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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】参照電極
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20220329BHJP
   G01N 27/401 20060101ALI20220329BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20220329BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20220329BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G01N27/30 311Z
G01N27/401 313A
G01N27/28 R
G01N27/401 313B
G01N27/401 313Z
G01N27/414 301Z
G01N27/416 353Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017244439
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019113316
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】沖原 将生
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040707(JP,A)
【文献】国際公開第2009/055092(WO,A1)
【文献】実開昭58-187764(JP,U)
【文献】特表2010-517032(JP,A)
【文献】米国特許第04235688(US,A)
【文献】実公昭43-012875(JP,Y1)
【文献】特開平05-340914(JP,A)
【文献】特開昭62-259054(JP,A)
【文献】特開2006-177678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面を有した状態で内部液を収容する容器状のタンク部及び、前記タンク部内に連通されるとともに前記タンク部から内部液を導出する管状の導出部を有する収容部と、
前記導出部の前記タンク部とは反対側の端部に接続された液絡部と、
前記導出部に挿入され、該液絡部に一端が接するとともに他端が前記収容部内に突出する液滴部と、
少なくとも一部が前記液滴部の前記他端より前記一端側に位置する内部電極と、
を備えた参照電極。
【請求項2】
前記導出部は、挿通する前記液滴部に対向する面に凹凸が形成されている請求項1に記載の参照電極。
【請求項3】
前記液滴部は、ポリプロピレンにより構成されている請求項1又は請求項2に記載の参照電極。
【請求項4】
前記液滴部の前記他端が前記収容部の壁面に接している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の参照電極。
【請求項5】
前記液滴部の少なくとも一部は、前記収容部の内壁に沿って延在する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の参照電極。
【請求項6】
前記内部電極は、前記液滴部に接している請求項5に記載の参照電極。
【請求項7】
前記内部電極は、前記液滴部の前記一端と前記他端とを通過する中心軸からずれた位置に配置されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の参照電極。
【請求項8】
前記内部電極は、前記収容部の前記液絡部側の壁面から当該収容部内へ向けて突出する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の参照電極。
【請求項9】
前記内部電極は、少なくとも一部が前記液滴部内に挿入されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の参照電極。
【請求項10】
前記液絡部及び前記液滴部は、細孔を有する多孔質材である請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の参照電極。
【請求項11】
前記液絡部の細孔の直径の平均値は、1nm以上10nm以下で、前記液滴部の細孔の直径の平均値は、10μm以上であって前記内部液に毛細管現象を生じさせる最大の大きさ以下である請求項10に記載の参照電極。
【請求項12】
前記液滴部は、前記液絡部と一体である請求項1から請求項4又は請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の参照電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象箇所の検査に用いる参照電極に関する。
【背景技術】
【0002】
対象箇所の例えばpHを測定する方法として、センサを用いた方法が知られており、このセンサとしては、参照電極の電位を基準としてpHの測定するものが知られている。
【0003】
参照電極は、金属製の内部電極を内部液に浸すとともに、この内部液を多孔質材からなる液絡部を介して測定対象に滲出するように構成されている。
【0004】
このような参照電極としては、内部電極及び液絡部が嵌合構造によってセンサ本体に固定したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この参照電極では、センサ本体に内部液を収容した収容部が形成されており、収容部の一端側から内部電極が延出するとともに、収容部の他端側に液絡部が設けられている。
【0006】
また、高温高圧のボイラー水などの電気化学的指標の測定を目的とするとともに、定期的なメンテナンスを前提とした構造の参照電極が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
この参照電極では、内部液を収容した収容空間が細長とされており、収容空間の一端側に設けられ内部電極と他端側に設けられた液絡部との間に気泡が発生し易い。このため、部分的に気泡が発生しても、内部電極と内部液と通電状態を維持するために、繊維が編成された編組体によって内部電極と液絡部とが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-30913号公報
【文献】特開2006-177678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの参照電極にあっては、内部電極と液絡部とが離間している。このため、液絡部を下方に配置した使用形態で内部液が減少した際に、内部液の液面が液絡部の上端より上方に位置しているにも関わらず、内部電極と内部液と通電状態が維持できないことが生じ得る。この場合、参照電極としての機能が損なわれる虞がある。
【0010】
また、後者の参照電極にあっては、内部電極と液絡部とが編組体で接続されているが、内部液が減少した場合、編組体で吸い上げられる内部液が内部電極に達しないことが生じ得る。この場合も、参照電極としての機能が低下したり、損なわれたりする虞がある。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、内部液減少時に生じる機能低下を抑制することができる参照電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る参照電極は、収容した内部液を導出する管状の導出部が設けられた収容部と、前記導出部の端部に接続され前記内部液を滲出する為の液絡部と、該液絡部に一端が接するとともに他端が前記収容部内に突出し、前記内部液を前記液絡部へ導く液滴部と、少なくとも一部が前記液滴部の前記他端より前記一端側に位置する内部電極と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部液減少時に生じる機能低下を抑制することができる参照電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
図2】第二実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
図3図2のA部拡大図である。
図4】第三実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
図5】第四実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
図6】第五実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
図7】第六実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
図8】第六実施形態に係るセンサを傾けて使用する状態を示す説明図である。
図9】第七実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す斜視断面図である。
図10】第七実施形態に係るセンサを傾けて使用する状態を示す説明図である。
図11】第八実施形態に係る参照電極を備えたセンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図である。このセンサ12は、作物を育てる土壌や水耕栽培の養液等の測定対象の状態を測定する際に用いられ、測定対象のpH値を測定できるように構成されている。
【0017】
このセンサ12の筐体14は、一例として合成樹脂で形成されている。この筐体14の下端部には、図1中下方へ向かうに従って中心側へ傾斜した第一傾斜面16と第二傾斜面18とが形成されており、筐体14の下端部は、先細り形状とされている。
【0018】
筐体14の下端面20には、円形の孔22が形成されており、この孔22は、筐体14内に形成された収容空間24に連通している。孔22が開口した収容空間24の底面26には、座繰り穴28が形成されており、座繰り穴28は、孔22を包囲するように形成されている。
【0019】
筐体14に形成された第二傾斜面18には、基板収容穴30が形成されており、基板収容穴30の開口縁部には、内側へ延出したフランジ部32が形成されている。基板収容穴30には、センサ基板34が配設されており、センサ基板34は、周縁部がリング状のシール部材36を介してフランジ部32に密接した状態で固定されている。これにより、筐体14の内部と外部との水密性が確保されている。
【0020】
センサ基板34には、ISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)チップ38が設けられており、ISFETチップ38は、後述する参照電極10と共に用いて測定対象のpH値を測定する為のチップである。
【0021】
ISFETチップ38の表面には、イオン感応膜が形成されており、感応面38Aを構成する。このセンサ12を測定対象内に配置した状態において、参照電極10からの基準電位が測定対象に付与されると、測定対象内の水素イオン(H)がISFETチップ38の感応面38Aに集まる。すると、ISFETチップ38は、測定対象とイオン感応膜間の界面電位を検出するので、ISFETチップ38が検出した界面電位と参照電極との電位差を測定することで、測定対象の水素イオン指数を示すpH値を測定することができる。
【0022】
(参照電極)
この筐体14の収容空間24には、参照電極10が設けられている。この参照電極10は、電極電位の算出や電気化学測定の基準となる電位を印加するものであり、本実施形態では、測定対象に基準電位を付与する。
【0023】
この参照電極10の収容部40は、例えばガラスや塩化ビニールで形成されている。収容部40は、内部液42が収容された容器状のタンク部44と、タンク部44内の内部液42を導出する導出部46とが形成されている。
【0024】
タンク部44は、円筒状の壁を構成する周面48と、周面48の一端側を閉鎖する一端面50と、周面48の他端側を閉鎖する他端面52とを有している。一端面50からは、管状の一例である円筒状の導出部46が延出しており、導出部46は、タンク部44内に連通している。
【0025】
導出部46が延出した一端面50は、外周部から導出部46へ向かうに従って一端側へ傾斜しており、一端面50を下方へ向けた状態で、内部液42が導出部46に集まるように構成されている。
【0026】
導出部46の先端には、液絡部54が設けられている。液絡部54は、細孔を有する多孔質材で構成されており、導出部46から供給された内部液42を滲出する。また、液絡部54は、多孔質のガラスで構成されており、測定対象が示すアルカリや酸や内部液42に対する耐性を有している。
【0027】
なお、本実施形態では、液絡部54を多孔質のガラスで構成する場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。例えば液絡部54を、親水性のポリプロピレンやバイコールガラスや多孔質セラミックスで構成することができる。
【0028】
液絡部54は、導出部46の内径寸法NSより大きな外径寸法GSの円柱状に形成されており、液絡部54の外径寸法GSは、導出部46の外径寸法と略同寸法とされている。
【0029】
この液絡部54と導出部46との外周面には、熱収縮チューブ56が設けられている。この液絡部54及び導出部46を覆った熱収縮チューブ56は、加熱されて収縮し、液絡部54を導出部46に固定する。
【0030】
ここで、熱収縮チューブ56としては、内周面に接着剤が設けられたものが知られている。しかし、本実施形態では、接着剤を有しない熱収縮チューブ56を用いることで、液絡部54へ接着剤の滲み込みを防止している。
【0031】
導出部46には、液滴部58の一端部が挿入されている。液滴部58は、細孔を有する多孔質材で構成されており、タンク部44内の内部液42が含浸される。液滴部58は、親水性のポリプロピレンで構成されており、内部液42に対する耐性を有している。
【0032】
なお、本実施形態では、液滴部58をポリプロピレンで構成する場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものでない。この液滴部58の材質としては、塩化溶液による腐食や、長期保存で劣化しない他の材料を用いることができる。
【0033】
液滴部58は、四角柱状に形成されている。液滴部58は、角部が導出部46の内周面60に接した状態で支持されており、液滴部58の外面と導出部46の内周面60との間には、内部液42が通流する通流路62が形成される。
【0034】
液滴部58の一端64は、液絡部54の基端面66に面接触しており、液滴部58の他端68は、収容部40のタンク部44内に突出している。これにより、タンク部44内の内部液42は、液滴部58を介して液絡部54に供給される。
【0035】
液滴部58の細孔の直径の平均値は、10μm以上であって内部液42に毛細管現象を生じさせる最大の大きさ以下とされており、具体的には10μm以上100μm以下とされている。本実施形態では、液滴部58の細孔の直径の平均値を17μmとする。
【0036】
また、液絡部54の細孔の直径の平均値は、1nm以上10nm以下とされており、本実施形態では、液絡部54の細孔の直径の平均値を4nmとする。
【0037】
液滴部58の細孔の直径の平均値は、液絡部54の細孔の直径の平均値の4000倍以上とすることが好ましく、本実施形態においても、液滴部58の細孔の直径の平均値を液絡部54の細孔の直径の平均値の4000倍以上とした。
【0038】
これにより、細孔の直径が大きい液滴部58によって液絡部54への内部液42の供給を速やかに行うとともに、内部液42の液絡部54からの滲出量を抑えることで、長期使用を可能とする。
【0039】
タンク部44の他端面52には、制御基板70が固定されており、制御基板70からは、内部電極72が延出している。内部電極72は、タンク部44の他端面52を貫通してタンク部44内に延出しており、タンク部44内の内部液42に挿入されている。内部電極72の先端は、タンク部44の一端面50に近接する。
【0040】
内部電極72は、液滴部58の中心軸CJからずれた位置に配置されており、内部電極72は、先端が液滴部58の他端68より一端64側に達する長さを有している。これにより、内部電極72は、少なくとも一部が液滴部58の他端68より一端64側に位置する。
【0041】
内部液42としては、例えば塩化カリウム(KCl)溶液や塩化ナトリウム(NaCl)溶液が挙げられ、内部電極72の素材としては、例えば銀/塩化銀(Ag/AgCl)が挙げられる。
【0042】
制御基板70には、接続コネクタ74が設けられており、接続コネクタ74が対向する筐体14の部位には、コネクタ挿入穴76が形成されている。これにより、この接続コネクタ74に通信ケーブルを接続することで、当該センサ12による検出結果を出力できるように構成されている。
【0043】
この参照電極10の収容部40に設けられた導出部46には、Oリング78が外嵌されており、Oリング78は、収容部40の一端面50に設けられたストッパ80によって一端面50に近接する方向への移動が規制されている。
【0044】
この導出部46は、筐体14に設けられた孔22に挿入されており、導出部46の先端に設けられた液絡部54の先端面82と筐体14の下端面20とが面一となるように導出部46が挿入されている。
【0045】
なお、本実施形態では、熱収縮チューブ56を用いて液絡部54を導出部46に固定したが、この構造に限定されるものではない。例えば、液絡部54の先端面82に当接するストッパを筐体14に設けて液滴部58の離脱を防止しても良い。
【0046】
この挿入状態において、導出部46に外嵌したOリング78は、筐体14の座繰り穴28に内嵌しており、Oリング78は、座繰り穴28の内周面と導出部46の外周面とに密着する。これにより、水密性が確保されており、内部への水分の浸入を抑制することができる。
【0047】
ここで、このセンサ12は、参照電極10、ISFETチップ38、及びこれらを制御する各基板34、70を備えており、各基板34、70への水分の付着を防止する防水対策が必要となる。そこで、導出部46の根元にOリング78を配置することで、筐体14の外部と内部とを容易に隔離することが可能となり、各基板34、70を外部環境から保護し、センサ12の長期間にわたる安定した測定を可能とする。
【0048】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0049】
本実施形態の参照電極10においては、一端64が液絡部54に接触した液滴部58の他端68が収容部40内に突出するため、収容部40内の内部液42を、液滴部58を介して液絡部54へ導通させることができる。
【0050】
そして、収容部40のタンク部44内に挿入された内部電極72は、先端が液滴部58の他端68より一端64側に位置する長さを有しており、内部電極72の少なくとも一部が液滴部58の他端68より一端64側に位置する。
【0051】
このため、下端面20を下向きにした使用状態で、内部液42が減少し液面42Aが液滴部58の他端68より下がっても、液絡部54に含浸した内部液42を介して、内部電極72と液絡部54から滲出される内部液42と通電状態を維持することができる。
【0052】
これにより、内部液42の液面42Aが液滴部58の他端68より下がっても測定対象に基準電位を付与することができる。したがって、内部液42減少時に生じ得る機能低下を抑制することができる。これにより、長期にわたって安定した測定結果を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態では、熱収縮チューブ56を用いて導出部46の先端に液絡部54が固定されている。
【0054】
このため、筐体14に液絡部54を嵌合して固定する構造上、筐体14及び液絡部54の製造公差を考慮しつつ、筐体14を設計しなければならない場合と比較して、製造コストを抑えることができる。また、筐体14及び液絡部54の熱膨張係数の違いによる液絡部54の脱落を抑制することができる。
【0055】
ここで、コスト低減のため、本実施形態のように導出部46と液絡部54とを熱収縮チューブ56で固定する場合、導出部46の外径寸法を液絡部54の外径寸法GSに合わせる必要がある。このとき、長期使用を目的として、内部液42の滲出量を抑えるために液絡部54を小径化すると、導出部46の内径寸法NSが狭くなる。
【0056】
この場合、輸送時の振動や保管時の姿勢によって導出部46に気泡が入ると、小径の導出部46から気泡が抜け難く、測定対象に接触する内部液42と内部電極72との導通が断たれた状態となり、pH値の測定が出来なくなるという不具合を生じ得る。
【0057】
しかし、本実施形態では、導出部46に液滴部58が挿入されており、収容部40内の内部液42を、液滴部58を介して、液絡部54に供給することができる。このため、導出部46に生じた気泡による不具合を抑制することができる。
【0058】
また、この参照電極10の液滴部58は、ポリプロピレンにより構成されている。
【0059】
このため、内部液42が構成する塩化溶液による液滴部58の腐食等を抑制するとともに、長期保存による劣化を抑制することができる。また、測定対象が示すアルカリや酸や対する耐性を有するので、液滴部58の変質を抑制することができる。
【0060】
また、内部電極72は、液滴部58の中心軸CJからずれた位置に配置されている。
【0061】
このため、液滴部58への内部電極72の予期しない接触を抑制することができる。これにより、内部電極72にメッキされたAgClの剥離を抑制することができる。
【0062】
そして、液絡部54及び液滴部58は、細孔を有する多孔質材で構成され、液絡部54の細孔の直径の平均値は、1nm以上10nm以下とされている。また、液滴部58の細孔の直径の平均値は、10μm以上であって内部液42に毛細管現象を生じさせる最大の大きさ以下とされている。
【0063】
このため、液絡部54及び液滴部58の細孔の直径の平均値が同寸法とされた場合と比較して、細孔が大きい液滴部58によって液絡部54への内部液42の供給性を高めつつ、細孔が小さい液絡部54によって内部液42の滲出量を抑制することができる。
【0064】
また、高温高圧のボイラー水などの電気化学的指標の測定を目的とした参照電極のように、定期的なメンテナンスを前提とした構造を有する場合と比較して、メンテナンスのための専門知識が無くても、使用することができる。
【0065】
(第二実施形態)
図2及び図3は、第二実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
本実施形態に係る参照電極10は、第一実施形態と比較して、導出部46が異なる。
【0067】
すなわち、導出部46には、図3に示すように、挿通する液滴部58に対向する内周面60に凹凸部84が形成されている。この凹凸部84は、導出部46の中心CSへ向けて山型に突出した凸部86と、導出部46の外側へ向けて後退した凹部88とで構成され、凸部86と凹部88とは、導出部46の長さ方向に交互に形成されている。
【0068】
導出部46の長さ方向に隣接した凸部86は、それぞれ独立したものであっても良いし、内周面60に沿って螺旋状に形成されたネジ山型であっても良い。
【0069】
凸部86液絡部54をネジ山型とすれば、液滴部58を回転させながら導出部46に挿入することができ、挿入作業が容易となる。
【0070】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態では、導出部46に形成された凸部86によって液絡部54との摩擦抵抗を大きくできるため、導出部46からの液絡部54の予期せぬ離脱を抑制することができる。
【0072】
(第三実施形態)
図4は、第三実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
本実施形態に係る参照電極10は、第一実施形態と比較して、液滴部58が異なる。
【0074】
すなわち、液滴部58は、他端68が収容部40の壁面の一例である他端面52に接する長さを有している。
【0075】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、液滴部58の一端64は液絡部54の基端面66に接するととともに、他端68は収容部40の他端面52に接している。これにより、液滴部58は、一端部が導出部46に包囲されるとともに、液絡部54の基端面66及び収容部40の他端面52によって両端から挟持された状態で保持されている。
【0077】
このため、液絡部54の予期せぬ離脱を抑制することができる。
【0078】
(第四実施形態)
図5は、第四実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
本実施形態に係る参照電極10は、第一実施形態と比較して、内部電極72と液滴部58との位置関係が異なる。
【0080】
すなわち、液滴部58には、中心軸CJに沿った挿入穴58Aが他端部側に形成されており、この挿入穴58Aは、他端68に開口している。また、内部電極72は、液滴部58の中心軸CJ上に配置されており、内部電極72の先端部は、液滴部58の挿入穴58Aに挿入されている。
【0081】
これにより、内部電極72は、少なくとも一部が液滴部58内に挿入されている。
【0082】
なお、本実施形態では、挿入穴58Aに内部電極72が予め挿入された液滴部58を用いて参照電極10が組み立てられる。
【0083】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、内部電極72の一部が液滴部58内に挿入されているので、内部電極72は液滴部58に含浸された内部液42と電荷交換が可能となる。このため、内部液42の液滴部58への含浸状態が維持されている間、基準電位を付与できるので、参照電極10の使用可能時間を延ばすことができる。
【0085】
また、内部電極72を液絡部54に近づけることによる効果も得ることができる。
【0086】
(第五実施形態)
図6は、第五実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0087】
本実施形態に係る参照電極10は、第一実施形態と比較して、内部電極72の配置が異なる。
【0088】
すなわち、内部電極72は、導出部46が設けられた収容部40の一端面50から収容部40内に延出している。これにより、内部電極72は、収容部40の液絡部54側の壁面である一端面50から収容部40内へ向けて突出する。
【0089】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0090】
また、本実施形態では、内部電極72が収容部40の液絡部54側の一端面50から突出する。このため、液絡部54と逆側の他端面52から液絡部54側へ向けて内部電極72が延出する場合と比較して、内部電極72の固定位置から液滴部58までの離間距離を短くすることができる。
そして、下端面20を下向きにした使用状態で、内部液42が減少し液面42Aが液滴部58の他端68より下がっても、内部電極72をタンク部44の周面48もしくは他端面52からタンク部44内に延出した場合と比較して、内部電極72と液絡部54から滲出される内部液42と通電状態を維持することができる。
【0091】
これにより、液滴部58に対する内部電極72の位置を安定的に維持することができる。また、組付け時に生じる内部電極72と液絡部54との干渉を抑制し、内部電極72にメッキされたAgClの予期せぬ剥離を抑制することができる。
【0092】
(第六実施形態)
図7及び図8は、第六実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
本実施形態に係る参照電極10は、第一実施形態と比較して、液滴部58の形状が異なる。
【0094】
すなわち、液滴部58は、導出部46に挿入される挿入穴58Aと、挿入穴58Aから延出して収容部40の一端面50に積層するように配置された底面部58Bとを備えている。また、液滴部58は、底面部58Bの周縁より起立して収容部40の周面48に沿って延在する円筒状の周壁部58Cを備えており、挿入穴58Aと底面部58Bと周壁部58Cとは、一体形成されている。
【0095】
これにより、液滴部58の少なくとも一部は、収容部40の内壁の一例である周面48に沿って延在する。
【0096】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0097】
また、本実施形態では、収容部40の周面48に沿って液滴部58が形成されている。このため、図8に示すように、センサ12を傾けて使用する際に、内部液42の液面42Aが導出部46の開口部分に達しない場合であっても、液滴部58を介して液絡部54に内部液42を供給することができる。
【0098】
このため、内部液42が減少した状態でセンサ12を傾けて使用する場合であっても、基準電位を付与することができ、長期使用が可能となる。
【0099】
(第七実施形態)
図9及び図10は、第七実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第六実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0100】
本実施形態に係る参照電極10は、第六実施形態と比較して、内部電極72の構造が異なる。
【0101】
すなわち、内部電極72は、収容部40の他端面52を貫通して(図7参照)直線状に延在する芯部72Aと、芯部72Aより側方へ延出した延出部72Bと、延出部72Bに接続され液滴部58の周壁部58Cに接して延在する円筒状の円筒部72Cとを備えている。
【0102】
これにより、内部電極72は、液滴部58に接している。
【0103】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一及び第六実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0104】
また、本実施形態の内部電極72は、液滴部58の周壁部58Cに沿って延在しかつ周壁部58Cと接する円筒部72Cを備えている。
【0105】
このため、図10に示すように、センサ12を傾けて使用する際に、内部液42の液面42Aが導出部46の開口部分に達しない場合であっても、液滴部58を介して液絡部54に内部液42を供給することができる。
【0106】
このとき、内部液42の液面42Aが内部電極72の芯部72Aに達しない場合であっても、内部液42は内部電極72の円筒部72Cに接するので、内部電極72と内部液42と電荷交換が可能となる。
【0107】
これにより、第六実施形態と比較して、内部液42がさらに減少した状態でセンサ12を傾けて使用する場合であっても、基準電位を付与することができ、長期使用が可能となる。
【0108】
なお、本実施形態では、内部電極72の円筒部72Cを液滴部58に接触させる構造とすることで、内部電極72と液絡部54に含浸した内部液42との導通を確保することができるため、より好ましい形態となる。
【0109】
(第八実施形態)
図11は、第八実施形態に係る参照電極10を備えたセンサ12を示す断面図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
【0110】
本実施形態に係る参照電極10は、第一実施形態と比較して、液滴部58及び液絡部54の構造が異なる。
【0111】
すなわち、液滴部58と、液滴部58より大径の液絡部54とは、同一の部材で一体形成されており、その素材の一例としては、ポリプロピレンが挙げられる。本実形態では、液滴部58及び液滴部58の細孔の直径の平均値に応じて内部液42の粘度を調整するものとする。
【0112】
これにより、液滴部58は、液絡部54と一体である。
【0113】
(作用・効果)
このような構成であっても、第一及び第六実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0114】
また、本実施形態では、液滴部58と液絡部54とが一体形成されているので、液滴部58と液絡部54とに芯ずれが生じて隙間ができるといった不具合を防止することができる。
【0115】
そして、部材の調達コストを抑えることができるとともに、組み付け工数を削減することができる。
【0116】
したがって、センサ12の低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0117】
10 参照電極
40 収容部
42 内部液
42A 液面
46 導出部
54 液絡部
58 液滴部
58C 周壁
60 内周面
64 一端
68 他端
72 内部電極
72C 円筒部
84 凹凸部
86 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11