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特許7047292繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220329BHJP
   B32B 5/00 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220329BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220329BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20220329BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B5/00 Z
B32B27/00 D
C08F290/06
C08G18/67 010
C08J5/24 CEY
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017178294
(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2018052113
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2016187445
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】青木 康浩
(72)【発明者】
【氏名】勝間 勝彦
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-245268(JP,A)
【文献】特開平04-227642(JP,A)
【文献】特開昭62-146930(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115778(WO,A1)
【文献】特開2010-138248(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056585(WO,A1)
【文献】特開2012-91418(JP,A)
【文献】特開2016-064968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B32B1/00-43/00
C08F283/01
290/00-290/14
299/00-299/08
C08G18/00-18/87
71/00-71/04
C08J5/04-5/10
5/24
C09J1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性組成物[i]からなる層[I]と、支持フィルム[II]とが積層されてなる繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムであって、
熱硬化性組成物[i]が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)、バインダーポリマー(B)及び熱重合開始剤(C)を含有し
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の重量平均分子量が500~50,000であることを特徴とする繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)、多価イソシアネート系化合物(a2)及びポリオール系化合物(a3)を反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることを特徴とする請求項1記載の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム。
【請求項3】
バインダーポリマー(B)が、(メタ)アクリル系樹脂(B1)であることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム。
【請求項4】
熱硬化性組成物[i]が、不飽和基を1個以上有する反応性モノマー(D)を更に含有してなることを特徴とする請求項1~いずれか記載の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム。
【請求項5】
熱硬化性組成物[i]からなる層[I]の厚みが、50μm以上であることを特徴とする請求項1~いずれか記載の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム。
【請求項6】
更に、熱硬化性組成物[i]からなる層[I]の支持フィルム[II]が積層されていない側に保護フィルム[III]が積層されてなることを特徴とする請求項1~いずれか記載の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用熱硬化性組成物に関し、更に詳しくは、炭素繊維やガラス繊維などの繊維の繊維同士の接着やかかる繊維からなる繊維シート表面の保護に用いられる熱硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチックは、炭素繊維やガラス繊維などの繊維を強化材としてプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料であり、軽量で強度の高い、つまり比強度の大きな材料として用いられている。かかる繊維強化プラスチックは、その力学物性が優れているため、スポーツ用品、航空機、人工衛星に用いられてきたが、軽量化による燃費向上の期待から、今後は自動車分野への適応拡大が期待されている。
繊維強化プラスチックのうち例えば炭素繊維強化プラスチックにおける炭素繊維は、軽量、高強度、樹脂の含浸性が要求され、炭素繊維強化プラスチックは、成形性、生産性(硬化時間の短縮、作業性)、リサイクル性、形状安定性が要求される。
【0003】
炭素繊維強化プラスチックの製造には、例えば、炭素繊維に未硬化樹脂を含浸させたシート状の中間基材であるプリプレグを用いるプリプレグ法が挙げられ、このプリプレグ法では複数枚のプリプレグを積層した後に未硬化樹脂を硬化させて炭素繊維強化プラスチックが製造される。
かかる樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられるが、熱可塑性樹脂を用いる場合は、適度な強度を保持するために、高分子量のものが使用されるので、粘度が高くなり、炭素繊維に含浸し難いという問題があり、接着性の点で課題があった。
一方、例えば特許文献1に開示された熱硬化性樹脂エポキシなどの熱硬化性樹脂は炭素繊維に含浸しやすいが、硬化後の繊維硬化物は一般に可撓性が小さいので、繊維硬化物の表面に亀裂が生じることがあり、亀裂により強度が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-201388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、このような背景下において、硬化後の繊維硬化物の可撓性が大きく、また繊維との接着性が良好である繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム、ならびに繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用熱硬化性組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を含有してなる熱硬化性組成物を用いることによって、加熱により熱硬化された後でも可撓性を有する硬化物が得られるとともに、熱硬化性組成物と繊維との接着性が良好となることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、熱硬化性組成物[i]からなる層[I]と、支持フィルム[II]とが積層されてなる繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムであって、熱硬化性組成物[i]が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)、バインダーポリマー(B)及び熱重合開始剤(C)を含有し、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の重量平均分子量が500~50,000であることを特徴とする繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムは、熱硬化性組成物[i]がウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を含有してなるので、加熱による温度上昇に伴い重合が開始され熱硬化された後でも硬化物が可撓性を有すると共に、熱硬化性組成物[i]と繊維との接着性が良好となり、繊維同士の接着性や繊維シートの表面平滑性、光沢感などの意匠性に優れる。
また、プリプレグ法において、支持フィルム[II]上に積層された熱硬化性組成物[i]からなる層[I]を繊維からなる繊維シートに積層した後に、熱プレス等により熱硬化性組成物[i]を熱硬化させることにより、短時間で繊維強化プラスチックを製造することができるので、生産性や作業性に優れる。
【0010】
さらに、本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用熱硬化性組成物は、本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムにおける層[I]を構成する組成物となり得るだけでなく、RTM(樹脂注入成形)法、ハンドレイアップ成形法、SMCプレス成形法、BMC成形法、FW(フィラメントワインディング)法、引抜成形法、ピンワインディング成形法などの繊維強化プラスチックの製造方法において利用することができ、繊維同士の接着性や繊維強化プラスチックの表面平滑性、光沢感などの意匠性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0012】
本発明の積層フィルムは、熱硬化性組成物[i]からなる層[I]と、支持フィルム[II]とが積層されてなる繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムである。
以下、熱硬化性組成物[i]について説明する。
なお、以下では、本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムを単に「積層フィルム」と略称することがあり、硬化した熱硬化性組成物[i]を「硬化物[i]」と称することがあり、未硬化の熱硬化性組成物[i]からなる層[I]を「熱硬化性組成物層[I]」と称することがあり、硬化後の熱硬化性組成物[i]からなる層[I]を「硬化層[I]」と称することがある。
【0013】
本発明で用いる熱硬化性組成物[i]は、熱により硬化しうる樹脂組成物であり、不飽和基を有する化合物を含有してなる。不飽和基を有する化合物としては、例えば、不飽和基を1個以上有する反応性オリゴマーや反応性モノマーが挙げられるが、本発明で用いる熱硬化性組成物[i]は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を少なくとも含有してなる。
かかる熱硬化性組成物[i]としてさらに好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)、バインダーポリマー(B)及び熱重合開始剤(C)を含有してなる本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用熱硬化性組成物である。
以下、各成分について説明する。
【0014】
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)>
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、硬化層[I]に適度な弾性を付与して、硬化層[I]の柔軟性を高める作用を有する。
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)、多価イソシアネート系化合物(a2)及びポリオール系化合物(a3)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が挙げられる。
なお、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを表す。
【0015】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の重量平均分子量は、500~50,000であることが好ましく、特に好ましくは1,000~30,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると硬化層[I]が脆くなる傾向があり、大きすぎると硬化層[I]が硬くなりすぎて耐衝撃性が低下する傾向がある。
【0016】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製、「Shodex GPC system-11型」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×10、分離範囲:100~2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定することができる。
【0017】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)の60℃における粘度は、500~15万mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは500~12万mPa・s、更に好ましくは1000~10万mPa・sである。かかる粘度が上記範囲外では、支持フィルム[II]に熱硬化性組成物[i]を塗工する際の塗工性が低下する傾向がある。
なお、粘度はE型粘度計により測定することができる。
【0018】
〔水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)〕
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等)、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、エチレン性不飽和基を1個有する水酸基(メタ)アクリレート系化合物が、硬化層[I]形成の際の硬化収縮を緩和することができる理由から好ましく、特に好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであり、更には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いることが、反応性および汎用性に優れる点で好ましい。
また、これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0020】
〔多価イソシアネート系化合物(a2)〕
多価イソシアネート系化合物(a2)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート;或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は多量体化合物;アロファネート型ポリイソシアネート;ビュレット型ポリイソシアネート;水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」「アクアネート210」等);等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、黄変が少ない点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ジイソシアネートが好ましく用いられ、特に好ましくは硬化収縮が小さい点でイソホロンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネートが用いられ、更に好ましくは、反応性および汎用性に優れる点でイソホロンジイソシアネートが用いられる。
【0022】
〔ポリオール系化合物(a3)〕
ポリオール系化合物(a3)としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等の他に、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグルコール等のアルキレングリコール等も挙げられる。
【0023】
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体などが挙げられる。
【0024】
上記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などが挙げられる。
【0025】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。
【0026】
前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0027】
前記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。
【0028】
上記ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。
【0029】
前記多価アルコールとしては、前記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0030】
なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0031】
上記ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0032】
上記ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0033】
上記(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルを重合体又は共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0034】
上記ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオールが好ましく、特に好ましくは硬化時に柔軟性等の機械的物性に優れる点でポリエステル系ポリオールである。
【0036】
上記ポリオール系化合物(a3)の重量平均分子量としては、500~8000が好ましく、特に好ましくは550~5000、更に好ましくは600~3000である。ポリオール系化合物(a3)の分子量が大きすぎると、硬化時に硬化層[I]の機械的物性が低下する傾向があり、小さすぎると硬化収縮が大きく安定性が低下する傾向がある。
【0037】
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製、「Shodex GPC system-11型」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×10、分離範囲:100~2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定することができる。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、通常、上記水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)、多価イソシアネート系化合物(a2)及びポリオール系化合物(a3)を、反応器に一括又は別々に仕込み反応させることにより製造することができる。また、ポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)とを予め反応させて得られる反応生成物に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)を反応させてウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を製造することもでき、この製造方法は反応の安定性や副生成物の低減等の点で有用である。
【0039】
ポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)との反応には、公知の反応手段を用いることができる。その際、例えば、多価イソシアネート系化合物(a2)中のイソシアネート基:ポリオール系化合物(a3)中の水酸基とのモル比を通常2n:(2n-2)(nは2以上の整数)程度にすることにより、イソシアネート基を残存させた末端イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を得た後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との付加反応が可能となる。
【0040】
上記ポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)とを予め反応させて得られる反応生成物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との付加反応にも、公知の反応手段を用いることができる。
【0041】
反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との反応モル比は、例えば、多価イソシアネート系化合物(a2)のイソシアネート基が2個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)が1:2程度であり、多価イソシアネート系化合物(a2)のイソシアネート基が3個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)が1:3程度である。
【0042】
この反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が得られる。
【0043】
かかるポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)との反応、更にその反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましい。かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫等の有機金属化合物;オクトエ酸亜鉛、オクトエ酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩;トリエチルアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒;硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の無機ビスマス化合物の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や;2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩;等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。
【0044】
またポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a2)との反応、更にその反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a1)との反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族類;等の有機溶剤を用いることができる。
【0045】
また、反応温度は、通常30~90℃、好ましくは40~80℃であり、反応時間は、通常2~10時間、好ましくは3~8時間である。
【0046】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)は、繊維との接着性を活かす点で、20個以下のエチレン性不飽和基を有するものであることが好ましく、特に好ましくは10個以下のエチレン性不飽和基を有するものであり、更に好ましくは5個以下のエチレン性不飽和基を有するものである。なお、エチレン性不飽和基数の下限は通常2である。
【0047】
<バインダーポリマー(B)>
本発明におけるバインダーポリマー(B)は、未硬化の熱硬化性組成物[i]の適度な粘度調整の目的で用いるものであり、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。中でも、粘度の調整を容易にするという点で(メタ)アクリル系樹脂(B1)が好ましい。
以下、(メタ)アクリル系樹脂(B1)について更に具体的に説明する。
【0048】
〔(メタ)アクリル系樹脂(B1)〕
本発明における(メタ)アクリル系樹脂(B1)とは、(メタ)アクリル系モノマーを含有するモノマー成分を重合してなるものである。(メタ)アクリル系樹脂(B1)は、1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0049】
(メタ)アクリル系樹脂(B1)は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b1)を主たる重合成分として含有し、必要に応じて、官能基含有モノマー(b2)、その他の共重合性モノマー(b3)を共重合成分とすることもできる。
かかる(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の脂肪族系(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸フェニルエステル等の芳香族系(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
【0050】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステルについては、アルキル基の炭素数が、通常1~12、特には1~8、更には1~4であることが好ましく、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、かかる(メタ)アクリル酸フェニルエステルとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b1)としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0051】
かかる(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b1)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手しやすさの点で、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0052】
官能基含有モノマー(b2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、フェノキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、その他の窒素含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0053】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、1級水酸基含有モノマー、2級水酸基含有モノマー、3級水酸基含有モノマー等が挙げられる。1級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の1級水酸基含有の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸;N-メチロール(メタ)アクリルアミド;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。2級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。3級水酸基含有モノマーとしては、例えば、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
また、上記水酸基含有モノマーとして、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマーを用いてもよい。
【0055】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリルアミドN-グリコール酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステル(例えば、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等)等が挙げられる。なお、かかるカルボキシル基含有モノマーは、酸のまま用いても良いし、アルカリで中和された塩の形で用いても良い。
【0056】
上記アルコキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族系の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、フェノキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等の芳香族系の(メタ)アクリレートのアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0057】
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-(n-ブトキシアルキル)アクリルアミド、N-(n-ブトキシアルキル)メタクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド-3-メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノアルキルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートやその4級化物等が挙げられる。
上記アミド基含有モノマーおよび上記アミノ基含有モノマーを除くその他の窒素含有モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0059】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0060】
上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
【0061】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等が挙げられる。
【0062】
その他の共重合性モノマー(b3)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等のモノマーが挙げられる。
【0063】
また、高分子量化を目的とする場合、エチレングリコールジ(メタ) アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物等を併用することもできる。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂(B1)において、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a1)、官能基含有モノマー(b2)、及びその他共重合性モノマー(b3)の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b1)が好ましくは10~100重量%、特に好ましくは20~95重量%であり、官能基含有モノマー(b2)が好ましくは0~90重量%、特に好ましくは5~80重量%であり、その他共重合性モノマー(b3)が好ましくは0~50重量%、特に好ましくは5~40重量%である。
【0065】
本発明における(メタ)アクリル系樹脂(B1)としては、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)との相溶性に優れる点で、また硬化物[i]の硬度を調整するという点で、メチル(メタ)アクリレートを重合成分とする重合体であることが好ましく、特にはメチルメタクリレートを重合成分とする重合体であることが好ましく、更にはポリメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0066】
本発明においては、上記(b1)~(b3)のモノマー成分を重合することにより(メタ)アクリル系樹脂(B1)を製造することができる。かかる重合は、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行うことができる。例えば、有機溶媒中に、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(b1)、官能基含有モノマー(b2)、その他の共重合性モノマー(b3)等の重合モノマー、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50~90℃で2~20時間重合する。
【0067】
上記重合反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等が挙げられる。
【0068】
(メタ)アクリル系樹脂(B1)のガラス転移温度(Tg)は、通常、40~120℃、好ましくは60~110℃である。かかるガラス転移温度が高すぎると熱硬化性組成物[i]を調製する際に配合できる(メタ)アクリル系樹脂(B1)の量が制限され、未硬化の熱硬化性組成物[i]の粘度調整範囲が狭められ、ひいては硬化物[i]の耐久性が低下したり、硬くなりすぎて強度が低下する傾向があり、ガラス転移温度が低すぎると硬化物[i]の熱耐久性が低下する傾向がある。
【0069】
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、以下のFoxの式より算出されるものである。
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・・・・・・・・・・Wk/Tgk
但し、Tgは共重合体のガラス転移温度であり、Tg1,Tg2,・・・・・・・・Tgkは各単量体成分の単独共重合体のTgであり、w1,w2,・・・・・・・・・・wkは各単量体成分のモル分率を表し、w1+w2+・・・・・・・・・wk=1である。
【0070】
かくして得られる(メタ)アクリル系樹脂(B1)の重量平均分子量については、通常、1万~300万、好ましくは2万~250万である。
かかる重量平均分子量が小さすぎると、未硬化の熱硬化性組成物[i]が軟弱になるとともに、必要以上に粘着性が高くなり、ハンドリング性が低下する傾向があり、さらに硬化物[i]が脆くなってしまう傾向がある。また、かかる重量平均分子量が大きすぎると、支持フィルム[II]に塗工する前の熱硬化性組成物[i]の粘度が高くなりすぎたり、あるいは濃度を高めることが困難になるなどの塗工性の低下を招く傾向があり、さらには硬化前の熱硬化性組成物層[I]の柔軟性が低下して、本発明の積層フィルムをロール状に巻き取ることが困難になるなどの傾向がある。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算によるものであり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters2695(本体)」と「Waters2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×10、分離範囲:100~2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定することができる。
【0071】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)とバインダーポリマー(B)の含有割合(重量比)は、通常、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A):バインダーポリマー(B)=10:90~90:10であり、好ましくは30:70~80:20、特に好ましくは40:60~70:30である。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が多すぎる(バインダーポリマー(B)が少なすぎる)と、硬化後の硬化層[I]表面に粘着性が発現し、その後の工程に支障を来すとともに、硬化層[I]の硬化収縮性が大きくなり、硬化層[I]にクラックが入る要因となる傾向があり、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)が少なすぎる(バインダーポリマー(B)が多すぎる)と熱硬化性組成物層[I]が硬くなりすぎて、本発明の積層フィルムのハンドリングで熱硬化性組成物層[I]に亀裂が発生したりするとともに、本発明の積層フィルムを繊維シートなどの繊維層に積層する際の追従性や繊維硬化物の可撓性等も低下する傾向がある。
【0072】
<熱重合開始剤(C)>
本発明における熱重合開始剤(C)としては特に限定されないが、例えば、アゾビス系化合物、過酸化物系化合物などが挙げられる。
アゾビス系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソオブチレート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
また過酸化物系化合物としては、例えば、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルペルオキシカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ(3、5、5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジスクシン酸ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルペルオキシド、1,1′-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルポエルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマロン酸、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
これら熱重合開始剤(C)は1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0073】
中でも好ましくは、硬化時に発生するガスが少ない点で過酸化物系化合物であり、具体的には、例えば、ジラウロイルペルオキシド、1,1′-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマロン酸、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドが好ましい。
【0074】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等を併用することも可能である。
【0075】
熱硬化性組成物[i]における熱重合開始剤(C)の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)成分、バインダーポリマー(B)成分、後述する反応性モノマー(D)成分との不揮発分合計を100重量部としたとき、0.1~30重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5~20重量部、更に好ましくは1~10重量部である。
熱重合開始剤(C)の含有量が少なすぎると、硬化層[I]が硬化不足となり十分な弾性又は硬度が得られず、硬化層[I]が脆くなってしまい機能が果たせなくなる傾向があり、含有量が多すぎると、熱硬化性組成物層[I]の保管時に熱重合開始剤(C)がブリードアウトして、硬化層[I]の中で結晶が析出したりする傾向がある。
【0076】
<不飽和基を1個以上有する反応性モノマー(D)>
本発明における熱硬化性組成物[i]は、不飽和基を1個以上有する反応性モノマー(D)を更に含有していることが好ましい。
不飽和基を1個以上有する反応性モノマー(D)としては、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマー、その他のエチレン性不飽和モノマー等を用いることができる。
【0077】
上記単官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ含有するモノマーが用いられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α-メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフエステル(メタ)アクリレート;フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等が挙げられる。
【0078】
上記2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーが用いられ、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等が挙げられる。
【0079】
上記3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーが用いられ、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
上記その他のエチレン性不飽和モノマーとして、上記の他に、アクリル酸のミカエル付加物あるいは2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも挙げられ、上記アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる。また、特定の置換基をもつカルボン酸である上記2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、オリゴエステルアクリレートも挙げられる。
【0081】
本発明における不飽和基を1個以上有する反応性モノマー(D)としては、2官能モノマー及び3官能以上のモノマーの多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは上記2官能モノマー及び3官能以上のモノマーとして挙げられた多官能(メタ)アクリレート系化合物(D1)である。
【0082】
熱硬化性組成物[i]における反応性モノマー(D)の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)成分とバインダーポリマー(B)成分との不揮発分合計を100重量部としたときに、1~100重量部であることが好ましく、特に好ましくは3~80重量部、更に好ましくは5~70重量部である。
反応性モノマー(D)の含有量が少なすぎると、熱硬化性組成物層[I]の柔軟性が低下して加工性が低下する傾向があり、多すぎると硬化層[I]が硬くなりすぎて耐衝撃性が低下し脆くなる傾向がある。
【0083】
なお、本発明における熱硬化性組成物[i]には、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、溶剤、表面張力改質材、安定剤、連鎖移動剤、界面活性剤等の周知の添加剤を配合しても差し支えない。
【0084】
<繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルム>
本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムは、熱硬化性組成物[i]からなる層[I]と、支持フィルム[II]とが積層された構造を有する。
【0085】
支持フィルム[II]としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、離型PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体系フィルム等、あるいは樹脂層をその表面に積層した紙などを用いることが好ましい。
中でも、フィルム形成時および熱硬化性組成物層[I]の硬化時の耐熱性の点で、PETフィルム、離型処理を施した離型PETフィルム、あるいは樹脂層をその表面に積層した紙(以下、離型紙と称することがある。)を用いることが特に好ましい。離型PETフィルムや離型紙を用いる場合には、離型処理や樹脂層の形成は、フィルムや紙の片面のみに行なっていても両面に行なっていてもよい。
支持フィルム[II]の厚みは、5μm以上が好ましく、特には10~200μm、更には20~100μmが好ましい。
【0086】
本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムには、熱硬化性組成物層[I]の支持フィルム[II]が積層されていない側に、保護フィルム[III]が積層されていてもよい。
上記保護フィルム[III]は、本発明の積層フィルムをロール状にしておく場合に、粘着性を有する熱硬化性組成物層[I]の支持フィルム[II]への転写等を防止する目的で使用されるものであり、かかる保護フィルム[III]としては、例えば、ポリエチレンフィルム、離型PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体系フィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルム、ナイロンフィルム、離型紙などが挙げられるが、中でも離型PETフィルム、離型紙が好ましい。
保護フィルム[III]の厚みは、5μm以上が好ましく、特には10~200μm、更には15~100μmが好ましい。
【0087】
本発明の積層フィルムを製造する方法としては、例えば、支持フィルム[II]の片面に、熱硬化性組成物[i]を均一に塗布し、通常50~120℃、もしくは順次温度の高くなるオーブンで、通常1~60分間乾燥して熱硬化性組成物層[I]を形成する方法が挙げられる。また、保護フィルム[III]を用いる場合には、上記熱硬化性組成物層[I]を形成し、次いで該層[I]の上面に保護フィルム[III]を加圧積層する方法が挙げられる。
【0088】
本発明の積層フィルムにおいて、繊維の接着や繊維シートの表面保護に用いる場合は、熱硬化性組成物層[I]の厚みは、50μm以上が好ましく、特には80~500μm、更には100~300μmが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいて、熱硬化性組成物層[I]を硬化させた硬化層[I]に意匠性を付与する場合には、熱硬化性組成物層[I]の厚みは、100μm以上が好ましく、特には150~500μm、更には250~300μmが好ましい。
かかる熱硬化性組成物層[I]の厚みが薄すぎると、繊維を接着又は繊維シートを表面保護するのに適当な厚みを得るために積層する枚数が多くなりすぎて積層工程が煩雑となったり、コストが高くなりすぎたりする傾向があり、あるいは接着又は表面保護するのに適当な厚みを得るのが困難となる傾向がある。また、かかる厚みが厚すぎると、熱硬化性組成物[i]を乾燥させて熱硬化性組成物層[I]を形成する際に、時間がかかりすぎる傾向がある。
【0089】
かくして得られた本発明の積層フィルムは、炭素繊維やガラス繊維などの繊維の繊維同士の接着やかかる繊維からなる繊維シート表面の保護に用いることができる。
本発明における繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などの強化繊維が挙げられ、これらの繊維を2種以上混合して用いてもよい。より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、ガラス繊維や炭素繊維が好ましく用いられる。
繊維シートの形態や配列としては特に限定されず、例えば、繊維の束を一方向に引き揃えたシート、織物(クロス)、マット、ニット、不織布などが挙げられる。
【0090】
本発明の積層フィルムあるいは本発明の繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用熱硬化性組成物を用いてプリプレグを製造する方法を例示的に概説する。
本発明の積層フィルムを用いてプリプレグを製造する方法としては、例えば、繊維シートと積層フィルムとを積層し、積層フィルムの支持フィルム[II]を剥離し、必要に応じて別の積層フィルムを繊維シート又は熱硬化性組成物層[I]に更に積層し、支持フィルム[II]を剥離した後に、加熱加圧することにより熱硬化性組成物[i]を繊維シートに含浸させる方法が挙げられる。加熱加圧する方法としては、例えば、プレス成形、オートクレーブ成形、内圧成形などが挙げられる。
【実施例
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「%」および「部」とあるのは重量基準を意味する。
各成分として、以下のものを用意した。
【0092】
<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)>
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A1)として以下の2官能ウレタンアクリレート系オリゴマー(A1)を調製した。
(A1):温度計、攪拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート30.6g(0.138モル)、2官能ポリエステルポリオール(水酸基価145mgKOH/g、数平均分子量800)53.2g(0.069モル)、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.04g、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを仕込み、70℃で6時間反応させ、2-ヒドロキシエチルアクリレート16.2g(0.140モル)を仕込み、60℃で3時間反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、2官能ウレタンアクリレート系オリゴマー(A1)(重量平均分子量5,600、60℃における粘度56,000mPa・s)を得た。
【0093】
<バインダーポリマー(B)>
(B1):ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「ダイヤナールBR-83」)
【0094】
<熱重合開始剤(C)>
(C1):1,1′-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン(日油社製「パーヘキサHC」)
【0095】
<不飽和基を1個以上有する反応性モノマー(D)>
(D1):ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製「A-200」)
【0096】
<エポキシ樹脂(E)>
(E1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」)
【0097】
<エポキシ硬化剤(F)>
(F1):1-メチルイミダゾール(日本合成化学工業社製)
【0098】
〔実施例1〕
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A1)を2-ブタノンで75%に希釈したオリゴマー溶液と、バインダーポリマー(B1)を酢酸エチルで40%に希釈した樹脂溶液とを、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A1)とバインダーポリマー(B1)とが不揮発分の重量比で56:44(A1:B1)になるように混合した。更に、反応性モノマー(D1)を、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A1)とバインダーポリマー(B1)の不揮発分合計100部に対して20部となるように混合した。
次いで、(A1)、(B1)、(D1)の混合物の不揮発分100部に対して2部となるように、熱重合開始剤(C1)を混合し、不揮発分濃度が60%となる熱硬化性組成物[i-1]溶液を得た。
この熱硬化性組成物[i-1]溶液を厚さ30μmのポリエステルフィルム[II]上にギャップ0.35mmのアプリケーターを用いて塗工し、これを60℃で3分間、更に80℃で3分間乾燥することで、厚さ100μmの熱硬化性組成物層[I-1]を形成し、繊維接着用積層フィルム(以下、単に「積層フィルム」とも略称する。)を得た。
得られた繊維接着用積層フィルムを用いて、下記の通り評価した。
【0099】
(繊維シートの可撓性)
ガラス繊維シート(ユニチカ社製、100mm×20mmのサイズ、厚さ1mm)を2枚用意し、1枚のガラス繊維シートの上に繊維接着用積層フィルムの熱硬化性組成物層[I-1]の面を貼り合わせてポリエステルフィルム[II]を剥がすことで、ガラス繊維シートの上に熱硬化性組成物層[I-1]を形成し、更に、かかる熱硬化性組成物層[I-1]の上に、再度、第2の繊維接着用積層フィルムの熱硬化性組成物層[I-1]の面を貼り合わせてポリエステルフィルム[II]を剥がした。第2の熱硬化性組成物層[I-1]の上に残り1枚のガラス繊維シートを設けて、2枚のガラス繊維シートの間に200μmの熱硬化性組成物層[I-1]を形成した。この積層体に150℃に熱したプレス機で4.2MPaの圧力をかけ1分間プレスを行うことで、熱硬化性組成物層[I-1]は両面のガラス繊維シートに含浸しながら硬化して、2枚のガラス繊維シートは接着された。その後、シートの長手方向の真ん中の50mm部分を直径5mmの棒に沿わせるように90°で曲げを行った結果、熱硬化性組成物層[I-1]がガラス繊維シートに含浸し硬化した繊維硬化物の表面に亀裂は見られず、可撓性の大きい繊維硬化物が得られた。
【0100】
〔比較例1〕
エポキシ樹脂(E)の不揮発分100部に対して2部のエポキシ硬化剤(F)を加え1分間混合した後、得られたエポキシ樹脂をガラス繊維シート(ユニチカ社製、100mm×20mmのサイズ、厚さ1mm)上に200μmの厚みに塗工し、更にガラス繊維シートを被せ、150℃に熱したプレス機で4.2MPaの圧力をかけ1分間プレスすることによって、2枚のガラス繊維シートの接着を行った。得られた繊維硬化物を実施例1と同じ曲げ評価を行った結果、表面に亀裂が見られた。
【0101】
以上の実施例1及び比較例1の評価結果を表1にまとめた。
なお、表中の「○」は繊維硬化物の表面に亀裂が認められないことを表し、「×」は繊維硬化物の表面に亀裂が認められたことを表す。
【0102】
【表1】
【0103】
以上の結果より、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を含有する本発明の熱硬化性組成物[i]からなる層[I]が積層されてなる繊維接着及び/又は繊維シート表面保護用積層フィルムに、繊維シートを積層させ熱プレス処理を行うことで、可撓性の大きい繊維硬化物が得られることから、本発明の積層フィルムは繊維シートを接着するのに有用であることが示された。即ち、本発明の積層フィルムは、作業性および生産性が良好で、繊維シートの接着性に優れるものであった。また本発明の積層フィルムが貼合され、熱硬化された繊維強化プラスチックの表面は平滑となり、表面平滑性に優れるので、意匠形成性にも優れたものである。