(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】表示装置及び通信端末
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2018049606
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】天野 雅人
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0277847(US,A1)
【文献】特開2013-183286(JP,A)
【文献】特開2017-168977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面と、
前記表示面の周辺の各辺に配置された複数のマイクと、
前記表示面の傾きを検出する傾き検出部と、を備えた表示装置であって、
前記複数のマイクは各々、他の辺に並べられた前記マイクとは前記表示面の一辺に沿った第1方向及び当該第1方向と直交する第2方向の何れにも並ぶことなく配置され、
前記傾き検出部の結果に基づいて前記複数のマイクの水平方向の順番を設定する設定部
と、
前記複数のマイクから入力された音声及び前記設定部により設定された順番に基づいて音声の入力方向を検知する検知部と、をさらに備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記複数のマイクは、前記表示面の周辺の各辺に1つずつ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示面は、前記第1方向に沿った一対の第1辺と、前記第2方向に沿った一対の第2辺と、を有し、
前記一対の第1辺の一方に配置されたマイクは、前記第1方向の一方側の端部寄りの位置に配置され、
前記一対の第1辺の他方に配置されたマイクは、前記第1方向の他方側の端部寄りの位置に配置され、
前記一対の第2辺のうち前記第1方向の一方側の辺に配置されたマイクは、前記第2方向の一方側の端部寄りの位置に配置され、
前記一対の第2辺のうち前記第1方向の他方側の辺に配置されたマイクは、前記第2方向の他方側の端部寄りの位置に配置されたことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示面の傾きに対応する前記複数のマイクの水平方向の順番が記憶された記憶部をさらに備え、
前記設定部は、前記傾き検出部の検出結果に対応する順番を前記記憶部から読み出して設定することを特徴とする請求項1~3何れか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1~
4何れか1項に記載の表示装置と、
前記複数のマイクに入力された音声を他の機器に送信する通信部と、を備えたことを特徴とする通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等のネットワークを介して遠隔地(拠点)に設置された通信端末を接続し、遠隔会議を行う会議システムが普及している。
【0003】
この会議システムでの通信端末は、各拠点の会議室等に設置され、相手先の通信端末との間で会議出席者の画像や音声をやり取りすることで遠隔会議を行う。
【0004】
上記通信端末において音声を入力するマイクとして、当該マイクが水平方向に複数配列されてなるマイクロフォンアレイを用いることが知られている(特許文献1、2)。このマイクロフォンアレイによれば、水平方向に平行な床面上に分散している人々の中から話者方向を特定し、その話者方向以外から入ってくる音をノイズとして除去することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マイクロフォンアレイが内蔵された製品の設置角度を90度回転(横置き→縦置き)させてしまうと、マイクが垂直方向に沿って並んでしまうため、話者方向を特定することができない。
【0006】
そこで、例えば、タブレット端末のように縦置き、横置きの双方で使用されるような通信端末の場合、以下に述べる2列のマイクロフォンアレイを内蔵することが考えられる。即ち、縦置き時に水平方向に複数配列される第1マイクフォンアレイと、横置き時に水平方向に複数配列された第2マイクロフォンアレイと、を製品に内蔵する。しかしながら、マイク数が倍増してしまう、という問題があった。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、マイク数を低減しつつ設置角度回転に対応して話者方向の検出が行える表示装置及び通信端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するためになされた請求項1記載の表示装置は、表示面と、前記表示面の周辺の各辺に配置された複数のマイクと、前記表示面の傾きを検出する傾き検出部と、を備えた表示装置であって、前記複数のマイクは各々、他の辺に並べられた前記マイクとは前記表示面の一辺に沿った第1方向及び当該第1方向と直交する第2方向の何れにも並ぶことなく配置され、前記傾き検出部の結果に基づいて前記複数のマイクの水平方向の順番を設定する設定部と、前記複数のマイクから入力された音声及び前記設定部により設定された順番に基づいて音声の入力方向を検知する検知部と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、マイク数の低減しつつ設置角度回転に対応して話者方向の検出が行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の表示装置を組み込んだ通信端末としてのタブレット端末の一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すタブレット端末を横向置きしたときの外観図である。
【
図3】
図1に示すタブレット端末を縦向置きしたときの外観図である。
【
図4】比較品のタブレット端末を横置きしたときの外観図である。
【
図5】比較品のタブレット端末を縦置きしたときの外観図である。
【
図6】他の実施形態におけるタブレット端末を横置きにしたときの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の表示装置を組み込んだ通信端末としてのタブレット端末1の一実施形態について
図1~
図3を参照して説明する。
【0012】
同図に示すように、タブレット端末1(通信端末)は、MPU2と、通信制御部3(通信部)と、記憶部4と、表示面5と、入力部6と、映像入力部7と、音声入力部8と、マイクロフォンアレイ制御部9と、音声出力部10と、音声出力制御部11と、傾き検出部12と、を備えている。
【0013】
MPU2は、タブレット端末1全体の制御を司る。
【0014】
通信制御部3(通信部)は、LANや無線通信など通信方式を用いて他のタブレット端末との通信を行う。他のタブレット端末は、例えば、遠隔地の会議室に設置されている。通信制御部3は、他のタブレット端末からの話者の映像や話者音声を受信する。通信制御部3は、後述する映像入力部7や音声入力部8から入力された話者映像や話者音声を他のタブレット端末に送信する。
【0015】
記憶部4は、MPU2が実行する制御プログラムなどが記憶されている。
【0016】
表示面5は、例えば、液晶ディスプレイから構成され、
図2及び
図3に示すように長方形状(矩形状)の表示面51を有している。表示面5には、通信制御部3を通じて受信した話者映像などが表示される。
【0017】
入力部6は、タッチセンサやキーボードなどの入力デバイスから構成され、タブレット端末1の操作が行われる。
【0018】
映像入力部7は、カメラなどから構成され、例えば、タブレット端末1が設置された会議室にいる話者を撮影する。
【0019】
音声入力部8は、会議時の話者音声を取得する複数のマイク81~84(
図2及び
図3参照)から成るマイクロフォンアレイから構成されている。この複数のマイク81~84の配置については後述する。
【0020】
マイクロフォンアレイ制御部9は、複数のマイク81~84から入力した話者音声をビームフォーミング(beamforming)処理して話者方向を検知する。また、マイクロフォンアレイ制御部9は、ポストフィルタ(post-filter)処理により話者方向以外から入力される音をノイズとして除去する。
【0021】
音声出力部10は、スピーカやヘッドホンなどから構成され、音声が出力される。
【0022】
音声出力制御部11は、MPU2の制御に応じて音声出力部10を制御する。音声出力制御部11は、マイクロフォンアレイ制御部9にてノイズ除去された話者音声を音声出力部10から出力させる。また、音声出力制御部11は、通信制御部3を通じて他のタブレット端末から受信した話者音声を音声出力部10から出力させる。
【0023】
傾き検出部12は、加速度センサなどから構成され、タブレット端末1の傾きを検出する。MPU2は、設定部として機能し、傾き検出部12の検出結果である傾きデータに基づいてマイク81~84の配置を設定し、その結果をマイクロフォンアレイ制御部9に出力する。
【0024】
マイクロフォンアレイ制御部9は、MPU2により設定されたマイク81~84の配列に対応したビームフォーミング処理を実行して話者方向を検出する。
【0025】
次に、上述したマイク81~84の配置について、
図2及び
図3を参照して説明する。上記表示面51は、長方形状に形成され、一対の短辺511、512(第1辺)と、一対の長辺513、514(第2辺)と、を有している。上記マイク81~84は、表示面51の周辺の各辺511~514に1つずつ配置されている。マイク81~84の各々は、他の辺に並べられたマイク81~84とは短辺方向D1(第1方向)及び長辺方向D2(第2方向)の何れにも並ぶことなく配置されている。言い換えると、マイク81~84の各々は、他の辺に並べられたマイク81~84とは短辺方向D1及び長辺方向D2において互いに重ならない。なお、短辺方向D1と長辺方向D2とは互いに直交している。
【0026】
さらに詳しく説明する。マイク81は、一対の短辺511、512の一方である短辺511側に配置されている。マイク81は、短辺方向D1の中央よりも一方側の端部T1寄りの位置に配置される。本実施形態では、マイク81は、端部T1から短辺511の長さの約1/3の位置に配置されている。
【0027】
マイク82は、一対の短辺511、512の他方である短辺512側に配置されている。マイク82は、短辺方向D1の中央よりも他方側の端部T2寄りの位置に配置される。本実施形態では、マイク82は、端部T2から短辺512の長さの約1/3の位置に配置されている。
【0028】
マイク83は、一対の長辺513、514のうち短辺方向D1の一方側である長辺513側に配置されている。マイク83は、長辺方向D2の中央よりも短辺512側の端部T3寄りの位置に配置されている。本実施形態では、マイク83は、端部T3から長辺513の長さの約1/3の位置に配置されている。
【0029】
マイク84は、一対の長辺513、514のうち短辺方向D1の他方側である長辺514側に配置されている。マイク84は、長辺方向D2の中央よりも短辺511側の端部T4寄りの位置に配置されている。本実施形態では、マイク84は、端部T4から長辺514の長さの約1/3の位置に配置されている。
【0030】
これにより、マイク81は、他の辺に並べられたマイク82~84とは短辺方向D1及び長辺方向D2の何れにも並ぶことなく配置されている。マイク82は、他の辺に並べられたマイク81、83、84とは短辺方向D1及び長辺方向D2の何れにも並ぶことなく配置されている。マイク83は、他の辺に並べられたマイク81、82、84とは短辺方向D1及び長辺方向D2の何れにも並ぶことなく配置されている。マイク84は、他の辺に並べられたマイク81~83とは短辺方向D1及び長辺方向D2の何れにも並ぶことなく配置されている。
【0031】
以上のように配置すれば、
図2に示すように横置きした場合、水平方向(長辺方向D2)に離れてマイク81~84を並べることができる。また、
図3に示すように縦置きした場合も、水平方向(短辺方向D1)に離れてマイク81~84を並べることができる。よって、縦置きでも横置きでも話者方向を検出することが可能となる。
【0032】
また、上述した実施形態によれば、マイク81~84は、端部T1~T4寄りにそれぞれ配置されている。これにより、縦置き、横置きしても、マイク81~84の水平方向を所定の間隔(マイクロフォンアレイ性能を十分に発揮できる最低限のマイク間隔距離)以上の距離を持って配置することができる。
【0033】
しかも、マイク81は、端部T1から短辺511の長さの約1/3の位置に配置され、マイク82は、端部T2から短辺512の長さの約1/3の位置に配置され、マイク83は、端部T3から長辺513の長さの約1/3の位置に配置され、マイク84は、端部T4から長辺514の長さの約1/3の位置に配置されている。
【0034】
これにより、
図2に示すように横置き時には、長辺513、514の長さの1/3の間隔を空けてマイク81~84を水平方向に並べることができる。また、
図3に示すように縦置き時には、短辺511、512の長さの1/3の間隔を空けてマイク81~84を水平方向に並べることができる。
【0035】
ところで、正しくマイクロフォンアレイを機能させるには、マイクロフォンアレイ制御部9が各マイク81~84の並び順を認識している必要がある。
図2、
図3から分かるように、本発明ではタブレット端末1を回転させるとマイク81~84の並び順が変わってしまうため、マイクロフォンアレイ制御部9は随時各マイク81~84の並び順を検出できなければならない。
【0036】
そこで、傾き検出部12の傾きデータに対する4つのマイク81~84の水平方向における並び順序をテーブル情報として記憶部4に予め保存しておく。MPU2は、傾き検出部12からの傾きデータがある一定角度を超えて変化した場合に、タブレット端末1が回転されているものとして認識する。そして、MPU2は、記憶部4から読み込んだ傾きデータに対応するマイク配列順序の情報テーブルに従って、マイクロフォンアレイ制御部9に4つのマイク81~83の配列順序を伝える。
【0037】
マイクロフォンアレイ制御部9は、MPU2から送られてきたマイク配置順序の情報に従ってビームフォーミングの処理を切り替え、適切なマイク配列順序の情報に従った話者方向検知を行う。下記の表1が、記憶部4に記憶されているタブレット端末1の傾きデータ別の対応マイク配列順序に関する情報テーブルの一例である。
【表1】
【0038】
なお、上記表1は、
図2に示す横置き時を傾きデータγ=0°としている。また、配列順序は、
図2及び
図3中のタブレット端末1の正面から見て左から右に向かっての順序としている。このように、記憶部4に予め配列順序に関する情報テーブルを記憶させることにより、MPU2は、簡単に配列順序を設定することができる。
【0039】
次に、上述した本実施形態の効果を
図4及び
図5に示す比較品と比較して説明する。同図に示すように、比較品のタブレット端末100は、表示面の長辺に沿って4つのマイク801~804が並べられ、短辺に沿って4つのマイク804~807が並べられている。なお、マイク804は、短辺と長辺の境に配置されているため、本実施形態では7つのマイク801~807が配置されている。
【0040】
図4は、比較品のタブレット端末100を横置き設置とした場合を示す。この状態でマイクロフォンアレイが有効になるマイク構成はマイク801~804の4個を使ったマイクロフォンアレイ構成となる。ここではマイクロフォンアレイが水平軸に並んでいるが、床面も同じ水平軸であるため、タブレット端末100の前に集まっている人々の中から話者の居る方向を検出することができる。
【0041】
しかし、タブレット端末100を90°回転させて
図5のような縦置き設置(Display画面が縦長になる設置角度)にすると、
図4で有効となっていたマイクロフォンアレイ構成(マイク801~804)が垂直軸に並ぶようになってしまい、床面の水平軸と直交してしまうためマイクロフォンアレイとして有効に機能しなくなる(話者の方向検出ができなくなる)。
【0042】
そこでこの対策として、
図4及び
図5のタブレット端末100内に第2のマイクロフォンアレイを垂直軸上に配置する(マイク804~807)。この第2のマイクロフォンアレイは、
図4の横置き設置では機能しないが、
図5のように90°回転して縦置き設置にすると、第2のマイクロフォンアレイの軸が垂直軸→水平軸に移動することになり、縦置きで機能しなくなった第1のマイクロフォンアレイに代わって第2のマイクロフォンアレイが機能することになる。
【0043】
こうして、第1のマイクロフォンアレイと第2のマイクロフォンアレイとを搭載することによって、タブレット端末100の設置角度を回転させても、マイクロフォンアレイを有効に機能させることができるようになる。しかしながら、縦置き横置きにも4個のマイクを機能させるために7個のマイク801~807が必要となっていた。これに比べて、本実施形態は、上述したように4個のマイク81~84が縦置きでも横置きでも機能できるため、マイクを4個以上配置する必要がない。
【0044】
本実施形態は、前述の第2のマイクロフォンアレイをタブレット端末100に追加搭載することによって、タブレット端末100の設置角度の回転にもマイクロフォンアレイが対応できるという比較品に対し、マイクロフォンアレイを追加することなく第1のマイクロフォンアレイ(マイク81~84)のみでタブレット端末1の設置角度の回転にマイクロフォンアレイが対応できる技術である。即ち、本実施形態のタブレット端末1は、マイク数の低減しつつ設置角度回転に対応して話者方向の検出が行える。
【0045】
なお、上述した実施形態によれば、マイク81~84は、各辺511~514に1つずつ配置されていたが、これに限ったものではない。例えば、各辺に複数のマイクを配置してもよい。即ち、異なる辺に並べられたマイク同士が、短辺方向D1及び長辺方向D2の何れにも並ぶことなく配置されていればよく、同じ辺に配置されたマイクは短辺方向D1、長辺方向D2に並んでもよい。
【0046】
図6は、7つのマイク85~91を、各辺に2つずつ配置した例を示す。
図6に示す例では、縦置きにしても、横置きにしても5個のマイク85~91を有効にすることができる。
図4及び
図5に示すような比較品では、5個のマイクを有効にするためには、9つのマイクを配置する必要があった。これに対して、
図6に示す例では7個のマイク85~91を配置するだけでよく、マイクの数を低減することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 タブレット端末(表示装置、通信端末)
2 MPU(設定部)
3 通信制御部(通信部)
4 記憶部
12 傾き検出部
51 表示面
81~91 マイク
511 短辺(第1辺)
512 短辺(第1辺)
513 長辺(第2辺)
514 長辺(第2辺)
D1 短辺方向(第1方向)
D2 長辺方向(第2方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【文献】特開2014-110613号公報
【文献】特開2017-168977号公報