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特許7045661免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20220325BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220325BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220325BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220325BHJP
【FI】
A61K38/47 ZNA
A61P37/04
A61P43/00 107
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P31/00
A23L33/105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017131239
(22)【出願日】2017-07-04
(65)【公開番号】P2019014661
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】恩田 浩幸
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/016375(WO,A1)
【文献】佐々木 藍美 ほか,クミンの免疫賦活効果に関する研究,機能性食品と薬理栄養,2016年12月01日,第10巻, 第4号,p.238
【文献】中山 大輔 ほか,クミン種子水溶性抽出物の免疫賦活効果に関する研究,第71回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集,2017年04月28日,p.237
【文献】松田 茂樹,麦味噌麹のβ-グルカンおよびβ-グルカナーゼ,日本醸造協会誌,2001年,第96巻, 第8号,p.520-525
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Science Direct
医中誌WEB
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてエンド-1,3-β-D-グルカナーゼのみからなることを特徴とする免疫賦活用組成物。
【請求項2】
前記免疫賦活活性が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化からなる群から選択される少なくとも1つの免疫賦活活性である、請求項1に記載の免疫賦活用組成物。
【請求項3】
前記エンド-1,3-β-D-グルカナーゼが植物由来である、請求項1又は2に記載の免疫賦活用組成物。
【請求項4】
有効成分としてエンド-1,3-β-D-グルカナーゼのみからなることを特徴とする免疫賦活用食品組成物。
【請求項5】
前記免疫賦活活性が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化からなる群から選択される少なくとも1つの免疫賦活活性である、請求項4に記載の免疫賦活用食品組成物。
【請求項6】
前記エンド-1,3-β-D-グルカナーゼが植物由来である、請求項4又は5に記載の免疫賦活用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物に関し、具体的にはエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含む免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物に関する。本発明によれば、生体の免疫作用を賦活化することができる。
【背景技術】
【0002】
免疫賦活用組成物は、医療分野において各種疾患の治療にも使用されている。例えば、癌治療においては、化学療法や放射線治療に免疫増強剤を併用することにより治療効果の向上が認められている。
【0003】
一方、免疫賦活用組成物の投与により生体の免疫機能を向上させ、微生物又はウイルスによる感染症を予防したり、癌細胞を排除する予防医学も注目されている。この予防医学に用いられる免疫賦活用組成物は、日常的に摂取されるものである。従って、日常的に、安全に、そして簡便に摂取することができ、副作用の心配がなく、優れた効果が期待できる免疫賦活用組成物が望まれている。
例えば、特許文献1には、乳酸菌と共にD-マンノース、アラビノキシランなどの多糖類を共存させた免疫賦活剤が記載されている。また特許文献2には、トウモロコシ外皮から得られたヘミセルロースの部分分解物を有効成分とする免疫賦活剤が記載されている。しかしながら、更に安全で簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な免疫賦活作用を有する免疫賦活組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-8616号公報
【文献】特開2001-322942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、日常的に摂取することができ、副作用の心配がなく、優れた効果が期待できる免疫賦活用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、日常的に摂取することができ、副作用に心配がなく、優れた効果が期待できる免疫賦活用組成物について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼが優れた免疫賦活作用を有することを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むことを特徴とする免疫賦活組成物、
[2]前記免疫賦活活性が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化からなる群から選択される少なくとも1つの免疫賦活活性である、[1]に記載の免疫賦活組成物、
[3]前記エンド-1,3-β-D-グルカナーゼが植物由来である、[1]又は[2]に記載の免疫賦活組成物、
[4]エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むことを特徴とする免疫賦活用食品組成物、
[5]前記免疫賦活活性が、抗体産生促進活性、サイトカイン産生促進活性、及びマクロファージ活性化からなる群から選択される少なくとも1つの免疫賦活活性である、[4]に記載の免疫賦活用食品組成物、及び
[6]前記エンド-1,3-β-D-グルカナーゼが植物由来である、[4]又は[5]に記載の免疫賦活用食品組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の免疫賦活用組成物及び免疫賦活用食品組成物によれば、免疫作用を賦活化することができる。また、本発明の免疫賦活用組成物及び免疫賦活用食品組成物は、抗体産生の促進、サイトカイン産生の促進、及びマクロファージの活性化を行うことができる。本発明の免疫賦活用食品組成物は、安全性の高い飲食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】RAW264.7細胞にエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを添加して、培養上清中のIL-6およびTNF-α産生量を測定したグラフである。
図2】エンド-1,3-β-D-グルカナーゼのRAW264.7細胞に対する細胞毒性を測定したグラフである。
図3】エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物がHB4C5細胞のIgM産生を促進することを示したグラフである。
図4】エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物がRAW264.7細胞のIL-6、及びTNF-αの産生を促進することを示したグラフである。
図5】エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物が初代マウス腹腔内マクロファージ(P-Mac)のIL-6、及びTNF-αの産生を促進することを示したグラフである。
図6】エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物がRAW264.7細胞の一酸化窒素(NO)産生を促進することを示したグラフである。
図7】エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物がRAW264.7細胞の貪食活性を促進することを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]免疫賦活組成物
本発明の免疫賦活組成物は、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含む。
【0010】
《エンド-1,3-β-D-グルカナーゼ》
エンド-1,3-β-D-グルカナーゼは、加水分解される結合が、還元末端にあるグルコース残基のC-3位が置換されている場合、β-D-グルカンの(1→3)-結合をエンド型に加水分解する酵素である。
本発明の組成物に含まれるエンド-1,3-β-D-グルカナーゼは、前記エンド-1,3-β-D-グルカナーゼ活性を有する限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、大麦のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼは、GI、GII、及びGIIIの3つのアイソザイムを含むが、これらの3つのアイソザイムを、本発明の免疫賦活組成物の有効成分として用いることができる。
エンド-1,3-β-D-グルカナーゼの1つの実施態様として、配列番号1、2、3、4、又は5で表されるアミノ酸配列からなるエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを挙げることができる。
また、別のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼの実施態様として、配列番号1、2、3、4、又は5で表されるアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が挿入、置換、又は欠失、若しくはその一方または両末端への付加されたアミノ酸配列からなり、且つエンド-1,3-β-D-グルカナーゼ活性を有するエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを挙げることができる。
更に、別のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼの実施態様として、配列番号1、2、3、4、又は5で表されるアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が挿入、置換、又は欠失、若しくはその一方または両末端への付加されたアミノ酸配列を含み、且つエンド-1,3-β-D-グルカナーゼ活性を有するエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを挙げることができる。
本発明の組成物の有効成分であるエンド-1,3-β-D-グルカナーゼは、天然のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼでもよいが、遺伝子工学的に製造された組換えエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを使用することもできる。
【0011】
エンド-1,3-β-D-グルカナーゼの由来も特に限定されるものではない。例えば、動物由来又は植物由来のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを用いることができるが植物由来のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼが好ましい。動物由来のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼとしては、キタノニシキガイ(配列番号5)などの貝類由来のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼが挙げられる。エンド-1,3-β-D-グルカナーゼが得られる植物は、特に限定されるものではないが、大麦(配列番号1~3)、コムギ、エンバク、ライムギ、ハトムギなどの穀物、ジャガイモ(配列番号4)等のイモ類、クミン、コンブなどの海藻、キノコ、又は地衣類などの植物を挙げられるが、大麦又はクミン由来のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼが好ましい。
【0012】
《免疫賦活》
本発明の免疫賦活組成物が有する免疫賦活活性としては、例えば抗体産生促進活性、サイトカイン分泌促進活性、及びマクロファージの活性化が挙げられる。本発明の免疫賦活組成物は、前記のすべての免疫賦活活性を示してもよく、前記のいずれか1つの免疫賦活活性を示してもよい。
【0013】
(抗体産生促進)
抗体は、抗体産生細胞から産生される。本発明の免疫賦活組成物は、抗体産生細胞からの抗体の産生を促進する。抗体産生細胞は、好ましくは哺乳動物(ヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス)の細胞であり、最も好ましくはヒトの細胞である。また、抗体産生細胞は、インビボ又はインビトロの細胞であることができる。産生が促進される抗体は、好ましくは、IgM、IgA、及び/又はIgG抗体であり、最も好ましくは、IgM抗体である。
【0014】
(サイトカイン産生促進)
分泌が促進されるサイトカインとしては、例えばインターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、リンフォカイン、造血因子、細胞増殖因子、細胞傷害因子、アディポカイン、及び神経栄養因子などが挙げられる。インターロイキンとしては、IL1~35などが挙げられる。インターフェロンとしては、IFN-α、IFN-β、及びIFN-γなどが挙げられる。ケモカインとしては、MIP及びMCPなどが挙げられる。造血因子としては、SCF、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、エリスロポエチン、及びトロンボポエチンなどが挙げられる。細胞増殖因子としては、上皮成長因子、繊維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、肝細胞成長因子、及びトランスフォーミング成長因子などが挙げられる。細胞傷害因子としては、TNF-α及びTNF-βなどが挙げられる。アディポカインとしては、レプチンなどが挙げられる。神経栄養因子としては、NGFなどが挙げられる。好ましいサイトカインは、IL-4、IL-6、TNF-α及び/又はIFN-γである。分泌が促進されるサイトカインは、これらの1種であってもよく、又は2種以上であってもよい。
【0015】
(マクロファージ活性化)
本発明の免疫賦活組成物が奏する具体的なマクロファージ活性化の作用としては、例えば貪食活性促進、活性酸素産生促進、一酸化窒素産生促進、及び抗原提示機能の増強から選択される1つ又は2つ以上が挙げられる。
【0016】
マクロファージの貪食作用とは、マクロファージが、細菌、ウイルス、又は死細胞等の異物を取り込み、これらを分解する機能であり、食作用又はファゴサイトーシスとも呼ばれる。本発明の免疫賦活組成物は、このマクロファージの貪食作用を促進することができる。
【0017】
マクロファージは、微生物、ウイルス、及び癌細胞などの異物に対して強い毒性を示す、活性酸素、例えばスーパーオキサイド若しくは過酸化水素、又は一酸化窒素を産生することにより、これらの異物を殺傷又は排除する。本発明の免疫賦活組成物は、このマクロファージの活性酸素産生促進作用及び/又は一酸化窒素産生促進作用を促進することができる。
【0018】
抗原提示とは、抗原提示細胞が細菌などの抗原を細胞内へ取り込んで分解を行った後に、細胞表面へその一部を提示する機構である。マクロファージは、貪食作用により取り込みそして分解した細菌などをいくつかの断片にして、マクロファージ内に存在するMHCクラスII分子と結合させ、細胞表面に提示する。本発明の免疫賦活組成物は、このマクロファージの抗原提示機能を促進することができる。
【0019】
本発明の免疫賦活組成物の投与剤型としては、特には限定がなく、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は非経口剤を挙げることができる。
【0020】
前記経口剤は、例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
【0021】
非経口剤としては、例えば注射剤を挙げることができる。注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
【0022】
本発明の免疫賦活組成物は、限定されるものではないが、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを、例えば0.01~500mg/mL、好ましくは、0.1~400mg/mL、より好ましくは0.5~300mg/mL、さらに好ましくは1~200mg/mL、さらに好ましくは2~150mg/mL、最も好ましくは1~100mg/mLで含有することができる。
【0023】
本発明の免疫賦活組成物の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができるが、例えばエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを、0.1~1000mg/kg体重/日、好ましくは0.5~500mg/kg体重/日、より好ましくは1~250mg/kg体重/日、さらに好ましくは3~100mg/kg体重/日、さらに好ましくは5~50mg/kg体重/日、又は最も好ましくは8~30mg/kg体重/日であることができる。
【0024】
もちろん、上記の投与法は一例であり、他の投与法であってもよい。ヒトへの免疫賦活組成物の投与方法、投与量、投与期間、及び投与間隔等は、管理された臨床治験によって決定されることが望ましい。
【0025】
本発明の免疫賦活組成物は、ヒトに対して投与することができるが、投与対象はヒト以外の動物であってもよく、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、及びリス等のペット;牛及び豚等の家畜;マウス、ラット等の実験動物;並びに、動物園等で飼育されている動物等が挙げられる。
【0026】
本発明の免疫賦活組成物は、免疫賦活用医薬組成物であることができる。本発明の免疫賦活用医薬組成物の対象疾患としては、癌、免疫不全症、又は感染症を挙げられる。
【0027】
癌としては、舌癌、歯肉癌、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、上顎癌、鼻癌、鼻腔癌、喉頭癌、咽頭癌、神経膠腫、髄膜腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、甲状乳頭腺癌、甲状腺濾胞癌、甲状腺髄様癌、原発性肺癌、扁平上皮癌、腺癌、肺胞上皮癌、大細胞性未分化癌、小細胞性未分化癌、カルチノイド、睾丸腫瘍、前立腺癌、乳癌、乳房ペーシジェット病、乳房肉腫、骨腫瘍、甲状腺癌、胃癌、肝癌、急性骨髄性白血病、急性前髄性白血病、急性骨髄性単球白血病、急性単球性白血病、急性リンパ性白血病、急性未分化性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人型T細胞白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、小児性白血病、食道癌、胃癌、胃・大腸平滑筋肉腫、胃・腸悪性リンパ腫、膵・胆嚢癌、十二指腸癌、大腸癌、原発性肝癌、肝芽腫、子宮上皮内癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮腺癌、子宮腺扁平上皮癌、子宮体部腺類癌、子宮肉腫、子宮癌肉腫、子宮破壊性奇胎、子宮悪性絨毛上皮腫、子宮悪性黒色腫、卵巣癌、中胚葉性混合腫瘍、腎癌、腎盂移行上皮癌、尿管移行上皮癌、膀胱乳頭癌、膀胱移行上皮癌、尿道扁平上皮癌、尿道腺癌、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、滑液膜肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、ユーイング肉腫、皮膚扁平上皮癌、皮膚基底細胞癌、皮膚ボーエン病、皮膚ページェット病、皮膚悪性黒色腫、悪性中皮癌、転移性腺癌、転移性扁平上皮癌、転移性肉腫および中皮腫が挙げられる。
【0028】
免疫不全症としては、例えば、癌、再生不良性貧血、白血病、骨髄線維症、腎不全、糖尿病、肝疾患もしくは脾疾患に伴う免疫不全、ヒト免疫不全ウイルス感染症による後天性免疫不全症候群、及原発性免疫不全症候群が挙げられる。
【0029】
感染症としては、ヒト肝炎ウイルス、ヒトレトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒトTリンパ向性ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型もしくは2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、日本脳炎ウイルス、おたふくウイルス、インフルエンザウイルス、風邪ウイルス、重症急性呼吸器症候群を発症するウイルス、エボラウイルス、又は西ナイルウイルスによるウイルス感染症が挙げられる。また、感染症として、病原性原生動物、細菌、又は真菌による感染症が挙げられる。
【0030】
[2]免疫賦活用食品組成物
本発明の免疫賦活用食品組成物は、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含む。
本明細書における免疫賦活用食品組成物とは、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼと、食品又は飲料とを含むものを意味する。エンド-1,3-β-D-グルカナーゼとしては、前記「[1]免疫賦活組成物」に記載のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを限定することなく、使用することができる。
【0031】
食品としては、具体的には、サラダなどの生鮮調理品;ステーキ、ピザ、ハンバーグなどの加熱調理品;野菜炒めなどの炒め調理品;トマト、ピーマン、セロリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、及びアスパラガスなどの野菜及びこれら野菜を加工した調理品;クッキー、パン、ビスケット、乾パン、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム類、チューインガム、クラッカー、チップス、チョコレート及び飴等の菓子類;うどん、パスタ、及びそば等の麺類;かまぼこ、ハム、及び魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;チーズ、クリーム、及びバターなどの乳製品;みそ、しょう油、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、スープの素、麺つゆ、カレー粉、みりん、ルウ、シーズニングスパイス等の調味料類;豆腐などの大豆食品;こんにゃく;並びにサプリメントなどを挙げることができる。食品は、好ましくは、ルウ(例えばカレー用若しくはシチュー用のもの)、シーズニングスパイス、又はサプリメントが挙げられる。
【0032】
飲料としては、例えばコーヒー飲料;ココア飲料;前記の野菜から得られる野菜ジュース;グレープフルーツジュース、オレンジジュース、ブドウジュース、及びレモンジュース等の果汁飲料;緑茶、紅茶、煎茶、及びウーロン茶等の茶飲料;ビール、ワイン(赤ワイン、白ワイン、又はスパークリングワインなど)、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、及びリキュール類等のアルコール飲料;乳飲料;豆乳飲料;流動食;並びにスポーツ飲料などを挙げることができる。飲料は、好ましくは、スパイスティー(例えばハーブティー又はチャイ)が挙げられる。
【0033】
本明細書における食品又は飲料には、動物に対する飼料が含まれる。対象となる動物は、例えばヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス等が挙げられる。
【0034】
これらの食品又は飲料には、所望により、酸化防止剤、香料、酸味料、着色料、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、香辛料、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、植物油、動物油、糖及び糖アルコール類、ビタミン、有機酸、果汁エキス類、野菜エキス類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品添加物及び食品素材を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。これらの食品素材及び食品添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜決定することができる。
【0035】
これらの食品又は飲料は、例えばレトルト及びオートクレーブなどの加熱加圧滅菌、バッチ式殺菌、プレート殺菌、通電加熱殺菌、マイクロ波加熱殺菌、並びに、インジェクション及びインフュージョンなどのスチーム殺菌などの一般的な殺菌処理を行うことができる。
【0036】
食品及び飲料には、機能性食品(飲料)及び健康食品(飲料)が含まれる。本明細書において「健康食品(飲料)」とは、健康に何らかの効果を与えるか、あるいは、効果を期待することができる食品又は飲料を意味し、「機能性食品(飲料)」とは、前記「健康食品(飲料)」の中でも、生体調節機能(すなわち、免疫賦活機能)を充分に発現することができるように設計及び加工された食品又は飲料を意味する。機能性食品及び健康食品は、顆粒状、固形状、液状、カプセル状、ゲル状、又は錠剤状であることができる。
【0037】
クミン抽出物は、本発明の免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物の有効成分であるエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含む。このエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン抽出物をマウスに経口投与することによって、マウス生体内でIgMなどの抗体の産生が促進される。また、IL-4又はIL-6などのサイトカインの産生が促進される。本発明の免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物は、経口投与によって、免疫賦活活性を示すことができる。
【実施例
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
《実施例1》
本実施例では、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼの免疫賦活活性を解析した。
(エンド-1,3-β-D-グルカナーゼ溶液の調製)
大麦由来のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼ(Megazyme社)を滅菌水で2mg/mLに希釈し、0.45μmの滅菌フィルターでろ過滅菌した。また、コントロールとして、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼの溶解液(0.02%(w/v)アジ化ナトリウム-50%(v/v)グリセロール水溶液)を調製し、0.45μmフィルターでろ過滅菌したものを用いた。
【0040】
(サイトカイン産生)
マウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞(3.0×10cells/mL)を、96穴プレートに200μL/wellで播種し、12時間の前培養を行った。前培養後、培地を除去し、コントロール、及び各濃度のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを添加した10%FBS-DMEMで培養した。12時間培養後、培養上清を回収し、培養上清中のIL-6およびTNF-α産生量を酵素抗体法(Mouse IL-6 ELISA MAX Standard、BioLegend社製;Mouse TNF-α ELISA Ready-set-go、eBioscience社製)により定量した。結果を図1に示す。
【0041】
図1に示すように、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼの添加により、低濃度領域において、IL-6およびTNF-α産生が促進した。一方、IL-6においては、40μg/mL以上、TNF-αにおいては、200μg/mL以上の添加濃度において、産生促進効果の低下が認められた。
【0042】
エンド-1,3-β-D-グルカナーゼのRAW264.7細胞に対する毒性を評価した。種々の濃度のエンド-1,3-β-D-グルカナーゼで培養した後、WST-8法により生存率を評価した。その結果、図2に示したように1000μg/mLにおいて、有意な生存率の低下が認められたことから、高濃度域におけるIL-6及びTNF-α産生促進効果の低下は、細胞毒性によるものと推察された。
【0043】
《調製例1》
本調整例では、クミンの種子から、クミン水溶性抽出物を調製し、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼの含有を解析した。
クミン種子粉末を0.1g/mLとなるように10mM NaPB(リン酸緩衝液)で懸濁し、15回/分で24時間撹拌抽出した。4℃条件下で、遠心処理(1,2000rpm)を20分間行った後、上清を回収した。4℃条件下で、遠心処理(70,000rpm)を30分間行った後、上清を回収した。分画分子量14kDの透析膜を用いて10mM NaPBに対して一晩透析処理した。1M NaOHを用いてpHを7.4に合わせ、ポアサイズ0.45μmのフィルターで濾過滅菌したものをクミン水性溶媒抽出物(CCE)とした。
【0044】
得られたクミン水性溶媒抽出物を、MS/MSにより解析した。試料を脱塩し、アセトニトリル/トリフルオロ酢酸に溶出した。溶出した試料を自然乾燥させ、質量分析計によって解析した。得られたマススペクトルのピークの質量値からデータベース検索を行ったところ、クミン水性溶媒抽出物はエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含んでいた。
【0045】
《実施例2》
本実施例では、ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞に対するエンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物の抗体産生効果を検討した。
クミン水性溶媒抽出物を、ITES-ERDF培地にいくつかの濃度で添加した。ヒトハイブリドーマHB4C5細胞を5.0×10細胞/mLで播種し、6時間培養後、培養上清を回収した。抗ヒトIgM抗体(Cappel社製)、HRP標識抗ヒトIgM抗体(Abcam社製)、及び発色基質であるABTS(和光純薬社製)を用いて、ELISA法により培養液中のIgM抗体量を測定した。コントロールには10mM NaPB(リン酸緩衝液)を用いた。結果を図3に示す。HB4C5細胞の抗体産生において、コントロールに対し、エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物はIgM産生促進効果を示し、その効果は最も高いところで2.2倍程度であった。
【0046】
《実施例3》
本実施例では、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞に対するクミン水性溶媒抽出物のサイトカインの産生効果を検討した。
希釈したクミン水性溶媒抽出物を添加した10%FBS-DMEM培地で、マウス由来マクロファージ細胞株RAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法(Mouse IL-6 ELISA MAX Standard、BioLegend社製;Mouse TNF-α ELISA Ready-set-go、eBioscience社製)を用いて培養液中のIL-6、及びTNF-αの量を測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図4に示す。エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物は、IL-6及びTNF-αの産生促進効果を示した。
【0047】
《実施例4》
本実施例では、初代マウス腹腔内マクロファージ(P-Mac)に対するクミン水性溶媒抽出物のサイトカイン産生効果を検討した。
BALB/cマウス腹腔からマクロファージ(P-Mac)を回収し、希釈したクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS-RPMI1640培地でP-Mac(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、ELISA法を用いて、培養液中のIL-6、及びTNF-α量を測定した。ELISA法には、実施例3と同じキットを使用した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図5に示す。エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水溶性抽出物は、濃度依存的にIL-6及びTNF-αの産生を促進させることが分かった。最も産生が多い濃度においては、コントロールと比較して、IL-6産生は約75倍、TNF-α産生は約6倍の産生促進効果が認められた。
【0048】
《実施例5》
本実施例では、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞に対するクミン水性溶媒抽出物の一酸化窒素(NO)産生効果を検討した。一酸化窒素(NO)は活性酸素の一種であり、マクロファージはバクテリアを処理するために一酸化窒素を産生する。本実施例では、RAW264.7細胞のNO産生に及ぼすクミン水性溶媒抽出物の効果を検討した。
希釈したクミン水性溶媒抽出物を添加した10% FBS-DMEMでRAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を12時間培養した後、その培養液中のNO濃度をGriess法により測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図6に示す。エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物は、RAW264.7細胞において、一酸化窒素の産生を促進することが分かった。
【0049】
《実施例6》
本実施例では、マウスマクロファージ由来RAW264.7細胞の貪食活性に対するクミン水性溶媒抽出物の効果を検討した。
総タンパク質濃度1000μg/mLとなるようにクミン水性溶媒抽出物を添加した10%FBS-DMEM培地でRAW264.7細胞(3×10細胞/mL)を6時間培養した後、テキサスレッドで標識したザイモサンAを添加し、1時間培養した後、フローサイトメーターを用いてその貪食活性を測定した。コントロールには10mM NaPBを用いた。結果を図7に示す。エンド-1,3-β-D-グルカナーゼを含むクミン水性溶媒抽出物はRAW264.7細胞の貪食活性を有意に促進することが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の免疫賦活組成物及び免疫賦活用食品組成物は、免疫作用を賦活化することができる。さらに、本発明の免疫賦活用食品組成物は、免疫賦活作用を有し、かつ安全性の高い飲食品を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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