(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】海綿体内圧上昇の増強剤並びにこれを含有する医薬組成物及び食品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20220329BHJP
A61K 36/63 20060101ALI20220329BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20220329BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220329BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61K36/63
A61P15/10
A23L33/105
(21)【出願番号】P 2018025326
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【氏名又は名称】下田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100168996
【氏名又は名称】石井 雅美
(72)【発明者】
【氏名】折戸 謙介
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/040421(WO,A1)
【文献】特開2012-197274(JP,A)
【文献】特開2008-120761(JP,A)
【文献】特開2006-101885(JP,A)
【文献】Chemistry and Physics of Lipids,2004年,Vol.130,pp.1-81, Abstract No.PO 36
【文献】The Journal of Nutrition,2002年,Vol.132, No.3,pp.409-417
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 15/00
A61K 36/00-36/9068
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ葉抽出物を有効成分として含有し、
前記オリーブ葉抽出物は下記
式(2)で表される
化合物又はその薬理学的に許容される
塩を含有する、海綿体内圧上昇の増強剤。
【化1】
【請求項2】
請求項
1に記載の増強剤を含有する、男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物。
【請求項3】
前記男性性機能障害が、勃起機能障害(ED)である、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
請求項
1に記載の増強剤を含有する、男性性機能改善用の食品組成物。
【請求項5】
前記男性性機能が、勃起機能である、請求項
4に記載の食品組成物。
【請求項6】
保健機能食品又はサプリメントである、請求項
4又は
5に記載の食品組成物。
【請求項7】
前記保健機能食品が、機能性表示食品である、請求項
6に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海綿体内圧上昇の増強剤と、これを含有する男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物、並びに男性性機能改善用の食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
男性の性的機能不全は、多くは勃起機能障害(Erectile Dysfuncti
on(ED))として生じる。この様な病態は、ストレス等による交感神経の緊張による陰茎動脈収縮による海綿体血液流入の遮断、nNOSの活性低下、グアニル酸シクラーゼ活性の低下、PDE5活性の亢進等のいずれか又はこれらが複合して生じ、結果として陰茎が勃起しなかったり、勃起しても持続しなかったりして、性交が行えなくなるものである。
EDは、全世界で1億5000万人以上の男性が罹患していると考えられており、その数は、2030年までに倍増するという予測も存在する。
【0003】
近年、ED改善作用を有する化合物として、ホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)阻害剤が見出され、日本においても3種類のED治療薬が上市されている。具体的には、ファイザー社のシルデナフィル(製品名:バイアグラ)、バイエル社のバルデナフィル(製品名:レビトラ)、そしてイーライ・リリー社のタダラフィル(製品名:シアリス)である。PDE5阻害剤は、陰茎海綿体のcGMP分解酵素であるPDE5の活性を阻害し、陰茎の末梢神経によってもたらされる陰茎海綿体内のcGMP量を維持・増大させ、陰茎海綿体内圧上昇(勃起)状態を持続・増強させるものである。これらは経口投与薬であり広く使用されているが、必ずしも満足な有効性が得られるわけではない。
その他に、プロスタグランジン製剤の海綿体注射や、シリコーン等のプロステーシスの陰茎海綿体への移植手術等のED治療法もあるが、侵襲性や感染の危険性等の点で問題がある。
【0004】
ところで、オリーブの葉や油に多く含まれており、特徴的なほろ苦い香りを出す成分として、セコイリドイド系化合物のオレウロペインが知られている。オレウロペインの構造式はC25H32O13で、分子量は540.514であり、下記化学式(2)で表される。
【0005】
【0006】
オレウロペインには、抗酸化、抗ウイルス、坑腫瘍、抗菌、抗肥満、及び非アルコール性脂肪肝の改善、発毛促進などの生理活性があることが報告されている。また、ラットに
1g/体重kgのオレウロペインを7日間投与などの安全性試験においても、LD50を算出できないほど毒性が認められないことも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、男性性機能障害、特にEDの改善、治療又は予防のための医薬組成物又は食品組成物の新たな有効成分を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、オレウロペイン等のセコイリドイドグルコシド(secoiridoid glucoside)誘導体が海
綿体内圧上昇を増強させる作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の第一の態様は、下記一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物を有効成分として含有する、海綿体内圧上昇の増強剤である。
【0011】
【化2】
(前記式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基を表し、R
3~R
7はそれぞれ独立して水素原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R
3~R
7の2つ以上が保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基であり、mは1~3の整数であり、nは1~4の整数である。)
【0012】
本態様において、前記セコイリドイドグルコシド誘導体は、前記一般式(1)においてR1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1~2のアルキル基を表し、R3~R7はそれぞれ独立して水素原子又は保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基を表し、mは1であり、nは2である化合物であることが好ましく、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
また、式(2)で表される化合物は、オリーブ葉抽出物の形態で増強剤に含有されることがより好ましい。
【0013】
【0014】
本発明の別の態様は、本発明の海綿体内圧上昇の増強剤を含有する、男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物である。
本態様において、前記男性性機能障害は、好ましくは勃起機能障害(ED)である。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明の海綿体内圧上昇の増強剤を含有する、男性性機能改善用の食品組成物である。
本態様において、前記男性性機能は、好ましくは勃起機能である。
本態様の形態としては保健機能食品又はサプリメントが好ましく、保健機能食品としては機能性表示食品が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、男性性機能障害の治療用及び/若しくは予防用の医薬組成物、又は男性性機能改善用の食品組成物に含有し得る、有効かつ安全な成分が新たに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】投与後、海綿体神経への電気刺激印加までの経過時間と最大海綿体圧の経時変化を示すグラフである。(右:実験群、左:対照群)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<1>セコイリドイドグルコシド誘導体
本発明の海綿体内圧上昇の増強剤は、下記一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物を有効成分として含有する。
【0020】
【0021】
一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1~2のアルキル基を表す。
一般式(1)中、R3~R7はそれぞれ独立して水素原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基又は炭素数1~4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基を表す。また、R3~R7の2つ以上が保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基であり、好ましくはR3~R7の2つが保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基であり、より好ましくはR4及びR5の2つが保護基で保護されていてもよいヒドロキシ基である。
一般式(1)中、mは1~3の整数であり、好ましくは1である。nは1~4の整数であり、好ましくは2である。
【0022】
本明細書において、アルキル基は、直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を指す。
【0023】
本明細書において、保護基は、化学反応工程や製剤工程等において安定して水酸基を保護し得るものであれば特に限定されないが、好ましくは、生体内で加水分解などの生物学的方法により開裂し得る保護基を指す。
例えば、1-(アシルオキシ)(C1~C6)アルキル基が挙げられ、具体的には、ホルミルオキシメチル、1-ホルミルオキシエチル、1-ホルミルオキシプロピル等の1-ホ
ルミルオキシ(C1~C6)アルキル基;アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、バレリルオキシメチル、イソバレリルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル、1-アセトキシエチル、1-プロピオニルオキシエチル、1-ブチリルオキシエチル、1-ピバロイルオキシエチル、1-バレリルオキシエチル、1-イソバレリルオキシエチル、1-ヘキサノイルオキシエチル、1-アセトキシプロピル、1-プロピオニルオキシプロピル、1-ブチリルオキシプロピル、1-ピバロイルオキシプロピル、1-バレリルオキシプロピル、1-イソバレリルオキシプロピル、1-ヘキサノイルオキシプロピル、1-アセトキシブチル、1-プロピオニルオキシブチル、1-ブチリルオキシブチル、1-ピバロイルオキシブチル、1-アセトキシペンチル、1-プロピオニルオキシペンチル、1-ブチリルオキシペンチル、1-ピバロイルオキシペンチル、1-ピバロイルオキシヘキシル等の1-(アルキルカルボニルオキシ)(C1~C6)アルキル基;シクロペンチルカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルカルボニルオキシメチル、1-シクロペンチルカルボニルオキシエチル、1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル、1-シクロペンチルカルボニルオキシプロピル、1-シクロヘキシルカルボニルオキシプロピル、1-シクロペンチルカルボニルオキシブチル、1-シクロヘキシルカルボニルオキシブチル等の1-(「シクロアルキル」カルボニルオキシ)(C1~C6)アルキル基;ベンゾイルオキシメチル等の1-(「アリールカルボニル」オキシ)(C1~C6)アルキル基が挙げられる。
【0024】
また、カルボニルオキシ(C1~C6)アルキル基も挙げられ、具体的には、メトキシカルボニルオキシメチル、エトキシカルボニルオキシメチル、プロポキシカルボニルオキシメチル、イソプロポキシカルボニルオキシメチル、ブトキシカルボニルオキシメチル、イソブトキシカルボニルオキシメチル、ペンチルオキシカルボニルオキシメチル、ヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ(シクロヘキシル)メチル、1-(メトキシカルボニルオキシ)エチル、1-(エトキシカルボニルオキシ)エチル、1-(プロポキシカルボニルオキシ)エチル、1-(イソプロポキシカルボニルオキシ)エチル、1-(ブトキシカルボニルオキシ)エチル、1-(イソブトキシカルボニルオキシ)エチル、1-(t-ブトキシカルボニルオキシ)エチル、1-(ペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1-(ヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル、1-(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1-(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル、1-(エトキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(メトキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(エトキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(プロポキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(イソプロポキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(ブトキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(イソブトキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(ペンチルオキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(ヘキシルオキシカルボニルオキシ)プロピル、1-(メトキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(エトキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(プロポキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(イソプロポキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(ブトキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(イソブトキシカルボニルオキシ)ブチル、1-(メトキシカルボニルオキシ)ペンチル、1-(エトキシカルボニルオキシ)ペンチル、1-(メトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、1-(エトキシカルボニルオキシ)ヘキシル等の(C2~C7)アルコキシカルボニルオキシアルキル基;(5-フェニル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、[5-(4-メチルフェニル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル]メチル、[5-(4-メトキシフェニル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル]メチル、[5-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル]メチル、[5-(4-クロロフェニル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル]メチル、(2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、(5-エチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、(5-プロピル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、(5-イソプロピル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、(5-ブチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル等のオキソジオキソレニルメチル基が挙げられる。
また、フタリジル、ジメチルフタリジル、ジメトキシフタリジル等のフタリジル基;アルキルカルボニル基;ベンゾイル、α-ナフトイル、β-ナフトイル等のアリールカルボニル基;2-ブロモベンゾイル、4-クロロベンゾイル等のハロゲン化アリールカルボニル基;2,4,6-トリメチルベンゾイル、4-トルオイル等の(C1~C6)アルキル化アリールカルボニル基;4-アニソイル等の(C1~C6)アルコキシ化アリールカルボニル基;4-ニトロベンゾイル、2-ニトロベンゾイル等のニトロ化アリールカルボニル基;2-(メトキシカルボニル)ベンゾイル等の(C2~C7)アルコキシカルボニル化アリールカルボニル基;4-フェニルベンゾイル等のアリール化アリールカルボニル基;コハク酸のハーフエステル塩残基;燐酸エステル塩残基;アミノ酸等のエステル形成残基;カルバモイル基;1又は2個の(C1~C6)アルキル基で置換されたカルバモイル基;ピバロイルオキシメチルオキシカルボニル等の1-(アシルオキシ)アルキルオキシカルボニル基も挙げられる。
【0025】
本明細書において、一般式(1)で表される化合物の薬理学的に許容される塩としては
、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩;マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン酸塩等の塩基性アミノ酸塩;などが挙げられる。
【0026】
本明細書において、一般式(1)で表される化合物の加水分解物は、例えば該化合物のグリコシル基が加水分解されて形成されたエレノール酸(elenolic acid)
や、一般式(1)のR3~R7の水酸基の保護基が外れた化合物等が挙げられる。なお、エレノール酸も、後述のオレウロペインと同一または類似する水準の生物学的活性を示すことが知られている(米国特許第6,117,844号及び第6,455,580号)。
【0027】
一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物(以降、「オレウロペイン(oleuropein)」とも記す)が特に好ましい。
【0028】
【0029】
オレウロペインは、モクセイ科(Oleaceae family)に属する植物の葉
、実、根、幹に含まれており、特に葉に多量に含有されている。
そのため、本発明におけるセコイリドイドグルコシド誘導体としては、該化合物を含む限りにおいてモクセイ科植物の抽出物の形態で用いてもよい。
かかるモクセイ科植物としては24属の約600種余り以上が知られており、特に限定されないが、例えばオリーブ属(Olea)植物、イボタノキ属(Ligustrum)植物、ハシドイ属(Syringa)植物、トネリコ属(Fraxinus)植物、ソケイ属(Jasminum)植物、モクセイ属(Osmanthus)植物等が好ましく挙げられ、オリーブ属植物が特に好ましい。さらに、オリーブ属植物としては、オリーブ(
Olea europaea Linne)、オレア・ウェルウィトスキイ(Olea we
lwitschii)、オレア・パニクラタ(Olea paniculata)等が好ま
しく挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、オレウロペインは、オリーブ葉抽出物の形態で増強剤に含有される。
【0030】
前記セコイリドイドグルコシド誘導体を含むモクセイ科植物の抽出物は、前述のモクセイ科植物から通常の抽出工程を経ることにより取得できる。抽出元は、モクセイ科植物の、より好ましくはオリーブ属植物の葉が好ましいが、茎、枝、枝先等が葉とともに含まれていても差し支えない。
葉などの植物体は、そのまま又は必要に応じて乾燥し粉砕した後に、溶媒抽出に供する。
【0031】
抽出溶媒としては、水、炭素数1~4の無水または含水低級アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、グリコール類(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなど)、前記低級アルコールと水との混合溶媒、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ヘキサンなどの有機溶媒を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
抽出は、通常、常圧下で常温から溶媒の沸点の温度範囲で行い、抽出後は濾過、溶媒の留去、カラムなどにより精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、又は粉末状の抽出物とすることができる。抽出液について脱臭、脱色などの精製処理を行うこともできる。
【0032】
前記モクセイ科植物の抽出物は、抽出物をさらに分離、精製して得た分画であってもよい。例えば、モクセイ科植物の抽出物を一定の分子量カットオフ値を持つ限外ろ過膜を通過させて得た分画、種々のクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために作製されたもの)により分離して得た分画等が挙げられる。
また、前記モクセイ科植物の抽出物は、凍結乾燥等により粉末の状態であってもよく、濃縮または希釈した状態でもよく、他の成分と混合して本発明の増強剤に含有させてもよい。
【0033】
オリーブ葉の抽出物からオレウロペインを得る方法は、米国特許出願公開第2003-0017217号にも詳細に記載されている。
【0034】
また、前記セコイリドイドグルコシド誘導体は化学的に合成することができる。セコイリドイド誘導体の合成方法はPCT出願公開第WO96/14064号に詳細に記載されている。
【0035】
<2>海綿体内圧上昇の増強剤
陰茎勃起のメカニズムについて以下に説明する。陰茎にある「海綿体」は、その本体は、白膜という線維組織で取り囲まれている。陰茎海綿体には、中央部に海綿体洞(海綿体静脈洞とも)と呼ばれる静脈が存在する。この海綿体洞には、海綿体動脈から、白膜下に存在するラセン動脈を経由して血液が流入する。平常時の海綿体動脈は細いため血液があまり流れ込んでこず、その結果、海綿体洞への血液の流入と、膨張した海綿体洞と白膜との間に存在する貫通静脈からの血液の流出とが、流量として均衡しているため、陰茎は一定のサイズを維持している。
【0036】
本発明細書において「平滑筋」は、収縮に特化した組織を意味し、平滑筋は、中空の内部器官の壁面に存在する平滑筋線維(細胞)から成り、自律神経運動ニューロンにより刺激される。平滑筋は、横紋を持たないため、滑らかな外観を有する筋肉を意味する。または、平滑筋は、不随意筋とも称される。平滑筋サイトゾルでCa2+濃度が増加することにより、横紋筋と同じように収縮が起こる。しかしながら、筋小胞体(横紋筋におけるCa2+の貯蔵所)は、平滑筋では貧弱である。Ca2+は、細胞外の体液と筋小胞体との両方から平滑筋サイトゾルに流れるが、平滑筋線維には横細管がないので、Ca2+が線維の中心におけるフィラメントに達し、収縮性のプロセスを引き起こすまでより長い時間がかかる。これは、部分的に平滑筋の遅い徴候と持続性の収縮の原因となる。
【0037】
種々のメカニズムにより、平滑筋細胞の収縮と弛緩は調節される。その一つにおいて、
カルモジュリンという調節タンパク質は、サイトゾル中でCa2+に結合する。これは、平滑筋線維にCa2+をゆっくり入らせることに加え、励起が衰えたらそれらを筋線維からゆっくり移動させるため、弛緩を遅延させる。サイトゾルにおけるCa2+の継続的な存在により、平滑筋の調子、継続的な部分的収縮状態が提供される。平滑筋組織は、中空の内部器官、例えば血管、肺への気道、胃、腸の胆嚢、膀胱、陰茎および陰核の海綿体の壁面に存在する。
【0038】
陰茎の勃起は、中枢神経系が視覚的、接触、聴覚的、嗅覚的、及び/又は想像による刺激を受けた場合に、海綿体神経の刺激を通じて、陰茎にある動脈が拡張し、大量の血液が海綿体洞に流入する状態を意味する。
【0039】
海綿体動脈の太さの調節は、自律神経によって行われていて、動脈壁の血管平滑筋は、通常時は交感神経のはたらきで収縮しているが、勃起時には副交感神経の刺激によって収縮がとまり、結果的に動脈が拡張すると考えられている。
【0040】
中枢神経系からの神経刺激が海綿体神経を介して海綿体へ伝達される。これらの非アドレナリン非コリン作動性神経は陰茎の血管構造に終始しており、そこで一酸化窒素を放出する。一酸化窒素が海綿体動脈の平滑筋細胞内に拡散して、細胞内サイクリックグアノシン3’,5’-モノフォスフェート(cGMP)の産生を増加させると、Ca2+ポンプ及びCa2+活性化K+チャネルによると推測されるメカニズムにより、海綿体動脈の平滑筋
が弛緩する。その結果、海綿体動脈が拡張すると共に海綿体洞への入り口に位置するラセン動脈も拡張し、海綿体洞への血液の流入量が急激に増加し、血液によって組織全体が膨張する。その結果、海綿体の内圧が上昇する。ひき続いて、膨張した海綿体洞と白膜との間に存在する貫通静脈が圧迫されて海綿体洞から外部への血液の流出が抑制され、さらに海綿体内圧がさらに上昇する。海綿体洞への血液の流入量の増加と、海綿体洞からの血液の流出量の低下が相乗的に作用して、勃起が生じる。一方、海綿体動脈が収縮し、静脈への圧力が軽減されると、陰茎は弛緩した状態に戻る。
【0041】
このように、海綿体神経が刺激されると、海綿体洞への血液の流入量の増加と流出量の低下とが生じて、海綿体内圧が上昇(昇圧)するところ、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物は、かかる昇圧を増強させる作用を有する。ここで、「昇圧を増強させる作用」とは、昇圧の程度を増強させる作用及び/又は昇圧した状態を維持させる(元に戻るまでの時間を延長させる)作用を含む。
海綿体昇圧が増強されることは、例えば国際公開2015/012194号に記載された測定系等によって確認することができる。
したがって、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物は、海綿体内圧上昇の増強剤の有効成分となる。なお、通常は、増強させる海綿体昇圧は、海綿体神経刺激時に生じる昇圧である。
【0042】
本発明の別の側面は、海綿体内圧上昇の増強剤の製造における一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の使用である。
また、別の側面は、海綿体内圧上昇の増強における一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の使用である。
また、別の側面は、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物、又はこれを有効成分として含有する海綿体内圧上昇の増強剤を哺乳動物に投与することを含む、海綿体内圧上昇を増強する方法である。
【0043】
<3>医薬組成物
本発明の海綿体内圧上昇の増強剤は、医薬組成物に含有させる態様とすることができ、かかる医薬組成物は男性性機能障害の治療用及び/又は予防用として好適である。
【0044】
男性の性機能障害(SD)は、主に性欲、勃起、射精、及びオルガスムの4つ要素のいずれか一以上の問題により、性交に関する関心又は能力が阻害された状態である。SDは自尊心を低下させたり、人間関係を崩壊させたりして、本人やパートナーに苦痛を与えるため、その治療は重要である。SDの原因は、器官的なものと心理的なものとがあり、器官的原因としては典型的には、高血圧や糖尿病に関連する血管疾患、鬱などの精神疾患、種々の薬剤等が挙げられる。また、心理的な原因としては、恐れ、遂行不安、対人葛藤などが挙げられる。
【0045】
男性のSDのうち特に勃起機能障害(ED)は、罹患者が多く、また他のSDの要素とも互いに因果し合うため、重要な治療対象となる。
EDは、性交を行うのに十分な勃起を達成又は持続できない状態をいい、具体的には、勃起自体の欠如又は不足、勃起にかかる時間の長時間化、性交に十分な時間の勃起維持の欠如又は不足などである。
【0046】
前述のとおり、勃起は、海綿体洞への血液の流入量の増加と流出量の低下とによって生じる海綿体内圧の上昇によって引き起こされる。そして、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物は、かかる海綿体内圧上昇を増強させる作用を有する。
したがって、本発明の海綿体内圧上昇の増強剤は、陰茎の勃起を増強させることができるため、EDの治療及び/又は予防、ひいては男性のSDの治療及び/又は予防に有効となり得る。ここで、「勃起を増強させる」とは、勃起の程度を増強させること、勃起に至る時間を短縮させること、及び/又は勃起した状態を維持させる(元に戻るまでの時間を延長させる)ことを含む。
【0047】
本発明の男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物の投与対象は、哺乳動物であり、例えば、ヒトの他にイヌ、ネコ、ウサギ等の愛玩動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ等の家畜動物などが挙げられ、これらのうち特に好ましくはヒトである。
【0048】
本発明の別の側面は、男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物の製造における一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の使用である。
また、別の側面は、男性性機能障害の治療及び/又は予防における一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の使用である。
また、別の側面は、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物、又はこれを有効成分として含有する海綿体内圧上昇の増強剤又は男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物を動物に投与することを含む、男性性機能障害を治療及び/又は予防する方法である。
【0049】
本発明の医薬組成物の投与経路は、経口及び非経口のいずれでもよい。非経口投与としては、皮下注射、静脈注射、直腸投与、吸入等が挙げられる。
【0050】
本発明の医薬組成物の投与量は、製剤化方法、投与方式、投与時間、投与対象の年齢、体重、性別、病的状態、排泄速度、及び反応感応性といった要因によって多様に処方されることができる。
【0051】
本発明の医薬組成物の好ましい投与量は、投与対象が成人の場合、有効成分換算で1日当たり0.01~300mg/kgとすることが、十分に効果が発揮される観点から好ましく、更に0.1~250mg/kg、特に1~200mg/kgとすることが好ましい。この1日分の量を一度に又は数回に分けて投与することができる。
本発明の男性性機能障害の治療用及び/又は予防用の医薬組成物を投与するタイミングは、特に限定されないが、例えば性交1~2時間前が挙げられ、また、食前、食後、食間のいずれでもよい。また、投与/摂取期間は特に限定されない。
【0052】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野における通常の知識を有する者が通常実施する方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することで単位用量形態に製造されるか、あるいは多用量容器内に内入させて製造されることができる。
本発明の医薬組成物は、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤等の固形製剤;溶液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、非経口投与の場合は、液剤、座剤、軟膏剤等に製剤化することができる。
【0053】
本発明の医薬組成物における、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の含有量は、医薬組成物の最終物に対し、少なくとも0.001質量%であることが好ましい。
製剤化に際しては、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の他に、通常製剤化に用いられている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味剤、矯臭剤、pH調整剤、着色剤等の成分を用いることができる。また、公知の又は将来的に見出される障害の治療用及び/又は予防用の医薬や、他の疾患の治療用及び/又は予防用の医薬などを併用することも可能である。
【0054】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α-デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0055】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0056】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0057】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0058】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0059】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、液剤の場合に使用する担体としては、特に限定されないが水等の溶剤等が挙げられる。
【0060】
<4>食品組成物
【0061】
本発明の海綿体内圧上昇の増強剤は、食品組成物に含有させる態様とすることができ、かかる食品組成物は男性性機能の改善用として好適である。
【0062】
前述の通り、本発明の海綿体内圧上昇の増強剤は、海綿体内圧上昇を増強させる作用を有し、これにより陰茎の勃起を増強させることができるため、男性性機能の改善、特に勃起機能の改善に有効となり得る。ここで、「男性性機能の改善」とは、性欲、勃起、射精、オルガスム等の男性機性能が低下・減弱した状態が、良好な状態に戻ったり以前よりも向上・増強したりすることをいう。また、「勃起機能の改善」とは、勃起の程度が増強すること、勃起に至る時間が短縮すること、勃起した状態が維持する(元に戻るまでの時間が延長する)こと等をいう。
したがって、本発明の食品組成物を摂取するのは、通常は男性であり、より具体的には、加齢や種々の要因によって勃起機能を含む男性性機能が低下・減弱した状態にある男性である。
【0063】
本発明の男性性機能の改善用の食品組成物の態様としては、通常の食品、飲料、機能性表示食品、特定保健用食品等の保健機能食品、サプリメント等が挙げられ、特に機能性表示食品が好ましい。
【0064】
本発明の海綿体内圧上昇の増強剤又は男性性機能の改善用の食品組成物の有する有用性や機能性に関しては、製品化の際に表示を付してもよい。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、「海綿体内圧上昇の増強用」や「男性性機能の改善用」といった用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装、容器等に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材等、若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。なお、本発明の食品組成物が保健機能食品等の行政が定める各種制度に基づいて認可を受けその認可のもとで実施される場合は、該認可に基づく態様で表示することが好ましい。
【0065】
本発明の男性性機能の改善用の食品組成物への「表示」としては、例えば、「男性性機能を改善する機能性」、「勃起機能を改善する機能性」、「男性性機能の衰えを抑制する機能性」、「男性性機能の維持をサポートする機能性」、「男性性機能の低下が気になる方へ」、「男としての機能に自信がなくなってきた方へ」等の表示が挙げられる。
【0066】
食品組成物の形態としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、また錠
菓、流動食、飼料等としてもよい。
かかる形態にする際には、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の他に、食品製造時に通常添加される成分、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味料及び香味料等を用いることができる。炭水化物としては、単糖類、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖類、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び多糖類、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及び、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。香味料としては、天然香味料(タウマチン、ステビア抽出物等)及び合成香味料(サッカリン、アスパルテーム等)を使用することができる。その他に、前述の医薬組成物で用いられる添加物であって通常食品にも添加されるものを同様に用いてもよい。
【0067】
また、他に一般の食品に含有させる態様であってもよく、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉の小麦粉製品;、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品等の即席食品;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子等の菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類;これら以外の食品等に、本発明の増強剤を添加してもよい。
【0068】
本発明の食品組成物の好ましい摂取量は、成人が摂取する場合、有効成分換算で1日当たり0.01~300mg/kgとすることが、十分に効果が発揮される観点から好ましく、更に0.1~250mg/kg、特に1~200mg/kgとすることが好ましい。この1日分の量を一度に又は数回に分けて摂取することができる。
本発明の食品組成物を摂取するタイミングは、特に限定されないが、例えば性交1~2時間前が挙げられる。
【0069】
本発明の食品組成物における、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の含有量は、食品組成物全体に対し、少なくとも0.001質量%であることが好ましい。
【0070】
本発明の別の側面は、男性性機能の改善用の食品組成物の製造における一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の使用である。
また、別の側面は、男性性機能の改善における一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物の使用である。
また、別の側面は、一般式(1)で表されるセコイリドイドグルコシド誘導体もしくはその薬理学的に許容される塩又はそれらの加水分解物、又はこれを有効成分として含有す
る海綿体内圧上昇の増強剤又は男性性機能の改善用の食品組成物を摂取することを含む、男性性機能障害を改善する方法である。
【実施例】
【0071】
以下、具体的な実験例をあげて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の態様にのみ限定されない。
【0072】
<実施例1>オレウロペインの海綿体昇圧増強作用
国際公開2015/012194号に開示された陰茎海綿体の勃起レベルの測定系を用いて、陰茎海綿体神経への神経刺激が存在する場合のオレウロペインによる海綿体昇圧増強作用を検討した。
具体的には、性成熟した雄性ラット(11週齢、Wistar系)を、ウレタン(1~1.5 g/kg
)の腹腔内投与で麻酔し、仰臥位に固定し、頸動脈にヘパリン加生理食塩水で満たした血圧および心拍数計測用のカテーテルを挿入し、留置した。また、試料投与のため、シリンジを取り付けたシリコンチューブを、経口的に十二指腸まで挿入、留置した。腹部を切開して陰茎を腹部から外部に露出し、陰茎に連絡する海綿体神経に双極電極を設置して刺激できるようにした。なお、刺激はADInstrumentsのPowerLab/4SPを用いて行った。海綿体
内圧は、海綿体に刺入した針で計測した(DTXTM Plus DT-XXAD (日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、AMPLIFIER CASE(日本電気三栄株式会社)、PowerLab/4SP(ADInstruments))。
【0073】
投与試料として、オリーブ葉抽出物(商品名:オピエース(登録商標)、三菱ケミカルフーズ株式会社製、オレウロペイン含量35質量%以上)又はコントロール群としてカルボキシメチルセルロースを用意し、前記ラットを(A)オレウロペイン投与群(オピエース(登録商標)として100mg/kg、実験群)と、(B)コントロール群(溶媒:カルボキシメチルセルロースとして100mg/kg、対照群)の2群(各群4匹)に分けた。各群に対して試料を投与し、投与前、投与5、30、60、90、後に8Hz、5Vの条件でそれぞれ40秒間刺激した時の周波数依存的な海綿体圧の変化を観察した。
図1のグラフの横軸は投与から刺激までの経過時間を、縦軸は海綿体圧を示す。ただし、海綿体圧は血圧の影響を受けるため、海綿体圧/平均血圧(補正海綿体圧)を算出し、その上昇反応時の最大値(最大海綿体圧)を海綿体圧(グラフの縦軸)とし、4匹の最大海綿体圧の平均値をプロットした。
対照群では電気刺激による最大海綿体圧に影響は見られなかったが、実験群ではオレウロペイン投与により90分後で有意に増強したことが認められた(
図1)。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、海綿体内圧上昇を増強させる作用を有する、有効かつ安全な成分が新たに提供される。かかる成分は、男性性機能障害の治療用及び/若しくは予防用の医薬組成物、又は男性性機能改善用の食品組成物の有効成分として有用であるため、本発明は産業上の利用可能性が高いものである。