(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220329BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/18
B41J2/14 603
(21)【出願番号】P 2021019467
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2020004840の分割
【原出願日】2014-12-27
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】甲田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 武司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 貫思
(72)【発明者】
【氏名】笠原 亮
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 汐視
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237098(JP,A)
【文献】特開2009-143168(JP,A)
【文献】特開2012-143948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルが配列された少なくとも2つのノズル列
を有するノズル板と、
前記ノズル列の各ノズルに通じる複数の個別液室と
、前記複数の個別液室のそれぞれに通じ
、前記液体を回収する少なくとも2つの循環流路と、
同じ種類の液体が流れる2つの前記循環流路に接続され、該2つの前記循環流路を相互に通じさせる架橋流路と、を含む流路板と、
前記ノズル列にそれぞれ対応し、前記複数の個別液室のそれぞれに前記液体を供給する少なくとも2つの共通液室と圧電アクチュエータ用貫通溝部を有するフレーム部材と、を備え、
前記循環流路は、ノズル配列方向及び前記液体の吐出方向と直交する方向において、前記ノズルに対して、前記共通液室と同じ側であって、ノズル配列方向に沿って配置され、
前記架橋流路は、ノズル配列方向と交差する方向に配置され、
前記架橋流路と前記循環流路とは、前記流路板の厚み方向において、異なる位置に配置されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記架橋流路の流路断面積は前記循環流路の流路断面積よりも小さい
ことを特徴とする
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記架橋流路の流路断面における中心を通る中心軸と前記循環流路の流路断面における中心を通る中心軸とが立体交差する関係で、前記架橋流路及び前記循環流路が配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記共通液室に通じる供給ポートと、
前記架橋流路に通じる循環ポートと、を有し、
前記供給ポートと前記循環ポートはノズル配列方向の端部に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル列に
それぞれ対応
する2つの前記共通液室は互いに通じており、
前記共通液室に通じる供給ポートは、ノズル配列方向の両端部に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記架橋流路と前記循環流路を形成する部材は、複数の層部材を積層して形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項7に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)として、複数の個別液室内の液体を循環させる循環型ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、2列の圧力発生室の列(ノズル列)に対応してノズル配列方向に独立した循環流路を配置し、各循環流路は各圧力発生室とノズルとを通じる通路に連通させ、各ノズル列から異なる色の液体を吐出させるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2列のノズル列から同じ種類の液体を吐出するために、個別液室(圧力発生室)の列間に1つの循環流路を配置すると、ヘッドの幅方向(ノズル配列方向と直交する方向)サイズが大きくなる。
【0006】
そこで、特許文献1に開示されているように、各ノズル列毎に例えば2つの循環流路を配置した場合、各循環流路毎に循環ポートを設ける必要が生じ、構成が複雑になるという課題が生じる。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、流路部材の剛性を確保しつつ、簡単な構成で複数の循環流路を共通化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液体を吐出する複数のノズルが配列された少なくとも2つのノズル列を有するノズル板と、
前記ノズル列の各ノズルに通じる複数の個別液室と、前記複数の個別液室のそれぞれに通じ、前記液体を回収する少なくとも2つの循環流路と、同じ種類の液体が流れる2つの前記循環流路に接続され、該2つの前記循環流路を相互に通じさせる架橋流路と、を含む流路板と、
前記ノズル列にそれぞれ対応し、前記複数の個別液室のそれぞれに前記液体を供給する少なくとも2つの共通液室と圧電アクチュエータ用貫通溝部を有するフレーム部材と、を備え、
前記循環流路は、ノズル配列方向及び前記液体の吐出方向と直交する方向において、前記ノズルに対して、前記共通液室と同じ側であって、ノズル配列方向に沿って配置され、
前記架橋流路は、ノズル配列方向と交差する方向に配置され、
前記架橋流路と前記循環流路とは、前記流路板の厚み方向において、異なる位置に配置されている
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流路部材の剛性を確保しつつ、簡単な構成で、複数の循環流路を共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の外観斜視説明図である。
【
図2】同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。
【
図3】同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の説明に供する
図5のC-C線に相当する断面説明図である。
【
図5】同じく
図4のA-A線に相当する断面説明図である。
【
図6】同じく
図4のB-B線に相当する断面説明図である。
【
図7】同じく循環流路に係る部分の模式的斜視説明図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の説明に供する要部断面説明図である。
【
図18】本発明の第3実施形態の説明に供する振動板部材の平面説明図である。
【
図20】本発明の第4実施形態の説明に供する断面説明図である。
【
図22】同じく流路板のノズル板側平面説明図である。
【
図23】同じく流路板の振動板部材側平面説明図である。
【
図24】本発明に係る液体吐出ユニットを備える本発明に係る液体を吐出する装置の一例の機構部の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図、
図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。なお、
図1では吐出方向を下向きにして示しているが、
図2以降では吐出方向を上向きにして示している。
【0012】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材としてのフレーム部材20、カバー21とを備えている。
【0013】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0014】
流路板2は、ノズル4に通じる通路5、通路5に通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7に通じる液導入部(通路)8を形成する貫通穴や溝部を形成している。
【0015】
振動板部材3は、液導入部8とフレーム部材20に形成される共通液室10とを通じる開口9を有している。
【0016】
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材3は2層構造とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層で形成され、第1層で個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0017】
そして、この振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0018】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の柱状の圧電素子(圧電柱)12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0019】
ここでは、圧電部材12の圧電素子12Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子12Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子12A、12Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。
【0020】
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、圧電素子12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。
【0021】
この圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられている。
【0022】
フレーム部材20は、ヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室10が形成されている。
【0023】
また、流路板2には、個別液室6と反対側であるノズル板1側に各個別液室6に通じる循環流路41、循環流路41と通路5とを通じる循環抵抗部42を形成する溝部が形成されている。
【0024】
そして、フレーム部材20には、共通液室10に通じる供給ポート23と、循環流路41に通じる循環ポート(排出ポート)43がそれぞれ設けられている。
【0025】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子12Aに与える電圧を基準電位から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
【0026】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0027】
そして、圧電素子12Aに与える電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域30が初期位置に復元し、個別液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から個別液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
【0028】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態について
図4ないし
図7を参照して説明する。
図4は同実施形態の説明に供する
図5のC-C線に相当する断面説明図、
図5は同じく
図4のA-A線に相当する断面説明図、
図6は同じく
図4のB-B線に相当する断面説明図、
図7は同じく循環流路に係る部分の模式的斜視説明図である。
【0030】
本実施形態では、ノズル板1には、複数のノズル4が配列された2つのノズル列4A、4Bを2組、合計4つのノズル列を有している(後述する第2実施形態の
図9と同じ)。
【0031】
そして、流路板2には、個別液室6と反対側であるノズル板1側に、2つのノズル列4A,4Bに対応して、ノズル配列方向に沿って、循環抵抗部42を介して通路5及び個別液室6に通じる2つの循環流路41A、41B(区別しないときは前述したとおり「循環流路41」という。)を配置している。なお、循環流路41A、41Bの組は2組配置されているが、説明を簡略化するため、2つの循環流路41A、41Bで説明する。
【0032】
そして、2つの循環流路41A、41Bは、流路板2のノズル配列方向の両端部に形成された、ノズル配列方向と交差する方向に配置された架橋流路44、44を介して相互に通じている。
【0033】
ここで、
図6及び
図7に示すように、架橋流路44及び循環流路41を形成する部材である流路板2の厚み方向において、架橋流路44と循環流路41とは異なる位置に配置されて、各流路44、41の端部で接続されている。
【0034】
具体的には、
図7に示すように、循環流路41の長手方向(ここではノズル配列方向)と直交する方向の断面(流路断面)の中心を通る長手方向の中心軸40aと、架橋流路44の長手方向(循環流路41と交差する方向)と直交する方向の断面(流路断面)の中心を通る長手方向の中心軸40bとが立体交差する関係としている。
【0035】
そして、ノズル配列方向の両端部に、それぞれ架橋流路44を介して循環流路41に通じている循環ポート43を配置している。このとき、2つの循環流路41A、41Bは架橋流路44で通じているので、ノズル配列方向と直交する方向では、2つの循環流路41A、41Bで循環ポート43を共用している。
【0036】
なお、
図1では2つのノズル列を2組有するので、ノズル配列方向の一端部で、ノズル配列方向と直交する方向では2つの循環ポート43が配置されている。
【0037】
また、循環ポート43は振動板部材3に形成された開口46を通じて架橋流路44に通じている。
【0038】
このように構成したので、共通液室10から個別液室6に供給された液体は循環抵抗部42を通じて循環流路41に流入し、循環流路41から振動板部材3の開口46を通じてフレーム部材20に循環ポート43から排出される。
【0039】
ここで、2つの循環流路41A、41Bを架橋流路44でつなぐ(通じる)ことにより、簡単な構成で2つ循環流路41A、41Bを共通化でき、循環ポート43を2つ循環流路41A、41Bで共通化することができて構成が簡単になる。
【0040】
そして、架橋流路44と循環流路41は流路板2の厚み方向で異なる位置に配置することにより、架橋流路44を設けることによる流路板2の剛性低下を抑制することができ、ヘッドの剛性を確保することができる。
【0041】
つまり、循環流路41に液体を循環させたときに発生する個別液室6間での圧力損失差を抑制するためには、循環流路41の流路断面積を大きくすることが好ましい。このとき、2つの循環流路41をつなぐ架橋流路44を、流路板2の厚み方向において循環流路41と同じ位置に配置すると、流路板2の剛性が低下することになる。
【0042】
ここで、2つの循環流路41A、41Bをつなぐ架橋流路44の流路断面積は個別液室6間の圧力損失差に寄与しない。
【0043】
そこで、2つの循環流路41と架橋流路44とを、流路板2の厚み方向において異なる位置に配置する。つまり、本実施形態では、架橋流路44の中心軸40bが循環流路41の中心軸40aと立体交差する配置とする。
【0044】
これにより、循環流路の断面積を大きくしつつ、流路部品(流路板、流路部材)の剛性を確保することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態について
図8ないし
図17を参照して説明する。
図8は同実施形態の説明に供する要部断面説明図、
図9は同じくノズル板の平面説明図である。
図10は第1流路板の平面説明図、
図11は同じく第2流路板の平面説明図、
図12は同じく第3流路板に平面説明図である。
図13は同じく第4流路板の平面説明図、
図14は同じく第5流路板の平面説明図、
図15は同じく第6流路板の平面説明図である。
図16は同じく振動板部材の平面説明図、
図17は同じくフレーム部材の平面説明図である。
【0046】
本実施形態では、流路板2を、第1流路板51~第6流路板56の6枚の板状部材(層部材)を積層して構成している。具体的には、ノズル板1側から、第1流路板51~第6流路板56の順に積層して流路板2とし、第6流路板56上に振動板部材3を積層し、更に振動板部材3にフレーム部材20を積層している。
【0047】
ノズル板1には、
図9にも示すように、液体を吐出するノズル4が形成されている。ここでは、ノズル4が配列されたノズル列4A、4Bの組を2つ、合計4つのノズル列を有している。
【0048】
第1流路板51には、
図10にも示すように、通路5を構成する貫通穴5aと、循環抵抗部42を含む流路を形成する貫通溝部42aが形成されている。
【0049】
第2流路板52には、
図11にも示すように、通路5を構成する貫通穴5bと、循環流路41を形成する貫通溝部41aが形成されている。
【0050】
第3流路板53には、
図12にも示すように、通路5を構成する貫通穴5cと、架橋流路44を形成する貫通溝部44aが形成されている。
【0051】
第4流路板54には、
図13にも示すように、個別液室6を形成する貫通穴6aと、架橋流路44を形成する貫通溝部44bが形成されている。
【0052】
第5流路板55には、
図14にも示すように、個別液室6、流体抵抗部7及び液導入部8を形成する貫通穴6bと、架橋流路44を形成する貫通溝部44cが形成されている。
【0053】
第6流路板56には、
図15にも示すように、個別液室6を形成する貫通穴6cと、液導入部8を形成する貫通穴6dと、架橋流路44を形成する貫通溝部44dが形成されている。
【0054】
振動板部材3には、
図16に示すように、開口9を形成する貫通溝部9aと、循環ポート43に通じる開口46が形成されている。
【0055】
フレーム部材20には、
図17に示すように、2つの共通液室10を形成する2組の凹部10a、10bと、2つの共通液室10A、10Bに通じる供給ポート23と、2つの循環流路41に通じる循環ポート43が形成されている。
【0056】
また、供給ポート23はノズル配列方向両端部にそれぞれ設けられて、2つの共通液室10に対して両側から供給する両側供給の構成としている。
【0057】
また、2つの共通液室10A、10Bの間には圧電アクチュエータ11を挿入するための貫通溝部24が形成されている。
【0058】
このように、循環流路41及び架橋流路44を形成する部材は、複数の層部材(板状部材)を積層して構成することで、簡単な構成で、循環流路41の高さ(部材の厚み方向の高さ)を確保することができる。
【0059】
これにより、循環流路41の流路断面積を大きくすることができ、圧力損失を抑制することができる。
【0060】
また、供給ポート23と循環ポート43は、ノズル配列方向の両端部に配置されていること、ヘッドの外形を大きくすることなく、循環ポートを配置することができる。
【0061】
そして、この場合、共通液室10に通じる供給ポート23と、循環流路41A,41Bを通じる架橋流路44は、それぞれ両側からの供給及び排出を行う構成となる。
【0062】
これにより、片側からの供給及び循環を行う構成とした場合に比べて、圧力損失差を約1/4とすることができ、共通液室及び循環流路の寸法も小さくすることができて、ヘッドの小型化を図れる。
【0063】
次に、本発明の第3実施形態について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同実施形態の説明に供する振動板部材の平面説明図、
図19は同じくフレーム部材の平面説明図である。
【0064】
本実施形態では、各ノズル列に対応する共通液室10a、10bは独立した構成として、ノズル配列方向の一端部に配置した供給ポート23から液体を供給する片側供給構成としている。
【0065】
これにより、ヘッドの長手方向の長さを第1実施形態よりも短くできる。
【0066】
次に、本発明の第4実施形態について
図20ないし
図23を参照して説明する。
図20は同実施形態の説明に供する断面説明図、
図21は同じく
図20のD-D線に沿う断面説明図、
図22は同じく流路板のノズル板側平面説明図、
図23は同じく流路板の振動板部材側平面説明図である
【0067】
流路板2には、循環流路41となる貫通溝部と、循環抵抗部42を含む流路47となる溝部と、架橋流路44となる溝部を形成している。また、流路板2には、個別液室6、流体抵抗部7、液導入部8となる溝部と、通路5となる貫通穴を形成している。
【0068】
ここでは、流路板2はシリコン基板で形成し、循環流路41となる貫通溝部及び通路5となる貫通穴は厚み方向に貫通するフルエッチングで形成し、個別液室6、流体抵抗部7、液導入部8となる溝部及び架橋流路44となる溝部はハーフエッチングで形成している。
【0069】
本実施形態では、架橋流路44は、流路板2の厚み方向において、循環流路41と同じ位置(循環流路に含まれる位置)に配置されているが、架橋流路44の流路断面積は循環流路41の流路断面積よりも小さくしている。
【0070】
これにより、簡単な構成で流路板を形成できるとともに、簡単な構成で、循環流路41の高さ(部材の厚み方向の高さ)を確保することができ、循環流路41の流路断面積を大きくすることができて、圧力損失を抑制することができる。
【0071】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットを備える本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図24及び
図25を参照して説明する。
図24は同装置の機構部の側面説明図、
図25は同機構部の要部平面説明図である。
【0072】
この液体を吐出する装置は、シリアル型画像形成装置である。左右の側板421A、421Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド431、432でキャリッジ433を主走査方向(矢印方向)に往復移動可能に保持している。
【0073】
このキャリッジ433には、本発明に係る液体吐出ヘッド434と液体吐出ヘッド434に液体を供給するヘッドタンク(サブタンクも同義)435とを一体にした2つの本発明に係る液体吐出ユニット430(430A、430B)を搭載している。液体吐出ヘッド434は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向にし、液体吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0074】
ここで、液体吐出ヘッド434は2つのノズル列を有する。そして、一方の液体吐出ユニット430Aの液体吐出ヘッド434の一方のノズル列はブラック(K)の液体を、他方のノズル列はシアン(C)の液体を吐出する。
【0075】
また、他方の液体吐出ユニット430Bの液体吐出ヘッド434の一方のノズル列はマゼンタ(M)の液体を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液体を吐出する。
【0076】
なお、ここでは2つの液体吐出ヘッドを使用して4色の液体を吐出する構成としているが、1つの液体吐出ヘッドに4つのノズル列を配置して、1個の液体吐出ヘッドから4色の各色を吐出させることもできる。
【0077】
また、液体吐出ユニット430A、430Bにおける「一体化」は、液体吐出ヘッド434とヘッドタンク435とが直接、あるいは、フィルタ部材などを介して相互に締結部材や接着などで固定されていること、あるいは、チューブなどで相互に接続されていることなどを意味する。
【0078】
装置本体側のカートリッジホルダ404には、各色の液体カートリッジであるメインタンク410(410k、410c、201m、210y)が着脱自在に装着される。そして、各液体吐出ユニット430A、430Bのヘッドタンク435には各色の供給チューブ436を介して、送液ポンプを含む送液ユニット424によって各色のメインタンク410から各色の液体が送液される。
【0079】
一方、給紙トレイ402の用紙積載部(圧板)441上に積載した用紙442を給紙するための給紙部として、用紙積載部441から用紙442を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)443及び給紙コロ443に対向する分離パッド444を備えている。
【0080】
そして、給送された用紙442を搬送及び案内するガイド445、カウンタローラ446、搬送ガイド部材447、先端加圧コロ449を有する押さえ部材448を備えている。さらに、搬送された用紙442を吸着して液体吐出ユニット430の液体吐出ヘッド434に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト451を備えている。
【0081】
ここで、搬送ベルト451は、無端状ベルトであり、搬送ローラ452とテンションローラ453との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、ここでは、搬送ベルト451として帯電手段である帯電ローラ456で帯電される静電搬送ベルトを使用している。ただし、搬送ベルト451としてはエアー吸引で吸着する搬送ベルトでもよい。また、搬送手段としては、搬送ベルトを使用しないで、2つのローラによって搬送するものでもよい。
【0082】
搬送ベルト451を掛け回したテンションローラ453の下流側には、搬送ベルト451から用紙442を分離するための分離爪461と、排紙ローラ462及び排紙コロ463とを備え、排紙ローラ462の下方に排紙トレイ403を備えている。
【0083】
また、装置本体の背面部には両面ユニット471が着脱自在に装着されている。この両面ユニット471は搬送ベルト451の逆方向回転で戻される用紙442を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ446と搬送ベルト451との間に給紙する。また、この両面ユニット471の上面は手差しトレイ472としている。
【0084】
さらに、キャリッジ433の走査方向一方側の非印字領域には、液体吐出ユニット430A、430Bの液体吐出ヘッド434のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構481を配置している。
【0085】
この維持回復機構481には、液体吐出ヘッド434のノズル面をキャピングするための各キャップ482a、482bを備えている。また、維持回復機構481は、ノズル面をワイピングするためのブレード部材483を備えている。また、維持回復機構481は、増粘した液体を排出するために画像形成に寄与しない液体を吐出させる空吐出を行うときの液体を受ける空吐出受け484などを備えている。
【0086】
また、キャリッジ433の走査方向他方側の非印字領域には、画像形成中などに空吐出を行うときの液体を受ける空吐出受け488を配置している。この空吐出受け488には液体吐出ヘッド434のノズル列方向に沿った開口部489などを備えている。
【0087】
この画像形成装置においては、給紙トレイ402から用紙442が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙442はガイド445で案内され、搬送ベルト451とカウンタローラ446との間に挟まれて搬送される。更に、用紙442は、先端を搬送ガイド437で案内されて先端加圧コロ449で搬送ベルト451に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0088】
そして、帯電した搬送ベルト451上に用紙442が給送されると、用紙442が搬送ベルト451に吸着され、搬送ベルト451の周回移動によって用紙442が副走査方向に搬送される。
【0089】
そこで、キャリッジ433を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ユニット430A、430Bの液体吐出ヘッド434を駆動することにより、停止している用紙442に液体を吐出して1行分の画像を記録する。そして、用紙442を所定量搬送後、次の行の画像形成を行う。記録終了信号又は用紙442の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙442を排紙トレイ403に排紙する。
【0090】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッド又は液体吐出ヘッドユニットを備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0091】
本願において、「液体を吐出する装置」とは、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置である。
【0092】
この「液体を吐出する装置」には、液体を吐出する部分だけでなく、液体が付着するもの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
【0093】
また、「液体を吐出する装置」には、従前の記録装置、印刷装置、画像形成装置、液滴吐出装置、液体吐出装置、処理液塗布装置、立体造形装置などと称される装置そのものが含まれる。
【0094】
また、「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものに付着した液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
【0095】
なお、上記「液体が付着するもの」とは液体が一時的にでも付着可能なものを意味する。そして、「液体が付着するもの」の用語に代えて、用紙、媒体、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙、粉体層(粉末層)などの代替用語を使用するとき、当該代替用語は、特に限定しない限り、すべての液体が付着するものを含む意味であるものとする。
【0096】
また、「液体が付着するもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0097】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤なども含まれる。
【0098】
また、「液体を吐出する装置」には、特に限定しない限り、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
【0099】
また、「液体吐出ユニット」とは、液体を吐出させる部分を一体化したものを意味する。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持機構、主走査移動機構の構成を任意に液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0100】
例えば、「液体吐出ユニット」は、上記実施形態で説明した液体吐出ヘッドとヘッドタンクを一体化したもの、液体吐出ヘッドとキャリッジを一体化したもの、液体吐出ヘッド、ヘッドタンク及びキャリッジを一体化したものが含まれる。
【0101】
また、これらの液体吐出ユニットにフィルタユニット(前述したフィルタ部材と分配流路を形成したもの)を追加したものが含まれる。
【0102】
また、液体吐出ヘッドと維持機構を一体化したもの、液体吐出ヘッドと維持機構と主走査移動機構を一体化したもの、液体吐出ヘッド、主走査移動機構、供給機構を一体化したものなども含まれる。
【0103】
上記主走査移動機構は、キャリッジ、キャリッジを案内するガイド部材、あるいは、これらに駆動源、キャリッジの移動機構を組み合わせて構成される。供給機構は、メインタンクを装着する装填部、チューブと、ヘッドタンクなどで構成される。維持機構は、キャップ、ワイパ部材、キャップに通じる吸引ポンプなどの吸引手段、空吐出受けのいずれか2以上を組み合わせたものである。
【0104】
さらに、「液体吐出ユニット」には、前記実施形態で説明した機構部から液体が付着するものを搬送する機構を除いた部分で構成されるものを含む。
【0105】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明した圧電アクチュエータ以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0106】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0107】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板部材
4 ノズル
5 通路
6 個別液室
10、10A、10B 共通液室
11 圧電アクチュエータ
12 圧電部材
20 フレーム部材
41、41A、41B 循環流路
42 循環抵抗部
434 液体吐出ヘッド
430 液体吐出ユニット