(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-25
(45)【発行日】2022-04-04
(54)【発明の名称】不織布製造方法及び設備
(51)【国際特許分類】
D04H 1/728 20120101AFI20220328BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20220328BHJP
D01D 5/04 20060101ALI20220328BHJP
【FI】
D04H1/728
D04H1/425
D01D5/04
(21)【出願番号】P 2020548031
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2019027777
(87)【国際公開番号】W WO2020059267
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2018174076
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸助
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-500981(JP,A)
【文献】特開2014-201849(JP,A)
【文献】特表2010-518265(JP,A)
【文献】特開2009-191408(JP,A)
【文献】特開2011-1678(JP,A)
【文献】特表2007-505224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00-13/02
D04H1/00-18/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと溶媒とを含有する帯電させた溶液を、前記溶液と逆極性に帯電させたまたは電位をゼロにした長尺のコレクタに誘引することにより、前記ポリマーで形成されたファイバを不織布として捕集する不織布製造方法において、
長尺の前記コレクタを長手方向に移動させ、
前記コレクタの下に配された第1の前記溶液に接しながら回転し、導体で形成された第1回転導体により、前記第1の溶液を帯電することにより、移動中の前記コレクタに第1の前記ファイバで構成された第1層を形成する第1層形成工程と、
前記コレクタの移動方向における前記第1の溶液よりも下流で前記コレクタの下に配された第2の前記溶液に接しながら回転し、導体で形成された第2回転導体により、前記第2の溶液を帯電することにより、第2の前記ファイバで構成された第2層を前記第1層に重ねた状態に形成する第2層形成工程と、
前記第1層と前記第2層とを備える前記不織布を前記コレクタから剥がす剥ぎ取り工程と
を有し、
前記第1の溶液は前記第2の溶液よりも前記ポリマーの濃度が高い不織布製造方法。
【請求項2】
前記第1の溶液と前記第2の溶液との前記濃度の差は少なくとも1%である請求項1に記載の不織布製造方法。
【請求項3】
前記第1回転導体と前記第2回転導体とは、前記コレクタからの距離が同じである請求項1または2に記載の不織布製造方法。
【請求項4】
前記第1回転導体と前記第2回転導体とは、前記コレクタとの電位差が同じである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項5】
前記第1回転導体は、回転中心から周縁までの距離が一定である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項6】
前記第1回転導体は、周縁に複数の突起を備え、前記複数の突起の頂点は回転中心からの距離が同じである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項7】
前記ポリマーは、セルローストリアセテートと、セルロースジアセテートと、セルロースプロピオネートと、セルロースブチレートと、セルロースアセテートプロピオネートと、ニトロセルロースと、エチルセルロースと、カルボキシメチルエチルセルロースとの少なくともいずれかである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸メチル、アセトンの少なくともいずれかを含有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の不織布製造方法。
【請求項9】
ポリマーと溶媒とを含有する帯電させた溶液を、前記溶液と逆極性に帯電させたまたは電位をゼロにしたコレクタに誘引することにより、前記ポリマーで形成されたファイバを不織布として捕集する不織布製造設備において、
長尺の前記コレクタと、
前記コレクタを長手方向に移動させる移動機構と、
第1の前記溶液が収容され、前記コレクタの下に配される第1容器と、
前記第1の溶液に接しながら回転し、導体で形成された第1回転導体と、
第2の前記溶液が収容され、前記コレクタの移動方向における前記第1容器よりも下流、かつ、前記コレクタの下に配される第2容器と、
前記第2容器内の前記第2の溶液に接しながら回転し、導体で形成された第2回転導体と、
前記第1回転導体及び前記第2回転導体と、前記コレクタとに電位差を生じさせる電位差発生器と、
を備え、
前記第1の溶液は前記第2の溶液よりも前記ポリマーの濃度が高い不織布製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布製造方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば数nm以上1000nm未満のナノオーダの径を有するいわゆるファイバにより形成されている不織布がある。こうした極めて細いファイバで形成されている不織布の製造方法としては、電界紡糸法(エレクトロスピニング法、あるいはエレクトロデポジション法と呼ばれることもある)を利用した方法が知られている。この方法は、例えばノズルとコレクタと電圧印加部とを有する電界紡糸装置を用いて行われ、電圧印加部によりノズルとコレクタとの間に電圧を印加する。これにより、例えば、ノズルをプラス、コレクタをマイナスに帯電させる。電圧を印加した状態で、ファイバの素材(以下、ファイバ材と称する)が溶媒に溶解した溶液を、ノズルの開口から出す。ノズルから出た溶液は、コレクタに誘引される間にファイバを形成し、このファイバがコレクタ上に不織布として捕集される。
【0003】
ノズルを用いた場合には、上記の開口で、溶液に溶けていたファイバ材が固化してしまい、開口が閉塞してしまうことがある。そのため、ファイバを連続して形成する時間には限界がある。その結果、不織布を連続して製造するにも限界がある。
【0004】
コレクタに形成した不織布を使用に供する場合には、不織布をコレクタから剥ぎ取る。しかし、不織布を剥ぎ取る場合に、不織布とコレクタとの接着力が強すぎ、そのため、一部がコレクタに剥ぎ残ったり、不織布が破断してしまうことがある。こうした剥ぎ取り性に関して、例えば特許文献1には、電界紡糸法において、溶液が飛び出す部分とコレクタとの間の距離を調整することにより、不織布とコレクタとの接着力を調整できることが記載されている。特許文献1は、回転軸と円板とからなる回転部材を、ファイバ材が溶けている溶液に接触させ、回転部材を回転させることにより、円板の側面全体に溶液がコーティングされた状態にしている。また、回転部材から溶液を飛翔させる手法は、特許文献2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-227629号公報
【文献】特表2007-505224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2の手法は、ノズルを用いないので、ファイバを長時間の連続できる点でメリットがある。しかし、特許文献1及び特許文献2の手法において、特許文献1に記載されるようにコレクタからの剥ぎ取り性を向上するために、回転部材とコレクタとの距離を調整する場合には、目的とする不織布を得るための条件を見つけることが容易ではない。回転部材とコレクタとの距離は、ファイバの径、及び、不織布におけるファイバ同士の密着力などに大きな影響があるからである。このように、剥ぎ取り性を向上させつつ目的とする不織布を得るための条件を見つけることは、特許文献1及び特許文献2の手法においても容易ではない。
【0007】
そこで本発明は、コレクタからの剥ぎ取り性を向上し、かつ、不織布をより長時間連続して製造する不織布製造方法及び設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の不織布製造方法は、第1層形成工程と、第2層形成工程と、剥ぎ取り工程とを有し、長尺のコレクタを長手方向に移動させ、ポリマーと溶媒とを含有する帯電させた溶液を、この溶液と逆極性に帯電させたまたは電位をゼロにしたコレクタに誘引することにより、ポリマーで形成されたファイバを不織布として捕集する。第1層形成工程は、コレクタの下に配された第1の溶液に接しながら回転し、導体で形成された第1回転導体により、第1の溶液を帯電することにより、移動中のコレクタに第1のファイバで構成された第1層を形成する。第2層形成工程は、コレクタの移動方向における第1の溶液よりも下流でコレクタの下に配された第2の溶液に接しながら回転し、導体で形成された第2回転導体により、第2の溶液を帯電することにより、第2のファイバで構成された第2層を第1層に重ねた状態に形成する。剥ぎ取り工程は、第1層と第2層とを備える不織布をコレクタから剥がす。第1の溶液は第2の溶液よりもポリマーの濃度が高い。
【0009】
第1の溶液と第2の溶液との濃度の差は少なくとも1%であることが好ましい。
【0010】
第1回転導体と第2回転導体とは、コレクタからの距離が同じであることが好ましい。
【0011】
第1回転導体と第2回転導体とは、コレクタとの電位差が同じであることが好ましい。
【0012】
第1回転導体は、回転中心から周縁までの距離が一定であることが好ましい。
【0013】
第1回転導体は、周縁に複数の突起を備え、複数の突起の頂点は回転中心からの距離が同じであることが好ましい。
【0014】
上記ポリマーは、セルローストリアセテートと、セルロースジアセテートと、セルロースプロピオネートと、セルロースブチレートと、セルロースアセテートプロピオネートと、ニトロセルロースと、エチルセルロースと、カルボキシメチルエチルセルロースとの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0015】
上記溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸メチル、アセトンの少なくともいずれかを含有することが好ましい。
【0016】
本発明の不織布製造設備は、長尺のコレクタと、移動機構と、第1容器と、第1回転導体と、第2容器と、第2回転導体と、電位差発生器とを備え、ポリマーと溶媒とを含有する帯電させた溶液を、この溶液と逆極性に帯電させたまたは電位をゼロにしたコレクタに誘引することにより、ポリマーで形成されたファイバを不織布として捕集する。移動機構は、コレクタを長手方向に移動させる。第1容器は、第1の溶液が収容され、コレクタの下に配される。第1回転導体は、第1の溶液に接しながら回転し、導体で形成されている。第2容器は、第2の溶液が収容され、コレクタの移動方向における第1容器よりも下流、かつ、コレクタの下に配される。第2回転導体は、第2容器内の第2の溶液に接しながら回転し、導体で形成されている。電位差発生器は、第1回転導体及び第2回転導体と、コレクタとに電位差を生じさせる。上記の第1の溶液は上記の」第2の溶液よりもポリマーの濃度が高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コレクタからの剥ぎ取り性を向上し、かつ、不織布をより長時間連続して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】第1回転導体及び第2回転導体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である不織布製造設備10の概略図であり、不織布11を連続的に製造するためのものである。不織布11は、例えば、ワイピングクロス、フィルタ、あるいは傷口などにあてる医療用不織布(ドレープと呼ばれる)などとして利用可能である。
【0020】
不織布11は径が互いに異なる2種類のナノファイバ12で形成されており、第1層11aと第2層11bとが厚み方向に重なった2層構造となっている。第1層11aは、相対的に径が大きい一方の第1のファイバ12aで構成されている。第2層11bは、相対的に径が小さい第2のファイバ12bで構成されている。なお、第1のファイバ12aと第2のファイバ12bとを区別しない場合には、これらをまとめてナノファイバ12と称する。
【0021】
第1層11aは、後述の帯電ベルト13の表面に直接形成され、第2層11bは第1層11aの帯電ベルト13側とは反対側の表面に形成される。この例では第1層11aに重なる層は、第2層11bの1層のみであるが、第2層11bの表面にさらに別の層が形成されていてもよい。不織布はこのように2層構造に限定されず、例えば、径が異なる3種以上のナノファイバ12で形成されていてもよい。なお、帯電ベルト13は、ナノファイバ12を不織布11として捕集するコレクタの一例である。帯電ベルト13は、長尺に形成されており、この例では環状の無端ベルトとされ、長手方向に移動する。製造された不織布11は、この帯電ベルト13から剥ぎ取られた後に、前述のような各用途に用いられる。
【0022】
第1のファイバ12aは、第2のファイバ12bの径をDbとするときに、1×Dbより大きく3×Db以下の範囲内の径Daをもつ。第2のファイバ12の径Dbは、50nm以上3000nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
ナノファイバ12は電界紡糸法により、ナノファイバ材であるポリマーが溶媒に溶けた溶液から形成される。第1のファイバ12aを形成する溶液を第1の溶液16とし、第2のファイバ12bを形成する溶液を第2の溶液17とする。不織布製造設備10は、第1の溶液16を収容する第1容器21と、第2の溶液17を収容する第2容器22とを備える。第1容器21と第2容器22とは、帯電ベルト13の下に配されている。第2容器22は、帯電ベルト13の移動方向における第1容器21よりも下流に配される。したがって、第2の溶液17は、帯電ベルト13の移動方向における第1の溶液16よりも下流に位置する。
【0024】
第1の溶液16と第2の溶液17とが含有するポリマーとしては、熱可塑性樹脂が好ましく、中でも、セルロース系ポリマーであることが好ましい。セルロース系ポリマーとしては、セルローストリアセテート(以下、TACと称する)と、セルロースジアセテートと、セルロースプロピオネートと、セルロースブチレートと、セルロースアセテートプロピオネートと、ニトロセルロースと、エチルセルロースと、カルボキシメチルエチルセルロースとの少なくともいずれかであることが好ましい。これらのポリマーを用いた場合には、比較的蒸発しやすい溶媒を用いることができるから、形成できるナノファイバ12の径の自由度が大きい。すなわち、径が小さい(細い)ナノファイバ12を他のポリマーと同様に形成することができるし、径が大きい(太い)ナノファイバ12も形成しやすい。そのため、用途に応じた不織布11が製造しやすい。また、これらのポリマーを用いた場合には、帯電ベルト13からの後述の剥ぎ取り性の向上がより顕著である。
【0025】
第1の溶液16と第2の溶液17とが含有するポリマーは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。本例では、第1の溶液16と第2の溶液17とには同じポリマーを用いている。
【0026】
第1の溶液16と第2の溶液17とが含有する溶媒は、ファイバ材としてのポリマーを溶かすことができる液体の化合物であれば特に限定されない。ポリマーが、上記のセルロース系ポリマーである場合には、比較的低温でも蒸発しやすい溶媒を用いる方が、ナノファイバ12の径を細くも太くも調整しやすい観点では好ましい。このような溶媒としては、ジクロロメタン(以下、DCMと称する)と、クロロホルムと、酢酸メチルと、アセトンとの少なくともいずれが挙げられる。また、溶媒は、複数の化合物の混合物であってもよい。混合物としては、DCMとクロロホルムと酢酸メチルとアセトンとの少なくともいずれかひとつに、メタノール(以下、MeOHと称する)と、エタノールと、N,N-ジメチルホルムアミドとのいずれかを混合した混合物が好ましい。なお、後述のように飛翔させた第1の溶液16と第2の溶液17との蒸発速度を調整しやすい観点では、溶媒は混合物である方が好ましい。
【0027】
第1の溶液16と第2の溶液17との溶媒は、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。第1の溶液16と第2の溶液17との溶媒は、共通成分を含有していることが好ましい。本例では、第1の溶液16と第2の溶液17との溶媒を、混合物とし、互いに同じ処方(成分、及び各成分の配合比率)としている。
【0028】
第1の溶液16は、第2の溶液17よりもポリマーの濃度が高い。第1の溶液16と第2の溶液17とのポリマーの濃度の差は少なくとも1%であること、すなわち1%以上であることが好ましい。ポリマーの濃度の差は、1%以上10%以下の範囲内であることがより好ましく、1%以上5%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0029】
不織布製造設備10は、導体で形成された第1回転導体23及び第2回転導体24を備える。第1回転導体23及び第2回転導体24は、第1の溶液16及び第2の溶液17を帯電させ、糸状に飛翔させるためのものである。第1回転導体23と第2回転導体とは回転機構27を有する。第1回転導体23は、上部が開放された第1容器21に設けられる。第1回転導体23は、回転機構27aにより回転する回転軸23aと、回転軸23aに固定された真円の円板23bとを有する。円板23bの中央には円形の開口23oが形成されており、開口23oと回転軸23aとは嵌め合された状態で固定されている。これにより、円板23bは回転軸23aと一体に周方向に回転する。円板23bは、少なくとも周縁の一部が第1の溶液16の液面から出た状態に、配される。これにより、第1回転導体23は第1の溶液16に接しながら、回転する。回転することにより、第1の溶液16の液面から出た円板23bの少なくとも周縁は第1の溶液16が付着した状態になる。
【0030】
回転軸23aと円板23bとの両方が導体で形成されており、回転軸23aが電圧印加部28に接続している。電圧印加部28により電圧を印加された場合に、第1の溶液16は、第1の極性に帯電した状態となる。
【0031】
この例の第1回転導体23の個数は、1個であるが、帯電ベルト13の移動方向に複数を並べた状態に配してもよい。第1回転導体23を複数設ける場合には、ひとつの第1容器21に、複数の第1回転導体23を配してもよいし、帯電ベルト13の移動方向に複数の第1容器21を並べた状態に設け、各第1容器21に第1回転導体23を設けてもよい。
【0032】
第2回転導体24は、上部が開放された第2容器22に設けられる。第2回転導体24は、第1回転導体23と同様に構成されており、すなわち、回転機構27aにより回転する回転軸24aと、回転軸24aに固定された真円の円板24bとを有する。円板24bの中央には円形の開口24oが形成されており、開口24oと回転軸24aとは嵌め合された状態で固定されている。これにより、円板24bは回転軸24aと一体に周方向に回転する。円板24bは、少なくとも周縁の一部が第2の溶液17の液面から出た状態に、配される。これにより、第2回転導体24は第2の溶液17に接しながら、回転する。回転することにより、第2の溶液17の液面から出た円板24bの周縁は第2の溶液17が付着した状態になる。
【0033】
回転軸24aと円板24bとの両方が導体で形成しており、回転軸24aが電圧印加部28に接続している。電圧印加部28に対して、回転軸24aと回転軸23aとは並列接続となっている。電圧印加部28により電圧が印加された場合には、液面から出た円板24bの周縁に付着している第2の溶液17も、第1の溶液16と同極性である第1の極性に帯電した状態となる。
【0034】
第1回転導体23と第2回転導体24との素材である上記導体としては、第1の溶液16及び第2の溶液17に用いられている溶媒に対して耐食性があり、かつ、導電性のある金属材料を用いる。後述の実施例では、第1の溶液16及び第2の溶液17の溶媒成分にDCMを用いており、そのため、DCMに対する耐食性と導電性との両観点から、上記導体として、ステンレス鋼を用いている。上記導体は、ステンレス鋼に限定されず、例えば、米国ヘインズ社のハステロイ(登録商標)、チタン合金、鉄鋼、銅を好ましく用いることができる。なお、上記ハステロイ(登録商標)はニッケル基合金(ニッケルにモリブデン及び/またはクロムなどを加えた合金)である。
【0035】
この例では、1つの第2容器22に、3個の第2回転導体24を設けており、これらは帯電ベルト13の移動方向に並んで配してある。ただし、第2容器22を帯電ベルト13の移動方向に3個並べた状態に設け、各第2容器22に第2回転導体24を設けてもよい。このように、1つの第2容器22に設ける第2回転導体24の個数は、特に限定されない。また、第2回転導体24の個数も本例の3個に限定されず、1個、2個、または4個以上であってよい。
【0036】
電圧印加部28が回転軸23a,24aに接続している場合には、回転軸23a,24aと円板24bとは電気的に接続していればよい。したがって、回転軸23a,24aと円板24bとの各全体が導体で形成されている必要はない。
【0037】
不織布製造設備10は、さらに、捕集部32と、前述の電圧印加部28とを備える。捕集部32は、前述の帯電ベルト13と、移動機構33と、巻取部34と、ローラ35とを有する。帯電ベルト13は、金属製の帯状物を環状に形成したものである。帯電ベルト13は、電圧印加部28によって電圧が印加されることにより帯電する素材から形成されており、例えばステンレス製とされる。
【0038】
移動機構33は、一対のローラ37,38と、モータ41などから構成されている。帯電ベルト13は、一対のローラ37,38に水平に掛け渡されている。一方のローラ37,38のそれぞれの軸には紡糸室42の外に配されたモータ41が接続されており、ローラ37,38を所定速度で回転させる。この回転により帯電ベルト13は長手方向に移動し、ローラ37とローラ38との間で循環する。本実施形態においては、帯電ベルト13の移動速度は、10cm/時としているが、これに限定されない。なお、一対のローラ37,38の一方のみをモータ41により回転させてもよい。
【0039】
電圧印加部28は、第1回転導体23及び第2回転導体24と、帯電ベルト13とに電位差を生じさせる電位差発生器の一例である。電圧印加部28は、第1回転導体23及び第2回転導体24と、帯電ベルト13とに接続しており、これらに電圧を印加する。これにより、第1回転導体23及び第2回転導体24を第1の極性に帯電させ、帯電ベルト13を第1の極性と逆極性の第2の極性に帯電させる。第1の溶液16は、帯電した第1回転導体23の円板23bに接触することにより第1の極性に帯電する。そして、回転している円板23bに付着した第1の溶液16は、第1の溶液16の液面よりも上の位置で、第2の極性に帯電している帯電ベルト13に誘引され、帯電ベルト13へ向けて糸状に飛翔する。第2の溶液17も同様に、帯電した第2回転導体24の円板24bに接触することにより第1の溶液16と同じく第1の極性に帯電し、帯電した状態で第2の溶液17の液面上の円板24bから帯電ベルト13へ向けて糸状に飛翔する。
【0040】
第1回転導体23及び第2回転導体24から第1の溶液16及び第2の溶液17を飛翔させるから、長時間安定的にナノファイバ12を形成することができる。例えば、ノズル方式のように固化したポリマーによってノズルが閉塞されることはない。また、第1回転導体23及び第2回転導体24は、第1容器21及び第2容器22に収容されている第1の溶液16及び第2の溶液17に繰り返し浸されることにより、ポリマーの固化が抑えられ、微量に固化した場合でも溶解する。長時間安定的にナノファイバ12を形成できるから、不織布11をより長尺に形成したり、厚みをより大きくした不織布11を製造することができる。
【0041】
移動中の帯電ベルト13には、まず、帯電ベルト13の移動方向において第2の溶液17よりも上流側に位置する第1の溶液16から形成された第1のファイバ12aが捕集され、堆積し、第1層11aが形成される(第1層形成工程)。次に、第2の溶液17から形成された第2のファイバ12bが第1層11aに捕集され、堆積し、第2層11bは第1層11aに重ねた状態に形成される(第2層形成工程)。このようにして、第1のファイバ12a及び第2のファイバ12bが不織布11として捕集される。なお、
図1においては、一対のローラ37,38のうち、紙面左側の一方をローラ37とし、右側の他方をローラ38としており、ローラ37からローラ38へ向かう帯電ベルト13に対して、不織布11を形成している。
【0042】
第2層11bは、不織布11としての目的とする機能を担う層である。そのため、第2層11bを構成する第2のファイバ12bは、目的とする機能に応じた径に設定する。例えば、目的とする機能に応じて例えば空隙率がより大きな不織布11とする場合には、第2層11bを構成する第2のファイバ12bをより細く形成する。しかし、帯電ベルト13に接したナノファイバ12が細いほど、不織布と帯電ベルトの接着力が強くなり、そのため、不織布を後述の通り剥ぎ取る場合に不織布が破断したり、帯電ベルト13に剥ぎ残りが発生しやすい。
【0043】
この点、本例では、第1の溶液16は、第2の溶液17よりもポリマーの濃度が高くされており、そのため、第1のファイバ12aが、第2のファイバ12bよりも太く形成される。その結果、第1のファイバ12aで第1層11aが帯電ベルト13に接した状態に形成されるから、帯電ベルト13との接着力が低減された不織布11が得られる。したがって、不織布11を剥ぎ取る場合に、不織布11はより弱い力で剥ぎ取ることができ、不織布11は破断が抑えられ、帯電ベルト13上の剥ぎ残りも抑えられる。このように、第2の溶液16よりもポリマーの濃度が高い第1の溶液16を、第2の溶液17よりも先に紡糸することで、以上のように剥ぎ取り性が向上する。この方法によると、例えば後述の距離L1を調整しなくても、予め第1の溶液16を第2の溶液17よりも高い濃度に調製しておくだけで、剥ぎ取り性が向上する。
【0044】
剥ぎ取り性を向上させる目的のみで第1層11aを形成する場合には、上記のように第2層11bは不織布11としての目的とする機能を担ういわゆる不織布本体であるから、第2層11bが不織布11のうちの大部分を占める厚みとされる。剥ぎ取り性の向上目的の観点では、第1層11aは、少なくとも0.02mmの厚みで、すなわち0.02mm以上の厚みで形成すれば確実であり、後述の実施例では0.02mm以上0.2mm以下の範囲内にしてある。
【0045】
第1層11aには、剥ぎ取り性の向上に加えて、不織布11としての目的とする機能を担わせることもできる。その場合には、第1層11aの厚みは、第2層11bと同じ、または第2層11bよりも大きくしてもよい。
【0046】
第1の溶液16と第2の溶液17とのポリマーの濃度の差が少なくとも1%であるから、上記の剥ぎ取り性の向上は、より確実である。第1の溶液16と第2の溶液17との溶媒は、共通成分を含有していることから、第1のファイバ12aと第2のファイバ12bとを形成する条件を互いに同じくしても、第1のファイバ12aと第2のファイバ12bとを径が互いに異なる態様に形成しやすい。本例ではさらに、互いに同じ処方、すなわち成分及び各成分の配合比率が等しい混合物を、第1の溶液16と第2の溶液17との溶媒にしているから、その効果はより顕著である。
【0047】
第1回転導体23と第2回転導体24のそれぞれとは、電圧印加部28に対し並列接続となっている。これにより円板23bと円板24bとは電位が等しくなるから、第1の溶液16と第2の溶液17との電位も等しくなり、そのため、帯電ベルト13との電位差が互いに等しくなる。その結果、第1の溶液16と第2の溶液17とのポリマーの濃度差がより確実にファイバ12の径の差として作用する。
【0048】
ローラ35は、帯電ベルト13と巻取部34との間に設けられ、巻取部34に向かう不織布11を支持する。これにより、不織布11は、帯電ベルト13から一定の位置で安定的に剥ぎ取られる(剥ぎ取り工程)。前述の紡糸室42は、例えば、第1容器21と、第2容器22と、捕集部32の一部などを収容している。紡糸室42は、密閉可能に構成されることにより溶媒ガスなどが外部に洩れることを防止している。溶媒ガスは、第1の溶液16及び第2の溶液17の溶媒が気化したものである。
【0049】
巻取部34は巻取軸45を有する。巻取軸45はモータ(図示無し)により回転され、これにより、巻取軸45にセットされる巻芯46に、不織布11が巻き取られる。連続的に製造されることにより得られた長尺の不織布11は、用途に応じたサイズ及び形状にカットされ、使用に供される。
【0050】
電圧印加部28により印加する電圧は、5kV以上100kV以下の範囲内であることが好ましい。5kV以上であることにより、5kV未満である場合に比べて、帯電ベルト13に第1の溶液16及び第2の溶液17が誘引されやすい。100kV以下であることにより、100kVよりも大きい場合に比べて、第1回転導体23及び第2回転導体24と帯電ベルト13との間の紡糸空間において、第1の溶液16及び第2の溶液17が液滴を形成してしまうことがより確実に抑制される。そのため、不織布へのビーズ(微小球)の混入が防がれる。
【0051】
電圧印加部28により印加する電圧は、10kV以上80kV以下の範囲内であることがより好ましく、20kV以上60kV以下の範囲内であることがさらに好ましく、30kV以上50kV以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0052】
本実施形態では第1回転導体23及び第2回転導体24をプラス(+)に帯電させ、帯電ベルト13をアースすることにより電位をゼロにしているが、帯電ベルト13は第1回転導体23及び第2回転導体24とは逆極性のマイナス(-)に帯電させてもよい。また、第1回転導体23及び第2回転導体24をマイナス、帯電ベルト13をマイナスに帯電させてもよい。また、ローラ37からローラ38へ向かう帯電ベルト13の不織布11が形成される表面とは反対側の表面にイオン風を吹き付けるイオン風供給装置を電位差発生器として設けてもよい。イオン風供給装置は、電圧印加部28の代わりに用いてもよいし、電圧印加部28と併用してもよい。これにより、帯電ベルト13を第2の極性に帯電させたり、電位調整を行うことができる。
【0053】
第1回転導体23及び第2回転導体24とは、帯電ベルト13からの距離L1(
図2参照)が、互いに等しいことが好ましく、本例でもそのようにしている。距離L1は、この例では、円板23b,24bと、帯電ベルト13との距離である。なお、
図2においては、距離L1を第1回転導体23のみで示してあるが、第2回転導体24についても同じである。第1回転導体23及び第2回転導体24とは距離L1が互いに等しいから、帯電ベルト13との電位差も互いに等しくなる。その結果、第1の溶液16と第2の溶液17とのポリマーの濃度差がより確実にファイバ12の径の差として作用する。
【0054】
距離L1は、ファイバ材であるポリマーと溶媒26との種類、及び、第1の溶液16と第2の溶液17とにおけるポリマーの濃度等によって適切な値が異なるが、50mm以上300mm以下の範囲内が好ましく、本実施形態では150mmとしている。
【0055】
第1回転導体23は、
図2に示すように、第1の溶液16の飛翔元である円板23bの一部が、第1容器21に収容されている第1の溶液16の液面から出た状態に、配されていればよい。これにより、第1の溶液16が回転する円板23bに連続して塗布され、かつ、帯電ベルト13との電位差が確実に維持された状態となるから、連続した飛翔がより確実になる。第2回転導体24についても同様である。
【0056】
ここで、円板23bの径をD1とし、第1の溶液16の液面から円板23bの最も上の位置までの距離をD2とし、液面から円板23bの最も下の位置までの距離をD3とする。距離D3を径D1で除算した比D3/D1は、0.001以上1未満の範囲内であることが好ましい。比D3/D1が0.001以上であることにより0.001未満である場合に比べて、第1のファイバ12aが形成されるに十分な第1の溶液16が円板23bに供給される。比D3/D1が1未満であることにより、1以上である場合に比べて、単位時間あたりのナノファイバ12の形成量が大きく、かつ、帯電ベルト13との電位差が確実に維持された状態となる。
【0057】
比D3/D1は、0.01以上0.8以下の範囲内であることがより好ましく、0.1以上0.7以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.3以上0.6以下の範囲内であることが特に好ましい。第2回転導体24についても同様である。
【0058】
円板23bは、前述の通り真円であるから、回転中心CRから周縁までの距離D4が一定である。そのため、回転中の円板23bと帯電ベルト13との距離は一定に維持されから、第1のファイバ12aが安定的に連続して形成される。円板24bについても同様である。
【0059】
第1回転導体23と第2回転導体24とは第1回転導体23と同様に構成されている。そこで、
図3においては、第1回転導体23を図示し、第1回転導体23について
図3を参照しながら説明し、第2回転導体24については説明を略す。
図3に示すように、第1回転導体23は、回転軸23aに円板23bが複数設けられた構成であることが、不織布11をより大きな幅に製造する観点ではより好ましい。第1回転導体23は、回転軸23aの長手方向を帯電ベルト13の幅方向に一致した状態で配されている。しかし、第1回転導体23は、回転軸23aの長手方向を帯電ベルト13の幅方向に交差(ただし直交を除く)した状態で配されてもよい。
【0060】
図3には、回転軸23aに設けられた円板23bを、便宜上5個として描いてあるが、円板23bの数は本例では15個としており、特に限定されない。円板23b同士のピッチP1は、帯電ベルト13と第1回転導体23との電位差の設定値に応じて決めることが好ましく、例えば2mm以上50mm以下の範囲内であることが好ましい。円板23bの厚みは円板23b同士が接触しない厚みとし、例えば1mmまたは1mmに満たない厚みであってもよく、本例では1mmとしている。ピッチP1が2mm以上であることにより、第1のファイバ12aが、個々の円板23bから、より確実に飛翔する。ピッチP1が50mm以下であることにより、第1層11aの厚みむらがより確実に抑えられる。なお、ピッチP1は、隣り合う円板23の厚み方向における中央同士の距離である。
【0061】
図4に示すように、回転軸23aと、複数の回転軸24aとのそれぞれとは、互いに平行とされていることが好ましく、本例でもそのようにしてある。なお、互いのなす角が5°以内であれば、平行とみなしている。また、この例では、円板23bと円板24bとが、帯電ベルト13の移動方向において直線上に並ぶ態様で第1回転導体23と複数の第2回転導体24とが配されているが、円板23bと各第2回転導体24の円板24bとは帯電ベルト13の移動方向において直線上に並んでいなくても構わない。
【0062】
帯電ベルト13の移動方向において隣り合う回転軸23a,24a同士の各ピッチP2は、互いに同じであってもよいし、異なっていても構わない。ひとつの第2容器22内に設けられている複数の回転軸24a同士のピッチP2は、互いの円板24b同士が当接しない状態に設定されている。なお、ピッチP2は、帯電ベルト13の移動方向において隣り合う回転軸23a,24aの中心間距離である。
【0063】
帯電ベルト13の移動方向において隣り合う回転軸23a,24a同士の距離D5は、帯電ベルト13と第1回転導体23及び第2回転導体24との電位差の設定値に応じて決めることが好ましく、例えば10mm以上200mm以下の範囲内であることが好ましい。距離D5が10mm以上であることにより、第1のファイバ12aは個々の円板23bから、第2のファイバ12bは個々の円板24bから、より確実に飛翔する。距離D5が200mm以下であることにより、単位時間あたりのナノファイバ12の形成量がより大きく、不織布11の生産性がよい。
【0064】
第1回転導体23及び第2回転導体24は、上記の例に限られない。例えば、円板23b,24bの代わりに、
図5に示す回転板61を用いてもよい。回転板61は、周縁に突起61aを複数備える。
図5の回転板61は、突起61aを10個備えるが、突起61aの数は10個に限られず、少なくとも2個であればよい。突起61aは、
図5に示すように、逆V字型とされている。この回転板61は、中央の開口61bに回転軸23a及び回転軸24aが挿通され、回転軸23a,24aに固定された状態で第1回転導体及び第2回転導体を構成する。
【0065】
この回転板61を備える第1回転導体及び第2回転導体を用いた場合には、突起61aの頂点61tが、第1の溶液16及び第2の溶液17の飛翔元となり、頂点61tから飛翔する。これは、頂点61tに電界が集中するからと考えられる。そのため、円板23b24bを用いた場合に比べて、印加する電圧を低く抑えることができ、省エネルギ効果がある。例えば、円板23b,24bを用いた場合の印加電圧が40kV程度であった場合に比べて、回転板61を用いた場合には20kV程度で同様のナノファイバ12を形成できることが確認されている。また、回転板61は、印加する電圧について設定できる範囲が円板23b,24bに比べて広く、そのため、形成できるナノファイバ12の径の自由度が円板23b,24bよりも大きいという利点がある。
【0066】
複数の突起61aは、回転板61が回転軸23a,24aに固定された場合の回転中心CRから頂点61tまでの距離D6が、互いに同じである。これにより、回転した場合の各頂点61tと帯電ベルト13との電位差が等しくなり、その結果、第1の溶液16と第2の溶液17とのポリマーの濃度差がより確実にファイバ12の径の差として現れる。なお、距離D6は、1mm以内の差であれば互いに同じとみなしてよい。なお、回転板61においては、
図5に示すように、最大の径を前述の径D1とする。
【実施例】
【0067】
[実施例1]~[実施例5]
不織布製造設備10を用いて長尺の不織布11を製造し、実施例1~5とした。ただし、第1回転導体23と第2回転導体24との代わりに、回転板61を回転軸23aと回転軸24aとのそれぞれに設けた第1回転導体と第2回転導体を用いた。
【0068】
第1の溶液16と第2の溶液17とのポリマーはTACである。表1の「配合比率」欄は、溶媒の第1成分と第2成分との配合比率を第1成分:第2成分の表記で示している。また、表1の「濃度」欄は、ポリマーの質量をM1とし、溶媒の質量をM2としたときに、{M1/(M1+M2)}×100で求めた値(単位は%)である。「濃度差」欄は、第1の溶液の濃度(単位は%)から、第2の溶液の濃度(単位は%)を減算した値(単位は%)である。
【0069】
いずれの実施例も、印加した電圧は40kVであり、距離L1は150mmであり、帯電ベルト13の移動速度は0.1m/minであった。
【0070】
各実施例において、不織布11の剥ぎ取り性を以下の評価方法および基準で評価した。各評価結果は表1に示す。
【0071】
不織布11を帯電ベルト13から剥ぎ取り、帯電ベルトにおける剥げ残りの有無及び程度を評価した。まず、帯電ベルト13上の不織布11の一方の端部を掴んで帯電ベルト13から引き上げる操作を行い、不織布11の長手方向における一部領域をサンプルとして剥ぎ取った。剥ぎ取ったサンプルを秤量し、その重量をW1とした。帯電ベルト13のサンプルを剥ぎ取った領域をこすり、その領域に残った不織布片及び繊維を剥ぎ残り分として採取した。剥ぎ残り分を秤量し、その重量をW2とした。そして、W2/(W1+W2)×100で求めた値(単位は%)を用いて、以下の基準で評価した。A~Cは合格であり、Dは不合格である。なお、剥ぎ取る間に不織布が破断した場合には、剥げ残りの有無及びその程度に関わらずDと評価した。
A;剥げ残りが0%であった
B;剥げ残りが0%より大きく25%未満であった。
C;剥げ残りが25%以上50%未満であった。
D;剥げ残りが50%以上であった。
【0072】
【0073】
[比較例1]
【0074】
第1の溶液16及び第1回転導体23を用いず、第2の溶液17のみで不織布を製造した。印加した電圧と、距離L1と、帯電ベルト13の移動速度とは実施例と同じとした。
【0075】
実施例と同じ方法及び基準で、剥ぎ取り性を評価した。評価結果は表1に示す。
【符号の説明】
【0076】
10 不織布製造設備
11 不織布
11a 第1層
11b 第2層
12 ナノファイバ
12a 第1のファイバ
12b 第2のファイバ
13 帯電ベルト
16,17 第1の溶液,第2の溶液
21,22 第1容器,第2容器
23,24 第1回転導体,第2回転導体
23a,24a 回転軸
23b,24b 円板
27 回転機構
28 電圧印加部
32 捕集部
33 移動機構
34 巻取部
35 ローラ
37,38 ローラ
41 モータ
42 紡糸室
45 巻取軸
46 巻芯
61 回転板
61a 突起
23o,24o,61b 開口
61t 頂点
CR 回転中心
L1,D2,D3,D4,D5,D6 距離
D1 径
P1,P2 ピッチ