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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20220329BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220329BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020086076
(22)【出願日】2020-05-15
(62)【分割の表示】P 2014559020の分割
【原出願日】2014-11-28
(65)【公開番号】P2020117735
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2013248279
(32)【優先日】2013-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(74)【復代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(72)【発明者】
【氏名】増田 絵理
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】品田 弘子
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-053059(JP,A)
【文献】特開平02-167380(JP,A)
【文献】特開平1-213379(JP,A)
【文献】特開2008-297376(JP,A)
【文献】特開平10-72513(JP,A)
【文献】特開平1-139665(JP,A)
【文献】特開2006-96958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が1000~4500のマクロモノマー(a)及びビニル単量体(b)を含有する単量体混合物を重合して得られる、重量平均分子量が8万~70万である(メタ)アクリル系共重合体(A)を含み、
前記マクロモノマー(a)を得るための単量体は、メタクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸イソボルニルであり、
前記単量体混合物中のマクロモノマー(a)の含有量が20質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の130℃における溶融粘度が20~800Pa・sであり、
下記式で表される保持力Xが100以上であり、
剥離強度Yが3N/25mm以上である、
粘着剤組成物(ただし溶液状態で水を含む粘着剤組成物を除く):
保持力X=保持時間(40)/保持時間(90)
保持時間(40)、保持時間(90)は、それぞれJISZ0237に準拠して、貼り合せ面積20mm×20mm、荷重0.5kgの条件で測定し、40℃における保持時間と90℃における保持時間を表す。
剥離強度Yは、JISZ0237に準拠して、剥離角度180°、引張速度60mm/minでガラス基材に対する剥離強度を測定する。
【請求項2】
溶剤を用いないホットメルト系粘着剤組成物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が12万~70万である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記ビニル単量体(b)を重合して得られる共重合体(B)のガラス転移温度(TgB)が-60℃~-10℃である、請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記マクロモノマー(a)のガラス転移温度(Tga)と前記ビニル単量体(b)を重合して得られる共重合体(B)のガラス転移温度(TgB)が下記式
Tga-TgB>50℃
の関係を有する、請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記ビニル単量体(b)が、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、及びエチルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記ビニル単量体(b)が、n-ブチルアクリレート及びアクリル酸である、請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が8万~40万である、請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の粘着剤組成物を用いた粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロモノマーが共重合された(メタ)アクリル系共重合体およびそれを含む粘着剤組成物並びに粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニル単量体を単独であるいは種々のビニル単量体混合物を共重合させることにより、物性の異なる多種多様な共重合体が合成されてきた。そのなかでも単独のビニル単量体を用いた重合体では、多様な物性要求に応えることができないため、一般に2種以上のビニル単量体を含む混合物を共重合したり、異種の共重合体を混合したりする方法が用いられてきた。しかしながら、単に多種のビニル単量体混合物を共重合させた場合、各単量体単位が有する特性が平均化されてしまう傾向にあった。
また、2種以上の共重合体を単に混合しただけでは、共重合体同士は混ざり合うことなく各単量体単位が有する特性よりも劣ることが多かった。
これらの問題を解決するため、マクロモノマーを用いた共重合体の検討が行われてきた。マクロモノマーとは重合可能な官能基を持つ高分子量単量体である。マクロモノマーが共重合された共重合体は、マクロモノマー部分およびマクロモノマーと共重合される単量体単位それぞれの特性を損なうことなく個々の特性が発現できる、という特徴を有する。そのため、例えば粘接着剤分野においても、この種のマクロモノマーを用いた共重合体が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、2000g/モルから50,000g/モルの数平均分子量を有するマクロモノマーとエチレン性不飽和モノマーを共重合することにより、特定の固形分を有する水性媒体内に分散された共重合体を含む接着剤組成物が開示されている。
また特許文献2には、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、数平均分子量が1000~200,000およびガラス転移温度が30~150℃のマクロモノマーを共重合して得られる粘着剤用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開公報2002/022755号パンフレット
【文献】特開平11-158450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1および特許文献2の共重合体は、得られる共重合体の分子量が大きすぎたり、マクロモノマーとの共重合比が適正でなかったりするため、種々の塗工方法において十分な塗工作業性が得られず、また得られた粘着剤は十分な保持力を有さないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、数量平均分子量が500以上6000未満のマクロモノマー(a)およびビニル単量体(b)を含有する単量体混合物を重合して得られる、重量平均分子量が5万~100万である(メタ)アクリル系共重合体(A)、に関する。
また本発明は、この(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物に関する。
さらに本発明は、この粘着剤組成物を用いた粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体(A)はマクロモノマー部分およびマクロモノマーと共重合される単量体単位それぞれの特性を有するため、本(メタ)アクリル系共重合体(A)を用いた粘着剤組成物は、種々の塗工方法、例えば樹脂組成物をそのまま加熱して塗工するホットメルト法や、溶剤を添加した後に塗工する溶液塗工法などによっても塗
工可能である。また得られた粘着剤は十分な粘着力と保持力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0009】
<マクロモノマー(a)>
マクロモノマーとは一般にポリマー末端に重合性基が導入された高分子化合物を意味する。本発明におけるマクロモノマー(a)の数平均分子量は500以上6000未満である。粘着力と塗工性とのバランスの関係から、数平均分子量は800~5500であることが好ましく、1000~4500であることがより好ましい。
【0010】
マクロモノマーを構成する単量体には種々のものが用いられるが、本発明においてはポリ(メタ)アクリル酸エステルセグメントの末端に重合性基が導入された下記式(1)の構造を有するものが好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」または「メタクリル酸」を示す。
【0011】
【化1】
【0012】
nは、4~5999の自然数である。
式(1)において、R及びR~Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基は、置換基を有することができる。
【0013】
R又はR~Rのアルキル基としては、例えば、炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基が挙げられる。これらの中で、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基及びt-ブチル基がより好ましい。
【0014】
R又はR~Rのシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3~20のシクロアルキル基が挙げられる。炭素数3~20のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基及びアダマンチル基が挙げられる。入手のし易さから、シクロプロピル基
、シクロブチル基及びアダマンチル基が好ましい。
【0015】
R又はR~Rのアリール基としては、例えば、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
【0016】
R又はR~Rの複素環基としては、例えば、炭素数5~18の複素環基が挙げられる。R又はR~Rの複素環基の具体例としては、γ-ブチロラクトン基及びε-カプロラクトン基が挙げられる。
【0017】
R又はR~Rの各基が有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(-COOR’)、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基(-NR’R’’)、アミド基(-CONR’R’’)、ハロゲン、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(-OR’)、シロキシ基、又は親水性若しくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。尚、R’又はR’’は、それぞれ独立して、Rと同様の水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が挙げられる。
【0018】
上記置換基のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
上記置換基のアミノ基としては、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。例えば、N-メチルカルバモイル基及びN,N-ジメチルカルバモイル基が挙げられる。
上記置換基のアミド基としては、例えば、カルバモイル基(-CONH),N-メチルカルバモイル基(-CONHMe)、N,N-ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:-CONMe)が挙げられる。
【0019】
上記置換基のハロゲンとしては、例えば、ふっ素、塩素、臭素及びよう素が挙げられる。
上記置換基のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
上記置換基の親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシル基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
R及びR~Rは、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0020】
~Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。
~Xは、マクロモノマー(a)の合成し易さの観点から、X~Xの半数以上がメチル基であることが好ましい。
【0021】
Zは、マクロモノマー(a)の末端基である。マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基や下記式(2)で示される末端重合性官能基などを挙げることができる。
【0022】
【化2】
(式(2)中、Rは、式(1)中のR,R~Rと同様の意味を示す。)
【0023】
マクロモノマー(a)を得るための単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸3,5,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、テルペンアクリレートやその誘導体、水添ロジンアクリレートやその誘導体、(メタ)アクリル酸ドシコル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリロイルモルホリン、「プラクセルFM」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、「ブレンマーPME-100」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-200」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、「ブレンマーPME-400」(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、「ブレンマー50POEP-800B」(日油(株)製オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及び「ブレンマー20ANEP-600」(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール-ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、「ブレンマーAME-100」(日油(株)製、商品名)、「ブレンマーAME-200」(日油(株)製、商品名)及び「ブレンマー50AOEP-800B」(日油(株)製、商品名)サイラプレーンFM-0711(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0721(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンFM-0725(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701(JNC(株)製、商品名)、サイラプレーンTM-0701T(JNC(株)製、商品名)X-22-174DX(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2426(信越化学工業(株)製、商品名)、X-22-2475(信越化学工業(株)製、商品名)が挙げられる。
【0024】
これらの中で、ガラス転移温度と重合のしやすさ、保持力が向上する点から、メタクリル酸エステルが好ましい。さらに好ましくはメタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルである。
【0025】
ガラス転移温度(Tga)
本発明において、マクロモノマー(a)のガラス転移温度(Tga)は0~120℃であることが好ましい。粘着剤として用いた場合に十分な保持力を発現できる点から10~110℃がより好ましく、30~100℃がさらに好ましい。
なお、Tgaは、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0026】
マクロモノマー(a)の製造方法
マクロモノマー(a)は、公知の方法で製造できる。マクロモノマー(a)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合性基を化学的に結合させる方、及び熱分解による方法が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(a)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。なおコバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマー(a)の末端重合性官能基は前記式(2)の構造を有する。
【0027】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(a)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。回収工程が簡便である点から水系分散重合法が好ましい。
【0028】
〈単量体混合物〉
単量体混合物は、マクロモノマー(a)およびビニル単量体(b)を含む。
単量体混合物中、マクロモノマー(a)の含有量は7~40質量%が好ましい。マクロモノマー(a)の含有量が7質量%以上であると、粘着剤として用いた場合に保持力が良好となる傾向にある。40質量%以下であると塗工性が良好となる傾向にある。粘着剤の保持力および塗工性の点から、マクロモノマー(a)の含有量は8~30質量%が好ましく、より好ましくは9~20質量%である。
【0029】
<(メタ)アクリル系共重合体(A)>
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前記マクロモノマー(a)およびビニル単量体(b)を含む単量体混合物を重合して得られる共重合体である。製造方法としては、溶液重合法、懸濁重合法及び乳化重合法等、公知の重合方法によって製造することが可能である。本発明においては粘着剤組成物として用いるため、溶液重合法が好ましい。
【0030】
本発明において、(メタ)アクリル系共重合体(A)中には、マクロモノマー(a)由来の繰り返し単位のみを有する重合体、一種あるいは2種以上のビニル単量体(b)由来の繰り返し単位を有する重合体、未反応のマクロモノマー(a)および未反応のビニル単
量体(b)から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。
さらに、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、マクロモノマー(a)およびビニル単量体(b)由来の繰り返し単位を有するブロック共重合体ならびに側鎖にマクロモノマー(a)由来の繰り返し単位を有する、ビニル単量体のグラフト共重合体から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0031】
ビニル単量体(b)
本発明に用いられるビニル単量体(b)は、マクロモノマー(a)を得るための単量体と同等のものを用いることができる。特に2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、エチルアクリレートなどは粘着剤としての柔軟性が発現できる点や、疎水性であるため(メタ)アクリル系共重合体(A)の吸水を抑制したり、(メタ)アクリル系共重合(A)の比誘電率などの電気特性を調整したりすることができるため、好ましい。
また、その他に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が好ましい。
【0032】
重量平均分子量
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は5万~100万である。5万以上であると、粘着剤組成物としての耐久性が良好となる傾向にある。100万以下であると塗工性が良好となる傾向にある。塗工性の点から、(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は12~70万が好ましく、15~50万であることがより好ましい。
【0033】
ガラス転移温度(TgB)
本発明において、ビニル単量体(b)を重合して得られる共重合体(B)のガラス転移温度(TgB)は室温状態での粘着剤樹脂組成物の柔軟性や、適度な接着性(タック性)を有するために、-100℃~10℃であることが好ましい。TgBは、より好ましくは-65℃~-0℃である。特に好ましくは-60℃~-10℃以下である。
【0034】
TgBは、単量体(b)のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率からFoxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscie
nce,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す]
【0035】
なお、ガラス転移温度(Tga)と(TgB)は、マクロモノマー部分およびマクロモノマーと共重合される単量体単位それぞれの特性が十分発現できる点から下記式(3)の関係を有することが好ましい。
Tga > TgB ・・・(3)
より好ましくはTga-TgB>50℃であり、最も好ましくはTga-TgB>80℃である。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体(A)の130℃における溶融粘度は20~800Pa・sであることが好ましい。130℃における溶融粘度が前記記載の範囲にあると、樹脂組成物をそのまま加熱して塗工するホットメルト法によると塗工が可能となる。なお溶融粘度は、例えば株式会社ユービーエム製の粘弾性測定装置Rheosol-G5000を用いて測定することができる。本願発明においては、25mmφのコーンプレート
を用い、130℃で歪み0.7%、0.02Hzで測定した時の粘度(η)値を130℃における溶融粘度の値とした。塗工性の点から好ましくは20~600Pa・sが好ましい、50~600Pa・sがより好ましく、100~500Pa・sがさらに好ましい。
【0037】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体(A)は、下記式で表される保持力Xが100以上であり、剥離強度Yが3N/25mm以上である。
保持力X=保持時間(40)/保持時間(90)
保持時間(40)、保持時間(90)は、それぞれJISZ0237に準拠して、貼り合せ面積20mm×20mm、荷重0.5kgの条件で測定し、40℃における保持時間と90℃における保持時間を表す。
剥離強度Yは、JISZ0237に準拠して、剥離角度180°、引張速度60mm/minでガラス基材に対する剥離強度を測定する。
上記条件を満たすことにより、粘着剤組成物として用いた場合に、優れた粘着保持力と粘着性を有する。
上記条件を満たす(メタ)アクリル系共重合体(A)として、数量平均分子量が500以上6000未満のマクロモノマー(a)およびビニル単量体(b)を含有する単量体混合物を重合して得られる、重量平均分子量が5万~100万である(メタ)アクリル系共重合体が挙げられる。
【0038】
〈粘着剤組成物〉
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を含むものである。
本発明の粘着剤組成物には、通常の粘着剤組成物に配合されている公知の成分を含有してもよい。例えば、耐熱性、熱伝導性、難燃性、電気伝導性等を付与するために充填剤を添加することもできる。充填剤としては、例えば、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末などの金属系粉末、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、タルク、ガラスパウダー、シリカ粉末、導電性粒子、ガラス粉末などの無機充填剤;ポリエチレン粉末、ポリエステル粉末、ポリアミド粉末、フッ素樹脂粉末、ポリ塩化ビニル粉末、エポキシ樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末などの有機充填剤などが挙げられる。これらの充填剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
この粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系共重合体(A)および架橋剤を紫外線照射等によって架橋させて粘着シートとすることもできる。例えば、(メタ)アクリル系共重合体(A)中に導入した水酸基等の反応性基と化学結合しうる架橋剤を添加し、加熱や養生により反応させる方法や、架橋剤としての(メタ)アクリロイル基を2個以上する多官能(メタ)アクリレートや窒素原子が導入されたアクリレートなどと光重合開始剤等の反応開始剤を添加して反応させる方法を挙げることができる。
【0040】
さらに(メタ)アクリル系共重合体(A)に官能基を導入し、架橋剤や重合開始剤を配合した粘着剤組成物としたり、架橋した粘着シートとすることもできる。架橋方法としては例えばイソシアネート系、エポキシ系、金属キレート系、光硬化系等、メラミン系、アジリジン系等を挙げることができ、またこれらを組み合わせて使用することもできる。
【0041】
イソシアネート系の架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記芳香族ポリイソシアネートの水素添加物などの脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの2量体または3量体、これらのポリイソシアネートとトリメチロールプロパンなどのポリオールとからなるアダクト体などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を併用することができる。
【0042】
エポキシ系の架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジンなどが挙げられる。
【0043】
金属キレート化合物としては、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものが挙げられる。多価金属としては、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、チタン、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等が挙げられる。
【0044】
また、共有結合または配位結合する有機化合物としては、アセチルアセトン等のケトン化合物、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、などに酸素を持つものが挙げられる。
【0045】
光硬化系は架橋剤としての(メタ)アクリロイル基を2個以上する多官能(メタ)アクリレートおよび光重合開始剤等の反応開始剤を添加し、紫外線照射等によって架橋させることができるが、この種の架橋剤としては、例えば(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート、或いは、イソシアネート基、エポキシ基、メラミン基、グリコール基、シロキサン基、アミンなどの有機官能基を2個以上有する多官能有機官能基樹脂、或いは、亜鉛、アルミ、ナトリウム、ジルコニウム、カルシウムなどの金属錯体を有する有機金属合物、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA-EO/PO変性ジアクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ポリイソブチレンジアクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルコキシ化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリート、などを挙げることができる。
【0046】
また必要に応じて、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、防錆剤、加水分解防止剤などの各種の添加剤を適宜含有させることもできる。反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜含有してもよい。
【0047】
酸化防止剤の種類としては、例えばフェノール系、リン系、ヒドロキシルアミン系、イオウ系等が挙げられる。中でも、加熱後の樹脂の着色が少ないフェノール系、リン酸系の酸化防止剤が好ましい。これらは単独で使用しても良いし、数種類を組み合わせて使用しても良い。上記酸化防止剤の配合量は(メタ)アクリル系共重合体に対して0.1~5質量部の範囲とすることが好ましい。
【0048】
本粘着剤樹脂組成物は、シート成形して粘着シートとして使用することができる。
粘着シートは、溶剤を用いた溶液状態で塗工することもできるし、溶剤を用いないホットメルト系の粘着剤組成物として調製することもできる。溶剤を用いないホットメルト系の粘着剤組成物とすれば、溶剤を用いた粘着剤組成物に比べて、より厚みを持たせることができるため、例えば画像表示装置の構成部材間の空隙を充填するに足る十分な厚みを持たせることができる。
【0049】
さらに本発明で得られた粘着シートは、様々な基材の接着に際し用いることができ、しかも非常に良好な粘着性能を発現する。例えば透明プラスチックフィルムに適用すること
により、あるいは粘着フィルム状に加工することにより、車両用、建築用の窓貼りフィルムの貼り合わせや、ラベル表示におけるラベルの貼り合わせに用いることができる。また透明両面粘着シート状に加工することにより液晶パネル等のディスプレイ表示における各種パネルの貼り合わせや、ガラス等の透明板材の貼り合わせ等に用いることができる。
【実施例
【0050】
以下に実施例および比較例を示し、本発明の粘着剤樹脂組成物について更に詳細に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例における「部」は「質量部」を意味する。
【0051】
<マクロモノマー(a-1)の合成>
<分散剤1の製造>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメタクリル酸メチル(MMA)12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤1を得た。
【0052】
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1(固形分10質量%)0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次に、MMAを100部、連鎖移動剤としてビス[(ジフルオロボリル)ジフェニルグリオキシメイト]コバルト(II)を0.008部及び重合開始剤として「パーオクタ」(登録商標)O(1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、日本油脂株式会社製)0.8部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、90℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーを含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(a-1)を得た。このマクロモノマー(a-1)の数平均分子量は1400であり、DSC測定によるガラス転移温度は55℃であった。
【0053】
〈マクロモノマー(a-2)~(a-9)の製造〉
分散剤1への添加モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤を表1に示す仕込み量(部)に変更した以外は、マクロモノマー(a-1)と同様の方法で製造した。得られたマクロモノマー(a)の数平均分子量(Mn)およびガラス転移温度(Tga)を表1に併せて示した。
【0054】
【表1】
【0055】
MMA:メタクリル酸メチル
IBXMA:メタクリル酸イソボルニル
【0056】
(評価方法)
マクロモノマー(a)のガラス転移温度(Tga)
示差査熱量計(Rigaku製DSC SmartRoader)を用いて、窒素雰囲気下、5℃/分の昇温速度で測定した。なお、標準物質としては酸化アルミニウムを使用した。
【0057】
マクロモノマー(a)およびアクリル系共重合体(A)の分子量
・マクロモノマー(a)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8320)を用いて測定した。マクロモノマー(a)のテトラヒドロフラン溶液0.2質量%を調整後、東ソー社製カラム(TSKgel SuperHZM-M×HZM-M×HZ2000、TSKguardcolumn SuperHZ-L)が装着された装置に上記の溶液10μlを注入し、流量:0.35ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて数平均分子量(Mn)を算出した。
・アクリル系共重合体(A)
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8120)を用いて測定した。アクリル系共重合体(A)のテトラヒドロフラン溶液0.3質量%を調整後、東ソー社製カラム(TSKgel SuperHM-H*4、TSKguardcolumn SuperH-H)が装着された装置に上記の溶液20μlを注入し、流量:0.0.6ml/分、溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤BHT)、カラム温度:40℃の条件で測定し、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0058】
透明性
重合後の樹脂溶液を減圧乾燥にて脱溶剤したものを200mLの透明広口ねじ口瓶に採り、拡散昼光の下で肉眼観察する。透明で異物、分離を認めないときは「○」、濁り、異物、分離等の何れかが見られる場合は「×」とする。
【0059】
塗工性評価(130℃での溶融粘度)
株式会社ユービーエム製の粘弾性測定装置Rheosol-G5000を用いて測定した。25mmφのコーンプレートを用い、130℃で歪み0.7%、0.02Hzで測定した時の粘度(η)値を130℃における溶融粘度の値とし、以下の基準に従って塗工性を判定した。
500Pa・s以下:○
500Pa・s超800Pa・s以下:△
800Pa・s超:×
【0060】
保持力試験評価
JISZ0237に準拠して、両面を剥離フィルムで挟んでシート化したアクリル系共重合体(A)の一方の剥離フィルムを剥がし、代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと称する)を2kgのハンドローラーにて圧着した。これを20mm×100mmの短冊状に裁断し、もう一方の剥離フィルムを剥がして、30mm×100mmのSUS板に2kgのハンドローラーを用いて、貼り合わせ面が20×20mmとなるように水平に貼り合わせた。40℃で30分養生した後、PETフィルムの先に0.5kgの重りをつけて40℃の恒温層で保持時間を測定した。以下の基準に従って保持力を判定した。
保持時間が
30分以上:◎
5分以上30分以内:○
5分以内:×
また、温度を90℃(相対湿度50%)に変えて同様に保持時間を測定した。下記式
(40℃での保持時間)/(90℃での保持時間)=X
により総合的な保持力を評価した。判定は以下の通り。
X≧230:◎
230>X≧200:○
200>X≧100:△
100>X:×
【0061】
粘着性試験
JISZ0237に準拠して、剥離角度180°、引張速度60mm/minで、ガラス基材に対する剥離強度Yを測定する。また、剥離したガラス基材面を目視で観察し、糊残りの有無を確認した。以下の基準に従って粘着力を判定した。
Y≧3N/25mm、かつ、糊残り無し:○
Y≧3N/25mm、かつ、糊残り有り:△
Y<3N/25mm:×
【0062】
[製造例1]
〈(メタ)アクリル系共重合体(A-1)の製造〉
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、仕込み溶媒として酢酸エチル40部、マクロモノマー(a-1)10部を装入し、窒素ガス通気下で85℃に昇温した。85℃に達した後、酢酸エチル20部、アクリル酸n-ブチル90部、ベンゾイルパーオキサイド0.04部からなる混合物を4.5時間かけて滴下した。滴下終了後1時間保持した後、「パーオクタO」0.5部と酢酸エチル10部からなる混合物を1時間かけて添加した。その後、2時間保持した後、酸化防止剤として「イルガノックス1010」(BASF社製商品名)0.5部、酢酸エチル20.5部を添加後、室温まで冷却して(メタ)アクリル系共重合体(A-1)を得た。
【0063】
[製造例2~21]
〈(メタ)アクリル系共重合体(A-2)~(A-21)の製造〉
用いる単量体混合物(マクロモノマー(a)およびビニル単量体(b))の組成および初期仕込みの溶剤を表2に変更した以外は製造例1と同様にして(メタ)アクリル系共重合体(A-2)~(A-21)を得た。
なお、(A-12)はマクロモノマー(a)を用いなかった例である。
【0064】
【表2】
【0065】
AA-6:東亜合成製マクロモノマー、製品名、Mn=6000
MMA:メタクリル酸メチル
n-BA:アクリル酸n-ブチル
2-EHA:アクリル酸-2-エチルヘキシル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
AA:アクリル酸
2-HEMA:メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル
EtOAc:酢酸エチル
IPA:イソプロピルアルコール
【0066】
[実施例1~19、比較例1~3]
製造例1により作製した(メタ)アクリル系共重合体(A-1)の130℃での溶融粘度、透明性、保持力、粘着力を測定し、表3に結果を示した。同様に製造例2~21の(メタ)アクリル系共重合体(A-2~A-21)についても同様に測定した(表3,表4)。なお、実施例11は、(メタ)アクリル系共重合体(A-4)を用い、塗工方法をホットメルト法に変更した例を示す。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
[実施例1]~[実施例19]では、粘着剤として良好な塗工性、保持力を示した。一方、[比較例1]はマクロモノマー(a)の数平均分子量が6000の市販のものを用いた(メタ)アクリル系共重合体(A-11)の130℃における溶融粘度が高く、塗工性に劣っていた。また、透明性も悪く、粘着力に劣っていた。[比較例2]はマクロモノマー(a)を用いない(メタ)アクリル系共重合体(A-12)を用いたものであり、[比
較例3]はマクロモノマー(a)の数平均分子量が7000と大きく、これを用いた(メタ)アクリル系集合体(A-13)の保持力の総合評価は若干低下し、さらに粘着力が悪化した。
【0070】
[実施例20~23]
表5に示す組成の粘着剤組成物を紫外線照射等によって硬化又は架橋させた。この場合においても良好な保持力、粘着力を有していた。
【0071】
[硬化条件]
装置:2P硬化装置、光源:メタルハライド、照射強度:100mW/cm、照射量:3000mJ/cm
【0072】
【表5】
【0073】
ACMO:アクリロイルモルホリン
NK-A-600:「NKエステル600」 新中村化学製商品名 (ポリエチレングリコール#600ジアクリレート)
IRG184:「IRGACURE184」 BASF製商品名 (1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)
TPA-100:「デュラネートTPA-100」旭化成製商品名(ポリイソシアヌレート)