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特許7046668ウェーハ面取り装置及びウェーハ面取り方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】ウェーハ面取り装置及びウェーハ面取り方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20220328BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20220328BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
B24B9/00 601H
B24B53/00 J
H01L21/304 601B
H01L21/304 622E
H01L21/304 622F
H01L21/304 622M
H01L21/304 631
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018055709
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019166598
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】陳 超
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-182839(JP,A)
【文献】特開2007-88143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
B24B 53/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの外周部を研削するウェーハ面取り装置において、
前記ウェーハを載置して水平回転する吸着テーブルをXYZ方向に移動するテーブルを設けたウェーハ送りユニットと、
前記ウェーハの外周部を加工するメタルボンドとされたトリミング砥石が装着され、該トリミング砥石を前記ウェーハの回転と同様に回転する研削ユニットと、
前記ウェーハ送りユニットの前記テーブル上に設けられ、前記トリミング砥石の回転軸と平行な軸周りに回転するドレス砥石が設けられたドレス装置と、
を備え、前記ドレス装置は前記トリミング砥石の回転円周状に配置され、前記ウェーハの外周部を前記トリミング砥石で加工しながら前記ドレス砥石でドレッシングを可能としたことを特徴とするウェーハ面取り装置。
【請求項2】
前記ドレス砥石の回転軸方向に積層されたマスタ砥石を設け、該マスタ砥石で前記トリミング砥石のツルーイングを可能としたことを特徴とする請求項1に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項3】
前記トリミング砥石の回転方向の上流側にクーラントを吐出するノズルを配置し、前記ウェーハの加工に際して、前記ノズル、ウェーハ加工点、ドレス加工点の順となるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項4】
前記トリミング砥石をメッシュサイズが#800~#1500のメタルボンドとし、前記ドレス砥石のメッシュサイズは、#1000~#2000としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項5】
前記トリミング砥石の前記ドレス砥石によるドレッシングは、スパークアウト状態となるように前記ドレス砥石の保持及びZ方向の送り量を定めたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項6】
前記ドレス砥石のZ方向の送り量を0.1~1μmとしたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項7】
前記ドレス砥石のZ軸方向の位置を検出する変位センサを設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項8】
前記ドレス砥石の上下送り指令値と前記変位センサによる前記ドレス砥石の検出位置の差から、前記ドレス砥石の前記トリミング砥石への押し付け量を判定することを特徴とする請求項7に記載のウェーハ面取り装置。
【請求項9】
ウェーハを載置して水平回転する吸着テーブルをXYZ方向に移動するテーブルを設けたウェーハ送りユニットと、前記ウェーハの外周部を加工するトリミング砥石が装着され、該トリミング砥石を前記ウェーハの回転と同様に回転する研削ユニットと、によってウェーハの外周部を研削するウェーハ面取り方法であって、
前記トリミング砥石の回転軸と平行な軸周りに回転するドレス砥石が設けられたドレス装置を前記ウェーハ送りユニットの前記テーブル上に設け、前記トリミング砥石の回転円周状に配置し、前記ウェーハの外周部を前記トリミング砥石で加工しながら前記ドレス砥石でドレッシングすることを特徴とするウェーハ面取り方法。
【請求項10】
前記ドレス砥石の回転軸方向に積層されたマスタ砥石で前記トリミング砥石のツルーイングを可能としたことを特徴とする請求項9に記載のウェーハ面取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板として、貼り合わせウェーハや成膜層付ウェーハの上面層側の外周部に不可避に残存する未接着部を除去する処理、すなわちテラス形状を形成する加工、あるいはウェーハの外周(端面エッジ)部分の加工を行うのに好適なウェーハ面取り装置及びウェーハ面取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
素子の高速化や低消費電力等の利点を有することから、貼り合わせウェーハとして、酸化膜(絶縁膜)が形成された一枚のシリコンウェーハに、もう一枚のシリコンウェーハを貼り合わせ、この貼り合わせたシリコンウェーハの一方を研削・研磨してSOI層を形成したもの、シリコンウェーハの内部に酸素イオンを打ち込んだのち、高温アニールを行うことによって、シリコンウェーハの内部に埋め込み酸化膜を形成し、該酸化膜の上部をSOI層としたもの、SOI層側となるシリコンウェーハ(活性層側ウェーハ)の表層部に、水素イオン等を打ち込んでイオン注入層を形成したのち、支持基板用のシリコンウェーハと貼り合わせたもの、などが知られている。
【0003】
また、成膜層付ウェーハとして、ウェーハ上に回路の素材となる酸化シリコンやアルミニウムなどの薄膜を形成し、イオンをアルミニウムなどの金属にぶつけて分子や原子をはがし、ウェーハ上に堆積させるスパッタ法、銅配線を成膜する電気メッキ法、ウェーハの表面に特殊なガスを供給して化学反応を起こし、そこで生成された分子の層を膜とするCVD法、ウェーハを加熱することで表面に酸化シリコンの膜を形成する熱酸化、などが知られている。
【0004】
貼り合わせウェーハや成膜層付ウェーハを製造する場合、剥離・離脱によるパーティクルの発生を防ぐため、貼り合わせウェーハの外周部に不可避に残存する未接着部を除去する処理、すなわちテラス部形成処理、あるいは貼り合わせの誤差により楕円化、いびつになった外周部分を加工して直径をそろえて真円に仕上げる処理が必要とされている。つまり、2種以上の異なる材料特性を有する一体物ウェーハ(物理的に貼り合わせや結晶成長品)のエッジ近辺の結晶不安定領域、または形状ダレ等デバイス特性を低下させる要因となる部分を面取り装置にて除去加工が行われている。
【0005】
テラス加工を行う面取り装置としては、ウェーハの裏面をチャックテーブルで保持して、ウェーハ表面に対して垂直に回転する切削ブレードを所定の厚さの深さでウェーハの外周縁に切り込ませつつ、チャックテーブルを回転させて面取り部の一部を残存させることが知られ、特許文献1に記載されている。
【0006】
テラス形状は、ウェーハ上層部における直径の除去量を多く必要とし、砥石接触面積、及び加工抵抗が大きく掛かる。そして、その負荷による異常摩耗、形状変動や、砥石目詰まりが発生し易い。さらに、テラス形状を精度良く維持するため、砥石は形状維持性を優先することが必要とされる。しかし、形状維持性を確保するには、目詰まりを少なくして切れ味を維持し、砥石に対する面圧の上昇を防いで砥石崩れの発生を無くすことが必要となる。
【0007】
そのため、目詰まりが多くなる前に手動でドレッシングを実施するか、放電加工により使用済みダイヤ層の除去が必要であった。例えば、サファイヤおよび炭化ケイ素などの難削材からなる基板の表面を仕上研削する際に、被加工物である基板を研削砥石で研削しながら、研削砥石のドレッシングを行うことが知られ、例えば、特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-127098号公報
【文献】特開2015-171760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術において、特許文献1に記載のものは、ウェーハ表面に対して垂直に回転する切削ブレードをウェーハの外周縁に切り込ませるので、特に、ウェーハの水平方向、いわゆるY切り込み(半径方向送り)では、研削抵抗が大きく、砥石接触範囲が少ないので先端の応力集中により形状精度が得られなかった。また、接線抵抗によって貼り合わせが剥がれ易く、薄片化される部分の割れを生じる恐れがあった。それらを防止するためには自生作用を有し研削能力を維持する砥石、例えばビトリファイ砥石が必要とされるが、ビトリファイ砥石はボンド崩れによる目変わりでテラス加工としての形状精度を維持することが困難であった。さらに、連続的に研削を行うには加工能率が低く、スラッジが溜り易いため、先端に異常摩耗を生じ、砥石寿命が低下せざるを得なかった。
【0010】
特許文献2に記載のものは、基板の平面研削を行うものであり、単に、押付機構部によってドレス部材を研削砥石に押付けることにより、砥粒が研削砥石から離脱して、自生作用を促進して自生発刃を生じさせるものである。したがって、特許文献2の記載のものをテラス形状の加工に適用することができるものでは無かった。つまり、テラス形状を精度良く維持するため、単に被加工物である基板を研削砥石で研削しながら、研削砥石のドレッシングを行うのでは到底達成できるものでは無かった。
【0011】
さらに、成膜層付ウェーハの場合は、成膜部分がウェーハ表面だけでなく外周にも成膜成分が付着、回り込む事があり、そのままの状態で後工程での搬送、外周部分の接触があると成膜層の剥がれる要因となる。そのため、外周部分の成膜成分の除去が必要であった。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、テラス形状を形成する加工、端面加工において、異常摩耗、形状変動を防いで形状精度を良くすると共に、目詰まり、砥石の寿命の低下、砥石交換を防いで加工能率を向上することにある。また、他の目的として、貼り合わせウェーハの基板表層部の割れや接合バッファー層の剥離等を無くし、低ダメージ加工とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、ウェーハの外周部を研削するウェーハ面取り装置において、前記ウェーハを載置して水平回転する吸着テーブルをXYZ方向に移動するテーブルを設けたウェーハ送りユニットと、前記ウェーハの外周部を加工するメタルボンドとされたトリミング砥石が装着され、該トリミング砥石を前記ウェーハの回転と同様に回転する研削ユニットと、前記ウェーハ送りユニットの前記テーブル上に設けられ、前記トリミング砥石の回転軸と平行な軸周りに回転するドレス砥石が設けられたドレス装置と、を備え、前記ドレス装置は前記トリミング砥石の回転円周状に配置され、前記ウェーハの外周部を前記トリミング砥石で加工しながら前記ドレス砥石でドレッシングを可能としたものである。
【0014】
また、上記において、前記ドレス砥石の回転軸方向に積層されたマスタ砥石を設け、該マスタ砥石で前記トリミング砥石のツルーイングを可能としたことが望ましい。
【0015】
さらに、上記において、前記トリミング砥石の回転方向の上流側にクーラントを吐出するノズルを配置し、前記ウェーハの加工に際して、前記ノズル、ウェーハ加工点、ドレス加工点の順となるようにしたことが望ましい。
【0016】
さらに、上記において、前記トリミング砥石をメッシュサイズが#800~#1500のメタルボンドとし、前記ドレス砥石のメッシュサイズは、#1000~#2000としたことが望ましい。
【0017】
さらに、上記において、前記トリミング砥石の前記ドレス砥石によるドレッシングは、スパークアウト状態となるように前記ドレス砥石の保持及びZ方向の送り量を定めたことが望ましい。
【0018】
さらに、上記において、前記ドレス砥石のZ方向の送り量を0.1~1μmとしたことが望ましい。
【0019】
さらに、上記において、前記ドレス砥石のZ軸方向の位置を検出する変位センサを設けたことが望ましい。
【0020】
さらに、上記において、前記ドレス砥石の上下送り指令値と前記変位センサによる前記ドレス砥石の検出位置の差から、前記ドレス砥石の前記トリミング砥石への押し付け量を判定することが望ましい。
【0021】
また、本発明は、ウェーハを載置して水平回転する吸着テーブルをXYZ方向に移動するテーブルを設けたウェーハ送りユニットと、前記ウェーハの外周部を加工するトリミング砥石が装着され、該トリミング砥石を前記ウェーハの回転と同様に回転する研削ユニットと、によってウェーハの外周部を研削するウェーハ面取り方法であって、前記トリミング砥石の回転軸と平行な軸周りに回転するドレス砥石が設けられたドレス装置を前記ウェーハ送りユニットの前記テーブル上に設け、前記トリミング砥石の回転円周状に配置し、前記ウェーハの外周部を前記トリミング砥石で加工しながら前記ドレス砥石でドレッシングすることにある。
【0022】
また、上記の方法において、前記ドレス砥石の回転軸方向に積層されたマスタ砥石で前記トリミング砥石のツルーイングを可能としたことが望ましい。
【0023】
さらに、上記の方法において、前記トリミング砥石の回転方向の上流側にクーラントを吐出するノズルを配置し、前記ウェーハの加工に際して、前記ノズル、ウェーハ加工点、ドレス加工点の順となるようにしたことが望ましい。
【0024】
さらに、上記の方法において、前記トリミング砥石の前記ドレス砥石によるドレッシングは、スパークアウト状態となるように前記ドレス砥石の保持及びZ方向の送り量を定めたことが望ましい。
【0025】
さらに、上記の方法において、前記トリミング砥石を回転する外周モータの電流値と、前記ドレス砥石のZ軸方向の位置と、を検出してドレッシングを行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ウェーハが載置されたウェーハ送りユニットと、トリミング砥石を回転する研削ユニットと、によってウェーハの外周部を面取りする際に、ドレス装置をウェーハ送りユニットに設けてトリミング砥石の回転円周状に配置する。そして、面取り加工しながらドレス砥石でトリミング砥石をドレッシングするので、トリミング砥石の形状維持性能が向上し、目詰まりによるドレッシングインターバルや、機外での形状修正等のダウンタイムを減らし生産性が向上する。さらに、貼り合わせウェーハの基板表層部の割れや接合バッファー層の剥離、表層に発生するスクラッチ等を無くし、低ダメージ加工とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係わるウェーハ面取り装置の主要部を示す平面図
図2図1における側面図
図3】本発明の一実施形態に係わるトリミング砥石を示す側面図
図4】本発明の一実施形態に係わるトリミング砥石とドレスユニットとの関係を示す側面図
図5】本発明の一実施形態に係わるクーラント(研削液)を吐出するノズルの配置を示す詳細図
図6】テラス加工の詳細を示す部分断面図
図7】ウェーハWの端面加工を示す部分断面図
図8】貼り合わせ誤差の修正を示す平面図
図9】成膜層付ウェーハの外周加工を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係わるウェーハ面取り装置の主要部を示す平面図、図2は側面図、図3は、トリミング砥石108を示す側面図、図4は、トリミング砥石108とドレスユニット200との関係を示す側面図である。
【0029】
貼り合わせウェーハの上面表層側にテラス形状を形成するウェーハ面取り装置のトリミング砥石は、マスタ砥石の形状を転写する形態で実施される。その際、テラス形状は、除去量を多く必要とし、砥石接触面積、及び加工抵抗が大きく掛かる。そして、その負荷による異常摩耗、形状変動や、砥石の目詰まりが発生し易い。
【0030】
テラス形状を精度良く維持するため、砥石は形状維持性を優先した高硬度砥石、例えばメタルボンド系の砥石が必要とされる。しかし、メタルボンド系の砥石は、ビトリファイド砥石のように自生作用が小さいので、目詰まりを起こし易く、切れ味が低下し易い。
【0031】
また、研削性(除去能力)よりもウェーハ送り量(ウェーハに対してZ方向切込み)が勝るとウェーハを押し付ける力が働くので、狙い通りのテラス形状を得ることが困難となる。そして、砥石側も負荷により変形するので、ウェーハ、工具(砥石)両方の弾性変形がテラス形状の誤差要因となる。また、ウェーハを押し付けることになり、ウェーハの変形、歪による内部ダメージが入る恐れがある。さらに、砥石は、面圧上昇によりテラス形状部分の砥石崩れが発生し易くなり、形状の維持ができない。
【0032】
ウェーハ面取り装置50は、ウェーハや様々な形状の脆性材料の板状体(ワーク)、例えば、サファイヤ、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(窒化ガリウム)、LT(タンタル酸リチウム)等の化合物半導体、酸化物のワークの外周部の面取り加工を行う装置である。ただし、必ずしも脆性材料の板状体に限らず、任意材料の板状体の外周部の面取り加工を行うことも可能である。以下において、面取り加工を行うワークをウェーハであるものとして説明する。
【0033】
図に示すようにウェーハ面取り装置50は、ウェーハ送りユニット50Aと研削ユニット50Bと、ドレス装置50Cとから構成される。ウェーハ送りユニット50Aの水平に配設されたベースプレート51上には、一対のY軸ガイドレール52、52が所定の間隔をもって敷設される。この一対のY軸ガイドレール52、52上には一対のY軸リニアガイド54、54、…を介してY軸テーブル56がスライド自在に支持される。
【0034】
Y軸テーブル56の下面にはナット部材58が固着されており、ナット部材58にはY軸ボールネジ60が螺合される。Y軸ボールネジ60は、一対のY軸ガイドレール52、52の間において、その両端部がベースプレート51上に配設された軸受部材62、62に回動自在に支持されており、その一端にY軸モータ64が連結される。
【0035】
Y軸モータ64を駆動することによりY軸ボールネジ60が回動し、ナット部材58を介してY軸テーブル56がY軸ガイドレール52、52に沿って水平方向(Y軸方向)にスライド移動する。
【0036】
Y軸テーブル56上には、一対のY軸ガイドレール52、52と直交するように一対のX軸ガイドレール66、66が敷設される。この一対のX軸ガイドレール66、66上にはX軸リニアガイド68、68、…を介してX軸テーブル70がスライド自在に支持される。
【0037】
X軸テーブル70の下面にはナット部材72が固着されており、ナット部材72にX軸ボールネジ74が螺合される。X軸ボールネジ74は、一対のX軸ガイドレール66、66の間において、その両端部がX軸テーブル70上に配設された軸受部材76、76に回動自在に支持されており、その一方端にX軸モータ(図示せず)の出力軸が連結される。したがって、X軸モータを駆動することによりX軸ボールネジ74が回動し、ナット部材72を介してX軸テーブル70がX軸ガイドレール66、66に沿って水平方向(X軸方向)にスライド移動する。
【0038】
X軸テーブル70上には、垂直にZ軸ベース80が立設されており、Z軸ベース80には一対のZ軸ガイドレール82、82が所定の間隔をもって敷設される。この一対のZ軸ガイドレール82、82にはZ軸リニアガイド84、84を介してZ軸テーブル86がスライド自在に支持される。なお、Y軸テーブル56の上にX軸テーブル70を配置する構成としたが、逆に、X軸テーブル70の上にY軸テーブル56を配置する構成としても良い。
【0039】
Z軸テーブル86の側面にはナット部材88が固着されており、ナット部材88にZ軸ボールネジ90に螺合される。Z軸ボールネジ90は、一対のZ軸ガイドレール82、82の間において、その両端部がZ軸ベース80に配設された軸受部材92、92に回動自在に支持されており、その下端部にZ軸モータ94の出力軸が連結される。
【0040】
Z軸モータ94を駆動することによりZ軸ボールネジ90が回動し、ナット部材88を介してZ軸テーブル86がZ軸ガイドレール82、82に沿って鉛直方向(Z軸方向)にスライド移動する。Z軸テーブル86上にはθ軸モータ96が設置される。以上、ウェーハ送りユニット50Aは、ウェーハWの位置を移動する際の数値制御軸XYZθのベースとなる各テーブル上に設置される。
【0041】
θ軸モータ96の出力軸にはZ軸に平行なθ軸(回転軸θ)を軸心とするθ軸シャフト98が連結されており、このθ軸シャフト98の上端部に吸着テーブル(保持台)10が水平に連結される。テラス面取りされるウェーハWは、吸着テーブル10上に載置されて、真空吸着によって保持される。吸着テーブル10の外径は、ウェーハWの外径よりも小さくされて、ウェーハWが吸着テーブル10に対して突き出してオーバハングするように設定される。
【0042】
ドレス装置50Cは、ウェーハ送りユニット50A側に、つまり、ウェーハ加工時の制御軸と同様にX軸テーブル70、あるいはY軸テーブル56上に配置する。また、図に示すように、トリミング砥石108の回転円周状に配置する。これにより、スラッジポケットとなるクレータとトレンチの形成方向がウェーハ研削ポイントのスラッジ発生方向及びスラッジ排出方向と同方向に形成され、スラッジの最適な排出経路が形成できる。
【0043】
ドレス装置50Cの二つのドレス案内ガイド201は、X軸テーブル70上で垂直に立設されている。ドレス案内ガイド201には、ドレス砥石203及びマスタ砥石204が同軸に設けられたドレスユニット200がドレスアーム202を介してZ軸方向にスライド自在に支持される。
【0044】
ドレスアーム202は、ボールネジ機構205に片持ち構造で支持され、ボールネジ機構205はドレスモータ206によって、駆動される。したがって、ドレスユニット200は、ドレスモータ206によってドレス案内ガイド201に沿ってZ軸方向の移動が可能となっている。なお、X軸テーブル70の上にY軸テーブル56を配置する場合は、ドレス案内ガイド201をY軸テーブル56上に立設すれば良い。
【0045】
ドレス装置50Cは、ウェーハ送りユニット50A側に配置したことにより、研削ユニット50B側に設けた場合に比べ、トリミング砥石108が高速回転することによる熱的・振動的な変位要素の影響を避けることができ、加工精度の安定性を図ることができる。特に、X軸テーブル70、あるいはY軸テーブル56を移動して数値制御する際の外乱の影響を回避できる。また、ウェーハ送りユニット50A側に配置したことにより、ドレスユニット200は、ウェーハWと同期・連動して移動するので、ドレスユニット200の位置制御用の案内機構も不要となる。
【0046】
また、ウェーハ加工点(トリミング砥石108の使用領域)とドレス加工点(ドレス領域)の運動方向は、接線方向となって一致させることができる。これにより、また、ドレッシングによるトリミング砥石108の表層に形成される研削スラッジを溜めるクレータ、切粉を排出するトレンチの方向もウェーハ加工点とドレス加工点で一致して最適なドレス位置となる。そして、ウェーハ面取り装置内でトリミング砥石108によるウェーハWのテラス形状を加工しながらインプロセスでドレッシングが実施可能となる。
【0047】
ウェーハ送りユニット50Aにおいて、吸着テーブル10は、Y軸モータ64を駆動することにより図中Y軸方向に水平移動し、X軸モータを駆動することにより図中X軸方向に水平移動する。そして、Z軸モータ94を駆動することにより図中Z軸方向に垂直移動し、θ軸モータ96を駆動することにより、略水平回転、つまりθ軸周りに回転する。
【0048】
研削ユニット50Bのベースプレート51上には架台102が設置される。架台102上には外周モータ104が設置されており、この外周モータ104の出力軸にはZ軸に平行な回転軸CHを軸心とするスピンドル106が連結される。ウェーハWの外周部を面取り加工するトリミング砥石108は、スピンドル106に着脱可能に装着され、外周モータ104を駆動することにより、ウェーハWの回転軸であるθ軸と平行な軸周りに水平回転する。
【0049】
トリミング砥石108にウェーハWが接触する加工点に対して回転方向の上流側の位置に向けてクーラント(研削液)を吐出するノズル121が設けられる。テラス加工に際して、ノズル121、ウェーハ加工点、ドレス加工点の順に配置したので、ウェーハ加工点では湿式として冷却機能とスラッジである研削屑や砥石の磨耗粉の排出が十分に行われ、ドレス加工点では乾式に近い状態となり残留応力が少なく、トリミング砥石108の形状維持精度を高くすることができる。
【0050】
図3は、テラス形状加工用のトリミング砥石108を示し、その外周の下面に砥石24が設けられている。砥石24は、その外周部に上側が大きく下側が小さくなったテーパとされたテーパ部26が形成されている。図中の寸法のものは、ウェーハWのテラス形状幅を4mmに加工する例であり、4mm±10μmの仕上げ精度が得られる。
【0051】
図中の右端面のフラット部27で外周(端面エッジ)部分の加工に用いる。なお、砥石24は、トリミング砥石108の円周方向にセグメント化、つまり複数に分割し、分割された個々の間には研削屑等を排出する排出孔を設けることでも良い。
【0052】
トリミング砥石108は、メッシュサイズが#800~#1500程度のメタルボンドであり、寿命や加工品質を考慮して調整する。スピンドル106の回転数は、1000~4000rpm、ワーク側であるウェーハWの回転数は、50~200rpm、切り込み速度は、0.1~5mm/secが望ましいが、材料により適切に選択する。また、メタルボンドとしたことにより、砥粒の保持力(砥粒をつかむ力)が強く、砥石そのものの形状の保持力(形状の維持性)が高いので、テラス加工の精度向上に寄与する。
【0053】
以上のごとく構成された面取り装置50において、ウェーハWは次のように面取り加工される。面取り加工の実施前の準備工程として、面取り加工するウェーハWを吸着テーブル10上に載置して吸着保持する。そして、外周モータ104とθ軸モータ96とを駆動して、トリミング砥石108と吸着テーブル10とを共に同方向に高速回転させる。例えば、トリミング砥石108の回転速度を3000rpmとし、吸着テーブル10の回転速度を、ウェーハWの外周速度が5mm/secとなる速さとする。
【0054】
また、Z軸モータ94を駆動して吸着テーブル10の高さを調整してウェーハWの高さをトリミング砥石108の研削溝の高さに対応させる。更に、X軸モータを駆動して、ウェーハWの回転軸となるθ軸(回転軸θ)と、トリミング砥石108の回転軸CHとのX軸方向の位置を一致させる。
【0055】
次に、面取り加工の実施工程として、Y軸モータ64を駆動して、ウェーハWの位置をトリミング砥石108に向けて送る。そして、ウェーハWの外周部がトリミング砥石108に当接する直前で減速し、その後、低速でウェーハWをトリミング砥石108に向けて送る。
【0056】
これにより、ウェーハWの外周部がトリミング砥石108に摺接し、次に説明するように、微小量ずつ研削されてテラス加工される。また、ノズル121から加工点に向けてクーラントを吐出し、加工点の冷却と共に、研削屑や砥石の磨耗粉(破砕・脱落した砥粒)の排出が行われる。同時に、トリミング砥石108でウェーハWのテラス形状を加工しながらトリミング砥石108のドレッシングが行われる。なお、ドレス砥石203のメッシュサイズは、#1000~#2000を選択する。
【0057】
ドレス案内ガイド201には、上下案内軸には変位センサ(図示せず)が設けられ、加工中に常時、ドレス砥石203のZ軸方向の位置検出が可能とされる。ドレス砥石203の上下送り指令値と変位センサによるドレス砥石203の検出位置の差から、トリミング砥石108への押し付け量と使用量が判定できる。この押し付け量によって、スパークアウト状態の監視を行うこともできる。
【0058】
また、ドレス砥石203の残量を演算した結果をフィードバックする。これにより、次のウェーハWを加工するときにおいても、ドレス砥石203の移動量の誤差を生じないように修正することができる。さらに、トリミング砥石108を回転するスピンドル106の動力変動、外周モータ104の負荷変動(電流値)を監視し、その値と、変位センサによるドレス砥石203の検出位置との値からインプロセスでドレッシングを行うこと、簡潔的にドレッシングを行うこと、の両制御モードの切り替えを行う。
【0059】
トリミング砥石108は、形状の保持力(形状の維持性)が高いメタルボンドとしている。メタルボンド系の砥石は、自生発刃しないため、目詰まりモードになると切れ味が低下し、研削性(除去能力)よりもウェーハ送り量(ウェーハ上下-Z方向切込み)が勝ると、ウェーハを押し付ける力が働き、狙い通りのテラス形状を得られない。または砥石側も負荷により変形するので、ウェーハ、工具(砥石)両方の弾性変形が形状精度の劣化する要因となる。
【0060】
さらに、ウェーハを押し付ける事でウェーハの変形、歪による内部ダメージが入る可能性もあり、面圧上昇によりテラス形状部分の砥石崩れが発生し形状を維持することが困難となる。
【0061】
そのため、ドレスユニット200は、ドレスアーム202を介してZ軸方向に片持ち構造で支持して保持したこと、ドレス砥石203のZ方向の送り量を0.1μm~1μmとしたこと、により、ドレス砥石203の押し付けによる砥石の弾性変形を防止し、砥石同士が剛性的に接触してトリミング砥石108の形状を崩さない、いわゆるスパークアウト状態となるようにドレッシングする。
【0062】
これは、トリミング砥石108の初期でのドレッシング、ウェーハWの研削中、トリミング砥石108のツルーイング中も同様である。なお、トリミング砥石108によるワーク切込み・送りは、ウェーハ送りユニット50Aで、ドレス砥石203はドレス装置50Cのドレスモータ206で上下に移動させることで行われる。
【0063】
面取り加工は、ウェーハWの外周部が研削溝の最深部に到達して所定時間が経過し、ウェーハWをトリミング砥石108から離間する方向に移動させてウェーハWを回収する位置に移動させることで終了する。
【0064】
図4において、204はドレス砥石203と同軸に設けられたマスタ砥石であり、図は多数枚のウェーハWの加工を連続して行う場合、適宜に行うトリミング砥石108のツルーイング中の状態を示している。ツルーイング中において、ドレスユニット200は、図中で右方向に移動され、その後、ウェーハWの外周部の研削中よりも下に移動され、左方向に移動される。
【0065】
これにより、マスタ砥石204のマスタ溝がトリミング砥石108に当接して研削される。ドレス砥石203の回転軸にマスタ溝を有する形状のマスタ砥石204を積層していることで、ウェーハ面取り装置内にインプロセスでドレッシングを実施する機構と同じ機構を用いてトリミング砥石108の形状の修正、すなわち、ツルーイングを行うので、正確にマスタ溝の形状がトリミング砥石108へ転写される。マスタ砥石204は、ウェーハWを加工するトリミング砥石108よりも硬い、低番手のものが選択される。
【0066】
図5は、クーラント(研削液)を吐出するノズル121の配置を示す詳細図であり、クーラントはダイヤモンド砥石であるトリミング砥石108とウェーハ加工点に潤滑用途で供給する。クーラントを吐出するノズル121の配置は、トリミング砥石108の回転方向の上流側に設置する。
【0067】
これにより、研削ポイントのクーラントは、研削ポイント通過後もトリミング砥石108のボンド及びダイヤ砥粒表層に水が付着した状態を保つ。そして、ドレス砥石203との接触面では濡れ性を維持するので、焼き付きや熱によるダイヤモンドの劣化を防止できる。また、ドレス砥石203の配置は、研削ポイントから最大45°の位置に配置するので、トリミング砥石108の回転による遠心力により法線方向に飛散するクーラントを受けやすい配置となる。
【0068】
ドレッシングを行うドレス砥石203用のクーラント、ドレス加工点に吐出するノズルは設置しない。これにより、トリミング砥石108で削られたドレス砥石203を遊離砥粒の形態でダイヤモンド砥石のメタルボンドであるトリミング砥石108に作用させ、遊離砥粒状態のドレス砥石を洗い流さないようにしている。そして、ドレス加工点では乾式に近い状態となり残留応力が少なく、トリミング砥石108の形状維持精度を高くすることができる。
【0069】
図6は、テラス加工の詳細を示す部分断面図であり、貼り合わせデバイス側である上層30をトリミング形状付けする状態を示している。31は中間層である接着層、32は下基盤であり、中間層31が酸化膜等(絶縁層)で形成され比較的に接合強度が低く、デバイス側の上層30は比較的材料強度が低い材質である。
【0070】
上層30側の仕上げ厚みが薄い物(Si薄膜化加工、GaAS成膜薄膜)、下基盤32がP相で中間層31が絶縁層、であり、テラス幅を3~5mmとすることが行われている。このウェーハWに対して、切込み上下、Z方向で行われる場合、図中の丸印部分に変形を生じやすい。
【0071】
図7は、ウェーハWの端面加工を示す部分断面図であり、トリミング砥石108の上部に形成されたフラット面を使用して外周加工を行う。貼り合わせデバイス側である上層30と中間層31である接着層と下基盤32を同時に除去加工する場合を示している。ウェーハWの吸着テーブル10に対する突き出し量は、端面をフラット加工する場合1mm、ベベル加工する場合が3mm程度である。
【0072】
図8は、貼り合わせ誤差の修正を示す平面図であり、上下基板が破線に示すように同一直径になるように外周部分を端面研削する例である。貼り合わせの誤差により楕円化、いびつになった外周部分を加工して直径をそろえて真円に仕上げる処理である。
【0073】
図9は、成膜層付ウェーハの外周加工を示す部分断面図である。成膜部分がウェーハ表面だけでなく外周にも成膜成分が付着、回り込む事があり、外周部分の成膜成分の除去が必要であった。つまり、後工程のウェーハ外周搬送や、位置決め、ウェーハ収納用カセットに収納時に、エッジ部分からの剥がれ、クラックが表層までおよび成膜層を破損する恐れがあり、外周部分の加工、図中点線部分までの加工が必要である。
【0074】
以上のように、トリミング砥石108の初期でのドレッシング、ウェーハWの研削中、トリミング砥石108のツルーイング中においても、ドレス砥石203の押し付けによる砥石の弾性変形を防止して、トリミング砥石108の形状を崩さない、いわゆるスパークアウト状態とすること、により、低ダメージ加工とすることができる。
【0075】
したがって、上層30あるいは下基盤32の一方の研削抵抗が大きく、形状が崩れ易く、貼り合わせが剥がれ易い高脆性材料、のような場合であっても、貼り合わせデバイス側である上層30と下基盤32を同時に除去加工することが可能となる。また、特に、ドレッサー回転軸にマスタ溝を有する形状の砥石を積層することで、マスタ溝形状を転写し、ターゲット形状の砥石とする修正が可能なので、常に加工精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
W ウェーハ(被加工材)、10 吸着テーブル、24 砥石、26 テーパ部、27 フラット部、30 上層、31 中間層、32 下基盤、50 ウェーハ面取り装置、50A ウェーハ送りユニット、50B 研削ユニット、50C ドレス装置、51 ベースプレート、52 Y軸ガイドレール、54 Y軸リニアガイド、56 Y軸テーブル、58 ナット部材、60 Y軸ボールネジ、62 軸受部材、64 Y軸モータ、66 X軸ガイドレール、68 X軸リニアガイド、70 X軸テーブル、72 ナット部材、74 X軸ボールネジ、80 Z軸ベース、82 Z軸ガイドレール、84 Z軸リニアガイド、86 Z軸テーブル、88 ナット部材、90 Z軸ボールネジ、92 軸受部材、94 Z軸モータ、96 θ軸モータ、98 θ軸シャフト、102 架台、104 外周モータ、106 スピンドル、108 トリミング砥石、121 ノズル、
200 ドレスユニット、201 ドレス案内ガイド、202 ドレスアーム、203 ドレス砥石、204 マスタ砥石、205 ボールネジ機構、206 ドレスモータ
図1
図2
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図7
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図9