(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20220325BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20220325BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20220325BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220325BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20220325BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J183/07
C09J183/05
C09J7/38
C09J7/10
(21)【出願番号】P 2020535940
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2019031808
(87)【国際公開番号】W WO2020032285
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018151131
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-209104(JP,A)
【文献】特開平05-214316(JP,A)
【文献】特開平07-197008(JP,A)
【文献】特開平06-228526(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が4500未満であるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)有効量のヒドロシリル化反応触媒、および
任意で、(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサン
を含有してなり、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲にあり、当該組成物の硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にある、感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が4500未満であるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサン
を含有してなり、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が0.9~2.4の範囲にあり、かつ、
(A)成分と(A´)成分の質量比が95:5~60:40の範囲にあり、
当該組成物の硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にある、感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
当該組成物の硬化により得られる厚み50μmの感圧接着層の、厚み2mmのポリメチルメタクリレートシートに対する、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が360~3000gf/inchの範囲であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(A)成分の少なくとも一部が、(A1)25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度が50~200の範囲にある生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり、そのアルケニル基中のビニル(CH
2=CH)部分の含有量が0.005~0.400質量%の範囲にある鎖状オルガノポリシロキサンであり、
(B)成分であるオルガノポリシロキサンレジンが、R
3SiO
1/2単位(式中、Rは一価有機基であり、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である;M単位)及びSiO
4/2単位(Q単位)から実質的になるオルガノポリシロキサンレジンであり、
(C)成分の量が、上記の(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基の物質量の和に対する(C)成分中のSiH基の物質量の比(モル比)が0.1~100となる量であり、
(D)成分の量が、組成物中の固形分中の白金系金属の含有量が0.1~200ppmの範囲であり、かつ、
組成物中に、(B)成分以外のオルガノポリシロキサンレジンを実質的に含まないことを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(C)成分の量が、上記の(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基の物質量の和に対する(C)成分中のSiH基の物質量の比(モル比)が20~60となる量である請求項1~4のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着剤層。
【請求項7】
フィルム状基材上に、請求項1~5のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着剤層を備えた積層体。
【請求項8】
1または2以上のフィルム状基材に当該感圧接着剤層に対する剥離層が設けられている、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
フィルム状基材、
該フィルム状基材上に形成された第1剥離層、
該剥離層上に請求項1~5のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を塗工し硬化させて形成された感圧接着層、及び
該感圧接着層上に積層された第2剥離層
を含む、請求項7または請求項8の積層体。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる、弾性粘着部材。
【請求項11】
請求項10に記載の弾性粘着部材を含む電子機器または電気的装置。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる、スピーカー用のメンブレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着層を形成する硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物に関する。詳細には、本発明は、実用上十分な硬化性および粘着力を有し、かつ、低温を含む幅広い温度領域において、せん断貯蔵弾性率G’が比較的低い硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物に関するものである。また、本発明は、当該組成物を用いる感圧接着剤組成物、当該組成物を用いた積層体、電子部品または表示装置(フレキシブルディスプレイやタッチパネル等含む)等の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン系感圧接着剤組成物は、アクリル系やゴム系の感圧接着剤組成物と比較して、電気絶縁性、耐熱性、耐寒性、各種被着体に対する粘着性に優れるので、耐熱性粘着テープ、電気絶縁性粘着テープ、ヒートシールテープ、メッキマスキングテープ等に使用されている。これらのポリシロキサン系感圧接着剤組成物は、その硬化機構により、付加反応硬化型、縮合反応硬化型、パーオキサイド硬化型などに分類される。室温放置もしくは加熱によって速やかに硬化し、副生物を発生しないので、付加反応硬化型の感圧接着剤組成物が汎用されている。
【0003】
ポリシロキサン系感圧接着剤の上記特性および必要に応じて高い透明性を実現できる性質を生かし、近年、スマートデバイス等の先端エレクトロニクス材料および表示素子分野への応用が検討されている。このようなデバイスは、電極層、表示層を含む複数層からなるフィルムを透明基材の間に挟みこんだ構造をとっており、電極層、表示層の保護および層間の接着性改良を目的に、耐熱・耐寒性に優れるポリシロキサン系感圧接着剤が有効に作用することが期待される。
【0004】
特に近年の材料開発においては、-20℃等の低温を含む幅広い温度領域において、貯蔵弾性率(たとえばせん断貯蔵弾性率G’)が比較的低く、かつ、硬化性に優れ、実用上十分な粘着力を有するポリシロキサン系感圧接着剤組成物が求められているが、公知の文献等に記載された感圧接着剤組成物はこれらの特性を十分に満足するものではなく、未だ、改善の余地を残している。
【0005】
例えば、特許文献1には、粘着ゴムシートが開示されているが、そのレジン成分およびシロキサンポリマー成分の比率においてレジン成分の含有量が少なく、分子量や水酸基の含有量等の特定の性質を備えたレジン成分を組み合わせて使用することはなんら記載も示唆もされていない。さらに、当該粘着ゴムシートは微粉末シリカ等を使用しており、本発明の目的とする貯蔵弾性率(G’)を充足するものではない。
【0006】
同様に、特許文献2には、数平均分子量950~1600のオルガノポリシロキサンレジンを用いるシリコーン感圧接着剤が開示されているが、特に分子量において異なり、かつ、水酸基の含有量等の特定の性質を備えたレジン成分を組み合わせて使用することはなんら記載も示唆もされていない。さらに、当該シリコーン感圧接着剤は、一定の粘着力を有するものであるが、本発明の目的とする貯蔵弾性率(G’)を充足するものではない。
【0007】
一方、特許文献3には、ポリマー成分に対するレジン成分の物質量比が0.5~1.0の範囲であり、低温および室温における貯蔵弾性率G’の差が小さいことを特徴とする透明樹脂接着層を備えた積層体が提案されている。しかしながら、当該透明樹脂接着層は縮合反応性のものしか具体的に開示されておらず、工業的に利用するには硬化反応が遅過ぎるという問題がある。さらに、当該透明樹脂接着層は、本発明の目的とする貯蔵弾性率(G’)および実用上十分な粘着力を充足するものではない。
【0008】
ここで、本件出願人らは、特許文献4においてフレキシブル積層体用途において、十分な弾性率と損失係数(tanδ)を有する硬化層を形成可能な硬化性シリコーン組成物を提案している。しかしながら、その実施例等で具体的に開示された組成は、その一部において、重量平均分子量の異なるレジン成分の組み合わせを開示するものであるが、本発明の課題を十分に解決できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-225420号公報
【文献】特開平05-214316号公報
【文献】国際特許公開2017-082654号公報
【文献】国際特許公開2017-188308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、貯蔵弾性率(G’) が比較的低く、かつ、硬化性に優れ、実用上十分な粘着力を有する感圧接着層を形成する、硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物またはその硬化物の、感圧接着層としての使用、広汎な用途における弾性粘着部材としての使用およびそれらを備えた機器または装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的の一つは、ヒドロシリル化反応硬化性の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物において、分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、分子量が小さいオルガノポリシロキサンレジンを使用し、分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含む鎖状オルガノポリシロキサンに対するオルガノポリシロキサンレジンの質量比を0.9~1.8の範囲に調整し、かつ、当該組成物の硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にある感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物により達成される。
【0012】
また、上記課題は、ヒドロシリル化反応硬化性の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物において、分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、分子量が小さいオルガノポリシロキサンレジンを使用し、分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサンを含有してなり、分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサンと分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含む鎖状オルガノポリシロキサンの和に対するオルガノポリシロキサンレジンの質量比を0.9~2.4の範囲に調整し、かつ、分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含む鎖状オルガノポリシロキサンと分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサンとを質量比が95:5~60:40の範囲となるように調整することで、当該組成物の硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にある感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物により達成される。
【0013】
また、上記課題は、これらの硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物またはその硬化物の、感圧接着層としての使用、電子材料または表示装置用部材としての使用およびそれらを備えた電子部品または表示装置により達成されうる。
【0014】
すなわち、本発明は、
「[1](A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が4500未満であるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)有効量のヒドロシリル化反応触媒、および
任意で、(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサン
を含有してなり、(A)成分に対する(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲にあり、当該組成物の硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にある、感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物
[2](A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が4500未満であるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサン
を含有してなり、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が0.9~2.4の範囲にあり、かつ、
(A)成分と(A´)成分の質量比が95:5~60:40の範囲にあり、
当該組成物の硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にある、感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]当該組成物の硬化により得られる厚み50μmの感圧接着層の、厚み2mmのポリメチルメタクリレートシートに対する、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が360~3000gf/inchの範囲であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。[4](A)成分の少なくとも一部が、(A1)25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度が50~200の範囲にある生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり、そのアルケニル基中のビニル(CH2=CH)部分の含有量が0.005~0.400質量%の範囲にある鎖状オルガノポリシロキサンであり、
(B)成分であるオルガノポリシロキサンレジンが、R3SiO1/2単位(式中、Rは一価有機基であり、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基である;M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)から実質的になるオルガノポリシロキサンレジンであり
(C)成分の量が、上記の(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基の物質量の和に対する(C)成分中のSiH基の物質量の比(モル比)が0.1~100となる量であり、
(D)成分の量が、組成物中の固形分中の白金系金属の含有量が0.1~200ppmの範囲であり、かつ、
組成物中に、(B)成分以外のオルガノポリシロキサンレジンを実質的に含まないことを特徴とする、
[1]~[3]のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[5](C)成分の量が、上記の(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基の物質量の和に対する(C)成分中のSiH基の物質量の比(モル比)が20~60となる量である[1]~[4]のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着剤層。
[7]フィルム状基材上に、[1]~[5]のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着剤層を備えた積層体。
[8]1または2以上のフィルム状基材に当該感圧接着剤層に対する剥離層が設けられている、[7]に記載の積層体。
[9]フィルム状基材、
該フィルム状基材上に形成された第1剥離層、
該剥離層上に[1]~[5]のいずれか1項に記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を塗工し硬化させて形成された感圧接着層、及び
該感圧接着層上に積層された第2剥離層
を含む、[7]または[8]の積層体。
[10][1]~[5]のいずれか1項記載の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる、弾性粘着部材。
[11][10]に記載の弾性粘着部材を含む電子機器または電気的装置。」
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応による硬化性に優れ、硬化して、実用上十分な接着力を備え、かつ、貯蔵弾性率(G’) の設計の自由度が高く、-20℃におけるせん断貯蔵弾性率Gが比較的低く、実用上十分な接着性を有する感圧接着層を形成することができる。さらに、当該硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物またはその硬化物は、感圧接着層、電子材料または表示装置用部材として好適に使用することができ、それらを備えた電気・電子部品または表示装置は、上記の要求特性を充足して硬化不良の問題、低温を含めた幅広い温度領域における接着層の粘弾性が十分と成るので、低温から室温を含む温度領域において、電子部品等の基材に対する密着不良の問題を生じにくい感圧接着層を形成することができるため、工業化が容易であり、かつ、得られる表示デバイス等の積層体の性能改善が期待されるという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物]
まず、本発明にかかる感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物について説明する。当該組成物は、ヒドロシリル化反応を含む硬化反応により速やかに硬化し、-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が比較的低く、実用上十分な粘着力を有する感圧接着層を形成するものである。以下、その各構成成分、技術的特徴であるオルガノポリシロキサンレジンの範囲、その鎖状オルガノポリシロキサンに対するオルガノポリシロキサンレジンの質量比、および感圧接着層の特性について説明する。
【0017】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記のとおり、ヒドロシリル化反応により硬化して一定の粘着力を有する感圧接着層を形成するものであり、当該組成において、分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、分子量が小さいオルガノポリシロキサンレジンを使用し、かつ、主剤であるアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサンに対するオルガノポリシロキサンレジンの配合の範囲が特定の範囲にある。当該特徴を有する組成物の硬化により得られる感圧接着層は、-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲であり、好適には、さらに、一定の粘着力を有するものである。
【0018】
具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、
(A)分子内に平均して1を超える数のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサン、
(B)分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が4500未満であるオルガノポリシロキサンレジン
(C)分子内に少なくとも2個のSi-H結合を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)有効量のヒドロシリル化反応触媒、および
必要に応じて、(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサン
を含有してなる。また、当該組成物は、ヒドロシリル化反応触媒を含むので、取扱作業性の見地から、さらに、(E)硬化遅延剤を含有してもよく、本発明の目的に反しない範囲で、その他の添加剤を含むものであってよい。一方、本発明において、オルガノポリシロキサンレジンとして低分子量のものを選択的に使用するので、上記の(B)成分以外のオルガノポリシロキサンレジンを実質的に含まないことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0019】
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、鎖状のポリシロキサン分子であり、この組成物の主剤(ベースポリマー)であり、1分子中に平均して1を超える数のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有し、好適なアルケニル基の個数は、1分子中に1.5個以上である。(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。(A)成分のアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。なお、(A)成分は、単一の成分のみを含んでいてもよく、2種以上の異なった成分の混合物であってもよい。
【0020】
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0021】
(A)成分は(B)成分と異なり、鎖状のポリシロキサン分子構造を有する。例えば、(A)成分は、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状(分岐鎖状)であることが好ましく、一部に環状、三次元網状を含んでいても良い。好適には、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状または分岐鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、分岐鎖状のオルガノポリシロキサンを与えるシロキサン単位は後述するT単位またはQ単位である。
【0022】
(A)成分の室温における性状はオイル状または生ゴム状であってもよく、(A)成分の粘度は25℃において50mPa・s以上、特に100mPa・s以上であることが好ましい。特に、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物が溶剤型である場合には、(A)成分の少なくとも一部は、(A1)25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度(25℃、4.2gの球状試料に1kgfの荷重を3分間かけたときの厚さを1/100mmまで読み、この数値を100倍したもの)が50~200の範囲にある、さらに好ましくは80~180の範囲にある生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0023】
なお、これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、接点障害防止等の見地から、揮発性または低分子量のシロキサンオリゴマー(オクタメチルテトラシロキサン(D4)、デカメチルペンタシロキサン(D5)等)が低減ないし除去されていることが好ましい。その程度は所望により設計可能であるが、成分(A)全体の1質量%未満、各シロキサンオリゴマーについて0.1質量%未満としてもよく、必要に応じ、検出限界付近まで低減してもよい。
【0024】
前記の(A1)成分中のアルケニル基の含有量は特に限定されるものではないが、本発明の技術的効果の見地から、(A1)成分中のアルケニル基中のビニル(CH2=CH)部分の含有量(以下、「ビニル含有量」という)が、0.005~0.400質量%の範囲が好ましく、0.005~0.300質量%の範囲が特に好ましい。
【0025】
本発明の(A)成分として、前記の(A1)成分より低粘度の(A)成分であっても、利用可能であり、具体的には、(A2)25℃における粘度が100,000mPa・s未満のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンが利用可能である。ここで、(A2)成分の粘度以外の例示は、(A1)成分と同様である。
【0026】
本発明の技術的効果の見地から、(A)成分の50質量%以上が、(A1)成分である高重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましく、75~100質量%が(A1)成分であることが特に好ましい。すなわち、本発明の(A)成分として前記の(A1)成分(=高重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)と(A2)成分(=より低重合度のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)を併用する場合には、両者の質量比が50:50~100:0、より好適には75:25~100:0または75:25~90:10の範囲である。
【0027】
(B)オルガノポリシロキサンレジンは、本発明の特徴的な構成の一つであり、基材への粘着力を付与する粘着付与成分であると同時に、(A)成分と一定の比率で使用することにより、本発明の目的である低温における貯蔵弾性率および実用的な粘着力範囲を実現する成分である。より具体的には、(B)成分は、水酸基または加水分解性基の含有量が抑制された、平均分子量の小さいオルガノポリシロキサンレジンであり、(B)成分間での加水分解/重合反応が起こりにくく、かつ、平均分子量が小さいオルガノポリシロキサンレジンを選択的に使用することで、その硬化物である感圧接着層における所定の貯蔵弾性率および実用的な粘着力範囲を実現する。
【0028】
詳細には、(B)成分は分子内の全ケイ素原子数に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が4500未満であるオルガノポリシロキサンレジンである。
【0029】
本発明における(B)成分は、その分子内における水酸基および加水分解性基の含有量の和が、当該オルガノポリシロキサンレジン分子中の全ケイ素原子に対して9モル%以下の範囲であり、分子中の全ケイ素原子に対して7モル%以下であることが好ましい。なお、(B)成分において、かかる水酸基および加水分解性基の含有量は、これらの官能基を全て水酸基に換算して表現することもできる。この場合、当該オルガノポリシロキサンレジン分子中の水酸基以外の加水分解性基を全て水酸基(OH)であると仮定してその質量%を計算すると、上記の水酸基および加水分解性基の含有量の和は、当該オルガノポリシロキサンレジン分子中における水酸基および水酸基に換算したこれらの加水分解性基の含有量の和が2.0質量%以下であり、1.6質量%以下が好ましいと表現することもできる。水酸基または加水分解性基は、後述するレジン構造中のシロキサン単位のうち、T単位またはQ単位などのケイ素に直接結合しており、原料となるシラン由来またはシランが加水分解した結果、生じた基であるので、合成したオルガノポリシロキサンレジンをトリメチルシラン等のシリル化剤で加水分解処理することで水酸基または加水分解性基の含有量を低減することができる。
【0030】
(B)成分において、当該水酸基または加水分解性基の量が前記の上限を超えると、オルガノポリシロキサンレジン分子間の縮合反応が進行して、硬化物中において分子量の大きいオルガノポリシロキサンレジン構造が形成されやすくなる。このような分子量の大きいオルガノポリシロキサンレジンは、組成物全体の硬化性を損なう傾向があり、当該組成物の低温における硬化性が不十分となったり、得られる感圧接着層が実用上十分な貯蔵弾性率を有しなくなる場合がある。
【0031】
(B)成分は、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンレジンである。例えば、R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)(式中、Rは互いに独立した一価有機基を表す)からなり、水酸基または加水分解性基の含有量が上記範囲にあるレジン、T単位単独からなり、水酸基または加水分解性基の含有量が上記範囲にあるレジン、並びにR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、水酸基または加水分解性基の含有量が上記範囲にあるレジンなどを挙げることができる。特に、R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が0~7モル%(これらの官能基を全て水酸基に換算した場合、0.0~1.6質量%であることが好ましい)の範囲であるレジン(MQレジンとも呼ばれる)を使用することが好ましい。
【0032】
Rの一価有機基は、好ましくは炭素数1~10の一価炭化水素基であり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基が例示される。特に、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であることが好ましく、Rの95~100モル%がメチル基またはフェニル基であることが特に好ましい。
【0033】
(B)成分が、R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなるレジンである場合、M単位対Q単位のモル比は、0.5~2.0であることが好ましい。このモル比が0.5未満である場合には基材への粘着力が低下することがあり、2.0より大きい場合には粘着層を構成する物質の凝集力が低下するからである。また、本発明の特性を損なわない範囲で、D単位及びT単位を(B)成分中に含有させることも可能である。さらに、これらのオルガノポリシロキサンレジンは、接点障害防止等の見地から、低分子量のシロキサンオリゴマーが低減ないし除去されていても良い。
【0034】
本発明において、(B)成分であるオルガノポリシロキサンレジンは、その重量平均分子量(Mw)が一定未満であるものを選択的に使用することを特徴とする。ここで、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で測定される各々のオルガノポリシロキサンレジンにおいて、個々の分子が全体に占める割合を考慮した平均分子量である。
【0035】
より具体的には、(B)成分は、分子量の比較的小さいオルガノポリシロキサンレジンであり、その重量平均分子量(Mw)は、4500未満であり、4000以下が好ましく、3750以下が特に好ましい。実用上、(b1)成分は、重量平均分子量(Mw)が500~3750の範囲にある、上述のR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなるレジンが特に好適である。
【0036】
本発明において、(B)成分は、上記の分子量の比較的小さいオルガノポリシロキサンレジンを選択的に使用することが特徴であり、組成物中に、上記の重量平均分子量(Mw)が4500以上のオルガノポリシロキサンレジンを実質的に含有しないことが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、組成物中の(B)成分100質量部に対して、上記の重量平均分子量(Mw)が4500以上のオルガノポリシロキサンレジンの含有量が0.5質量部未満であることを意味するものであり、当該含有量が0.1質量部未満であることが好ましく、特に、検出限界以下であることが好ましい。分子量の大きいオルガノポリシロキサンレジンは、水酸基および加水分解性基を大量に含有する場合には、オルガノポリシロキサンレジン分子間の縮合反応が進行して、硬化物中において分子量の大きいオルガノポリシロキサンレジン構造が形成されやすくなり、硬化反応性の悪化や、本組成物の硬化により得られる感圧接着層の貯蔵弾性率が本発明の範囲外となる場合があるので、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合がある。さらに、本発明の(B)成分同様に水酸基または加水分解性基の量を抑制されたオルガノポリシロキサンレジンであっても、重量平均分子量(Mw)が4500以上のものを使用すると、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合がある。
【0037】
このため、本発明においてオルガノポリシロキサンレジンは、実質的に(B)成分のみからなることが好ましく、特に、(B)成分以外のオルガノポリシロキサンレジン;重量平均分子量(Mw)が4500以上のオルガノポリシロキサンレジン、および分子内の全ケイ素原子に対する水酸基および加水分解性基の含有量の和が9モル%を超えるオルガノポリシロキサンレジンを実質的に含まないことが好ましい。具体的には、組成物中において、これらの(B)成分以外のオルガノポリシロキサンレジンの含有量の和が0.5質量部未満であることが好ましく、当該含有量が0.1質量部未満であることが好ましく、特に、検出限界以下であることが好ましい。これらの分子量の大きいオルガノポリシロキサンレジンまたは縮合反応により分子量が大きくなりやすいオルガノポリシロキサンレジンを含む場合、本発明の技術的効果、特に、目的とする硬化性、粘着力および貯蔵弾性率等の特性を実現できなくなる場合がある。
【0038】
[(A)成分に対する(B)成分の質量比]
本発明に係る感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は、鎖状の反応性シロキサン成分である(A)成分に対する、オルガノポリシロキサンレジンである(B)成分の質量比が特定の範囲にあることを特徴とする。具体的には、(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサンの使用が任意である場合には、(A)成分に対する(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲である必要がある。一方、当該組成物が、(A´)成分を含み、かつ、(A)成分と(A´)成分の質量比が95:5~60:40の範囲にある場合、(A)成分に対する(B)成分の質量比は0.9~2.4の範囲である必要がある。換言すれば、(A)成分と(A´)成分を特定比率で使用する場合、(A)成分に対する(B)成分の質量比が1.8を超え、2.4までの範囲であっても、本発明の技術的効果を実現可能である。
【0039】
(B)成分として、上記の分子量の小さい、特定のオルガノポリシロキサンレジンを選択し、かつ、鎖状のシロキサンポリマー成分に対して上記のレジン成分が前記範囲となるように配合されていると、本発明の目的とする硬化性、粘着力および貯蔵弾性率等の特性が好適に実現される。
【0040】
本発明に係る組成物において(A´)成分を必須の構成としない場合、所望の粘着力および貯蔵弾性率を実現するために、(A)成分と(A’)成分の和に対する、(B)成分の質量比は0.9~1.8の範囲であり、1.0~1.77の範囲であってもよい。なお、(A)成分に対する、(B)成分の質量比である場合に、さらに、(A´)成分を使用しても本発明の技術的効果を損なうものではなく、本発明の好適な形態の一つである。
【0041】
一方、本発明に係る組成物において、(A´)成分を必須の構成とし、かつ、(A)成分と(A´)成分の質量比が95:5~60:40の範囲にある場合、(A)成分と(A’)成分の和に対する、(B)成分の質量比は0.9~2.4の範囲であり、0.9~2.3の範囲であってもよく、1.0~2.3の範囲であってもよい。すなわち、(A)成分に対して(A´)成分を特定量併用することで、本発明に係る組成物を硬化させてなる硬化物の貯蔵弾性率が低減され、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が1.8を超え、2.4までの範囲であっても、本発明の目的とする硬化性、粘着力および貯蔵弾性率等の特性が実現可能である。
【0042】
これに対して、(A´)成分を使用せず、(A)成分に対する、(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲外であると、他の構成を調整しても本発明の目的とする硬化性、粘着力および貯蔵弾性率等の特性が実現できない場合がある。また、仮に(A´)成分を使用しても、その(A)成分に対する比率が前記範囲外であったり、(A)成分と(A’)成分の和に対する、(B)成分の質量比が0.9~2.4の範囲外であると、他の構成を調整しても本発明の目的とする硬化性、粘着力および貯蔵弾性率等の特性が実現できない場合がある。
【0043】
(C)成分は、Si-H結合を分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物の架橋剤である。成分(C)の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、あるいはオルガノポリシロキサンレジンであることが挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、あるいはオルガノポリシロキサンレジンである。ケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端,側鎖,これら両方が例示される。
ケイ素原子結合水素原子の含有量は0.1~2.0質量%であることが好ましく、0.5~1.7質量%であることがより好ましい。
【0044】
ケイ素原子に結合する有機基として、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,オクチル基等の炭素原子数1~8のアルキル基;フェニル基,トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示されるが、それらの合計数の50モル%以上が炭素原子数1~8のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。製造容易性および前記した好ましい(A)成分、(B)成分との相溶性の点で他の有機基はメチル基またはフェニル基が好ましい。
【0045】
本発明にかかる(C)成分がオルガノポリシロキサンレジンであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合は、一般式:R'3SiO1/2で表されるシロキサン単位と一般式:R'2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'2HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R’SiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'HSiO2/2で表されるシロキサン単位と一般式:R'SiO3/2で表されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。なお、式中のR'は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはハロゲン化アルキル基であり、上記同様の基が例示される。
【0046】
(C)成分として、具体的には、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン,テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体,環状メチルハイドロジェンオリゴシロキサン,環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体,分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシランの加水分解縮合物、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とCH3SiO3/2単位とからなる共重合体、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。
【0047】
直鎖状の場合は特に、分子構造式:RTMe2SiO (Me 2SiO)q (H Me SiO)r Si Me2RT (7)
(式中、Meはメチル基であり、RTはメチル基または水素原子であり、q,rは0.3≦r/(q+r)≦1、5≦ (q+r)≦200の関係を満たす数である。)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。なお、上記(C)成分は異なるもの2種以上を併用してもよい。
【0048】
同様に、次のようなオルガノシロキサンも例示される。なお、式中、Me、Phは、それぞれ、メチル基、フェニル基を示し、mは1~100の整数であり、nは1~50の整数であり、b、c、d、eはそれぞれ正の数であり、ただし、一分子中のb、c、d、eの合計は1である。
HMe2SiO(Ph2SiO)mSiMe2H
HMePhSiO(Ph2SiO)mSiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m(MePhSiO)nSiMePhH
HMePhSiO(Ph2SiO)m(Me2SiO)nSiMePhH
(HMe2SiO1/2)b(PhSiO3/2)c
(HMePhSiO1/2)b(PhSiO3/2)c
(HMePhSiO1/2)b(HMe2SiO1/2)c(PhSiO3/2)d
(HMe2SiO1/2)b(Ph2SiO2/2)c(PhSiO3/2)d
(HMePhSiO1/2)b(Ph2SiO2/2)c(PhSiO3/2)d
(HMePhSiO1/2)b(HMe2SiO1/2)c(Ph2SiO2/2)d(PhSiO3/2)e
【0049】
[SiH/Vi比]
本発明の組成物は、ヒドロシリル化反応硬化性であり、(C)成分の使用量は、組成物がヒドロシリル化反応により十分に硬化することができれば特に制限されるものではないが、組成物中の(A)成分中のアルケニル基の量(物質量)および(B)成分中のアルケニル基の量(物質量)の和に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH)基の物質量、すなわちモル比が0.1~100の範囲であることが好ましく、0.5~60の範囲、1.0~50の範囲、または1.0~40の範囲であっても良い。
【0050】
一方、ガラス等の基材に対する密着性を改善する目的で、SiH基の量を10以上、または20以上に設計することができ、かつ、20を超えることが好ましく、22以上であることがより好ましい。例えば、組成物中の(A)成分中のアルケニル基の量(物質量)および(B)成分中のアルケニル基の量(物質量)の和に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH)基の物質量は、20~60の範囲、22~50の範囲に設計することができる。SiH基の量が前記下限を下回ると、基材への密着性の改善という技術的効果が実現できない場合がある。一方、SiH基の量が前記上限を超えると、反応せずに残存する硬化剤の量が多くなってしまい、硬化物が脆くなる等の硬化物性における悪影響やガスの発生等の問題が生じる場合がある。ただし、組成物のSiH/Vi比が上記範囲外でも実用上十分な感圧接着層を形成することができる。
【0051】
[ヒドロシリル化反応触媒]
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応触媒を含む。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をニトリル類、アミド類、ジオキソラン類、及びスルホラン類からなる群から選択される基、エチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンであることが好ましい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0052】
本発明において、ヒドロシリル化反応触媒の含有量は特に制限されるものではないが、組成物中の固形分の合計量に対し、白金系金属量が0.1~200pmの範囲となる範囲であり、0.1~150ppm、0.1~100ppmの範囲であってよく、0.1~50ppmの範囲であってもよい。ここで、白金系金属は、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムからなるVIII族の金属元素であるが、実用上、ヒドロシリル化反応触媒の配位子を除いた白金金属の含有量が上記範囲であることが好ましい。なお、固形分とは、本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物を硬化反応させた場合に、硬化層を形成する成分(主として主剤、接着付与成分、架橋剤、触媒およびその他の不揮発性成分)であり、加熱硬化時に揮発する溶媒等の揮発性成分を含まない。
【0053】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物中の白金系金属の含有量が50ppm以下(45ppm以下,35ppm以下,30ppm以下,25ppm以下または20ppm以下)である場合、硬化後、あるいは加熱や紫外線等の高エネルギー線に暴露した場合、特に、透明な感圧接着層の変色や着色を抑制できる場合がある。一方、オルガノポリシロキサン組成物の硬化性の見地から、白金系金属の含有量は、0.1ppm以上であり、当該下限を下回ると硬化不良の原因となる場合がある。
【0054】
(E)成分は硬化遅延剤であり、組成物中のアルケニル基と(C)成分中のSiH基の架橋反応を抑制して、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上するために配合するものである。したがって、実用上は、本発明の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物にとって、必須に近い成分である。
【0055】
具体的には、(E)成分はアセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示される。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-イン等のエンイン化合物;2-エチニル-4-メチル-2-ペンテン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシクロシロキサン;ベンゾトリアゾールが例示される。
【0056】
組成物の硬化挙動の見地から、本発明の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は、組成物の調製後室温で8時間後に粘度の増大が1.5倍以内であり、80~200℃で硬化可能であることが好ましい。増粘が抑制されていることは、取扱作業性、ポットライフ、硬化後の特性の見地から重要であり、大過剰の(C)成分を含み、任意で白金系金属量の含有量が低くとも、一定以上の高温(80~200℃)で硬化させることで硬化性を確保することができるためである。なお、このような組成物は上記の各成分およびヒドロシリル化触媒と(E)成分の好適な組み合わせおよび配合量を選択することで、実現可能である。
【0057】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、上記の好適な(A)成分および(B)成分に加えて、溶媒として有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤は、塗工作業性などを考慮してその種類及び配合量を調整する。有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロプルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル系溶剤、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、塩化メチレンなどの塩素化脂肪族炭化水素系溶剤、溶剤揮発油などが挙げられ、シート状基材への濡れ性などに応じて2種以上を組み合わせても良い。有機溶剤配合量は、(A)成分~(C)成分の混合物をシート状基材表面に均一に塗工できるような量がよく、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計100質量部当たり、5~3000質量部である。
【0058】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物は、本発明の技術的効果を損なわない範囲で、任意で、上記成分以外の成分を含むことができる。例えば、接着促進剤;ポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサン;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、またはチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系またはベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、またはアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤などを含むことができる。なお、これらの成分のほか、顔料、染料、無機微粒子(補強性フィラー、誘電性フィラー、導電性フィラー、熱伝導性フィラー)などを任意で配合することもできる。
【0059】
[(A´)分子内に炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まない鎖状オルガノポリシロキサン]
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物には、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基等の炭素-炭素二重結合含有反応性基を含まないポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサンを配合することができ、これにより、後述する感圧接着層の損失係数(tanδ)、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)、粘着性を改善することができる場合がある。例えば、水酸基末端を有するポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端を有するポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンの使用により、感圧接着層の損失係数を増加させることができ、そのような組成物は、本発明の範囲に包含される。
【0060】
本発明において、(A)成分に対する(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲である場合、前記の(A´)成分の使用が任意であっても、本発明の技術的効果、特に、目的とする硬化性、粘着力および貯蔵弾性率等の特性を実現できる。
【0061】
一方、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が0.9~2.4の範囲である場合、特に、同質量比が1.8を超え、2.4までの範囲である場合、(A´)成分を(A)成分に対して特定量使用しないと、本発明の技術的効果を実現することができない。また、同質量比が2.4を超えると、たとえ(A´)成分を併用しても、本発明の技術的効果を実現することができない場合がある。
【0062】
具体的には、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が0.9~2.4の範囲である場合、(A)成分と(A´)成分の質量比が95:5~60:40の範囲であることが必要であり、(A)成分と(A´)成分の質量比が90:10~65:35の範囲であることが好ましく、85:15~70:30の範囲であることが特に好ましい。(A´)成分と(A)成分を上記の質量比で使用することで、(A)成分と(A’)成分の和に対する(B)成分の質量比が1.8を超える領域でも、硬化物の貯蔵弾性率を1.0MPa未満に抑制することができるためである。
【0063】
なお、(A)成分に対する(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲である場合、(A´)成分の使用は任意であり、(A)成分と(A´)成分の質量比が100:0~60:40の範囲であってよく、100:0~65:35の範囲であることが好ましい。たとえば、(A)成分に対する(B)成分の質量比が0.9~1.8の範囲であって、(A)成分と(A´)成分の質量比が100:0(=(A´)成分不使用)、80:20または70:30である構成は、本発明に係る特に好適な実施形態の一つである。
【0064】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン組成物の調製方法は特に限定されず、それぞれの成分を均質に混合することによって行われる。必要に応じて溶剤を加えてもよく、公知の攪拌機または混練機を用いて、0~200℃の温度で混合して調製してもよい。
【0065】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、基材上に塗工することによって塗膜を形成し、80~200℃の温度条件下、好適には、90~190℃の温度条件下で加熱することによって硬化物とする。塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、及びコンマコートが例示される。
【0066】
[感圧接着性および粘着力の範囲]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、ヒドロシリル化反応により当該組成物を硬化させてなる硬化層が感圧接着性であることを特徴とする。本発明の感圧接着層は、上記の構成を有し、実用上十分な粘着力を発現することから、公知のシリコーン感圧接着剤を所望により置き換えて利用可能である。
【0067】
具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚み50μmの感圧接着層の、厚み2mmのポリメチルメタクリレートシートに対する、JIS Z 0237に従う180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにより測定された粘着力が360~3000gf/inchの範囲にある感圧接着層を設計可能であり、400~2700gf/inchの範囲にある感圧接着層が好適であり、400~2300gf/inchの範囲にある感圧接着層がさらに好適である。なお、上記の厚み(50μm)は、本発明にかかる硬化層の粘着力を客観的に定義するための基準となる硬化層自体の厚みであり、本発明のオルガノポリシロキサン組成物は厚み50μmに限らず、任意の厚みの硬化層または感圧接着層として利用することができることは言うまでもない。
【0068】
[貯蔵弾性率およびその他の粘弾性]
本発明の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は、その硬化により得られる感圧接着層の-20℃におけるせん断貯蔵弾性率G’が0.01~1.0MPaの範囲にあり、当該貯蔵弾性率G’が0.02~0.90MPaの範囲であってよく、0.03~0.80MPaの範囲であってよく、0.04~0.70MPaの範囲であるものも好適に本発明の範囲に含まれる。このような低温における比較的低い貯蔵弾性率G’を有し、かつ、上記の実用的な粘着力を有することから、本発明における感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は、弾性粘着部材の形成を目的として、スピーカー、トランスデューサー等の電子機器、電気的装置の部材として、また、スマートデバイス等の先端エレクトロニクス材料および表示素子分野への応用に適する。
【0069】
本発明に係る感圧接着層の貯蔵弾性率(G’)は、公知の測定方法によって測定することができる。例えば、貯蔵弾性率(G’)MCR301粘弾性測定装置(Anton Paar社製)を使用して測定することができ、直径8mm厚み0.5~1mm程度の円盤状の試料を用い、8mmパラレルプレート、周波数1Hz、ひずみ0.1%、昇温速度3℃/分で、使用温度である-40℃から100℃の範囲において、-20℃における値として測定することができる。
【0070】
本発明に係る感圧接着層は、-20℃での1.0Hzにおける貯蔵弾性率G’が25℃での1.0Hzにおける貯蔵弾性率G’の3倍以上あってもよい。
【0071】
[感圧接着層の透明性、色調または着色・変色に関する特性]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、実質的に透明、半透明または不透明のいずれであってもよく、当該感圧接着層の用途に応じてその透明性を設計することができる。例えば、表示装置用の感圧接着層として、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚さ10~1000μmのフィルム状の硬化物は、目視で透明であることが好ましく、カーボンブラック等の着色性の添加剤を含まないことが好ましい。なお、目視で透明である場合、より客観的には、厚み100μmの硬化層からなる表示装置用の感圧接着層の波長450nmの光の透過率が空気の値を100%とした場合に80%以上であり、好適には90%以上であり、95%以上に設計してもよい。一方、光透過性が求められない電気・電子部品の接着等においては、半透明~不透明な感圧接着層であってもよく、光透過性以外の要求特性に応じて、着色性あるいは光透過性を損なうようなフィラー成分または添加剤を利用しても良い。
【0072】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、任意で硬化層中の白金系金属の含有量を低減等することにより、上記の透明性に加えて、硬化物が着色していないように設計することが可能である。具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層を、その硬化直後にJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値が、0.15以下であり、さらに0.10以下であるように設計可能である。かかるb*値を有することは、硬化層が実質的に透明であり、かつ、黄色に着色していないことを意味する。
【0073】
本発明の硬化層は、高温や紫外線等の高エネルギー線に長時間暴露した場合であっても、その色調が大きく変化せず、特に、黄変の問題を生じないように設計可能である。具体的には、以下のいずれの評価を行った場合であっても、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる厚み100μmの硬化層について、評価の前後におけるJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系で測定したb*値の変化(Δb*)が0.20以下であり、0.15以下であるように設計可能である。なお、Δb*は数値変化の絶対値である。
(1)加熱エージング評価:硬化層を105℃-300時間エージングする
(2)高エネルギー線照射:硬化層に対し、365nmでの強度が12mW/cm2、254nmでの強度が3.5mW/cm2である水銀灯(例えば、ウシオ電機製Optical ModuleXなど)を用いた紫外光を、室温において試料上に75時間照射する
【0074】
[感圧接着剤層としての使用]
本発明の硬化物は、特に、感圧接着剤層として使用することができる。また、被着体との密着性を向上させるために、感圧接着剤層または基材の表面に対してプライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。ただし、本発明の感圧接着剤層は、上記のとおり、表示デバイス等の基材への密着性に優れることから、必要に応じ、これらの工程を加えてさらに被着体との密着性を向上させてもよく、これらの工程を省くことにより、より高い生産効率を実現してもよい。
【0075】
本発明に係る硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、剥離ライナーに塗工した後、上記の温度条件下で加熱することにより硬化させ、剥離ライナーを剥がしてフィルム状基材、テープ状基材、またはシート状基材(以下、「フィルム状基材」という)と貼り合せたり、フィルム状基材に塗工した後、上記の温度条件下で加熱することにより硬化させ、前記基材の表面に感圧接着剤層を形成することができる。これらのフィルム状基材上に本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層、特にフィルム状の感圧接着剤層を備えた積層体は、粘着テープ、絆創膏、低温支持体、転写フィルム、ラベル、エンブレム及び装飾又は説明用の標示に使用してもよい。更に、本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層は、自動車部品、玩具、電子回路、又はキーボードの組み立てに使用してもよい。あるいは、本発明に係るオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層、特にフィルム状の感圧接着剤層は、積層タッチスクリーン又はフラットパネルディスプレイの構築及び利用に使用してもよい。
【0076】
基材の種類として、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム・シート,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロポリオレフィン、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、PEN等の透明材料が好適である。
【0077】
上記基材はフィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚さは特に制限されず、用途に応じて所望の厚さで設計することができる。さらに、支持フィルムと感圧接着層の密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された支持フィルムを用いてもよい。また、フィルム状基材の感圧接着層面と反対面には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止などの処理などの表面処理されたものであってもよい。
【0078】
基材への塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、オフセット転写ロールコーター等を用いたロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンフローコーター等を用いたカーテンコート、コンマコート、マイヤーバー、その他公知の硬化層を形成する目的で使用される方法が制限なく使用できる。
【0079】
塗工量は表示装置等の用途に応じて所望の厚さで設計することができ、一例として、硬化したあとの感圧接着層の厚みとして1~1,000μmであり、5~900μmであってよく、10~800μmであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0080】
本発明に係る感圧接着層は、その要求特性に応じて単層であっても2層以上の感圧接着層を積層してなる複層であってもよい。複層の感圧接着層は、一層ずつ作成した感圧接着剤フィルムを貼り合わせても良く、剥離層を備えたフィルム基材上等で、感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物を塗工して硬化させる工程を複数回行ってもよい。
【0081】
本発明に係る感圧接着層は、部材間の接着ないし粘着機能のほか、誘電層、導電層、放熱層、絶縁層、補強層等から選ばれる他の機能層としての役割を付与されていても良い。
【0082】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層が感圧接着層、特に、感圧接着剤フィルムである場合、当該硬化層は、剥離コーティング能を有する剥離層を備えたフィルム基材上に、剥離可能な状態で粘着した積層体フィルムとして取り扱うことが好ましい。剥離層は剥離ライナー、セパレーター、離型層あるいは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、またはフルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、本発明の感圧接着層と付着しにくい基材それ自体であってもよい。特に本発明にかかる積層体においては、剥離層として、フルオロシリコーン系剥離剤を硬化させてなる剥離層の使用が好ましい。
【0083】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、上記のような粘弾性と接着力を併せ持つため、弾性粘着部材として、各種の電子機器または電気的装置の部材として有用である。特に、電子材料、表示装置用部材またはトランスデューサー用部材(センサ、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター用を含む)として有用であり、当該硬化物の好適な用途は、電子部品または表示装置の部材である。本発明にかかる硬化物は透明でも不透明であってもよいが、フィルム形状の硬化物、特に実質的に透明な感圧接着剤フィルムは、表示パネルまたはディスプレイ用の部材として好適であり、特に、画面を指先等で接触することにより機器、特に電子機器を操作可能な所謂タッチパネル用途に特に有用である。また、不透明な弾性粘着層は、透明性が要求されず、粘着層自体に一定の伸縮性または柔軟性が求められるセンサ、スピーカー、アクチュエーター等に用いられるフィルム状またはシート状部材の用途に特に有用である。
【0084】
特に、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着層は、従来のシリコーン感圧接着層と同等の感圧接着特性を実現可能であり、かつ、硬化不良や硬化性の低下の問題を生じることなく、表示デバイス等の基材への密着性を改善できる。
【0085】
[表示パネルまたはディスプレイ用の部材]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、積層タッチスクリーン又はフラットパネルディスプレイの構築及び利用に使用することができ、その具体的な使用方法は、感圧接着剤層(特に、シリコーンPSA)の公知の使用方法を特に制限なく用いることができる。
【0086】
例えば、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、前記の特表2014-522436号または特表2013-512326等で開示された光学的に透明なシリコーン系感圧接着剤フィルムあるいは粘着剤層として、タッチパネル等の表示デバイスの製造に用いることができる。具体的には、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、特表2013-512326に記載の粘着層または粘着フィルムとして、特に制限なく用いることができる。
【0087】
一例として、本発明にかかるタッチパネルは、一面に導電層が形成されている伝導性プラスチックフィルム等の基材、及び当該導電層が形成された側またはその反対側の面に付着されている本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化層を含むタッチパネルであってよい。当該基材は、シート状またはフィルム状基材であることが好ましく樹脂フィルムまたはガラス板が例示される。また、前記伝導性プラスチックフィルムは、一面にITO層が形成されている樹脂フィルムまたはガラス板、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムであってよい。これらは、前記の特表2013-512326等に開示されている。
【0088】
その他、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物は、タッチパネル等の表示デバイスの製造に用いる偏光板用接着フィルムとして用いてもよく、特開2013-065009号公報に記載のタッチパネルとディスプレイモジュール間の貼合に用いる感圧接着層として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物、それを硬化してなる硬化物の用途としては、上記に開示した他に何ら制約はなく、当該組成物を硬化してなる硬化物を備えてなる感圧接着フィルムはテレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車などの計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機、車載用表示装置、車載用透過型スクリーンなど、文字や記号、画像を表示するための種々の表示装置に利用可能である。このような表示装置の表面形状は、平面ではなく曲面状ないし湾曲した形状であってもよく、各種フラットパネルディスプレイ(FPD)のほか、自動車(電気自動車含む)や航空機等に利用される曲面ディスプレイまたは曲面透過型スクリーンが例示される。さらに、これらの表示装置は、スクリーンやディスプレイ上に機能またはプログラムを実行するためのアイコンや、電子メール・プログラム等の通知表示、カーナビゲーション装置、スピーカー用のメンブレン、オーディオ装置、空調装置などの各種装置の操作ボタンを表示することができ、これらのアイコンや通知表示、操作ボタンに指を触れることで、入力操作が可能となるタッチパネル機能が付加されていてもよい。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)などの表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。また、当該組成物を硬化してなる硬化物は、接着性と粘弾性特性に優れるため、スピーカー用のメンブレン等のトランスデューサー用部材(センサ、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター用を含む)であるフィルム又はシート状部材として利用できるほか、さらに、二次電池、燃料電池または太陽電池モジュールに用いる封止層または接着剤層として利用することができる。
【0090】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる感圧接着層は、実質的に透明であってよく、硬化不良や硬化性の低下の問題を生じることなく、かつ、各種表示デバイス等の基材への密着性に優れることから、長期間にわたって表示内容の視認性および操作性が良好な車両用表示装置、特に、曲面スクリーンまたは曲面ディスプレイを備え、任意でタッチパネル機能を有する車両用表示装置に好適に利用できる。例えば、特開2017-047767号公報、特開2014-182335号公報、特開2014-063064号公報、特開2013-233852号公報等には曲面状の表示面を備えた車両用表示装置が開示されているが、本発明にかかる感圧接着層は、これらの文献中の透明性が求められる接着層または粘着層の一部又は全部として好適に適用乃至置き換えが可能である。さらに、本発明の感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は、他の公知の曲面状の表示装置についても、現在使用されている透明性が求められる接着層または粘着層を置き換えて利用できることは言うまでもなく、本発明の感圧接着剤の利点をさらに活用するために表示装置の設計や部材の厚みを公知の手法により調整することが好ましい。
【0091】
なお、本発明の感圧接着層を備えた透明なフィルム状基材を、これらの、ディスプレイ表面の傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、帯電防止、反射防止、のぞき見防止などの目的で使用してもよい。
【実施例】
【0092】
以下に、本発明の実施例及び比較例を記す。なお、各実施例・比較例・参考例において「硬化させた」とは、各々の硬化条件により、各組成物が完全に硬化したことを意味するものである。
【0093】
(硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物の調製)
表1に示す各成分を用いて、各実施例・比較例・参考例に示す硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物を調製した。なお、表1における%は全て質量%である。
【0094】
(オルガノポリシロキサン成分の分子量の測定)
Waters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として、標準ポリスチレン換算で、オルガノポリシロキサンレジン等のオルガノポリシロキサン成分の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
(オルガノポリシロキサンレジン中の水酸基(OH)含有量の測定)
ガラスフリープローブを備えたブルカー製ACP-30029Si NMRスペクトロメーターを用い、テトラメチルシランの化学シフトを0 ppmとしたときに、-93から-103.5 ppmに現れるSi(OH)O2/3単位の全シリコン原子に対する存在比率からモル含量を得、さらに、オルガノポリシロキサンレジン中の水酸基(OH)の質量%にも換算した。なお、以下の実施例におけるオルガノポリシロキサンレジン中に水酸基以外の加水分解性基は含まれていなかった。
(粘着力測定)
各組成物を、PETフィルム(株式会社東レ製、製品名ルミラー(登録商標)S10、厚さ50μm)に硬化後の厚みが50μmとなるように塗工し、150℃で3分間硬化させた。1日放置後、同試料を幅20mmに切断し、粘着層面をPMMA板(パルテック製、アクリライトL001,50x120x2mm)にローラーを用いて貼り合せて試験片とした。PMMA板を用いた試験片は、オリエンテック社製RTC-1210引っ張り試験機を用いてJIS Z0237に準じて180°引き剥がし試験方法を用いて引張速度300mm/minにて粘着力(20mm幅での測定を表示単位gf/インチに換算)を測定した。
(動的粘弾性:-20℃における貯蔵弾性率G’)
各組成物を硬化後の厚みが約100μmになるようにフロロシリコーン剥離コーティングを塗工した剥離ライナーに塗工し、150℃で3分間硬化させた。この感圧接着剤フィルムを5枚以上重ね合わせ、厚さ500μm以上である、両面を剥離ライナーに挟まれたフィルムサンプルを得た。当該フィルムを直径8mmにくりぬき、動的粘弾性装置(Anoton Paar社製、MCR301)のパラレルプレートプローブに貼り付けて、貯蔵弾性率G’を測定した。測定条件は、-70℃~200℃の範囲であり、周波数1Hz、昇温速度3℃/分にて測定し、損失係数、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’を測定し、-20℃における貯蔵弾性率G’を記録した。
(引張試験)
上記の動的粘弾性試験用サンプルと同じようにして得た厚さ500μm以上である、両面を剥離ライナーに挟まれたフィルムサンプルを、幅約5mm、長さ約70mmに切断し、粘着剤表面にベビーパウダーを塗りながら剥離ライナーを剥がして、引張試験サンプルとした。引張試験は島津社製Autograph AGS-Xを用い、サンプルの上下約25mmを掴んで、300mm/分の速度で行った。応力およびひずみは各サンプルごとの正確なサンプルの幅と厚さ、クロスヘッド間距離から求めた。
【0095】
表1に硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物の材料を示す。なお、各成分の粘度または可塑度は以下の方法により、室温において測定した。
[粘度]
粘度(mPa・s)は、JIS K7117-1に準拠した回転粘度計を使用して測定した値であり、動粘度(mm2/s)は、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定した値である。
[可塑度]
可塑度は、JIS K 6249に規定される方法に準じて測定された値(25℃、4.2gの球状試料に1kgfの荷重を3分間かけたときの厚さを1/100mmまで読み、この数値を100倍したもの)で示した。
【0096】
表1 硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物の成分
【表1】
【0097】
(実施例1)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン50.0重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂69.0重量部、トルエン119.1重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体1.00重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.600重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は30.5、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0098】
(実施例2)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン46.5重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂73.8重量部、トルエン117.8重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.958重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は31.3、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0099】
(実施例3)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン40.8重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂73.6重量部、トルエン107.8重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.872重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は32.4、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0100】
(実施例4)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン38.1重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂77.0重量部、トルエン106.9重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.832重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は33.2、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0101】
(実施例5)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン36.4重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂84.3重量部、トルエン101.6重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.807重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.484重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は33.7、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0102】
(実施例6)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン32.7重量部、成分a’1のシラノール官能性ポリジメチルシロキサン8.16重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂73.6重量部、トルエン107.8重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.683重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.484重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は31.8、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、同様の組成であって成分a’1を添加しない場合(実施例3)、感圧接着層の損失係数(tanδ)の最大値は1.40であったが、成分a’1を添加した実施例6においては、tanδの最大値は1.44となり、成分a’1の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0103】
(実施例7)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン28.6重量部、成分a’1のシラノール官能性ポリジメチルシロキサン12.3重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂73.6重量部、トルエン107.8重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.624重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.484重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は33.2、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、同様の組成であって成分a’1を添加しない場合(実施例3)、感圧接着層の損失係数(tanδ)の最大値は1.40であったが、成分a’1を添加した実施例6においては、tanδの最大値は1.46となり、成分a’1の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0104】
(実施例8)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン40.7重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂78.6重量部、トルエン102.9重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.741重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.409重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.355重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は27.8、白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0105】
(実施例9)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン37.7重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂77.4重量部、トルエン107.0重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.827重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は33.2、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0106】
(実施例10)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン30.2重量部、成分a’2の無官能性ポリジメチルシロキサン7.55重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂82.5重量部、トルエン46.5重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.590重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.409重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.355重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は29.7、白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、前後する組成であって成分a’2を添加しない実施例9および5では、感圧接着層の損失係数(tanδ)の最大値はそれぞれ1.51、1.65であったが、成分a’2を添加した実施例10においては、tanδの最大値は1.77となり、成分a’2の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0107】
(実施例11)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン31.4重量部、成分a’2の無官能性ポリジメチルシロキサン7.84重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂80.5重量部、トルエン47.0重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.608重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.409重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.355重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は29.4、白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、同様の組成であって成分a’2を添加しない実施例9では、感圧接着層の損失係数(tanδ)の最大値はそれぞれ1.51であったが、成分a’2を添加した実施例11においては、tanδの最大値は1.77となり、成分a’2の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0108】
(実施例12)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン31.4重量部、成分a’3の無官能性ポリジメチルシロキサン7.84重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂80.5重量部、トルエン47.0重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.608重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.409重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.355重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は29.4、白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、同様の組成であって成分a’3を添加しない実施例9では、感圧接着層の損失係数(tanδ)の最大値はそれぞれ1.51であったが、成分a’3を添加した実施例12においては、tanδの最大値は1.81となり、成分a’3の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0109】
(実施例13)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン28.6重量部、成分a’2の無官能性ポリジメチルシロキサン7.14重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂85.2重量部、トルエン45.8重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.567重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.409重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.355重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は30.2、白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、実施例13においては、tanδの最大値は1.79となり、成分a’2の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0110】
(実施例14)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン27.6重量部、成分a’2の無官能性ポリジメチルシロキサン6.90重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂86.8重量部、トルエン45.4重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.553重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.409重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.355重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は30.5、白金金属の固形分に対する含量は22ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性を測定し、その評価結果等を表2に示した。
また、実施例14においては、tanδの最大値は1.88となり、成分a’2の使用により、得られる感圧接着層の損失係数が向上することが確認できた。
【0111】
(比較例1)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン33.3重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂82.9重量部、トルエン106.0重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.763重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は34.8、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0112】
(比較例2)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン29.4重量部、成分b2のMQシリコーン樹脂87.8重量部、トルエン105.0重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.705重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d2の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.577重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は36.5、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0113】
(比較例3)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン43.1重量部、成分b1のMQシリコーン樹脂89.2重量部、トルエン89.9重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.834重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.484重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は29.4、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0114】
(比較例4)
成分aのビニル官能性ポリジメチルシロキサン36.4重量部、成分b1のMQシリコーン樹脂99.8重量部、トルエン86.1重量部、成分c1の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体0.737重量部、成分eの硬化遅延剤20%溶液0.577重量部、を室温でよく混合し、混合物に成分d1の白金系ヒドロシリル化反応触媒0.484重量部を加えて硬化反応性のオルガノポリシロキサン組成物とした。成分a中のアルケニル基の量に対する成分c1中のSiH基のモル比(SiH/Vi比)は30.7、白金金属の固形分に対する含量は30ppmであった。
当該組成物を上記の方法で硬化させ、上記に示す方法によりPMMA板に対する粘着力、粘弾性、応力歪を測定し、その評価結果等を表2に示した。
【0115】
【0116】
表2に示すとおり、実施例1~14に係る感圧接着層形成性オルガノポリシロキサン組成物は十分な硬化性を有し、-20℃における感圧接着層の貯蔵弾性率G’が1.00MPa以下の範囲にあり、実用上十分な粘着力を備える。また、成分a’1~3を併用した実施例6、7および10~14においては、得られる感圧接着層の損失係数をさらに向上させることができた。なお、実施例14に示すとおり、鎖状ポリシロキサン成分に対するレジン成分の質量比(b/a+a’1~a’3)が1.8を超える場合であっても、硬化反応性の鎖状ポリシロキサン成分に対する非反応性の鎖状ポリシロキサン成分の質量比を本発明の範囲内に設計することで、-20℃におけるにおける感圧接着層の貯蔵弾性率G’を1.00MPa以下の範囲に設計可能である。さらに、たとえば実施例5と実施例13、14に示すように、感圧接着層の貯蔵弾性率G’を下げ、あるいは変化させずに粘着力を増大させることができる。
【0117】
一方、比較例1~4では、-20℃における貯蔵弾性率G’が1.00MPaを超えており、1.00MPa以下のG’の値という本発明の要求特性を達成できないものであった。具体的には、硬化反応性の鎖状ポリシロキサン成分に対するレジン成分の質量比(b/a)が1.80を超える比較例1および比較例2、レジン成分の分子量が大きい比較例3および比較例4では、すべて、-20℃における貯蔵弾性率G’が1.00MPa以下という感圧接着層の特性を実現できないものであった。