。
【0066】
ステップS46が完了すると、巻芯21および31の回転が再開することにより、捲き返しが再開し(ステップS47)、計測センサ13による捲出数の計測が継続される(ステップS48)。ステップS44において欠陥Dに対応する捲出数が検出されない場合には、直接ステップS48に移行する。したがって、巻芯21から捲出されるスリットセパレータSから、始端テープSTと終端テープFTとの間に存在する欠陥Dが全て除去されるまで、ステップS43からS48は繰り返される。
【0067】
ステップS43において、テープセンサ22が、終端テープFTを検出した場合、計算装置15は、テープセンサ22が終端テープFTを検出した時点を、計測センサ23による、巻芯21の回転数の計数終了の基準とする。これにより、捲き返し装置30によるスリットセパレータSの捲出数の計測を終了する(ステップS49)。その後、巻芯21および巻芯31の回転を停止することにより、捲き返し装置30によるスリットセパレータSの捲き返しが終了する(ステップS50)。
【0068】
以上により、セパレータ捲回装置10と、セパレータ捲回装置20と、捲き返し装置30とを使用して、セパレータ原反Wから、欠陥Dが取り除かれた複数のスリットセパレータSが得られる。
【0069】
本実施形態においては、セパレータ捲回装置10・20において、セパレータ原反WまたはスリットセパレータSに存在する欠陥Dの位置を、セパレータ原反WまたはスリットセパレータSを捲回する回数と紐づけて特定する。このため、伸縮性のあるセパレータ原反WまたはスリットセパレータSであっても、セパレータ原反WまたはスリットセパレータSの製造時に検出される欠陥Dを確実に除去できる。したがって、より高品質なセパレータ原反WおよびスリットセパレータSの製造方法および製造装置を提供できる。
【0070】
加えて、セパレータ捲回装置20においては、複数のスリットセパレータSのうち、どのスリットセパレータSに欠陥Dが含まれるかについても、欠陥Dの搬送方向の位置と併せて特定できる。
【0071】
さらに、セパレータ捲回装置20によって捲出されるセパレータ原反Wにおいては、セパレータ捲回装置10によって、欠陥Dの位置を捲回数と紐づけて特定されている。このため、セパレータ捲回装置20によって捲出数を計測することにより、いつ欠陥センサ24の検知範囲上に欠陥Dが来るかが容易に特定できるため、欠陥センサ24を常時稼働する必要がない。
【0072】
上記は、セパレータ捲回装置20によって捲回されたスリットセパレータSを、捲き返し装置30によって巻き返す場合においても同様である。このため、捲き返し装置30を使用して、作業員が欠陥Dを除去する作業において、作業員が欠陥位置を特定し、捲き返しを停止する作業の負担が軽減される。
【0073】
なお、本実施形態において、フィルムは、多孔質である非水電解液二次電池用セパレータであってもよい。この場合、捲回工程の間と捲回工程の後に保管される間とにおいて、フィルムにおける注視点の位置と捲回巻芯の回転数との関係が、変化しづらいという効果を奏する。
【0074】
上述の場合、フィルムは多孔質であるため、捲回工程において与えられる張力によって伸び、フィルムは当該張力によって伸ばされた状態のまま、捲回巻芯に捲回される。例えば、
図2に示す捲回工程によって、巻芯11にセパレータ原反Wが捲回された捲回体RAを、
図8の(a)に示す。この場合、巻芯11に捲回されたセパレータ原反Wには、捲回の際の張力によって伸ばされた長さに応じて、収縮する力が生じる。このため、捲回体RAのセパレータ原反Wは、時間の経過と共に収縮する。この際、巻芯11に捲回されたセパレータ原反Wにおいて、重なったセパレータ原反W同士の間には摩擦力が働く。このため、当該重なったセパレータ原反W同士は、捲回方向、すなわち、
図8の(a)に示す、矢印CDの方向には、ほとんどずれることはない。
【0075】
したがって、捲回体RAのセパレータ原反Wは、巻芯11に捲回されたセパレータ原反Wの半径方向のみにおいて、変形が生じる。すなわち、捲回体RAのセパレータ原反Wは、巻芯11の径方向であって、巻芯11の中心に向かう方向である、矢印RDの方向に巻き締まり、セパレータ原反Wの長さは、捲回された当初の長さよりも短くなる。その結果、捲回体RAは、時間の経過と共に、
図8の(b)に示す、捲回体RAよりも外径の小さい捲回体RBに変形する。なお、多孔質のフィルムは、長さ方向に伸縮しやすいのと同時に、厚さ方向へも変形し易いため、上記の巻き締まりの現象を生じやすい。
【0076】
捲回体RAにおいて重なったセパレータ原反W同士は、捲回方向にほとんどずれることがないため、捲回体RAと捲回体RBとの間において、セパレータ原反Wにおける欠陥Dの位置と巻芯11におけるセパレータ原反Wの捲回数との対応関係に変化はない。ゆえに、本発明の方法によれば、捲回巻芯に捲回したフィルムが上述した巻き締まりにより変形したとしても、捲回巻芯に捲回されたフィルムにおける注視点の位置を正確に把握することができる。巻き締まりによる捲回長の変化は、捲回長が長くなるにつれて増加するため、上述した効果は、例えば、捲回長が1000m以上の長尺のセパレータ捲回体などにおいてより得られやすくなる。
【0077】
〔実施形態2〕
図9は、本実施形態に係るセパレータ捲回装置40を示す概略図である。前述のセパレータ捲回装置20と比較して、セパレータ捲回装置40は、セパレータ原反Wが、巻芯11から捲き出されるのではなく、搬送されてきたセパレータ原反Wを巻芯21に捲回する点において異なる。さらに、セパレータ捲回装置40は、欠陥センサ24の代わりに、欠陥センサ44を備える。上記点を除いて、セパレータ捲回装置40は、前述のセパレータ捲回装置20と同一の構成を備えていてもよい。
【0078】
セパレータ捲回装置40によるスリットセパレータSの捲回工程は、
図2に示した各ステップと同様に行われてもよい。ここで、本実施形態においては、セパレータ原反Wが、欠陥センサ44の検出範囲を通過してから巻芯21に捲回されるまでに、カッタ28によって複数のスリットセパレータにスリットされる。
【0079】
さらに、本実施形態においては、ステップS14において、計算装置15は、欠陥センサ44による欠陥Dの検出結果から、セパレータ原反Wの幅方向における欠陥Dの位置を特定する。さらに、計算装置15は、当該位置から、どのスリットセパレータSに欠陥Dが含まれるのかを割り出す。また、ステップS15においては、上記欠陥Dの特定時点における巻芯11の捲回数のみならず、どのスリットセパレータSに欠陥Dが含まれるのかについても記憶装置16に記録する。
【0080】
本実施形態においては、セパレータ原反Wを複数のスリットセパレータSにスリットするとともに、どのスリットセパレータSに欠陥Dが含まれるのか、および、当該スリットセパレータSのどの位置に欠陥Dが含まれるのかについて特定できる。このため、前述の実施形態と比較して、使用するセパレータ捲回装置を減らし、製造工程の簡素化を実現できる。
【0081】
〔実施形態3〕
図10は、本実施形態に係るセパレータ捲回装置50を示す概略図である。セパレータ捲回装置50は、欠陥センサ24を備えない点を除いて、前述のセパレータ捲回装置20と同一の構成を備えていてもよい。なお、セパレータ捲回装置50においては、セパレータ原反Wが巻芯11から捲き出されてから、スリットセパレータSが巻芯21に捲回されるまでに、セパレータ原反WおよびスリットセパレータSは、距離R3だけ搬送される。
【0082】
本実施形態において、セパレータ捲回装置50によって巻芯11から捲き出されるセパレータ原反Wは、セパレータ捲回装置10によって巻芯11に捲回されたものである。セパレータ捲回装置10によるセパレータ原反Wの捲回は、上述の
図2にて説明した方法と同一の方法にて実行されてもよい。
【0083】
セパレータ捲回装置50による、セパレータ原反Wの複数のスリットセパレータSへのスリットと、当該スリットセパレータSの巻芯21への捲回とは、上述の
図5にて説明した方法と同様の方法にて実行されてもよい。ただし、下記については、
図5にて説明した方法と異なっている。
【0084】
すなわち、本実施形態においては、ステップS27およびS28において、欠陥センサ24の動作および欠陥の検出が実行されず、ステップS29において、欠陥センサ24による欠陥の検出時点における、捲回数の記録が実行されない。代わりに、計測センサ13が、欠陥位置に対応する捲出数の計測を行った時点から、セパレータ原反WおよびスリットセパレータSが距離R3だけ搬送された時点における巻芯21の捲回数が、計算装置15によって記憶装置16に記録される。上記に伴い、本実施形態においては、ステップS30についても実行されない。
【0085】
セパレータ捲回装置50は、セパレータ原反WおよびスリットセパレータSが距離R3だけ搬送されたことを、セパレータ捲回装置10における、セパレータ原反Wが距離R1だけ搬送されたことを判断する方法と、同様の方法によって判断してもよい。
【0086】
上記構成により、セパレータ捲回装置50においては、欠陥Dの位置と紐づけられた巻芯21の捲回数と、セパレータ捲回装置10において欠陥Dの位置と紐づけられた巻芯11の捲回数とが同期する。このため、セパレータ捲回装置50においては、欠陥Dの位置と紐づけられた巻芯21の捲回数を計測するために、欠陥センサ24を用いて再度欠陥Dを検出する必要がない。したがって、セパレータ捲回装置50の使用により、セパレータ捲回装置20を使用する場合よりも、セパレータ原反Wの捲出およびスリットセパレータSの捲回の工程がより簡素化される。
【0087】
なお、セパレータ捲回装置10において、欠陥センサ14が、セパレータ原反Wの幅方向における欠陥Dの位置についても検出してもよい。さらに、当該検出の結果より、計算装置15は、セパレータ捲回装置50によるセパレータ原反Wのスリットによって、欠陥DがどのスリットセパレータSに含まれるのかを割り出してもよい。
【0088】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10、20、40、50 セパレータ捲回装置
11、21、31 巻芯
13、23 計測センサ
14、24、44 欠陥センサ
15 計算装置
16 記憶装置
17、27 目印
30 捲き返し装置