IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ イー アイ カンパニの特許一覧

特許7046746X線生成のための薄片成形されたターゲット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】X線生成のための薄片成形されたターゲット
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220328BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20220328BHJP
   H05G 1/52 20060101ALI20220328BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20220328BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20220328BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20220328BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220328BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220328BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
G01N23/046
H05G1/00 E
H05G1/52 B
H05G1/52 A
G01N23/2252
H01J37/244
H01J37/20 A
H01J37/22 502H
H01J37/22 502Z
H01J37/28 B
H01J37/147 B
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018130470
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2019021625
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】62/531,097
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ フィレヴィッチ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-273200(JP,A)
【文献】実公昭55-015250(JP,Y2)
【文献】特開2015-207559(JP,A)
【文献】特開2016-090486(JP,A)
【文献】国際公開第2007/141868(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0351370(US,A1)
【文献】米国特許第05044001(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
H01J 35/00-37/36
H05G 1/00-2/00
G21K 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のX線像を生成する方法であって、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に第1軸に沿って2000eVより小さいランディングエネルギーを有する電子ビームを方向づけるステップであって、前記薄片成形されたターゲット上への前記電子ビーム内の電子の衝突は、前記薄片成形されたターゲット内の相互作用体積内からX線を生成し、前記X線の一部は、前記薄片成形されたターゲットの前面表面を介してX線検出器に向けて第2軸に沿って放出され、前記前面表面は前記第1表面と異なり、前記第2軸は前記第1軸と異なる、ステップと、
前記薄片成形されたターゲットと前記X線検出器との間で前記第2軸に沿って試料を配置するステップと、
前記試料を透過した前記X線を、前記X線検出器を用いて収集することによりX線像を取得するステップと、
を含み、
前記薄片成形されたターゲットは、前記第1軸に沿った方向において高さを、前記第2軸に沿った方向において長さを、前記第1軸及び前記第2軸と異なる第3軸に沿って幅を有し、
前記高さ及び前記長さは、前記幅の少なくとも2倍であり、
前記相互作用体積は、前記第1表面から前記薄片成形されたターゲットの前記高さよりも小さい距離だけ前記第1軸に沿って広がり、それにより、前記薄片成形されたターゲットの前記高さによらず、前記第1軸に沿った前記相互作用体積の前記広がりによって、前記第1軸に沿った仮想ソースサイズが特定される仮想X線ソースが生成される、
方法。
【請求項2】
前記電子ビームを方向づけるステップは、前記第1表面において前記薄片成形されたターゲットの前記幅よりも大きい直径を有する電子ビームを前記方向づけるステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記相互作用体積は、前記第1表面から前記薄片成形されたターゲットの前記高さの半分よりも少ない距離へと広がる、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記高さ及び前記長さは、両方とも少なくとも前記幅の2倍である、
請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記高さ及び前記長さは、両方とも500nmより大きく、前記幅は200nmよりも小さい、
請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
a) 前記試料を回転させるステップと、
b) 前記薄片成形されたターゲットの第1表面上に前記電子ビームを方向づけるステップと、
c) 後続のX線像を取得するステップと、
d) 複数のX線像を取得するためにステップa)b)及びc)を繰り返すステップと、
e) 前記試料の3次元トモグラフィ再構成を形成するために前記複数のX線像を処理するステップと、
をさらに有する請求項1乃至5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記長さ及び前記高さは200nm以上であり、前記幅は200nm以下である、
請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第3軸に沿った前記仮想X線ソースは、前記薄片成形されたターゲットの前記幅によって特定される、
請求項1乃至7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記薄片成形されたターゲットは、ターゲット材料を含み、
前記電子ビームの直径は、前記第1表面において、前記薄片成形されたターゲットの前記長さより小さい、
請求項1乃至8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
試料のX線像を生成する方法であって、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に第1軸に沿って電子ビームを方向付けるステップであって、前記薄片成形されたターゲット上への前記電子ビーム中の電子の衝突は、前記薄片成形されたターゲット内の相互作用体積内からX線を生成し、前記X線の一部は、前記薄片成形されたターゲットの前面表面を介してX線検出器に向けて放出され、前記前面表面は前記第1表面と異なる、ステップと、
前記薄片成形されたターゲットと前記X線検出器との間に第2軸に沿って試料を配置するステップと、
前記X線検出器を用いて前記試料を透過した前記X線を収集することによりX線像を取得するステップと、
を含み、
前記薄片成形されたターゲットは、前記第1軸に沿った方向において高さを、前記第2軸に沿った方向において長さを、前記第1軸及び前記第2軸と異なる第3軸に沿った方向において幅を有し、
前記高さ及び前記長さは、前記幅の少なくとも2倍であり、
前記相互作用体積は、前記第1表面から前記薄片成形されたターゲットの前記高さよりも小さい距離だけ前記第1軸に沿って広がる、
方法。
【請求項11】
前記高さ及び前記長さは、前記幅の少なくとも3倍である、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
さらに、
a) 前記試料を回転させるステップと、
b) 前記薄片成形されたターゲットの第1表面上に前記電子ビームを方向づけるステップと、
c) 後続のX線像を取得するステップと、
d) 複数のX線像を取得するためにステップa)b)及びc)を繰り返すステップと、
前記試料の3次元トモグラフィ再構成を形成するために前記複数のX線像を処理するステップと、
をさらに含む、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記薄片成形されたターゲットの前記第1表面上に前記電子ビームを方向づけるステップは、
1500から2000eVの範囲のランディングエネルギーを有する前記電子ビームを方向づけるステップを含む、
請求項10乃至12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記薄片成形されたターゲットの前記第1表面上に前記電子ビームを方向づけるステップは、
前記電子が前記薄片成形されたターゲットの前記幅の2倍以下の侵入深さを有する電子ビームを方向づけるステップを含む、
請求項10乃至13いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
試料からX線像を取得するためのシステムであって、
第1軸に沿って電子ビームを生成し、薄片成形されたターゲットの第1表面上に方向付けるための電子カラムと、
前記電子ビームによって衝突されるようにターゲット位置に配置された薄片成形されたターゲットと、
前記ターゲット上への前記電子ビームの衝突によって前記ターゲット内の相互作用体積から放出されるX線によって前記試料が衝突される試料位置に、前記試料を配置するための試料ステージと、
前記電子ビームの衝突によって前記ターゲットの前面表面を介して放出され、前記試料を通過するX線を収集するためのX線検出器であって、前記薄片成形されたターゲットから前記試料位置を通過し前記X線検出器に至るラインが第2軸を画定し、前記前面表面は前記第1表面と異なり、前記第2軸は前記第1軸と異なる、X線検出器と、
を備え、
前記薄片成形されたターゲットは、前記第1軸に沿った方向に高さを、前記第2軸に沿った方向に長さを、前記第1軸及び前記第2軸に垂直な方向に幅を有し、前記高さ及び前記長さは少なくとも前記幅の2倍であり、
前記相互作用体積は、前記第1表面から前記薄片成形されたターゲットの前記高さよりも小さい距離だけ前記第1軸に沿って広がる、
試料からX線像を取得するためのシステム。
【請求項16】
前記試料ステージは回転可能な試料ステージである、
請求項15記載の試料からX線像を取得するためのシステム。
【請求項17】
試料からのX線像の取得を制御するためのコントローラと、
前記コントローラによって実行されるための、機械読取可能な命令を保存するように構成されたコンピュータメモリと、
をさらに備える、請求項15又は16記載の試料からX線像を取得するためのシステム。
【請求項18】
前記コンピュータメモリは、
反復して前記試料からX線像を取得し、前記試料を回転し、前記試料の3次元表現を生成するために、反復して取得された像を組み合わせるための、命令を保存する、請求項17記載の試料からX線像を取得するためのシステム。
【請求項19】
前記薄片成形されたターゲットは、
タングステン、モリブデン、チタン、スカンジウム、バナジウム、銀又は高融点金属
を含むX線生成材料の群から作製されている、
請求項15乃至18いずれか1項記載の試料からX線像を取得するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を生成するシステムに関し、特にX線画像化及びトモグラフィシステムの解像度及び/又はスループットを増加させるように設計されたX線ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
X線トモグラフィシステムは、サンプルを破壊又は横断することなく、試料の内部構造の情報を提供することができる。X線は、試料の横断面から吸収像を得るために、試料を通過し、X線検出器によって検出される。X線検出器は、二次元のX線陰影(吸収-コントラスト)像を得る。3次元トモグラフィのために、試料及び/又はX線ソース及び検出器は、複数の角度から得られる断面像を可能にするためにインクリメンタルに回転されることができる。このようにして得られた一連の断面像は、その後、試料の3次元像を再構成するために数学的に操作される。
【0003】
用語:
「SEMベースのナノ・トモグラフィシステム」は、X線を生成するためにターゲット上に衝突する電子ビームを使用する任意のシステムを備え、2次元X線画像化及び3次元X線トモグラフィの非常に高い解像度のために設計されたX線システムの範囲を含む。かかるシステムは、典型的には~500nmより小さい仮想X線ソースからX線を生成するために、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)又は走査透過電子顕微鏡(STEM)によって生成された電子ビームを使用するという点において、(例えば>1μmの)低解像度のために使用される、より一般的なX線システムと異なる。ビーム内の電子がターゲットに衝突することで、X線が発生する。
【0004】
X線トモグラフィシステムの2つの重要なパラメータは、解像度及びスループットである。「スループット」とは、システムがどのくらい早く画像又は一連の画像を取得できるかを意味する。「解像度」には多くの定義があるが、典型的には2つの対象物がどのくらい近づくことができるか、又は2つの別個の対象物として区別することができるかを意味する。解像度は、システムが画像化できるフィーチャがどれくらい小さいかについて影響を及ぼす。スループットは、試料を通過するX線束を増加させることによって、増加されることができ、ターゲットに衝突する電子ビーム流(the electron beam current)を増加させることによって達成されうる。しかしながら、ターゲットとの電子ビームの衝撃は、過剰な加熱を生じさせることがあり、ターゲットの溶解さえ起こし得る。そこで、電子ビーム電流は、60keVまでのビームエネルギーに対して1~2μA未満に制限され得る。電子ビーム直径が、サブミクロンの範囲にあるので、典型的には極めて高いエネルギー密度がターゲット内で生じる。
【0005】
いくつかのX線生成システムは、生成されたX線を焦束するために集束光学素子を使用するが、他のシステムは集束光学素子を使用しない。X線集束光学素子のないX線トモグラフィシステムの解像度は、主にそのX線ソースの有効(「仮想」)サイズで特定される。X線を生成する電子ビームを用いたシステムについては、有効ソースサイズは、ビーム電子がターゲットと相互作用し、ターゲット内で停止するところの体積によってしばしば特定される。この相互作用体積は、主にターゲット材料の密度及び原子番号と、電子ビームの直径及びエネルギーとによって特定され、典型的には涙滴形である。X線ターゲットの設計は、解像度、画像化時間及び画像SN比並びに他の操作上の考慮点に関するシステム性能の決定的要因である。
【0006】
これらのシステムに採用される原型ターゲットは、「バルクターゲット」であり、典型的には、ターゲット材料(タングステン、モリブデン、チタン、スカンジウム、バナジウム、銀又はその他の高融点金属ターゲット材料等の通常の材料)のピースであり、X線放射を誘導するために使用される電子ビームの直径より著しく大きかった。ターゲットに当たる電子ビームのエネルギーの大部分が(X線ではなく)熱の生成に携わるため、これらのターゲットタイプの高い冷却効率は、X線束及び従ってスループットを最大化するのに有利であった。しかしながら、画像化解像度はターゲット材料内での電子ビームの拡散によって制限された。これは、電子分散体積が仮想ソースサイズにも対応するからであり、従って解像度は制限された。
【0007】
本発明の譲受人に譲受された、米国特許公開第2015/0303021号公報「High Aspect Ratio X-Ray Targets and Uses of Same」に開示されるように、近年、SEMベースのナノ・トモグラフィシステムにおいて新しいタイプのX線ターゲットが採用されている。ポストターゲットは、非常に小さい、略矩形(横断面)を有し、典型的には、2つの軸において<500nmの寸法を有し、仮想ソースサイズを特定し、約1乃至2μmの長さ(X寸法)であり、支持ベースに取り付けられる。ターゲットのビームスポットの直径は、ポストの断面の最大寸法(例えば、円筒形ポストの直径又は直角柱体ポストの対角線)より大きくてもよい。支持ベースは、例えばシリコン、アルミニウム、ベリリウム又は他の低原子番号材料等の材料から成ることができる。そして、それは電子ビームの衝突によって、ターゲット材料より少ないX線を生成する。ポストターゲットの端部に当たる電子ビームは、バルクターゲット内のような電子分散距離よりむしろ、ポストのY-Z寸法によって制御された仮想ソースサイズのX線を生成する。従って、ポストターゲットによれば、バルクターゲットによるよりも、高い画像化解像度が可能になる。しかしながら、ポストの少ない断面積のため、熱伝導率はバルクターゲットに対してより著しく低い。従って過剰な加熱は、溶融が発生し得る前にターゲット内に付され得る許容可能な電子ビームエネルギーに制限を呈する。
【0008】
それ故、一般的に用いられるバルクターゲット及びより最近開発されたポストターゲットの両方が、SEMベースのナノ・トモグラフィシステムの解像度とスループットの最適化に対して問題点を有する。図4A乃至5Bに記載されている実施形態は、種々のソースタイプのソースパラメータの総合的な概要を提供する図9とともに、これらの懸念に対処する。
【0009】
図1A乃至1Dは、円形電子ビーム106に衝突されるバルクターゲット108を使用するX線ソースの動作の4つのビ概観を示す。バルクターゲットは、典型的にはターゲット材料、例えばタングステン、モリブデン、チタン、スカンジウム、バナジウム、銀又は他の高融点金属等を含み、X線を生成するターゲットに向けて方向づけられる電子ビームの予測サイズと比較して、X-Y-Z寸法において比較的大きい。
【0010】
図1Aは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、又は、高電流密度の電子ビームをターゲット上に集束することができる任意の電子ビームシステムに見られるような、(図示されていない)電子カラムによって円形電子ビーム106内に集束される電子ビーム内の電子102によって衝突される上面104を有するバルクターゲット108の等角図を示す。バルクターゲット108との電子102の衝突の結果、全方向に向けて(4ステラジアン立体角へ)伝搬されるX線が生成される。X線束112は、X線検出器(図2参照)に向かう方向においてターゲット108の前面表面110から放出される全X線束のごく小さい部分(典型的には0.1~0.4%)のみを表す。電子ビーム106のバルクターゲット108への衝突によって生成される全X線束の大部分(X線112を含まない)は、X線検出器から離れる方向に放出され、従ってX線画像化に寄与しない
【0011】
図1Bは、図1AからのX線ソースの(X‐Y平面における)平面図であり、図1C及び1Dにそれぞれ表される、2つのA-A及びB-B横断面を示す。電子102からの運動エネルギーの吸収によってターゲット108において発生する熱122の分散も図示されている。典型的には、ほとんどの電子エネルギーは熱を生成し、電子エネルギーの少ない部分だけがX線を生成する。電子ビーム106がバルクターゲットの寸法と比較して比較的小さいので、熱122は図示されるようにターゲット108内でX-Y平において~180の範囲にわたる熱伝導によって(即ち、表面110を通らずに)急速に放散され得る。
【0012】
図1Cは、図1A乃至1BからのX線ソースの(X-Z平面における)A-A断面側面図である。ターゲット108内への電子102の侵入距離は、典型的には、電子102のエネルギーによって特定される上面104から下方への深さを有する球(bulb)形状の体積142である。高エネルギー電子102については、侵入深さはマイクロメートルでもよく、1.5keVの電子については、侵入深さは~50nmだけでもよい。ターゲット108内で発生するX線の部分は、出射面110に到達する前に、ターゲット108内で再吸収され得る。チタンターゲットにおいて生成される~0.5keVのX線の場合、典型的には20%足らずが、ターゲット108内で吸収される。見て取れるように、熱122は、電子侵入体積142から、X-Z平面内で(即ち表面104又は110を通らずに)~90の範囲を超えて分散され得る。
【0013】
図1Dは、図1A-1BからのX線ソースの(Y-Z平面における)B-B断面図正面図である。侵入体積162は、一般的には、ターゲット108に衝突する電子ビーム102が円形である場合について、図1Cの侵入体積142のように見える。見て取れるように、熱122は、電子侵入体積162から、Y-Z平面内で~180の角度範囲にわたって分散され得る。
【0014】
図1B乃至1Dに図示された熱分散122の広い角度範囲は、バルクターゲット内での熱分散が、ターゲット108との電子102の電子ビーム(衝突領域)106から急速に離れることができることを示す。従って、比較的高い電子ビーム出力が使用されることができ、より大きいX線束が発生することを可能にする。電子ビームによるX線生成に対する典型的「目安」は、電子ビームのエネルギーの1/3までのエネルギー範囲を有する。従って、30keVの電子ビームは、主に~10keVまでのX線を効果的に生成し、60keVのより高いエネルギーの電子ビームは、主に~20keVまでのエネルギーを有するX線を生成するであろう。用途によっては、しかしながら、より低いX線エネルギーが好ましいことがあり、後述する。
【0015】
バルクターゲットは、従って電子ビームの衝突からターゲット内で生成された熱を分散することができる。バルクターゲットの不利な点は、仮想ソースサイズが侵入体積(図1Cの142、図1Dの162)で特定されるということである。達成可能な画像化解像度は、ソースサイズによって基本的に特定される。したがって、より大きいソースサイズは、2次元X線像又は3次元トモグラフィ再構成の低い解像度になる。これらの問題は、さらに次のセクションで述べられる。図9の表900は、検討された多くのソースパラメータをまとめる。典型的には、バルクターゲットは、図8に図示されるように、支持構造物に取り付けられることができ、次に、支持アームに固定されることができる。
【0016】
図2は、投影X線画像化配置200の(X-Y平面における)平面図を示す。図1A乃至1Dにて図示したように、X線は、電子ビーム(図示せず)の衝突のために、ターゲット202から放出される。ターゲット202において生成されるX線は、全方向(4ステラジアン)に放出される。しかしながら、全X線束の小さい部分(典型的には、0.1~0.4%)204は、ターゲット202に関してX線検出器208によって定められた立体角内に放射される。試料206のX線画像化又はX線トモグラフィのために、X線204の一部が試料206を通過し、X線の一部が試料206に吸収され、それにより検出器208に陰影像が生成される。図10のフローチャートは、図2に示されるような実験的構造を採用する、X線画像化及びX線トモグラフィのための方法を記載する。
【0017】
図3A乃至3Dは、円形電子ビーム306によって衝突されるポストターゲット308を使用するX線ソースの4つの概観を示す。ポストターゲットは、典型的に、タングステン、モリブデン、チタン、スカンジウム、バナジウム、銀又は高融点金属等の、バルクターゲットと同じターゲット材料のいくつかを含む。しかしながら、バルクターゲットの状況とは異なり、ポストターゲットは、所望のX線放射方向に沿って(すなわち、試料及び検出器に向かって、 図2参照)、非常に小さい構造を含む。ポストターゲットに対する仮想ソースサイズは、横断寸法(即ち、試料及び検出器に向かうX線放射のY軸及びZ軸に沿った、X軸に垂直な寸法、図2参照)によって特定される。Y方向における横寸法は、電子ビームの直径より小さくてもよい。その結果、Y方向における仮想X線ソースのサイズは、電子ビームの直径ではなく、ターゲットのY寸法によって特定される。
【0018】
ポストターゲット308は、図3Aの左上に位置するはずの支持構造物(図示せず)によって支持される。電子ビーム306内の電子302の衝突による支持構造物からのX線生成312を回避するために、少なくとも2つのアプローチが可能である。いくつかの実施形態では、支持構造物は、ポストターゲット308の材料よりもX線生成に効果の少ない(例えばシリコン、アルミニウム又はベリリウム等の典型的に低い原子番号の)材料から製造される。従って、電子ビーム306の端が支持構造物に衝突しても、X線像の解像度に影響与える恐れのある最小限の異質X線生成が生じ得る。他の実施形態では、支持構造は、ポストターゲット308と同じ材料から製造されてもよいが、ポストターゲット308は、電子ビーム306がポストターゲット308にのみ衝突し、ポストターゲット308には衝突しないことを保証するのに十分な(X軸)長さを有して製造される。これらの2つの方法は、さらに他の実施形態に組み込まれることができる。
【0019】
図3Aは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、又は、高電流密度の電子ビームをターゲット上に集束することができる任意の電子ビームシステムに見られるような、電子カラムによって円形電子ビーム306内に集束される電子ビーム内の電子302によって衝突される上面304を有するポストターゲット308の等角図を示す。図1A乃至1Dの電子ビーム106の場合とは異なり、ここでは、いくつかの電子302が、細いポストターゲット308を外れ、ポストターゲット308の両側で伝搬し、したがってX線を生成しない。加えて、ポストターゲットのZ軸厚さが侵入深さ(それぞれ、図1C及び1Dの侵入深さ142又は162のような)より小さくてもよいので、電子302のいくつかはポストターゲット308の下部表面を外へ伝搬することができる。いくつかの電子302がポストターゲット308に衝突しないことができ、いくつかの他の電子302がポストターゲット308を通過することができるので、ポストターゲットによるX線生成はバルクターゲットに対してより効率的でないかもしれない(所与の電子ビーム電流のX線束で測定される)。図1A乃至1Dのバルクターゲット108の場合と同様に、ポストターゲット308との電子402の衝突は、全ての方向に(4つのステラジアン立体角へと)伝わるX線を生成する。X線束312は、全X線束のうちの、X線検出器に向かう方向(図2参照)にターゲット308の前面310を通って放出される、ごくわずかな部分(典型的には0.1から0.4%)を表す。
【0020】
図3Bは、図3AからのX線ソースの(X‐Y平面における)平面図であり、図3C及び3Dにそれぞれ表される、2つのC-C及びD-D横断面を示す。電子302からの運動エネルギーの吸収によってターゲット308において生成される熱322の分散も示されている。典型的には、殆ど全ての電子エネルギーは熱を生成し、電子エネルギーのわずかな部分のみがX線を生成する。しかしながら、所与の電子ビーム電流に対して、ターゲットを外れる電子と、ターゲットを通り抜ける電子との、上述した2つの要因のために、バルクターゲット108の場合に典型的であるよりも、より少ない熱がポストターゲット308に付される。図3B乃至3Cに模式的に示されているように、ポストターゲット308内の熱分散は、分散矢印322によって図示されるように、電子ビーム306の衝突領域から離れるように効果的に伝導されず、熱は、バルクターゲット108に対するケースのようにX及びY方向の両方において離れることができず、ポストターゲット308の長さに沿って伝えられることができる。従って、ポストターゲットは、電子ビームからのより少ない熱をいくらか吸収することができるが、(電子ビーム306において)ポストターゲット308の端部の温度上昇は、同じビーム電圧において同じ電子ビーム電流によって衝突されたバルクターゲット108に対してよりもはるかに大きくてもよい。
【0021】
図3Cは、図3A乃至3BからのポストターゲットX線ソースの(X-Z平面における)C-C断面側面図である。上述したように、ポストターゲット308のZ軸寸法は、電子302の典型的な侵入距離よりも小さいので、電子302はポストターゲット308を全体的に通過し、図示のように底部から出て行くことができる。したがって、バルクターゲット108の場合とは異なり、エネルギーの高い電子ビーム(例えば、約~5keVを超えるエネルギー)では、X線は、ポストターゲット308(領域342)の全Z軸寸法から放出されることができ、Z軸ソースサイズは、ポストターゲット308のZ軸寸法に対応する。侵入深さが~50nmだけであり得る、より低いエネルギー電子ビーム(例えば1.5keV)に対して、電子ビームは、侵入深さを超えるZ軸寸法(即ち、1.5keVの電子に対してZ軸寸法>50nm)を有するポストターゲット308内で停止し得る。ターゲット308内で発生するX線の部分は、出射面310に到達する前に、ターゲット308内で再吸収されることができる。
【0022】
図3Dは、図3A乃至3CからのポストターゲットX線ソースの(Y-Z平面における)D-D断面正面図である。仮想ソースサイズは、表面310に基本的に対応する。
【0023】
図3B乃至3Dに図示された熱分散322の狭い角度範囲は、ポストターゲット内の熱分散が図1A乃至1Dのバルクターゲットと比較して実質的に低減し得ることを示す。ターゲットが融解するのを避けるために、バルクターゲットと比較して相対的に低い電子ビーム出力(低減された電子ビーム電流であるがおそらく同じビーム電圧である)が必要となり得、それによって低X線束を生成する。ポストターゲットのために仮想ソースサイズは、ポストのY軸及びZ軸寸法によって特定され、(バルクターゲットに対するソースサイズを特定する)バルク108における侵入深さ142及び162よりも実質的に小さくなり得るので、より高い2次元画像化及び3次元トモグラフィ解像度は、ポストターゲットで達成され得る。ただし、より長い画像取得時間がポストターゲットによって生成された低X線束から生じる。典型的には、ポストターゲットは、図8に図示されるように、支持構造物に取り付けられることができ、同様に、支持アームに固定されることができる。ポストターゲット308のX-Y-Z寸法は、以下の基準で決定されることができる:
【0024】
X寸法(電子ビームに対して垂直な長さ)は、好ましくは、支持構造物に衝突することによる電子ビームを防止するために十分大きいが、好ましくは、(電子ビーム306が衝突する)端部からの熱伝導を乏しくするほど長くない。
【0025】
Y寸法(電子ビームに対して垂直な幅)は、X線像の所望のY軸解像度と同等である。
【0026】
Z寸法(電子ビームに対して平行な深さ)は、X線像の所望のZ軸解像度と同等である。
【0027】
従って、X線画像化システムにおいて解像度を維持すると共に、スループットを改良するために、有利である。
【0028】
サブミクロンの仮想ソースサイズを維持しつつ、低エネルギーX線の生成に改良されたスループットを有する改良されたX線ターゲット設計を提供することも有利であろう。
【0029】
さらに、水と生物学的材料との間の自然なコントラストが生じる(X線エネルギー)280~530eVのX線スペクトル領域にある「ウォーターウィンドウ」に対応するエネルギー範囲におけるX線画像化を可能にする、低エネルギーX線を採用する、改良された画像化性能を有するX線画像化システムを提供することも有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【文献】米国特許公開第2015/0303021号公報
【発明の概要】
【0031】
本発明の目的は、画像化のためのX線を生成するために荷電粒子ビームを使用する改良されたシステムを提供することにある。
【0032】
X線像を生成するためのシステムは、画像化解像度と画像取得時間との間の通常のトレードオフを改善するために、薄片成形されたターゲットを使用する。電子ビームは、第1軸に沿って薄片成形されたターゲットの第1表面上に方向付けられる。ビーム内の電子の薄片成形されたターゲット上への衝突は、薄片成形されたターゲット内の相互作用体積内(within an interaction volume)からX線を生成し、X線の一部はX線検出器に向けて放出される。試料は、薄片成形されたターゲットとX線検出器との間で第2軸に沿って配置される。X線像は、試料によって吸収されないX線を収集することによって取得される。
【0033】
上記は、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解できるように、本発明の特徴及び技術的利点をむしろ広く概説したものである。本発明の付加的な特徴及び効果は、以下に記載される。開示された概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を変更又は設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者には理解されるべきである。また、当業者であれば、そのような等価な構成は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱しないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明及びその利点のより完全な理解のために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
図1A図1Aは、バルクターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図1B図1Bは、バルクターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図1C図1Cは、バルクターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図1D図1Dは、バルクターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図2図2は、投影X線画像化構成を示す。
図3A図3Aは、ポストターゲットを用いるX線ソースの図を示す。
図3B図3Bは、ポストターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図3C図3Cは、ポストターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図3D図3Dは、ポストターゲットを用いるX線ソースを示す図である。
図4A図4Aは、薄片成形されたターゲットを用いるX線ソースを円形電子ビームとともに示す図である。
図4B図4Bは、薄片成形されたターゲットを用いるX線ソースを円形電子ビームとともに示す図である。
図4C図4Cは、薄片成形されたターゲットを用いるX線ソースを円形電子ビームとともに示す図である。
図4D図4Dは、薄片成形されたターゲットを用いるX線ソースを円形電子ビームとともに示す図である。
図5A図5Aは、薄片成形されたターゲットを用いるX線ソースを非点収差補正電子ビームとともに示す図である。
図5B図5Bは、薄片成形されたターゲットを用いるX線ソースを非点収差補正電子ビームとともに示す図である。
図6図6は、広いX線エネルギー範囲にわたるX線エネルギーの関数としてのX線伝送のグラフである。
図7図7は、吸収線に集中した狭いX線エネルギー範囲にわたるX線エネルギーの関数としてのX線伝送のグラフである。
図8図8は、SEMベースのナノ・トモグラフィシステムの概略図である。
図9図9は、種々のターゲットタイプに対するソースパラメータの表である。
図10図10は、X線像及びトモグラフィデータを収集するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
SEMベースのトモグラフィシステムで使用するための、以下に説明されるX線ターゲットは、それらを組み込んだ画像化システムの改善された解像度及び/又はスループットを提供することができる。薄片成形されたターゲットはバルクターゲット及びポストターゲットの利点のいくつかを提供し、その一方で、これらのターゲットの不利な点のいくつかを回避する。本明細書で用いられる「薄片成形されたターゲット」は薄いプレートのように成形されたターゲットを意味し、(電子ビーム軸に沿った)高さと、(ターゲットと検出器との間の軸に沿った)長さと、(検出器に面するターゲットの表面上のラインに沿って、電子ビーム軸に垂直なラインの)幅とを有する。
【0036】
ポストターゲットは、小さい仮想ソースサイズを提供するので、有用である。しかしながら、ポストターゲットの小さい高さは熱伝導率を低下させ、使用することができる電子ビーム電流を制限する。例えば、比較的低いエネルギーの光子(例えば1000eVより低い、好ましくは500eVよりも低い、特に280~530eVの間の範囲であって、水と生物材料との間で自然なコントラストが生じる)を使用することによって、又は、低い電子侵入深さを有するターゲット材料を使用することによって、ビーム相互作用体積のサイズを制限することで、ビーム軸に沿った方向の仮想ソースサイズを制限することができることを出願人は見出した。相互作用体積が薄片成形されたターゲットの底部まで広がらない場合、相互作用体積の下のターゲットの追加の高さは、仮想ソースサイズに影響を与えないが、追加高さは、ビームの衝突点から熱を取り去る。いくつかの実施形態では、相互作用体積は、薄片成形されたターゲットの高さより少ない量による電子カラムに対向する表面の下で延在する。いくつかの実施形態では、相互作用体積は、薄片成形されたターゲットの高さの半分より小さく延在する。いくつかの実施形態では、相互作用体積は、薄片成形されたターゲットの高さの1/4より小さく延在する。
【0037】
図4A乃至4Dは、薄片成形されたターゲット408を使用したX線ソースを円形電子ビーム406とともに示す図である。薄片成形されたターゲットを有するX線ソースは、図9の表900にまとめられるように、バルクターゲットとポストターゲットの両方の利点のいくつかを組み合わせるとともに、それらの不利な点を回避し得る。薄片成形されたターゲット408は、タングステン、モリブデン、チタン、スカンジウム、バナジウム、銀又は高融点金属等を含む、バルクターゲット108又はポストターゲット308と同じターゲット材料のいくつかを含むことができる。薄片成形されたターゲット408は、ポストターゲットと同じ狭いY軸寸法を電子ビーム406に示すが、バルクターゲットに特徴的な、より大きいZ軸寸法を有する。それによって、改善された熱伝導と、ポテンシャルのより高いX線束が達成されることを可能にする。その一方で、特に低エネルギーX線を生成するために、Z軸において小さい仮想ソース寸法をさらに成し遂げる。
【0038】
図4Aは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、又は、高電流密度の電子ビームをターゲット上に集束することができる任意の電子ビームシステムに見られるような電子カラムによって円形電子ビーム406内に集束される電子ビーム内の電子402によって衝突される上面404を有する薄片成形されたターゲット408の等角図を示す。電子402のランディングエネルギーは、ビームによって生成されるX線光子の所望のエネルギーによって異なる。例えば、約280と約530eVの間のX線を生成するために、電子ランディングエネルギーは、2500eV未満でもよくて、1500eVと2000eVの間に範囲であってもよい。Y方向における横断寸法(薄片成形されたターゲットの「幅」と称される)は、電子ビームの直径より小さくてもよい。その結果、Y方向における仮想X線ソースのサイズは、電子ビームの直径ではなく、ターゲットのY寸法によって特定される。
【0039】
薄片成形されたターゲット408は、図4Aの左上に位置するはずの支持構造物(図示せず)によって支持される。いくつかの実施形態では、薄片成形されたターゲット408は、支持構造物に部分的に埋め込まれることができる。電子ビーム406による衝撃による支持構造体からのX線発生を回避するために、図3A乃至3Dのポストターゲット308について上述したのと同じ少なくとも2つのアプローチ(いくつかの実施形態において組み合わせることができる)が可能である。いくつかの実施形態では、薄片成形されたターゲットに衝突する代わり支持部に衝突する電子ビーム電流の量を低減し又は除去するために、薄片成形されたターゲット408は、支持構造物のエッジから十分離れた距離だけ、支持構造物から外へ片持ち梁支持されている。これは支持部から生成される制御放射(Bremsstrahlung)の量を低減するか又は除去する。この放射線は画像の解像度及びコントラストを低減する傾向がある。
【0040】
図3A乃至3Dの電子ビーム306場合と同様に、電子ビーム406の部分は、薄片成形されたターゲット408を外れることができ、両側でターゲット408をパスして伝搬することができ、従ってX線を生成しないことがある。Z軸に沿った寸法(薄片成形されたターゲットの「高さ」と称される)は、侵入深さより大きくてもよく、ターゲット408を外れない電子ビーム406の部分は完全に、ターゲット408によってその後吸収され、ポストターゲットに対して底部を通らないであろう。なぜなら、いくつかの電子402はターゲット408に衝撃を与えることができないので、薄片成形されたターゲットによるX線生成は、バルクターゲット(全ての電子がターゲットに衝突する所で)に対してより効率的でなくてもよいが、(電子が底部を通らないため)ポストターゲットに対してより効率的であってもよい。図1A乃至1D2のバルクターゲット108の場合と同様に、薄片成形されたターゲット408との電子402の衝突は、全ての方向に(4つのステラジアン立体角へと)侵入するX線を生成する。X線流束412は、ターゲット408の前面410を通ってX線検出器(図示せず、図2参照)に向かう方向に放出される全X線の非常に小さい部分(fraction)を表す。
【0041】
図4Bは、図4AからのX線ソースの(X‐Y平面における)平面図であり、図4A及び4Dにそれぞれ表される、2つのE-E及びF-F横断面を示す。X-Y平面内において、X方向に沿った電子402からの運動エネルギーの吸収によってターゲット408内に発生する熱分散(the dissipation of heat)422も示されている。X方向の寸法は、薄片成形されたターゲットの「長さ」と称される。長さは、仮想ソースサイズにほとんど影響を及ぼさないので、電子ビームによって生成される熱分散を助けるために、通常、幅の数倍の大きさである。
【0042】
図4Cは、図4A乃至4Bからの薄片成形されたターゲットのX線ソースの(X-Z平面における)E-E断面側面図である。ポストターゲット408のZ軸寸法が電子分散距離より大きいので、電子402は薄片成形されたターゲット内で停止する。高エネルギー(>5keV)電子402では、停止距離は比較的大きく(>1μm)、結果として、仮想ソースサイズのZ寸法が大きくなる。侵入深さが~50nmしかない低エネルギー電子ビーム(例えば、1.5keV)では、電子ビームは薄片成形されたターゲット408内で停止することがある。ターゲット408内で発生するX線の部分は、出射面410に到達する前に、ターゲット408内で再吸収されることができる。熱分散422は、バルクターゲットに関する図1Cの状況と同様に、電子侵入体積442からZ方向及びX方向に侵入することができる。
【0043】
図4Dは、図3A乃至3Cからの薄片成形されたターゲットのX線ソースの(Y-Z平面における)F-F断面側面図である。仮想ソース領域は、表面410の上部領域を主に有し、電子侵入体積462から生じる。熱分散422は、電子侵入体積462から負Z方向において流れることができる。
【0044】
熱分散422の角度範囲は、図4C乃至4Dに示される。薄片成形されたターゲット内での熱分散は、バルクターゲット108の高伝導とポストターゲット308の低伝導の間の中間であり得る。これは、図9の表900に示される。ポストターゲットと比較した薄片成形されたターゲットの付加的な利点は、増加した機械的強度でもあり得る。より長いターゲットのライフタイム及び増加した信頼性を可能にすることができる。薄片成形されたターゲットは、図8に図示されるように、典型的に、支持構造物に取り付けられることができ、同様に、支持アームに固定されることができる。
【0045】
薄片成形されたターゲット408のX-Y-Z寸法は、以下の基準で決定されることができる:
【0046】
X寸法(電子ビームに対して垂直な長さ)は、好ましくは、支持構造物に衝突することによる電子ビームを防止するために十分大きいが、好ましくは、(電子ビーム406が衝突する)端部からの熱伝導を乏しくするほど長くない。X寸法は、少なくとも500nm、少なくとも1μm、又は少なくとも2μmであることができる。
【0047】
Y寸法(電子ビームに対して垂直な幅)は、X線像の所望のY軸解像度と同等である。Y寸法は、500nm未満、250nm未満又は100nm未満であることができる。
【0048】
Z寸法(電子ビームと平行の深さ)は、低エネルギーX線像に対して、好ましくは、ターゲット材料内の電子浸入深さより大きい。Z寸法は、少なくとも200nm、少なくとも500nm、又は少なくとも1μmであり得る。2keV未満の、低エネルギー電子ビームに対して、電子侵入深さは比較的小さく、従って、薄片成形されたターゲットの付加的な深さは、仮想ソースサイズのZ寸法を増加させない。薄片成形されたターゲットは、従って、ターゲットの加熱を低減する。ビーム衝突領域から熱を取り除くように伝導する付加的な熱伝導材料を提供し、周辺材料へと熱を通過させ、熱を放射して取り除くより大きい表面領域を提供するからである。
【0049】
実施形態のX-Y-Z寸法は、寸法比率によって特徴づけられることもできる。Z寸法のY方向に対する比は、少なくとも2:1、少なくとも5:1、又は少なくとも10:1である。X寸法のY寸法に対する比は、少なくとも5:1、少なくとも7:1、又は少なくとも10:1である。
【0050】
いくつかの実施形態では、Z寸法及びX寸法の両方は、Y寸法の2倍を超える。
【0051】
図5A乃至5Bは、薄片成形されたターゲットを使用したX線ソースを非点収差補正電子ビームとともに示す。
【0052】
図5Aは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、又は、高電流密度の電子ビームをターゲット上に集束することができる任意の電子ビームシステムに見られるような、電子カラムによって楕円形(例えば非点収差補正)506内に集束される電子ビーム内の電子502によって衝突される上面504を有する薄片成形されたターゲット508(いくつかの実施形態においては薄片成形されたターゲット408と同一である)の(X-Y平面における)平面図を示す。G-G断面は、図5Bに示される。図4A乃至4Dの電子ビーム406の場合とは異なり、電子ビーム506が、楕円形506へと(非点収差補正されて)変形されることにより、それは全体的に表面504上へ落射され、従ってX線流束512は、図4A乃至4Dの流束412と比べて増加する。この実施形態の他の態様は、図4A乃至4Dの実施形態に対するものと類似していてもよい。図9の表900は、これらの態様をさらに特徴づける。
【0053】
図5Bは、図5AからのX線ソースの(X-Z平面における)G‐G断面図である。電子502からの運動エネルギーの吸収によりターゲット508内で発生した熱分散522は、図4Cの状況と同様に、X方向及びZ方向において電子分散体積(electron dissipation volume)542から出るように図示される。電子分散体積542が今やX方向において延長されるにもかかわらず、これは、X軸に沿って試料と検出器の斜視図から見られるように、仮想ソースサイズに最小限の効果を有することに留意すべきである。
【0054】
図9の表900は、バルクターゲット(図1A乃至1D)、ポストターゲット(図3A乃至3D)、及び、円形ビーム(図4A乃至4D)と非点収差補正(楕円)電子ビーム(図5A乃至5B)との両方とともに使用される薄片成形されたターゲット(図4A乃至4D)についてのX線ソース動作及び性能の種々の態様を要約する。高エネルギー(>5keV)電子ビーム及び低エネルギー(<2keV)電子ビームが考慮される。いくつかの実施形態の利点は、低エネルギービーム(表900の下半分)に対して最も現れうる。ここで、薄片成形されたターゲットは、ポストターゲットに類似した仮想ソースサイズを生成し、かつ、改善された熱分散のために、バルクターゲットで達成されるのにより近い、より高いX線流束の生成を可能にする。より高い電子ビームエネルギーに対して、薄片成形されたターゲットは、延長された仮想ソース形状(Z方向により大きく、Y方向により小さい)が許容される状況で、バルクターゲットとポストターゲットのX線ソース両方を超えるさらにいくつかの利点を示すことができる。
【0055】
図6は、280eVから520eVまでの広い光子エネルギーにわたるX線エネルギー範囲604の関数としての、100nmのチタンを通るX線透過602のグラフである。454eV付近の吸収ライン608以下では、領域606の透過は約0.86までの範囲であり、吸収ライン608のちょうど上で0.3以下まで急激に降下し、その後緩やかに領域610内で増加する。電子ビームによるX線で最も効果的な生成が、電子ビームエネルギーの約1/3の以下のX線を主に生成することを考えれば、約1.5keVを有する電子ビームが使用される場合、生成されるX線はほとんど吸収ピーク以下のエネルギーを有し、これは、ターゲットから効率的に放射される。この考察は、ターゲット材料がチタンであると仮定すれば、バルクターゲット、ポストターゲット又は薄片成形されたターゲットのいずれに対しても当てはまる。(吸収ラインに対して異なるエネルギーを有する)類似の曲線は、他のソース材料に当てはまる。
【0056】
図7は、450eVから460eVの狭い光子エネルギー範囲にわたるX線エネルギー704の関数としての、100nmのチタンのX線透過702のグラフである。約454eVの吸収ライン708は、0.3を下回る透過の領域710から、0.8を上回る透過の領域706を鋭く分離する。チタンは、約452eVでX線を放出し、X線は低吸収領域706に入るので、これらのX線は実質的に、ターゲットを通って透過しターゲット上に伝搬する。水と生物学的物質との間に自然のコントラストが生じる「ウォーターウィンドウ(water window)」は、約280~530eVのエネルギー範囲のX線に対応し、本発明の実施形態は、生物学的試料を画像化するのに特に有利である。
【0057】
図8は、SEMベースのナノ・トモグラフィシステム800の概略図である。電子顕微鏡のSEM、TEM又はSTEMカラム等の電子ビームカラム802は、マウンティングアーム808によって支持されるX線ターゲット806上に方向づけられ得る焦束電子ビーム804を生成する。マウンティングアーム808は、ターゲットステージ810によって種々の軸に沿って順次支持され移動される。ターゲット806は、バルク又はポストターゲットでもよく、又は、薄片成形されたターゲットでもよい。ターゲット806から放出されX線検出器へ向かうX線818、X線818の一部は、検出器820に到達する前に試料(サンプル)814を通り抜けて通過することができる。試料814に入射する若干のX線は試料814内の材料によって吸収されることができる。結果として、検出器820によって収集される吸収コントラスト画像がもたらされる。試料814は、ステージ816によって支持されて、回転され、配置される。典型的には高真空レベルにポンピングされた真空エンクロージャ812は、カラム802、ターゲット806、試料814及び検出器820の一部を取り囲んでいる。X線は空気中を自由に通過することができるが、電子ビーム804は大気圧の空気中の電子の平均自由行程が非常に小さいために真空を必要とする。ターゲットステージ、支持アーム、X線ターゲット、及びX線検出器、並びに場合によっては改善された試料ステージを追加することによって、標準的なSEMを使用することができ、それにより、「SEMベースのナノCT(コンピュータトモグラフィ)システム」を構成する。典型的には、システムコントローラ822は、カラム802、ターゲットステージ810、試料ステージ816及びX線検出器820の動作を調整するように構成される。非一時的コンピュータ可読記憶媒体824は、本明細書に記載の方法を実行するためにコンピュータ制御装置822へのコンピュータ命令を格納し、検出器820によって取得されたX線画像データを格納することができる。例えば、システムコントローラ822は、システム800に、試料を通る異なる角度において複数のX線画像を取得させることができる。システムコントローラ822はシステム800に、試料814のX線像を形成させ、試料を回転させ、別のX線像を形成させ、画像化及び回転のこのシークエンスを複数回繰り返させることができる。システムコントローラ822は、その後、トモグラフィ像を生成するために、複数のX線像から試料の3次元表現を再構成するためにプログラムを実行することができる。表示装置826はシステム制御情報並びに2次元X線像及び3次元X線トモグラフィ結果を表示することができる。
【0058】
図10は、X線像及びトモグラフィデータを収集するための方法を表すフローチャート1000である。ブロック1002において薄片成形されたターゲットが製造される。いくつかの実施形態では、ターゲットの製造は、Thermo-Fisher Scientific,Corp.製のデュアルビームFIB-SEMのような独立型マイクロファブリケーションシステム内で、集束イオンビームを用いて、行われることができる。他の実施態様において、ターゲットの製造は、図8に示されるような類似のシステムにて実行されることができる。ここで、付加的な集束イオンビーム・カラムが追加されると、薄片材料のFIB-ミリングと、プロセスモニタリング及びエンドポイント制御のためのSEM画像化との両方を可能にすることができる。薄片が、X線画像化に使用されるのと同じシステム内で製造される場合、(薄片成形されたターゲットは、製造中に既にターゲットステージ上にある場合があるので)ブロック1004はスキップされることができる。
【0059】
薄片成形されたターゲットの製造後、ブロック1004で、図8の実施形態にて図示したように、ターゲットは、ターゲットステージ上にマウント(mounted)される。その後、ブロック1006において、電子ビームカラムが電子ビームをターゲット上に集束するために、典型的には試料に最も近いターゲットの端部とX線検出器に向けて、調整されることができる。ビームは円形(図4A-4Dのような)又は楕円形(図5A-5Bのような)であることができる。電子ビームがターゲット上に集束されると、ブロック1008で、周知のプロセスにおいて、ビーム中の入射する電子とターゲット材料の内殻電子との間の相互作用によってX線が生成される。図2及び図8の両方に図示されるように、ブロック1010で、全X線束(4ステラジアンの立体角に放出される)のわずかな部分が、ターゲットのX線検出器によって定められた立体角内に放射される。適切なX線画像化のために、ステージ816を使用して、X線束の円錐818内にサンプル814を配置することが必要な場合がある。ブロック1012において、それらのX線は、最初にターゲット806からX線検出器820に向けて放出され、実質的に試料814内で吸収されず、X線陰影(即ち吸収)像を取得するために、検出器820によって収集される。X線陰影像は、ブロック1014においてシステムコントローラ822に伝達され、その後、ブロック1016において、非一時的コンピュータ読出可能格納媒体824に格納される、
【0060】
ブロック1018において、ユーザが2次元X線画像化(すなわち、トモグラフィでない)を行っている場合には、ブロック1020が開始され、システムコントローラ又は他の(オフライン)処理システムが画像解析、処理及び表示のために使用されることができる。ユーザが3次元トモグラフィを行っている場合、典型的に試料814の種々の回転角度の一連の画像が必要とされ、ブロック1022が開始される。そこで、試料は典型的には0.5~2.0の角度インクリメントだけ回転され、その後、1006が開始され、ブロック1006~1016を含む画像取得ループが再び実行される。この反復は、典型的には、90~360の画像を必要とし、その後、3次元トモグラフィ再構成を実行するためにブロック1020に入る。
【0061】
以下は、本開示よる追加の例示的実施形態である。
【0062】
第1実施形態は、試料のX線像を生成する方法であって、方法は、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に第1軸に沿って2000eVより小さいランディングエネルギーを有する電子ビームを方向づけるステップであって、薄片成形されたターゲット上へのビーム内の電子の衝突は、薄片成形されたターゲット内の相互作用体積内からX線を生成し、X線の一部はX線検出器に向けて放出される、ステップと、
薄片成形されたターゲットとX線検出器との間に第2軸に沿って試料を配置するステップと、
X線検出器を用いて試料によって吸収されていないX線を収集することによりX線像を取得するステップと、を含み、
薄片成形されたターゲットは、第1軸に沿った方向に高さを、第2軸に沿った方向に長さを、第1軸及び第2軸と異なる第3軸に沿って幅を有し、高さ及び長さは少なくとも幅の2倍であり、
電子ビームの相互作用体積(interaction volume)は、第1表面から薄片成形されたターゲットの高さよりも小さい距離だけ第1軸に沿って広がり、
薄片成形されたターゲットの高さによらず、第1軸に沿った相互作用体積の広がりによって、第1軸に沿った仮想ソースサイズが特定される。
【0063】
第2実施形態は、第1実施形態の方法であって、電子ビームを方向づけるステップは、ターゲット表面において薄膜成形されたターゲットの幅よりも大きい直径を有する電子ビームを方向づけるステップを含む。
【0064】
第3実施形態は、第1実施形態の方法であって、相互作用体積は、第1表面から薄片成形されたターゲットの高さの半分よりも少ない距離へと広がる。
【0065】
第4実施形態は、第1実施形態の方法であって、相互作用体積は、第1表面から薄片成形されたターゲットの高さの4分の1よりも少ない距離へと広がる。
【0066】
第5実施形態は、第1実施形態の方法であって、高さ及び長さは、両方とも少なくとも幅の2倍である。
【0067】
第6実施形態は、第1実施例の方法であって、高さ及び長さは、両方とも500nmより大きく、幅は200nmよりも小さい。
【0068】
第7の実施形態は、第1実施例の方法であり、
a) 試料を回転させるステップと、
b) 薄片成形されたターゲットの第1表面上に電子ビームを方向づけるステップと、
c) 後続のX線像を取得するステップと、
その後、複数のX線像を取得するためにステップa)b)及びc)を繰り返すステップと、
試料の3次元トモグラフィ再構成を形成するために複数のX線像を処理するステップと、を含む。
【0069】
第8の実施形態は、第1実施形態の方法であって、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に第1軸に沿って2000eVより小さいランディングエネルギーを有する電子ビームを方向づけるステップは、
1500から2000eVの範囲のランディングエネルギーを有する電子ビームを方向づけるステップを含む。
【0070】
第9実施形態は、試料のX線像を生成する方法であって、方法は、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に第1軸に沿って電子ビームを方向付けるステップであって、薄片成形されたターゲット上へのビーム中の電子の衝突はX線を生成し、X線の一部はX線検出器に向けて放出される、ステップと、
薄片成形されたターゲットとX線検出器との間に第2軸に沿って試料を配置するステップと、
X線検出器を用いて試料によって吸収されていないX線を収集することによりX線像を取得するステップと、
薄片成形されたターゲットは、第1軸に沿った方向において高さを、第2軸に沿った方向において長さを、第1軸及び第2軸と異なる第3軸に沿った方向において幅を有し、
高さ及び長さは、幅の少なくとも2倍である、
【0071】
第10実施形態は、第8実施形態の方法であり、高さ及び長さが、少なくとも幅の3倍である。
【0072】
第11の実施形態は、第8実施形態の方法であり、
a) 試料を回転させるステップと、
b) 薄片成形されたターゲットの第1表面上に電子ビームを方向づけるステップと、
c) 後続のX線像を取得するステップと、
d) 複数のX線像を取得するためにステップa)b)及びc)を繰り返すステップと、
試料の3次元トモグラフィ再構成を形成するために複数のX線像を処理するステップと、を含む。
【0073】
第12実施形態は、第8の実施形態の方法であり、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に電子ビームを方向づけるステップは、
1500から2000eVの範囲のランディングエネルギーを有する電子ビームを方向づけるステップを含む。
【0074】
第13実施形態は、第12の実施形態の方法であり、
薄片成形されたターゲットの第1表面上に電子ビームを方向づけるステップは、
電子が薄片成形されたターゲットの幅の2倍以下の侵入深さを有する電子ビームを方向づけるステップを含む。
【0075】
第14実施形態は、第1実施形態の方法であり、長さ及び高さが200nm以上であり、幅は200nm以下である。
【0076】
第15実施形態は、第1実施形態の方法であり、長さ及び高さが、1μm以上であり、幅が200nm以下である。
【0077】
第16の実施形態は、第1実施形態の方法であり、深さの幅に対する比は少なくとも5:1である。
【0078】
第17実施形態は、試料からX線画像を取得するためのシステムであり、
第1軸に沿って電子ビームを生成するための電子カラムと、
電子ビームによって衝突されるようにターゲット位置に配置された薄片成形されたターゲットと、
ターゲット上への電子ビームの衝突によってターゲットから放出されるX線によって試料が衝突される試料位置に、試料を配置するための試料ステージと、
電子ビームの衝突によってターゲットから放出され、試料を通過するX線を収集するためのX線検出器であって、薄片成形されたターゲットから試料位置を通過しX線検出器に至るラインが第2軸を画定する、X線検出器と、
薄片成形されたターゲットは、第1軸に沿った方向に高さを、第2軸に沿った方向に長さを、第1軸及び第2軸に垂直な方向に幅を有し、高さ及び長さは少なくとも幅の2倍である。
【0079】
第18実施形態は、第17実施形態のシステムであって、試料ステージが回転可能な試料ステージである。
【0080】
第19実施形態は、第17実施形態のシステムであり、さらに試料からのX線画像の取得を制御するためのコントローラ及び、処理システムによって実行されるための、機械読み取り可能な命令を保存するように構成されたコンピュータメモリを有する。
【0081】
第20実施形態は、第19の実施形態のシステムであって、コンピュータメモリは、試料のX線画像を繰り返し取得し試料を回転させるための命令、及び、試料の3次元表現を生成するために、反復して取得された像を組み合わせるための命令を保存することができる。
【0082】
第21実施形態は、第17実施形態のシステムであり、薄片成形されたターゲットは、タングステン、モリブデン、チタン、スカンジウム、バナジウム、銀又は高融点金属を含むX線生成材料の群から製造される。
【0083】
本発明及びその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に対して様々な変更、置換及び改変を行うことができることを理解されたい。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0084】
例えば、本明細書で開示される方法及び装置は、Xトモグラフィシステムでの使用について説明されているが、本方法及び装置は、任意のタイプのX線投影画像化システムにおいて一般的に使用され得る。さらに、X線吸収画像を得ることに加えて、開示された方法及び装置は、他のタイプの試料コントラスト画像、例えば位相コントラスト画像又は回折コントラスト画像、を得るために用いることができる。位相及び回折コントラスト像は、小構造を含む試料の画像化の場合に、より有用であり得る。
【0085】
当業者は、本発明の開示から容易に理解されるように、本明細書で説明される実施形態に対応するのと本質的に同じ機能を果たす又は同じ結果を実質的に達成する、現在存在する又は後に開発されるプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法又はステップは、本発明に従って利用されることができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又はステップをその範囲内に含むことが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10