(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20220328BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220328BHJP
C07C 69/92 20060101ALI20220328BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20220328BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C08L101/12
C08F2/44 C
C07C69/92
C07C69/96 Z
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2017565504
(86)(22)【出願日】2017-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2017002638
(87)【国際公開番号】W WO2017135130
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2016017039
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】名木 達哉
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/185410(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185411(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/185412(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/002291(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156314(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/053232(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/053233(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/114864(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/199932(WO,A1)
【文献】特開2012-027471(JP,A)
【文献】特開2000-098394(JP,A)
【文献】川月 喜弘 et al.,低分子/高分子複合体による位相差フィルム,高分子学会予稿集,2001年,50(4),p.776
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00- 13/08
C08L1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100℃~300℃の温度範囲で液晶性を発現するとともに、250nm~400nmの波長範囲の光に感応して架橋反応、異性化反応、または光フリース転位を起こす感光性側鎖を有する側鎖型高分子であって、該側鎖型高分子は感光性側
鎖となる光反応性
基および
前記側鎖型高分子における側鎖部位にメソゲン基を形成することができる液晶性
基を有するモノマーを重合することによって得られる高分子で
ある上記側鎖型高分子、
(B)下記式(I)で表わされる反応性メソゲン化合物、及び
(C)有機溶媒
を含有する重合体組成物:
P-Sp-X-MG-X-Sp-P (I)
[式(I)中、
Pは重合性基であり、
Spは、炭素原子1~20個を有するスペーサー基であり、
Xは、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-から選択される基または単結合であり、
MGは、下記式IIで表されるメソゲン基またはメソゲン支持基である:
-(A
1-Z
1)
m-A
2-Z
2-A
3- (II)
(式(II)中、A
1、A
2およびA
3は相互に独立して、1,4-フェニレン基であり、この基中に存在する1個または2個以上のCH基はまたNにより置き換えられていてもよく、あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり、この基中に存在する1個のCH
2基または隣接していない2個のCH
2基はまたOおよび(または)Sにより置き換えられていてもよく、あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレン-2,6-ジイル基であり、これらの基は全部が未置換であるか、あるいは1個または2個以上のハロゲン、シアノまたはニトロ基により、あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基、アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されていてもよく、これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく、
Z
1およびZ
2はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合であり、かつ
mは、0、1または2である)]。
【請求項2】
(A)成分が、下記式(1)~(6)からなる群より選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有する、請求項1に記載の重合体組成物。
【化1】
[式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH
2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y
1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR
0(式中、R
0は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y
2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY
1と同じ定義を表す;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環である;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である]。
【請求項3】
(A)成分が、下記式(21)~(31)[式中、A、B、R、q1及びq2は上記と同じ定義を有する;
Y
3は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO
2、-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
R
3は、水素原子、-NO
2、-CN、-CH=C(CN)
2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を表す;
lは1~12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(23)~(26)において、全てのmの合計は2以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1~3の整数を表す;
R
2は、水素原子、-NO
2、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
Z
11、Z
12は単結合、-CO-、-CH
2O-、-CH=N-、-CF
2-を表す。]からなる群より選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有する、請求項1又は2に記載の重合体組成物。
【化2】
【請求項4】
[I] 請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物を、液晶駆動用の電極を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に斜め方向から偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された液晶配向膜を得る、前記液晶配向膜を有する基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法により製造された液晶配向膜を有する基板。
【請求項6】
請求項5記載の基板を有する縦電界駆動型液晶表示素子。
【請求項7】
請求項5記載の基板を有するツイストネマチック型液晶表示素子またはOCB型液晶表示素子。
【請求項8】
請求項5記載の基板(第1の基板)を準備する工程;
請求項4に記載の工程[I]~[III]を用いることにより、第2の基板を得る工程;及び
[IV] 液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、第1及び第2の基板を対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有することにより、縦電界駆動型液晶表示素子を得る、該液晶表示素子の製造方法。
【請求項9】
[IV]工程が、液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、配向方向が互いに直交するように第1及び第2の基板を対向配置して液晶表示素子を得る工程である、請求項8に記載のツイストネマチック型液晶表示素子の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法により製造された縦電界駆動型液晶表示素子。
【請求項11】
請求項9に記載の方法により製造されたツイストネマチック型液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合体組成物と、それを用いる液晶配向膜、および当該配向膜を有する基板の製造方法に関する。さらには、チルト角特性に優れる液晶表示素子を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、軽量、薄型かつ低消費電力の表示デバイスとして知られ、近年では大型のテレビ用途に用いられるなど、目覚ましい発展を遂げている。液晶表示素子は、例えば、電極を備えた透明な一対の基板により液晶層を挟持して構成される。そして、液晶表示素子では、液晶が基板間で所望の配向状態となるように有機材料からなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。
【0003】
すなわち、液晶配向膜は、液晶表示素子の構成部材であって、液晶を挟持する基板の液晶と接する面に形成され、その基板間で液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。そして、液晶配向膜には、液晶を、例えば、基板に対して平行な方向など、一定の方向に配向させるという役割に加え、液晶のプレチルト角を制御するという役割を求められることがある。こうした液晶配向膜における、液晶の配向を制御する能力(以下、配向制御能と言う。)は、液晶配向膜を構成する有機膜に対して配向処理を行うことによって与えられる。
【0004】
配向制御能を付与するための液晶配向膜の配向処理方法としては、従来からラビング法が知られている。ラビング法とは、基板上のポリビニルアルコールやポリアミドやポリイミド等の有機膜に対し、その表面を綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一定方向に擦り(ラビングし)、擦った方向(ラビング方向)に液晶を配向させる方法である。このラビング法は簡便に比較的安定した液晶の配向状態を実現できるため、従来の液晶表示素子の製造プロセスにおいて利用されてきた。そして、液晶配向膜に用いられる有機膜としては、耐熱性等の信頼性や電気的特性に優れたポリイミド系の有機膜が主に選択されてきた。
【0005】
しかしながら、ポリイミドなどからなる液晶配向膜の表面を擦るラビング法は、発塵や静電気の発生が問題となることがあった。また、近年の液晶表素子の高精細化や、対応する基板上の電極や液晶駆動用のスイッチング能動素子による凹凸のため、液晶配向膜の表面を布で均一に擦ることができず、均一な液晶の配向を実現できないことがあった。
【0006】
そこで、ラビングを行わない液晶配向膜の別の配向処理方法として、光配向法が盛んに検討されている。
【0007】
光配向法には様々な方法があるが、直線偏光またはコリメートした光によって液晶配向膜を構成する有機膜内に異方性を形成し、その異方性に従って液晶を配向させる。
【0008】
主な光配向法としては、分解型の光配向法が知られている。例えば、ポリイミド膜に偏光紫外線を照射し、分子構造の紫外線吸収の偏光方向依存性を利用して異方的な分解を生じさせる。そして、分解せずに残されたポリイミドにより液晶を配向させるようにする(特許文献1参照)。
【0009】
また、光架橋型による光配向法も知られている。例えば、ポリビニルシンナメートを用い、偏光紫外線を照射し、偏光と平行な2つの側鎖の二重結合部分で二量化反応(架橋反応)を生じさせる。更に、斜め方向に偏光紫外線を照射することでプレチルト角が発現する(非特許文献1参照)。また、クマリンを側鎖に有する側鎖型高分子を用いた場合、偏光紫外線を照射し、偏光と平行な側鎖のクマリン部で光架橋反応を生じさせ、偏光方向と平行方向に液晶を配向させる(非特許文献2参照)。
【0010】
以上の例のように、光配向法による液晶配向膜の配向処理方法では、ラビングを不要とし、発塵や静電気の発生の懸念が無い。そして、表面に凹凸のある液晶表示素子の基板に対しても配向処理を施すことができ、工業的な生産プロセスに好適な液晶配向膜の配向処理の方法となる。加えて、光配向法は配向方向を紫外線によって制御できる事から、画素のなかに配向方向の異なる領域を複数形成(配向分割)し,視野角依存性を補償することが可能である。
【0011】
一方、液晶配向膜は液晶に対し、ある一定の傾斜角(プレチルト角)を付与する役割も担っており、プレチルト角の付与が液晶配向膜の開発において重要な課題となって来ている(特許文献3~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】日本特許第3893659号公報
【文献】日本特開平02-223916号公報
【文献】日本特開平04-281427号公報
【文献】日本特開平05-043687号公報
【文献】日本特開平10-333153号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】S. Kobayashi et al., Journal of Photopolymer Science and Technology, Vol.8, No.2, pp25-262(1995).
【文献】M. Shadt et al., Nature. Vol381, 212 (1996).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、光配向法は、液晶表示素子の配向処理方法として従来から工業的に利用されてきたラビング法と比べてラビング工程そのものを不要とし、そのため大きな利点を備える。そして、ラビングによって配向制御能がほぼ一定となるラビング法に比べ、光配向法では、偏光した光の照射量を変化させて配向制御能を制御することができる。しかしながら、光配向法では、ラビング法による場合と同程度の配向制御能を実現しようとする場合、大量の偏光した光の照射量が必要となるなど、安定な液晶の配向が実現できない場合がある。
【0015】
例えば、上記した特許文献1に記載の分解型の光配向法では、ポリイミド膜に出力500Wの高圧水銀灯からの紫外光を60分間照射する必要があるなど、長時間かつ大量の紫外線照射が必要となる。また、二量化型や光異性化型の光配向法の場合においても、数J/cm2~数十J/cm2程度の多くの量の紫外線照射が必要となる場合がある。さらに、光架橋型や光異性化型の光配向法の場合、液晶の配向の熱安定性や光安定性に劣るため、液晶表示素子とした場合に、配向不良や表示焼き付きが発生するといった問題があった。
【0016】
したがって、光配向法では、配向処理の高効率化や安定な液晶配向の実現が求められており、液晶配向膜への高い配向制御能の付与を高効率に行うことができる液晶配向膜や液晶配向剤が求められている。
【0017】
本発明は、高効率で配向制御能が付与され、チルト角特性に優れた、液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する縦電解駆動型液晶表示素子(例えば、ツイストネマチック(TN:Twisted Nematic)型液晶表示素子、垂直配向(VA:Vertical Alignment)型液晶表示素子、STN(Super-Twisted Nematic)型液晶表示素子、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶表示素子及びOCB(Optically Compensated Bend)型液晶表示素子)を提供することを目的とする。
また、本発明の目的は、上記目的に加えて、向上したチルト角特性を有する縦電解駆動型(例えば、ツイストネマチック型液晶表示素子、VA型液晶表示素子、STN型液晶表示素子、ECB型液晶表示素子及びOCB型液晶表示素子)及び該素子のための液晶配向膜を提供することにある。なお、縦電解駆動型液晶表示素子とは、基板面に対し垂直方向に電界を印加し、液晶分子を駆動する方式のことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を達成するべく鋭意検討を行った結果、以下の発明を見出した。
<1> (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、(B)反応性メソゲン化合物及び有機溶媒を含有する重合体組成物。
【0019】
<2> 上記<1>において、(B)成分の反応性メソゲン化合物が、下記式(I)で表わされる化合物であるのがよい。
P-Sp-X-MG-X-Sp-P (I)
[式(I)中、
Pは重合性基であり、
Spは、炭素原子1~20個を有するスペーサー基であり、
Xは、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-から選択される基または単結合であり、
MGは、メソゲン基またはメソゲン支持基であり、この基は好ましくは、下記式IIに従い選択され:
-(A1-Z1)m-A2-Z2-A3- (II)
(式(II)中、A1、A2およびA3は相互に独立して、1,4-フェニレン基であり、この基中に存在する1個または2個以上のCH基はまたNにより置き換えられていてもよく、あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり、この基中に存在する1個のCH2基または隣接していない2個のCH2基はまたOおよび(または)Sにより置き換えられていてもよく、あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレン-2,6-ジイル基であり、これらの基は全部が未置換であるか、あるいは1個または2個以上のハロゲン、シアノまたはニトロ基により、あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基、アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されていてもよく、これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく、
Z1およびZ2はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C C=、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合であり、かつ
mは、0、1または2である)]。
【0020】
<3> 上記<1>または<2>において、(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖を有するのがよい。
【0021】
<4> 上記<1>または<2>において、(A)成分が、下記式(1)~(6)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有するのがよい。
【0022】
【0023】
[式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY1と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環である;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である」。
【0024】
<5> 上記<1>~<4>のいずれかにおいて、(A)成分が、下記式(21)~(30)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖をさらに有するのがよい。
式中、A、B、R、q1及びq2は上記と同じ定義を有する;
Y3は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
R3は、水素原子、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を表す;
lは1~12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(23)~(26)において、全てのmの合計は2以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1~3の整数を表す;
R2は、水素原子、-NO2、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
Z11、Z12は単結合、-CO-、-CH2O-、-CH=N-、-CF2-を表す。
【0025】
【0026】
<6> [I] 上記<1>~<5>のいずれに記載の重合体組成物を、液晶駆動用の電極を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に斜め方向から偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された縦電解駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を得る、前記液晶配向膜を有する基板の製造方法。
<7> 上記<6>記載の製造方法により製造された縦電解駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板。
<8> 上記<7>の基板を有する縦電解駆動型液晶表示素子。
<9> 上記<7>の基板を有するツイストネマチック型液晶表示素子またはOCB型液晶表示素子。
【0027】
<10> 上記<7>の基板(第1の基板)を準備する工程;
上記<6>の工程[I]~[III]を用いることにより、第2の基板を得る工程;及び
[IV] 液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、第1及び第2の基板を対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有することにより、縦電解駆動型液晶表示素子を得る、該液晶表示素子の製造方法。
<11> [IV]工程が、液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、配向方向が互いに直交するように第1及び第2の基板を対向配置して液晶表示素子を得る工程である、ツイストネマチック型液晶表示素子の製造方法。
<12> 上記<10>により製造された縦電解駆動型液晶表示素子。
<13> 上記<11>により製造されたツイストネマチック型液晶表示素子。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、高効率で配向制御能が付与され、チルト角特性に優れた液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する縦電解駆動型液晶表示素子(例えば、ツイストネマチック型液晶表示素子、VA型液晶表示素子、STN型液晶表示素子、ECB型液晶表示素子及びOCB型液晶表示素子)を提供することができる。
本発明の方法によって製造された縦電解駆動型液晶表示素子は、高効率に配向制御能が付与されているため長時間連続駆動しても表示特性が損なわれることがない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得て本発明を完成するに至った。
本発明の製造方法において用いられる重合体組成物は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子(以下、単に側鎖型高分子とも呼ぶ)を有しており、前記重合体組成物を用いて得られる塗膜は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を有する膜である。この塗膜にはラビング処理を行うこと無く、偏光照射によって配向処理を行う。そして、偏光照射の後、その側鎖型高分子膜を加熱する工程を経て、配向制御能が付与された塗膜(以下、液晶配向膜とも称する)となる。このとき、偏光照射によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性の側鎖型高分子自体が自己組織化により効率的に再配向する。その結果、液晶配向膜として高効率な配向処理が実現し、高い配向制御能が付与された液晶配向膜を得ることができる
【0030】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0031】
<<(A)側鎖型高分子>>
(A)成分は、所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子である。
(A)側鎖型高分子は、250nm~400nmの波長範囲の光で反応し、かつ100℃~300℃の温度範囲で液晶性を示すのがよい。
(A)側鎖型高分子は、250nm~400nmの波長範囲の光に反応する感光性側鎖を有することが好ましい。
(A)側鎖型高分子は、100℃~300℃の温度範囲で液晶性を示すためメソゲン基を有することが好ましい。
【0032】
(A)側鎖型高分子は、主鎖に感光性を有する側鎖が結合しており、光に感応して架橋反応、異性化反応、または光フリース転位を起こすことができる。感光性を有する側鎖の構造は特に限定されないが、光に感応して架橋反応、または光フリース転位を起こす構造が望ましく、架橋反応を起こすものがより望ましい。この場合、熱などの外部ストレスに曝されたとしても、実現された配向制御能を長期間安定に保持することができる。液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子膜の構造は、そうした特性を満足するものであれば特に限定されないが、側鎖構造に剛直なメソゲン成分を有することが好ましい。この場合、該側鎖型高分子を液晶配向膜とした際に、安定な液晶配向を得ることができる。
【0033】
該高分子の構造は、例えば、主鎖とそれに結合する側鎖を有し、その側鎖が、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基などのメソゲン成分と、先端部に結合された、光に感応して架橋反応や異性化反応をする感光性基とを有する構造や、主鎖とそれに結合する側鎖を有し、その側鎖がメソゲン成分ともなり、かつ光フリース転位反応をするフェニルベンゾエート基を有する構造とすることができる。
【0034】
液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の構造のより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、下記式(1)から(6)の少なくとも1種からなる感光性側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0035】
【0036】
式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、-O-、-CH2-、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NH-CO-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表す;
Sは、炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1~12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Y1は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5~8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2~6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-COOR0(式中、R0は炭素数1~5のアルキル基を表す)、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Y2は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、炭素数1~6のアルコキシ基を表すか、又はY1と同じ定義を表す;
Xは、単結合、-COO-、-OCO-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-CO-O-、又は-O-CO-CH=CH-を表し、Xの数が2となるときは、X同士は同一でも異なっていてもよい;
Couは、クマリン-6-イル基またはクマリン-7-イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である;ただし、Xが-CH=CH-CO-O-、-O-CO-CH=CH-である場合、-CH=CH-が結合する側のP又はQは芳香環である;
l1は0または1である;
l2は0~2の整数である;
l1とl2がともに0であるときは、Tが単結合であるときはAも単結合を表す;
l1が1であるときは、Tが単結合であるときはBも単結合を表す;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。
【0037】
側鎖は、下記式(7)~(10)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、B、D、Y1、X、Y2、及びRは、上記と同じ定義を有する;
lは1~12の整数を表す;
mは、0~2の整数を表し、m1、m2は1~3の整数を表す;
nは0~12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す。
【0038】
【0039】
側鎖は、下記式(11)~(13)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、X、l、m及びRは、上記と同じ定義を有する。
【0040】
【0041】
側鎖は、下記式(14)又は(15)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、Y1、X、l、m1及びm2は上記と同じ定義を有する。
【0042】
【0043】
側鎖は、下記式(16)又は(17)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、X、l及びmは、上記と同じ定義を有する。
【0044】
【0045】
また、側鎖は、下記式(18)又は(19)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、B、Y1、q1、q2、m1、及びm2は、上記と同じ定義を有する。
R1は、水素原子、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基を表す。
【0046】
【0047】
側鎖は、下記式(20)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、Y1、X、l及びmは上記と同じ定義を有する。
【0048】
【0049】
また、(A)側鎖型高分子は、下記式(21)~(30)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有するのがよい。
式中、A、B、R、q1及びq2は上記と同じ定義を有する;
Y3は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に-NO2、-CN、ハロゲン基、炭素数1~5のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
R3は、水素原子、-NO2、-CN、-CH=C(CN)2、-CH=CH-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5~8の脂環式炭化水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数1~12のアルコキシ基を表す;
lは1~12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(23)~(26)において、全てのmの合計は2以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1~3の整数を表す;
R2は、水素原子、-NO2、-CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5~8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
Z11、Z12は単結合、-CO-、-CH2O-、-CH=N-、-CF2-を表す。
【0050】
【0051】
<<感光性の側鎖型高分子の製法>>
上記の液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子は、上記の感光性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーおよび液晶性側鎖モノマーを重合することによって得ることができる。
【0052】
[光反応性側鎖モノマー]
光反応性側鎖モノマーとは、高分子を形成した場合に、高分子の側鎖部位に感光性側鎖を有する高分子を形成することができるモノマーのことである。
側鎖の有する光反応性基としては下記の構造およびその誘導体が好ましい。
【化11】
【0053】
光反応性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(1)~(6)の少なくとも1種からなる感光性側鎖、好ましくは、例えば、上記式(7)~(10)の少なくとも1種からなる感光性側鎖、上記式(11)~(13)の少なくとも1種からなる感光性側鎖、上記式(14)又は(15)で表される感光性側鎖、上記式(16)又は(17)で表される感光性側鎖、上記式(18)又は(19)で表される感光性側鎖、上記式(20)で表される感光性側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0054】
このような光反応性側鎖モノマーとしては、偏光紫外線を照射した際に、二量化反応または異性化反応を示すものが好ましい。このようなモノマーとしては、例えば、下記式M1-1~M1-22から選ばれるモノマーが挙げられる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
(式中、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0059】
【0060】
(式中、Rは炭素数1~6のアルコキシ基であり、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0061】
[液晶性側鎖モノマー]
液晶性側鎖モノマーとは、該モノマー由来の高分子が液晶性を発現し、該高分子が側鎖部位にメソゲン基を形成することができるモノマーのことである。
側鎖の有するメソゲン基として、ビフェニルやフェニルベンゾエートなどの単独でメソゲン構造となる基であっても、安息香酸などのように側鎖同士が水素結合することでメソゲン構造となる基であってもよい。側鎖の有するメソゲン基としては下記の構造が好ましい。
【0062】
【0063】
液晶性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(21)~(30)の少なくとも1種からなる側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0064】
このような液晶性モノマーの具体例としては、例えば、下記式M2-1~M2-10からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを用いることもできる。
【0065】
【0066】
【0067】
(式中、M1は水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1~6のアルコキシ基であり、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0068】
(A)側鎖型高分子は、上述した液晶性を発現する光反応性側鎖モノマーの共重合反応により得ることができる。また、液晶性を発現しない光反応性側鎖モノマーと液晶性側鎖モノマーとの共重合や、液晶性を発現する光反応性側鎖モノマーと液晶性側鎖モノマーとの共重合によって得ることができる。さらに、液晶性の発現能を損なわない範囲でその他のモノマーと共重合することができる。
【0069】
その他のモノマーとしては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。
その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0070】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0071】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0072】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0073】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0074】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0075】
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0076】
本発明の側鎖型高分子における光反応性側鎖の含有量は、液晶配向性といった点から、10モル%~100モル%が好ましく、20モル%~95モル%がより好ましく、30モル%~90モル%が更に好ましい。
【0077】
本発明の側鎖型高分子における液晶性側鎖の含有量は、液晶配向性といった点から、90モル%以下が好ましく、5モル%~80モル%がより好ましく、10モル%~70モル%が更に好ましい。
【0078】
本発明の側鎖型高分子は、上記光反応性側鎖及び液晶性側鎖以外のその他側鎖を含有していてもよい。その含有量は、上記光反応性側鎖及び液晶性側鎖の含有量の合計が100%に満たない場合に、その残りの部分である。
【0079】
本実施の形態の側鎖型高分子の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、液晶性側鎖モノマーや光反応性側鎖モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0080】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0081】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシ シクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、 パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0082】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’-トリ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジ(メトキシカルボニル)-4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’-ジ(メトキシカルボニル)-4,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ジ(メトキシカルボニル)-3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(3-メチル-3H-ベンゾチアゾール-2-イリデン)-1-ナフタレン-2-イル-エタノン、又は2-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2(3H)-イリデン)-1-(2-ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0083】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0084】
液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の重合反応に用いる有機溶媒としては、生成した高分子が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0085】
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0086】
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の有機溶媒に混合して使用してもよい。
また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
【0087】
ラジカル重合の際の重合温度は30℃~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50℃~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、モノマー濃度が、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0088】
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1モル%~10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0089】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0090】
本発明の(A)側鎖型高分子の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2000~1000000が好ましく、より好ましくは、5000~100000である。
【0091】
<<(B)RM(反応性メソゲン化合物)>>
本発明の好適態様において、液晶配向剤に使用される反応性メソゲン化合物は、下記式Iで表わされる化合物である:
P-Sp-X-MG-X-Sp-P (I)
[式(I)中、
Pは重合性基であり、
Spは、炭素原子1~20個を有するスペーサー基であり、
Xは、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-から選択される基または単結合であり、
MGは、メソゲン基またはメソゲン支持基であり、この基は好ましくは、下記式(II)に従い選択され:
-(A1-Z1)m-A2-Z2-A3- (II)
(式中、
A1、A2およびA3は相互に独立して、1,4-フェニレン基であり、この基中に存在する1個または2個以上のCH基はまたNにより置き換えられていてもよく、あるいは1,4-シクロヘキシレン基であり、この基中に存在する1個のCH2基または隣接していない2個のCH2基はまたOおよび(または)Sにより置き換えられていてもよく、あるいは1,4-シクロヘキセニレン基またはナフタレン-2,6-ジイル基であり、これらの基は全部が未置換であるか、あるいは1個または2個以上のハロゲン、シアノまたはニトロ基により、あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基、アルコキシ基またはアルカノイル基により置換されていてもよく、これらの基中の1個または2個以上のH原子はFまたはClにより置換されていてもよく、
Z1およびZ2はそれぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C C=、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合であり、そして
mは、0、1または2である)]。
【0092】
少なくとも2種の反応性メソゲン化合物を含有し、その少なくとも1種が式Iで表わされる化合物である重合性混合物は特に好適である。
二環状および三環状メソゲン化合物は好適である。
ハロゲンは好ましくは、FまたはClである。
【0093】
式Iで表わされる化合物の中で、MGが式IIにおいて、Z1およびZ2が、-COO-、-OCO-、-CH2-CH2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合である化合物は特に好適である。
【0094】
式IIで表わされる好適メソゲン基の小さい群を下記に示す。簡潔にするために、これらの基において、Pheは1,4-フェニレンであり、PheLは少なくとも1個の基Lにより置換されている1,4-フェニレンであり、ここでLはF、ClまたはCNであるか、あるいは炭素原子1~4個を有し、フッ素化されていてもよいアルキル基、アルコキシ基またはアルカノイル基であり、そしてCycはトランス-1,4-シクロヘキシレンである。
【0095】
【0096】
これらの好適基において、Z1およびZ2は、上記式Iについて示されている意味を有する。好ましくは、Z1およびZ2は、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-または-CH=CH-COO-である。
Lは好ましくは、F、Cl、CN、NO2、CH3、C2H5、OCH3、OC2H5、COCH3、COC2H5、CF3、OCF3、OCHF2、OCF5、特にF、Cl、CN、CH3、C2H5、OCH3、COCH3およびOCF3、最も好ましくはF、CH3、OCH3およびCOCH3である。
【0097】
MGが下記式から選択される化合物は特に好適である:
【0098】
【0099】
【0100】
これらの式において、Lは上記意味を有し、そしてrは0、1または2である。
これらの好適式において、基:
【0101】
【0102】
は、非常に好ましくは、
【0103】
【0104】
を表わし、さらにまた、
【0105】
【0106】
を表わし、これらの基において、Lはそれぞれ独立して、上記意味の一つを有する。
これらの好適化合物中に存在するRは、P-(Sp)n-について示されている意味の一つを有する。
【0107】
Pは好ましくは、CH
2=CW-COO-、WCH=CH-O-、
【化25】
【0108】
またはCH2=CH-フェニル-(O)Kから選択され、ここでWはH、CH3またはClであり、そしてkは0または1である。
【0109】
Pは特に好ましくは、ビニル基、アクリレート基、メタアクリレート基、プロペニル基またはエポキシ基であり、非常に特に好ましくは、アクリレート基である。
【0110】
スペーサー基Spとしてはこの目的に当業者に知られている全部の基を使用することができる。スペーサー基Spは好ましくは、エステルまたはエーテル基により、あるいは単結合により重合性基Pに結合している。スペーサー基Spは好ましくは、炭素原子1~20個、特に炭素原子1~12個を有し、さらにこの基中に存在する1個のCH2基または隣接していない2個以上のCH2基が、-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-CO-、-O-CO-、-S-CO-、-O-COO-、-CO-S-、-CO-O-、-CH(ハロゲン)-、-CH(CN)-、-CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていてもよい直鎖状または分枝鎖状アルキレン基である。
【0111】
代表的スペーサー基は、例えば-(CH2)0-、-(CH2CH2O)r-CH2CH2-、-CH2CH2-S-CH2CH2-または-CH2CH2-NH-CH2CH2-であり、これらの基において、oは2~12の整数であり、そしてrは1~3の整数である。
【0112】
好適スペーサー基は、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン-チオエチレン、エチレン-N-メチルイミノエチレンおよび1-メチルアルキレンである。
【0113】
式Iにおいて、2つのP、Sp及びXは、それぞれ同一または相違していてもよい。
【0114】
式Iで表わされる重合性メソゲン化合物の代表例を、下記化合物リストに示す。しかしながら、このリストは単に例示するものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0115】
【0116】
【0117】
これらの化合物において、xおよびyはそれぞれ独立して、1~12であり、M1は水素原子又はメチル基であり、そしてL1およびL2はそれぞれ独立して、H、ハロゲンまたはCNであるか、あるいは炭素原子1~7個を有するアルキル基、アルコキシ基またはアルカノイル基である。
これらの化合物は、文献公知であるか、市販されている。
【0118】
<<(C)有機溶媒>>
本発明に用いられる重合体組成物に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0119】
<重合体組成物>
上記基板の電極が形成された側に、重合体組成物を塗布する。
本発明の製造方法に用いられる、該重合体組成物は、(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、(B)反応性メソゲン化合物及び(C)有機溶媒を含有する。
【0120】
[重合体組成物の調製]
本発明に用いられる重合体組成物は、液晶配向膜の形成に好適となるように塗布液として調製されることが好ましい。すなわち、本発明に用いられる重合体組成物は、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。ここで、その樹脂成分とは、既に説明した液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を含む樹脂成分である。その際、樹脂成分の含有量は、1質量%~20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%~15質量%、特に好ましくは3質量%~10質量%である。
【0121】
本実施形態の重合体組成物において、前述の樹脂成分は、全てが上述した液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子であってもよいが、液晶発現能および感光性能を損なわない範囲でそれら以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における他の重合体の含有量は、0.5質量%~80質量%、好ましくは1質量%~50質量%である。
そのような他の重合体は、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸やポリイミド等からなり、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子ではない重合体等が挙げられる。
【0122】
本発明に用いられる重合体組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)有機溶媒以外の成分を含有してもよい。その例としては、重合体組成物を塗布した際の、膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0123】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、次のものが挙げられる。
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1-ヘキサノール、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等の低表面張力を有する溶媒等が挙げられる。
【0124】
これらの貧溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上述のような溶媒を用いる場合は、重合体組成物に含まれる溶媒全体の溶解性を著しく低下させることが無いように、溶媒全体の5質量%~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%~60質量%である。
【0125】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップ(登録商標)301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R-30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(旭硝子社製)、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~2質量部、より好ましくは0.01質量部~1質量部である。
【0126】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物などが挙げられる。
例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0127】
さらに、基板と液晶配向膜の密着性の向上に加え、液晶表示素子を構成した時のバックライトによる電気特性の低下等を防ぐ目的で、以下のようなフェノプラスト系やエポキシ基含有化合物の添加剤を、重合体組成物中に含有させても良い。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0128】
【0129】
具体的なエポキシ基含有化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタンなどが例示される。
【0130】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部~20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0131】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。無色増感剤および三重項増感剤が好ましい。
【0132】
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2-ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2-ヒドロキシケトン(2-ヒドロキシベンゾフェノン、モノ-もしくはジ-p-(ジメチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾチアゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2-ベンゾイルメチレン-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(α-ナフトイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチルベンゾオキサゾリン、2-(β-ナフトイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(4-ビフェノイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン、2-(p-フルオロベンゾイルメチレン)-3-メチル-β-ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m-もしくはp-ニトロアニリン、2,4,6-トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5-ニトロアセナフテン)、(2-[(m-ヒドロキシ-p-メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N-アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2-ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2-ナフタレンメタノール、2-ナフタレンカルボン酸、9-アントラセンメタノール、および9-アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等がある。
好ましくは、芳香族2-ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールである。
【0133】
本発明の液晶配向膜を有する基板の製造方法は、
[I] (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、(B)反応性メソゲン化合物及び有機溶媒を含有する重合体組成物を、液晶駆動用の電極を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有する。
上記工程により、配向制御能が付与された縦電解駆動型液晶表示素子(例えば、ツイストネマチック型液晶表示素子、垂直配向型液晶表示素子、STN型液晶表示素子、ECB型液晶表示素子及びOCB型液晶表示素子)用液晶配向膜を得ることができ、該液晶配向膜を有する基板を得ることができる。
【0134】
また、上記得られた基板(第1の基板)の他に、第2の基板を準備することにより、縦電解駆動型液晶表示素子(例えば、ツイストネマチック型液晶表示素子、垂直配向型液晶表示素子、STN型液晶表示素子、ECB型液晶表示素子及びOCB型液晶表示素子)を得ることができる。
第2の基板は、上記工程[I]~[III]を用いることにより、配向制御能が付与された液晶配向膜を有する第2の基板を得ることができる。
【0135】
縦電解駆動型液晶表示素子の製造方法は、
[IV] 上記で得られた第1及び第2の基板を、液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有する。その際、上記で得られた第1及び第2の配向膜付き基板であって、チルト角が10~50度のものをラビング方向(液晶の配向)が平行かつ同じ方向(パラレル配向)となるように配置すればOCB型液晶表示素子が得られる。同じ方法を、チルト角が80~90度の配向膜付き基板を2枚用いて行うと垂直配向型液晶表示素子が得られる。ラビング方向が互いに直交するように、すなわち、約90度ねじれるように配置すればツイストネマチック型液晶表示素子が得られ、ラビング方向が約260度ねじれるように配置すればSTN型液晶表示素子が得られる。また、上記で得られた第1及び第2の配向膜付き基板を、配向処理方向が互いに平行かつ反対方向(アンチパラレル)となるように配置すると、ECB型液晶表示素子が得られる。
【0136】
以下、本発明の製造方法の有する[I]~[III]、および[IV]の各工程について説明する。
<工程[I]>
工程[I]では、液晶駆動用の電極を有する基板上に、(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子、(B)反応性メソゲン化合物及び有機溶媒を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成する。
【0137】
<基板>
基板については、特に限定はされないが、製造される液晶表示素子が透過型である場合、透明性の高い基板が用いられることが好ましい。その場合、特に限定はされず、ガラス基板、またはアクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができる。
液晶駆動のための電極としてはITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)、IZO(Indium Zinc Oxide:酸化インジウム亜鉛)などが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
基板に電極を形成する方法は、従来公知の手法を用いることができる。
【0138】
上述した重合体組成物を液晶駆動用の電極を有する基板上に塗布する方法は特に限定されない。
塗布方法は、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナ法(回転塗布法)またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0139】
液晶駆動用の電極を有する基板上に重合体組成物を塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により50~230℃、好ましくは50~200℃で0.4分間~60分間、好ましくは0.5分間~10分間溶媒を蒸発させて塗膜を得ることができる。このときの乾燥温度は、側鎖型高分子の液晶相発現温度よりも低いことが好ましい。
塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nm~300nm、より好ましくは10nm~150nmである。
尚、[I]工程の後、続く[II]工程の前に塗膜の形成された基板を室温にまで冷却する工程を設けることも可能である。
【0140】
<工程[II]>
工程[II]では、工程[I]で得られた塗膜に、斜め方向から偏光した紫外線を照射する。塗膜の膜面に偏光した紫外線を照射する場合、基板に対して一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射する。使用する紫外線としては、波長100nm~400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm~400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0141】
偏光した紫外線の照射量は、使用する塗膜に依存する。照射量は、該塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAの最大値(以下、ΔAmaxとも称する)を実現する偏光紫外線の量の1%~70%の範囲内とすることが好ましく、1%~50%の範囲内とすることがより好ましい。
【0142】
偏光した紫外線の照射方向は、通常、基板に対して1°から89°であるが、好ましくは10°~80°、特に好ましくは20°~70°である。この角度が小さすぎる場合はプレチルト角が小さくなるという問題があり、大きすぎる場合はプレチルト角が高くなるという問題がある。
【0143】
照射方向を上記の角度に調節する方法としては、基板自体を傾ける方法と、光源を傾ける方法があるが、光源自体を傾けるのがスループットの観点からより好ましい。
【0144】
<工程[III]>
工程[III]では、工程[II]で偏光した紫外線の照射された塗膜を加熱する。加熱により、塗膜に配向制御能を付与することができる。
加熱は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段を用いることができる。加熱温度は、使用する塗膜の液晶性を発現させる温度を考慮して決めることができる。
【0145】
加熱温度は、側鎖型高分子が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という)の温度範囲内であることが好ましい。塗膜のような薄膜表面の場合、塗膜表面の液晶発現温度は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子をバルクで観察した場合の液晶発現温度よりも低いことが予想される。このため、加熱温度は、塗膜表面の液晶発現温度の温度範囲内であることがより好ましい。すなわち、偏光紫外線照射後の加熱温度の温度範囲は、使用する側鎖型高分子の液晶発現温度の温度範囲の下限より10℃低い温度を下限とし、その液晶温度範囲の上限より10℃低い温度を上限とする範囲の温度であることが好ましい。加熱温度が、上記温度範囲よりも低いと、塗膜における熱による異方性の増幅効果が不十分となる傾向があり、また加熱温度が、上記温度範囲よりも高すぎると、塗膜の状態が等方性の液体状態(等方相)に近くなる傾向があり、この場合、自己組織化によって一方向に再配向することが困難になることがある。
なお、液晶発現温度は、側鎖型高分子または塗膜表面が固体相から液晶相に相転移がおきるガラス転移温度(Tg)以上であって、液晶相からアイソトロピック相(等方相)に相転移を起こすアイソトロピック相転移温度(Tiso)以下の温度をいう。
【0146】
加熱後に形成される塗膜の厚みは、工程[I]で記した同じ理由から、好ましくは5nm~300nm、より好ましくは50nm~150nmであるのがよい。
以上の工程を有することにより、本発明の製造方法では、高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。そして、高効率に液晶配向膜付基板を製造することができる。
【0147】
<工程[IV]>
[IV]工程は、基板の液晶配向膜が形成された側が対向するように配置された2枚の[III]で得られた基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された上記液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。このような本発明の縦電解駆動型液晶表示素子としては、ツイストネマティック(TN:Twisted Nematic)方式、垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式やSTN(Super-Twisted Nematic)型液晶表示素子、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型液晶表示素子及びOCB配向(OCB:Optically Compensated Bend)等、種々のものが挙げられる。
【0148】
液晶セル又は液晶表示素子の作製の一例を挙げるならば、上述の第1及び第2の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、ツイストネマチック型素子を得たい場合は紫外線露光方向が互いに直交するように、その他の素子を得たい場合は上述のように、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に、基板を貼り合わせて封止を行う方法、等を例示することができる。このときのスペーサの径は、好ましくは1μm~30μm、より好ましくは2μm~10μmである。このスペーサ径が、液晶層を挟持する一対の基板間距離、すなわち、液晶層の厚みを決めることになる。
【0149】
得られた液晶表示素子は、さらに配向安定性のためにアニール処理をすることが好ましい。加熱温度は液晶の相転移温度である、好ましくは10~160℃、より好ましくは50~140℃であるのがよい。
【0150】
本発明の塗膜付基板の製造方法は、重合体組成物を基板上に塗布し塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射する。次いで、加熱を行うことにより側鎖型高分子膜への高効率な異方性の導入を実現し、液晶の配向制御能を備えた液晶配向膜付基板を製造する。
本発明に用いる塗膜では、側鎖の光反応と液晶性に基づく自己組織化によって誘起される分子再配向の原理を利用して、塗膜への高効率な異方性の導入を実現する。本発明の製造方法では、側鎖型高分子に光反応性基として光架橋性基を有する構造の場合、側鎖型高分子を用いて基板上に塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射し、次いで、加熱を行った後、液晶表示素子を作成する。
【0151】
したがって、本発明の方法に用いる塗膜は、塗膜への偏光した紫外線の照射と加熱処理を順次行うことにより、高効率に異方性が導入され、配向制御能に優れた液晶配向膜とすることができる。
【0152】
そして、本発明の方法に用いる塗膜では、塗膜への偏光した紫外線の照射量と、加熱処理における加熱温度を最適化する。それにより高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。
【0153】
本発明に用いられる塗膜への高効率な異方性の導入に最適な偏光紫外線の照射量は、その塗膜において感光性基が光架橋反応や光異性化反応、若しくは光フリース転位反応する量を最適にする偏光紫外線の照射量に対応する。本発明に用いられる塗膜に対して偏光した紫外線を照射した結果、光架橋反応や光異性化反応、若しくは光フリース転位反応する側鎖の感光性基が少ないと、十分な光反応量とならない。その場合、その後に加熱しても十分な自己組織化は進行しない。一方、本発明に用いられる塗膜で、光架橋性基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射した結果、架橋反応する側鎖の感光性基が過剰となると側鎖間での架橋反応が進行しすぎることになる。その場合、得られる膜は剛直になって、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。また、本発明に用いられる塗膜で、光フリース転位基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射した結果、光フリース転位反応する側鎖の感光性基が過剰となると、塗膜の液晶性が低下しすぎることになる。その場合、得られる膜の液晶性も低下し、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。さらに、光フリース転位基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射する場合、紫外線の照射量が多すぎると、側鎖型高分子が光分解し、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。
【0154】
したがって、本発明に用いられる塗膜において、偏光紫外線の照射によって側鎖の感光性基が光架橋反応や光異性化反応、若しくは光フリース転位反応する最適な量は、その側鎖型高分子膜の有する感光性基の0.1モル%~40モル%にすることが好ましく、0.1モル%~20モル%にすることがより好ましい。光反応する側鎖の感光性基の量をこのような範囲にすることにより、その後の加熱処理での自己組織化が効率良く進み、膜中での高効率な異方性の形成が可能となる。
【0155】
本発明の方法に用いる塗膜では、偏光した紫外線の照射量の最適化により、側鎖型高分子膜の側鎖における、感光性基の光架橋反応や光異性化反応、または光フリース転位反応の量を最適化する。そして、その後の加熱処理と併せて、高効率な、本発明に用いられる塗膜への異方性の導入を実現する。その場合、好適な偏光紫外線の量については、本発明に用いられる塗膜の紫外吸収の評価に基づいて行うことが可能である。
【0156】
すなわち、本発明に用いられる塗膜について、偏光紫外線照射後の、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸収と、垂直な方向の紫外線吸収とをそれぞれ測定する。紫外吸収の測定結果から、その塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAを評価する。そして、本発明に用いられる塗膜において実現されるΔAの最大値(ΔAmax)とそれを実現する偏光紫外線の照射量を求める。本発明の製造方法では、このΔAmaxを実現する偏光紫外線照射量を基準として、液晶配向膜の製造において照射する、好ましい量の偏光した紫外線量を決めることができる。
【0157】
本発明の製造方法では、本発明に用いられる塗膜への偏光した紫外線の照射量を、ΔAmaxを実現する偏光紫外線の量の1%~70%の範囲内とすることが好ましく、1%~50%の範囲内とすることがより好ましい。本発明に用いられる塗膜において、ΔAmaxを実現する偏光紫外線の量の1%~50%の範囲内の偏光紫外線の照射量は、その側鎖型高分子膜の有する感光性基全体の0.1モル%~20モル%を光架橋反応させる偏光紫外線の量に相当する。
【0158】
以上より、本発明の製造方法では、塗膜への高効率な異方性の導入を実現するため、その側鎖型高分子の液晶温度範囲を基準として、上述したような好適な加熱温度を定めるのがよい。したがって、例えば、本発明に用いられる側鎖型高分子の液晶温度範囲が100℃~200℃である場合、偏光紫外線照射後の加熱の温度を90℃~190℃とすることが望ましい。こうすることにより、本発明に用いられる塗膜において、より大きな異方性が付与されることになる。
【0159】
こうすることにより、本発明によって提供される液晶表示素子は光や熱などの外部ストレスに対して高い信頼性を示すことになる。
【0160】
以上のようにして、本発明の方法によって製造された縦電解駆動型型液晶表示素子用基板又は該基板を有する縦電解駆動型型液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。
【0161】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は、該実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0162】
実施例で使用する略号は以下のとおりである。
<メタクリルモノマー>
【0163】
【0164】
<液晶化合物>
【0165】
【0166】
MA1はMacromolecules 2007, 40, 6355-6360を参考に合成した。
PLC1は市販品を購入して用いた。
PLC2は市販購入可能であるLC242(BASF社)を用いた。
PLC4は特許文献(特開平9-118717)に記載の合成法にて合成した。
PLC5は文献等未公開の新規化合物である。PLC5は、PLC4及びPLC5-1を用いて合成したが、その詳細は以下の「<化合物PLC5の合成>」で説明する。なお、PLC5-1は文献(Liquid Crystals (2005), 32(8), 1031-1044.)に記載の合成法にて合成した。
PLC6は市販購入可能であるM6BC(みどり化学株式会社製)を用いた。
【0167】
<化合物PLC5の合成>
500mL四つ口フラスコに、化合物PLC4(20.00g、65.3mmol)、化合物PLC5-1(14.09g、71.8mmol)、EDC(15.02g、78.4mmol)、DMAP(0.80g、6.53mmol)、THF(200g)を加え23℃で反応を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了を確認後、反応溶液を蒸留水(1.2L)に注ぎ、酢酸エチル(2L)を加え、分液操作にて水層を除去した。有機層を蒸留水(500mL)で3回洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ろ過、エバポレーターにて溶媒留去することで、オイル状化合物として化合物PLC5-2を得た。引き続き、得られた化合物PLC5-2にピリジニウム p-トルエンスルホン酸(PPTSと表記)(1.59g、6.3mmol)、エタノール(100g)を加え、60℃で加熱撹拌を行った。HPLCにて反応追跡を行い、反応終了を確認後、反応溶液を氷浴で冷却し、析出した固体をろ過、エタノールで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥することで、化合物PLC5を19.2g(収率69%)得た。
1H-NMR(400MHz, CDCl3, δppm):8.22-8.18(2H, m), 8.17-8.14(2H, m), 7.36-7.32(2H, m), 7.00-6.96(2H, m), 6.12-6.11(1H, m), 5.57-5.55(1H, m), 4.20-4.16(2H, m), 4.06(2H, t), 1.96-1.95(3H, m), 1.90-1.46(8H, m).
【0168】
【0169】
また、樹脂の分子量測定条件は、以下の通りである。
装置: センシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC-7200)、
カラム: Shodex社製カラム(KD-803、KD-805)、
カラム温度: 50℃、
溶離液: N,N’-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)、
流速: 1.0ml/分、
検量線作成用標準サンプル: 東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約9000,000、150,000、100,000、30,000)、および、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0170】
<有機溶媒>
NMP: N-メチル-2-ピロリドン
BCS: ブチルセロソルブ
【0171】
<重合開始剤>
AIBN: 2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0172】
<メタクリレートポリマー合成例1>
MA1(28.6g、50.0mmol)をNMP(163.7g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気し窒素置換を行なった後、AIBNを(0.25g、1.5mmol)を加え再び脱気し窒素置換を行なった。この後60℃で24時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をジエチルエーテル(5000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をジエチルエーテルで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末P1を得た。得られたメタクリレートポリマーの数平均分子量は46,000、重量平均分子量は119,600であった。
得られたメタクリルポリマー粉末(A)(6.0g)にNMP(114.0g)を加え、室温にて5時間攪拌して溶解させた。この溶液にBCS(30.0g)を加え、室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤B1を得た。
【0173】
<実施例1>
合成例1で得られた液晶配向剤B1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC1を0.04g(固形分に対して10質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B2を調製した。
得られた液晶配向剤B2を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0174】
<実施例2>
合成例1で得られた液晶配向剤B1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC1を0.10g(固形分に対して25質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B3を調製した。
得られた液晶配向剤B3を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0175】
<実施例3>
合成例1で得られた液晶配向剤B1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC2を0.10g(固形分に対して25質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B4を調製した。
得られた液晶配向剤B4を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0176】
<比較例1>
合成例1で得られた液晶配向剤D1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC3を0.10g(固形分に対して25質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B5を調製した。
得られた液晶配向剤B5を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0177】
<比較例2>
合成例1で得られた液晶配向剤B1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC4を0.10g(固形分に対して25質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B6を調製した。
得られた液晶配向剤B6を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0178】
<比較例3>
合成例1で得られた液晶配向剤B1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC5を0.10g(固形分に対して25質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B7を調製した。
得られた液晶配向剤B7を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0179】
<比較例4>
合成例1で得られた液晶配向剤B1 10.0gに対して合成例1で得られた液晶性化合物PLC6を0.10g(固形分に対して25質量%)添加し、室温で3時間攪拌して溶解させ、液晶配向剤B8を調製した。
得られた液晶配向剤B8を冷凍庫で1日保存し、解凍したところ、析出物は確認されなかった。
【0180】
<実施例4>
[液晶セルの作製]
実施例1で得られた液晶配向剤B3を用いて下記に示すような手順でツイストネマティック液晶セルの作製を行った。
実施例1で得られた液晶配向剤B3を、ITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、基板に対し水平方向から40°傾けた313nmの偏光紫外線を50mJ/cm2照射し、200℃のホットプレートで10分間加熱を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(溶剤型熱硬化タイプのエポキシ樹脂)を印刷した。次いで、配向方向が直行するように2枚の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに液晶MLC-2003(C080)(メルク社製商品名)を減圧注入法によって注入し、ツイストネマティック液晶セルを作製した。作製した液晶セルは、その後、120℃の熱風循環式オーブンに1時間入れ、液晶の再配向処理を行った。
【0181】
<実施例5>
上記の偏光紫外線の角度を30°にした以外、実施例4と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0182】
<実施例6>
偏光紫外線照射角度を45°にした以外、実施例4と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0183】
<実施例7>
液晶配向剤B3の代わりに液晶配向剤B4を用いた以外、実施例4と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0184】
<実施例8>
液晶配向剤B3の代わりに液晶配向剤B4を用いた以外、実施例5と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0185】
<実施例9>
液晶配向剤B3の代わりに液晶配向剤B4を用いた以外、実施例6と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0186】
<実施例10>
液晶配向剤B3の代わりに液晶配向剤B2を用いた以外、実施例6と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0187】
<比較例5>
実施例4の液晶配向剤B3の代わりに液晶配向剤B1を用いた以外、実施例4と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0188】
<比較例6>
液晶配向剤B3の代わりに液晶配向剤B1を用いた以外、実施例6と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0189】
<比較例7~10>
液晶配向剤B3の代わりにそれぞれ液晶配向剤B5~B8を用いた以外、実施例6と同様にツイストネマティック液晶セルを作製した。
【0190】
(プレチルト角の測定)
ツイストネマティック液晶セルのプレチルト角(°)は、Axo Metrix社製の「Axo Scan」にて、ミュラーマトリクス法を用いて測定した。
【0191】
結果は下記表1に示されるとおりであった。
【表1】
【0192】
表1に示すように、(B)成分である反応性メソゲン化合物を添加した実施例4~10では、得られた液晶配向膜は、ツイストネマティックモードに好適なプレチルト角を示した。一方、(B)成分である反応性メソゲン化合物を添加していない液晶配向剤を用いた比較例5と6では、プレチルト角50°乃至58°となり、ツイストネマティックモードに好適なプレチルト角とはならなかった。また、メソゲン化合物ではない化合物を添加した例である比較例7乃至10では、プレチルト角が0°となった。
【0193】
以上のように、本発明に伴う実施例で液晶化合物を内包した配向膜に斜め方向に紫外線を照射することで任意のプレチルトを発現することができる。ツイストネマティックモードに好適な液晶配向膜を提供することが可能である。
【0194】
<実施例11>
実施例6と同じように液晶セルを作製した後、この液晶セルの外側から365nmのバンドパスフィルターを通したUVを5J/cm2照射した。
(電圧保持率(VHR)評価)
VHRの評価は、得られた液晶セルに、60℃の温度下で5Vの電圧を60μs間印加し、16.67ms後に該当液晶セルの保持電圧を測定した。
【0195】
結果は下記表2に示されるとおりであった。
【表2】
【0196】
表2に示すように、本発明に伴う実施例11にて365nmの紫外線を照射することにより、液晶セル内にて液晶性化合物が重合することで電圧保持率が向上するため、長期信頼にすぐれた液晶表示素子の提供が可能となる。