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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/56 20060101AFI20220325BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20220325BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C08G59/56
C08G59/66
C08G59/32
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018014193
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019131676
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】知場 亮太
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086271(JP,A)
【文献】特開2016-117851(JP,A)
【文献】特開2015-221866(JP,A)
【文献】特開2017-226808(JP,A)
【文献】特開平09-316178(JP,A)
【文献】特開2015-054897(JP,A)
【文献】特開平09-012683(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025505(WO,A1)
【文献】特開2003-226741(JP,A)
【文献】特開2015-178483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種、(B)下記一般式(b)、
(一般式(b)中、qは0~3の整数であり、RおよびRは、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基を表し、AおよびAは、それぞれ独立に単結合、または置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Xは、単結合、または二価の連結基を表す。)で表されるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種、および(C)ポリチオール化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、
(A)成分として、(A-1)下記一般式(a-1)、
(一般式(a-1)中、pは0、1または2を表し、mは0~50の整数を表し、R は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、A は、下記基;
の中から選ばれる基であり、*は結合手を表し、R およびR はそれぞれ独立に水素原子または非置換若しくはフッ素置換のメチル基を表し、vは4~12の整数を表す。)で表されるポリエポキシ化合物、および(A-2)エポキシ当量が110g/eq以下であり、エポキシ基を3個以上有するポリエポキシ化合物を含有し、(A)成分における、(A-1)成分および(A-2)成分の合計量が10~97.1質量%であり、(A-1)成分と(A-2)成分との質量比が1:18~18:1であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A-1)成分であるポリエポキシ化合物が、下記一般式(a-1-1)、
(一般式(a-1-1)中、nは0~50の整数を表す。)で表される化合物である請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(A-2)成分が、グリシジルアミン化合物の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記グリシジルアミン化合物が、下記一般式(a-2-1)、
(一般式(a-2-1)中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基を表し、sは0~4の整数を表す)、または下記一般式(a-2-2)、
(一般式(a-2-2)中、R10およびR11は、それぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R12はメチレン、エチリデン、またはイソプロピリデンを表し、tおよびuはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。)で表されるポリエポキシ化合物の中から選ばれる少なくとも一種である請求項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(A)エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種、(B)下記一般式(b)、
(一般式(b)中、qは0~3の整数であり、R およびR は、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R およびR はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R 、R およびR は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基を表し、A およびA は、それぞれ独立に単結合、または置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Xは、単結合、または二価の連結基を表す。)で表されるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種、および(C)ポリチオール化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、
(A)成分として、下記一般式(a-3)、
(一般式(a-3)中、R 13 およびR 14 は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。)で表されるポリエポキシ化合物を1~30質量%を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が、15~35℃で液状であるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1~5のうちいずれか一項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分が、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカブトプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8-、4,7-若しくは5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリルの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1~6のうちいずれか一項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(D)成分として、一般式(d)、
(一般式(d)中のrは0~3の整数を表し、R15およびR16はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基、Aは炭素原子数1~20のアルキレン基、またはアリーレン基、R17は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基またはアリール基、若しくは、置換基を有してもよく、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含むアルキル基を表す。)で表されるアミノシラン化合物を含有する請求項1~7のうちいずれか一項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
(D)成分が、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノオクチルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物である請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
(A)成分、(B)成分、および(C)成分が、5~35℃において互いに相溶し、均一で完全な液状である請求項1~7記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分が、5~35℃において互いに相溶し、均一で完全な液状である請求項8または9記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のうちいずれか一項記載のエポキシ樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ樹脂組成物、およびその硬化物に関し、詳しくは、エポキシ樹脂、イミダゾールシラン化合物およびポリチオール化合物を含有する、一液硬化型であり、貯蔵安定性および低温硬化性に優れ、かつ、特に金属面への接着性および耐膨潤性に優れたエポキシ樹脂組成物、およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、接着剤、封止剤、或いは塗料等、幅広い分野で利用されており、保存性に優れた二液型エポキシ樹脂が一般的である。しかしながら、使用時に主剤と硬化剤の混合操作が必要である上、作業中に増粘が進行するので作業性が悪いという欠点があった。
【0003】
そこで、近年、使用時に主剤と硬化剤を混合するという操作が不要であると共に、作業性に優れた一液型エポキシ樹脂組成物が使用されるようになってきた。このような一液型エポキシ樹脂組成物に用いられる潜在性硬化剤は、通常、常温では数μmの固体粒子であって、液状のエポキシ樹脂に分散されている。この潜在性硬化剤の固体粒子は、常温ではエポキシ樹脂と相分離しているので硬化反応を引き起こし難く、加熱した場合にエポキシ樹脂と溶け合って硬化反応を引き起こすので、固体分散型潜在性硬化剤と呼ばれている。このような固体分散型潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、アミンアダクト化合物等の各種の化合物や、アミンやイミダゾールをマイクロカプセル化したもの等が知られている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、固体分散型の潜在性硬化剤を含有させた樹脂組成物を含浸接着剤として使用した場合には、液状のエポキシ樹脂のみが隙間に深く浸透し、硬化剤である固体粒子は隙間に十分侵入することができないため、硬化が不均一になる場合があり、極端な場合には、隙間部分が全く硬化しない場合も生じる等の欠点があった。
【0005】
また、固体分散型の潜在性硬化剤を使用した樹脂組成物の、塗料やコーティング剤の場合には、硬化剤とエポキシ樹脂が硬化時に均一に混じり合うことができないような、塗布厚みが極めて薄い部分があると、硬化膜が不均一になったり、部分的に未硬化の部分が生じたりする等の欠点もあった。
【0006】
このような欠点を解決することが可能な、完全液状の一液型エポキシ樹脂組成物としては、例えば、特許文献1では、硬化剤として三フッ化ホウ素のアミン錯体を使用したものが提案されている。
【0007】
一方、二液型の硬化性エポキシ樹脂組成物においては、常温硬化性を改善するために、3級アミン触媒と共にチオール基を有する化合物を使用した樹脂組成物が広く知られている。これを一液型に改良した樹脂組成物として、特許文献2では、3級アミンの代わりに潜在的アルカリ触媒を使用した樹脂組成物も提案されている。
【0008】
また、特許文献3では、一液硬化型であって、安定性に優れ、かつ、接着性、耐膨潤性等に優れたものとして、特定のエポキシ樹脂、特定のイミダゾール化合物およびポリチオール化合物を組み合わせた完全液状の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物が提案されている。また、特許文献4では、接着性を向上させるために、特定のイミダゾールシラン化合物を含有したエポキシ樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-52942号公報
【文献】特開平2-36220号公報
【文献】特開2015-221866号公報
【文献】特開平9-12683号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】「総説エポキシ樹脂」エポキシ樹脂技術協会編、2003年11月19日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1で提案されている、完全液状の一液型エポキシ樹脂組成物は、硬化時に腐食性で危険なフッ化水素ガスを発生するという欠点があった。また、特許文献2で提案されている、潜在的アルカリ触媒を使用した樹脂組成物は、空気中の湿気や周囲の水分によって硬化するものであるので、その用途は極めて限定されていた。さらに、特許文献3で提案されている、完全液状の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、近年、電子機器等の精密化によって、金属面への接着性、さらには、耐膨潤性に対する要求が一層高まっているが、それに十分に対応するものではなかった。さらにまた、特許文献4で提案されているエポキシ樹脂組成物であっても、金属面への接着性および耐膨潤性を十分に向上させることができていなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、一液硬化型であり、貯蔵安定性および低温硬化性に優れ、かつ、特に金属面への接着性および耐膨潤性に優れたエポキシ樹脂組成物、およびその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成とすることで、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種、(B)下記一般式(b)、
(一般式(b)中、qは0~3の整数であり、RおよびRは、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基を表し、AおよびAは、それぞれ独立に単結合、または置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Xは、単結合、または二価の連結基を表す。)で表されるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種、および(C)ポリチオール化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、(A)成分として、(A-1)下記一般式(a-1)、
(一般式(a-1)中、pは0、1または2を表し、mは0~50の整数を表し、Rは炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Aは、下記基;
の中から選ばれる基であり、*は結合手を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または非置換若しくはフッ素置換のメチル基を表し、vは4~12の整数を表す。)で表されるポリエポキシ化合物、および(A-2)エポキシ当量が110g/eq以下であり、エポキシ基を3個以上有するポリエポキシ化合物を含有し、(A)成分における、(A-1)成分および(A-2)成分の合計量が10~97.1質量%であり、(A-1)成分と(A-2)成分との質量比が1:18~18:1であることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、(A-1)成分であるポリエポキシ化合物は、下記一般式(a-1-1)、
(一般式(a-1-1)中、nは0~50の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、(A-2)成分は、グリシジルアミン化合物の中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、前記グリシジルアミン化合物は、下記一般式(a-2-1)、
(一般式(a-2-1)中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基を表し、sは0~4の整数を表す)、または下記一般式(a-2-2)、
(一般式(a-2-2)中、R10およびR11は、それぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R12はメチレン、エチリデン、またはイソプロピリデンを表し、tおよびuはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。)で表されるポリエポキシ化合物の中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0018】
さらにまた、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種、(B)下記一般式(b)、
(一般式(b)中、qは0~3の整数であり、RおよびRは、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基を表し、AおよびAは、それぞれ独立に単結合、または置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Xは、単結合、または二価の連結基を表す。)で表されるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種、および(C)ポリチオール化合物の中から選ばれる少なくとも一種を含有し、(A)成分として、下記一般式(a-3)、
(一般式(a-3)中、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。)で表されるポリエポキシ化合物を1~30質量%を含有することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(B)成分は、15~35℃で液状であるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)成分は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカブトプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8-、4,7-若しくは5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリルの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0021】
さらにまた、本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、(D)成分として、一般式(d)、
(一般式(d)中のrは0~3の整数を表し、R15およびR16はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基、Aは炭素原子数1~20のアルキレン基、またはアリーレン基、R17は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基またはアリール基、若しくは、置換基を有してもよく、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含むアルキル基を表す。)で表されるアミノシラン化合物を含有することが好ましく、(D)成分は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノオクチルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランからなる群の中から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0022】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分が、5~35℃において互いに相溶し、均一で完全な液状であることが好ましく、(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分が、5~35℃において互いに相溶し、均一で完全な液状であることが、より好ましい。
【0023】
本発明の硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物が硬化されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一液硬化型であり、貯蔵安定性および低温硬化性に優れ、かつ、特に金属面への接着性および耐膨潤性に優れたエポキシ樹脂組成物、およびその硬化物を提供することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、一液硬化型であるため作業性に優れており、かつ、基材への接着性に優れ、特定のエポキシ樹脂の組み合わせを使用することで硬化物の膨潤性に優れたものも提供し得るものであり、産業上極めて有意義である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の中から選ばれる少なくとも一種と、(B)下記一般式(b)で表されるイミダゾールシラン化合物の中から選ばれる少なくとも一種と、(C)ポリチオール化合物の中から選ばれる少なくとも一種と、を含有する。
【0026】
ここで、一般式(b)中、qは0~3の整数であり、RおよびRは、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基を表す。AおよびAは、それぞれ独立に単結合、または置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Xは、単結合、または二価の連結基を表す。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物の(A)成分であるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が70~3000g/eqであることが好ましく、特に90~2000g/eqのものが好ましい。エポキシ当量が70g/eq未満では、硬化物の物性が低下するおそれがあり、3000g/eqよりも大きい場合には、十分な硬化性が得られないおそれがある。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物の(A)成分であるエポキシ樹脂には、(A-1)成分として、一般式(a-1)で表されるポリエポキシ化合物を使用することが好ましい。これにより、本発明のエポキシ樹脂組成物が硬化した後の耐熱性および耐薬品性のバランスが良くなる。
【0029】
ここで、一般式(a-1)中、pは0、1または2を表し、mは0~50の整数を表し、Rは水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Aは、下記基;
の中から選ばれる基であり、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子または非置換若しくはフッ素置換のメチル基、vは4~12の整数である。
【0030】
一般式(a-1)中、Rで表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル等が挙げられる。
【0031】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A-1)成分であるポリエポキシ化合物として、一般式(a-1-1)で表されるポリエポキシ化合物を用いることにより、特に溶剤によって膨潤することのない硬化物が得られるため特に好ましい。
【0032】
一般式(a-1-1)中、nは0~50の整数を表す。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物の(A)成分であるエポキシ樹脂には、(A-2)成分として、エポキシ当量が110g/eq以下であり、エポキシ基を3個以上有するポリエポキシ化合物を含有することが好ましい。これにより、本発明の一液硬化型エポキシ樹脂組成物が硬化した後の耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。
【0034】
(A-2)成分であるエポキシ樹脂は、グリシジルアミノ化合物の中から選ばれる少なくとも一種、とりわけ、一般式(a-2-1)または一般式(a-2-2)で表されるエポキシ化合物の中から選ばれる少なくも一種であることにより、硬化後の耐熱性および耐薬品性に対して特に優れた向上効果があるため特に好ましい。
【0035】
一般式(a-2-1)中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基を表し、sは0~4の整数を表す。炭素原子数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、イソヘプチル、tert-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、tert-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられる。
【0036】
式中、R10およびR11は、それぞれ独立して炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R12はメチレン、エチリデン、またはイソプロピリデンを表し、tおよびuはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。炭素原子数1~10のアルキル基としては、Rと同じものが挙げられる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、(A)成分であるエポキシ樹脂として、一般式(A-1)で表されるポリエポキシ化合物と、一般式(A-2)で表されるポリエポキシ化合物をそれぞれ単独で使用することもできるが、これらを併用して用いることによって硬化した後の耐熱性、耐薬品性、作業性等に優れたものが得られるためより好ましい。併用する場合においては、(A)成分であるエポキシ樹脂に、(A-1)成分であるポリエポキシ化合物および(A-2)成分であるポリエポキシ化合物の合計量が10~95質量%であり、(A-1)成分と(A-2)成分との質量比が1:18~18:1であることが好ましい。その質量比が1:18より小さい場合には、硬化物の耐熱性等が充分でないおそれがあり、18:1を超えた場合には、高粘度で作業性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0038】
(A)成分であるエポキシ樹脂成分として、さらに、一般式(a-3)で表されるエポキシ化合物を含有することが好ましく、これにより、作業性および接着性のバランスを改善することができる。
【0039】
ここで、一般式(a-3)中、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。
【0040】
本発明においては、一般式(a-3)で表される化合物を、(A)成分であるエポキシ樹脂100質量部に対し1~30質量部含有することが、作業性および接着性のバランスをとる上から好ましい。1質量%より少ないと十分な作業性および接着性が得られない場合があり、30質量%より多いと耐熱性および耐薬品性等の硬化物の物性が損なわれる場合がある。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用する(B)成分は、硬化触媒として作用する成分であり、一般式(b)で表されるイミダゾールシラン化合物を使用する。
【0042】
一般式(b)中、qは0~3の整数であり、RおよびRは、炭素原子数1~6のアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有してもよい芳香族基を表し、AおよびAは、それぞれ独立に単結合、または置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基を表し、Xは、単結合、または二価の連結基を表す。
【0043】
一般式(b)中、RおよびRで表される炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第二アミル基、第三アミル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0044】
、RおよびRで表される置換基を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0045】
、RおよびRで表される置換基を有してよい芳香族基において、芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0046】
、RおよびRで表される置換基を有してよいアルキル基および芳香族基において、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、テトラフルオロエチル基、テトラクロロエチル基等のハロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、第二ブトキシ基、イソブトキシ基、第三ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、およびデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、およびシクロヘキシルオキシ基等のシクロアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基等のアリール基;フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、および2-ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フェニル-C1~C12アルキル基、ナフチル-C1~C12アルキル基、およびアントラセニル-C1~C12アルキル基等のアリールアルキル基;フェニル-C1~C12アルコキシ基、およびナフチル-C1~C12アルコキシ基等のアリールアルコキシ基;チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、およびイソキノリル基等の複素環基;アミノ基;シリル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、およびベンゾイル基等のアシル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、およびベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;カルボキシ基;スルホ基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;メルカプト基;オキソ基等が挙げられる。
【0047】
およびAで表される炭素原子数1~20のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン基、ノルボナニレン基、アンダマンタニレン基等が挙げられる。
【0048】
Xで表される二価の連結基としては、例えば、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、-NH-、ウレア結合、ウレタン結合等が挙げられる。
【0049】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用する(B)成分であるイミダゾールシラン化合物としては、室温で液状のイミダゾールシラン化合物が好適に使用される。なお、室温で液状とは、15~35℃において液状であるものである。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用する(B)成分としては、例えば、下記に例示した化合物が挙げられるが、本発明のエポキシ樹脂組成物はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物の(B)成分であるイミダゾールシラン化合物は、市販品を使用することが可能であり、例えば、四国化成工業(株)製;2MUSIZが好ましく使用される。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、(A)成分100質量部に対して使用する(B)成分の使用量を0.1~10質量部とすることが好ましく、特に0.5~5質量部とすることが好ましい。0.1質量部よりも少ないと十分な硬化性が得られず、10質量部より多い場合には、硬化後の本発明の樹脂組成物が十分な耐熱性を得ることができないなど、硬化物としての物性が低下する場合がある。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用する(C)成分のポリチオール化合物は、硬化剤として作用する化合物であり、例えば、脂肪族ポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物、エーテル結合を有するポリチオール化合物、エステル結合を有するポリチオール化合物、その他特殊構造を有するポリチオール化合物等が挙げられ、これらのポリチオール化合物をエポキシ化合物で付加変性したものも使用することができる。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、これらポリチオール化合物の中でも、特に、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-1,3,4,6-テトラアザオクヒドロペンタレン-2,5-ジオン、1,3,5-トリス(3-メルカブトプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、4,8-、4,7-若しくは5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリルを使用することが、貯蔵安定性と硬化性のバランスに優れるので好ましい。これら好ましいチオール化合物の市販品としては、例えば、四国化成工業(株)製TS-G、SC有機化学(株)製DPMP、PEMP、淀化学(株)PETG等が挙げられる。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物における(A)成分と(C)成分との使用比率は、(チオール当量数/エポキシ当量数)換算で、通常0.2~2.0とすることが好ましい。0.2よりも少ないと十分な速硬化性が得られない場合があり、2.0より多いと耐熱性などの硬化物の物性が損なわれる場合がある。本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化物の物性が安定するという観点から、上記比(チオール当量数/エポキシ当量数)が0.5~1.5であることが好ましい。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、含浸接着剤や薄膜均一塗布性を必要とする用途に使用する場合には、(A)成分、(B)成分および(C)成分が常温(5~35℃)において互いに相溶して完全に均一な液状となることが必要であるが、それ以外の用途に使用する場合には、分離することなく混合されていればよく、常温で完全に液状となるように、(A)、(B)および(C)成分が互いに相溶することは必須の条件とはならない。
【0061】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、(D)成分として、(B)成分とは異なるシランカップリング剤を使用することにより、硬化性と接着性のバランスを取ることが可能であるため好ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えば、一般式(d)で表されるアミノシラン化合物が好ましい。含浸接着剤や薄膜均一塗布性を必要とする用途に使用する場合には、(A)~(D)成分が常温(5~35℃)において互いに相溶して完全に均一な液状となることが必要であるが、それ以外の用途に使用する場合には、分離することなく混合されていればよく、常温で完全に液状となるように、(A)~(D)成分が互いに相溶することは必須の条件とはならない。
【0062】
ここで、一般式(d)中のrは0~3の整数を表し、R15およびR16は炭素原子数1~4のアルキル基、Aは炭素原子数1~20のアルキレン基またはアリーレン基、R17は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基またはアリール基、若しくは、置換基を有してもよく、酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含むアルキル基を表す。
【0063】
一般式(d)中、R15およびR16で表される炭素原子数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル、第三ブチル等が挙げられ、Aで表される炭素原子数1~20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、デカヒドロナフタレン基、ノルボナニレン基、アンダマンタニレン基等が挙げられ、Aで表される炭素原子数1~20のアリーレン基としては、例えば、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等が挙げられる。
【0064】
一般式(d)中、R17で表される炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第二アミル基、第三アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基等が挙げらる。
【0065】
17で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0066】
17で表される置換基を有してよいアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メルカプトエチル基等が挙げられる。
【0067】
一般式(d)で表されるアミノシラン化合物としては、例えば、3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノオクチルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0068】
これら(D)成分であるイミダゾールシラン化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、(A)成分、(B)成分および(C)成分の総量100質量部に対し、0.1~10質量部、好ましくは、0.5~5質量部であり、0.1質量部では添加する効果が充分に得られず、10質量部を超えて使用した場合には、硬化物性など悪影響を及ぼすおそれがあるため好ましくない。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、必要に応じて、上述のイミダゾール化合物以外の硬化触媒;モノグリシジルエーテル類、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の反応性または非反応性の希釈剤(可塑剤);ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質等の充填剤または顔料;キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の公知の添加物を含有してもよく、更に、キシレン樹脂や石油樹脂等の、粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0070】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、塗料、接着剤、粘着剤、コーティング剤、繊維集束剤、建築材料、電子部品等の広範な用途に使用できるものであるが、とりわけ、電子回路基板に用いられる積層板、電子部品に用いられる封止剤や接着剤、コピー機あるいは印刷機等の電気機器用の接着剤等の電子機器用途に特に好適に使用することができる。
【実施例
【0071】
次に、本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0072】
下記表1~3に示した配合でエポキシ樹脂組成物を調製し、下記の評価を実施した。結果を表1、2に併記する。
【0073】
EP1:XD-1000(日本化薬(株)製エポキシ樹脂、エポキシ当量245~260g/eq)
EP2:EPPN-502H(日本化薬(株)製エポキシ樹脂、エポキシ当量158~178g/eq)
EP3:ジシクロペンタジエンジメタノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/eq)
EP4:下記アミノフェノールエポキシ樹脂(エポキシ当量95g/eq)
EP5:下記グリシジルアミン型エポキシ樹脂(エポキシ当量110g/eq)
T-1:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
T-2:1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル
IM-1:四国化成工業(株)製;2MUSIZ
IM-2:1-ベンジル-2-メチルイミダゾール
C-1:N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン
C-2:N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン
C-3:3-アミノプロピル-トリメトキシシラン
C-4:3-アミノプロピル-トリエトキシシラン
【0074】
(接着性)
SUS板に各樹脂組成物を厚み100μmで塗布した後、幅2.5mmの銅箔の半分を樹脂組成物に付着せさ、90℃、1時間で樹脂組成物を硬化させた。その後、万能型ボンドテスター4000plus(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー(株)製)を用いて、剥離速度0.2mm/sの条件で、90度ピール試験を行った。接着強度の値について、以下の指標に従い評価を行った。
A:接着強度が1.3N/mm以上
B:接着強度が1.1N/mm以上 1.3N/mm未満
C:接着強度が0.9N/mm以上 1.1N/mm未満
D:接着強度が0.9N/mm未満
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、実用レベルを考慮し、AまたはBを評価良好とし、CまたはDを評価不良と判断した。
【0075】
(耐膨潤性)
得られたエポキシ樹脂組成物を90℃で1時間硬化させ、大きさ10mm×10mm×1mmの評価試験片を作製した。試験片をN-メチルピロリドン/水=1/1の溶液に浸し、60℃で48日間膨潤させた。評価試験片の膨潤前後の重量を測定し、次式により膨潤率を求めた。膨潤率=(膨潤後の重量/膨潤前の重量)×100〔%〕
A:10%未満
B:10%~15%未満
C:15%~20%未満
D:20%以上
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、実用レベルを考慮し、AまたはBを評価良好とし、CまたはDを評価不良と判断した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
表1~3から明らかなように、エポキシ樹脂、ポリチオール化合物を使用する系に対し、エポキシ樹脂組成物は、接着性に劣るものしか得られない。これに対して、エポキシ樹脂、ポリチオール化合物およびイミダゾールシラン化合物を組み合わせて得られるエポキシ樹脂組成物を使用することで、基材への接着性が優れるものが得られる。中でも、エポキシ樹脂として、特定の組み合わせにおいては膨潤性に優れた硬化物が得られる。