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特許7046989平滑化された立ち上がり動作及び改善された線形性を有する複数のユニット・セル・トランジスタを有する半導体デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】平滑化された立ち上がり動作及び改善された線形性を有する複数のユニット・セル・トランジスタを有する半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20220328BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20220328BHJP
   H01L 21/8232 20060101ALI20220328BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220328BHJP
   H01L 27/095 20060101ALI20220328BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L27/06 F
H01L27/095
H01L29/80 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019571037
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 US2018037760
(87)【国際公開番号】W WO2018236682
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】15/628,932
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ユエイン
(72)【発明者】
【氏名】スリラム、サプタリシ
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、スコット
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-283994(JP,A)
【文献】特開平09-115926(JP,A)
【文献】特表2010-539691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338、29/778、29/812、
21/8232、27/06、27/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの線形性を高める方法であって、
共通の半導体構造上に複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスを形成するステップであって、前記ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、前記ユニット・セル・トランジスタの各々は、それぞれのゲート・フィンガーを含前記ゲート・フィンガーは、隣接するソース・コンタクトとドレイン・コンタクトとの間に伸び、前記半導体デバイスは、ソース・バスと、各ソース・コンタクトを前記ソース・バスに電気的に接続する複数のソースを接続するプラグとをさらに含む、形成するステップと、
前記半導体デバイスの異なる部分をそれぞれ異なるレベルの電流でオンにするために、前記ユニット・セル・トランジスタの前記それぞれのゲート・フィンガーに、1つ又は複数の電圧信号を印加するステップとを備え、
前記ユニット・セル・トランジスタが複数のグループに分割され、前記グループの各々は複数のユニット・セル・トランジスタを含み、前記グループの各々内の前記ユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧が、互いに0.01ボルトの範囲内にあり、
前記グループの各々がおよそ同数のユニット・セル・トランジスタを含
第1のグループの前記ユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、第2のグループの前記ユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧と少なくとも0.25ボルト異なる、方法。
【請求項2】
第1のグループの前記ユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、第2のグループの前記ユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧と少なくとも0.5ボルト異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体構造が、窒化ガリウム・ベースのチャネル層、及び前記窒化ガリウム・ベースのチャネル層上の窒化ガリウム・ベースのバリア層を含み、前記ゲート・フィンガーが互いに並行して伸びる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体デバイスの2つの前記異なる部分が、少なくとも10%異なる電流レベルを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する本発明は、マイクロエレクトロニクス・デバイスに関し、より詳細にはユニット・セル・ベースの構造を有する高電力電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(500MHz)、Sバンド(3GHz)及びXバンド(10GHz)など、高い周波数で動作すると同時に高電力処理能力を必要とする電気回路が、近年一層普及している。高電力、高周波数の回路が増えているために、これに伴って、無線及びマイクロ波周波数で確実に動作し得ることに加えてさらに高電力負荷を処理できる半導体デバイスの需要が高まっている。
【0003】
増大した出力電力を供給するために、共通の半導体構造上に形成され、電気的に並列に接続した複数の「ユニット・セル」トランジスタを含む、半導体デバイスが開発された。各ユニット・セル・トランジスタは、図1に模式的に示すように、細長いソース・コンタクトとドレイン・コンタクトとの間を並行して伸びるゲート・フィンガーを含み得る。
【0004】
特に図1は、半導体構造20上の、ゲート・パッド12、ソース・パッド22、及びドレイン・パッド32を含む、従来の半導体デバイス10のメタル層レイアウトを示す。図1は、基礎となる半導体構造20の上に形成された半導体デバイス10の様々なメタル層コンタクト構造を示す、半導体デバイスの平面図(すなわち、デバイスを上方から見下ろす図)である。図1に示すように、従来の半導体デバイス10では、ゲート・パッド12がゲート・バス14により、第1の方向(たとえば、図1に示すy方向)に並行して伸びる複数のゲート・フィンガー16に接続する。ドレイン・パッド32は、ドレイン・バス34を介して複数のドレイン・コンタクト36に接続する。ソース・パッド22は、異なる配線層(ここではゲート・フィンガー16及びドレイン・コンタクト36の上方を走る、より上層の配線層)に配置するソース・バス24を介して、複数の並列ソース・コンタクト26に接続する。縦方向に伸びる(すなわち、x方向とy方向とに垂直なz方向に伸びる)ソース・コンタクト・プラグ28は、電気的に各ソース・コンタクト26をソース・バス24に接続する。
【0005】
各ゲート・フィンガー16は、隣接するソース・コンタクト26とドレイン・コンタクト36との対の間をy方向に沿って走っている。半導体デバイス10のユニット・セル・トランジスタは、ボックス40に示され、隣接するソース・コンタクト26とドレイン・コンタクト36との間を伸びるゲート・フィンガー16を含んでいる。「ゲート長」はx方向のゲート配線の亘長を指し、「ゲート幅」はゲート・フィンガー16と、ソース・コンタクト26及びドレイン・コンタクト36とがy方向に重なる亘長である。すなわち、ゲート・フィンガー16の「幅」は、隣接するソース/ドレイン・コンタクト26、36に並行して伸びるゲート・フィンガー16の寸法(y方向に沿った亘長)を指す。半導体デバイス10の電力処理能力は、その「ゲート周囲長」に比例し得る。半導体デバイス10のゲート周囲長は、半導体デバイス10の各ゲート・フィンガー16のゲート幅の合計である。
【0006】
炭化ケイ素及び/又は窒化ガリウム・ベースの半導体材料など、ワイド・バンドギャップ半導体材料で形成した半導体デバイスは、より高い電流密度で動作可能であり、したがって高電力用途に広く使用される。特にGaN、AlGaN、InGaNなど、窒化ガリウム・ベースの半導体材料のエピタキシャル層を1層又は複数層含む、窒化ガリウム・ベースのトランジスタは、ワイヤレス通信用トランジスタ増幅器など高電力用途に、今日普通に使用される。これらの窒化ガリウム・ベースのエピタキシャル層は、炭化ケイ素又はサファイア基板上に成長させるのが一般的である。しかしながら、改善された性能を呈する高電力半導体デバイスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国公開第2002/0066908A1号
【文献】米国公開第2002/0167023A1号
【文献】米国公開第2004/0061129号
【文献】米国特許第7,906,799号
【文献】米国特許第6,316,793号
【文献】米国公開第2003/0102482A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例によれば、共通の半導体構造上に形成された複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタはゲート・フィンガーを含む。いくつかの実施例では、第1及び第2のユニット・セル・トランジスタのそれぞれのしきい値電圧は、少なくとも0.1ボルト異なり、且つ/又は第3のユニット・セル・トランジスタの第1及び第2の部分のしきい値電圧は少なくとも0.1ボルト異なる。
【0009】
いくつかの実施例では、ゲート・フィンガーは互いに並行して伸び得る。本半導体構造は、窒化ガリウム・ベースのチャネル層を含む。
【0010】
いくつかの実施例では、第1及び第2のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、少なくとも0.25ボルト異なり得る。いくつかの実施例では、第3のユニット・セル・トランジスタの第1及び第2のセグメントのしきい値電圧は、少なくとも0.25ボルト、又は少なくとも0.5ボルト異なり得る。いくつかの実施例では、第1及び第2のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、0.1~1.25ボルト異なり得る。いくつかの実施例では、第3のユニット・セル・トランジスタの第1及び第2の部分のしきい値電圧は、0.1~1.25ボルト異なり得る。
【0011】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタは複数のグループに分けられてよく、各グループは少なくとも5つのユニット・セル・トランジスタを含み、各グループ内のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は互いに0.01ボルトの範囲内に存在する。各グループには、およそ同数のユニット・セル・トランジスタを含め得る。例示的な実施例では、グループの数は2つ又は3つであり得る。
【0012】
いくつかの実施例では、各ゲート・フィンガーは、少なくとも0.1ボルト異なるしきい値電圧を有する、少なくとも2つのセグメントを含み得る。他の実施例では、各ゲート・フィンガーは、少なくとも0.25ボルト、又は少なくとも0.5ボルト異なるしきい値電圧を有する、少なくとも2つのセグメントを含み得る。さらに他の実施例では、各ゲート・フィンガーは、0.1~1.25ボルト異なるしきい値電圧を有する、少なくとも2つのセグメントを含み得る。
【0013】
いくつかの実施例では、半導体構造は、ユニット・セル・トランジスタの各々のバリア層として作用する窒化ガリウム・ベース層を含み得、半導体デバイスの領域が異なれば、窒化ガリウム・ベース層の厚さが変動し得る。たとえば、いくつかの実施例では、窒化ガリウム・ベース層は、第3のユニット・セル・トランジスタの第1のセグメントの下では第1の厚さを有し得、第3のユニット・セル・トランジスタの第2のセグメントの下では第2の、異なる厚さを有し得る。他の実施例では、窒化ガリウム・ベース層は、第1のユニット・セル・トランジスタの下では第1の厚さを有し得、第2のユニット・セル・トランジスタの下では第2の厚さを有し得る。
【0014】
いくつかの実施例では、第3のユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの下にあるチャネル層の部分のドーピング濃度が、第3のユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの幅に沿って変動し得る。
【0015】
いくつかの実施例では、第1のユニット・セル・トランジスタのフィンガーのうちの1本のゲート・フィンガーの下にあるチャネル層の第1の部分の第1のドーピング濃度は、第2のユニット・セル・トランジスタの1本のゲート・フィンガーの下にあるチャネル層の第2の部分の第2のドーピング濃度とは異なり得る。たとえば、一方がドープされ他方がドープされていないことがある。
【0016】
いくつかの実施例では、第1のユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの少なくとも一部分は、第2のユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの少なくとも一部分とは異なる材料であり得る。
【0017】
本発明のさらに別の実施例によれば、半導体構造上に形成された複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタがゲート・フィンガーを含んでいる。ユニット・セル・トランジスタの少なくとも第1のサブセットのしきい値電圧が、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内のユニット・セル・トランジスタのそれぞれのゲート・フィンガーの幅に沿って変動している。
【0018】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、それらのゲート・フィンガーそれぞれの幅に沿って少なくとも0.1ボルト変動し得る。他の実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、それらのゲート・フィンガーそれぞれの幅に沿って少なくとも0.25ボルト(又は少なくとも0.5ボルト)変動し得る。さらに他の実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、それらのゲート・フィンガーそれぞれの幅に沿って0.1~1.25ボルト変動し得る。
【0019】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーは、互いに並行して伸び得る。
【0020】
いくつかの実施例では、半導体構造は、窒化ガリウム・ベースのチャネル層を含み得る。
【0021】
いくつかの実施例では、各ゲート・フィンガーは、異なるしきい値電圧を有する少なくとも3つのセグメントを含み得る。
【0022】
いくつかの実施例では、半導体デバイスは、ユニット・セル・トランジスタの各々のバリア層として作用する窒化ガリウム・ベース層を含み得る。窒化ガリウム・ベース層は、ゲート・フィンガーの少なくとも半分の下に少なくとも2つの異なる厚さを有し得る。
【0023】
いくつかの実施例では、半導体デバイスはチャネル層を含み得、ゲート・フィンガーの下にあるチャネル層のそれぞれの部分は、それぞれのゲート・フィンガーの各々の少なくとも2つの異なる部分の下でドーピング濃度が異なり得る。
【0024】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットの各ゲート・フィンガーには、2つから5つのセグメントがあり得る。ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内の各ユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧値は、各セグメントに沿って実質的に一定であり得るが、一方、セグメントが異なれば、しきい値電圧は、他の少なくとも1つのセグメントとは、少なくとも0.1ボルト変動し得る。
【0025】
本発明のさらに別の実施例によれば、半導体構造上に形成された複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは、電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタはゲート・フィンガーを含んでいる。ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内の各ユニット・セル・トランジスタは、第1のしきい値電圧を有し得、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットの各ユニット・セル・トランジスタは、第1のしきい値電圧とは異なる第2のしきい値電圧を有し得る。
【0026】
いくつかの実施例では、第1のしきい値電圧は、第2のしきい値電圧と、少なくとも0.1ボルト異なり得る。
【0027】
いくつかの実施例では、ゲート・フィンガーは、互いに並行して伸び得る。
【0028】
いくつかの実施例では、半導体構造は、窒化ガリウム・ベースのチャネル層を含み得る。
【0029】
いくつかの実施例では、第1のしきい値電圧は、第2のしきい値電圧と、少なくとも0.25ボルト又は少なくとも0.5ボルト異なり得る。いくつかの実施例では、第1のしきい値電圧は、第2のしきい値電圧と、0.1~1.25ボルト異なり得る。
【0030】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット及びユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットは、それぞれおよそ同数のユニット・セル・トランジスタを含み得る。
【0031】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第3のサブセット内の各ユニット・セル・トランジスタは、第1のしきい値電圧と第2のしきい値電圧とのどちらとも異なる第3のしきい値電圧を有し得る。
【0032】
いくつかの実施例では、半導体構造は、ユニット・セル・トランジスタの各々のバリア層として作用する窒化ガリウム・ベース層を含み得る。ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内の各ユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの下の窒化ガリウム・ベース層の厚さは、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセット内の各ユニット・セル・トランジスタ内のゲート・フィンガーの下のバリア層の厚さとは異なり得る。
【0033】
いくつかの実施例では、半導体デバイスはチャネル層を含み得、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセット内のユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの下にあるチャネル層の第1の部分の第1のドーピング濃度は、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセット内のユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの下にあるチャネル層の第2の部分の第2のドーピング濃度とは異なり得る。
【0034】
本発明のさらに別の実施例によれば、半導体デバイスの線形性を高める方法が提供されている。半導体デバイスは共通の半導体構造上に形成され、複数のユニット・セル・トランジスタを含み、ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタはゲート・フィンガーを含んでいる。半導体デバイスの2DEG(2-dimensional electron gas,2次元電子ガス)チャネルの異なる部分をそれぞれ異なる電流レベルでオンにするために、ユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーに1つ又は複数の電圧信号を印加する。
【0035】
いくつかの実施例では、少なくとも一部のゲート・フィンガーの第1及び第2のセグメントは、しきい値電圧が少なくとも0.1ボルト異なり得る。他の実施例では、これらの第1及び第2のセグメントは、しきい値電圧が少なくとも0.25ボルト異なり得る。
【0036】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタが異なれば、しきい値電圧は少なくとも0.1ボルト異なり得る。他の実施例では、ユニット・セル・トランジスタが異なれば、しきい値電圧は少なくとも0.25ボルト又は少なくとも0.5ボルト異なり得る。さらに別の実施例では、ユニット・セル・トランジスタが異なれば、しきい値電圧は0.1~1.25ボルト異なり得る。
【0037】
いくつかの実施例では、各ユニット・セル・トランジスタは、実質的に同じしきい値電圧及び同じ構造を有する。これらの実施例では、第1の電圧信号をユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの第1のサブセットに印加し得、第1の電圧信号と少なくとも0.1ボルト異なる第2の電圧信号をユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーの第2のサブセットに同時に印加し得る。他の実施例では、第1及び第2の電圧信号は、少なくとも0.25ボルト又は0.1~1.25ボルト異なり得る。
【0038】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタは複数のグループに分割されてよく、各グループは少なくとも5つのユニット・セル・トランジスタを含む。各グループ内のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧は、いくつかの実施例では互いに0.01ボルトの範囲内にあり得る。各グループは、いくつかの実施例ではおよそ同数のユニット・セル・トランジスタを含み得、多くの実施例ではグループ数は2又は3又は4以上であり得る。
【0039】
いくつかの実施例では、半導体構造は、窒化ガリウム・ベースのチャネル層上に窒化ガリウム・ベースのチャネル層及び窒化ガリウム・ベースのバリア層を含み得、ゲート・フィンガーが互いに並行して伸び得る。そのような実施例では、半導体デバイスの領域が異なれば、窒化ガリウム・ベースのバリア層の厚さが変動し得る。窒化ガリウム・ベースのバリア層は、たとえば、第1のユニット・セル・トランジスタの第1のセグメントの下では第1の厚さであり、第1のユニット・セル・トランジスタの第2のセグメントの下では第2の、異なる厚さであり得る。追加的又は代替的に、窒化ガリウム・ベース層は、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットの下では第1の厚さであり、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットの下では第2の厚さであり得る。
【0040】
本発明のさらに別の実施例によれば、半導体構造上の複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタは半導体構造の窒化ガリウム・ベースのバリア層の上方を伸びるゲート・フィンガーを含む。半導体デバイス内で位置が異なれば、窒化ガリウム・ベースのバリア層の厚さは異なる。
【0041】
いくつかの実施例では、窒化ガリウム・ベースのバリア層は、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットのゲート・フィンガーのそれぞれの第1のセグメントの下では第1の厚さであり、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットのゲート・フィンガーのそれぞれの第2のセグメントの下では第2の、異なる厚さである。第1及び第2の厚さは、たとえば、少なくとも1nm異なり得る。
【0042】
いくつかの実施例では、窒化ガリウム・ベースのバリア層は、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットの下では第1の厚さであり、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットの下では第2の厚さであり得る。第1及び第2の厚さは、たとえば、少なくとも1nm異なり得る。
【0043】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタのサブセットが異なれば、しきい値電圧は少なくとも0.1ボルト又は少なくとも0.25ボルト又は少なくとも0.5ボルト異なり得る。
【0044】
いくつかの実施例では、少なくとも1つのゲート・フィンガーでセグメントが異なれば、しきい値電圧は少なくとも0.1ボルト又は少なくとも0.25ボルト又は少なくとも0.5ボルト異なり得る。
【0045】
本発明のさらに別の実施例によれば、窒化ガリウム・ベースのバリア層を含む半導体構造上の複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタは窒化ガリウム・ベースのバリア層の上方を伸びるゲート・フィンガーを含んでいる。これらのデバイスはさらに、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットのゲート・フィンガーに結合される第1の出力と、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットのゲート・フィンガーに結合される第2の出力とを有する分圧器を含んでいる。第1及び第2の出力は、それぞれ第1及び第2の電圧を、ユニット・セル・トランジスタの第1及び第2のサブセットそれぞれのゲート・フィンガーに印加するように構成され、第1及び第2の電圧は少なくとも0.1ボルト異なる。
【0046】
いくつかの実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1及び第2のサブセットのユニット・セル・トランジスタは、同一の設計構造を有し得る。
【0047】
いくつかの実施例では、第1及び第2の電圧は、少なくとも0.25ボルト異なり得る。
【0048】
いくつかの実施例では、分圧器はユニット・セル・トランジスタの第3のサブセットのゲート・フィンガーに結合される第3の出力を含み得、第3の出力は第3の電圧をユニット・セル・トランジスタの第3のサブセットのゲート・フィンガーに印加するように構成され、第3の電圧は第1及び第2の両方の電圧と少なくとも0.1ボルト(又は他の実施例では少なくとも0.25ボルト若しくは0.5ボルト)異なる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】従来のマルチセル半導体デバイスのメタル層レイアウトの平面図である。
図2】125ミクロンの幅を有するユニット・ゲート・フィンガーをもつ従来の半導体デバイスについて、印加したしきい値電圧の関数として相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを示すグラフである。
図3図1の従来のマルチセル半導体デバイスにおけるしきい値電圧変動を示す概略グラフである。
図4A】本発明のいくつかの実施例によるマルチセル半導体デバイスのしきい値電圧の変動を示す概略グラフである。
図4B】本発明のいくつかの実施例によるマルチセル半導体デバイスのしきい値電圧の変動を示す概略グラフである。
図4C】本発明のいくつかの実施例によるマルチセル半導体デバイスのしきい値電圧の変動を示す概略グラフである。
図5A】異なるしきい値電圧を有するゲート・フィンガーを有する本発明の実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略平面図である。
図5B】異なるしきい値電圧を有するゲート・フィンガーを有する本発明の実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略平面図である。
図5C】異なるしきい値電圧を有するゲート・フィンガーを有する本発明の実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略平面図である。
図6A】ゲート・フィンガーの幅に沿って離散的に変動するしきい値電圧を有し、各ゲート・フィンガーの合計の幅が125ミクロンである、本発明の実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略平面図である。
図6B】ゲート・フィンガーの幅に沿って離散的に変動するしきい値電圧を有し、各ゲート・フィンガーの合計の幅が125ミクロンである、本発明の実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略平面図である。
図7A図6Aの設計構造を有する半導体デバイスについて、印加したしきい値電圧の関数として相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを示すグラフである。
図7B図6Bの設計構造を有する半導体デバイスについて、印加したしきい値電圧の関数として相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを示すグラフである。
図8A図6Aのライン8A-8Aに沿って切り取った断面図である。
図8B図6Aのライン8B-8Bに沿って切り取った断面図である。
図9】本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略平面図である。
図10A】本発明のさらなる実施例によるマルチセル・トランジスタにおけるしきい値電圧変動を示す概略グラフである。
図10B】本発明のさらなる実施例によるマルチセル・トランジスタにおけるしきい値電圧変動を示す概略グラフである。
図10C】本発明のさらなる実施例によるマルチセル・トランジスタにおけるしきい値電圧変動を示す概略グラフである。
図11A】本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略断面図である。
図11B】本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略断面図である。
図11C】本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイスの概略断面図である。
図12】本発明の実施例による複数の半導体デバイスがその上に形成された半導体ウェーハの概略平面図である。
図13】本発明のいくつかの実施例によるマルチセル半導体デバイスの回路図である。
図14】本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイスの回路図である。
図15図14の設計構造を有し、ゲート・フィンガーの合計の幅が125ミクロンである半導体デバイスについて、印加したしきい値電圧の関数として相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを示すグラフである。
図16】オンウェーハ分圧器を含む本発明の実施例による半導体デバイスの回路概略図である。
図17】部分的にウェーハ上に実装されている分圧器を含む本発明のさらなる実施例による半導体デバイスの回路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の実施例は、改善された線形性を呈し得るマルチセル半導体デバイス(すなわち複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイス)を提供する。マルチセル半導体デバイスの線形性の一般的な基準の1つは、デバイスの三次相互コンダクタンスのふるまいである。窒化ガリウム中に形成されるマルチセル半導体デバイス及び多くの他のワイド・バンドギャップ半導体材料系は急峻な立ち上がり動作を呈し得るので、これらの材料系中に形成されたマルチセル半導体デバイスは、デバイスが立ち上がる際にそれらの三次相互コンダクタンスの応答に著しいばらつきを呈し得る。三次相互コンダクタンスの非線形性は、トランジスタの出力信号における三次相互変調積を発生させ得る。これらの三次相互変調積がマルチセル半導体デバイスを含む通信システムのチャネル内に入ると、三次相互変調積は通信システムのパフォーマンスを劣化させ得る。デバイス立ち上がり時の三次相互コンダクタンスは、しばしばマルチセル半導体デバイスにおける三次相互変調積の一因となる基本パラメータである。三次相互コンダクタンスのピーク値は、デバイスの大きさに比例して大きくなる。したがって、より巨大でより高電力の半導体デバイスを必要とする用途では、高い線形性を提供することが次第に困難になり得る。
【0051】
本発明の実施例によれば、著しく改善された線形性を呈し得るマルチセル半導体デバイスが提供される。この改善された線形性は、デバイスのしきい値電圧を工夫して改善された線形性を提供すること、又はデバイスの異なる部分に異なるゲート電圧を印加することにより達成され得る。本発明の実施例による半導体デバイスは、いくつかの実施例では、電気的に並列に接続される複数のユニット・セルを含む高電力デバイスであり得る。各ユニット・セルはゲート・フィンガーを含み得、ゲート・フィンガーは互いに並行して伸び得る。
【0052】
電界効果トランジスタのしきい値電圧は、トランジスタのソース端子とドレイン端子との間に電流を導通可能にするのに必要な最小のゲート-ソース間電圧較差を指す。本発明の実施例によるマルチセル半導体デバイスは、デバイス内の位置が異なれば異なる、不定のしきい値電圧を有し得る。いくつかの実施例では、ゲート・フィンガーの別個のサブセットが異なるしきい値電圧を有し得る。他の実施例では、しきい値電圧がそれぞれのゲート・フィンガーの幅に沿って変動し得る。さらに他の実施例では、上記の2つの手法が組み合わせられ得る。デバイスの異なる領域では異なるしきい値電圧を有するように半導体デバイスを設計することにより、半導体デバイスの2DEGチャネルの異なる部分がゲート電圧の印加に応じて異なる程度にオンになり得る。言い換えれば、半導体デバイスの2DEGチャネルの部分が異なれば、異なる電流レベルでオンになり得る。たとえば、いくつかの実施例では、半導体デバイスの2DEGチャネルの部分が異なれば、少なくとも5%異なる電流レベルになり得る。他の実施例では、半導体デバイスの2DEGチャネルの部分が異なれば、少なくとも10%異なる電流レベルになり得る。さらに他の実施例では、半導体デバイスの2DEGチャネルの部分が異なれば、10%~30%異なる電流レベルになり得る。上記で説明したように、たとえば、窒化ガリウム・ベースの半導体など、ワイド・バンドギャップ半導体材料系中に形成された半導体デバイスは速い立ち上がり動作を呈し得、すべてのユニット・セルが実質的に同時にオンになる。三次相互コンダクタンスは立ち上がり時に極大化する傾向があるので、そのような材料系中に形成されたマルチセル半導体デバイスは、すべてのユニット・セルが同時にオンになるため、デバイスの立ち上がり時に三次相互コンダクタンスの大きなスパイクを受け得る。デバイスの部分が異なればしきい値電圧が異なるようにしきい値電圧を変動させることにより、チャネルがオンになる程度がどの時点でもデバイス全体で変動し、三次相互コンダクタンスのスパイクの大きさを低減する。
【0053】
いくつかの実施例では、半導体デバイスは、チャネル層及びバリア層を含む高電子移動度トランジスタ(「HEMT」:high electron mobility transistors)であり得る。そのようなデバイスでは、バリア層の厚さを変動させることにより、デバイスの領域が異なればしきい値電圧が変動し得る。他の実施例では、しきい値電圧を変動させるために、デバイスの異なる部分でバリア層及び/又はチャネル層のドーピング濃度が変動し得る。さらに他の実施例では、ゲート・フィンガーの幅に沿って、且つ/又は、異なるゲート・フィンガー間で、のどちらでもゲート・フィンガーの組成が変動し得る。たとえば、しきい値電圧を変動させるために、異なる金属及び/又は異なる組成を有する金属合金が使用され得る。
【0054】
さらに他の実施例では、デバイスの異なるユニット・セルに異なるゲート電圧を供給するように構成され得る関連分圧器回路を含み得るマルチセル半導体デバイスが提供される。これらのデバイスは同じ構造及び構成を有するユニット・セルを有し得る。しかしながら、三次相互コンダクタンスのピークを平滑化するために、異なるゲート電圧をゲート・フィンガーの異なるサブセットに印加することにより、異なる程度で(すなわち、異なる電流レベルで)オンになるように異なるユニット・セル・トランジスタを構成し得る。
【0055】
本発明の実施例による半導体デバイスは、著しく改善された線形性を呈し得る。たとえば、半導体デバイスをしきい値電圧値が異なる2つの領域に分割する場合、三次相互コンダクタンスのピーク値は、全体に渡って一様なしきい値電圧を有するデバイスに比して約30%低減し得る。半導体デバイスをしきい値電圧値が異なる3つの領域に分割する場合、三次相互コンダクタンスのピーク値は、全体に渡って一様なしきい値電圧を有するデバイスに比して約65%低減し得る。より大きいしきい値電圧変動を有する半導体デバイスでは、三次相互コンダクタンスのさらなる低減を達成し得る。これらの線形性の改善は、たとえば、デバイスの利得などデバイスの他の動作特性に大きな影響を与えることなく達成し得る。
【0056】
いくつかの例示的な実施例では、共通の半導体構造上に形成された複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタはそれぞれのゲート・フィンガーを含んでいる。ユニット・セル・トランジスタの第1及び第2のサブセットのしきい値電圧は、いくつかの実施例では、たとえば、少なくとも0.1ボルト異なるように設計されている。他の実施例では、この差が少なくとも0.25ボルトであり得る。さらなる実施例では、この差が少なくとも0.5ボルトであり得る。さらに他の実施例では、差が0.1~1.25ボルトであり得る。
【0057】
他の例示的な実施例では、共通の半導体構造上に形成された複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタはそれぞれのゲート・フィンガーを含んでいる。ユニット・セル・トランジスタのうちの少なくとも一部の第1及び第2のセグメントのしきい値電圧は、いくつかの実施例では、たとえば、少なくとも0.1ボルト異なるように設計されている。他の実施例では、この差は少なくとも0.25ボルト又は少なくとも0.5ボルトであり得る。さらに他の実施例では、差は0.1~1.25ボルトであり得る。
【0058】
さらに別の例示的な実施例では、半導体構造上の複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタは、半導体構造の窒化ガリウム・ベースのバリア層の上を伸びるゲート・フィンガーを含んでいる。半導体デバイス全体に渡ってしきい値電圧を変動させるために、半導体デバイス内の位置が異なれば窒化ガリウム・ベースのバリア層の厚さは異なる。
【0059】
また追加の例示的な実施例では、半導体構造上に複数のユニット・セル・トランジスタを含む半導体デバイスが提供される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタは、半導体構造の窒化ガリウム・ベースのバリア層の上を伸びるゲート・フィンガーを含んでいる。半導体デバイスは、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットのゲート・フィンガーに結合される第1の出力、及びユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットのゲート・フィンガーに結合される第2の出力を有する分圧器を含む。他の実施例では、第1及び第2の出力は、第1及び第2の電圧をそれぞれユニット・セル・トランジスタの第1及び第2のサブセットのゲート・フィンガーに印加し、第1及び第2の電圧は、たとえば、少なくとも0.1ボルト、又は少なくとも0.25ボルト異なるように構成されている。
【0060】
半導体デバイスの線形性を高める方法もまた提供される。これらの方法によれば、半導体デバイスは、共通の半導体構造上に複数のユニット・セル・トランジスタを含めて形成される。ユニット・セル・トランジスタは電気的に並列に接続され、各ユニット・セル・トランジスタはゲート・フィンガーを含んでいる。半導体デバイスの2から10個の異なる部分をそれぞれ異なる程度でオンにするために、1つ又は複数の電圧信号がユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガーに印加される。
【0061】
次に本発明の実施例について、図2図17を参照してより詳細に説明する。
【0062】
図2は、図1の半導体デバイス10など従来の窒化ガリウム・ベースのマルチセル半導体デバイスについて、相互コンダクタンス(gm)及び三次相互コンダクタンス(gm3)をゲート-ソース間電圧較差の関数として示すグラフである。図2に示すように、三次相互コンダクタンスは、印加されたゲート電圧がデバイスの立ち上がりから飽和に及ぶまでの間に、正の高いピークに達するとその後に負の高いピークに達し、次いでなだらかになる傾向がある。窒化ガリウム・ベースのトランジスタの急峻な立ち上がり動作により、三次相互コンダクタンスはピンチオフ点(pinch off)近傍でピークに達する。ピンチオフ点は、その後方でドレイン-ソース間電流がほぼ一定になるドレイン-ソース間電圧レベルを指す(すなわちトランジスタが飽和領域に入る点である)。図2に見られるように、三次相互コンダクタンスは値が-70.2mS/Vでピークに達している。上述のように、三次相互コンダクタンスの非線形性はデバイスの出力信号に三次相互変調積を生成し得、デバイスを含む通信システムのパフォーマンスを低下させ得る。したがって、三次相互コンダクタンスの許容値は多くのワイヤレス通信用途など、しばしば用途に応じて指定され、そのようなシステムでの稼働に好適な半導体デバイスは、指定値よりも小さい三次相互コンダクタンスのピーク値を有していなくてはならない。
【0063】
図3は、図1の半導体デバイス10の設計構造を有する従来のマルチセル半導体デバイスにおけるしきい値電圧変動を示すグラフである。
【0064】
図3を参照すると、縦軸はしきい値電圧(すなわち、ユニット・セル・トランジスタがオンになるゲート-ソース間電圧較差)を表し、横軸は従来の半導体デバイス10中に含まれる、デバイスを渡るそれらの順序で配列した(すなわち、図1のx軸方向に配列した)ゲート・フィンガーを示す。言い換えれば、図3の横軸の左側部分が図1の半導体デバイス10の左側にあるゲート・フィンガー16に対応し、図3の横軸の右側部分が図1の半導体デバイス10の右側にあるゲート・フィンガー16に対応する。したがって、図3は、半導体デバイス10のユニット・セル・トランジスタの各々についてのしきい値電圧を示している。図3に示されるように、従来の半導体デバイス10において、すべてのユニット・セル・トランジスタ40は同じしきい値電圧値VTH-Cを有する。従来の半導体デバイス10においては、しきい値電圧値VTH-Cが各ゲート・フィンガー16の幅に沿って一定であることにもまた留意されたい。
【0065】
図4A図4Cは、本発明のいくつかの実施例によるマルチセル半導体デバイスにおけるしきい値電圧変動を示すグラフである。図3と同様に、図4A図4Cでは、横軸が図1のx軸方向(並びに以下に説明する図5A図5Cのx軸方向)に沿ってトランジスタ内のゲート・フィンガーの位置を示し、縦軸が各ゲート・フィンガーそれぞれに対応するユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧を表す。
【0066】
図4Aに示すように、第1の例示的な実施例において、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットは第1のしきい値電圧値VTH-1を有するように設計され、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットは第1のしきい値電圧値VTH-1よりも大きい第2のしきい値電圧値VTH-2を有するように設計されている。第1のしきい値電圧値VTH-1は、たとえばVTH-Cよりも低く、第2のしきい値電圧値VTH-2は、たとえばVTH-Cよりも高くなり得る。本発明の実施例はそれに限定されないが、例示的な実施例ではVTH-2-VTH-1が0.1から0.8ボルトであり得る。
【0067】
次に図4Bを参照すれば、第2の例示的な実施例において、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットは第1のしきい値電圧値VTH-1を有するように設計され、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットは第1のしきい値電圧値VTH-1よりも大きい第2のしきい値電圧値VTH-2を有するように設計され、ユニット・セル・トランジスタの第3のサブセットは第2のしきい値電圧値VTH-2よりも大きい第3のしきい値電圧値VTH-3を有するように設計されている。第1のしきい値電圧値VTH-1は、たとえばVTH-Cよりも低く、第2のしきい値電圧値VTH-2は、たとえばおよそVTH-Cに等しく、第3のしきい値電圧値VTH-3は、たとえばVTH-Cよりも高くなり得る。本発明の実施例はそれに限定されないが、例示的な実施例ではVTH-3-VTH-1が0.1から0.8ボルトであり得る。第3の、離散的なしきい値電圧値VTH-3を加えることにより、印加したゲート電圧のより大きい範囲に渡ってデバイスの立ち上がりを広げ(なだらかにし)、デバイス立ち上がり時の三次相互コンダクタンスのピーク値はさらに低減し得る。
【0068】
次に図4Cを参照すれば、第3の実施例では、各ユニット・セル・トランジスタは異なるしきい値電圧値を有し得る。特に、図4Cに対応する半導体デバイスは、一様に増加するしきい値電圧値を有するユニット・セル・トランジスタを有する。したがって、N個のユニット・セル・トランジスタを有する半導体デバイスでは、しきい値電圧値がVTH-1からVTH-Nまで広がり得る。中央のユニット・セル・トランジスタのしきい値電圧値VTH-N/2は、たとえば、およそVTH-Cに等しくなり得る。図4Cに対応する設計構造は、デバイスの異なる部分がデバイスのゲート・パッドに立ち上がり電圧が印加されたことに応じてオンになるときをさらに広げ得る。図4Cに対応する半導体デバイスの設計構造は、デバイス立ち上がり時の三次相互コンダクタンスのピーク値をさらに低減し得る。
【0069】
図4A図4Cに、デバイスを左から右に(又は代わりに、右から左に)移動すると、ユニット・セル・トランジスタ(又は等価的にゲート・フィンガーの位置)の増加とともにしきい値電圧が(連続的な、又は離散的なグループのどちらであっても)増加することが示されているが、これはそうである必要はないことを了解されたい。たとえば、後段で説明するが、図10A図10Cに、ユニット・セル・トランジスタの異なるセットのしきい値電圧がデバイス全体に渡ってよりランダムに分散している追加の実施例が示されている。
【0070】
図5A図5Cは、本発明のいくつかの実施例による3つの例示的なマルチセル半導体デバイスの配線レイアウトの平面図である。図5A図5Cの半導体デバイスは、それぞれ図4A図4Cに関して上記で説明したデバイスに対応する。
【0071】
図5Aに示すように、マルチセル半導体デバイス100は、半導体構造120上に形成された多くのメタル層パターンを含む。半導体構造120の組成例は、図8A及び図8Bを参照して、以下により詳細に説明する。図5Aに示すように、マルチセル半導体デバイス100は、半導体構造120上に形成されたゲート・パッド112、ソース・パッド122及びドレイン・パッド132を含む。ゲート・パッド112は、ゲート・バス114で第1の方向(y方向)に並行して伸びる複数のゲート・フィンガー116に接続する。ドレイン・パッド132は、ドレイン・バス134を経由して複数の並列ドレイン・コンタクト136に接続する。ソース・パッド122は、たとえば、ゲート・バス114及びドレイン・バス134とは異なる配線層で配線するソース・バス124を経由して複数の並列ソース・コンタクト126に接続する。説明している実施例のソース・バス124は、ゲート・フィンガー116及びドレイン・コンタクト136の上を走る。縦方向に伸びるソース・コンタクト・プラグ128は、各ソース・コンタクト126をソース・バス124に電気的に接続する。各ゲート・フィンガー116は、隣接するソース・コンタクト126とドレイン・コンタクト136とのペアの間をy方向に沿って走る。トランジスタ100のユニット・セルは、ボックス140で示されており、隣接するソース・コンタクト126とドレイン・コンタクト136との間を伸びるゲート・フィンガー116を含む。
【0072】
さらに図5Aに示すように、ゲート・フィンガー116は、第1のゲート・フィンガー116a及び第2のゲート・フィンガー116bを含み得る。ゲート・フィンガー116aは半導体構造120の第1の領域102の中に、ゲート・フィンガー116bは半導体構造120の第2の領域102の中にあり得る。第1の領域102では、ユニット・セル・トランジスタ140(すなわち、ゲート・フィンガー116aを含むユニット・セル・トランジスタ)が、各ゲート・フィンガー116aの幅に沿って第1のしきい値電圧値VTH-1を各々有し得る。第2の領域102では、ユニット・セル・トランジスタ140(すなわち、ゲート・フィンガー116bを含むユニット・セル・トランジスタ)が、各ゲート・フィンガー116bの幅に沿って第2のしきい値電圧値VTH-2を各々有し得る。第2のしきい値電圧値VTH-2は、第1のしきい値電圧値VTH-1よりも大きくなり得る。以下で説明するように、第1の領域102及び第2の領域102におけるユニット・セル・トランジスタは、異なる材料を使用してゲート・フィンガーを形成すること、又は組成、ドーピング濃度及び/若しくはゲート・フィンガーの下にある1つ若しくは複数の層の厚さを変更することを含む、様々な方法で異なるしきい値電圧値を有するように製造し得る。説明の容易さのため、第1のしきい値電圧値VTH-1を有するユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガー116aが図5Aに第1の形式の網かけを使用して示され、第2のしきい値電圧値VTH-2を有するユニット・セル・トランジスタのゲート・フィンガー116bが第2の形式の網かけを使用して示されている。この同じ取り決めを本発明の追加の実施例を示す図においても使用する。しかしながら、異なるしきい値電圧値を提供するために使用される技法に応じてゲート・フィンガー(たとえば、ゲート・フィンガー116a及び116b)が、同じ組成を有することもあり、有さないこともあることを了解されたい。
【0073】
いくつかの実施例では、VTH-2-VTH-1は、少なくとも0.1ボルトであり得る。他の実施例では、VTH-2-VTH-1は、少なくとも0.25ボルトであり得る。さらに他の実施例では、VTH-2-VTH-1は、少なくとも0.5ボルトであり得る。さらに他の実施例では、VTH-2-VTH-1は、少なくとも0.05ボルト又は0.1~1.25ボルトであり得る。これに対して、所与の領域(たとえば、第1の領域102)内にあるユニット・セル・トランジスタは、いずれも実質的に同じしきい値電圧を有し得る。たとえば、いくつかの実施例では、各領域内のユニット・セル・トランジスタは、互いに0.025ボルトの範囲内にしきい値電圧を有し得る。他の実施例では、各領域内のユニット・セル・トランジスタは、互いに0.01ボルトの範囲内にしきい値電圧を有し得る。
【0074】
図5Bに示すように、本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイス200は、半導体デバイス100の場合の2つの領域の代わりに半導体デバイス200は3つの領域202、202、202に分割されることを除いて、図5Aを参照して上記で説明した半導体デバイス100と同様であり得る。第1の領域202では、ゲート・フィンガー216aを有するユニット・セル・トランジスタが配置され得、それぞれが各ゲート・フィンガー216aの幅に沿って第1のしきい値電圧値VTH-1を有する。第2の領域202では、ゲート・フィンガー216bを有するユニット・セル・トランジスタが配置され得、それぞれが各ゲート・フィンガー216bの幅に沿って第2のしきい値電圧値VTH-2を有し、第2のしきい値電圧値VTH-2は第1のしきい値電圧値VTH-1よりも大きい。第3の領域202では、ゲート・フィンガー216cを有するユニット・セル・トランジスタが配置され得、それぞれが各ゲート・フィンガー216cの幅に沿って第3のしきい値電圧値VTH-3を有し、第3のしきい値電圧値VTH-3は第2のしきい値電圧値VTH-2よりも大きい。半導体デバイス100の対応する要素と同じ半導体デバイス200の要素は同じ参照数字で識別し、これらの要素のさらなる説明は省略する。
【0075】
図5Cに示すように、本発明のさらに他の実施例によるマルチセル半導体デバイス300は、デバイス100の場合の2つの領域又はデバイス200の場合の3つの領域の代わりに半導体デバイス300はN個の領域302、302、...302に分割されることを除いて、上記で説明した半導体デバイス100、200と同様であり得る。N個の領域302、302、...302は、各々ゲート・フィンガー316を有する単一のユニット・セル・トランジスタ340を含む。各ユニット・セル・トランジスタ340は、他のすべてのユニット・セル・トランジスタ340のしきい値電圧値とは異なるしきい値電圧値を有するように構成し得る。図5Cで左から右にユニット・セル・トランジスタ340のしきい値電圧値が単調に増加し得、そうすることによって図4Cに示すVTH-1からVTH-Nまで広がるしきい値電圧値を有するユニット・セル・トランジスタ340を半導体デバイス300が有するようになる。半導体デバイス100の対応する要素と同じ半導体デバイス300の要素は同じ参照数字で識別し、これらの要素のさらなる説明は省略する。
【0076】
図4A図4C及び図5A図5Cは、それぞれのデバイスの中で位置が異なれば異なる不定のしきい値電圧を有する半導体デバイス100、200、300を提供するために、異なるユニット・セル・トランジスタが異なるしきい値電圧値を有する半導体デバイスの設計構造を示す。他の実施例では、個々のゲート・フィンガーのうちの少なくとも一部のゲート幅に沿ってしきい値電圧が変動するようにユニット・セルを構成することにより、代わりにしきい値電圧が個々のユニット・セル・トランジスタの内部で変動するようにされ得る(上記のように、ゲート・フィンガーの「幅」は、ゲート・フィンガーがソース・コンタクトとドレイン・コンタクトとの間を並行して伸びる距離を指し、しばしばゲート・フィンガーの「長さ」よりも長い)。たとえば、図6A及び図6Bは本発明のさらなる実施例による、各ゲート・フィンガーの幅に沿って離散的に変動するしきい値電圧値を有するマルチセル半導体デバイスの平面図である(上記で説明したように、ゲート・フィンガーの「幅」は、ゲート・フィンガーが図においてy方向に伸びる距離である)。
【0077】
特に、図6Aはマルチセル半導体デバイス400の平面図である。半導体デバイス400は、それの各ゲート・フィンガー416の幅に沿って2つの異なるしきい値電圧値を有するように設計されている。言い換えれば、しきい値電圧値が各ユニット・セル・トランジスタ440の内部で変動し得る。図4Aの実施例では、各ユニット・セル・トランジスタ440の第1の半分440-1が第1のしきい値電圧値VTH-1を有し得、各ユニット・セル・トランジスタ440の第2の半分440-2が第2のしきい値電圧値VTH-2を有し得る。図示の実施例では、各ユニット・セル・トランジスタ440の第1の半分440-1がゲート・バス114に最も近い半分であり、各ユニット・セル・トランジスタ440の第2の半分440-2がゲート・バス114から離れた半分である。第2のしきい値電圧値VTH-2は、第1のしきい値電圧VTH-1よりも小さいか又はより大きいか、どちらでもあり得る。図6Aでは(並びに図6B及び図9の実施例では)、ソース・バス124を輪郭形式で示し、下層のメタル層をより詳細に表している。
【0078】
図6Bは、各ゲート・フィンガー516の幅に沿って3つの異なるしきい値電圧値を有するマルチセル半導体デバイス500の平面図である。特に、各ユニット・セル・トランジスタ540の最初の3分の1である540-1が第1のしきい値電圧値VTH-1を有し得、各ユニット・セル・トランジスタ540の中間の3分の1である540-2が第2のしきい値電圧値VTH-2を有し得、そして各ユニット・セル・トランジスタ540の最後の3分の1である540-3が第3のしきい値電圧値VTH-3を有し得る。第1の、第2の、及び第3のしきい値電圧値は、互いに異なり得る。
【0079】
図7A図7Bは、それぞれ図6A及び図6Bを参照して上記で説明した設計構造を有するマルチセル半導体デバイスについて、ゲート-ソース間電圧較差の関数として相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを示すグラフである(点線を参照)。図7A及び図7Bのグラフはまた、参照のポイントとして、図1の従来の半導体デバイスについて、ゲート-ソース間電圧較差の関数として相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを含んでいる(実線を参照)。
【0080】
図7A及び図7Bに示すように、三次相互コンダクタンスのピーク値は、しきい値電圧を各ゲート・フィンガーの幅に沿って変動させることにより著しく低減し得る。しきい値電圧を異ならせることにより、デバイスの異なる部分が異なる印加ゲート電圧で立ち上がり得る。結果としてデバイスの線形性が改善し得る。示すように、デバイス内部に設けられるしきい値電圧のレベルが離散的であるほど三次相互コンダクタンスの低減の改善が大きくなる。特に、従来の半導体デバイスは-70.2の三次相互コンダクタンスのピーク値を呈した。図7Aに示すように、その異なる領域に2つの異なるしきい値電圧値を有するようにデバイスを設計することにより、三次相互コンダクタンスのピーク値は-49.78に、すなわち約30%低減する。図7Bに示すように、その異なる領域に3つの異なるしきい値電圧値を有するようにデバイスを設計することにより、三次相互コンダクタンスのピーク値は-22.5に、すなわち約67%低減する。各事例において、三次相互コンダクタンスの非線形性はより大きい電圧範囲に渡って広がるが、一般に問題の原因となるピーク値は実質的に低減し得る。
【0081】
図8Aは、図6Aの8A-8Aのラインに沿って取られた断面図であり、マルチセル半導体デバイス400の断面の一部分を示す。半導体デバイス400は、基板600を含む半導体構造120を含み、基板600は、たとえば、4H-SiC又は6H-SiCを含み得る。チャネル層610は基板600上に形成され、バリア層620はチャネル層610上に形成される。チャネル層610及びバリア層620は、III族窒化物ベースの材料を含み得、ここでバリア層620の材料はチャネル層610の材料よりも大きいバンドギャップを有する。たとえば、チャネル層610はGaNを含み得、バリア層620はAlGaNを含み得る。いくつかの実施例では、チャネル層610及びバリア層620のいずれか又は両方が意図的にドープされない層であり得る。チャネル層610及びバリア層620は同じ導電型(たとえば、n型)を有し得る。図8Aに示すように、ゲート・フィンガー416を含むメタル層コンタクト構造、ソース・コンタクト126、ドレイン・コンタクト136、ソース・バス124及びソース・コンタクト・プラグ128は、バリア層620上に形成された1つ又は複数の層間絶縁層630、640中に形成され得、図6Aに示され得る他のメタル層コンタクト構造も同様である。層間絶縁層630、640は、SiN、SiOなど誘電体材料を含み得る。
【0082】
バリア層620とチャネル層610との間のバンドギャップの差、及びバリア層620とチャネル層610との間の界面における圧電効果により、チャネル層610とバリア層620との間の接合部でチャネル層610に2次元電子ガス(2DEG)が誘起される。2DEGは、それぞれソース・コンタクト・セグメント126及びドレイン・コンタクト136の下にあるデバイスのソース領域とドレイン領域との間の導電を可能にする高導電性層として作用する。ソース・コンタクト126及びドレイン・コンタクト136は、バリア層620上に形成する。ゲート・フィンガー416は、ドレイン・コンタクト136とソース・コンタクト126との間のバリア層620上に形成する。ソース・バス124は、ソース・コンタクト126、ドレイン・コンタクト136及びゲート・フィンガー416の上方を越えて伸びる。ソース・コンタクト126は、第1の層間絶縁層630を貫通するそれぞれの垂直方向のコンタクト・プラグ128を介して、ソース・バス124に、物理的且つ電気的に接続する。
【0083】
ゲート・フィンガー416の材料は、バリア層620の組成に基づいて選定し得る。いくつかの実施例では、窒化物ベースの半導体材料に、Ni、Pt、NiSi、Cu、Pd、Cr、W及び/又はWSiNなどショットキー・コンタクトを作ることが可能な従来の材料を使用し得る。ドレイン・コンタクト136及びソース・コンタクト126は、たとえば、GaN及び/又はAlGaNにオーミック・コンタクトを形成できるTiAlNなどの金属を含み得る。
【0084】
本明細書で開示する本発明の実施例による多くの他の半導体デバイスについて、断面図が提供されていないが、それらのデバイスの各々は、図8Aに示すものと同じ一般的な半導体構造120を有し得ることは了解されよう。特定の実施例は、本明細書において説明したように、ドーピング濃度の変更又はバリア層620におけるリセスなど、特定の変形を有し得る。開示された実施例のいずれも、たとえば、図8Aに示されていないバッファ層などの追加の層を含み得ることもまた了解されよう。
【0085】
図8Bは、図6Aのマルチセル半導体デバイス400のy方向で切り取られる断面を示し、図6Aのライン8B-8Bに沿って切り取られる断面図である。半導体デバイス400は、基板600、チャネル層610、及びバリア層620を含む上記で説明した半導体構造120を含んでいる。ゲート・フィンガー416は、y方向の半導体構造に沿って伸びている。図8Bに示すように、バリア層620の上面が、半導体構造120の右側で凹み得る。ゲート・フィンガー416は、z方向に一貫した厚さを有し得る。しかしながらバリア層620のリセス622のために、ゲート・フィンガー416の第1の半分416-1の底面の高さは、ゲート・フィンガー416の第2の半分416-2の底面よりもチャネル層610により近くなり得る。結果として、各ゲート・フィンガー416の第1の半分416-1のしきい値電圧値VTH-1は、各ゲート・フィンガー416の第2の半分416-2のしきい値電圧値VTH-2よりも小さくなり得る。
【0086】
バリア層620が凹み得、各ゲート・フィンガー416の第1の半分416-1の下にあるバリア層620のその部分の上面が、各ゲート・フィンガー416の第2の半分416-2の下にあるバリア層620のその部分の上面よりも、たとえば、1から15nm、z方向に低くなり得る。この距離は、本明細書においてリセス622の「深さ」と呼ばれ得る。リセス622の深さは、第1のしきい値電圧値VTH-1と第2のしきい値電圧値VTH-2との差が所望の量となるように選定し得る。
【0087】
図9は、本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイス700の概略平面図である。半導体デバイス700は、図5Aの半導体デバイス100の態様と図6Aの半導体デバイス400の態様とを組み合わせている。図9に示すように、半導体デバイス700は複数のゲート・フィンガー716を含んでいる。ゲート・フィンガー716は、第1のゲート・フィンガー716a及び第2のゲート・フィンガー716bを含み得る。ゲート・フィンガー716aは半導体構造120の第1の領域702内にあり得、ゲート・フィンガー716bは半導体構造120の第2の領域702内にあり得る。ゲート・フィンガー716aは各々ユニット・セル・トランジスタ740aの一部であり得、ゲート・フィンガー716bは各々ユニット・セル・トランジスタ740bの一部であり得る。各ユニット・セル・トランジスタ740aは、その幅に沿って2つの異なるしきい値電圧値を有するように設計されている。特に、各ユニット・セル・トランジスタ740aの第1の半分740-1は、第1のしきい値電圧値VTH-1を有し得、各ユニット・セル・トランジスタ740aの第2の半分740-2は、第2のしきい値電圧値VTH-2を有し得る。
【0088】
第2の領域702では、各ユニット・セル・トランジスタ740bが、その幅に沿って2つの異なるしきい値電圧値を有するように同様に設計されている。特に、各ユニット・セル・トランジスタ740bの第1の半分740-1は、第3のしきい値電圧値VTH-3を有し得、各ユニット・セル・トランジスタ740bの第2の半分740-2は、第4のしきい値電圧値VTH-4を有し得る。第1のしきい値電圧値VTH-1から第4のしきい値電圧値VTH-4までは、異なるしきい値電圧値を備え得る。
【0089】
どの特定のユニット・セル・トランジスタ、及び/又は、そのどの部分が異なるしきい値電圧値を有するか任意に選ばれ得ることは了解されるであろう。したがって、図4A図4Cのグラフ及び図5A図5C図6A図6B及び図9の平面図は、図のx方向に沿って(離散的に又は連続的にのどちらでも)単調に増加するしきい値電圧をもつユニット・セル・トランジスタを有するマルチセル半導体デバイスを示すが、本発明の実施例はそれらに制限されない。図10A図10Cを参照するとこれは模式的に示されており、本発明のさらなる実施例によるマルチセル半導体デバイスのしきい値電圧変動を示す概略グラフである。
【0090】
図10Aに示すように、例示的な実施例では、ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットは第1のしきい値電圧値VTH-1を有するように設計され、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットは第2のしきい値電圧値VTH-2を有するように設計され、ユニット・セル・トランジスタの第3のサブセットは第3のしきい値電圧値VTH-3を有するように設計されている。ユニット・セル・トランジスタの第1のサブセットはトランジスタの左手側に位置し、ユニット・セル・トランジスタの第2のサブセットはトランジスタの中間に位置し、ユニット・セル・トランジスタの第3のサブセットはトランジスタの右手側に位置する。図10Aに示すように、第1のしきい値電圧値VTH-1は最も高い値であり、第2のしきい値電圧値VTH-2は最も低いしきい値電圧値であり、第3のしきい値電圧値VTH-3は中間のしきい値電圧値である。
【0091】
次に図10Bを参照すると、異なる例示的な実施例において、ユニット・セル・トランジスタごとに異なるしきい値電圧値を有するマルチセル半導体デバイスで、同様の手法が取られ得ることが見られる。図10Bの実施例では、ユニット・セル・トランジスタが3つの隣接するユニット・セル・トランジスタのサブセットに分割され、ユニット・セル・トランジスタの各サブセットは単調に増加するしきい値電圧値を有する。図10Bは、ユニット・セル・トランジスタが隣接するユニット・セル・トランジスタの3つのサブセットに分割され得ることを示しているが、より多い、若しくはより少ないサブセットが与えられ得ることは了解されよう。
【0092】
次に図10Cを参照すると、また異なる例示的な実施例において、マルチセル半導体デバイスが、単調に増加するしきい値電圧値を有する隣接するユニット・セル・トランジスタのサブセット、並びに、単調に減少するしきい値電圧値を有する隣接するユニット・セル・トランジスタのサブセットを有し得る。
【0093】
図10A図10Cは、多くの可能な設計構造のうちの3つを示していることは、了解されよう。極端な場合、半導体デバイスは多く(たとえば100)のユニット・セル・トランジスタを有し得、その各々が異なるしきい値電圧値を有し、デバイス全体に渡ってユニット・セル・トランジスタがランダムに分散する。各ユニット・セル・トランジスタの幅に沿って、同じ種類の変動が行われ得ることも了解されよう。
【0094】
上記で図8Bを参照して説明したように、本発明の実施例によるトランジスタの異なる領域におけるしきい値電圧を変動させる技法の1つは、一部の又はすべてのゲート・フィンガーの部分の下のバリア層の厚さを変えることである。この技法は、たとえば、それぞれ図6A及び図6Bの、半導体デバイス400及び半導体デバイス500を形成するために使用し得る。同様に、ユニット・セル・トランジスタの異なるサブセットの下のバリア層の厚さを変動させてもよい。そのような技法は、それぞれ図5A図5Cの半導体デバイス100、200及び300を形成するために使用し得る。これら2つの技法は、図9の半導体デバイス700を形成するために組み合わせ得る。しかしながら、本発明の実施例による半導体デバイスの異なる領域におけるしきい値電圧を変動させるために他の技法が使用され得ることは了解されたい。
【0095】
たとえば、図11Aを参照すると、本発明のさらなる実施例によれば、異なるゲート・フィンガー及び/又は同じゲート・フィンガー650の異なる部分を形成するために、異なる金属又は金属合金を使用することによってしきい値電圧が変動し得る。図11Aに示すように、ゲート・フィンガー650はバリア層620上に形成されている。ゲート・フィンガー650はy方向に沿って伸び、3種の異なる金属又は金属合金652、654、656を使用して形成する。ゲート・フィンガー650の3つの異なるセクションの下のしきい値電圧で所望の変動を達成するため、異なる金属が選択され得る。
【0096】
次に図11Bを参照して、別の手法にて、ゲート・フィンガー650の異なる部分の下のしきい値電圧を変えるために、チャネル層610の部分をドープし得る。図11Bに示すように、1つ又は複数のゲート・フィンガー650の異なる部分の下にあるチャネル層610の部分612、614、616は、異なるドーパント濃度を有し得る。ドーピング濃度は(たとえば、n型ドーパント、これはチャネル層610が窒化ガリウム・ベースのチャネル層を備える場合、たとえばシリコンであり得る)、ゲート・フィンガー650の3つの異なるセクションの下のしきい値電圧で、所望の変動を達成するように選択し得る。いくつかの実施例では、p型ドーパントが代わりに使用され得るか、又は、一部の部分ではn型ドーパント、他の部分においてはp型ドーパントという組合せが使用され得る。バリア層620のセクションをドープすることでも同じ効果を達成することができ得る。
【0097】
図11Cを参照すると、また別の手法において、バリア層620の異なる部分は異なる材料組成を有し得る。たとえば、バリア層はAlGa1-xN層を備え得る。「x」の値は、しきい値電圧値を変えるために、ゲート・フィンガー650の異なる部分の下にある多くのバリア層620の部分622、624、626ごとに異なり得る。
【0098】
図8A及び図11A図11Cにマルチゲート・フィンガー・トランジスタの異なる領域のしきい値電圧を変動させるいくつかの例示的な方法を示すが、本発明の実施例がこれらの技法に限定されないことは了解されよう。たとえば、また別の手法では、異なる厚さを有する絶縁層がゲート・フィンガーのそれぞれのサブセットの間のバリア層の間に形成され、異なるしきい値電圧値を有するユニット・セル・トランジスタを提供し得る。同じ技法をゲート・フィンガーの幅に沿って使用し、変動したしきい値電圧値を有するユニット・セル・トランジスタを提供し得る。
【0099】
次に図12を参照すると、半導体ウェーハ800を模式的に示しており、その上に形成される複数のマルチセル半導体デバイス810を含んでいる。図12に示すように、多くのマルチセル半導体デバイス810がウェーハ800上に形成され得る。図示の実施例では、およそ40個のマルチセル半導体デバイス810がウェーハ800の直径に沿って取り付けられている。より多くの又はより少ないマルチセル半導体デバイス810が提供され得る。さらに、図12には個々のマルチセル半導体デバイス810が正方形で示されているが、より一般的には、各マルチセル半導体デバイスは概略長方形の形状を有し、例示的な実施例では場合によって隣接する辺の長さが10倍変動することを了解されたい。
【0100】
半導体の成長及びプロセス技術における変動により、通常、半導体ウェーハに渡ってしきい値電圧の変動がいくらか存在する。たとえば、変動は通常0.1ボルトから0.4ボルトの範囲にあり得る。しかしながら、ウェーハ800上に形成されたマルチセル半導体デバイス810の数の多さを考えれば、ある特定のマルチセル半導体デバイスの占有面積内の処理変動によるしきい値電圧の変動は、はるかに小さく、0.0001ボルトから0.0004ボルトなどの範囲にあるであろう。そのような小さな変動は、実質的にはデバイスの立ち上がりを広げるものではない。上記で説明したように、本発明の実施例によれば、0.05ボルトから1.0ボルト程度の変動など、しきい値電圧値のより大きな変動を、意図的にデバイス設計構造に作り込み得る。そのような変動を用い、マルチセル半導体デバイスの異なる部分がオンになるしきい値電圧を広げ、それにより改善された線形性を提供するために三次相互コンダクタンスのピーク値を著しく低減し得る。
【0101】
図13は、図5Aのマルチセル半導体デバイス100の概略的な回路図である。図13に示すように、半導体デバイス100は複数のユニット・セル・トランジスタ140を含んでいる。ユニット・セル・トランジスタ140は電気的に並列に接続されている。ユニット・セル・トランジスタ140の第1のサブセットは、第1のしきい値電圧値VTH-1を有し得、ユニット・セル・トランジスタ140の第2のサブセットは、第1のしきい値電圧値VTH-1とは別の第2のしきい値電圧値VTH-2を有し得る。
【0102】
しきい値電圧を工夫することがマルチセル半導体デバイスの線形性を改善する方法の1つであるが、別々のゲート電圧をデバイスの別々の部分に印加することによって同じ効果が達成され得ることは了解されよう。図14は、模式的にこの手法を示している。
【0103】
特に、図14に示すように、本発明のさらなる実施例によれば、デバイスの立ち上がり時の三次相互コンダクタンスをなだらかにし、改善された線形性を提供するために、異なるしきい値電圧が半導体デバイスの異なる部分に印加され得る。図14に示すように、本発明の実施例による半導体デバイス900は、図1の半導体デバイス10など従来の半導体デバイスを含み得る。図1を参照して上記に説明し、図14の回路図構成に示すように、従来の半導体デバイス10は、共通の半導体構造上に形成された電気的に並列に接続される複数のユニット・セル・トランジスタ40を含み得る。各ユニット・セル・トランジスタ40は、ゲート・フィンガーを含み得る。しきい値電圧は各ゲート・フィンガーの幅に沿って同じであり、各ユニット・セル・トランジスタ40は同じしきい値電圧を有し得る。
【0104】
上記に説明したように、従来の半導体デバイス10は、すべてのユニット・セル・トランジスタ40がしきい値電圧の印加に応じて同じ程度にオンになるので、デバイスの立ち上がり時に大きな三次相互コンダクタンス値を呈し得る。これを回避するために、半導体デバイス900は、分圧器回路910をさらに含む。分圧器回路910は、その入力で電圧信号を受信し、それに応答して複数の出力電圧信号を出力し得る。各出力電圧信号は、異なる値を有し得る。図示の実施例では分圧器910が2つの出力を有するが、分圧器910は他の実施例では2つよりも多い出力を有し得る。
【0105】
やはり図14に示すように、分圧器910の各出力は、ユニット・セル・トランジスタ40のサブセットに結合され、そのゲート・フィンガーに印加され得る。したがって、ユニット・セル・トランジスタ40の第1のサブセットのゲート・フィンガーは、分圧器910から第1の出力電圧信号を受信し、ユニット・セル・トランジスタ40の第2のサブセットのゲート・フィンガーは、分圧器910から第2の出力電圧信号を受信する。分圧器910の第1の出力電圧信号と第2の出力電圧信号とは、たとえば、少なくとも0.1ボルト差があり得る。いくつかの実施例では、分圧器910の第1の出力電圧信号と第2の出力電圧信号とは、たとえば、少なくとも0.25ボルト差があり得る。他の実施例では、分圧器910の第1の出力電圧信号と第2の出力電圧信号とは、たとえば、少なくとも0.5ボルト差があり得る。さらに他の実施例では、分圧器910の第1の出力電圧信号と第2の出力電圧信号とは、たとえば、0.1ボルトから1.25ボルト差があり得る。ユニット・セル・トランジスタ40の第1及び第2のサブセットのゲート・フィンガーが異なる電圧を受信するので、これらのサブセットのユニット・セル・トランジスタ40は異なる程度でオンになり得る。上記に説明したように、ユニット・セル・トランジスタの多くのグループにとっての立ち上がり電圧を広げることにより、三次相互コンダクタンスのピーク値は低減し得る。分圧器910が2つよりも多い出力を有する場合、半導体デバイス10のユニット・セル・トランジスタ40は2つよりも多いサブグループに分割され得、各サブグループは分圧器の出力のうちの1つを受信する。
【0106】
図15は、相互コンダクタンス及び三次相互コンダクタンスを、印加したしきい値電圧の関数として、図14の半導体デバイス900について(図15中の点線)従来のデバイスと比較して(図15中の実線)示すグラフである。図15に示すように、三次相互コンダクタンスのピーク値は、従来のデバイスと比較して半分に低減する。
【0107】
図16は、図14の半導体デバイス900と同様に、半導体デバイス900’を実装するために、分圧器をどのようにウェーハ上に実装し得るかを模式的に示す回路図である。図16に示すように、分圧器回路910’は、図1の半導体デバイス10のユニット・セル・トランジスタ40のゲート・フィンガー間に配置する一連の抵抗920を使用して実装され得る。抵抗920は、隣接するユニット・セル・トランジスタ40のゲート・フィンガーに印加する電圧差を生じるように、ゲートへの電圧印加に応じてサイズ決定され得る。図16の実施例では、例として、合計4つのユニット・セル・トランジスタ40及び分圧器910’を示す。結果として、それぞれのユニット・セル・トランジスタ40のゲート・フィンガーには、ゲートへの電圧印加に応じて異なる電圧が印加される(すなわち、図16の実施例では、ユニット・セル・トランジスタ40ごとに異なるゲート電圧を受信する)。他の実施例では、ゲート・フィンガーのサブセットは、同じゲート電圧を受信し得るものと了解されたい。たとえば、別の実施例では、図16中の各ユニット・セル・トランジスタ40は、並列に配置される2つ、3つ、4つ又はより多くのユニット・セル・トランジスタ40で置換され得る。そのようなデバイスでは、ユニット・セル・トランジスタ40はゲート電圧印加に応じて4つの異なる速度(程度)で立ち上がることになるであろう。
【0108】
DC結合のためにインダクタ930を提供し得、RFデカップリングのためにバイパス・キャパシタ940を追加し得る。抵抗920は、たとえば、導電ラインの残余とは異なる(より高い)抵抗を有する導電材料を堆積すること、又は導電ラインの選択された部分の特性を変えることにより(たとえば、酸化により)ウェーハ上に形成し得る。そのようなオンウェーハの抵抗を形成する技法は、当技術分野でよく知られている。インダクタ930もまたウェーハ上に実装し得る。たとえば、インダクタ930は、ウェーハ上の曲がりくねった導電ラインとして実装し得る。図示の実施例では、キャパシタ940はウェーハの外に形成する。
【0109】
図17は、部分的にオンウェーハで実装される分圧器を含む、本発明のさらなる実施例による半導体デバイス900”の概略的な回路図である。図17に示すように、半導体デバイス900”は、半導体900”の分圧器910”のインダクタ930がウェーハの外に実装されることを除いて、図16の半導体デバイス900’と非常に似ている。そのような実装は、いくつかの事例では必要なインダクタンスのサイズが大きくなり、ウェーハ上に実装することが困難になり得、且つ/又は、インダクタ930がウェーハ外に別個に(キャパシタ940と同様に)実装すると、関連する損失が低減し得るので、いくつかの実施例では有利となり得る。他の点では、半導体デバイス900”は図16の半導体デバイス900’と同一であるので、そのさらなる説明は省略する。
【0110】
本発明の実施例は、III族窒化物ベースの高電子移動度トランジスタ(HEMT)デバイスに関連した使用に特によく適合し得る。本明細書で使用する「III族窒化物」という用語は、窒素と周期表のIII族の元素、通常アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及び/又はインジウム(In)との間に形成される半導体化合物を指す。この用語はまた、AlGaN及びAlInGaNなどの三元及び四元の化合物を指す。これらの化合物にはすべて、1モルの窒素は合計1モルのIII族元素と化合するという実験式がある。
【0111】
本発明の実施例を利用し得るGaNベースのHEMTに好適な構造について、たとえば、2002年6月6日に公開された同一出願人による米国公開第2002/0066908A1号「Aluminum Gallium Nitride/Gallium Nitride High Electron Mobility Transistors Having A Gate Contact On A Gallium Nitride Based Cap Segment And Methods Of Fabricating Same」、2002年11月14日に公開された米国公開第2002/0167023A1号「Group-III Nitride Based High Electron Mobility Transistor (HEMT) With Barrier/Spacer Layer」、2004年4月1日に公開された米国公開第2004/0061129号「Nitride-Based Transistors And Methods Of Fabrication Thereof Using Non-Etched Contact Recesses」、2011年3月15日発行、米国特許第7,906,799号「Nitride-Based Transistors With A Protective Layer And A Low-Damage Recess」、及び2001年11月13日発行、米国特許第6,316,793号「Nitride Based Transistors On Semi-Insulating Silicon Carbide Substrates」にて説明する。これらの開示は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
本発明の特定の実施例では、基板600は、たとえば、炭化ケイ素の4Hポリタイプであってよい半絶縁性の炭化ケイ素(SiC)基板であり得る。他の炭化ケイ素の候補のポリタイプには3C、6H、及び15Rのポリタイプが含まれる。
【0113】
バッファ、核形成、及び/又は遷移層(図示せず)は、チャネル層610の下の基板600上に随意提供し得る。たとえば、AlNバッファ層が炭化ケイ素基板とデバイスの残余との間に適切な結晶構造遷移を提供するために含まれ得る。さらに、ひずみ平衡遷移層がまた、たとえば、2003年6月5日に公開された、同一出願人による米国公開第2003/0102482A1号、題名「Strain Balanced Nitride Hetrojunction Transistors And Methods Of Fabricating Strain Balanced Nitride Heterojunction Transistors」にて説明したように提供され得る。この開示は本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。さらに、SiNキャッピング層など、1つ又は複数のキャップピング層が、バリア層620上に提供され得る。
【0114】
炭化ケイ素は、サファイア(Al)よりもはるかにIII族窒化物に近い結晶格子整合を有し、III族窒化物デバイスにとって極めて一般的な基板材料である。SiCの、より近い格子整合が、一般に利用可能なサファイア上のものよりも高い品質のIII族窒化物薄膜をもたらし得る。炭化ケイ素はまた極めて高い熱伝導率を有し、炭化ケイ素上のIII族窒化物デバイスの合計出力電力は、通常、サファイア上に形成された同じデバイスの場合のように基板の熱消費で制限されることはない。また、半絶縁性の炭化ケイ素基板の利用可能であることが、デバイス分離及び低減した寄生容量を提供し得ている。適切なSiC基板が、たとえば、本発明の譲受人であるノースカロライナ州ダーラムのCree、Inc.により製造されている。
【0115】
炭化ケイ素は基板材料として使用し得るが、本発明の実施例では、サファイア、アルミニウム窒化物、窒化アルミニウム・ガリウム、窒化ガリウム、シリコン、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InP及び同類のものなど、いかなる好適な基板をも利用し得る。いくつかの実施例では、適切なバッファ層もまた形成し得る。
【0116】
本発明のいくつかの実施例では、チャネル層610は、チャネル層とバリア層との間の界面でチャネル層610の伝導帯端のエネルギーがバリア層620の伝導帯端のエネルギーよりも小さい限り、AlGa1-xN(0≦x<1)などIII族窒化物である。本発明のいくつかの実施例では、チャネル層610がGaNであることを示すx=0である。チャネル層610はまたInGaN、AlInGaN又は同類のものなど他のIII族窒化物であり得る。チャネル層610は、アンドープトでも意図せずにドープされていてもよく、約20Åよりも厚く成長し得る。チャネル層610はまた超格子又はGaN、AlGaN若しくは同様のものの組合せなど多層構造であり得る。
【0117】
チャネル層610はバリア層620のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有し得、チャネル層610はまたバリア層620よりも大きい電子親和力を有し得る。本発明のいくつかの実施例では、バリア層620はAlN、AlInN、AlGaN又はAlInGaNである。本発明の特定の実施例では、バリア層620は十分に厚く、十分高いAl組成及びドーピングを有し、チャネル層610とバリア層620との間の界面にかなりのキャリア濃度を誘起する。
【0118】
バリア層620はIII族窒化物であり得、チャネル層610のものよりも大きいバンドギャップ及びチャネル層610よりも小さい電子親和力を有する。したがって、本発明のいくつかの実施例では、バリア層620は、AlGaN、AlInGaN、及び/若しくはAlN、又はそれらの層の組み合わせを含み得る。バリア層620は、たとえば、約0.1nmから約30nmの厚さであり得る。本発明のいくつかの実施例では、バリア層620は、アンドープトであるか、又はn型ドーパントで約1019cm-3よりも小さい濃度にドープされる。本発明のいくつかの実施例では、バリア層620は、AlGa1-xN(0<x<1)である。特定の実施例では、アルミニウム濃度が約25%である。しかしながら、本発明の他の実施例では、バリア層620が、約5%から約100%のアルミニウム濃度のAlGaNを備える。本発明の特定の実施例では、アルミニウム濃度が約10%よりも大きい。
【0119】
本発明の実施例は窒化ガリウム・ベースのHEMT構造を参照して示されているが、本発明はそのようなデバイスに限定されるものではない。したがって、本発明の実施例は、いかなる電界効果トランジスタの使用にも好適であり得、ユニット・セル構造を有するデバイスにも有しないデバイスにも使用できる。同様に、本明細書で開示する技法は、窒化ガリウム・ベースの材料系以外の材料系にも使用し得ることを了解されたい。
【0120】
複数の追加の実施例を創案するために、上記で説明した実施例の特徴は、任意のしかたで組み合わせ得ることを了解されたい。
【0121】
本発明の実施例を添付の図面を参照しながら上記で説明した。しかしながら、本発明は多くの異なる形式で実施し得、本明細書で説明し、且つ/又は図面中に描かれる実施例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、本開示が完璧且つ完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝達するようにこれらの実施例は提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0122】
本明細書において、第1、第2などの用語を使用して多くの要素を説明し得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。たとえば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と呼び得、同様に、第2の要素は第1の要素と呼び得る。本明細書で使用する「及び/又は」という用語は、関連するリストされたアイテムのうちの1つ又は複数の、ありとあらゆる組み合わせを含む。
【0123】
本明細書で使用する専門用語は、特定の実施例を説明することのみが目的であり、本発明を制限するものではない。本明細書で使用する、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も同様に含むことを意図している。「備える(comprises)」「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用する場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はこれらのグループの存在又は追加を妨げるものではないことがさらに理解されよう。
【0124】
特に定義されない限り、本明細書で使用するすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそう定義されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されないことが理解されよう。
【0125】
層、領域又は基板などの要素が別の要素の「上に(on)」ある、又は「上に(onto)」伸びていると呼ばれる場合、それは他の要素の上に直接あり得る、又は他の要素の上に直接伸び得る、又は仲介要素が存在し得ることと理解されよう。これに対して、要素が別の要素の「上に(on)直接」ある、又は「上に(onto)直接」伸びていると呼ばれる場合、仲介要素は存在しない。また、要素が別の要素に「接続される(connected)」、又は「結合される(coupled)」と呼ばれる場合、他の要素に直接接続され得る、又は結合され得る、又は仲介要素が存在し得ることと理解されよう。これに対して、要素が他の要素に「直接接続される(directly connected)」、又は「直接結合される(directly coupled)」と呼ばれる場合、仲介要素は存在しない。
【0126】
「下に(below)」又は「上に(above)」又は「上側(upper)」又は「下側(lower)」又は「横方向の(horizontal)」又は「横方向の(lateral)」又は「縦方向の(vertical)」などの相対用語は、本明細書で図に示すように、1つの要素、層又は領域と、別の要素、層又は領域との関係を説明するために使用され得る。これらの用語が、図中に図示した置き方に加え、デバイスの異なる置き方を包含することを意図していることは理解されよう。
【0127】
本明細書では本発明の実施例を、本発明の理想化した実施例(及び中間構造)の概略図である断面図を参照して説明している。図面における層及び領域の厚さは、明解にするために誇張されていることがある。さらに、たとえば、製造技法及び/又は許容範囲の結果として図の形状から変動することは、当然予想されるべきものである。したがって本発明の実施例は、本明細書で示す領域の特定の形状に限定して解釈するべきではなく、たとえば、製造が原因で生じた形状の逸脱などを含んでいる。
【0128】
図面及び明細書には、本発明の典型的な実施例が開示されており、特定の用語が使用されているが、それらは一般的且つ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的ではなく、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
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図17