(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】インプリント用硬化性組成物、パターンの製造方法、半導体素子の製造方法および硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20220328BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220328BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20220328BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
C08F2/50
H01L21/30 502D
C08F299/02
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020541204
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034395
(87)【国際公開番号】W WO2020050207
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018167986
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-077040(JP,A)
【文献】特開2011-159881(JP,A)
【文献】特開2008-224750(JP,A)
【文献】特開2015-229691(JP,A)
【文献】特開2007-103924(JP,A)
【文献】特開2011-018722(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158979(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0176049(US,A1)
【文献】特開2014-033082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44- 2/50
C08F 299/02
B29C 59/02
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、光重合開始剤と、離型剤とを含む、インプリント用硬化性組成物であって、
前記重合性化合物は下記吸光係数Aの最大値が1.8L/(g・cm)以下、かつ、重量平均分子量が800以上の透光性重合性化合物であり、前記重合性化合物を組成物の全固形分の
80質量%以上含み、
前記重合性化合物はエチレン性不飽和基を2以上有し、
前記光重合開始剤は下記吸光係数Bの最大値が5,000L/(mol・cm)以上であり、前記光重合開始剤を組成物の全固形分に対して0.5~8.0質量%含み、
前記離型剤の含有量が、前記組成物の全固形分に対して0.1質量%以上1.0質量%未満である、インプリント用硬化性組成物;
吸光係数A:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域での単位質量あたりの吸光係数
吸光係数B:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域でのモル吸光係数。
【請求項2】
重合性化合物と、光重合開始剤と、離型剤とを含む、インプリント用硬化性組成物であって、
前記重合性化合物は下記吸光係数Aの最大値が1.8L/(g・cm)以下、かつ、重量平均分子量が800以上の透光性重合性化合物であり、前記重合性化合物を組成物の全固形分の50質量%以上含み、
前記重合性化合物の重合性基当量が1000以下であり、
前記重合性化合物はエチレン性不飽和基を2以上有し、
前記光重合開始剤は下記吸光係数Bの最大値が5,000L/(mol・cm)以上であり、前記光重合開始剤を組成物の全固形分に対して0.5~8.0質量%含み、
前記離型剤の含有量が、前記組成物の全固形分に対して0.1質量%以上1.0質量%未満である、インプリント用硬化性組成物;
吸光係数A:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域での単位質量あたりの吸光係数
吸光係数B:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域でのモル吸光係数。
【請求項3】
重合性化合物と、光重合開始剤と、離型剤とを含む、インプリント用硬化性組成物であって、
前記重合性化合物は下記吸光係数Aの最大値が1.8L/(g・cm)以下、かつ、重量平均分子量が800以上の透光性重合性化合物であり、前記重合性化合物を組成物の全固形分の50質量%以上含み、
前記透光性重合性化合物が、ケイ素原子を含み、かつ、エチレン性不飽和基を3個以上有する化合物、環状構造を有し、かつ、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物、又は、エチレン性不飽和基を5個以上有するデンドリマー型化合物である
前記光重合開始剤は下記吸光係数Bの最大値が5,000L/(mol・cm)以上であり、前記光重合開始剤を組成物の全固形分に対して0.5~8.0質量%含み、
前記離型剤の含有量が、前記組成物の全固形分に対して0.1質量%以上1.0質量%未満である、インプリント用硬化性組成物;
吸光係数A:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域での単位質量あたりの吸光係数
吸光係数B:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域でのモル吸光係数。
【請求項4】
前記透光性重合性化合物を、組成物の全固形分の90質量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記透光性重合性化合物が、ケイ素原子を含み、かつ、エチレン性不飽和基を3個以上有する化合物、環状構造を有し、かつ、エチレン性不飽和基を3個以上有する化合物、又は、エチレン性不飽和基を5個以上有するデンドリマー型化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
前記透光性重合性化合
物の重合性基当量が150以上である、請求項1
~5のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
前記透光性重合性化合物の重量平均分子量が2,000超である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
前記透光性重合性化合物がシリコーン骨格を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
前記透光性重合性化合物が、(メタ)アクリル樹脂の側鎖にシリコーン樹脂が導入されたグラフト構造を有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
前記離型剤の含有量が、組成物の全固形分に対し0.5質量%以上である、請求項1~
9のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
さらに、溶剤を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項12】
前記インプリント用硬化性組成物を、膜状にし、露光量300mJ/cm
2で照射してなる厚さ300nmの硬化膜のOliver-Pharr法で算出した弾性率が2.0GPa以上である、請求項1~
11のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項13】
前記インプリント用硬化性組成物の全固形分の表面張力と、前記インプリント用硬化性組成物の全固形分から離型剤を除いた成分の表面張力の差が1.0mN/m以下である、請求項1~
12のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項14】
前記離型剤が、フッ素原子およびケイ素原子を実質的に含まない、請求項1~
13のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項15】
さらに、重合禁止剤を含む、請求項1~
14のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項16】
ステップ・アンド・リピート方式に用いられる、請求項1~
15のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を、基板上またはモールド上に適用し、前記インプリント用硬化性組成物を、前記モールドと前記基板で挟んだ状態で光照射することを含むパターンの製造方法。
【請求項18】
インプリント法がステップ・アンド・リピート方式で実施される、請求項
17に記載のパターンの製造方法。
【請求項19】
前記インプリント用硬化性組成物が密着層の上に適用される、請求項
17または
18に記載のパターンの製造方法。
【請求項20】
前記インプリント用硬化性組成物がスピンコート法により基板上に適用される、請求項
17~
19のいずれか1項に記載のパターンの製造方法。
【請求項21】
請求項
17~
20のいずれか1項に記載のパターンの製造方法を含む、半導体素子の製造方法。
【請求項22】
請求項1~
16のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物から形成される硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用硬化性組成物、ならびに、上記インプリント用硬化性組成物を用いたパターンの製造方法、半導体素子の製造方法および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法とは、パターンが形成された金型(一般的にモールド、スタンパと呼ばれる)を押し当てることにより、材料に微細パターンを転写する技術である。インプリント法を用いることで簡易に精密な微細パターンの作製が可能なことから、近年さまざまな分野での応用が期待されている。特に、ナノオーダーレベルの微細パターンを形成するナノインプリント技術が注目されている。
インプリント法としては、その転写方法から熱インプリント法、光インプリント法と呼ばれる方法が提案されている。熱インプリント法では、ガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある)以上に加熱した熱可塑性樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することにより微細パターンを形成する。この方法は多様な材料を選択できるが、プレス時に高圧を要すること、熱収縮等により微細なパターン形成が困難であるといった問題点も有する。
【0003】
光インプリント法では、基板(必要に応じて密着処理を行う)上にインプリント用硬化性組成物を塗布後、石英等の透光性素材で作製されたモールドを押し当てる。モールドを押し当てた状態で光照射によりインプリント用硬化性組成物を硬化し、その後モールドを離型することで目的のパターンが転写された硬化物が作製される。
基板上にインプリント用硬化性組成物を適用する方法としては、スピンコート方式やインクジェット方式が挙げられる。インクジェット方式は、インプリント用硬化性組成物のロスが少ないといった利点があるが、塗布の安定性に課題を残す。また、インプリント用硬化性組成物にインクジェット適性を付与するには液物性に制約がかかるため、材料の選択肢が狭くなる場合がある。
一方、スピンコート方式は従来のフォトレジストと同様のコーターを利用して塗布するため、塗布プロセスの安定性が高く使用可能な材料の選択肢も広がる。スピンコート方式用のインプリント用硬化性組成物の具体例として、特許文献1および2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-095833号公報
【文献】特開2015-071741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討を行った結果、スピンコート方式用のインプリント用硬化性組成物は、パターンサイズが小さい超微細なパターン転写において、パターン倒れやパターンエッジの荒れが発生してしまうことが分かった。また、上記微細パターンを転写可能とする十分な離型性も有していないことが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、パターンサイズが小さい超微細なパターン転写において、パターン倒れやパターンエッジの荒れが生じにくく、かつ、離型性に優れたインプリント用硬化性組成物、ならびに、上記インプリント用硬化性組成物を用いたパターンの製造方法、半導体素子の製造方法および硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、透光性で、比較的分子量が大きい透光性の重合性化合物を光吸収能の高い光重合開始剤とともに特定量で用い、離型剤の配合量を通常よりも少なめに設定することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
【0007】
<1>重合性化合物と、光重合開始剤と、離型剤とを含む、インプリント用硬化性組成物であって、
上記重合性化合物は下記吸光係数Aの最大値が1.8L/(g・cm)以下、かつ、重量平均分子量が800以上の透光性重合性化合物であり、上記重合性化合物を組成物の全固形分の50質量%以上含み、
上記光重合開始剤は下記吸光係数Bの最大値が5,000L/(mol・cm)以上であり、上記光重合開始剤を組成物の全固形分に対して0.5~8.0質量%含み、
上記離型剤の含有量が、上記組成物の全固形分に対して0.1質量%以上1.0質量%未満である、インプリント用硬化性組成物;
吸光係数A:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域での単位質量あたりの吸光係数
吸光係数B:アセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域でのモル吸光係数。
<2>上記透光性重合性化合物が、2つ以上の重合性基を有する、<1>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<3>上記透光性重合性化合物が、2つ以上の重合性基を有し、かつ、重合性基当量が150以上である、<1>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<4>上記透光性重合性化合物の重量平均分子量が2,000超である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<5>上記透光性重合性化合物がシリコーン骨格を有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<6>上記透光性重合性化合物が、(メタ)アクリル樹脂の側鎖にシリコーン樹脂が導入されたグラフト構造を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<7>上記離型剤の含有量が、組成物の全固形分に対し0.5質量%以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<8>さらに、溶剤を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<9>上記インプリント用硬化性組成物を、膜状にし、露光量300mJ/cm2で照射してなる厚さ300nmの硬化膜のOliver-Pharr法で算出した弾性率が2.0GPa以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<10>上記インプリント用硬化性組成物の全固形分の表面張力と、上記インプリント用硬化性組成物の全固形分から離型剤を除いた成分の表面張力の差が1.0mN/m以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<11>上記離型剤が、フッ素原子およびケイ素原子を実質的に含まない、<1>~<10>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<12>さらに、重合禁止剤を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<13>ステップ・アンド・リピート方式に用いられる、<1>~<12>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<14><1>~<13>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物を、基板上またはモールド上に適用し、上記インプリント用硬化性組成物を、上記モールドと上記基板で挟んだ状態で光照射することを含むパターンの製造方法。
<15>インプリント法がステップ・アンド・リピート方式で実施される、<14>に記載のパターンの製造方法。
<16>上記インプリント用硬化性組成物が密着層の上に適用される、<14>または<15>に記載のパターンの製造方法。
<17>上記インプリント用硬化性組成物がスピンコート法により基板上に適用される、<14>~<16>のいずれか1つに記載のパターンの製造方法。
<18><14>~<17>のいずれか1つに記載のパターンの製造方法を含む、半導体素子の製造方法。
<19><1>~<13>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物から形成される硬化物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、パターンサイズが小さい超微細なパターン転写において、パターン倒れやパターンエッジの荒れが生じにくく、かつ、離型性に優れたインプリント用硬化性組成物、ならびに、上記インプリント用硬化性組成物を用いたパターンの製造方法、半導体素子の製造方法および硬化物を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ステップ・アンド・リピート方式のナノインプリントプロセスの一例を模式的に断面図で示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシを表す。
本明細書において、「インプリント」は、好ましくは、1nm~10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm~100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線、極端紫外線(EUV)、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000またはTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本発明における沸点測定時の気圧は、特に述べない限り、101325Pa(1気圧)とする。本発明における温度は、特に述べない限り、23℃とする。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本発明のインプリント用硬化性組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)は、重合性化合物と、光重合開始剤と、離型剤とを含む、インプリント用硬化性組成物であって、上記重合性化合物は下記吸光係数Aの最大値が1.8L/(g・cm)以下、かつ、重量平均分子量が800以上の透光性重合性化合物であり、上記重合性化合物を組成物の全固形分の50質量%以上含み、上記光重合開始剤は下記吸光係数Bの最大値が5,000L/(mol・cm)以上であり、上記光重合開始剤を組成物の全固形分に対して0.5~8.0質量%含み、上記離型剤の含有量が、上記組成物の全固形分に対して0.1質量%以上1.0質量%未満である、インプリント用硬化性組成物ことを特徴とする。ここで、吸光係数Aはアセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域での単位質量あたりの吸光係数であり、吸光係数Bはアセトニトリル溶液における250~400nmの波長領域でのモル吸光係数である。各吸光係数の最大値は、特に断らない限り、後記実施例に記載の方法に基づき測定した値を採用する。
このような構成のインプリント用硬化性組成物とすることにより、パターンサイズが小さい超微細なパターン転写において、パターン倒れやパターンエッジの荒れが生じにくく(解像性に優れ)、かつ、離型性に優れたインプリント用硬化性組成物を提供可能になる。
このメカニズムは推定であるが、ナノインプリント用硬化性組成物が、透光性の高い重合性化合物を特定量と、光吸収能の高い光重合開始剤を特定量と、従来よりも少ない特定量の離型剤を含むことにあると考えられる。すなわち、透光性の高い重合性化合物を十分な量で用いることで、膜深部での硬化性が向上する。また、光の吸収能の高い光重合開始剤を適切な量で用いることで、十分な硬化性を確保でき、良好な解像性を発揮し得る。さらに、離型剤の含有量を従来よりも少量とすることで、膜深部のパターン強度が向上する。上記三成分が上述した作用を打ち消し合うことなく、むしろ相互に補完し合い、スピンコート方式によるナノインプリント法でパターンサイズが50nm程度の微細パターンを製造する場合においても、離型性を担保しながら、パターン倒れやパターン荒れを抑えた高解像性のパターンの形成が可能となったと考えられる。さらに、上記の配合によるインプリント用硬化性組成物の好ましい実施形態によれば、その硬化膜を、膜厚の安定性が保たれ、弾性率や加工耐性の高いものとすることができる。
さらに、上記の配合によるインプリント用硬化性組成物においては、塗布膜の透光性が向上したことから、露光時間も短縮され、インプリントプロセスが複雑でスループットが課題であるステップ・アンド・リピート方式のナノインプリントにも適したものとすることができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0012】
<透光性重合性化合物>
<<吸光係数Aの最大値>>
本発明に係る透光性重合性化合物の吸光係数Aの最大値は、1.8L/(g・cm)以下であり、1.5L/(g・cm)以下であることが好ましく、1.2L/(g・cm)以下であることがより好ましく、1.0L/(g・cm)以下であることがさらに好ましい。さらに高度な透光性が求められる場合は、吸光係数Aの最大値が、0.8L/(g・cm)以下であることが好ましく、0.5L/(g・cm)以下であることがより好ましく、0.2L/(g・cm)以下であることがさらに好ましく、0.01L/(g・cm)未満であることが一層好ましい。下限値は特に制限されないが、0.0001L/(g・cm)以上であることが実際的である。本発明の組成物においては、吸光係数Aの最大値を上記上限値以下としたことで、パターン深部の硬化性が向上し、パターンの解像性に優れる。
【0013】
<<重量平均分子量>>
透光性重合性化合物の重量平均分子量は、800以上であるが、1,000以上であることが好ましく、1,500以上がより好ましく、2,000超がさらに好ましい。重量平均分子量の上限は特に定めるものではないが、例えば、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましく、8,000以下が一層好ましく、5,000以下がより一層好ましく、3,500以下がさらに一層好ましく、3,000以下が特に一層好ましい。分子量を上記下限値以上とすることで、化合物の揮発性が抑えられ、組成物や塗布膜の特性が安定化する。また、塗布膜の形態を維持するための良好な粘性も確保できる。さらに、離型剤を少量に抑えた影響を補完して、膜の良好な離型性を実現することができる。分子量を上記上限値以下とすることで、パターン充填に必要な低粘度(流動性)を確保しやすくなり好ましい。
【0014】
<<含有量>>
上記透光性重合性化合物のインプリント用硬化性組成物中の含有量は、組成物の全固形分の50質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、99.9質量%以下であることが実際的である。透光性重合性化合物を上記下限値以上の量で含有することで、十分な光透過性が得られ、光照射により膜を硬化する際に、膜深部での硬化性が向上するため好ましい。透光性重合性化合物は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
【0015】
<<重合性基当量>>
本発明で用いる透光性重合性化合物は、重合性基当量が、130以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、160以上であることがさらに好ましく、190以上であることが一層好ましく、240以上であることがより一層好ましい。重合性基当量の上限値としては、2,500以下であることが好ましく、1,800以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましく、500以下であることが一層好ましく、350以下であることがより一層好ましく、300以下であってもよい。
【0016】
重合性基当量は下記式で算出される。
(重合性基当量)
=(重合性化合物の数平均分子量)/(重合性化合物中の重合性基数)
【0017】
透光性重合性化合物の重合性基当量が低すぎると硬化時の弾性率が上昇し、離型性が悪化することがある。一方、これが高すぎると、硬化物パターンの架橋密度が著しく低下し、転写パターンの解像性が悪化することがある。
【0018】
透光性重合性化合物中の重合性基の数は、下記のケイ素含有化合物の場合は、一分子中、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましい。上限としては、50個以下であることが好ましく、40個以下であることがより好ましく、30個以下であることがさらに好ましく、20個以下であることが一層好ましい。
環含有化合物の場合は、一分子中、2個以上であることが好ましい。上限としては、4個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましい。
あるいは、デンドリマー型化合物である場合は、一分子中、5個以上であることが好ましく、10個以上であることがより好ましく、20個以上であることがさらに好ましい。上限としては、1000個以下であることが好ましく、500個以下であることがより好ましく、200個以下であることがさらに好ましい。
【0019】
<<粘度>>
透光性重合性化合物の23℃における粘度は、100mPa・s以上であることが好ましく、120mPa・s以上であることがより好ましく、150mPa・s以上であることがさらに好ましい。上記粘度の上限値は、2000mPa・s以下であることが好ましく、1500mPa・s以下であることがより好ましく、1200mPa・s以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本明細書において粘度は、特に断らない限り、東機産業(株)製のE型回転粘度計RE85L、標準コーン・ロータ(1°34’×R24)を用い、サンプルカップを23℃に温度調節して測定した値とする。測定に関するその他の詳細はJISZ8803:2011に準拠する。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定する。合計6回の算術平均値を評価値として採用する。
【0021】
<<重合性基>>
透光性重合性化合物が有する重合性基の種類は特に定めるものでは無いが、エチレン性不飽和基、環状エーテル基(エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基)等が例示され、エチレン性不飽和基が好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、ビニルフェニル基が例示され、(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイル基またはアクリロイルオキシ基がさらに好ましい。ここで定義する重合性基をQpと称する。
【0022】
<<ケイ素含有化合物・環含有化合物・デンドリマー型化合物>>
透光性重合性化合物は、上記の各特性を有するものであればその種類は特に限定されるものではない。特に、透光性重合性化合物の吸光係数Aの最大値を特定の範囲とする観点からは、ケイ素原子(Si)を含む化合物(ケイ素含有化合物)または環状構造を含む化合物(環含有化合物)が好ましく、ケイ素含有化合物がより好ましい。
【0023】
<<<ケイ素含有化合物>>>
ケイ素含有化合物としてはシリコーン骨格を有する化合物が挙げられる。具体的には、下記式(S1)で表されるD単位のシロキサン構造および式(S2)で表されるT単位のシロキサン構造のうち少なくとも一方を有する化合物が挙げられる。
【化1】
R
S1~R
S3はそれぞれ独立に水素原子または1価の置換基であり、1価の置換基であることが好ましい。置換基としては、芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)または脂肪族炭化水素基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が好ましく、中でも、環状または鎖状(直鎖もしくは分岐)のアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)または重合性基を含む基が好ましい。ケイ素含有化合物が有する重合性基の数の好ましい範囲についてはすでに述べたとおりである。
【0024】
具体的なケイ素含有化合物の構造の例としては、部分構造で示すと、以下の式s-1~s-9の例が挙げられる。式中のQは重合性基Qpを含む基である。これらの構造は化合物に複数存在してもよく、組み合わせて存在していてもよい。
【0025】
【0026】
ケイ素含有化合物は、シリコーン樹脂と(メタ)アクリル樹脂(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい)との反応物であることが好ましい。さらに具体的には、(メタ)アクリル樹脂の側鎖の例えばヒドロキシ基に、シリコーン樹脂が導入されたグラフト樹脂であることが好ましい。反応性シリコーン樹脂としては、上述したシリコーン骨格を有する変性シリコーン樹脂が挙げられ、例えば、モノアミン変性シリコーン樹脂、ジアミン変性シリコーン樹脂、特殊アミノ変性シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、脂環式エポキシ変性シリコーン樹脂、カルビノール変性シリコーン樹脂、メルカプト変性シリコーン樹脂、カルボキシル変性シリコーン樹脂、ハイドロジェン変性シリコーン樹脂、アミノ・ポリエーテル変性シリコーン樹脂、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーン樹脂、エポキシ・アラルキル変性シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0027】
<<<環含有化合物>>>
環を含む化合物(環含有化合物)の環状構造としては、芳香族環、脂環が挙げられる。芳香族環としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環が挙げられる。
芳香族炭化水素環としては、炭素数6~22のものが好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、フルオレン環、ベンゾシクロオクテン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、インデン環、インダン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ペリレン環、テトラヒドロナフタレン環などが挙げられる。なかでも、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。芳香族環は複数が連結した構造を取っていてもよく、例えば、ビフェニル構造、ジフェニルアルカン構造(例えば、2,2-ジフェニルプロパン)が挙げられる。(ここで規定する芳香族炭化水素環をaCyと称する)
芳香族複素環としては、炭素数1~12のものが好ましく、1~6がより好ましく、1~5がさらに好ましい。その具体例としては、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環、ピロール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環などが挙げられる。(ここで規定する芳香族複素環をhCyと称する)
脂環としては炭素数3~22が好ましく、4~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。具体的に脂肪族炭化水素環としては、例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロブテン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ジシクロペンタジエン環、スピロデカン環、スピロノナン環、テトラヒドロジシクロペンタジエン環、オクタヒドロナフタレン環、デカヒドロナフタレン環、ヘキサヒドロインダン環、ボルナン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、イソボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環などが挙げられる。脂肪族複素環としては、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、オキシラン環、オキセタン環、オキソラン環、オキサン環、ジオキサン環などが挙げられる。(ここで規定する脂環をfCyと称する)
【0028】
本発明においては、透光性重合性化合物が環含有化合物であるとき、芳香族炭化水素環を含有する化合物であることが好ましく、ベンゼン環を有する化合物であることがより好ましい。例えば、下記式C-1の構造を有する化合物が挙げられる。
【0029】
【化3】
式中、Arは上記の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表す。
L
1およびL
2はそれぞれ独立に単結合または連結基である。連結基としては、酸素原子(オキシ基)、カルボニル基、アミノ基、アルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。中でも、(ポリ)アルキレンオキシ基が好ましい。(ポリ)アルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が1つのものでも、複数繰り返して連結されているものでもよい。また、アルキレン基とオキシ基の順序が限定されるものではない。アルキレンオキシ基の繰り返し数は1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい。また、(ポリ)アルキレンオキシ基は母核となる環Arまたは重合性基Qとの連結の関係で、アルキレン基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が介在していてもよい。したがって、(ポリ)アルキレンオキシ=アルキレン基となっていてもよい。
R
3は任意の置換基であり、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)、アシル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリーロイル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が挙げられる。
L
3は単結合または連結基である。連結基としては、上記L
1,L
2の例が挙げられる。
n3は3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましく、0であることが特に好ましい。
Q
1およびQ
2はそれぞれ独立に重合性基であり、上記重合性基Qpの例が好ましい。
環含有化合物においては、重合性基を有する側鎖の数が増えることで、硬化時に強固な架橋構造を形成することが可能となり解像性が向上する傾向がある。かかる観点から、nqは2以上であることが好ましい。上限としては、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。
同様に均一な架橋構造を形成しやすいという観点から、環状構造に重合性基を含む基ないし置換基が導入される場合、直列状に置換基が配置されることが好ましい。
【0030】
<<<デンドリマー型化合物>>>
透光性重合性化合物はデンドリマー型化合物であってもよい。デンドリマーは、中心から規則的に分枝した構造を持つ樹状高分子を意味する。デンドリマーはコアと呼ばれる中心分子(幹)と、デンドロンと呼ばれる側鎖部分(枝)から構成される。全体としては扇形の化合物が一般的であるが、半円状ないし円状にデンドロンがひろがった、デンドリマーであってもよい。このデンドリマーのデンドロンの部分(例えば、コアからは離れる末端部分)に重合性基を有する基を導入し重合性化合物とすることができる。導入する重合性基に(メタ)アクリロイル基を用いれば、デンドリマー型の多官能(メタ)アクリレートとすることができる。
デンドリマー型化合物における重合性基の数の好ましい範囲はすでに述べた。
デンドリマー型化合物については、例えば、特許第5512970号公報に開示された事項を参照することができ、その記載を引用して本明細書に組み込む。
【0031】
<他の重合性化合物>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、透光性重合性化合物以外の重合性化合物(以下、他の重合性化合物と称することがある)を含んでいてもよい。他の重合性化合物は2つ以上の重合性基を有する多官能重合性化合物であることが好ましい。他の重合性化合物の重合性基の数は、一分子中に2個以上であることが好ましい。上限としては、4個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、2個以下であることがさらに好ましい。
【0032】
他の重合性化合物の一例として、下記式で示される化合物が例示される。
【化4】
【0033】
式中、R
21はq価の有機基であり、R
22は水素原子またはメチル基であり、qは2以上の整数である。qは2以上7以下の整数が好ましく、2以上4以下の整数がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が一層好ましい。
R
21は、2~7価の有機基であることが好ましく、2~4価の有機基であることがより好ましく、2または3価の有機基であることがさらに好ましく、2価の有機基であることが一層好ましい。R
21は直鎖、分岐および環状の少なくとも1つの構造を有する炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
R
21が2価の有機基であるとき、下記式(1-2)で表される有機基であることが好ましい。
【化5】
式中、Z
1およびZ
2はそれぞれ独立に、単結合、-Alk-、または-Alk-O-(AlkとOの順序は問わず、式中で-O-Alk-となっていてもよい)であることが好ましい。Alkはアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)を表し、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有していてもよい。
【0034】
R9は、単結合または下記の式(9-1)~(9-10)から選ばれる連結基またはその組み合わせが好ましい。中でも、式(9-1)~(9-3)、(9-7)、および(9-8)から選ばれる連結基であることが好ましい。
【0035】
【0036】
R101~R117は任意の置換基である。中でも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アラルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、チエニル基、フリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(アルキル基は炭素数1~24のものが好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が好ましい。R101とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108、R109とR110、複数あるときのR111、複数あるときのR112、複数あるときのR113、複数あるときのR114、複数あるときのR115、複数あるときのR116、複数あるときのR117は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Arはアリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であり、具体的には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、フルオレンジイル基が挙げられる。
hCy1はヘテロ環基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、2~5がさらに好ましい)であり、5員環または6員環がより好ましい。hCy1を構成するヘテロ環の具体例としては、上記芳香族複素環hCy、ピロリドン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環などの例が挙げられ、中でも、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環が好ましい。
nおよびmは100以下の自然数であり、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
pは0以上で、各環に置換可能な最大数以下の整数である。上限値は、それぞれの場合で独立に、置換可能最大数の半分以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また、他の重合性化合物は、上記で定義される重合性基当量が150以上のものであることが好ましく、160以上であることがより好ましく、190以上であることがさらに好ましく、240以上であることが一層好ましい。上限としては、2,500以下であることが好ましく、1,800以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。
【0038】
他の重合性化合物は、環状構造を有することが好ましい。その環状構造として、芳香族炭化水素環aCy、芳香族複素環hCy、脂環fCyの例が挙げられる。
【0039】
他の重合性化合物の例としては、特開2014-090133号公報の段落0017~0024および実施例に記載の化合物、特開2015-009171号公報の段落0024~0089に記載の化合物、特開2015-070145号公報の段落0023~0037に記載の化合物、国際公開第2016/152597号の段落0012~0039に記載の化合物を挙げることができ、これらを引用して本明細書に組み込む。
【0040】
他の重合性化合物は、インプリント用硬化性組成物中、10質量%以上含まれていてもよい。上限値は、透光性重合性化合物との関係で30質量%未満であることが実際的である。他の重合性化合物1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
【0041】
<光重合開始剤>
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物は、光重合開始剤を含む。
光重合開始剤は、吸光係数Bの最大値が5,000L/(mol・cm)以上であり、10,000L/(mol・cm)以上であることが好ましく、25,000L/(mol・cm)以上であることがより好ましい。吸光係数Bの最大値の上限としては、例えば、100,000L/(mol・cm)以下、さらには、50,000L/(mol・cm)以下が実際的である。
光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アリーロイルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤が例示される。なかでも、本発明のインプリント用硬化性組成物においては、オキシムエステル系光重合開始剤を用いることが好ましい。ここで、オキシムエステルとは、下記式(1)の連結構造を分子内に有する化合物をさし、式(2)の連結構造を有することが好ましい。式中の*は有機基に結合する結合手を表す。
【化7】
光重合開始剤の分子量は特に限定されないが、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることがさらに好ましい。上限としては、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。
光重合開始剤の具体例としては、BASF製のIRGACURE819(8,200)、OXE-01(17,300)、OXE-02(21,500)、OXE-04(33,000)、Darocure1173、IrgacureTPO、ADEKA製のNCI-831(31,500)、NCI-831E(32,000)などが挙げられる(いずれも商品名であり、かっこ内は吸光係数Bの最大値である。)。
【0042】
光重合開始剤の含有量は、インプリント用硬化性組成物の全固形分に対し、0.5質量%以上であり、1質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましい。上限値としては、8.0質量%以下であり、6.0質量%以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が上記下限値以上であると、十分な硬化性を確保でき、良好な解像性を発揮し得る。一方、上記上限値以下とすることで、塗布時や冷蔵保管時に開始剤が析出し塗布欠陥等を誘発することを防ぐことができる。
光重合開始剤は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
【0043】
<離型剤>
本発明のインプリント用硬化性組成物は離型剤を含有する。離型剤の含有量は、組成物の全固形分に対して0.1質量%以上であり、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましい。上限値としては、1.0質量%未満であり、0.9質量%以下が好ましく、0.85質量%以下がより好ましい。離型剤の含有量を上記下限値以上とすることで、離型性が良好となり、硬化膜の剥がれや、離型時のモールド破損を防ぐことができる。また、上記上限値以下とすることで、離型剤の影響による硬化時のパターン強度の過度な低下を招かず、特定の透光性重合性化合物および特定の光重合開始剤との相乗効果が発揮され、良好な解像性を実現することができる。
離型剤は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
離型剤の種類は特に限定されないが、好ましくは、モールドとの界面に偏析し、効果的にモールドとの離型を促進する機能を有することが好ましい。本発明では、離型剤が、フッ素原子およびケイ素原子を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、フッ素原子およびケイ素原子の合計量が離型剤の1質量%以下であることをいい、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましい。離型剤としてフッ素原子およびケイ素原子を実質的に含有しないものを用いることにより、インプリント用硬化性組成物を、その膜の高い離型性を実現しつつ、エッチング等に対する加工耐性に優れたものとする観点から好ましい。
本発明で用いられる離型剤は、具体的には、界面活性剤であることが好ましい。あるいは、末端に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するアルコール化合物か、または、ヒドロキシ基がエーテル化された(ポリ)アルキレングリコール構造を有する化合物((ポリ)アルキレングリコール化合物)であることが好ましい。界面活性剤および(ポリ)アルキレングリコール化合物は重合性基Qpを持たない非重合性化合物であることが好ましい。なお、(ポリ)アルキレングリコールとは、アルキレングリコール構造が1つのものでも、複数繰り返して連結されているものでもよい意味である。
【0044】
<<界面活性剤>>
本発明において離型剤として用いることができる界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とは、少なくとも一つの疎水部と少なくとも一つのノニオン性親水部を有する化合物である。疎水部と親水部は、それぞれ、分子の末端にあっても、内部にあってもよい。疎水部は、例えば炭化水素基で構成され、疎水部の炭素数は、1~25が好ましく、2~15がより好ましく、4~10がさらに好ましく、5~8が一層好ましい。ノニオン性親水部は、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、エーテル基(好ましくは(ポリ)アルキレンオキシ基、環状エーテル基)、アミド基、イミド基、ウレイド基、ウレタン基、シアノ基、スルホンアミド基、ラクトン基、ラクタム基、シクロカーボネート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有することが好ましい。なかでも、アルコール性水酸基、エーテル基(好ましくは(ポリ)アルキレンオキシ基、環状エーテル基)を有する化合物であることがより好ましい。
【0045】
<<アルコール化合物、(ポリ)アルキレングリコール化合物>>
本発明のインプリント用硬化性組成物に用いられる好ましい離型剤として、上記のように、末端に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するアルコール化合物か、または、ヒドロキシ基がエーテル化された(ポリ)アルキレングリコール化合物が挙げられる。
【0046】
(ポリ)アルキレングリコール化合物は、具体的には、アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を有することが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基を含む(ポリ)アルキレンオキシ基を有することがより好ましい。具体的には、(ポリ)エチレンオキシ基、(ポリ)プロピレンオキシ基、(ポリ)ブチレンオキシ基、またはこれらの混合構造を有するが好ましく、(ポリ)エチレンオキシ基、(ポリ)プロピレンオキシ基、またはこれらの混合構造を有するがより好ましく、(ポリ)プロピレンオキシ基を有することがさらに好ましい。(ポリ)アルキレングリコール化合物は、末端の置換基を除き実質的に(ポリ)アルキレンオキシ基のみで構成されていてもよい。ここで実質的にとは、(ポリ)アルキレンオキシ基以外の構成要素が全体の5質量%以下であることをいい、好ましくは1質量%以下であることをいう。特に、(ポリ)アルキレングリコール化合物として、実質的に(ポリ)プロピレンオキシ基のみからなる化合物を含むことが特に好ましい。
【0047】
(ポリ)アルキレングリコール化合物における、アルキレンオキシ基の繰り返し数は、3~100であることが好ましく、4~50であることがより好ましく、5~30であることがさらに好ましく、6~20であることが一層好ましい。
【0048】
(ポリ)アルキレングリコール化合物は、末端のヒドロキシ基がエーテル化されていれば、残りの末端はヒドロキシ基であってもよく、末端ヒドロキシ基の水素原子が置換されているものであってもよい。末端ヒドロキシ基の水素原子が置換されていてもよい基としてはアルキル基(すなわち(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル)、アシル基(すなわち(ポリ)アルキレングリコールエステル)が好ましい。連結基を介して複数(好ましくは2または3本)の(ポリ)アルキレングリコール鎖を有している化合物も好ましく用いることができる。
【0049】
(ポリ)アルキレングリコール化合物の好ましい具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(例えば、和光純薬製)、これらのモノまたはジメチルエーテル、モノまたはジブチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジセチルエーテル、モノステアリン酸エステル、モノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、これらのトリメチルエーテルが挙げられる。
【0050】
(ポリ)アルキレングリコール化合物は下記の式(P1)または(P2)で表される化合物であることが好ましい。
【化8】
式中のR
P1は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよいアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)である。R
P2、R
P3は水素原子あるいは鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよいアルキル基(炭素数1~36が好ましく、2~24がより好ましく、3~12がさらに好ましい)である。pは1~24の整数が好ましく、2~12の整数がより好ましい。
R
P4はq価の連結基であり、有機基からなる連結基であることが好ましく、炭化水素からなる連結基であることが好ましい。具体的に炭化水素からなる連結基としては、アルカン構造の連結基(炭素数1~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい)、アルケン構造の連結基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい)、アリール構造の連結基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)が挙げられる。
qは2~8の整数であることが好ましく、2~6の整数であることがより好ましく、2~4の整数であることがさらに好ましい。
【0051】
離型剤として用いられるアルコール化合物または(ポリ)アルキレングリコール化合物の重量平均分子量としては150~6000が好ましく、200~3000がより好ましく、250~2000がさらに好ましく、300~1200が一層好ましい。
また、本発明で用いることができる(ポリ)アルキレングリコール化合物の市販品としては、オルフィンE1010(日信化学工業社製)、Brij35(キシダ化学社製)等が例示される。
【0052】
<重合禁止剤>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、重合禁止剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
重合禁止剤は光重合開始剤から発生するラジカル等の反応性物質をクエンチする(失活させる)機能を有し、インプリント用硬化性組成物の低露光量での反応を抑制する役割を担う。
特に、他の重合性化合物を含む場合に、重合禁止剤を充分に溶解させることが可能となり、上記の効果が発現しやすくなる。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタンなどが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、および、国際公開2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもできる。重合禁止剤の市販品の具体例としては、Q-1300、Q-1301、TBHQ(和光純薬工業株式会製)、キノパワーシリーズ(川崎化成工業株式会製)などが挙げられる。
また、下記化合物を用いることができる(Meはメチル基である)。
【化9】
重合禁止剤の含有量は0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。この含有量が上記下限値以上とすることで光重合開始剤の反応性を効果的に発揮させることができ。また、上記上限値以下とすることで、転写パターンの倒れを防ぎ効果的なパターニングを可能とする。
重合禁止剤は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0053】
<溶剤>
上記インプリント用硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤とは、23℃において液体であって沸点が250℃以下の化合物をいう。溶剤を含む場合、その含有量は、例えば1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
その含有量は、また、例えば、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましい。
溶剤は、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明においては、溶剤のうち最も含有量の多い成分の沸点が200℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。溶剤の沸点を上記の温度以下とすることにより、ベイクの実施によりインプリント用硬化性組成物中の溶剤を除去することが可能となる。溶剤の沸点の下限値は特に限定されないが、60℃以上が実際的であり、80℃以上、さらには100℃以上であってもよい。
溶剤は、有機溶剤が好ましい。溶剤は、好ましくは、エステル基、カルボニル基、アルコキシ基、水酸基およびエーテル基のいずれか1つ以上を有する溶剤であることが好ましい。
溶剤の具体例としては、アルコキシアルコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、およびアルキレンカーボネートが選択される。
アルコキシアルコールとしては、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール(例えば、1-メトキシ-2-プロパノール)、エトキシプロパノール(例えば、1-エトキシ-2-プロパノール)、プロポキシプロパノール(例えば、1-プロポキシ-2-プロパノール)、メトキシブタノール(例えば、1-メトキシ-2-ブタノール、1-メトキシ-3-ブタノール)、エトキシブタノール(例えば、1-エトキシ-2-ブタノール、1-エトキシ-3-ブタノール)、メチルペンタノール(例えば、4-メチル-2-ペンタノール)などが挙げられる。
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、および、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが特に好ましい。
また、プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルまたはプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、または乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、または酢酸3-メトキシブチルが好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP)、または、3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)が好ましい。
鎖状ケトンとしては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトンまたはメチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロンまたはシクロヘキサノンが好ましい。
ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン(γ-BL)が好ましい。
アルキレンカーボネートとしては、プロピレンカーボネートが好ましい。
上記成分の他、炭素数が7以上(7~14が好ましく、7~12がより好ましく、7~10がさらに好ましい)、かつ、ヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤を用いることが好ましい。
炭素数が7以上かつヘテロ原子数が2以下のエステル系溶剤の好ましい例としては、酢酸アミル、酢酸2-メチルブチル、酢酸1-メチルブチル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、プロピオン酸ヘプチル、ブタン酸ブチルなどが挙げられ、酢酸イソアミルを用いることが特に好ましい。
また、引火点(以下、fpともいう)が30℃以上であるものを用いることも好ましい。このような成分(M2)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(fp:47℃)、乳酸エチル(fp:53℃)、3-エトキシプロピオン酸エチル(fp:49℃)、メチルアミルケトン(fp:42℃)、シクロヘキサノン(fp:30℃)、酢酸ペンチル(fp:45℃)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル(fp:45℃)、γ-ブチロラクトン(fp:101℃)またはプロピレンカーボネート(fp:132℃)が好ましい。これらのうち、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル(EL)、酢酸ペンチルまたはシクロヘキサノンがさらに好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテルまたは乳酸エチルが特に好ましい。なお、ここで「引火点」とは、東京化成工業株式会社またはシグマアルドリッチ社の試薬カタログに記載されている値を意味している。
より好ましい溶剤としては、水、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エトキシエチルプロピオネート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチルおよび4-メチル-2-ペンタノールからなる群から選択される少なくとも1種であり、PGMEAおよびPGMEからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0054】
<紫外線吸収剤>
本発明のインプリント用硬化性組成物は紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤は露光の際に発生する漏れ光(フレア光)を吸収することで光重合開始剤に反応光が届くことを抑制し、インプリント用硬化性組成物の低露光量での反応を抑制する役割を担う。
紫外線吸収剤の種類としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアンアクリレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~3質量%であることがより好ましい。紫外線吸収剤は1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0055】
<その他の成分>
本発明のインプリント用硬化性組成物にはその他の成分を用いることもできる。例えば、増感剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。含有量は特に限定されないが、組成物の全固形分中、0.01~20質量%程度を適宜配合してもよい。
【0056】
<物性>
本発明においては、インプリント用硬化性組成物を、膜状にし、露光量300mJ/cm2で照射してなる厚さ300nmの硬化膜のOliver-Pharr法で算出した弾性率が1.5GPa以上であることが好ましく、1.8GPa以上であることがより好ましく、2.0GPa以上であることがさらに好ましい。上限としては、4.0GPa以下であることが実際的である。
インプリント用硬化性組成物の硬化膜の弾性率が上記下限値以上であることで、インプリントパターンに充分な強度を付与することが可能となり、解像性が向上する。一方、上限値以下とすることにより、モールドとの離型性が向上し欠陥が低減する。
【0057】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、その全固形分の表面張力と、インプリント用硬化性組成物の全固形分から離型剤を除いた成分の表面張力の差が1.5mN/m以下であることが好ましく、1.0mN/m以下であることがより好ましく、0.8mN/m以下であることがさらに好ましい。下限値としては、例えば、0.01mN/m以上、さらには0.1mN/m以上であることが実際的である。この差が小さいほど、インプリント用硬化性組成物中での離型剤の相溶性が向上し、均質な硬化膜を形成することが可能となる。
【0058】
<保存容器>
本発明で用いるインプリント用硬化性組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0059】
<硬化物およびそのパターンの製造方法>
<<基板への適用>>
本発明のパターンの製造方法は、基板、密着層(下層膜、プライマー層等、基板とインプリント用硬化性組成物層の間に含まれる層を含む趣旨である。)等の上に本発明のインプリント用硬化性組成物を適用する工程を含む。インプリント用硬化性組成物は、スピンコート法により基板上に適用されることが好ましい。
密着層としては、例えば、特開2014-024322号公報の段落0017~0068、特開2013-093552号公報の段落0016~0044に記載されたもの、特開2014-093385号公報に記載の密着層、特開2013-202982号公報に記載の密着層を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明のパターンの製造方法は、これを含む、半導体素子の製造方法としてもよい。
本発明のパターンの製造方法におけるパターンサイズ、すなわち、パターンの幅として、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、25nm以下であることがさらに好ましい。下限値としては、5nm以上であることが実際的である。
【0060】
<<光ナノインプリントリソグラフィ>>
インプリント用硬化性組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および基板の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明の一実施形態においては、本発明に係る上記のインプリント用硬化性組成物を、基板上またはモールド上に適用し、インプリント用硬化性組成物(パターン形成層)を、モールドと基板で挟んだ状態で光照射してパターンを形成する。通常は、光透過性のモールドをインプリント用硬化性組成物に押接し、モールドの裏面から光を照射し、上記パターン形成層を硬化させる。また、別の実施形態においては、光透過性基板上にインプリント用硬化性組成物を塗布し、インプリント用硬化性組成物にモールドを押し当て、基板の裏面から光を照射し、インプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
上記光照射は、モールドを密着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
モールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われることが好ましい。上記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、モールドパターン形成方法は特に制限されない。また、パターン形成方法によって形成したパターンをモールドとして用いることもできる。
光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透過性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
光透過性の基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。
インプリント用硬化性組成物を用いてインプリントを行う場合、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部のインプリント用硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる範囲を選択することが好ましい。
【0061】
インプリント用硬化性組成物層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、インプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量などを調べて適宜決定される。ただし、本発明においては、モールド隣接部の過度の硬化を防ぐために低露光照量とすることが好ましい。
光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドとインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0062】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm
2~500mW/cm
2の範囲にすることが望ましい。中でも本発明の好ましい実施形態においてステップ・アンド・リピート方式のナノインプリントプロセスに適用することを考慮すると、スループット(露光時間の短縮)の観点から10mW/cm
2以上であることが好ましく、100mW/cm
2以上であることがより好ましく、200mW/cm
2以上であることがさらに好ましい。
露光時間は1.0秒以下であることが好ましく、0.5秒以下であることがより好ましく、0.2秒以下であることがさらに好ましい。下限値としては0.01秒以上であることが実際的である。
光照射によりパターン形成層(インプリント用硬化性組成物からなる層)を硬化させた後、必要に応じて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる際の温度としては、150~280℃が好ましく、200~250℃がより好ましい。また、加熱時間としては、5~60分間が好ましく、15~45分間がさらに好ましい。
本発明のインプリント用硬化性組成物は、これを用いて硬化物パターンを製造するに際し、インプリント法がステップ・アンド・リピート方式で実施されることが好ましい。ステップ・アンド・リピート方式の実施形態としては、
図1に示したモールド加工方式が挙げられる。
【0063】
本実施形態のステップ・アンド・フラッシュ・インプリント・リソグラフィにおいては、
図1に示したように、モールド3を順次基板の面方向にずらして、インプリント(押接・離型による型付け)をしていく。図示した実施例では、基板1の上にインプリント用硬化性組成物を塗布して配設した層(インプリント用硬化性組成物層)2が形成されている(
図1(a))。所定の位置にモールド3を固定し、その位置で押接4aする。次いで、モールド3をインプリント用硬化性組成物層から引き離して離型4bする。すると、モールドの凸部3xに対応した形状でインプリント用硬化性組成物層に型付けされたパターン(凹部)5aが形成される(
図1(b))。なお、図示していないが、本実施形態ではモールドの押圧4aの後に露光を行う。モールドは石英などの透光性の材料を用いており、型付けされたインプリント用硬化性組成物にモールドを介して光を照射する。インプリント用硬化性組成物は光硬化性にされており、露光により硬化する。これにより、凹部5aの形状は固定化される。次いで、モールド3を基板に対して面方向に元の場所3aから所定量だけずらして固定する。そこで、上記と同様に押接4a・露光・離型4bを順に行い、インプリント用硬化性組成物層に凹部5bを形成する(
図1(c))。さらに、モールドを移動(3bから3)し、押接、露光、離型を行う。この操作を繰り返して、所望のパターンを基板上に広く形成したインプリント層2aを形成することができる。
【0064】
上述のように、本発明のパターンの製造方法においては、ウエハ上でインプリントするエリアを分割し複数回押印および露光を繰り返すステップ・アンド・リピート方式を採用することが好ましい。隣接ショット間の距離は一般的に10~100μm程度である。
本発明の一実施形態として、本発明のパターン製造方法を含む回路基板の製造方法が例示される。また、本発明の別の実施形態として、本発明のパターンの製造方法を含む、半導体素子の製造方法が例示される。パターンサイズは、必要に応じて適宜設定されればよいが、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、1nm以上であることが実際的である。
【0065】
<応用形態>
また、本発明の一実施形態として、インプリント用硬化性組成物から形成される硬化物の使用を挙げることができる。本発明のインプリント用硬化性組成物は、光硬化した硬化物として用いられることが好ましい。より具体的には、光インプリント法によってパターンを形成して用いられる。
【0066】
本発明のパターン製造方法で得られた硬化物パターンは、様々な用途に用いることができる。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜や、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。本発明の好ましい実施形態に係る硬化物パターンは、エッチング耐性にも優れ、フッ化炭素等を用いるドライエッチングのエッチングレジストとしても好ましく用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0068】
<インプリント用硬化性組成物の調製>
表1~3に記載の各種化合物(これらの詳細と特性を表4~9に示す)を混合し、さらに重合禁止剤として4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を重合性化合物の合計量に対して200質量ppm(0.02質量%)となるように加えた。これを孔径0.02μmのNylonフィルターおよび孔径0.001μmのUPEフィルターでろ過して、インプリント用硬化性組成物を調製した。溶剤は表中に記載のものを用い、不揮発性成分が表1~3中に記載の濃度となる量で加えた。
【0069】
<重合性化合物の分子量の測定方法>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義した。装置はHLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いた。溶離液は、THF(テトラヒドロフラン)を用いた。検出は、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用した。
分子量が1500未満の低分子化合物の重量平均分子量Mwは、LC―MSを用いて測定した。条件は下記のとおりとした。
装置:Agilent 製 LC/MS G1956B
カラム:TOSOH ODS-80Ts
移動相:10mM酢酸アンモニウム水溶液/10mM酢酸メタノール水溶液
流量:0.2mL/分
注入量:2μL
カラム温度:40℃
検出器:ESI-Posi-SIMモード
【0070】
<吸光係数の測定>
重合性化合物の単位質量あたりの吸光係数(単位:L/(g・cm))および重合開始剤のモル吸光係数(単位:L/(mol・cm))は分光光度計を用いて測定した。各素材をアセトニトリルにて0.0001質量/体積%に希釈しサンプル液とした。調液したサンプル液を石英セル(光路長1cm)に充填し分光光度計にて吸光度および吸収係数を測定した。測定波長域は250~400nmで、測定間隔は1nm、掃引速度は50nm/分とした。測定手順等に関する詳細はJISK0115:2004に準拠した。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定した。合計6回の算術平均値を評価値として採用した。結果は表4~7に示した。
【0071】
<膜厚安定性の評価>
シリコンウエハ上に、特開2014-024322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着層を形成した。次いで、密着層の表面に、インプリント用硬化性組成物をスピンコートし、80℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、密着層上にインプリント用硬化性組成物層(膜)を形成した。形成される膜の厚さはおよそ100nmであった。膜形成直後の膜厚(FT1)をエリプソメータにより測定した。さらに、24時間23℃、1気圧下(湿度は40~60%RHに管理)に放置した後、再度膜厚(FT2)を測定し、その膜厚差ΔFT(=|FT1-FT2|)を算出した。
A:ΔFT≦5.0nm
B:5.0nm<ΔFT≦10nm
C:10nm<ΔFT≦20nm
D:ΔFT>20nm
【0072】
<離型力の評価>
シリコンウエハ上に、特開2014-024322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着層を形成した。さらに、密着層上にインプリント用硬化性組成物をスピンコートし、80℃のホットプレートを用いて1分間加熱することで膜厚80nmのパターン形成層を得た。次に、パターン形成層に、石英モールド(線幅20nm、深さ50nmのラインパターン)をHe雰囲気下(置換率90%以上)で押接し、インプリント用硬化性組成物をモールドに充填した。押印後10秒が経過した時点で、モールド側から高圧水銀ランプを用い、照射光源の極大波長:365nm、露光照度:10mW/cm2、露光時間:15秒(露光量150mJ/cm2)の条件で露光した後、モールドを剥離することでパターン形成層にパターンを転写させた。剥離時に必要な離型力をロードセルを用いて測定した。
A:離型力≦15N
B:15N<離型力≦20N
C:20N<離型力≦25N
D:離型力>25N
【0073】
<解像性の評価>
シリコンウエハ上に、特開2014-024322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着層を形成した。さらに、密着層上にインプリント用硬化性組成物をスピンコートし、80℃のホットプレートを用いて1分間加熱することで膜厚80nmのパターン形成層を得た。次に、パターン形成層に、石英モールド(線幅25nm、深さ75nmのラインパターン)をHe雰囲気下(置換率90%以上)で押接し、インプリント用硬化性組成物をモールドに充填した。押印後10秒が経過した時点で、モールド側から高圧水銀ランプを用い、照射光源の極大波長:365nm、露光照度:10mW/cm2、露光時間:15秒(露光量150mJ/cm2)の条件で露光した後、モールドを剥離することでパターン形成層にパターンを転写させた。転写したパターンのパターン倒れ有無を走査型電子顕微鏡(SEM)観察にて確認した。
A:パターン倒れもパターンエッジ荒れも確認されなかった
B:パターン倒れはなかったがパターンエッジ荒れが確認された
C:パターン転写領域内の一部で倒れが確認された
D:パターン転写領域の全域にわたり倒れが確認された
【0074】
<弾性率の測定>
シリコンウエハ上に、特開2014-024322号公報の実施例6に示す密着層形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着層を形成した。さらに、密着層上にインプリント用硬化性組成物をスピンコートし、80℃のホットプレートを用いて1分間加熱することで未硬化膜を得た。次に、石英基板をHe雰囲気下(置換率90%以上)で、インプリント用硬化性組成物に押接し、10秒が経過した時点で、モールド側から高圧水銀ランプを用い、照射光源の極大波長:365nm、露光照度:10mW/cm2、露光時間:30秒(露光量300mJ/cm2)の条件で露光した後、石英基板を剥離することで平坦な硬化膜(膜厚300nm)を得た。
得られた硬化膜を2cm角程度に切り出し、トライポインデンター(Hysitron社製TI-950)を用いて弾性率を測定した。圧子はダイヤモンド製キューブコーナー圧子 (曲率半径150 nm)を用いて最大荷重3μNで、5秒かけて一定の荷重速度で押込み、2秒間荷重を保持した後、5秒間かけて一定の荷重速度で除荷して、荷重除荷曲線を得た (n=10)。
弾性率は、Oliver-Pharr法にて算出した。
【0075】
<加工耐性の評価>
弾性率の測定と同様の方法でインプリント用硬化性組成物の薄膜(膜厚約300nm)を得た。
上記サンプルを、エッチング装置(APPLIED MATERIALS社製 Centura-DPS)に導入し、下記条件にてエッチングを行った。
エッチング条件:
ガス圧:10mTorr(1Torrは133.322Paである。)
ガス種(流量):O2(10sccm)(1sccm=1.69x10-4Pa・m3/secである)
ソース電圧(W):50W
バイアス電圧(W):100W
エッチング時間:20sec, 40sec,60sec
上記サンプルの膜厚をエリプソメータにより測定し、エッチング前後の膜厚変化率からエッチングレート(単位はnm/分)を算出した。
A: 10nm/分未満
B: 10nm/分以上 100nm/分未満
C: 100nm/分以上 200nm/分未満
D: 200nm/分以上
【0076】
<表面張力の差の評価>
インプリント用硬化性組成物の全固形分の表面張力(γ1)と、インプリント用硬化性組成物の全固形分から離型剤を除いた成分の表面張力(γ2)の差(Δγ=|γ1-γ2|)を測定した。各サンプルの表面張力は、協和界面科学(株)製、表面張力計 SURFACE TENS-IOMETER CBVP-A3を用い、ガラスプレートを用いて23℃で行った。単位は、mN/mで示した。1水準につき2つの試料を作製し、それぞれ3回測定した。合計6回の算術平均値を評価値として採用した。結果を、表1~3に「Δγ」として示した。
【0077】
【表1】
【表2】
実施例15の溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)とγ-BL(γ-ブチロラクトン)とを体積比において90:10で含む混合溶液を用いた。なお、溶剤のEL(実施例12)は乳酸エチルである。
【表3】
【表4】
A-1~A-6の含シリコーンアクリレート樹脂は、2-ヒドロキシエチルアクリレートの側鎖のヒドロキシ基に、シリコーン樹脂が導入されたグラフト構造を有する。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0078】
上記の結果から分かるとおり、本発明の構成を有する実施例のインプリント用硬化性組成物は、特定の光重合開始剤を特定量、特定の透光性重合性化合物を特定量、および離型剤を特定量で含有し、その結果、離型力および解像性において、B以上の優れた性能を示した(実施例1~16)。さらに、膜厚の安定性、弾性率および加工耐性についても、B以上の優れた性能を示した(実施例1~16)。
【0079】
これに対して、離型剤が所定量を超える比較例1、あるいはその量を超えかつフッ素原子を含む界面活性剤が離型剤として用いられた比較例8の組成物では、離型力はAであるものの、解像性がDと劣り、パターン転写領域の全域にわたり倒れが確認された。逆に離型剤が少なすぎる比較例2では、解像性はAであるが、離型力が劣り、Dの結果であった。
重合性化合物において、その吸光係数Aの最大値が上限値を上回る、透光性に劣るものを用いた例では(比較例3~5)では、解像性がCと劣り、パターン転写領域内の一部で倒れが確認された。また、これらの比較例では、加工耐性もC,Dの結果であり、エッチングレジストとしての性能に劣るものであった。
比較例6では、吸光係数Aの最大値が特定の範囲内の透光性重合性化合物が用いられており、その量が規定を下回っており、離型力はBであったが、解像性がCと劣る結果であった。
比較例7では、吸光係数Aの最大値は特定の範囲内にあるが、その分子量が小さすぎる重合性化合物を用いている。このインプリント用硬化性組成物では、解像性がBであったが、膜離型力がCとなり、技術要求を満足できるものではなかった。さらに、膜厚安定性もDと劣っていた。
比較例9、10では、重合開始剤として吸光係数Bの最大値が規定の範囲を下回るものが用いられており、解像性が劣る結果となった。
【0080】
上記各実施例のインプリント用硬化性組成物を用いて特表2005-533393号公報に記載のステップ・アンド・リピート方式でのインプリントを実施したところ、解像性と離型性を両立した良好なパターン転写を行うことが可能であった。
【符号の説明】
【0081】
1 基板
2 インプリント用硬化性組成物層
2a パターニングされたインプリント用硬化性組成物(インプリント層)
3 モールド(テンプレート)
3a、3b モールドの元の位置
3x モールド凸部
4a 押接方向
4b 離型方向
5a、5b パターン(凹部)