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  • 特許-積層構造体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】積層構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20220324BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20220324BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220324BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B25/18
C23C16/40
H01L21/365
H01L29/78 626C
H01L29/78 618F
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019156145
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021031358
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(73)【特許権者】
【識別番号】504145283
【氏名又は名称】国立大学法人 和歌山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(72)【発明者】
【氏名】橋上 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂爪 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】宇野 和行
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203613(JP,A)
【文献】特開2015-199649(JP,A)
【文献】AKAIWA Kazuaki et al.,Japanese Journal of applied Physics,Electrical Conductive Corundum-Structured α-Ga2O3 Thin Film on Sapphire with Tin-Doping Grown by Spray-Assisted Mist Chemical Vapor Deposition,2012年06月14日,51 (2012) 070203,1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
C30B 1/00 -35/00
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料溶液を微粒子化して生成される原料微粒子を、キャリアガスによって基板へ搬送し、前記基板上で前記原料微粒子を熱反応させて、コランダム構造を有し、膜の中に含まれる金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上である結晶性酸化物膜を成膜する積層構造体の製造方法であって、
前記基板としてサファイア基板を用い、
前記原料溶液に少なくとも炭素(C)を含む表面平滑剤として、アルコール類又はジケトン類のいずれか1つ以上を混合することで、前記結晶性酸化物膜へのCのドーピング処理を行い、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下とすることを特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項2】
前記表面平滑剤として、メタノール又はアセチルアセトンを用いることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項3】
前記基板としてc面サファイア基板を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体、半導体装置及び積層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被成膜試料上に結晶性の高い酸化ガリウム系薄膜を形成する方法として、ミストCVD法等の水微粒子を用いた成膜手法が知られている(特許文献1)。この方法では、ガリウムアセチルアセトナートなどのガリウム化合物を塩酸などの酸に溶解して原料溶液を作成し、この原料溶液を微粒子化することによって原料微粒子を生成し、この原料微粒子をキャリアガスによって被成膜試料の成膜面に供給し、原料ミストを反応させて成膜面上に薄膜を形成することによって、被成膜試料上に結晶性の高い酸化ガリウム系薄膜を形成している。
【0003】
酸化ガリウム系薄膜を用いて半導体デバイスを形成するためには、酸化ガリウム系薄膜の導電性の制御が必須であり、特許文献1及び非特許文献1では、α-酸化ガリウム薄膜に不純物のドーピングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-28480号公報
【文献】特開2015-199649号公報
【文献】Electrical Conductive Corundum-Structured α-Ga2O3 Thin Films on Sapphire with Tin-Doping Grown by Spray-Assisted Mist Chemical Vapor Deposition(Japanese Journal of Applied Physics 51 (2012) 070203)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び非特許文献1の方法によれば、導電性に優れたα-酸化ガリウム(以下、「α-Ga」ということもある)薄膜を形成することができるが、膜表面が平滑ではないといった特有の問題があり、半導体装置に用いるには、まだまだ満足のいくものではなかった。また、膜表面を平滑にするため、エッチング等の表面処理を行うことも考えられるが、この場合、薄膜が削られてしまったり、半導体特性が損なわれたりするなどの問題があった。
【0006】
この問題に対し、特許文献2は平均粗さ(Ra)を低減する方法を開示している。しかしながら、この方法を用いても表面の平坦性は十分とは言えず、得られた膜を用いた半導体装置特性も満足のいくものではなかった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、表面が平滑なコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を含み、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体を提供すること、さらに、結晶欠陥の低減された結晶性酸化物膜を有する積層構造体を提供すること、及び、前記積層構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下地基板と、コランダム構造を有する結晶性酸化物膜とを有する積層構造体であって、前記結晶性酸化物膜が、不純物として少なくとも炭素(C)を含み、前記結晶性酸化物膜の二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.1μm以下である積層構造体を提供する。
【0009】
このような積層構造体は、表面が平滑な結晶性酸化物膜を有し、半導体装置に適用した場合に半導体特性は優れたものとなる。
【0010】
このとき、前記結晶性酸化物膜中のC濃度が2×1017~2×1020/cmである積層構造体とすることができる。
【0011】
これにより、表面がより平滑なものとなり、半導体装置に適用した場合に半導体特性がより優れたものとなる。
【0012】
このとき、前記結晶性酸化物膜の膜厚が1μm以上である積層構造体とすることができる。
【0013】
これにより、平滑な表面を有し、厚膜の積層構造体となる。
【0014】
このとき、前記下地基板がc面サファイア基板である積層構造体とすることができる。
【0015】
これにより、より良質なコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を備えた積層構造体となる。
【0016】
このとき、前記結晶性酸化物膜の面積が100mm以上である積層構造体とすることができる。
【0017】
これにより、半導体装置により有用な、大面積のものとなる。
【0018】
また、原料溶液を微粒子化して生成される原料微粒子を、キャリアガスによって基板へ搬送し、前記基板上で前記原料微粒子を熱反応させて、コランダム構造を有する結晶性酸化物膜を成膜する積層構造体の製造方法であって、前記原料溶液に少なくとも炭素(C)を含む表面平滑剤を混合することで、前記結晶性酸化物膜へのCのドーピング処理を行い、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下とする積層構造体の製造方法を提供することができる。
【0019】
このような積層構造体の製造方法によれば、平滑な表面を有するコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を含む積層構造体であり、半導体装置に適用した場合に半導体特性は優れた積層構造体を製造することができる。
【0020】
このとき、前記表面平滑剤として、アルコール類又はジケトン類のいずれか1つ以上を用いる積層構造体の製造方法とすることができる。
【0021】
これにより、より平滑な表面を有する積層構造体を、より効果的により安定して製造することができる。
【0022】
さらに、コランダム構造を有する第一の結晶性酸化物膜と、コランダム構造を有する第二の結晶性酸化物膜とを含む積層構造体であって、前記第二の結晶性酸化物膜の上に前記第一の結晶性酸化物膜を有し、前記第二の結晶性酸化物膜が、不純物として少なくとも炭素(C)を含むものである積層構造体を提供する。
【0023】
このような積層構造体は、コランダム構造を有する第二の結晶性酸化物膜の表面が平滑となるため、コランダム構造を有する第一の結晶性酸化物膜の結晶欠陥が低減されたものとなる。このような積層構造体は、半導体特性は非常に優れたものとなる。
【0024】
このとき、前記第二の結晶性酸化物膜中のC濃度が2×1017~2×1020/cmである積層構造体とすることができる。
【0025】
これにより、表面がより平滑なものとなり、半導体装置に適用した場合に半導体特性がより優れたものとなる。
【0026】
このとき、前記第一の結晶性酸化物膜の膜厚が1μm以上である積層構造体とすることができる。さらに、第一の結晶性酸化物膜の面積が100mm以上である積層構造体とすることができる。
【0027】
これにより、半導体装置により有用なものとなる。
【0028】
このとき、上記の積層構造体を含む半導体装置とすることができる。
【0029】
これにより、優れた特性を有する半導体装置となる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明の積層構造体によれば、表面が平滑なコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を有し、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体となる。また、本発明の積層構造体の製造方法によれば、表面が平滑なコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を有し、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体を製造することが可能となる。さらに、本発明の積層構造体によれば、膜中の結晶欠陥が低減されたコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を含み、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る成膜方法に用いる成膜装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明に係る積層構造体の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
上述のように、表面が平滑なコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を含み、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体、前記積層構造体の製造方法及び膜中の結晶欠陥が低減されたコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を含み、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体を提供することを提供することが求められていた。
【0034】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、下地基板と、コランダム構造を有する結晶性酸化物膜とを有する積層構造体であって、前記結晶性酸化物膜が、不純物として少なくとも炭素(C)を含み、前記結晶性酸化物膜の二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.1μm以下である積層構造体により、表面が平滑な結晶性酸化物膜を有し、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体となることを見出し、本発明を完成した。
【0035】
また、本発明者らは、原料溶液を微粒子化して生成される原料微粒子を、キャリアガスによって基板へ搬送し、前記基板上で前記原料微粒子を熱反応させて、コランダム構造を有する結晶性酸化物膜を成膜する積層構造体の製造方法であって、前記原料溶液に少なくとも炭素(C)を含む表面平滑剤を混合することで、前記結晶性酸化物膜へのCのドーピング処理を行い、前記結晶性酸化物膜の表面の二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下とする積層構造体の製造方法により、表面が平滑な結晶性酸化物膜を有し、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0036】
さらに、本発明者らは、コランダム構造を有する第一の結晶性酸化物膜と、コランダム構造を有する第二の結晶性酸化物膜とを含む積層構造体であって、前記第二の結晶性酸化物膜の上に前記第一の結晶性酸化物膜を有し、前記第二の結晶性酸化物膜が、不純物として少なくとも炭素(C)を含むものである積層構造体により、膜中の結晶欠陥が低減された結晶性酸化物膜を有し、半導体装置に適用した場合に半導体特性の優れた積層構造体となることを見出し、本発明を完成した。
【0037】
以下、図面を参照して説明する。
【0038】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、表面平滑剤を用いたドーピング処理により、結晶性酸化物膜の表面が平滑な結晶性積層構造体が得られることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0039】
本発明の第一の形態によれば、下地基板と、その上に直接又は別の層を介してコランダム構造を有する結晶性酸化物膜とを備え、前記結晶性酸化物膜の二乗平均平方根粗さ(RMS)が0.1μm以下である結晶性積層構造体を提供する。
【0040】
また、本発明の第二の形態によれば、少なくとも、コランダム構造を有する第一の結晶性酸化物膜と、コランダム構造を有する第二の結晶性酸化物膜とを備え、第二の結晶性酸化物膜の上に第一の結晶性酸化物膜が設けられており、第二の結晶性酸化物膜が、不純物として少なくとも炭素(C)を含む結晶性積層構造体を提供する。
【0041】
前記二乗平均平方根粗さ(RMS)は、0.1μm以下であれば特に限定されないが、30nm以下であるのが好ましく、10nm以下であるのがより好ましい。なお、二乗平均平方根粗さ(RMS)は、原子間力顕微鏡(AFM)による10μm角の領域についての表面形状測定結果を用い、JIS B0601に基づき(同規格内におけるRqに相当)算出して得た値をいう。
【0042】
本発明に係る積層構造体は、一層以上の結晶性酸化物膜を含む構造体である。例えば、一層以上の結晶性酸化物膜と下地基板又は薄膜の積層体であってよい。結晶性酸化物膜以外の膜(層)(例:アモルファス層)を含んでいてもよい。下地基板が除去された、複数の膜(層)からなる積層体であってもよい。
【0043】
前記結晶性酸化物膜は、アニール処理を施したものであってもよく、これにより、結晶性酸化物膜とオーミック電極との間にオーミック電極が酸化した金属酸化膜が形成されていてもよい。オーミック電極としてはインジウムやチタンなどが挙げられる。
【0044】
下地基板は、上記の結晶性酸化物膜の支持体となるものであれば特に限定されない。材料は特に限定されず、公知の基体を用いることができ、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。例えば、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、鉄やアルミニウム、ステンレス鋼、金等の金属、シリコン、サファイア、石英、ガラス、炭酸カルシウム、酸化ガリウム、SiC、ZnO、GaN等が挙げられるが、これに限られるものではない。本発明に係る積層構造体においては、コランダム構造を有する基板が好ましい。コランダム構造を有する基板としては、サファイア基板(例:c面サファイア基板)や、α型酸化ガリウム基板などが挙げられる。特に、c面サファイア基板を用いることが好ましい。より良質なコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を得ることができるためである。下地基板の厚さは特に限定されないが、好ましくは、10~2000μmであり、より好ましくは50~800μmである。その面積は100mm以上が好ましく、より好ましくは口径(直径)が2インチ(50mm)以上である。
【0045】
結晶性酸化物膜は、コランダム構造を有し酸化物半導体を主成分として含む薄膜であれば特に限定されない。また、前記結晶性酸化物膜は、単結晶であることが好ましいが、多結晶であってもよい。前記結晶性酸化物膜の組成は、この膜中に含まれる金属元素中の金属元素中のガリウム、インジウム、アルミニウムおよび鉄の合計の原子比が0.5以上であることが好ましく、金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上であることがより好ましい。この好ましい原子比は、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明においては、金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上であることがより好ましいが、これは、より好適に前記原料溶液中の表面平滑剤の機能を発現させることができ、前記結晶性酸化物膜の表面粗さをより低減することができるからである。
【0046】
また、結晶性酸化物膜の組成は、例えば、一般式:InAlGaFe(0≦X≦2.5、0≦Y≦2.5、0≦Z≦2.5、0≦V≦2.5、X+Y+Z+V=1.5~2.5)であることが好ましく、1≦Zであることがより好ましい。この一般式において、好ましいX、Y、Z及びVは、それぞれ、具体的には例えば、0、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5である。また、好ましいX+Y+Z+Vは、具体的には、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5である。なお、前記X、Y、Z及びV並びにX+Y+Z+Vは、それぞれ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、上記一般式は、コランダム構造を形成する格子点上の原子の組成を表現しているのであって、「X+Y+Z+V=2」と表記していないことからも明らかなように、ノンストイキオメトリー酸化物も含んでいてもよく、これは、金属不足酸化物、酸素不足酸化物も含んでいてもよい。
【0047】
結晶性酸化物膜は、下地基板上に直接形成してもよく、別の層を介して形成してもよい。別の層としては、別の組成のコランダム構造を有する結晶膜、コランダム構造以外の結晶膜、又はアモルファス膜などが挙げられる。例えば、Cがドープされ表面が平滑化された結晶性酸化物膜と下地基板との間に、Cをドープしていない結晶性酸化物膜を介在させた積層構造体とすることもできる。
【0048】
結晶性酸化物膜は、その少なくとも一部(より具体的には厚さ方向の一部)に不純物がドーピングされているのが好ましいが、構造としては、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、結晶性酸化物膜は、例えば、絶縁性薄膜と導電性薄膜が積層されて構成されるが、本発明においては、これに限定されるものではない。なお、絶縁性薄膜と導電性薄膜とが積層されて複数層構造が構成される場合、絶縁性薄膜と導電性薄膜の組成は、同じであっても互いに異なっていてもよい。絶縁性薄膜と導電性薄膜の厚さの比は、特に限定されないが、例えば、(導電性薄膜の厚さ)/(絶縁性薄膜の厚さ)の比が0.001~100であるのが好ましく、0.1~5がさらに好ましい。このさらに好ましい比は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2,3、4、5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
導電性薄膜は、導電性を付与するための不純物でドーピングされていてもよい。適宜導電性を調節することで、結晶性酸化物半導体膜とすることができる。導電性を付与するための不純物のドーピング濃度は、導電性薄膜に対して要求される特性によって適宜決定されるが、好ましくは1×1015/cmから1×1022/cmである。また、ドーピングする不純物の種類は、特に限定されないが、例えば、Ge、Sn、Si、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Rh、Ag、及びCuから選択される少なくとも1種からなるドーパントなどが挙げられる。絶縁性薄膜は、通常、不純物のドーピングが不要であるが、導電性が現れない程度にドーピングされていてもよい。
【0050】
結晶性酸化物膜の厚さは、特に限定されず、1μm以下であってもよいし、1μm以上であってもよいが、本発明においては、前記結晶性酸化物膜の膜厚が1μm以上であるのが好ましく、1~50μmであるのがより好ましい。このような好ましい膜厚とすることで、半導体特性を損なうことなく、表面平滑性がより優れたものとなるだけでなく、アニール処理時に電気抵抗を低減することもでき、より優れた半導体特性を得ることができる。
【0051】
本発明に係る積層構造体は、原料溶液を微粒子化して生成される原料微粒子をキャリアガスによって成膜室に供給して前記成膜室内に配置された下地基板上にコランダム構造を有する結晶性酸化物膜を形成する際に、前記結晶性酸化物膜に表面平滑剤を用いてドーピング処理を行うことにより、前記結晶性酸化物膜の表面粗さである二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下にすることで製造される。
【0052】
図1に、本発明に係る積層構造体の製造に使用可能な成膜装置101の一例を示す。成膜装置101は、原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部120と、ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部130と、ミストを熱処理して基板上に成膜を行う成膜部140と、微粒子化部120と成膜部140とを接続し、キャリアガスによってミストが搬送される搬送部109とを有する。また、成膜装置101は、成膜装置101の全体又は一部を制御する制御部(図示なし)を備えることによって、その動作が制御されてもよい。成膜装置101の詳細については、後述の実施例で説明する。
【0053】
より具体的には、結晶性酸化物膜は、原料化合物が溶解した原料溶液から生成された原料微粒子を成膜室に供給して、前記成膜室内で前記原料化合物を反応させることによって形成することができる。原料溶液の溶媒は、水もしくは過酸化水素水であることが好ましい。薄膜に不純物ドーピングをする場合は、ドーパント原料の存在下で、上記原料化合物を熱反応させればよい。ドーパント原料は、好ましくは、原料溶液に含められて、原料化合物と共に微粒子化される。なお、本願においては、導電性を発現させるためのn型ドーパントおよびp型ドーパントの他、表面平滑効果をもたらす元素もドーパントと呼称する。
【0054】
結晶性酸化物膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、ガリウム化合物の他、鉄化合物、インジウム化合物、アルミニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、クロム化合物、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物から選ばれる1種又は2種以上の金属を結晶性酸化物膜の組成に合わせて組み合わせた原料化合物を熱反応させることによって形成可能である。これによって、下地基板上に、下地基板側から結晶性酸化物膜を結晶成長させることができる。上記の金属化合物としては、それぞれの金属についての有機金属錯体(例:アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体)やハロゲン化物(フッ化、塩化、臭化、又はヨウ化物)としてもよいし、例えば、金属ガリウムや金属インジウムを出発材料とし、成膜直前にガリウム化合物及びインジウム化合物に変化させたものであってもよい。また、金属ガリウムを塩酸や臭化水素酸などの酸に溶解したものもガリウム化合物として用いることができる。
【0055】
さらに、前記原料溶液には酸を混合してもよい。前記酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などのハロゲン化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸等のハロゲンオキソ酸、蟻酸、硝酸、等が挙げられる。また、前記原料溶液には塩基を混合してもよい。前記塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化銅、水酸化鉄、等が挙げられる。中でも特にアンモニアは沸点が低いため、溶液を加熱した際に残渣を残さないという点で最も好ましい。
【0056】
本発明に係る積層構造体及び積層構造体の製造方法においては、ドーピング処理を、前記原料溶液に表面平滑剤を含めて行う。前記原料溶液に表面平滑剤を含めてドーピング処理を行うことで、効率よく、工業的有利に表面粗さが0.1μm以下の結晶性酸化物膜を備える結晶性積層構造体を製造することができる。
【0057】
表面平滑剤は、結晶性酸化物膜の二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下とすることができれば特に限定されないが、本発明に係る積層構造体の製造方法においては、有機化合物であることが好ましく、さらには、アルコール類もしくはジケトン類であることがより好ましい。より平滑な表面を有する積層構造体を、より効果的により安定して製造することができる。ここで、アルコール類とは例えば、メタノール、エタノール、プロパノールの他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールのようなジオール類や、グリセリンのようなトリオール類、が挙げられ、いずれでも構わない。ジケトン類とは例えば、ジアセチル、アセチルアセトン、2,5―ヘキサンジオン、ジメドン、などが挙げられ、いずれでも構わない。
【0058】
表面平滑剤としてアルコールやジケトンを用いると、Cが膜中に導入され表面粗さの悪化を抑制することができる。Cが結晶格子間に入るなどして、格子歪みを緩和する効果をもたらしていると考えられる。また、基板表面で表面平滑剤分子が立体障害を誘発し、平面的な結晶成長を促していることも考えられる。
【0059】
表面平滑剤は、原料化合物が溶解した水溶液に直接添加しても構わないし、事前に表面平滑剤を水に溶解しpHを調整したものを、原料化合物が溶解した水溶液に加えても構わない。
【0060】
本発明に係る積層構造体においては、前記結晶性酸化物膜中のCの含有量が、2×1017~2×1020(atoms/cm)であるのが好ましく、3×1017~1×1020(atoms/cm)であるのがより好ましく、4×1017~8×1019(atoms/cm)であるのが最も好ましい。
【0061】
また、本発明に係る積層構造体の製造方法においては、表面平滑剤として、メタノールもしくはアセチルアセトンを用いることが最も好ましく、メタノールもしくはアセチルアセトンを使用することにより、特に、α-Gaを主成分として含む結晶性酸化物膜の表面を非常に平滑にすることができる。表面平滑剤の添加量は特に限定されないが、原料溶液中、体積比で10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、3~0.001%の範囲内であることが最も好ましい。このような好ましい範囲で使用することにより、表面平滑剤として機能させることができるので、結晶性酸化物膜の表面を平滑にすることができる。
【0062】
結晶性酸化物膜に導電性を発現させるためのドーパント原料としては、ドーピングされる不純物の金属単体又は化合物(例:ハロゲン化物、酸化物、水酸化物)などが挙げられる。電子伝導性の制御にはGe、Sn、Si、Ti、Zr、Hf、V、Nbなどのn型ドーパントやCu、Ir、Rh、Sn、Agなどのp型ドーパントが考えられるがこれに限定されない。
【0063】
熱反応は、加熱により原料微粒子が反応すればよく、反応条件等も特に限定されない。原料や成膜物に応じて適宜設定することができる。例えば、加熱温度は100~600℃の範囲であり、好ましくは200℃~600℃の範囲であり、より好ましくは300℃~550℃の範囲とすることができる。
【0064】
熱反応は、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下、空気雰囲気下及び酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、成膜物に応じて適宜設定すればよい。また、反応圧力は、大気圧下、加圧下又は減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、大気圧下の成膜であれば、装置構成が簡略化できるので好ましい。
【0065】
上記のようにして、二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下とした結晶性酸化物膜は、緩衝層として利用することができる。すなわち、二乗平均平方根粗さ(RMS)を0.1μm以下とした第二の結晶性酸化物膜を製膜した基板上にさらに、第一の結晶性酸化物膜を製膜するものである。第二の結晶性酸化物膜表面が平坦であるため、この膜上に形成された膜の欠陥や転位は大幅に低減する。得られた第一の結晶性酸化物膜を半導体装置に用いれば、半導体特性に優れた半導体装置を得ることができる。前記第二の結晶性酸化物膜中のC濃度は2×1017~2×1020(atoms/cm)であることが好ましい。一方で、前記第一の結晶性酸化物膜中のC濃度は特に限定されない。すなわち、前記第一の結晶性酸化物膜中のC濃度は2×1017~2×1020(atoms/cm)であってもよいし、2×1017(atoms/cm)以下でも構わない。Cは、表面平坦性を発現させるために必要であるが、優れた半導体特性を発現させるためには特に必要ではないためである。
【0066】
本発明に係る結晶性酸化物においては、成膜後、アニール処理を行ってもよい。アニール処理の温度は、特に限定されないが、600℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましく、500℃以下が最も好ましい。このような好ましい温度でアニール処理を行うことにより、より好適に前記結晶性酸化物膜の電気抵抗を低減させることができる。アニール処理の処理時間は、特に限定されないが、10秒~10時間であるのが好ましく、10秒~1時間であるのがより好ましい。
【0067】
本発明に係る積層構造体においては、結晶性酸化物膜を下地基板から剥離してもよい。剥離手段は特に限定されず、公知の手段であってもよい。剥離手段の方法としては例えば、機械的衝撃を与えて剥離する手段、熱を加えて熱応力を利用して剥離する手段、超音波等の振動を加えて剥離する手段、エッチングして剥離する手段などが挙げられる。前記剥離によって、前記結晶性酸化物膜を自立膜として得ることができる。
【0068】
(結晶性積層構造体の構成例)
本発明に係る積層構造体、及び、これを用いた半導体装置の好適な例を図2に示す。図2の例では、下地基板201上に結晶性酸化物膜203が形成されている。結晶性酸化物膜203は、下地基板1側から順に絶縁性薄膜203aと導電性薄膜203bが積層されて構成されている。導電性薄膜203b上にゲート絶縁膜205が形成されている。ゲート絶縁膜205上にはゲート電極207が形成されている。また、導電性薄膜203b上には、ゲート電極207を挟むように、ソース・ドレイン電極209が形成されている。このような構成によれば、ゲート電極207に印加するゲート電圧によって、導電性薄膜203bに形成される空乏層の制御が可能となり、トランジスタ動作(FETデバイス)が可能となる。
【0069】
本発明に係る積層構造体を用いて形成される半導体装置としては、MISやHEMT、IGBT等のトランジスタやTFT、半導体-金属接合を利用したショットキーバリアダイオード、他のP層と組み合わせたPN又はPINダイオード、受発光素子が挙げられる。本発明に係る積層構造体は、これらデバイスの特性向上に有用である。
【実施例
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0071】
(実施例1)
図1を用いて、本実施例で用いた成膜装置101を説明する。成膜装置101は、下地基板等の被成膜試料である基体110を載置し加熱するホットプレート108と、キャリアガスを供給するキャリアガス源102a、102bと、キャリアガス源102a、102bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103a、103bと、原料溶液104aが収容される微粒子発生源104と、水105aが入れられる容器105と、容器105の底面に取り付けられた超音波振動子106と、石英製の成膜室107と、を備えている。成膜室107を石英で作製することにより、基体110上に形成される薄膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0072】
臭化ガリウムと塩化スズをガリウムに対するスズの原子比が1:0.05となるように水溶液を調整した。臭化ガリウムの濃度は0.1mol/Lとした。この際、塩化スズの溶解促進のために、48%臭化水素酸溶液を体積比で10%を含有させた。さらに、表面平滑剤としてメタノールを0.016%混合した。
【0073】
基体110として、直径4インチ(100mm)のc面サファイア基板をホットプレート108上に戴置して加熱し、基板温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁103a、103bを開いてキャリアガス源102a、102bからキャリアガスを成膜室107内に供給し、成膜室107の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの合計流量を26L/minに調節した。キャリアガスとしては、酸素ガスを用いた。
【0074】
次に、超音波振動子106を2.4MHzで振動させ、その振動を水105aを通じて原料溶液104aに伝播させることによって原料溶液104aを微粒子化させて原料微粒子を生成した。この原料微粒子をキャリアガスによって成膜室107内に導入し、被成膜試料110の成膜面でのCVD反応によって被成膜試料110上に薄膜を形成した。成膜時間は180分とした。
【0075】
成膜した薄膜の相の同定をした。同定は、薄膜用XRD回折装置を用いて、15度から95度の角度で2θ/ωスキャンを行うことによって行った。測定は、CuKα線を用いて行った。その結果、形成した薄膜は、コランダム構造を有するα-Gaであった。また、干渉式膜厚計を用いて本実施例の薄膜の膜厚を測定したところ、膜厚は6.0μmであった。
【0076】
(比較例)
原料溶液にメタノールを混合しないで製膜を行った。具体的には、0.1mol/L臭化ガリウムに対し、塩化スズをガリウムに対するスズの原子比が1:0.05となるように水溶液を調整し、48%臭化水素酸溶液を体積比で10%を含有させた。これを原料溶液としたこと以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は5.8μmであった。
【0077】
(実施例2)
原料溶液として、0.02mol/Lヨウ化ガリウムに対し、塩化スズをガリウムに対するスズの原子比が1:0.007となるように水溶液を調整し、35%塩化水素酸溶液を体積比で2%を含有させた。さらに、表面平滑剤としてメタノールを0.003%混合した。これを原料溶液としたこと以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は1.3μmであった。
【0078】
(実施例3)
原料溶液として、金属ガリウムを塩酸で溶解し、ガリウム濃度0.05mol/Lの溶液を用意した。これに対し、塩化スズをガリウムに対するスズの原子比が1:0.01となるように水溶液を調整し、35%塩化水素酸溶液を体積比で1%を含有させた。さらに、表面平滑剤としてメタノールを0.008%混合した。これを原料溶液としたこと以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は3.1μmであった。
【0079】
(実施例4)
実施例1において、メタノールの代わりにエタノールを用いて製膜を行った。これ以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は6.1μmであった。
【0080】
(実施例5)
実施例1において、メタノールの代わりにシュウ酸を用いて製膜を行った。これ以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は6.3μmであった。
【0081】
(実施例6)
実施例1において、メタノールの代わりにアセチルアセトンを用いて製膜を行った。これ以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は6.0μmであった。
【0082】
(実施例7)
実施例6において、アセチルアセトンの濃度を2.9%として製膜を行った。これ以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は5.9μmであった。
【0083】
(実施例8)
事前に、モル比でアセチルアセトン:アンモニア=1:1となるようアセチルアセトン・アンモニア水溶液を作成した。この水溶液を、実施例7におけるアセチルアセトンとして用い製膜を行った。これ以外は、実施例1と同じ方法で製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は6.4μmであった。
【0084】
(実施例9)
製膜時間を20分としたこと以外は、実施例1と同じにして製膜を行った。評価の結果、コランダム構造を有するα-Gaであることが確認され、膜厚は0.55μmであった。
【0085】
(評価)
実施例1~9および比較例により得られたα-Ga薄膜サンプルについて、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて二乗平均平方根表面粗さ(RMS)を計測した。また、SIMSを用いて、膜中のCの含有量を調べた。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1のとおり、表面平滑剤を使用しなかったサンプルは凹凸が大きいのに対して、表面平滑剤有の場合は数nmのRMSの値を示し、表面平滑性に優れた膜であった。同時に膜中のC濃度が非常に大きくなっており、これが表面平滑化効果をもたらしたものと考えられる。
【0088】
(実施例10)
製膜時間を10分としたこと以外は、実施例1と同じにして製膜を行い、得られた膜を第二の結晶性酸化物膜とした。引き続き、原料溶液をメタノールを含まないものに変更して製膜を行い、第一の結晶性酸化物膜としてα-Ga膜を5.4μm製膜した。得られた試料に対しX線回折測定を行い、結晶性を評価した。具体的には、α-Gaの(0006)面回折ピークのロッキングカーブを測定し、その半値全幅を求めた。得られた半値全幅は11秒となり、結晶性に非常に優れた膜であることが確認された。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0090】
101…成膜装置、 102a…キャリアガス源、
102b…希釈用キャリアガス源、 103a…流量調節弁、
103b…流量調節弁、 104…微粒子発生源、 104a…原料溶液、
105…容器、 105a…水、 106…超音波振動子、 107…成膜室、
108…ホットプレート、 109…搬送部、 109a…供給管、
110…基板(結晶性基板)、 112…排気口、 116…発振器、
120…微粒子化部、130…キャリアガス供給部、140…成膜部、
201…下地基板、 203…結晶性酸化物膜、 203a…絶縁性薄膜、
203b…導電性薄膜、 205…ゲート絶縁膜、 207…ゲート電極、
209…ソース・ドレイン電極。
図1
図2