(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B26F 1/18 20060101AFI20220325BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20220325BHJP
B41J 11/68 20060101ALI20220325BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B26F1/18
B65H37/04 Z
B41J11/68
B26D1/02 Z
(21)【出願番号】P 2018050350
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】星野 智道
(72)【発明者】
【氏名】浅見 真治
(72)【発明者】
【氏名】古橋 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道貴
(72)【発明者】
【氏名】米山 史晴
(72)【発明者】
【氏名】日高 信
(72)【発明者】
【氏名】坂野 広樹
(72)【発明者】
【氏名】國枝 晶
(72)【発明者】
【氏名】森永 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】原口 陽介
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-226899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0039582(US,A1)
【文献】特開2010-208902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0241274(US,A1)
【文献】特開2012-020412(JP,A)
【文献】特開2013-230526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/18
B65H 37/04
B41J 11/68
B26D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線上に並んだ複数の刃を有する刃物と、
前記刃とともに挟んだシートの箇所にミシン目を形成しながら複数の刃の並び方向に移動する移動部材とを備えたシート処理装置において、
前記移動部材を刃物側へ加圧する加圧手段
と、
前記移動部材を、前記シートの垂直方向に揺動可能に支持する支持部材とを備え、
前記移動部材の揺動の支点を、前記支持部材の前記移動部材を支持する支持位置以上、前記刃物から離したことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート処理装置において、
前記移動部材の前記刃に対向する箇所に溝を設けたことを特徴とするシート処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート処理装置において、
前記移動部材は、ローラ部材であり、回転しながら前記刃の並び方向に移動することを特徴とするシート処理装置
。
【請求項4】
請求項
1乃至3いずれか一項に記載のシート処理装置において、
前記移動部材の揺動の支点が、前記移動部材よりも前記移動部材の移動方向上流側に位置するように前記移動部材を移動させて前記ミシン目を形成することを特徴とするシート処理装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のシート処理装置において、
前記ミシン目を形成するときの前記移動部材の移動方向を、前記移動部材の揺動の支点が、前記移動部材よりも前記移動部材の移動方向上流側に位置する移動方向に限定するか否かを、シートの種類に基づいて決めることを特徴とするシート処理装置。
【請求項6】
請求項
1乃至5いずれか一項に記載のシート処理装置において、
前記加圧手段は、前記支持部材の前記移動部材と対向する対向部を加圧することを特徴とするシート処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6いずれか一項に記載のシート処理装置において、
シートの種類に基づいて、前記ミシン目を形成するときの前記移動部材の移動回数を決定することを特徴とするシート処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7いずれか一項に記載のシート処理装置において、
前記刃物は、装置本体に対して着脱可能に設けられていることを特徴とするシート処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8いずれか一項に記載のシート処理装置において、
前記移動部材を、前記刃物の刃から離間させる離間手段を備え、
前記シートと対向する位置で、前記刃物の刃から離間した離間位置から、前記シートを刃物側へ押圧する押圧位置へ前記移動部材を移動させた後、前記移動部材を、前記刃の並び方向に移動させて前記ミシン目を形成することを特徴とするシート処理装置。
【請求項10】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記シートに所定の処理を施すシート処理手段とを備えた画像形成装置において、
前記シート処理手段として、請求項1乃至
9いずれか一項に記載のシート処理装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記シートに所定の処理を施すシート処理装置とを備えた画像形成システムにおいて、
前記シート処理装置として、請求項1乃至
9いずれか一項に記載のシート処理装置を用いたことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直線上に並んだ複数の刃を有する刃物と、刃とともに挟んだシートの箇所にミシン目を形成しながら複数の刃の並び方向に移動する移動部材とを備えたシート処理装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記シート処理装置として、上記刃物の両端に加圧手段としてのバネを設け、刃物を移動部材側へ加圧することで、シートに刃物の刃を突き刺してシートにミシン目を形成するものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、製造誤差などにより、一端側のバネの加圧力と他端側のバネの加圧力が互いに異なる場合があり、シートに均一なミシン目を形成できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、直線上に並んだ複数の刃を有する刃物と、前記刃とともに挟んだシートの箇所にミシン目を形成しながら複数の刃の並び方向に移動する移動部材とを備えたシート処理装置において、前記移動部材を前記刃物側へ加圧する加圧手段と、前記移動部材を、前記シートの垂直方向に揺動可能に支持する支持部材とを備え、前記移動部材の揺動の支点を、前記支持部材の前記移動部材を支持する支持位置以上、前記刃物から離したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シートに均一なミシン目を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態における画像形成装置と、複数のシート処理装置とからなる画像形成システムのシステム構成を示す図。
【
図2】画像形成システムのシステム構成の他の例を示す図。
【
図7】ミシン目形成装置におけるシート搬送について説明する図。
【
図8】ミシン目形成部のミシン目形成動作を説明する説明図。
【
図9】(a)は、ローラ部材の揺動の支点を、ローラ部材の支持位置以上刃物から離した例について説明する図であり、(b)は、ローラ部材の揺動の支点を、ローラ部材の支持位置よりも刃物側に設けた例について説明する図。
【
図10】(a)は、ローラ部材の揺動の支点が、ローラ部材よりも押圧機構移動方向上流側となる場合の力学的モデルを示す図であり、(b)は、ローラ部材の揺動の支点が、ローラ部材よりも押圧機構移動方向下流側となる場合の力学的モデルを示す図。
【
図12】(a)は、コイルスプリングを、ローラ部材よりもローラ部材の揺動の支点から離れた側に設けた例を示す図であり、(b)は、コイルスプリングを、ローラ部材よりもローラ部材の揺動の支点側に設けた例を示す図である。また、(c)は、コイルスプリングを、ローラ部材の直上に設けた例を示す図。
【
図14】刃物と、刃物固定用ブラケットと、刃物押さえブラケットとを示す斜視図。
【
図15】刃物の刃物固定用ブラケットへの位置決めについて説明する図。
【
図16】刃物の刃物固定用ブラケットへの固定について説明する図。
【
図17】押圧機構のローラ部材を押圧位置から離間させる離間機構の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態における画像形成装置と、複数のシート処理装置とからなる画像形成システム4のシステム構成を示す図である。本実施形態では、画像形成装置3の後段に、シート処理装置であるミシン目形成装置1と、後処理装置2とが順に設けられている。
【0009】
画像形成装置3は、入力された画像データまたは読み取った画像の画像データに基づいて、シートに画像を形成するものである。例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいは、これらの機能のうち少なくとも2つの機能を備えたデジタル複合機などがこれに相当する。画像形成装置3は、例えば電子写真方式や液滴射出方式など公知の方式のものであり、画像形成方式は何れでも良い。なお、本実施形態においては、電子写真方式の複写機を用いている。
【0010】
後処理装置2としては、例えば、シートにパンチ孔を開けるパンチ穿孔装置、ステープラ等によりシート束を綴じるシート綴じ装置、画像形成済みシートを複数の排出トレイへ仕分けして排出する仕分排出装置などが挙げられる。
【0011】
図2は、画像形成システム4のシステム構成の他の例を示す図である。
この
図2に示す画像形成システム4は、画像形成装置3の胴内にミシン目形成装置1を配置したものであり、ミシン目形成装置1を備えた画像形成装置3と後処理装置2とで、画像形成システムが構成されている。また、後処理装置2にミシン目形成装置を設けてもよい。
【0012】
図3は、画像形成装置3について説明する図である。
画像形成装置本体400は、画像形成部の下部に、記録媒体であるシートを収納する給送カセットが配置されている。給送カセットに収納されたシートは、それぞれ、給送ローラ414a,414bによって給送された後、所定の搬送路に沿って上方へ搬送され、レジストローラ対413へ到達する。
【0013】
画像形成部は、像担持体としての感光体ドラム401と、帯電装置402と、露光装置410と、現像装置404と、転写装置405と、クリーニング装置406とを備えている。
【0014】
帯電装置402は、感光体ドラム401の表面を一様に帯電する帯電手段である。露光装置410は、画像読取装置100で読み取った画像情報に基づいて感光体ドラム401上に静電潜像を形成する潜像形成手段である。現像装置404は、感光体ドラム401上の静電潜像にトナーを付着させて可視像化する現像手段である。転写装置405は、感光体ドラム401上のトナー画像をシートに転写する転写手段である。クリーニング装置406は、転写後の感光体ドラム401上に残留したトナーを除去するクリーニング手段である。
【0015】
また、画像形成部のシート搬送方向下流側には、トナー画像をシートに定着する定着手段としての定着装置407が配置されている。
【0016】
露光装置410は、制御部の制御の下で画像情報に基づくレーザー光を発射するレーザーユニット411と、レーザーユニット411からのレーザー光を感光体ドラム401の回転軸方向(主走査方向)に走査するポリゴンミラー412を具備する。
【0017】
また、画像読取装置100の上部には、自動原稿搬送装置500が接続されている。この自動原稿搬送装置500は、原稿テーブル501、原稿分離給送ローラ502、搬送ベルト503、原稿排紙トレイ504を具備している。
【0018】
原稿テーブル501に原稿がセットされて読み取り開始指示を受けると、自動原稿搬送装置500では、原稿テーブル501上の原稿が原稿分離給送ローラ502により1枚ずつ送り出される。そして、その原稿は搬送ベルト503によりプラテンガラス309上に案内され、一時停止する。
【0019】
そして、プラテンガラス309上に一時停止した原稿は、画像読取装置100によりその画像情報が読み取られる。その後、搬送ベルト503が原稿の搬送を再開し、その原稿は原稿排紙トレイ504に排出される。
【0020】
次に、画像読取動作と画像形成動作について説明する。
自動原稿搬送装置500によりプラテンガラス309上に原稿が搬送されるか、ユーザーによりプラテンガラス309上に原稿が載置されて、操作パネルにコピー開始操作がなされると、第一走行体303上の光源301が点灯する。また、これとともに、第一走行体303及び第二走行体306を、ガイドレールに沿って移動させる。
【0021】
そして、プラテンガラス309上の原稿に光源301からの光が照射され、その反射光が、第一走行体303上のミラー302、第二走行体306上のミラー304,305、レンズ307に案内されて、CCD308で受光される。これにより、CCD308は原稿の画像情報を読み取り、その画像情報はA/D変換回路によってアナログデータからデジタルデータに変換される。この画像情報は、情報出力部から画像形成装置本体400の制御部へ送られる。
【0022】
一方、画像形成装置本体400は、感光体ドラム401の駆動を開始し、感光体ドラム401が所定速度で回転したら、帯電装置402により感光体ドラム401の表面を一様に帯電させる。そして、この帯電した感光体ドラム401の表面に、画像読取装置で読み取った画像情報に基づいた静電潜像が露光装置410により形成する。
【0023】
その後、感光体ドラム401の表面上の静電潜像は、現像装置404により現像されてトナー画像となる。また、給送カセットに収納されたシートは、給送ローラ414a,414bによって給送され、レジストローラ対413で一時停止させる。
【0024】
そして、感光体ドラム401の表面に形成されたトナー画像の先端部分が転写装置405と対向する転写部に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ対413により転写部に送り込まれる。転写部をシートが通過する際、転写電界の作用によって感光体ドラム401の表面に形成されたトナー像がシート上に転写される。
【0025】
その後、トナー像を載せたシートは、定着装置407に搬送され、定着装置407により定着処理を受けた後、後段のミシン目形成装置1に排出される。なお、転写部においてシートに転写されることなく感光体ドラム401の表面に残留した転写残トナーは、クリーニング装置406により除去される。
【0026】
図4は、ミシン目形成装置1について説明する図である。
図4に示すように、ミシン目形成装置1は、搬送路14に沿って入口側から入口ローラ対11、揺動ガイド板13、ミシン目形成部20、排紙ローラ対12を備えている。
【0027】
入口ローラ対11は、ミシン目形成装置1の入口に位置し、画像形成装置3の排紙ローラ408によって排紙されるシートを受け取り、ミシン目形成部20に搬入する機能を有する。
入口ローラ対11の後段には、揺動ガイド板13が配置されている。揺動ガイド板13は、搬送方向下流側端部を支点にして揺動可能に設けられている。シートを搬送するときは、
図4に示すガイド位置に位置し、ミシン目形成部20によりミシン目を形成するときは、図中反時計回りに揺動し、退避位置に位置する。
排紙ローラ対12は、ミシン目形成装置1の最後段の出口直前に位置し、用紙の排出を行う機能を有する。
【0028】
図5は、ミシン目形成部20の概略構成図であり、(a)は、ミシン目形成部20をシート幅方向から見た図であり、(b)は、ミシン目形成部20をシート搬送方向上流側から見た図である。また、
図6は、押圧機構30の斜視図である。
図5に示すようにミシン目形成部20は、主に複数の刃41aが形成された刃物41と、シートを刃物41に押圧する押圧機構30とを備えている。押圧機構30は、両端がミシン目形成装置1の側板1aに支持され、シート搬送方向に並べて設けられた一対のガイドレール38にシート幅方向(
図5(b)の左右方向)に移動可能に支持されている。
【0029】
また、ミシン目形成部20には、押圧機構30をシート幅方向(
図5(b)の左右方向)に移動させるための駆動装置50を備えている。駆動装置50は、駆動モータ54と、駆動モータ54の駆動力がタイミングベルト55を介して伝達される駆動プーリ53と、駆動プーリ53が配置された側と反対側に配置された従動プーリ51と、駆動プーリ53と従動プーリ51とに張架された移動用タイミングベルト52とを主に備えている。押圧機構30は、この移動用タイミングベルト52に取り付けられている。
この移動用タイミングベルト52が駆動モータ54の正逆回転によって無端移動することで、押圧機構30がシート幅方向に往復駆動される。
【0030】
押圧機構30は、
図5(a)、
図6に示すように、移動部材としてのローラ部材32と、ローラ部材32を回転可能かつシートの垂直方向に揺動可能に支持する支持部材としてのホルダ33と、ホルダ33を回転可能に支持し、一対のガイドレール38にスライド可能に支持されたスライダ34と、加圧手段としてのコイルスプリング37とを主に備えている。
【0031】
ローラ部材32には、刃物41と対向する回転軸方向(シート搬送方向)中央には、溝32aが形成されている。この溝32aは、刃物41と対向している。ローラ部材32は、ホルダ33のローラ支持部33cに取り付けられた軸32bに回転自在に支持されている。また、ローラ部材32の回転中心に回転軸方向に突出するボス部を設け、このボス部をホルダ33のローラ支持部33cに回転自在に支持してもよい。
【0032】
ホルダ33は、スライダ34に取り付けられた支持軸33bに回転自在に支持されている。これにより、この支持軸33bを支点にしてシートの垂直方向に揺動可能にローラ部材32が支持される。また、ホルダ33にボス部を設けて、このボス部をスライダ34に回転自在に支持してもよい。また、ホルダ33は、コイルスプリング37の一端を受けるバネ受け台33aを有している。
【0033】
スライダ34は、シート搬送方向両端に貫通孔34aを有し、これら貫通孔34aにガイドレール38が貫通している。これにより、スライダ34は、シート幅方向にスライド可能にガイドレール38に支持される。また、スライダ34は、ホルダ33のバネ受け台33aと対向し、コイルスプリング37の他端を受けるバネ受け台34bを有している。コイルスプリング37は、スライダ34にネジで固定され、ホルダ33を刃物41側へ付勢している。これにより、ホルダ33に支持されているローラ部材32が、刃物側へ付勢され、シートを刃物41に押圧することができる。
【0034】
また、
図5(b)に示すように、刃物41の両端よりも外側の通紙領域外には、退避した押圧機構30のローラ部材32が乗り上げる退避台42が設けられている。
【0035】
図7は、ミシン目形成装置1におけるシート搬送について説明する図である。
図7(a)に示すように、シートPが画像形成装置3の排紙ローラ408によって画像形成装置から排紙されたシートPを入口ローラ対11が受け取り、ミシン目形成部20へシートPを搬送する。このとき、揺動ガイド板13はガイド位置に位置している。入口ローラ対11により搬送されてきたシートPは、揺動ガイド板13にガイドされてミシン目形成部20に搬送される。
【0036】
図7(a)に示すように、揺動ガイド板13がガイド位置にあるとき、揺動ガイド板13の先端は、刃物41の刃41aの刃先よりも押圧機構30側(図中上側)に位置している。そのため、揺動ガイド板13にガイドされたシートPは、刃41aの上空を通過し、シートが刃物の刃41aに引っ掛ることなく、搬送することができる。これにより、ジャムの発生やスキューの発生を抑制することができる。
【0037】
図7(b)に示すように、シートPの先端が排紙ローラ対12に到達し、シートPが入口ローラ対11と排紙ローラ対12とに狭持搬送される。そして、シートPのミシン目位置が刃物41に対向したら、入口ローラ対11、排紙ローラ対12の回転を停止する。
【0038】
次に、揺動ガイド板13を図中反時計回りに回転させ、揺動ガイド板13を
図7(c)に示す退避位置に位置させる。揺動ガイド板13が退避位置に位置したら、押圧機構30をシート幅方向へ移動させ、押圧機構30によりシートPを刃物41に押し付けて、シートPの所定の位置にミシン目を形成する。
【0039】
ミシン目形成部20でシートPの所定の位置にミシン目を形成したら、揺動ガイド板13を退避位置からガイド位置へ揺動させる。この揺動ガイド板13が退避位置からガイド位置へ揺動する途中で、揺動ガイド板13がシートPに当接し、シートPを持ち上げる。これにより、シートPに突き刺さった刃41aをシートから離すことができる。このように、本実施形態においては、揺動ガイド板13が、シートを刃物から離間させる離間手段としての機能を有している。
【0040】
次に、揺動ガイド板13がガイド位置に位置したら、
図7(b)に示すように、入口ローラ対11および排紙ローラ対12の回転を再開し、シートの搬送を再開する。揺動ガイド板13によりシートPに突き刺さった刃41aをシートPから離してから、シートを搬送するので、シートPが突き刺さった刃41aにより引き千切られたり、突き刺さった刃41aに引っ掛ってジャムが発生したりするのを防止することができる。
【0041】
次に、ミシン目形成部20のミシン目形成動作について説明する。
図8は、ミシン目形成部20のミシン目形成動作を説明する説明図である。
図8(a)に示すように、ミシン目形成動作前は、押圧機構30は退避位置に位置しており、ローラ部材32が退避台42に乗り上げている。シートPが所定の位置で停止したら、駆動モータ54の駆動を開始し、押圧機構30を用紙幅方向一端側(図中左端)から他端側へ移動させる。すると、ローラ部材32が、刃先の上を転がりながら、図中矢印D方向へ移動する。
【0042】
押圧機構30が図中矢印D方向へ移動していくと、
図8(b)に示すように、ローラ部材32がシートPに当接し、シートPがローラ部材32と刃物41とに挟まれる。ローラ部材32は、ホルダ33を介してコイルスプリング37により刃物側へ付勢されている。よって、ローラ部材32によりシートPが刃物41に押圧され、刃物41の刃41aがシートPに突き刺ささってシートを貫通し、ミシン目が形成される。本実施形態においては、
図5(a)に示すように、ローラ部材32の刃物41と対向箇所に溝32aを設けている。これにより、ローラ部材32がシートと接触した際に、この溝32aとシートとの間には隙間が形成される。よって、刃41aが確実にシートPを貫通し、良好にミシン目を形成することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ホルダ33は、ローラ部材32をシートの垂直方向に揺動可能に支持している。これにより、刃物41の刃先の凹凸に追随することができ、刃物刃に引っ掛るのを抑制し、スムーズに押圧機構30をシート幅方向へ移動させることができる。また、製造誤差による押圧力の増減を抑制することができ、良好にシートにミシン目を形成することができる。
【0044】
また、シート上を移動する移動部材たるローラ部材32は、回転しながらシート上を移動するので、移動の抵抗を低減することができ、スムーズに押圧機構30をシート幅方向に移動させることができる。
【0045】
このように、押圧機構30を図中矢印D方向へ移動させながら、シートPにミシン目を形成していき、最終的に押圧機構30が、
図8(d)に示すように、図中右端の退避位置まで移動し、ローラ部材32が図中右側の退避台42に乗り上げたら、ミシン目形成動作が終了する。そして、次のシートに対してミシン目を形成するときは、
図8とは、反対方向へ移動させミシン目を形成する。また、ミシン目が形成されたシートの後端が刃物41の対向箇所を抜けたら、押圧機構30を
図8とは、反対方向へ移動させ、図中左側の退避位置へ移動させて、シートに対してミシン目を形成するときの移動方向を、
図8に示す方向に限定してもよい。
【0046】
従来のように刃物41を押圧機構30に対して接離可能に構成し、刃物41をコイルスプリング37により押圧機構側に加圧する構成とした場合、刃物41は、シート幅方向に長いため、シート幅方向各位置で所定の加圧力を得るには、シート幅方向に複数のコイルスプリングを配置する必要がある。その結果、製造誤差などにコイルスプリングによる加圧力に差が生じ、均一なミシン目が形成できない。
【0047】
一方、本実施形態のように、シート幅方向に移動する押圧機構30にコイルスプリングを設けることで、シート幅方向各位置で、同じ力でシートを加圧することができ、均一なミシン目を形成することができる。
【0048】
また、ローラ部材32の揺動の支点(ホルダ33を回転支点)を、ローラ部材の支持位置(軸32b)以上刃物から離すのが好ましい。
【0049】
図9(a)は、ローラ部材32の揺動の支点を、ローラ部材32の支持位置以上刃物から離した例について説明する図であり、
図9(b)は、ローラ部材32の揺動の支点を、ローラ部材32の支持位置よりも刃物側に設けた例について説明する図である。
図9に示すように、駆動装置50により押圧機構30が図中矢印D方向に移動しているとき、ローラ部材32の揺動の支点である支持軸33bは、スライダ34を介して図中矢印F1方向に駆動装置50の駆動力が加わる。
図9(b)に示すように、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32の支持位置よりも刃物側にある場合、ローラ部材32には、刃物から離れる側にモーメントが働き、ローラ部材32が刃に乗り上げる際に、ローラ部材32が跳ね上がるおそれがある。その結果、押圧力が低下し、良好なミシン目を形成できないおそれがある。
【0050】
一方、
図9(a)に示すように、ローラ部材32の揺動の支点を、ローラ部材32の支持位置以上刃物から離した場合は、ローラ部材32には、刃物側にモーメントが働く。その結果、ローラ部材32が刃に乗り上げる際に跳ね上がることがなく押圧力が低下することがない。よって、良好なミシン目を形成できる。
【0051】
また、ローラ部材32の揺動の支点(支持軸33b)が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向上流側となる押圧機構30の移動方向で、ミシン目形成するのが好ましい。
図10(a)は、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向上流側となる場合の力学的モデルを示す図であり、
図10(b)は、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向下流側となる場合の力学的モデルを示す図である。
図10(a)に示すように、ローラ部材32の揺動の支点である支持軸33bからローラ部材32と刃41aとの接触位置までの押圧機構移動方向の長さをb、支持軸33bからローラ部材32と刃41aとの接触位置までの上記移動方向と直交する方向の長さをa、刃41aとローラ部材32との接触時の上記移動方向の力をF2、刃41aとローラ部材32との接触時の移動方向と直交する方向の力をF1とすると、支持軸33bまわりのモーメントT1は、次の式(1)となる。
T1=F1・b-F2・a・・・・(式1)
上記式から、移動方向と直交する方向の力(垂直抗力=押圧力)F1は、次の式(2)となる。
F1=(T1+F2・a)/b・・・・(式2)
【0052】
図10(b)に示すように、ローラ部材32の揺動の支点である支持軸33bからローラ部材32と刃41aとの接触位置までの押圧機構移動方向の長さをc、支持軸33bからローラ部材32と刃41aとの接触位置までの上記移動方向と直交する方向の長さをd、刃41aとローラ部材32との接触時の上記移動方向の力をF4、刃41aとローラ部材32との接触時の移動方向と直交する方向の力をF3とすると、支持軸33bまわりのモーメントT2は、次の式(3)となる。
T2=F3・c+F4・dとなる。・・・・(式3)
上記式から、移動方向と直交する方向の力(垂直抗力=押圧力)F3は、次の式(4)となる。
F3=(T2-F4・d)/c・・・・(式4)
【0053】
ここで、T1,T2は、コイルスプリング37のバネ圧であり、T1=T2であり、また、a=dである。また、b>cであるが、その差は、わずかでありb≒cとみなすことができる。また、F2,F3は、刃とローラとの摩擦力であるのでF2=F3である。よって、F3は、次の式(5)で近似することができる。
F3≒(T1-F2・a)/b・・・・(式5)
【0054】
式2と式5を比較してわかるように、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向上流側の場合の垂直抗力(押圧力)F1が、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向下流側の場合の垂直抗力(押圧力)F3よりも大きくなる。よって、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向上流側にローラ部材32の揺動の支点がくるように、押圧機構30を移動させて、ミシン目を形成することで、良好なミシン目を形成することができる。
【0055】
また、シートの紙厚によって押圧機構30の移動を変更するのが好ましい。
図11は、押圧機構30の移動を変更する制御フロー図である。
駆動装置50の駆動モータ54を制御する制御手段は、画像形成装置から搬送されてきるシートの種類情報として、シートの紙厚情報を取得する。取得した紙厚情報から、搬送されてくるシートの紙厚が、a(mm)を超えるとき(S1のYes)は、一回の押圧機構30の移動では良好にミシン目を形成することができない。従って、シートの紙厚がa(mm)を超えるとき(S1のYes)は、押圧機構30を複数回移動させてミシン目を形成する。これにより、紙厚が厚いシートに良好にミシン目を形成することができる。
【0056】
一方、シートの紙厚が、b(mm)以上a(mm)以下(b<a)のとき(S1No,S3Yes)ときは、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向下流側となる移動方向である復路移動(
図8の左方向の移動)では、押圧力が不十分となり、良好なミシン目が形成できない。よって、このときは、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向上流側となる移動方向である往路移動(
図8の右方向の移動)でミシン目を形成する(S4)。これにより、シートの紙厚が、a(mm)を超えるときに比べて生産性を高めることができる。
【0057】
また、紙厚が、b(mm)以上a(mm)以上のシートを連続で搬送するときは、紙間のときに、押圧機構30を復路移動(
図8の左方向の移動)させて、次のシートに備える。
【0058】
一方、シートの紙厚が、b(mm)以下(b<a)のとき(S1No,S3No)は、弱い押圧力でも良好にミシン目を形成することができる。そのため、ローラ部材32の揺動の支点が、ローラ部材32よりも押圧機構移動方向下流側に位置する復路移動(
図8の左方向の移動)でも良好にミシン目を形成することができる。よって、このときは、往路、復路のいずれかの移動でミシン目を形成する(S5)。
【0059】
シートの紙厚がb(mm)以下のときは、紙厚がb(mm)以上a(mm)以下のときとは異なり、紙間のときに、押圧機構を復路移動させておく必要がなく、
図8の右側の位置に待機させておくことができる。これにより、紙間を狭めることが可能となり、生産性を高めることができる。
【0060】
上記aの値、bの値は、装置の構成により適宜決めればよい。
【0061】
また、コイルスプリング37は、ローラ部材32の直上に設けるのが好ましい。
図12(a)は、コイルスプリング37を、ローラ部材32よりもローラ部材の揺動の支点(支持軸33b)から離れた側に設けた例を示す図であり、
図12(b)は、コイルスプリング37を、ローラ部材32よりもローラ部材の揺動の支点(支持軸33b)側に設けた例を示す図である。また、
図12(c)は、コイルスプリング37を、ローラ部材32の直上に設けた例を示す図である。
【0062】
図12(a)に示すように、コイルスプリング37を、ローラ部材32よりもローラ部材の揺動の支点(支持軸33b)から離れた側に設けることで、コイルスプリング37のホルダへの加圧位置をホルダの回転支点(支持軸33b)から離すことができ、少ないバネ圧でも所望の押圧力を得ることができる。しかしながら、コイルスプリング37を、ローラ部材32よりもローラ部材の揺動の支点(支持軸33b)から離れた側に設けると、バネ圧公差の影響を受けやすいというデメリットがある。また、コイルスプリング37のスライダ34に対する加圧位置がスライダ34のガイドレール38への支持位置から離れるため、スライダ34に抉れが発生するおそれがある。
【0063】
図12(b)に示すように、コイルスプリング37を、ローラ部材32よりもローラ部材の揺動の支点(支持軸33b)側に設けた場合は、ホルダの回転支点(支持軸33b)に近いため、バネ圧を大きくしないと、所定の押圧力を得ることができないというデメリットがある。また、所定の押圧力を得るためにバネ圧を大きくすることで、コイルスプリング37のスライダ34に対する加圧力も大きくなる、やはり、スライダ34に抉れが発生するおそれがある。
【0064】
これらに対し、
図12(c)は、コイルスプリング37を、ローラ部材32の直上に設けることで、
図12(a)に示したものに比べて、バネ圧公差の影響を低減することができる。また、
図12(b)に示したものに比べて、弱いバネ圧で所定の押圧力を得ることができる。また、コイルスプリング37のスライダ34に対する加圧位置がスライダ34のガイドレール38への支持位置内でき、かつ、さほどバネ圧で大きくしなくても所定の押圧力を得ることができるのでスライダにかかるバネ圧も低減できる。よって、スライダに抉れが発生するのを抑制することができる。
【0065】
また、経時使用で刃物41の刃41aは摩耗していき、切れ味が落ちていくため所定のタイミングで交換する必要がある。そのため、本実施形態においては、刃41aを着脱可能に構成し、容易に刃を交換可能になっている。
図13は、刃物41の着脱について説明する斜視図である。
図13に示すように、刃物41は、刃物固定用ブラケット44に固定されており、ベース部材43から
図13(a)の矢印方向に刃物固定用ブラケット44ともに引き出すことで、押圧機構30から取り外すことができる。
【0066】
刃物固定用ブラケット44は板金加工によって成形されており、刃物41に対して垂直な面であるベース面44aと、刃物41がネジ止めされる取り付け面44bと、刃物が位置決めされる位置決め面44cとを有している。位置決め面44cと取り付け面44bは、ベース面44aに対して垂直(刃物に対して平行)な面であり、位置決め面44cは、シート幅方向(刃物の着脱方向)の両端に設けられている。取り付け面44bは、2つの位置決め面44cの間に所定の間隔で3個設けられている。
【0067】
ベース部材43に設けられた退避台42には、刃物固定用ブラケット44のベース面44aを逃がす逃がし穴42aと、刃物41を逃がす逃がし溝42bとが設けられている。
図13(a)に示すように、刃物装着時において、刃物固定用ブラケット44のベース面44aのシート幅方向(着脱方向)両端部分が逃がし穴42aに入り込むことで、刃物固定用ブラケット44がベース部材43に保持される。
【0068】
次に、刃物41の刃物固定用ブラケット44への固定について説明する。
図14は、刃物41と、刃物固定用ブラケット44と、刃物押さえブラケット45とを示す斜視図である。また、
図15は、刃物の刃物固定用ブラケット44への位置決めについて説明する図であり、
図16は、刃物の刃物固定用ブラケット44への固定について説明する図である。
【0069】
図14二示すように、刃物41は、刃物固定用ブラケット44と刃物押さえブラケット45とに狭持される形で取り付けられている。
図15(a)に示すように、刃物固定用ブラケット44の位置決め面44cには、バーリング加工により突出させた位置決め部44dを有している。
図15(b)に示すように、この位置決め部44dに刃物41に形成された位置決め孔をはめ込むことで、刃物41が刃物固定用ブラケット44に位置決めされる。また、
図15(c)に示すように、刃物押さえブラケット45形成された位置決め孔を位置決め部44dにはめ込むことで、刃物押さえブラケット45が刃物固定用ブラケット44に位置決される。
【0070】
また、
図16(a)に示すように、刃物固定用ブラケット44の取り付け面44bには、内周面にねじ溝が形成されたねじ穴44eを有している。刃物41が、刃物固定用ブラケット44に位置決めされると、
図16(b)に示すように、刃物41に設けられたねじ貫通孔41bが、ねじ穴44eに重なり合う。また、刃物押さえブラケット45が位置決めされると、
図16(c)に示すように、刃物押さえブラケット45のねじ貫通孔41bが、ねじ穴44eに重なり合う。そして、
図16(d)に示すようにねじ46を差し込んで、ねじ46をねじ穴44eにねじ込むことにより、刃物41が刃物固定用ブラケット44に取り付けられる。
【0071】
従来のように刃物41を押圧機構30に対して接離可能に構成し、刃物41をコイルスプリング37により押圧機構側に加圧する構成とした場合、ベース部材43を押圧機構30に対して接離可能に構成することになり、装置が大型化するおそれがある。一方、刃物固定用ブラケット44を、押圧機構30に対して接離可能に構成する場合は、刃物固定用ブラケットをシート幅方向にスライド可能な構成にするのが難しく、刃物を容易に交換できる構成にするのが困難となる。
【0072】
一方、本実施形態のように、ローラ部材32を刃物41に対して接離可能に構成し、ローラ部材32をコイルスプリング37により刃物側に加圧する構成とすることで、装置の大型化を抑制することができる。また、ベース部材43に逃がし穴42aや逃がし溝42bを設けるだけで、刃物固定用ブラケットをシート幅方向にスライド可能な構成にできる。このように、簡単な構成で刃物固定用ブラケットシート幅方向にスライド可能な構成にでき、容易に刃物を交換することができる。
【0073】
上述のミシン目形成動作は、押圧機構30を通紙範囲外の退避位置に位置させ、一端の退避位置から他端の退避位置へ押圧機構30を移動させてシートにミシン目を形成している。しかし、このようなミシン目形成動作において、退避位置から移動してきたローラ部材32がシートの幅方向一端を乗り上げる形となる。ローラ部材32がシートの幅方向一端を乗り上げるときにシートに幅方向の力がかかり、シートにスキューなどが生じるおそれがある。そのため、シートの先端側を排紙ローラ対12で狭持し、シートの後側を入口ローラ対11で狭持してシートをこれらローラで固定した状態でミシン目を形成している。よって、シートの先端付近や後端付近にミシン目を形成する場合は、入口ローラ対11、排紙ローラ対12のいずれか一方のローラにしか狭持されず、スキューが生じるおそれがある。
【0074】
そこで、押圧機構30のローラ部材32を刃物41から離間できるようにし、シートと対向する所定の位置でローラ部材32を離間位置から押圧位置へ移動させて、シートの幅方向所定の箇所を、刃物41の刃41aを突き刺して固定してから、シートを押圧しながら押圧機構30を移動させるようにしてもよい。これにより、シートが入口ローラ対11と排紙ローラ対12とで固定されていなくても、スキューが生じることなく、シートにミシン目を形成することができる。
【0075】
図17は、押圧機構30のローラ部材32を押圧位置から離間させる離間機構60の一例を示す図である。
図17に示すように、この離間機構60は、押圧機構30を支持するガイドレール38を上昇(刃物41から離れる方向の移動)させて、ローラ部材32を押圧位置から離間位置へ移動させるものである。離間機構60は、ガイドレール38の両端に設けられており、カム61と、ガイドレール38をカム側に付勢する付勢手段63と、カム61を回転させるカムモータ62とで構成されている。
【0076】
図17(a)に示すように、待機状態のときは、押圧機構30はシート幅方向中央に位置している。また、このときは、カム61の上死点がガイドレール38に当接しており、ローラ部材32を離間位置に位置させている。シートPのミシン目形成位置が刃物41と対向する位置にきて、シートの搬送が停止されたらカム61の下死点がガイドレール38に当接するまでカム61を回転させる。すると、押圧機構30が刃物41に近づいていき、ローラ部材32がシートに接触する。さらに、押圧機構30が下降していき、ローラ部材32のシートへの押圧力が高まっていく。これにより、シートPに刃41aが突き刺ささっていき、押圧位置にローラ部材32が到達すると、
図17(b)に示すように刃がシートを貫通し、シートの幅方向中央が刃物41に固定される。
【0077】
このように、ローラ部材32が押圧位置まで移動したら、駆動装置50の駆動を開始し、押圧機構30を図中右方向へ移動させる。このとき、シートは、ローラ部材32との摩擦力によりシート幅方向の力を受けるが、シートの中央部分が突き刺さった刃により固定されているので、シートが幅方向に移動することがなく、スキューなどが生じることがない。そして、押圧機構30のローラ部材32が、シートの図中右端に到達したら、
図17(c)に示すように、駆動装置50を逆転駆動し、押圧機構30を図中左側へ移動させる。
【0078】
次に、
図17(d)に示すように、押圧機構30が、シートの図中左端まで移動したら、移動を停止し、カム61を回転させローラ部材32を押圧位置から離間位置へ移動させる。ローラ部材32が離間位置にきたら、押圧機構30を図中右側へ移動させ、シート幅方向中央部へと戻す。
【0079】
このように離間機構60を設けることで、シートの幅方向所定の箇所を、刃に突き刺して固定してから、押圧機構30を移動させることができ、入口ローラや排紙ローラでシートを狭持しておかなくて、スキューなどが生じることなく、良好にミシン目を形成することができる。
【0080】
次に、離間機構の他の例について説明する。
図18は、離間機構70の他の例を示す図である。
この離間機構70は、アクチュエータ71を有しており、アクチュエータ71は押圧機構30に取り付けられている。このアクチュエータの押し当て部材71aが、ホルダ33に設けられた押し当て部33eに押し当てることで、ホルダを図中反時計回りに回動させることで、ホルダが支持するローラ部材32を押圧位置から離間させるものである。
【0081】
図18(a)に示すように、待機状態のときは、押圧機構30はシート幅方向中央に位置し、押し当て部材71aがアクチュエータ71から延び出て、押し当て部33eを図中右側へ押し込んでいる。よって、このときは、ローラ部材32が離間位置に位置している。そして、ミシン目形成部にシートが搬送れ、シートが停止したら、
図18(b)に示すように、押し当て部材71aを図中右側へ移動させる。すると、ホルダ33が、コイルスプリング37の付勢力により図中時計回りに回動し、ローラ部材32が離間位置から押圧位置へ移動し、シートを刃物側へ押圧する。すると、シートの幅方向中央部が、刃に突き刺さり、シートが刃物に固定される。
【0082】
次に、押圧機構30を
図18(c)に示すように、シートの右端まで移動させた後、移動方向を切り替えて、シートの左端まで移動させシートにミシン目を形成する(
図18(d))。シートにミシン目を形成したら、アクチュエータ71を駆動して、押し当て部材71aを図中左側へ移動させて、ホルダ33を図中反時計回りに回動させる。これにより、ローラ部材32が押圧位置から離間位置へと移動する。ローラ部材が離間位置まで移動したら、押圧機構30をシート幅方向中央へ移動させる。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
直線上に並んだ複数の刃41aを有する刃物41と、刃41aとともに挟んだシート箇所にミシン目を形成しながら複数の刃の並び方向に移動するローラ部材32などの移動部材とを備えたミシン目形成装置1などのシート処理装置において、移動部材を前記刃物側へ加圧するコイルスプリング37などの加圧手段を設けた。
特許文献1に記載のシート処理装置においては、製造誤差などにより両端合わせて複数の加圧手段間で加圧力のバラツキが生じ、複数の刃の並び方向での加圧力にバラツキが生じる。その結果、上記並び方向において、加圧力が強い箇所と、弱い箇所で、刃のシートへの突き刺さり量が異なり、ミシン目がばらついてしまう。
一方、態様1では、刃の並び方向に移動する移動部材を加圧手段により刃物側へ加圧することで、ひとつの加圧手段で加圧することができ、複数の加圧手段間での加圧力のバラツキに起因する刃の並び方向での加圧力のバラツキが生じない。よつて、刃の並び方向において、同じ力でシートを刃に押圧することができ、刃のシートへの突き刺さり量を同一にできる。その結果、シートに均一なミシン目を形成することができる。
【0084】
(態様2)
態様1において、ローラ部材32などの移動部材の刃に対向する箇所に溝32aを設けた。
これによれば、実施形態で説明したように、ローラ部材がシートと接触したときに、ローラ部材の溝の部分とシートとの間には隙間が生じる。これにより、確実にシートから刃を突き出すことができ、良好にミシン目を形成することができる。
【0085】
(態様3)
態様1または2において、ローラ部材32などの移動部材は、ローラ部材であり、回転しながら刃の並び方向に移動する。
これによれば、実施形態で説明したように、移動部材の移動抵抗を低減することができる。
【0086】
(態様4)
態様1乃至3において、ローラ部材32などの移動部材を、シートの垂直方向に揺動可能に支持するホルダ33などの支持部材を備え、移動部材の揺動の支点(本実施形態では支持軸33b)を、支持部材の移動部材を支持する支持位置(本実施形態では、軸32b)以上刃物41から離した。
これによれば、
図9を用いて説明したように、ローラ部材32などの移動部材の揺動の支点(支持軸33b)が、ホルダ33などの支持部材の移動部材を支持する支持位置(軸32b)よりも刃物41側に位置する場合に比べて、移動時の移動部材の跳ね上がりを抑制することができ、押圧力の低下を抑制することができる。これにより、良好にミシン目を形成することができる。
【0087】
(態様5)
態様4において、ローラ部材32などの移動部材の揺動の支点(支持軸33b)が、移動部材よりも移動部材の移動方向上流側に位置するように移動部材を移動させてミシン目を形成する。
これによれば、
図10を用いて説明したように、移動部材の揺動の支点(支持軸33b)が、移動部材よりも移動部材の移動方向下流側に位置するように移動部材を移動させてミシン目を形成する場合に比べて、シートを刃物側へ押圧する押圧力を高めることができ、良好にミシン目を形成することができる。
【0088】
(態様6)
態様5において、ミシン目を形成するときのローラ部材32などの移動部材の移動方向を、移動部材の揺動の支点が、移動部材よりも移動部材の移動方向上流側に位置する移動方向に限定するか否かを、シートの種類に基づいて決める。
これによれば、実施形態で説明したように、薄紙など弱い押圧力でも良好にミシン目を形成することができるシートの場合は、ミシン目を形成するときの移動部材の移動方向を限定せず、実施することで、シート幅方向一方側から他方側へ移動部材を移動させてミシン目を形成した後、次のシートについて、他方側から一方側へ移動部材を移動させてミシン目を形成することができる。これにより、ミシン目を形成するときの移動部材の移動方向を、移動部材の揺動の支点が、移動部材よりも移動部材の移動方向上流側に位置する移動方向に限定した場合に比べて、生産性を高めることができる。
一方、厚紙など、強い押圧力でなければ、良好にミシン目を形成することができるシートの場合は、ミシン目を形成するときの移動部材の移動方向を移動部材の揺動の支点が、移動部材よりも移動部材の移動方向上流側に位置する移動方向に限定することで、厚紙などのシートに対して良好にミシン目を形成することができる。
【0089】
(態様7)
態様4乃至6において、コイルスプリング37などの加圧手段は、ホルダ33などの支持部材のローラ部材32などの移動部材と対向する対向部を加圧する。
これによれば、
図12を用いて説明したように、前記ホルダ33を保持するスライダ34が抉れるのを抑制することができる。
【0090】
(態様8)
態様1乃至7において、シートの種類に基づいて、前記ミシン目を形成するときの移動部材の移動回数を決定する。
これによれば、実施形態で説明したように、薄紙などのミシン目を形成しやすいシートについては、ミシン目を形成するときの移動部材の移動回数を少なく(本実施形態では一回)することができ、生産性を低下させることなく、良好にミシン目を形成することができる。一方、厚紙などのミシン目を形成し難いシートについて、ミシン目を形成するときの移動部材の移動回数を多くするができ、良好にミシン目を形成することができる。
【0091】
(態様9)
態様1乃至8いずれかにおいて、刃物は、装置本体に対して着脱可能に設けられている。
これによれば、刃物の交換を容易に行なうことができる。また、態様1で説明したように、コイルスプリング37などの加圧手段で移動部材を刃物側へ加圧する構成とすることで、刃物を装置に固定することができ、装置本体に対して着脱可能な構成を容易に実現することができる。
【0092】
(態様10)
態様1乃至9いずれかにおいて、ローラ部材32などの移動部材を、刃物の刃から離間させる離間機構60などの離間手段を備え、シートと対向する位置で、刃物の刃から離間した離間位置からシートを刃物側へ押圧する押圧位置へ移動部材を移動させた後、移動部材を、刃の並び方向に移動させてミシン目を形成する。
これによれば、
図17や
図18を用いて説明したように、シートと対向する位置で、刃物の刃から離間した離間位置からシートを刃物側へ押圧する押圧位置へ移動部材を移動させることで、シートが刃物に刃に突き刺さり、シートを刃物に固定することができる。よって、その後、押圧位置に位置する移動部材を刃の並び方向に移動させてもシートにスキューなどが生じることなく、良好にミシン目を形成することができる。よって、移動部材を刃の並び方向に移動させてミシン目を形成するときに、シートが刃の並び方向に移動しないように、入口ローラと排紙ローラとで狭持しておかなくなくてもよい。その結果、シートの先端付近やシートの後ろ端付近でも、良好にミシン目を形成することができる。
【0093】
(態様11)
シートに画像を形成する画像形成部などの画像形成手段と、シートに所定の処理を施すミシン目形成装置1などのシート処理手段とを備えた画像形成装置において、シート処理手段として、態様1乃至10いずれか一項に記載のシート処理装置を用いた。
これによれば、良好にシートにミシン目を形成することができる。
【0094】
(態様12)
シートに画像を形成する画像形成装置3と、シートに所定の処理を施すミシン目形成装置1などのシート処理装置とを備えた画像形成システム4において、シート処理装置として、態様1乃至10いずれかのシート処理装置を用いた。
これによれば、良好にシートにミシン目を形成することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 :ミシン目形成装置
2 :後処理装置
3 :画像形成装置
4 :画像形成システム
11 :入口ローラ
12 :排紙ローラ
13 :揺動ガイド板
14 :搬送路
20 :ミシン目形成部
30 :押圧機構
32 :ローラ部材
32a :溝
32b :軸
33 :ホルダ
33a :バネ受け台
33b :支持軸
33c :ローラ支持部
33e :押し当て部
34 :スライダ
34a :貫通孔
34b :バネ受け台
37 :コイルスプリング
38 :ガイドレール
41 :刃物
41a :刃
41b :ねじ貫通孔
42 :退避台
42a :逃がし穴
42b :逃がし溝
43 :ベース部材
44 :刃物固定用ブラケット
44a :ベース面
44b :取り付け面
44c :位置決め面
44d :位置決め部
44e :ねじ穴
45 :刃物押さえブラケット
46 :ねじ
50 :駆動装置
51 :従動プーリ
52 :移動用タイミングベルト
53 :駆動プーリ
54 :駆動モータ
55 :タイミングベルト
60 :離間機構
61 :カム
62 :カムモータ
63 :付勢手段
70 :離間機構
71 :アクチュエータ
71a :押し当て部材
P :シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】