(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220329BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B41J2/175 303
B41J2/175 121
B41J2/01 401
B41J2/175 301
(21)【出願番号】P 2018047238
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】横山 敦至
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-168266(JP,A)
【文献】特開2008-195012(JP,A)
【文献】特開2010-069619(JP,A)
【文献】特開2014-010247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0111842(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドから吐出されるインクを保持するサブタンクと、当該サブタンクのインクを補充するためのインクを保持するインクカートリッジと、を備える画像処理装置であって、
次に実行される印刷処理である次印刷処理におけるインク使用量を算出するインク使用量算出手段と、
前記インクカートリッジが保持しているインク残量である第一インク残量を検知する第一インク残量検知手段と、
前記サブタンクが保持しているインク残量である第二インク残量を検知する第二インク残量検知手段と、
次印刷処理で指定されている印刷条件に基づく印刷処理で消費されるインク量である次印刷インク使用量が、第二インク残量によって、1ページ保障できる印刷条件であるか否かを判定する印刷条件判定手段と、
前記印刷条件判定手段において1ページ保障できる条件ではないと判定されたときに、前記次印刷インク使用量と、前記第一インク残量と前記第二インク残量との合計である合計インク残量とを比較するインク残量比較判定手段と、
前記インク残量比較判定手段において、前記次印刷インク使用量が前記合計インク残量以上であると判定されたときは、前記合計インク残量が前記次印刷インク使用量以上になったときに
、複数のレイヤによって構成される1ページの印刷処理における各レイヤの印刷処理である次印刷処理を実行する印刷実行制御手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記印刷条件判定手段において、1ページ保障できる条件であると判定されたとき、印刷実行制御手段は前記次印刷処理を実行する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記インク残量比較判定手段において、前記次印刷インク使用量が前記合計インク残量未満と判定されたとき、前記印刷実行制御手段は前記次印刷処理を実行する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記インク残量比較判定手段において、前記次印刷インク使用量が前記合計インク残量以上と判定されたときは、前記インクカートリッジを交換するか、印刷処理を実行するか、を選択する処理選択手段を有し、
前記印刷実行制御手段は、前記処理選択手段において印刷処理が選択されたことをトリガとして次印刷処理を実行する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記インクは複数の色があり、
前記サブタンク、前記インクカートリッジは、色毎に区別され、
前記インク使用量、前記合計インク残量は、色毎に算出される、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記次印刷処理の内容を指示する印刷データは、各色のインクごとに区別されたインクデータを含み、
各インクデータは、色種別と、当該色種別ごと使用するインク滴のサイズと、当該サイズごとの使用数と、を組み合わせて構成されていて、
前記インク使用量算出手段は、各色のインク滴のサイズと使用数を乗じた値の合計値によって前記インク使用量を算出する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
液体吐出ヘッドから吐出されるインクを保持するサブタンクと、当該サブタンクのインクを補充するためのインクを保持するインクカートリッジと、を備える画像処理装置において実行される画像処理プログラムであって、
次に実行される印刷処理である次印刷処理におけるインク使用量を算出する処理を実行するインク使用量算出部と、
前記インクカートリッジが保持しているインク残量である第一インク残量を検知する処理を実行する第一インク残量検知と、
前記サブタンクが保持しているインク残量である第二インク残量を検知する処理を実行する第二インク残量検知部と、
次印刷処理で指定されている印刷条件に基づく印刷処理で消費されるインク量である次印刷インク使用量が、第二インク残量によって、1ページ保障できるか否かを判定する処理を実行する印刷条件判定部と、
前記印刷条件判定部が1ページ保障できる印刷条件ではないと判定したときに、前記次印刷インク使用量と、前記第一インク残量と前記第二インク残量との合計である合計インク残量とを比較する処理を実行するインク残量比較判定部と、
前記インク残量比較判定部が、前記次印刷インク使用量は前記合計インク残量以上であると判定したとき、前記合計インク残量が前記次印刷インク使用量以上になったときに
、複数のレイヤによって構成される1ページの印刷処理における各レイヤの印刷処理である次印刷処理を実行する印刷実行制御部と、を備えることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項8】
液体吐出ヘッドから吐出されるインクを保持するサブタンクと、当該サブタンクのインクを補充するためのインクを保持するインクカートリッジと、を備える画像処理装置における画像処理方法であって、
次に実行される印刷処理である次印刷処理におけるインク使用量を算出し、
前記インクカートリッジが保持しているインク残量である第一インク残量を検知し、
前記サブタンクが保持しているインク残量である第二インク残量を検知し、
次印刷処理で指定されている印刷条件に基づく印刷処理で消費されるインク量である次印刷インク使用量が、第二インク残量によって、1ページ保障できるか否かを判定し、
1ページ保障できる印刷条件ではないと判定されたときに、前記次印刷インク使用量と、前記第一インク残量と前記第二インク残量との合計である合計インク残量とを比較し、
前記次印刷インク使用量が前記合計インク残量以上であると判定されたときは、前記合計インク残量が前記次印刷インク使用量以上になったときに
、複数のレイヤによって構成される1ページの印刷処理における各レイヤの印刷処理である次印刷処理を実行する、ことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理プログラムおよび画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク液を記録媒体に吐出して画像形成を施す画像処理装置において、インク液を吐出する液体吐出ユニットに搭載されるインクタンクにインク液を補充できる構成を備えるものが知られている。例えば、補充するためのインクを貯留するインクを備え、インクカートリッジからインクタンクにインク液を補充する構成を備える。
【0003】
従来の画像処理装置において、インクタンク内のインク残量と、画像形成を実行する次ページで必要となるインク使用量を比較してインク残量が少ないときに補充を行うようインク液補充動作を制御する画像処理装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、インクタンクのインク液残量を上回るインク量を消費する画像形成(印刷)が実行されるときには、インクカートリッジからインク液を補充することができる。しかし、当該印刷において使用されるインク量が多く、インクカートリッジが保持するインク量をであっても、印刷の途中でインク切れが生じるような印刷を行うときは、印刷の途中でインクカートリッジの交換が必要になる。インクカートリッジの交換をするときには液体吐出ユニットの動作を一旦停止することになるので、その後、印刷処理を再開しても、その印刷品質が低下する、という課題がある。また、場合によっては、印刷が停止した段階で、印刷途中の記録媒体を排出し、再開時には新たな記録媒体に対して印刷処理を実行することもあるので、印刷媒体が無駄になる、という課題もある。
【0005】
本発明は、印刷の途中でのインク補充を抑制し、記録媒体を無駄にしない印刷処理を実行できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明は、液体吐出ヘッドから吐出されるインクを保持するサブタンクと、当該サブタンクのインクを補充するためのインクを保持するインクカートリッジと、を備える画像処理装置であって、次に実行される印刷処理である次印刷処理におけるインク使用量を算出するインク使用量算出手段と、前記インクカートリッジが保持しているインク残量である第一インク残量を検知する第一インク残量検知手段と、前記サブタンクが保持しているインク残量である第二インク残量を検知する第二インク残量検知手段と、次印刷処理で指定されている印刷条件に基づく印刷処理で消費されるインク量である次印刷インク使用量が、第二インク残量によって、1ページ保障できる印刷条件であるか否かを判定する印刷条件判定手段と、前記印刷条件判定手段において1ページ保障できる条件ではないと判定されたときに、前記次印刷インク使用量と、前記第一インク残量と前記第二インク残量との合計である合計インク残量とを比較するインク残量比較判定手段と、前記インク残量比較判定手段において、前記次印刷インク使用量が前記合計インク残量以上であると判定されたときは、前記合計インク残量が前記次印刷インク使用量以上になったときに、複数のレイヤによって構成される1ページの印刷処理における各レイヤの印刷処理である次印刷処理を実行する印刷実行制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷の途中でのインク補充を抑制し、記録媒体を無駄にしない印刷処理を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る画像処理装置の実施形態を示す概略構成図。
【
図2】本実施形態に係る画像処理装置に搭載可能な液体吐出ユニットの実施形態を示す概略構成図。
【
図3】本実施形態に係る画像処理装置が備えるインクカートリッジの実施形態を示す斜視図。
【
図4】本実施形態に係るインクカートリッジのインク供給構造の例を示す図。
【
図5】本実施形態に係るインクカートリッジのインク供給構造の別例を示す図。
【
図6】本実施形態に係る画像処理装置の制御ブロック図。
【
図7】本実施形態に係る画像処理装置の制御ブロックによる印刷制御構成図。
【
図8】本実施形態に係る画像処理装置の制御ブロックによるインク補充印刷制御構成図。
【
図9】本実施形態に係る制御フローの例を示すフローチャート。
【
図10】本実施形態に係る制御フローの別の例を示すフローチャート。
【
図11】本実施形態に係る制御フローのさらなる別の例を示すフローチャート。
【
図12】本実施形態に適用可能なデータ構造の例を示す図。
【
図13】本実施形態に画像処理装置の表示部に表示される画面の例を示す図。
【
図14】本実施形態に画像処理装置の表示部に表示される画面の別の例を示す図。
【
図15】本実施形態に画像処理装置の表示部に表示される画面のさらなる別例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、画像処理装置において、画像形成を施す記録媒体に画像形成材を付着させるときに、供給可能な画像形成材の最大量と、次の画像形成で消費される画像形成材の量と、を比較して次の画像形成の実行諾否を判定する、ことを要旨とする。ここで、画像形成材とは、例えば、液体インクである。また、「供給可能な画像形成材の最大量」とは、例えば、インク吐出ヘッドを備えるインクインクタンクが保持している液体インクの量と、インクタンクに液体インクを補充するインクカートリッジが保持している液体インクの量の合計をいう。
【0010】
以下、本発明に係る画像処理装置、画像処理プログラム、および画像処理方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明において明らかになるが、本発明に係る画像処理装置において、本発明の対象となる画像処理方法を実行するために、本発明に係る画像処理プログラムが用いられる。
【0011】
まず、本発明に係る画像処理装置の実施形態について説明する。
図1および
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置100の内部構成の概要及び機構部を示す図である。
図1および
図2に示すように、インクジェット記録装置100は、フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31と、ステー32と、によって主走査方向に摺動自在に保持されるキャリッジ33を備える。キャリッジ33は、主走査モータによって、タイミングベルトを介して
図2における矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0012】
キャリッジ33は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を備える。記録ヘッド34は、それぞれのインク吐出口を主走査方向と交差する方向に配列されている。記録ヘッド34の各々からは各色のインク滴が吐出される。
【0013】
記録ヘッド34は、インク滴を吐出させるためのエネルギーを生じさせる圧力発生手段を備えたものなどを使用できる。圧力発生手段としては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、用いることができる。
【0014】
なお、記録ヘッド34は、全インク吐出口を同時に駆動させる以外に、時間的に分割して駆動させることもできる。全インク吐出口を同時に駆動させると、各全インク吐出口間のクロストークの影響による記録品位の低下や、一時的に大電流が必要になることにより電源の大容量化などの不利益が生じる場合がある。そこで、時分割駆動することでこれらの不利益を避けることができる。
【0015】
記録ヘッド34にはドライバICが搭載されている。また、ドライバICは、記録ヘッド34の動作を制御する制御部との間でフレキシブルプリントケーブル(FPC)22を介して接続している。
【0016】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34に各色のインクを補充するインクタンクとしての各色のサブタンク35を搭載している。この各色のサブタンク35には各色に対応するインク供給路36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニットが設けられ、また、インク供給路36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに係止部材25にて保持されている。
【0017】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部41の上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び該給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0018】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0019】
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。この搬送ベルト51は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、ETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)と、を有している。
【0020】
搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に所定の押圧力をかけている。なお、搬送ローラ52はアースローラの役目も担っており、搬送ベルト51の中抵抗層(裏層)と接触配置され接地している。
【0021】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。このガイド部材57は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ52とテンションローラ53)の接線よりも記録ヘッド34側に突出させることで搬送ベルト51の高精度な平面性を維持するようにしている。
【0022】
この搬送ベルト51は、副走査モータによって搬送ローラ52が回転駆動されることによって搬送ベルト51が
図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回移動する。
【0023】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロ63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ62と排紙コロ63との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
【0024】
また、装置本体の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0025】
さらに、
図2に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という)82a~82d(区別しないときは「キャップ82」という)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b~82dは保湿用キャップとしている。
【0026】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、あるいはワイパーブレード83に付着してワイパークリーナで除去されたインク、空吐出受け84に空吐出されたインクは廃液タンクに排出されて収容される。
【0027】
また、
図2に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口89などを備えている。
【0028】
さらに、装置本体の内部後方側にはホストとの間でデータを送受するためのUSB(Universal Serial Bus)などの通信回路部(インタフェース)が設けられるとともに、この画像形成装置全体の制御を司る制御部を構成する制御回路基板が設けられている。
【0029】
このように構成されたインクジェット記録装置100においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド部材45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド部材47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0030】
このとき、制御回路によってACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0031】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0032】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で吸引ポンプによってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0033】
次に、本実施形態に係るインクカートリッジ10の一例について
図3を用いて説明する。このインクカートリッジ10は、インクを充填したインク袋111と、このインク袋111を着脱可能に装着する筐体112を備えている。筐体112は、少なくとも2分割可能な第1筐体112Aと第2筐体112Bとを備え、これら2つの部材によってインク袋111の側面を保護する保護カバーとなる筐体部分が構成される。すなわち、筐体112はインク供給方向(インク排出方向)に平行な面でインク袋111を収納する第1筐体112Aと第2筐体112Bとに分割している。
【0034】
そして、インク袋111には、インクジェット記録装置100のカートリッジ装填部4に装填されたときに、カートリッジ装填部4の奥側に設けられて供給経路と連結されるインク供給口部114が設けられている。
【0035】
また、筐体112のインク供給口部114側の面(背面)には、このインクカートリッジ10に関する情報、例えば、インク色、インク種、使用期限、ID番号、インク量などに関する固有の情報を記憶した記憶手段である不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)115が設けられている。カートリッジ装填部4に装填されたときに、カートリッジ装填部4の奥側に設けられた装置本体側の電極と電気的に接続されて、不揮発性メモリ115に記憶されている上記の情報がインクジェット記録装置100の制御部に取り込まれる。
【0036】
次に、本実施形態に係るインクカートリッジ10とサブタンク35の構成について、
図4および
図5を用いて説明する。
図4および
図5に示すように、インクカートリッジ10とサブタンク35は、インク供給路36を含む供給部を通じて接続されている。インクカートリッジ10は、ブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)の各色のインクをヘッドタンクであるサブタンク35に供給する。インクカートリッジ10からサブタンク35へのインクの供給は、インク供給ポンプ361による。
【0037】
記録ヘッド34は、ヘッド部341と、フィルタユニット342と、サブタンク35と、フィラー343と、エアー検知センサ344と、を備えている。ヘッド部341は、インクの吐出先となる用紙42に向けて所定のタイミングでインクを吐出するように、後述する制御部によってインク吐出動作が制御される。フィルタユニット342は、インク供給路に配置されインク中の異物の除去を行うためのフィルタである。サブタンク35は、画像形成時に使用するインクをあらかじめ貯留しておくためのヘッドタンクである。フィラー343は、サブタンク35のインク量を把握するためのフィラーセンサにより検知される。エアー検知センサ344は、インクに空気が混入した場合に、その異常を知らせるためセンサである。
【0038】
記録ヘッド34のサブタンク35へのインク充填方法として、インクカートリッジ10と記録ヘッドの間に設けられたインク供給ポンプ361により、インクカートリッジ10内のインクを吸い上げ、インク供給路36を構成するチューブを介し、記録ヘッド34のヘッドタンク(サブタンク35)へと送られる。また、記録ヘッド34内のエアー検知センサ344により、気泡の混入を検知した場合、通常、空気抜き動作として記録ヘッド34からのインク吐出とインクカートリッジ10からのインク充填を行う。
【0039】
また、インクカートリッジ10と記録ヘッド34にサブタンク35を持つインクジェット式プリンタにおける、インクカートリッジ10と記録ヘッド34の構成については、ブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)に対し、それぞれ一つのヘッド部341で構成している
図4のような構成や、複数の色のインクカートリッジ10のいずれかを一つのヘッド部341で構成している
図5のような構成がある。
【0040】
次に、本実施形態に係るインクジェット記録装置100が備える制御ブロックについて
図6を用いて説明する。
図6に示すようにインクジェット記録装置100は、本発明に係る判定手段及び回復動作を制御する手段などを兼ねたマイクロコンピュータであって、インクジェット記録装置100の各部位の動作を制御する制御部に相当する制御用マイコン601、印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御用マイコン608、などを備える。
【0041】
インクジェット記録装置100に外部装置200を接続し、当該外部装置200から画像形成指示が与えられてインクジェット記録装置100は動作をする。インクジェット記録装置100に画像形成指示を与える外部装置200として、例えば、一般的なコンピュータが想定される。この場合、当該コンピュータが実行するアプリケーションプログラム201から画像形成の実行対象となるデータが出力される。アプリケーションプログラム201から出力されたデータ(画像データ)は、外部装置200(コンピュータ)において動作するオペレーションシステム(OS)202によってプリンタドライバ203に伝達される。
【0042】
プリンタドライバ203は、アプリケーションプログラム201から伝達された画像データをインクジェット記録装置100において処理可能な形式の印写画像データに変換する。印写画像データは、通信経路204を経由してインクジェット記録装置100に入力されうる。
【0043】
制御用マイコン601は、通信経路204から入力される印写画像データに基づいて用紙42に画像を形成する。そのため、キャリッジ駆動モータや搬送モータをキャリッジ駆動モータ駆動回路603及び搬送モータ駆動回路605を介して駆動制御するとともに、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成して、ヘッド駆動回路609に与えるなどの制御を行なう。
【0044】
制御用マイコン601には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路602からの検出信号が入力される。この検出信号に基づいて、キャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。キャリッジ位置検出回路602は、例えば、キャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシートのスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサで読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。キャリッジ駆動モータ駆動回路603は、制御用マイコン601から入力されるキャリッジ移動量に応じてキャリッジ駆動モータを回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0045】
制御用マイコン601には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路604からの検出信号が入力され、制御用マイコン601はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路604は、例えば、搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシートのスリット数を、フォトセンサで読み取って計数することで搬送量を検出する。搬送モータ駆動回路605は、制御用マイコン601から入力される搬送量に応じて搬送モータを回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0046】
制御用マイコン601は、給紙コロ駆動回路610に給紙コロ駆動指令を与えることによって給紙コロ43を一回転させる。制御用マイコン601は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路611を介してモータ191を回転駆動することにより、キャップ182(キャップ82)の昇降、ワイパーブレード183(ワイパーブレード83)の昇降を行なわせる。
【0047】
制御用マイコン601は、インク供給モータ駆動回路612を介して供給ユニット24のポンプを駆動するためのインク供給モータを駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からサブタンク35に対してインクを補充供給する。
【0048】
制御用マイコン601には、サブタンク35が満タン状態にあることを検知するサブタンク満タンセンサ613からの検知信号、カートリッジ装填部4の前カバー6の開閉を検知するカートリッジカバーセンサ614からの検知信号などが入力される。
【0049】
また、制御用マイコン601は、カートリッジ通信回路615を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ115k、115c、115m、115yに記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行なって、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)616に格納保持する。
【0050】
ヘッド駆動回路609は、制御用マイコン601からの印刷データに基づいて記録ヘッド34の圧力発生手段(ピエゾ型ヘッドであれば圧電素子)を駆動して、ヘッド部341が備えるノズルから所定の液滴を吐出させる。
【0051】
制御用マイコン601は、紙サイズセンサ606から通紙中の用紙の大きさを検出し、入力された画像データが用紙上に配置可能かどうか、また用紙外に画像データがある場合に、画像データをトリミングして描画するように印刷制御用マイコンに設定することができる。紙サイズを検出する方法としては、キャリッジ33の側部に反射型センサを配置し、キャリッジ33が走査する際に用紙と搬送路の反射率の違いを検出することで用紙幅を検出する方法がある。そのほかには、搬送路上に搬送方向と直行してラインセンサを配置することで、用紙幅を検出することもでき、また搬送方向の用紙長さについては、搬送路上に同じく反射型のセンサを配置し、用紙を検出してからの搬送量を計数することで用紙長を検出することができる。
【0052】
制御用マイコン601は、搬送路上に複数個配置された紙位置センサ607から、用紙が機内のどの位置にあるかを検出することができ、印刷中に意図しない位置に用紙がある場合にはJAMを検出し、ユーザに異常を検出することができる。またその異常が発生している箇所も示すことができる。
【0053】
次に、インクジェット記録装置100の制御機能について、
図7を用いて説明する。
図7は、インクジェット記録装置100のハードウェア資源である制御用マイコン601において本発明に係る画像形成プログラムを実行したときに実現される機能ブロックを例示する図である。
【0054】
印刷制御処理が実行されるときは、アプリケーションプログラム201を通してユーザより印刷命令があったときである。このとき、OS202は印刷対象となる画像データをプリンタドライバ203に伝達し、当該画像データはプリンタドライバ203内で処理されてデータ受信部15を介して印刷制御部11に印刷要求として通知される。
【0055】
印刷制御部11は、通知された画像データに係る印刷内容(印刷条件や形成する画像で使用されるインクの量など)から印刷するために使用されるインク使用量を算出する。算出したインク使用量に足りるインク残量があるか否かをインク残量管理部12に問い合わせて、印刷可否判定を行う。ここで、インク残量管理部12で通知を受けた状態が、ユーザ操作によって一時的に印刷可能な状態であった場合には、ユーザインターフェース部13に、印刷するか否かユーザ指示待ち画面を表示するための通知を行い、ユーザインターフェース部13からのユーザ指示により再度印刷判定処理を行う。印刷指示があった場合には、機器制御部14に印刷機器動作要求を通知し、印刷処理を開始する。印刷キャンセル指示の場合には、内部で保持している画像データを破棄する。
【0056】
次に、印刷制御部11についてより詳細に説明する。
図8は、印刷制御部11の詳細な機能ブロック図である。
図8に示すように、印刷制御部11は、主走査制御部101、副走査制御部102、インク使用量算出部103、ページ印刷開始判断部104、レイヤ印刷開始判断部105、から構成される。
【0057】
主走査制御部101は、キャリッジの移動とヘッドからのインク吐出の制御を行う。副走査制御部102は、印刷媒体(用紙42)の搬送制御を行う。インク使用量算出部103は、データ受信部15を介して受けとった、次に実行する印刷処理(次印刷処理)の画像データに含まれる、各バンド、各レイヤ、各ページ単位での各色のインク使用量を算出する。したがて、インク使用量算出部103は、インク使用量算出手段に相当する。
【0058】
ページ印刷開始判断部104は、次ページの印刷処理(次印刷処理)が開始可能か否かの判断を行う。この印刷処理の開始可能の判断は、後述する画像処理プログラムによって実行される。すなわち、ページ印刷開始判断部104は、後述する画像処理プログラムの実施形態でもある。
【0059】
レイヤ印刷開始判断部105は、次印刷処理に係る次レイヤが開始可能か否かの判断を行う。なお、「レイヤ」とは、次印刷処理において1ページの印刷処理を実行するときに、複数の層に分けて、これら層を重ねて印刷する場合の印刷単位である。レイヤごとの印刷を示すデータが上記の画像データに含まれているときには、次印刷処理はレイヤごとの印刷処理として実行され、1ページ分の印刷は回数にわけて重ね印刷することになる。この印刷処理の開始可能の判断は、後述する画像処理プログラムによって実行される。すなわち、レイヤ印刷開始判断部105は、後述する画像処理プログラムの実施形態でもある。
【0060】
[第一実施形態]
次に、本発明に係る画像処理プログラムの実施形態について、フローチャート等を用いて説明する。当該画像処理プログラムにより実行される本発明に係る画像処理方法についても合わせて説明する。以下の説明において、本発明に係る画像処理装置が実行可能な画像形成処理など、周知の制御フローに関する説明は省略し、本発明として特徴的な制御フローを主に説明する。
【0061】
図9に示すフローチャートは、ページ印刷開始判断部104(
図8参照)において実行可能な制御フローである。インクジェット記録装置100において、新たな画像形成処理の指示を受信したときは、ページ印刷開始判断部104において以下の処理が実行される。
【0062】
まず、サブタンク35のインク残量が画像によらず、1ページ保障できるインク残量であるか否かを判定する(S901)。ここで「画像によらず」とは、「外部装置200からデータ受信部15が受信した画像データに含まれる印刷処理内容を指示するデータや、印刷対象の画像データの大きさなどには関係なく」を意味する。また、「1ページ保障できるインク残量」とは、「データ受信部15が受信した画像データに基づいて印刷処理を実行するにあたり、1ページ分の印刷処理を実行するときに消費されるインク量よりも多いインク量」を意味する。
【0063】
S901の処理は、サブタンク35に貯留されているインク残量と、「1ページ保障できるインク残量」として制御用マイコン601の記憶部にあらかじめ記憶されている固定値とを比較する。この固定値は例えば、「A4サイズの記録媒体に重ね打ち印刷」をしない条件で、1ページ分の印刷処理をした場合に消費されるインク量の最大値とする。なお、S901の判定処理は、各色のサブタンク35のインク残量ごとに実行される。すなわち、ページ印刷開始判断部104は第一インク残量検知手段と、第二インク残量検知手段に相当する。また、ページ印刷開始判断部104は、インク残量比較判定手段に相当する。なお、ページ印刷開始判断部104は第一インク残量検知部、第二インク残量検知部、インク残量比較判定部にも相当する。
【0064】
S901において、いずれかのサブタンク35のインク残量が上記の固定値を下回れば(S901/NO)、これから行う画像形成処理において、画像の内容に関わらず、1ページ分の画像形成処理(印刷処理)の実行途中でインク切れになるサブタンク35があることになる。そこで、インク残量が足りないサブタンク35に対してインクカートリッジ10からインクの充填が実行される(S902)。S902は、サブタンク35が満杯になるまで、インク供給ポンプ361を動作させ続ける処理である。なお、S902は、インク残量が不十分と判定された色のインクカートリッジ10に対してのみではなく、全ての色のサブタンク35に対して実行してもよい。
【0065】
S902に続いて、インク供給ポンプ361を一定時間動作させたときにサブタンク35のインク残量が充填されたか否かの判定をする(S903)。ここで、サブタンク35のインク残量が満杯になっていないとき(S903/NO)、インクカートリッジ10を交換する必要があることを知らせる表示を操作表示部に出力し、S902に処理を戻す(S904)。S904において操作表示部に表示される画面の例を、
図13に示す。
図13の例では、マゼンダ色のインクが満杯になっておらず、インクカートリッジ10の交換を指示するメッセージが表示されている。
【0066】
なお、S904からS902に移行するトリガは、例えば、インクカートリッジ10の交換が実行されることである。したがって、S904においてインクカートリッジ10が交換されなければ、処理は待ち状態になる。
【0067】
S901において、サブタンク35のインク残量が閾値よりも多い場合(S901/YES)、次ページの印刷処理に対して指定されている印刷条件がサブタンク残量で1ページ保障できる印刷条件か否かについて判定する(S905)。また、S903において、サブタンク35のインク残量が充填された場合(S903/YES)も同様である。ここで「1ページ保障できる印刷条件」とは、上記の「1ページ保障できるインク残量」によって1ページ分の印刷が完了する印刷条件である。
【0068】
なお、「印刷保障できない印刷条件」としては、例えば、「A3サイズの記録媒体に対して二度打ちなどの重ね打ち印刷を行う」などがある。このような印刷条件は、画像形成の内容によっては大量にインクを消費することになり、印刷途中でインク切れになる可能性があるからである。
【0069】
S905において、「1ページ保障できる印刷条件」であれば(S905/YES)、サブタンク35にあるインク残量で次ページの印刷処理に必要となるインク量に足りるので、次ページの印刷処理を開始する(S909)。すなわち、ページ印刷開始判断部104は、印刷条件判定手段および印刷条件判定部にも相当する。
【0070】
S905において、「1ページ保障できる印刷条件」でなければ(S905/NO)、データ受信部15が受信した印刷データ(画像データ)から、次ページの印刷に必要となるインク量(次印刷インク使用量)を算出する(S906)。なお、S906における算出処理の詳細は、後述する。
【0071】
続いて、S906において算出されたインク使用量が、サブタンク35におけるインク残量とインクカートリッジ10のインク残量の合計量(合計インク残量)以下であるか否かの判定処理を実行する(S907)。ここで、インクカートリッジ10のインク残量は、不揮発性メモリ115に記憶されている。このインク残量を、制御用マイコン601がカートリッジ通信回路615を通じて不揮発性メモリ115から読み出す。インク使用量が合計インク残量以下であれば(S907/YES)、次ページの印刷で使用されるインク量は足りるので、次ページの印刷処理を開始する(S909)。すなわち、ページ印刷開始判断部104は、印刷実行制御手段および印刷実行制御部にも相当する。
【0072】
インク使用量が合計インク残量
以下でなければ(S907/NO)、インクカートリッジ10を交換する必要があるので、その旨を知らせる表示を操作表示部に出力し、インクカートリッジ10が交換されるまでS908で処理を待つ。インクカートリッジ10が交換されれば、処理をS907に移行する。S908において操作表示部に表示される画面の例を、
図14に示す。
図14の例では、マゼンダ色のインクが不足しているので、当該色のインクカートリッジ10の交換を指示するメッセージが表示されている。
【0073】
以上説明した本実施形態によれば、1ページの印刷をするときに、途中でインクカートリッジ10の交換をする必要がないことを事前に確認することができる。これによって、印刷途中でインクカートリッジ10を交換する間に、印刷途中の画像が変質してしまい、最終的な画質の低下を生じさせる要因を抑制することができる。
【0074】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る画像処理方法の別の実施形態について説明する。すでに説明をした実施形態と重複する処理については、詳細な説明を省略する。インクジェット記録装置100において、新たに画像形成処理の指示を受信したときは、ページ印刷開始判断部104において以下の処理が実行される。
【0075】
まず、サブタンク35のインク残量が、すでに説明をした閾値よりも多いか否かを判定する(S1001)。S1001からS1007までの処理は、すでに説明をしたS901からS907までの処理と同様である。
【0076】
インク使用量が合計インク残量以下であれば(S1007/YES)、次ページの印刷で使用されるインク量は足りるので、次ページの印刷処理を開始する(S1010)。
【0077】
インク使用量が合計インク残量
以下でなければ(S1007/NO)、操作表示部に「インク交換か印刷開始の選択」を通知する表示を行う(S1008)。S1008において操作表示部に表示される画面の例を、
図15に示す。
図15(a)は、マゼンダ色のインクが満杯になっておらず、インクカートリッジ10の交換を指示するメッセージが表示される画面であって、
図15(b)は、印刷開始を選択する画面である。S1008では、
図15(a)と
図15(b)を一定に時間間隔で交互に表示する処理が実行される。
【0078】
続いて、操作表示部において「印刷指示」または「カートリッジ交換」のいずれかの選択入力があるまで処理を待つ(S1009)。S1009において、「印刷指示」が選択された場合(S1009/YES)、処理をS1010に移行する。S1009において、「カートリッジ交換」が選択された場合(S1009/NO)、インクカートリッジ10が交換されるまでS1009で処理を待ち、インクカートリッジ10が交換されれば、処理をS1007に移行する。したがって、ページ印刷開始判断部104は、処理選択手段および処理選択部にも相当する。
【0079】
以上説明した本実施形態によれば、1ページの印刷をするときに、途中でインクカートリッジ10の交換をする必要がないことを事前に確認することができ、さらに、インクが足りないとしても、強制的に印刷を実行させることを選択できる。例えば、インク使用量に対して合計インク残量が足りないとしても、インクカートリッジ10から読み出されたインク残量などに多少の誤差は含まれる。したがって、実際に印刷を実行した場合には、インクが足りる可能性もある。この点について、ユーザ判断によって強制印刷できるようにすることで、印刷の効率化を図ることもできる。
【0080】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る画像処理方法のさらに別の実施形態について説明する。本実施形態に係るインクジェット記録装置100は、新たに画像形成処理の指示を受信したときは、レイヤ印刷開始判断部105において以下の処理が実行される。
【0081】
図11に示すフローチャートは、レイヤ印刷開始判断部105(
図8参照)において実行可能な制御フローである。インクジェット記録装置100において、新たな画像形成処理の指示を受信したときは、レイヤ印刷開始判断部105において以下の処理が実行される。
【0082】
まず、サブタンク35のインク残量が画像によらず、1レイヤ保障できるインク残量であるか否かを判定する(S1101)。ここで「画像によらず」とは、「外部装置200からデータ受信部15が受信した画像データに含まれる印刷処理内容を指示するデータや、印刷対象の画像データの大きさなどには関係なく」を意味する。また、「1レイヤ保障できるインク残量」とは、「データ受信部15が受信した画像データに基づいて印刷処理を実行するにあたり、1レイヤ分の印刷処理を実行するときに消費されるインク量よりも多いインク量」を意味する。
【0083】
S1101の処理は、サブタンク35に貯留されているインク残量と、「1レイヤ保障できるインク残量」として制御用マイコン601の記憶部にあらかじめ記憶されている固定値とを比較する。この固定値は例えば、「A4サイズの記録媒体に重ね打ち印刷」をしない条件で、1レイヤ分の印刷処理をした場合に消費されるインク量の最大値とする。なお、S1101の判定処理は、各色のサブタンク35のインク残量ごとに実行される。
【0084】
S1101において、いずれかのサブタンク35のインク残量が上記の固定値を下回れば(S1101/NO)、これから行う画像形成処理において、画像の内容に関わらず、1レイヤ分の画像形成処理(印刷処理)の実行途中でインク切れになるサブタンク35があることになる。そこで、インク残量が足りないサブタンク35に対してインクカートリッジ10からインクの充填が実行される(S1102)。S1102は、サブタンク35が満杯になるまで、インク供給ポンプ361を動作させ続ける処理である。なお、S1102は、インク残量が不十分と判定された色のインクカートリッジ10に対してのみではなく、全ての色のサブタンク35に対して実行してもよい。
【0085】
S1102に続いて、インク供給ポンプ361を一定時間動作させたときにサブタンク35のインク残量が充填されたか否かの判定をする(S1103)。ここで、サブタンク35のインク残量が満杯になっていないとき(S1103/NO)、インクカートリッジ10を交換する必要があることを知らせる表示を操作表示部に出力し、S1102に処理を戻す(S1104)。S1104において操作表示部に表示される画面の例を、
図13に示す。
図13の例では、マゼンダ色のインクが満杯になっておらず、インクカートリッジ10の交換を指示するメッセージが表示されている。
【0086】
なお、S1104からS1102に移行するトリガは、例えば、インクカートリッジ10の交換が実行されることである。したがって、S1104においてインクカートリッジ10が交換されなければ、処理は待ち状態になる。
【0087】
S1101において、サブタンク35のインク残量が閾値よりも多い場合(S1101/YES)、次レイヤの印刷処理に対して指定されている印刷条件がサブタンク残量で1レイヤ保障できる印刷条件か否かについて判定する(S1105)。また、S1103において、サブタンク35のインク残量が充填された場合(S1103/YES)も同様である。ここで「1レイヤ保障できる印刷条件」とは、上記の「1レイヤ保障できるインク残量」によって1レイヤ分の印刷が完了する印刷条件である。
【0088】
なお、「印刷保障できない印刷条件」としては、例えば、「A3サイズの記録媒体に印刷を行う」などがある。このような印刷条件は、画像形成の内容によっては大量にインクを消費することになり、印刷途中でインク切れになる可能性があるからである。
【0089】
S1105において、「1レイヤ保障できる印刷条件」であれば(S1105/YES)、サブタンク35にあるインク残量で次レイヤの印刷処理に必要となるインク量に足りるので、次レイヤの印刷処理を開始する(S1109)。
【0090】
S1105において、「1レイヤ保障できる印刷条件」でなければ(S1105/NO)、データ受信部15が受信した印刷データ(画像データ)から、次レイヤの印刷に必要となるインク量(インク使用量)を算出する(S1106)。なお、S1106における算出処理の詳細は、後述する。
【0091】
続いて、S1106において算出されたインク使用量が、サブタンク35におけるインク残量とインクカートリッジ10のインク残量の合計量(合計インク残量)以上であるか否かの判定処理を実行する(S1107)。ここで、インクカートリッジ10のインク残量は、不揮発性メモリ115に記憶されている。このインク残量を、制御用マイコン601がカートリッジ通信回路615を通じて不揮発性メモリ115から読み出す。インク使用量が合計インク残量以下であれば(S1107/YES)、次レイヤの印刷で使用されるインク量は足りるので、次ページの印刷処理を開始する(S1109)。
【0092】
インク使用量が合計インク残量
以下でなければ(S1107/NO)、インクカートリッジ10を交換する必要があるので、その旨を知らせる表示を操作表示部に出力し、インクカートリッジ10が交換されるまでS1108で処理を待つ。インクカートリッジ10が交換されれば、処理をS1107に移行する。S1108において操作表示部に表示される画面の例を、
図14に示す。
図14の例では、マゼンダ色のインクが不足しているので、当該色のインクカートリッジ10の交換を指示するメッセージが表示されている。
【0093】
以上説明した本実施形態によれば、1レイヤの印刷をするときに、途中でインクカートリッジ10の交換をする必要がないことを事前に確認することができる。これによって、印刷途中でインクカートリッジ10を交換する間に、印刷途中の画像が変質してしまい、最終的な画質の低下を生じさせる要因を抑制することができる。
【0094】
次に、本発明に係るインクジェット記録装置100が画像形成処理の使用される画像データのデータ構造について
図12を用いて説明する。
図12に示すデータ構造300は、データ受信部15においてインクジェット記録装置が受け取る画像データの1ページ分のデータを例示している。
【0095】
図12に示すように、画像データ(ラスターデータ)内の各バンドデータは、色種別に対応し、2ビットで記録ヘッド34から塗布する適量のインク滴のサイズと、その数の組み合わせを示すインクデータが格納されている。これによって、データ受信部15が、印刷データに含まれる各色のインク滴の大きさ(サイズ)ごとに、その数をカウントした合計量から、すでに説明をしたS906、S1006、S1106におけるインク使用量の算出をすることができる。すなわち、インク使用量の合計値は、このカウント処理によって実行される。したがって、図12に示す画像データのデータ構造であれば、次レイヤの印刷処理に使用されるインク使用量や、次ページの印刷処理で使用されるインク使用量を算出することができる。
【0096】
なお、外部装置200において、画像データ(ラスターデータ)を作成した時に、ページヘッダやレイヤヘッダやバンドヘッダに各インク色の各滴サイズの使用数をあらかじめ格納しておくようにしてもよい。その場合、外部装置200における処理の量が増えるが、その一方、インクジェット記録装置100におけるインク使用量の算出処理が不要になり、その分、印刷処理の時間を短縮して高速な印刷処理に対応できるようになる。また、データ受信部15に1ページ分の印刷データが保存できない場合であっても、インク使用量の算出処理を実行することができる。
【0097】
インク使用量の算出方法について例を挙げて説明する。例えば、1ページの印刷におけるシアンのインクの使用量は、図12に例示したように、「(シアン小滴の量×C1)+(シアン中滴の量×C2)+(シアン大滴の量×C3)」を演算することによって算出できる。他の色も同様に、それぞれの色の小滴、中滴、大滴の量と、ページヘッダに格納されている滴の数から算出できる。
【0098】
同様に、例えば、1レイヤの印刷におけるイエローのインク使用量を算出するのであれば、「(イエロー小滴の量×y1)+(イエロー中滴の量×y2)+(イエロー大滴の量×y3)」によって算出できる。
【0099】
なお、サブタンク35のインク残量は、サブタンク35のインク残量から、上記の計算で算出される現在印刷したページまたはレイヤで消費されるインク量を減算することで算出される。
【0100】
例えば、印刷後のシアンのサブタンク残量は、「印刷前のシアンのサブタンク残量-1ページのシアンのインク使用量」によって算出できる。なお、インクカートリッジ10におけるインク残量は、サブタンク35に充填したインク量を減算して算出することもできる。例えば、シアンのインクカートリッジ10におけるインク残量は、「サブタンク35の満タン容量-充填前のシアンのサブタンク35のインク残量」から算出することができる。
【0101】
以上説明した各実施形態によれば、サブタンク35のインク残量を上回るようなインク使用量となる画像形成処理を実行するとき、サブタンク35へのインク充填量がインク使用量を超えることの事前確認を画像形成処理の実行開始前に確実に行うことができる。これによって、画像形成処理(印刷処理)の途中でインクカートリッジ10の交換が発生することで生ずる印刷品質の低下を防ぐことができる。また、画像形成処理を途中中止による記録媒体の無駄も防ぐことができる。
【符号の説明】
【0102】
2 :給紙トレイ
3 :排紙トレイ
4 :カートリッジ装填部
6 :前カバー
10 :インクカートリッジ
11 :印刷制御部
12 :インク残量管理部
13 :ユーザインターフェース部
14 :機器制御部
15 :データ受信部
21 :フレーム
21A :側板
21B :側板
21C :後板
24 :供給ユニット
25 :係止部材
31 :ガイドロッド
32 :ステー
33 :キャリッジ
34 :記録ヘッド
35 :サブタンク
36 :インク供給路
41 :用紙積載部
42 :用紙
43 :給紙コロ
44 :分離パッド
45 :ガイド部材
46 :カウンタローラ
47 :搬送ガイド部材
48 :押さえ部材
49 :先端加圧コロ
51 :搬送ベルト
52 :搬送ローラ
53 :テンションローラ
56 :帯電ローラ
57 :ガイド部材
61 :分離爪
62 :排紙ローラ
63 :排紙コロ
71 :両面ユニット
72 :手差しトレイ
81 :維持回復機構
82 :キャップ
82a :キャップ
82b :キャップ
82c :キャップ
82d :キャップ
83 :ワイパーブレード
84 :空吐出受け
88 :空吐出受け
89 :開口
100 :インクジェット記録装置
101 :主走査制御部
102 :副走査制御部
103 :インク使用量算出部
104 :ページ印刷開始判断部
105 :レイヤ印刷開始判断部
111 :インク袋
112 :筐体
112A :第1筐体
112B :第2筐体
114 :インク供給口部
115 :不揮発性メモリ
115c :不揮発性メモリ
115k :不揮発性メモリ
115m :不揮発性メモリ
115y :不揮発性メモリ
182 :キャップ
183 :ワイパーブレード
191 :モータ
200 :外部装置
201 :アプリケーションプログラム
203 :プリンタドライバ
204 :通信経路
300 :データ構造
341 :ヘッド部
342 :フィルタユニット
343 :フィラー
344 :エアー検知センサ
361 :インク供給ポンプ
601 :制御用マイコン
602 :キャリッジ位置検出回路
603 :キャリッジ駆動モータ駆動回路
604 :搬送量検出回路
605 :搬送モータ駆動回路
606 :紙サイズセンサ
607 :紙位置センサ
608 :印刷制御用マイコン
609 :ヘッド駆動回路
610 :給紙コロ駆動回路
611 :維持回復機構駆動用モータ駆動回路
612 :インク供給モータ駆動回路
613 :サブタンク満タンセンサ
614 :カートリッジカバーセンサ
615 :カートリッジ通信回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】