(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】筒状部材付き線状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20220325BHJP
F16L 5/02 20060101ALI20220325BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220325BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20220325BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
H01B13/012 Z
F16L5/02 A
H01B7/00 301
H01B17/58 C
H02G1/14
(21)【出願番号】P 2018149412
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大森 輝行
(72)【発明者】
【氏名】武居 直行
(72)【発明者】
【氏名】森田 朝郎
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-034114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
F16L 5/02
H01B 17/58
H01B 7/00
H02G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に形成された線状体と、内部に前記線状体が配置される中空部を有する筒状に形成された筒状部材と、を備え、前記線状体が前記中空部に挿通されることにより前記線状体の外周に前記筒状部材が装着される筒状部材付き線状体の製造方法であって、
前記筒状部材における一方の開口端と、容器に形成され気体を外部へ放出可能な気体放出孔とを対向させた状態で、前記筒状部材および前記容器を当接させる容器当接工程と、
前記筒状部材の他方の開口端および前記線状体の端部を当接させる線状体当接工程と、
前記容器の内部に前記気体を供給する気体供給工程と、
前記線状体および前記容器に当接され、前記容器内の前記気体が導入された前記筒状部材の前記中空部に前記線状体を挿通させる挿通工程と、
を有する筒状部材付き線状体の製造方法。
【請求項2】
前記容器当接工程は、前記線状体当接工程よりも先に行われ、
前記線状体当接工程では、
前記筒状部材の一方の開口端が前記容器に当接された状態で、前記筒状部材の他方の開口端に前記線状体が当接される請求項1記載の筒状部材付き線状体の製造方法。
【請求項3】
前記容器当接工程において、前記容器および前記筒状部材の間に、前記容器および前記筒状部材と当接される弾性を有する材料から形成された板状の密着部が配置され、
前記密着部には、前記容器から前記中空部へ前記気体が流通可能であるとともに、前記線状体が挿通可能な貫通孔が設けられている請求項1または2に記載の筒状部材付き線状体の製造方法。
【請求項4】
前記密着部を形成する材料は、前記筒状部材を形成する材料よりも柔軟性が高い材料である請求項3記載の筒状部材付き線状体の製造方法。
【請求項5】
前記線状体は、導電性を有する材料から形成された導体と、前記導体の外周を被覆する絶縁性を有する材料から形成された絶縁体と、を備えたケーブルであり、
前記筒状部材は、少なくともエチレンプロピレンジエンゴムから形成されたグロメットである請求項1から4のいずれか1項に記載の筒状部材付き線状体の製造方法。
【請求項6】
前記気体供給工程において、空気が前記気体として前記容器に供給される請求項1から5の何れかに記載の筒状部材付き線状体の製造方法。
【請求項7】
前記挿通工程の後に、
前記線状体の端部を前記容器の内部まで挿入し、前記筒状部材および前記線状体との相対位置関係を所定の位置関係とする位置合わせ工程を更に有する請求項1から6のいずれか1項に記載の筒状部材付き線状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部材付き線状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状に形成された弾性部材から形成されたグロメットが装着された電線などのケーブルが知られている。このグロメット付きケーブルを製造する種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されているグロメット付きケーブルの製造方法では、特許文献1の
図5に示すようにグロメットGよりも硬い第1~4の爪部材11~14が用いられる。まず、第1~4の爪部材11~14は、閉じた状態で筒形状を有するグロメットGの内部に挿入される。次いで、第1~4の爪部材11~14を閉じた状態から開いた状態にすると、グロメットGは拡径される。この拡径させたグロメットGの内部に電線束Wを挿通することにより、電線束WにグロメットGが装着される。
【0004】
また、特許文献2に記載されているグロメット付きケーブルの製造方法では、特許文献2の
図1に示すように、グロメット2よりも硬い拡径導入管6が用いられる。筒形状を有するグロメット2の内部に拡径導入管6を挿入し、グロメット2を拡径させる。拡径させたグロメット2の内部に電線1を挿通することにより、電線1にグロメット2が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-116526号公報
【文献】特開平9-217867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のグロメット付きケーブルの製造方法は、グロメットよりも硬い爪部材や拡径導入管をグロメットの内部に挿入している。このように爪部材や拡径導入管を挿入すると、グロメット(特に、グロメットの内面)が、損傷してしまう虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、筒状部材の損傷を抑制することができる筒状部材付き線状体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の筒状部材付き線状体の製造方法は、長尺に形成された線状体と、内部に前記線状体が配置される中空部を有する筒状に形成された筒状部材と、を備え、前記線状体が前記中空部に挿通されることにより前記線状体の外周に前記筒状部材が装着される筒状部材付き線状体の製造方法であって、前記筒状部材における一方の開口端と、容器に形成され気体を外部へ放出可能な気体放出孔とを対向させた状態で、前記筒状部材および前記容器を当接させる容器当接工程と、前記筒状部材の他方の開口端および前記線状体の端部を当接させる線状体当接工程と、前記容器の内部に前記気体を供給する気体供給工程と、前記線状体および前記容器に当接され、前記容器内の前記気体が導入された前記筒状部材の前記中空部に前記線状体を挿通させる挿通工程と、を有する。
【0009】
本発明の筒状部材付き線状体の製造方法によれば、容器から中空部に気体を導いて中空部内の圧力を高めることにより筒状部材の中空部を拡径させ、拡径した中空部に線状体を挿通させることができる。言い換えると、特許文献1の爪部材や、特許文献2の拡径導入管を筒状部材の中空部に挿入することなく、中空部を拡径することが可能となる。その結果、中空部に線状体を挿入する際に筒状部材が損傷してしまうことを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の筒状部材付き線状体の製造方法によれば、容器から中空部に気体を導いて中空部内の圧力を高めて筒状部材の中空部を拡径させながら、中空部に線状体を挿通させることにより、筒状部材の損傷を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の製造方法により製造されるグロメット付きケーブルの構成を説明する模式図である。
【
図2】本発明の製造方法に用いられる製造装置の構成を説明する模式図である。
【
図3】グロメット付きケーブルの製造方法の工程を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4(a)は、容器にグロメットが当接された状態を説明する模式図であり、
図4(b)は、グロメットにケーブルが当接された状態を説明する模式図であり、
図4(c)は、容器へ空気の供給が開始された状態を説明する模式図である。
【
図5】
図5(a)は、グロメットの中空部にケーブルが挿通される状態を説明する模式図であり、
図5(b)は、グロメットとケーブルとの相対的な位置合わせを説明する模式図であり、
図5(c)は、他の相対的な位置合わせを行う方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の一実施形態に係るグロメット付きケーブルの製造方法について、
図1から
図5を参照しながら説明する。まず、グロメット付きケーブル1およびグロメット付きケーブル1の製造に用いられる製造装置5の構成について説明する。
【0013】
グロメット付きケーブル1は、車両や機器などの対象物に配置されるとともに、対象物の駆動や制御に用いられる電力の供給や電気信号の伝達に用いられるものである。グロメット付きケーブル1には、
図1に示すように、グロメット(筒状体)10と、ケーブル(線状体)20と、が主に設けられている。
【0014】
グロメット10は、ケーブル20の周囲に配置される筒状に形成された弾性を有する部材である。本実施形態では、グロメット10は、少なくともエチレンプロピレンジエンゴムを含む弾性を有する材料から形成されている例に適用して説明する。
【0015】
また、グロメット付きケーブル1を対象物の貫通孔に挿通して配置する際に、当該貫通孔等に嵌められる部材である。このようにグロメット10を嵌めることにより、例えば、グロメット付きケーブル1の配置位置の保持を図ることが容易となる。なお、グロメット10は、ケーブル20を被固定対象(例えば、車体)に固定するための固定具が取り付けられる部材であってもよい。
【0016】
グロメット10には、中空部11と、傾斜部13と、係合部15と、突出部17と、が主に設けられている。中空部11は、筒状に形成されたグロメット10の内部空間である。また、中空部11はケーブル20が挿通される空間であり、ケーブル20が配置される空間である。
【0017】
中空部11における内径(直径または半径)は、外部から力が加えられていない状態において、後述するケーブル20の外径(直径または半径)と比較して小さく形成されている。ここでケーブル20の外径とは、ケーブル20の絶縁体23における外径を意味する。
【0018】
中空部11における内径をケーブル20の外径よりも小さくすることにより、中空部11にケーブル20を挿通されたグロメット10は、自らの弾性によりケーブル20の絶縁体23に押し付けられる。
【0019】
傾斜部13は、グロメット10の外周面における一方の開口端の近傍領域に形成された構成である。傾斜部13は、一方の開口端から他方の開口端に向かって径が大きくなる円錐面を有するものである。グロメット10を対象物の貫通孔に挿通する際に、傾斜部13から貫通孔に挿通される。
【0020】
係合部15は、グロメット10の外周面における傾斜部13および突出部17の間に形成された構成である。係合部15は、傾斜部13における係合部15と隣接する部分、および、突出部17と比較して、小さな径で形成されている。係合部15は、グロメット付きケーブル1を対象物の貫通孔に挿通して配置した際に、当該貫通孔に係合されるものである。
【0021】
突出部17は、グロメット10の外周面における他方の開口端の近傍領域に形成された構成である。突出部17は、係合部15と比較して径方向外側に突出して形成されている。
【0022】
ケーブル20は、対象物の駆動や制御に用いられる電力を供給するもの、または、電気信号を伝達するものである。ケーブル20には、
図1に示すように導体21と、絶縁体23と、が主に設けられている。
【0023】
導体21は、導電性を有する材料から形成されたものであり、電力の供給または電気信号の伝達を行うものである。導体21を形成する材料としては、銅または銅を含む合金を例示することができるが、特に限定するものではない。また、導体21の構成としては導電性を有する材料から形成された複数の素線を寄り合わせた構成を例示することができるが、特に限定するものではない。
【0024】
絶縁体23は、導体21の外周を被覆する絶縁性を有する材料から形成されたものであり、ケーブル20の外形を形成するものでもある。絶縁体23を形成する材料としては、例えば熱可塑性ウレタンを用いることができるが、特に限定するものではない。
【0025】
なお、ケーブル20の構成としては、1本の導体21の外周を絶縁体23で被覆した構成であってもよいし、他の絶縁体に被覆された複数の導体21の外周を絶縁体23で被覆した構成であってもよく、特に限定するものではない。
【0026】
製造装置5は、本実施形態のグロメット付きケーブル1の製造方法に用いられる装置である。製造装置5には、
図2に示すように、容器51と、コンプレッサ53と、ゴムリング(密着部)55と、が主に設けられている。
【0027】
容器51は、グロメット付きケーブル1の製造の際にゴムリング55を介してグロメット10が押し付けられる(当接される)ものである。ゴムリング55が配置された容器51は、グロメット10が押し付けられた際、および、グロメット10にケーブル20が挿通される際に姿勢が安定するように設置されている。
【0028】
また容器51は、内部に空間を有する形状を有するものであり、少なくともグロメット10にケーブル20を挿通させる際に、中空部11に導入される高圧空気を貯留するものである。
【0029】
さらに容器51は、グロメット10にケーブル20を挿通させる際に、ケーブル20の端部が当該空間に差し込まれるものでもある。言い換えると、容器51は、グロメット10にケーブル20を挿通させる際に必要な作業空間を確保するものでもある。
【0030】
容器51には、容器51の内外を連通させる貫通孔である気体放出孔52が形成されている。気体放出孔52は、少なくともケーブル20が挿通可能な径を有する貫通孔として形成されている。
【0031】
コンプレッサ53は、容器51の内部の空間に空気(気体)を供給するものである。コンプレッサ53と容器51との間には、空気が流通する配管54が設けられている。コンプレッサ53から容器51に供給される空気は、圧縮されて圧力が高められている。コンプレッサ53としては、公知の形式および構成を有するものを用いることができる。
【0032】
ゴムリング55は、グロメット10が容器51に押し付けられた際に、容器51およびグロメット10の間に配置されるものである。ゴムリング55は、弾性を有する材料から形成された円板状に形成された部材であり、貫通孔56が設けられたものである。
【0033】
ゴムリング55を形成する材料としては、グロメット10を形成する材料よりも柔軟性が高い材料、またはグロメットを形成する材料と同等程度の柔軟性を有する材料が用いられる。すなわち、ゴムリング55を形成する材料としては、グロメット10を形成する材料以上の柔軟性を有することが好ましい。本実施の形態では、ゴムリング10として、ウレタンゴムを用いている。ゴムリング55は、気体放出孔52および貫通孔56が重なる位置であって、ケーブル20が気体放出孔52および貫通孔56を挿通できる位置に配置される。
【0034】
円板状に形成されたゴムリング55の外径は、ゴムリング55に押し当てられるグロメット10における端部の外径よりも大きく形成されている。貫通孔56は、ケーブル20の外径よりも径が大きい孔であり、例えば円板状に形成されたゴムリング55の中心に形成された孔である。貫通孔56の内径は、気体放出孔52の内径と同じであってもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。なお、本実施の形態において、貫通孔56は、気体放出孔52と同じ径を有しているとともに、拡径されていない状態のグロメット10の中空部11よりも大きい径を有している。
【0035】
ゴムリング55は、容器51における気体放出孔52の周囲を覆う位置に配置されるものである。ゴムリング55は容器51に着脱可能に取り付けられていてもよいし、容器51に取り付けられていなくてもよい。
【0036】
次に、上記の構成からなるグロメット付きケーブル1の製造方法について
図3から
図5を参照しながら説明する。
まず、
図3に示すように、グロメット10がゴムリング55を介して容器51に当接される(S10:容器当接工程)。具体的には
図4(a)に示すように、グロメット10は、容器51のゴムリング55に押し当てられる。このとき、グロメット10以上の柔軟性を有するゴムリング55を用いることで、グロメット10の端部に沿った形状に凹みやすくなり、空気の漏洩につながる隙間の形成が抑制される。
【0037】
なお、本実施形態では容器51にゴムリング55が設けられている例に適用して説明するが、容器51にゴムリング55が設けられていなくてもよい。この場合グロメット10が容器51に直接当接される。
【0038】
このとき、グロメット10は、グロメット10の保持および位置決めの少なくとも一方の役割を果たす支持部61により支持されてもよい。なお支持部61は、後述するようにグロメット10における中空部11の拡径を阻害しない形状であることが好ましい。
【0039】
図4(a)では、グロメット10を下方から支持する支持部61である例に適用して説明する。なお支持部61は、グロメット10の周囲を囲う形状であって、グロメット10との間に中空部11の拡径を許容する隙間が設けられた形状を有していてもよい。
【0040】
S10の工程によってグロメット10がゴムリング55を介して容器51に当接された状態において、
図3に示すように、ケーブル20がグロメット10に当接される(S20:線状体当接工程)。具体的には
図4(b)に示すように、ケーブル20の端部は、グロメット10における突出部17側の端部に押し当てられる。このとき、グロメット10の中空部11における突出部17側の開口端は、ケーブル20により塞がれる。なお、ケーブル20の端部は、中空部11の内部に押し込まれていてもよい。
【0041】
その後
図3に示すように、コンプレッサ53から容器51へ空気の供給を開始する(S30:気体供給工程)。このとき
図4(c)に示すように、気体放出孔52は、ゴムリング55、グロメット10およびケーブル20により閉塞されている。なお、気体放出孔52の閉塞は、容器51の内部の空気の圧力が高められる程度のものであればよい。具体的には、容器51、ゴムリング55、グロメット10およびケーブル20の間から漏洩する空気の量が、供給される空気の量よりも少なければよい。
【0042】
容器51への空気の供給が開始されると、ケーブル20はグロメット10に挿通される(S40:挿通工程)。具体的には、
図5(a)に示すように、容器51への空気の供給が開始されると、容器51の内部の空気の圧力が上昇する。空気の圧力が上昇する段階において、容器51の内部の空気は、グロメット10とケーブル20との間や、グロメット10とゴムリング55との間や、ゴムリング55と容器51との間から漏れていてもよい。
【0043】
容器51の内部とグロメット10の中空部11とは、気体放出孔52を介して連通しており、両者の内部の圧力は概ね等しくなる。コンプレッサ53から供給される空気により容器51および中空部11における空気の圧力が、グロメット10の周囲の気圧よりも高くなると、圧力差によって中空部11(グロメット10)が拡径し始める。この際、容器51内の気体は、グロメット10の中空部11に導入されている。
【0044】
中空部11の内径が、ケーブル20を挿入できる程度まで拡径すると、ケーブル20をグロメット10に押し付ける力、および、グロメット10をゴムリング55に押し付ける力により、ケーブル20は容器51内の気体が導入された中空部11に挿入され始める。このとき、中空部11の内径と、ケーブル20の外径との間には隙間が形成され、当該隙間を通って容器51の内部の空気が外部へ流出する。
【0045】
グロメット10にケーブル20が挿通されると、グロメット10とケーブル20との位置決めが行われる(S50:位置合わせ工程)。具体的には、
図5(b)に示すように、ケーブル20の挿入側の端部が、グロメット10の中空部11を通り抜け、ケーブル20の端部と、グロメット10とが予め定めた相対的な位置関係に達するまで、ケーブル20が挿入される。
【0046】
例えば、上述の相対的な位置関係と対応する容器51の内部の所定位置に目印71を設け、ケーブル20の端部が目印71に達するまで、ケーブル20を挿入してもよい。または、ケーブル20における上述の相対的な位置関係と対応する位置に印を設け、当該印がグロメット10に達するまでケーブル20を挿入してもよい。
【0047】
さらに、
図5(c)に示すように、容器51の内部における上述の相対的な位置関係と対応する位置に当接部72を設け、ケーブル20の端部が当接部72に当接するまでケーブル20を挿入してもよい。
【0048】
グロメット10とケーブル20との位置決めが完了すると、グロメット10にケーブル20を挿通させるグロメット付きケーブル1の製造過程が終了する。グロメット10およびケーブル20を容器51から取り外され、以後に続く製造工程が行われる。
【0049】
上記のグロメット付きケーブル1の製造方法によれば、容器51から中空部11に空気を導いて中空部11内の圧力を高めることによりグロメット10の中空部11を拡径させ、拡径した中空部11にケーブル20を挿通させることができる。言い換えると、特許文献1の爪部材や、特許文献2の拡径導入管をグロメット10の中空部11に挿入することなく、中空部11を拡径することが可能となる。その結果、中空部11にケーブル20を挿入する際にグロメット10が損傷してしまうことを抑制することが可能となる。
【0050】
ゴムリング55を介して容器51にグロメット10を当接させる工程(S10)、グロメット10にケーブル20を当接させる工程(S20)、コンプレッサ53から容器51へ空気の供給を開始する工程(S30)の順にグロメット付きケーブル1を製造することにより、S30、S10、S20の順で製造する場合と比較して、グロメット付きケーブル1を製造しやすくなる。
【0051】
具体的には、S30、S10、S20の順で製造すると、2つの当接工程(S10、S20)の前に、空気が供給される(S30)。この場合、供給される空気によって、グロメット10とゴムリング55とを当接(密着)させにくくなり、および、ケーブル20とグロメット10とを当接(密着)させにくくなり、供給された空気が漏れだす可能性が高くなる。その結果、グロメット10の中空部11における空気の圧力が高くなりにくくなり、中空部11の内径が拡径しにくくなる。
【0052】
これに対して、S10、S20、S30の順で製造することにより、グロメット10とゴムリング55とを当接(密着)させやすくなり、および、ケーブル20とグロメット10とを当接(密着)させやすくなる。その結果、グロメット10の中空部11における空気の圧力が高めやすく、中空部11の内径が拡径しやすくなる。言い換えると、グロメット付きケーブル1を製造しやすくなる。
【0053】
グロメット10と容器51(ゴムリング55)とを当接させた後に、グロメット10にケーブル20の端部を当接させることにより、グロメット10とケーブル20の端部とを当接させる工程を行いやすくなる。つまり、グロメット10に容器51(ゴムリング55)を当接させる工程では、グロメット10の中空部11に容器51の空気が導入されていない。そのため、グロメット10に容器51(ゴムリング55)を容易に当接させることができ、当接した状態を容易に維持することができる。この状態で、グロメット10とケーブル20の端部とを当接させることにより、容易に挿通工程に移行することが可能となる。
【0054】
ゴムリング55を配置することにより、ゴムリング55を配置しない場合と比較して、グロメット10の端部と容器51との間に隙間ができるのを抑制しやすくなる。そのため、容器51から中空部11に空気を導く際に、空気が外部へ漏洩しにくくなり、より効果的に中空部11を拡径することが可能となる。
【0055】
グロメット10を形成する材料よりも柔軟性が高い材料を用いてゴムリング55を形成することにより、グロメット10をゴムリング55に当接させた際に、両者の間に隙間が形成されにくくなる。その結果、ゴムリング55とグロメット10との間からの空気漏れを抑制してグロメット10を拡径しやすくなり、グロメット付きケーブル1を製造しやすくなる。
【0056】
容器51に供給する気体として空気を用いることにより、空気以外の気体を用いる場合と比較して、グロメット付きケーブル1を製造しやすくなる。
ケーブル20の端部を容器51の内部まで挿入させることにより、容器51(作業空間確保容器)内の空間を利用して、ケーブル20とグロメット10との間の相対的な位置合わせを行うことができる。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、容器51の側面に気体放出孔52が設けられている例に適用して説明したが、容器51の上面に気体放出孔52が設けられていてもよい。この場合、グロメット10に挿通されるケーブル20は、上方から下方に向かって移動することになる。
【0058】
また、本実施形態では、グロメット10の傾斜部13側の端部を容器51(ゴムリング55)に当接させ、突出部17側の端部からケーブル20を挿入する例に適用して説明したが、グロメット10の突出部17側の端部を容器51に当接させ、傾斜部13側の端部からケーブル20を挿入してもよい。
【0059】
さらに、本実施形態では、グロメット10に中空部11と傾斜部13と係合部15と突出部17とが設けられている例に適用して説明したが、グロメット10の形状を特に限定するものではなく、種々の公知の形状を有しているものであってもよい。
【0060】
またさらに、本実施形態では、ゴムリング55を介して容器51にグロメット10を当接させる容器当接工程(S10)、グロメット10にケーブル20を当接させる線状体当接工程(S20)の順にグロメット付きケーブル1を製造しているが、S10とS20の順は逆にすることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…グロメット付きケーブル、10…グロメット(筒状体)、11…中空部、20…ケーブル(線状体)、21…導体、23…絶縁体、51…容器、52…気体放出孔、55…ゴムリング(密着部)、56…貫通孔、S10…容器当接工程、S20…線状体当接工程、S30…気体供給工程、S40…挿通工程、S50…位置合わせ工程