(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-22
(45)【発行日】2022-03-30
(54)【発明の名称】化学機械研磨のためのリアルタイム・プロファイル制御
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220323BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20220323BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20220323BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20220323BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20220323BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
H01L21/304 622K
B24B37/005 A
B24B37/30 E
B24B49/10
B24B49/12
(21)【出願番号】P 2019519318
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(86)【国際出願番号】 US2017055577
(87)【国際公開番号】W WO2018071302
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シェン, シーハル
(72)【発明者】
【氏名】シュー, クン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, チュウ
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193068(JP,A)
【文献】特開2008-238367(JP,A)
【文献】特表2012-510169(JP,A)
【文献】特表2016-538728(JP,A)
【文献】特表2008-503356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/005
B24B 37/30
B24B 49/10
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非一過性のコンピュータ可読媒体内で有形に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、プロセッサに、
インシトゥ・モニタシステムからの信号に基づいて、処理を受け且つ前記インシトゥ・モニタシステムによってモニタされている基板上の基準区域の物理的な特性を示す特性値の第1のシーケンスを生成すること、
前記インシトゥ・モニタシステムからの前記信号に基づいて、前記基板上の制御区域の物理的な特性を示す特性値の第2のシーケンスを生成すること、
前記特性値の第1のシーケンスから基準区域レートを特定すること、
前記特性値の第2のシーケンスから制御区域レートを特定すること、
前記基準区域に対する特性値を前記制御区域に対する特性値と比較することによってエラー値を特定すること、
比例・積分・微分制御アルゴリズムを使用して、少なくとも前記エラー値と動的公称制御区域値とに基づいて、第1の制御ループ内で前記制御区域に対する出力パラメータ値を計算すること、
少なくとも前記基準区域レートと前記制御区域レートとに基づいて、第2の制御ループ内で前記動的公称制御区域値を生成すること、及び
前記出力パラメータ値を使用して、処理システムに前記制御区域を処理させること、を行わせるための指示命令を備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項2】
前記エラー値を特定するための前記指示命令が、前記基準区域に対する前記特性値と前記制御区域に対する前記特性値との間の差を計算するための指示命令を含む、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項3】
前記基準区域レートを特定するための前記指示命令が、前記基準区域に対する前記
特性値の第1のシーケンスに第1の関数をフィッティングし、前記第1の関数の第1の傾斜を特定するための指示命令を含み、前記制御区域レートを特定するための前記指示命令が、前記制御区域に対する前記
特性値の第2のシーケンスに第2の関数をフィッティングし、前記第2の関数の第2の傾斜を特定するための指示命令を含む、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項4】
前記動的公称制御区域値を生成するための前記指示命令が、少なくとも前記基準区域レートと前記制御区域レートとに基づいて、エラー率を生成するための指示命令を含む、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項5】
前記エラー率を生成するための前記指示命令が、前記基準区域レートに基づいて、レート設定点値を計算するための指示命令を含む、請求項4に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項6】
前記レート設定点値を計算するための前記指示命令が、前記エラー値、前記基準区域レート、及び前記制御区域レートに基づいて、前記レート設定点値を計算するための指示命令を含む、請求項5に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項7】
前記レート設定点値を計算するための前記指示命令が、前記基準区域に対する前記特性値、前記制御区域に対する前記特性値、及び前記基準区域レート、並びに目標特性値に基づいて、前記レート設定点値を計算するための指示命令を含む、請求項5に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
前記エラー率を生成するための前記指示命令が、前記レート設定点値を前記制御区域レートと比較するための指示命令を含む、請求項5に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項9】
前記エラー率を生成するための前記指示命令が、前記レート設定点値と前記制御区域レートとの間の差を計算するための指示命令を含む、請求項8に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
前記動的公称制御区域値を生成するための前記指示命令が、前記エラー率と所定の制御区域公称圧力とから前記動的公称制御区域値を計算するための指示命令を含む、請求項4に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
基板の処理を制御する方法であって、
インシトゥ・モニタシステムからの信号に基づいて、処理を受け且つ前記インシトゥ・モニタシステムによってモニタされている基板上の基準区域の物理的な特性を示す特性値の第1のシーケンスを生成すること、
前記インシトゥ・モニタシステムからの前記信号に基づいて、前記基板上の制御区域の物理的な特性を示す特性値の第2のシーケンスを生成すること、
前記特性値の第1のシーケンスから基準区域レートを特定すること、
前記特性値の第2のシーケンスから制御区域レートを特定すること、
前記基準区域に対する特性値を前記制御区域に対する特性値と比較することによってエラー値を特定すること、
比例・積分・微分制御アルゴリズムを使用して、少なくとも前記エラー値と動的公称制御区域値とに基づいて、第1の制御ループ内で制御区域に対する出力パラメータ値を計算すること、
少なくとも前記基準区域レートと前記制御区域レートとに基づいて、第2の制御ループ内で前記動的公称制御区域値を生成すること、及び
前記出力パラメータ値に従って前記基板の前記制御区域を処理することを含む前記基板を処理することを含む、方法。
【請求項12】
基準区域のパラメータ値に従って前記基板の前記基準区域を処理することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板を処理することが、前記基板を研磨することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記インシトゥ・モニタシステムが、光学モニタシステム及び/又は渦電流モニタシステムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
研磨パッドを保持するためのプラテン、
基板を前記研磨パッドに接触させるように保持するためのキャリア、
前記プラテンと前記キャリアとの間で相対運動を生成するために前記プラテンと前記キャリアのうちの少なくとも一方に接続されたモータ、
前記基板の研磨中に前記基板の物理的なパラメータを示す信号を生成するように構成されたインシトゥ・モニタシステム、並びに
前記信号を受信するコントローラであって、
前記インシトゥ・モニタシステムからの前記信号に基づいて、前記基板上の基準区域の物理的な特性を示す特性値の第1のシーケンスを生成すること、
前記インシトゥ・モニタシステムからの前記信号に基づいて、前記基板上の制御区域の物理的な特性を示す特性値の第2のシーケンスを生成すること、
前記特性値の第1のシーケンスから基準区域レートを特定すること、
前記特性値の第2のシーケンスから制御区域レートを特定すること、
前記基準区域に対する特性値を前記制御区域に対する特性値と比較することによってエラー値を特定すること、
比例・積分・微分制御アルゴリズムを使用して、少なくとも前記エラー値と動的公称制御区域値とに基づいて、第1の制御ループ内で前記制御区域に対する出力圧力値を計算すること、
少なくとも前記基準区域レートと前記制御区域レートとに基づいて、第2の制御ループ内で前記動的公称制御区域値を生成すること、及び
キャリアヘッドに、前記出力圧力値を前記基板の前記制御区域に適用させること、を行うように構成されたコントローラを備える、研磨システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、化学機械研磨中の研磨速度補正に影響を与えるフィードバックに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、通常、シリコンウエハ上に導電層、半導電層、又は絶縁層を連続的に堆積させることによって基板上に形成される。1つの製造ステップは、非平坦面上に充填層を堆積させること、及び、充填層を平坦化することを含む。特定の用途に対して、充填層は、パターニング済み層の上面が露出するまで平坦化される。例えば、導電性充填層が、パターニング済み絶縁層上に堆積し、絶縁層内のトレンチ又は孔を充填することができる。平坦化後、絶縁層の高くなったパターンの間に残っている導電層の部分が、基板上の薄膜回路の間の導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインを形成する。誘電体研磨などの他の用途では、充填層が、下層上に所定の厚さが残るまで平坦化された誘電体層である。誘電体層の平坦化は、フォトリソグラフィで必要となり得る。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、認められた平坦化方法の1つである。この平坦化方法では、通常、基板がキャリアヘッドに装着されることが必要になる。基板の露出した表面は、通常、耐久性のある粗面を有する回転研磨パッドと接触するようにして置かれる。キャリアヘッドが、基板に制御可能な荷重をかけ、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨粒子を伴うスラリ等の研磨液が、通常、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
適切な研磨速度を使用して所望のプロファイルを実現するCMPの1つの問題は、例えば、基板層が所望の平坦度又は厚さまで平坦化されているか否か、又は所望の量が除去されたか否かである。基板層の初期厚さにおけるばらつき、スラリ分布、研磨パッドの状態、研磨パッドと基板との間の相対速度、及び基板上の負荷により、基板にわたる或いは基板から基板へと材料除去速度が変動し得る。これらの変動は、研磨終点に到達するのに必要な時間及び除去される量のばらつきの原因となる。したがって、研磨時間の関数として研磨終点を決定すること、及び、一定の圧力を加えることのみによっては所望のプロファイルを実現することができない場合がある。
【0005】
一部のシステムでは、基板は、例えば光学又は渦電流モニタシステムによって、研磨中にインシトゥ(その場)でモニタされる。インシトゥ・モニタシステムからの厚さ測定値は、基板に加えられる圧力を調整して、研磨速度を調整し且つウエハ内の非均一性(WIWNU)を低減させるために使用され得る。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、コンピュータ可読媒体内に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品が、コンピュータに基板の処理を制御させるための指示命令を有する。インシトゥ・モニタシステムからの信号に基づいて、処理を受け且つインシトゥ・モニタシステムによってモニタされている基板上の基準区域の物理的な特性を示す特性値の第1のシーケンスが生成され、基板上の制御区域の物理的な特性を示す特性値の第2のシーケンスが生成される。基準区域レートは、特性値の第1のシーケンスから特定され、制御区域レートは、特性値の第2のシーケンスから特定される。基準区域に対する特性値を制御区域に対する特性値と比較することによって、エラー値が特定される。比例・積分・微分制御アルゴリズムを使用して、少なくともエラー値と動的公称制御区域値とに基づいて、第1の制御ループ内で制御区域に対する出力パラメータ値が計算される。動的公称制御区域値は、少なくとも基準区域レートと制御区域レートとに基づいて、第2の制御ループ内で計算される。処理システムは、出力パラメータ値を使用して制御区域を処理するようにされる。
【0007】
別の一態様では、基板の処理を制御する方法が、インシトゥ・モニタシステムからの信号に基づいて、処理を受け且つインシトゥ・モニタシステムによってモニタされている基板上の基準区域の物理的な特性を示す特性値の第1のシーケンスを生成すること、インシトゥ・モニタシステムからの信号に基づいて、基板上の制御区域の物理的な特性を示す特性値の第2のシーケンスを生成すること、特性値の第1のシーケンスから基準区域レートを特定すること、特性値の第2のシーケンスから制御区域レートを特定すること、基準区域に対する特性値を制御区域に対する特性値と比較することによってエラー値を特定すること、比例・積分・微分制御アルゴリズムを使用して、少なくともエラー値と動的公称制御区域値とに基づいて、第1の制御ループ内で制御区域に対する出力パラメータ値を計算すること、少なくとも基準区域レートと制御区域レートとに基づいて、第2の制御ループ内で動的公称制御区域値を生成すること、及び、出力パラメータ値に従って基板の制御区域を処理することを含む基板を処理することを含む。
【0008】
別の一態様では、研磨システムが、研磨パッドを保持するためのプラテン、基板を研磨パッドと接触させるように保持するキャリア、プラテンとキャリアとの間で相対運動を生成するためにプラテンとキャリアのうちの少なくとも一方に連結されたモータ、基板の研磨中に基板の物理的なパラメータを示す信号を生成するように構成されたインシトゥ・モニタシステム、及びその信号を受信して該方法を実行するように構成されたコントローラを含む。
【0009】
特定の実施態様は、以下の利点のうちの1以上を有し得る。この制御システムは、従来の比例・積分・微分コントローラよりも、変化する環境パラメータ(例えば、パッドの粗さ、保持リングの厚さ、温度、消耗品の寿命、入って来る膜の特性)に優れて適応することができる。研磨される基板のプロファイルは目標プロファイルにより近づき、ウエハ内の非均一性(WIWNU)は低減され、すなわち、厚さの均一性が改善され得る。
【0010】
1以上の実施形態の詳細を添付の図面および以下の記述で説明する。他の特徴、態様、及び利点は、本説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】複数の区域を有する基板の概略上面図を示す。
【
図3】研磨パッドの上面図を示し、第1の基板上でインシトゥ測定が行われる場所を示す。
【
図4】従来技術の比例・積分・微分フィードバック制御システムによって実行されるアルゴリズムを示すブロック図である。
【
図5】制御システムの一実施態様によって実行されるアルゴリズムを示すブロック図を示す。
【
図6】基板上の複数の区域に対する時間の関数としての特性値のグラフを示す。
【
図7】目標厚さを実現するために必要とされる研磨速度の予測を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な図面における類似の参照番号及び記号表示は、類似した要素を示している。
【0013】
従来の比例・積分・微分(PID)フィードバック制御システムでは、公称処理パラメータ(例えば、加えられる圧力)がユーザによって規定された定数である。(例えば、システムが動的であるため)プロセスに影響を与える環境条件が変動し得る且つ/又は初期的に不確定である基板処理システムにおいて、PIDフィードバック制御システムの性能は悪影響を受け得る。例えば、研磨動作中に、スラリ濃度、パッドの粗さ、パッドの可撓性、又は保持リングの厚さなどの環境条件が経時的に変動するならば、PIDフィードバック制御システムは、そのような変動を補償することができず、研磨速度及び/又は厚さプロファイルのドリフトをもたらし得る。
【0014】
第2の制御ループを使用して除去速度を制御するように制御システムを構成することによって、制御システムは、処理パラメータを制御して、環境条件におけるドリフトを補償することができる。
【0015】
図1は、研磨装置20の一実施例を示している。研磨装置20は、上部に研磨パッド30が位置する、回転可能な円盤形状のプラテン22を含む。プラテンは、軸23の周りで回転するように操作可能である。例えば、モータ24は駆動シャフト26を回して、プラテン20を回転させることができる。研磨パッド30は、例えば接着層によって、プラテン22に着脱可能に固定されてよい。研磨パッド30は、外側研磨層32とより軟性のバッキング層34とを有する、二層研磨パッドであってよい。
【0016】
研磨装置20は、スラリなどの研磨液体42を研磨パッド30上に分注するための研磨液体供給ポート40を含むことができる。研磨装置20は、研磨パッド30を一定の研磨状態に維持するため、研磨パッド30を磨く研磨パッド調整器を更に含み得る。
【0017】
キャリアヘッド50は、研磨パッド30に対して基板10を保持するように操作可能である。各キャリアヘッド50は、複数の独立して制御可能な加圧可能チャンバ、例えば、3つのチャンバ52a‐52cも含む。それらのチャンバは、基板10上の関連付けられた区域12a‐12bに、独立して制御可能な圧力を加えることができる(
図2参照)。
図2を参照すると、中央区域12aは、実質的に円形であり、残りの区域12b‐12cは、中央区域12aの周りの同心環状区域であり得る。
【0018】
図1に戻って参照すると、チャンバ52a‐52bは、基板10が取り付けられている底面を有する可撓性膜54によって画定され得る。キャリアヘッド50は、可撓性膜54の下に基板10を保持するための保持リング56も含むことができる。説明を簡略化するために、
図1及び
図2には3つのチャンバのみを図示したが、2つのチャンバ、又は4つ以上のチャンバ、例えば5つのチャンバがあってよい。更に、基板に加えられる圧力を調整するための他の機構、例えば圧電アクチュエータが、キャリアヘッド50内で使用されてよい。
【0019】
図1に戻って参照すると、各キャリアヘッド50は、支持構造体60、例えばカルーセルから吊るされ、駆動シャフト62によってキャリアヘッドの回転モータ64に連結されており、それによって、キャリアヘッドは軸51の周りで回転することができる。任意選択的に、各キャリアヘッド50は、例えば、カルーセル60上のスライダ上で、又はカルーセル自体の回転振動によって、側方に振動することができる。動作中、プラテン22は、その中心軸23の周りで回転し、キャリアヘッド50は、その中心軸51の周りで回転し、且つ研磨パッド30の上面にわたり側方に並進移動する。
【0020】
研磨装置は、インシトゥ・モニタシステム70も含む。インシトゥ・モニタシステム70は、区域12a‐12cのうちの1以上の研磨速度を制御するため、研磨パラメータ、例えばチャンバ52a‐52cのうちの1以上に加えられる圧力を制御するように使用され得る。インシトゥ・モニタシステム70は、区域12a‐12cの各々において研磨されている層の厚さを示す信号を生成する。インシトゥ・モニタシステムは、光学モニタシステム、例えば分光モニタシステム、又は渦電流モニタシステムであってよい。
【0021】
一実施態様では、モニタシステム70が、光学モニタシステムである。光学モニタシステム70は、光源72、光検出器74、並びに遠隔コントローラ90(例えばコンピュータ)と光源72及び光検出器74との間で信号を送受信するための回路76を含むことができる。1以上の光ファイバーを使用して、光源72から研磨パッド30内の窓36に光を送信し、基板10から反射された光を検出器74に送信することができる。例えば分岐光ファイバー78を使用して、光源62から基板10に光を送信し、その光を検出器74に戻すように送信することができる。光学モニタシステム70が分光システムであるならば、光源72は、白色光を放出するように操作可能である。そして、検出器74は、分光計であってよい。
【0022】
(光学モニタシステムからであるか又は渦電流モニタシステムからであるかに関わらず)回路76の出力は、駆動シャフト26内の回転カプラ28、例えばスリップリングを通過してコントローラ90に至るデジタル電子信号であってよい。代替的に、回路76は、無線信号によってコントローラ90と通信することができる。コントローラ90は、マイクロプロセッサ、メモリ、及び入力/出力回路を含む計算デバイス、例えば、プログラム可能コンピュータであってよい。
【0023】
ある実施態様では、インシトゥ・モニタシステム70が、プラテン22内に設置され且つプラテン22と共に回転するセンサ80を含む。例えば、センサ80は、光学モニタシステムのための光ファイバー又は渦電流モニタシステムのための磁心の端であり得る。プラテン22の運動により、センサが各基板にわたり走査することとなる。
図3で示されているように、(矢印38によって示されている)プラテンの回転のために、センサ80がキャリアヘッドの下方で移動する際に、インシトゥ・モニタシステムはサンプリング周波数で測定を行う。結果として、基板10を横切る円弧内の位置14において測定が行われる(点の数は例示であり、サンプリング周波数に応じて、示されているよりも多くの又は少ない測定が行われてよい)。
【0024】
プラテンの一回転で、基板10上の種々の位置からスペクトルが得られる。特に、あるスペクトルは基板10の中心により近い位置から得られ、別のあるスペクトルは基板10の端部により近い位置から得られる。コントローラ90は、タイミング、モータの符号化情報、プラテンの回転若しくは位置のセンサデータ、並びに/又は基板及び/若しくは保持リングの端部の光検出に基づいて、走査からの各測定値の(基板10の中心に対する)径方向位置を計算するように構成され得る。したがって、コントローラは、様々な測定値を様々な区域12a‐12c(
図2参照)に関連付けることができる。ある実施態様では、測定の時刻が、径方向位置の正確な計算のための代替として使用され得る。
【0025】
図1に戻って参照すると、コントローラ90は、インシトゥ・モニタシステムからの信号に基づいて、基板の各区域に対する特性値を導き出すことができる。コントローラ90は、基板10の下方のセンサの各走査の各区域に対する少なくとも1つの特性値を生成することができ、又は、例えば基板にわたってセンサが走査しない研磨システムのために、(サンプリング周波数と同じである必要がない)測定周波数において各区域に対する特性値を生成することができる。ある実施態様では、単一の特性値が走査毎に生成され、例えば複数の測定値が組み合されて特性値を生成することができる。ある実施態様では、各測定値が使用されて特性値を生成する。
【0026】
特性値は、通常、外側層の厚さであるが、除去された厚さなどの関連する特性であってもよい。更に、特性値は、厚さ以外の物理的な特性、例えば金属配線抵抗(metal line resistance)であってよい。更に、特性値は、研磨プロセスを通しての基板の進捗のより一般的な表現、例えば、所定の進捗に沿った研磨プロセスにおいて測定値が観察されることが予期され得るプラテンの回転時間若しくは回転数を表す指標値、又は厚さが変化する際に変動する単なるセンサ値であってよい。
【0027】
渦電流モニタに対して、特性値は、単に、インシトゥ・モニタシステムの出力、例えば最大信号強度のa%を示す無次元値であってよい。代替的に、参照表が使用されて、測定値を厚さ値に変換することができる。
【0028】
光学モニタに対して、光学測定値、例えば測定されたスペクトルを、特性値に変換するために様々な技術が利用可能である。
【0029】
特性値を計算するための1つの技術は、各測定されたスペクトルに対して、基準スペクトルのライブラリからマッチングする基準スペクトルを特定することである。ライブラリ内の各基準スペクトルは、関連付けられた特性値、例えば基準スペクトルが生じることが予期されるプラテンの回転時間若しくは回転数を示す厚さ値又は指標値を有することができる。マッチングする基準スペクトルに対して関連付けられた特性値を特定することによって、特性値が生成され得る。この技術は、米国特許公開第2010-0217430号で説明されている。
【0030】
別の技術は、光学モデルを測定されたスペクトルにフィッティングすることである。特に、光学モデルのパラメータは、測定されたスペクトルに対するモデルの最も優れたフィッティングを提供するために最適化される。測定されたスペクトルに対して生成されるパラメータ値は、特性値を生成する。この技術は、米国特許出願第2013-0237128号で説明されている。光学モデルの可能な入力パラメータは、層の各々の厚さ、屈折率、及び/又は消衰係数(extinction coefficient)、基板上の繰り返し特徴の間隔及び/又は幅を含んでよい。
【0031】
出力スペクトルと測定されたスペクトル(以下、「測定スペクトル」)との間の差の計算は、スペクトル全体にわたる測定スペクトルと出力スペクトルとの間の絶対差の合計、又は測定スペクトルと基準スペクトルとの間の平方差の合計であってよい。差を計算するための他の技術も可能であり、例えば測定スペクトルと出力スペクトルとの間の相互相関を計算することができる。
【0032】
別の1つの技術は、測定スペクトルからのスペクトル特徴の特性、例えば測定スペクトル内のピーク又は谷の波長又は幅を解析することである。測定スペクトルからの特徴の波長又は幅値は、特性値を提供する。この技術は、米国特許公開第2011-0256805号で説明されている。
【0033】
上述の光学技術の各々では、参照表が使用されて、初期値、例えば指標値、パラメータ値、又はスペクトル特徴の値を厚さ値に変換することができる。
【0034】
これらの技術の何れかでは、基板上の各区域に対して特性値のシーケンスが生成される。区域のうちの1つは、基準区域として選択され得る。残りの区域は制御される区域(以下、「制御区域」)である。コントローラ90は、異なる区域からの特性値のシーケンスを使用して、研磨パラメータを調整し、制御区域内の研磨速度を変更するように構成されたフィードバック制御システムを提供する。それによって、全ての区域は、同時により近い時間でそれらの目標厚さに到達する。異なる区域に対して目標厚さが同じであると想定すると、これは、基板のWIWNUを改善することができる。
【0035】
従来の比例・積分・微分フィードバック制御システム100が、
図4で示されている。通常、コントローラは、研磨システムのオペレータからの入力として基準区域のパラメータ値(例えば、圧力値)を受け取る。処理システムは、基準区域に対する基準区域のパラメータ値を使用して、基板にプロセスを適用する(ボックス110)。
【0036】
基準区域に対する特性値は、インシトゥ・モニタシステムによって測定され、基準区域の特性値を生成する(ライン115)。この基準区域の特性値は、基準区域に対する特性値のシーケンスの値のうちの1つであり得る。基準区域に対する特性値のシーケンスは、測定の時間を示すtを用いてyR(t)と指定され得る。制御区域に対する特性値も、インシトゥ・モニタシステムによって測定され、制御区域の特性値を生成する(ライン120)。この制御区域の特性値は、制御区域に対する特性値のシーケンスの値のうちの1つであり得る。制御区域に対する特性値のシーケンスは、yC(t)と指定され得る。
【0037】
基準区域の特性値と制御区域の特性値は、コンパレータ(125)によって比較され、例えば、2つの間の差が測定されて、エラー値を生成する(ライン130)。例えば、制御区域の特性値が、基準区域の特性値から引かれて、その値を生成する。例えば、これは、以下の数式によってe(t)として指定され得るエラー値を表し得る。すなわち、
e(t)=yR(t)-yC(t)
【0038】
このエラー値は、PIDコントローラの中へ供給されて(ボックス135)、制御区域に対する出力パラメータ値、例えば、キャリアヘッド・チャンバの圧力値を生成することができる(ライン140参照)。PIDコントローラは、基本的に効果的に継続的に、例えば特性値が生成される際に同じ周波数で出力パラメータ値を生成することができる。代替的に、出力パラメータ値は、より低い頻度で生成されてよい。出力パラメータ値のシーケンスは、u(t)と指定され得る。
【0039】
PIDコントローラにおいて、パラメータ値u(t)の通常の計算は、以下のように表され得る。すなわち、
ここで、u(0)は、処理レシピによる固定された所定の公称パラメータ(例えば、所定の公称研磨圧力)であり、K
P、K
I、及びK
Dは、PIDコントローラのパラメータである。
【0040】
処理システムは、出力パラメータ値を使用して、基板の制御区域にプロセスを適用する(ボックス145)。これは、制御区域内の基板の厚さにおけるばらつきをもたらす。その厚さはインシトゥ・モニタシステムによって測定され、上述されたように制御区域の特性値を生成する(ライン120)。
【0041】
上述のように、そのようなPIDフィードバック制御システムの性能は、環境条件の変動によって悪影響を受け、研磨速度及び/又は厚さプロファイルのドリフトをもたらし得る。
【0042】
図5を参照すると、制御システム200は、比例・積分・微分フィードバック制御ループである特性値に基づいた一次制御ループ202と、特性値の変化率に基づいた二次制御ループ204を含む。
【0043】
一次制御ループ202は、例えば以下で特に明記されていなければ、制御システム100と類似する。制御システム200は、基準区域のパラメータ値を受け取り、基準区域に対する基準区域のパラメータ値を使用して、基板にプロセスを適用する(ボックス110)。基準区域に対する特性値(ライン115)及び制御区域に対する特性値(ライン120)は、インシトゥ・モニタシステムによって測定され、コンパレータ(125)によって比較されて、エラー値を生成する(ライン130)。
【0044】
エラー値は、PIDコントローラの中へ供給される(ボックス210)。しかし、PIDコントローラは、動的制御区域公称パラメータ値(ライン215)、例えば公称圧力も二次制御ループ204から受け取る。その値は、u’(0)と指定され得る。この動的制御区域公称パラメータ値は、研磨が進捗する際に更新される。
【0045】
動的制御区域公称パラメータ値は、上述の数式(1)で使用され、所定の制御区域の公称圧力を置き換える。すなわち、PIDコントローラによって実行される計算は、以下のように表され得る。すなわち、
【0046】
PIDコントローラは、制御区域に対して、制御区域の出力パラメータ値(ライン140参照)、例えばキャリアヘッド・チャンバの圧力値を生成する。その後、その出力パラメータ値は処理システムによって使用される。
【0047】
二次制御ループ204は、rR(t)と指定され得る基準区域レート(ライン225)及びrC(t)と指定され得る制御区域レート(230)のみならずエラー値(ライン130)も受け取る、レート設定点制御モジュール(220)を含む。基準区域レートと制御区域レートは、それぞれ、基準区域と制御区域に対する特性値の変化率、例えば研磨速度である。
【0048】
基準区域レート(ライン225)は、基準区域に対する特性値のシーケンスに第1の関数をフィッティングすること、及び、第1の関数の傾斜を特定することによって生成され得る。同様に、制御区域レート(ライン230)は、制御区域に対する特性値のシーケンスに第2の関数をフィッティングすること、及び、第2の関数の傾斜を特定することによって生成され得る。第1の関数及び/又は第2の関数は、線形関数であり得る。
【0049】
上述されたように、コントローラ90は、各区域に対して特性値のシーケンスを生成する。例えば、
図6を参照すると、(中空の円によって示されている)特性値262の第1のシーケンス260は、第1の区域、例えば区域12aに対して生成され得る。それは、基準を提供する。(中実の円によって示されている)特性値272の第2のシーケンス270は、第2の区域、例えば区域12bに対して生成され得る。それは、制御区域のうちの1つを提供する。そして、(中空の正方形によって示されている)特性値282の第3のシーケンス280は、第3の区域、例えば区域12cに対して生成され得る。それは、制御区域のうちの別の1つを提供する。
【0050】
第1の関数264、例えば第1の線形関数は、特性値262の第1のシーケンス260にフィッティングされており、第1の関数の傾斜は、基準区域レート、例えばrR(t)を提供するように特定され得る。同様に、第2の関数274、例えば第2の線形関数は、特性値272の第2のシーケンス270にフィッティングされており、第2の関数の傾斜は、制御区域レート、例えばrC(t)を提供するように特定され得る。
【0051】
図5に戻って参照すると、レート設定点制御モジュール(220)は、エラー値、基準区域レート、及び制御区域レートを受け取り、レート設定点値(ライン235)を出力する。その値は、r
SPと指定され得る。レート設定点値を特定する幾つかのアルゴリズムが、以下で説明されることとなる。
【0052】
基準区域レートと制御区域レートは、コンパレータ(240)によって比較され、例えば2つの間で差が測定されて、エラー率を生成する(ライン245)。エラー率は、rerrと指定され得る。例えば、制御区域レートが、基準区域レートから引かれて、エラー率を生成することができる。例えば、これは、エラー率rerr(t)に対して以下のように表され得る。すなわち、
rerr(t)=rSP(t)-rC(t)
【0053】
エラー率は、レート制御モジュール(250)によって受け取られ得る。レート制御モジュール(250)は、エラー率に基づいて、動的制御区域公称パラメータ値を出力する。例えば、動的制御区域公称パラメータ値の計算は、以下のように表現され得る。すなわち、
u’(0)=u(0)+KR*rerr
ここで、u(0)は、所定の制御区域公称パラメータ値であり、KRは、制御パラメータ定数である。上述されたように、動的制御区域公称パラメータ値(ライン215)は、PID制御モジュール(210)の中へ供給される。
【0054】
一実施態様では、レート設定点値が、以下の式に従って計算され得る。すなわち、
r
SP=r(t)-DSPW*R
MAX
ここで、R
MAXは、制御区域の変化率について制約を設定する所定の定数であり、DSPWは、動的な設定点重み付けである。動的な設定点重み付けは、以下の式に従って計算され得る。すなわち、
ここで、errはエラー値e(t)であり、fはチューニング値である。ある場合では、fが定数である。ある場合では、fが以下のように表現され得る。すなわち、
(この場合では、DSPW、f、及びr
SPを特定するために、微分方程式を解く必要があるだろう)。
【0055】
図7を参照すると、別の一実施態様では、レート設定点値が、以下の式に従って計算され得る。すなわち、
ここで、y
Rとy
Cは、上述されたように、それぞれ、基準区域と制御区域の特性値であり、y
EPは、目標特性値、例えば目標厚さである。
【0056】
ある実施態様では、エラーが、幾つかの以前の基板にわたり積み重なる。単純な一実施態様では、全エラーerrが、数式1のための計算で使用される。すなわち、
err=k1*err1+k2*err2
ここで、k1とk2は、定数であり、err1は、直前の基板から計算されたエラーであり、err2は、直前の基板より前の1以上の基板に対して計算されたエラーである。
【0057】
上述された技術は、誘電体層の光学モニタに対して、及び、導電層の渦電流モニタに対して適用可能である。
【0058】
本発明の実施形態及び本明細書に記載されている機能的な操作の全ては、本明細書に開示されている構造的な手段、及び、構造的な均等物、或いはこれらの組み合わせを含む、デジタル電子回路、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアに実装可能である。本発明の実施形態を1以上のコンピュータプログラム製品、すなわち、データ処理装置、例えばプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ若しくはコンピュータによって実行される、又はこれらの作業を制御するための非一過性の機械可読記憶媒体内で有形に具現化された1以上のコンピュータプログラムとして実装可能である。(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても知られている)コンピュータプログラムは、コンパイル又は翻訳された言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書くことができ、また独立型プログラムとして、又はモジュール、構成要素、サブルーチン、若しくは計算環境で使用するのに適している他のユニットとして配置することを含め、任意の形で配置することができる。1つのコンピュータプログラムは、必ずしも1つのファイルに対応しない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分、問題になっているプログラム専用の単一のファイル、又は複数の協調的なファイル(例えば、1以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部分を収納するファイル)に収納することができる。コンピュータプログラムは、一ケ所の1台のコンピュータに実装すること、或いは複数ケ所に分散され通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータに実装することが可能である。
【0059】
この明細書で説明しているプロセス及び論理フローは、1以上のプログラマブルプロセッサによって実施されてよく、このプログラマブルプロセッサは、入力データに対して動作すること、及び出力を生成することによって機能を実施するために、1以上のコンピュータプログラムを実行する。プロセス及び論理フローは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(application specific integrated circuit:特定用途向け集積回路)といった特殊用途の論理回路によって実施されてもよく、且つ、装置が、かかる特殊用途の論理回路として実装されることも可能である。
【0060】
上述した研磨装置及び方法を様々な研磨システムに適用することができる。研磨パッド若しくはキャリアヘッドの何れか、又はこれらの両方が移動して、研磨面と基板との間の相対運動を起こすことができる。例えば、プラテンは、回転ではなく周回することができる。研磨パッドは、プラテンに固定された円形(又は何か他の形状の)パッドであってよい。研磨システムは、例えば研磨パッドが直線的に移動する連続ベルト又はオープンリールべルトであるような、直線的研磨システムであってよい。研磨層は、標準の(例えば、充填材を伴うもしくは伴わないポリウレタン)研磨材料、軟性材料、又は固定砥粒材料であってよい。相対配置に関する用語が使用されているが、研磨面及び基板は、垂直の配向に、又は他の何らかの配向に保持され得ることは理解されるべきである。
【0061】
上記の説明は、化学機械研磨に焦点を置いているが、制御システムは、他の半導体処理技術、例えば、エッチング又は堆積(例えば、化学気相堆積)に適応可能である。
【0062】
本発明の特定の実施形態を説明してきた。他の実施形態が、下記の特許請求の範囲内にある。