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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220329BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220329BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/25
A61Q11/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017223960
(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2019006754
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017125617
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友美
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
A61K 6/00- 6/90
A61K 31/00-31/327
A61P 1/00-43/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ホスホコリン基含有重合体と、(B)シリカと、(C)水と、を含有し、
前記(B)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である、口腔用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が増粘性シリカを含み、前記増粘性シリカの含有量が2.5重量%以上である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が研磨性シリカを含み、前記研磨性シリカの含有量が5.5重量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(D)モノテルペンをさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記(D)成分がl-メントールである、請求項5に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
(B)シリカと(C)水とを含み、前記(B)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物における前記(B)成分の分散性を向上させるために使用される分散性向上剤であって、
少なくとも(A)ホスホコリン基含有重合体を有効成分とする、分散性向上剤。
【請求項8】
前記有効成分にさらに(D)モノテルペンを含む、請求項7に記載の分散性向上剤。
【請求項9】
(B)シリカと(C)水とを含み、前記(B)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物において前記(B)成分の分散性を向上する分散性向上方法であって、
口腔用組成物に、前記(B)成分と前記(C)成分と共に、(A)ホスホコリン基含有重合体を配合する、分散性向上方法。
【請求項10】
さらに(D)モノテルペンを配合する、請求項9に記載の分散性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホコリン基含有重合体と、所定の総吸水値となるように配合されたシリカと、水とを含み、分散性が向上した口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体等のホスホコリン基含有重合体は、生体への親和性が高く、更に保湿性、口腔内への微生物の付着防止、歯肉炎の予防等の作用も報告されており、口腔用又は外用組成物において利用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
また、シリカは増粘作用や研磨作用があり、ホスホコリン基含有重合体と同様に口腔用組成物に使用されている。しかしながら、従来、シリカと水とを含む口腔用組成物における製剤安定性についての検討は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-219450号公報
【文献】特開2011-153101号公報
【文献】特開2015-853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、シリカと水とを含む口腔用組成物の製剤安定性について検討を行ったところ、口腔用組成物に含まれるシリカの吸水量とその配合量の兼ね合いによっては分散性不良が生じ、口腔用組成物の製剤安定性が低下するという新たな課題に直面した。即ち、シリカと水とを含む口腔用組成物には、シリカの吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積(以下において、総吸水値と記載する場合がある)が所定範囲内で配合される場合に分散性不良の問題という特有の課題が存在することが明らかとなった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、所定の総吸水値となるように配合されたシリカと、水とを含む口腔用組成物において、分散性を向上できる製剤化技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、口腔用組成物において、所定の総吸水値で配合されたシリカ及び水と共に、ホスホコリン基含有重合体を含有する口腔用組成物は、分散性が向上することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ホスホコリン基含有重合体と、(B)シリカと、(C)水と、を含有し、
前記(B)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である、口腔用組成物。
項2. 前記(A)成分が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、項1に記載の口腔用組成物。
項3. 前記(B)成分が増粘性シリカを含み、前記増粘性シリカの含有量が2.5重量%以上である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4. 前記(B)成分が研磨性シリカを含み、前記研磨性シリカの含有量が5.5重量%以上である、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5. (D)モノテルペンをさらに含む、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6. 前記(D)成分がl-メントールである、項5に記載の口腔用組成物。
項7. (B)シリカと(C)水とを含み、前記(B)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物における前記(B)成分の分散性を向上させるために使用される分散性向上剤であって、
少なくとも(A)ホスホコリン基含有重合体を有効成分とする、分散性向上剤。
項8. 前記有効成分にさらに(D)モノテルペンを含む、項7に記載の分散性向上剤。
項9. (B)シリカと(C)水とを含み、前記(B)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物において前記(B)成分の分散性を向上する分散性向上方法であって、
口腔用組成物に、前記(B)成分と前記(C)成分と共に、(A)ホスホコリン基含有重合体を配合する、分散性向上方法。
項10. さらに(D)モノテルペンを配合する、項9に記載の分散性向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物によれば、所定の総吸水値となるように配合されたシリカと水とを含んでいながらも、シリカの分散性不良を抑制でき、優れた製剤安定性を有しているので、保存中に良好な外観形状を維持させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、ホスホコリン基含有重合体(以下、(A)成分と表記することがある)と、(B)シリカ(以下、(B)成分と表記することがある)と、水(以下、(C)成分と表記することがある)とを含有することを特徴とする。以下、本発明の口腔用組成物について詳述する。
【0011】
(A)ホスホコリン基含有重合体
本発明の口腔用組成物は、(A)成分として、ホスホコリン基含有重合体を含有する。ホスホコリン基含有重合体は、後述する所定の総吸水値で含まれる(B)シリカと共存させることによって、シリカの分散性を向上させることができる。
【0012】
ホスホコリン基含有重合体とは、ホスホコリン基を含む単量体(以下、「ホスホコリン基含有単量体」と表記することがある)が重合したポリマーであり、保湿作用等を有する公知の成分である。
【0013】
ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体の種類については、特に制限されないが、例えば、ホスホコリン基とビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体として、より具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体の中でも、シリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体は、1種のホスホコリン基含有単量体からなる単重合体であってもよく、また2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
【0015】
ホスホコリン基含有重合体が共重合体である場合、2種以上のホスホコリン基含有単量体からなる共重合体であってもよく、また少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体と少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体以外の単量体からなる共重合体であってもよい。
【0016】
ホスホコリン基含有重合体に含まれるホスホコリン基含有単量体以外の単量体の種類については、薬学的に許容されるものであってホスホコリン基含有単量とラジカル重合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体以外の単量体として、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メタクリル酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体以外の単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体以外の単量体の中でも、保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、更に好ましくはアルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはアルキル基の炭素数が3~5のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示す。
【0017】
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体として、具体的には、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51)、2-メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ナトリウム共重合体(ポリクオタニウム-65)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-64)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム-61)等が挙げられる。なお、ホスホコリン基含有重合体に関する前記表記において、括弧内の名称は化粧品成分表示名称を示す。
【0018】
本発明の口腔用組成物において、(A)成分として、1種のホスホコリン基含有重合体を使用してもよく、また2種以上のホスホコリン基含有重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらの(A)成分の中でも、保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;更に好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;特に好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。
【0020】
本発明の口腔用組成物において、(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、(A)成分の総量で0.05~1重量%が挙げられる。保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、(A)成分の総量で、好ましくは0.05~0.5重量%、更に好ましくは0.05~0.3重量%、更に好ましくは0.05~0.25重量%が挙げられる。
【0021】
本発明の口腔用組成物において、(B)成分に対する(A)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の総吸水値に応じて定まるが、例えば、(B)成分の総量100重量部当たり、(A)成分の総量が0.1~40重量部が挙げられる。(B)成分に対する(A)成分の比率として、保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性向上効果をより一層向上させるという観点から、(B)成分の総量100重量部当たり、(A)成分の総量が、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.15~7.5重量部、更に好ましくは0.16~6.25重量部が挙げられる。
【0022】
(B)シリカ
シリカは、無水ケイ酸または二酸化ケイ素と同義である。シリカは、増粘作用や汚れ除去作用を有する公知の成分である。
【0023】
本発明の口腔用組成物において、(B)成分は、シリカの吸水量(mL/g)と口腔用組組成物中の含有量(重量%)との積(総吸水値)が7.4~48となるように含まれ、好ましくは8~40、より好ましくは9~35、最も好ましくは10~30が挙げられる。従って(B)成分としては、総吸水値が7.4~48の範囲内となる限り、任意の吸水量のシリカが任意の量で配合される。
【0024】
本発明において吸水量とは、後述の実施例の「シリカの吸水量」で記載するとおり、JIS K5101-13-1(吸油量の測定法)に準じ、油の代わりに水で吸液することによって定義される。
【0025】
(B)成分としては、増粘性シリカ及び研磨性シリカが挙げられる。増粘性シリカは、増粘作用を有する公知の成分であり、研磨性シリカは、汚れ除去作用を有する公知の成分である。増粘性シリカ及び研磨性シリカは、いずれか一方が単独で用いられてもよいし、双方が組み合わせられて用いられてもよい。増粘性シリカの吸水量としては、保形性等の観点から1.6mL/g以上であり、例えば1.6~5mL/g、好ましくは2~4mL/gが挙げられる。研磨性シリカは、増粘性シリカよりも吸水量が少ないシリカをいい、吸水量としては、汚れ除去性等の観点から、好ましくは1.5mL/g以下、例えば0.2~1.5mL/g、より好ましくは0.5~1.4mL/gが挙げられる。
【0026】
本発明の口腔用組成物において、(B)成分の含有量の下限としては、総吸水値が所定の範囲内となる限り特に限定されず、保形性及び/又は汚れ除去性等の観点から、(B)成分の総量で例えば2.5重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上が挙げられる。また、(B)成分の含有量の上限としては、総吸水値が所定の範囲内となる限り特に限定されず、分散性等の観点から、(B)成分の総量で例えば45重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下が挙げられる。
【0027】
本発明の口腔用組成物が(B)成分として増粘性シリカを含む場合、増粘性シリカの含有量としては保形性等の観点から例えば2.5重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上が挙げられ、分散性等の観点から、例えば20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下が挙げられる。
【0028】
本発明の口腔用組成物が(B)成分として研磨性シリカを含む場合、研磨性シリカの含有量としては汚れ除去性等の観点から例えば5.5重量%以上、好ましくは6重量%以上が挙げられ、分散性等の観点から、例えば30重量%以下、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下が挙げられる。また、研磨性シリカの平均粒子径としては、例えば1~50μm、好ましくは2~20μmが挙げられる。なお、平均粒子径は、レーザ回折散乱法粒子径分布測定の体積基準の積算分率における50%径(D50)である。
【0029】
(C)水
本発明の口腔用組成物は、基剤として水を含有する。前記の(B)成分は、所定の総吸水値となる含有量で水との共存下で保存すると、分散性不良でケーキング(振とうによる再分散が困難な沈積物の形成)や離水を生じる傾向を示すが、本発明の口腔用組成物によれば、このようなシリカの分散性をケーキングも離水も生じさせないほどに効果的に向上させることができる。
【0030】
本発明の口腔用組成物において、(C)成分の含有量については、その製剤形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、1~95重量%、好ましくは3~90重量%、更に好ましくは5~85重量%が挙げられる。
【0031】
本発明の口腔用組成物には、更にモノテルペン(以下、(D)成分と表記することがある)が含まれていてもよい。モノテルペンは、ホスホコリン基含有重合体と共存させると、ホスホコリン基含有重合体単独の場合に比べ、飛躍的にシリカの分散性向上効果を高めることができる。
【0032】
(D)モノテルペン
モノテルペンとは、分子内にイソプレン単位が2個含まれる構造を有し、清涼化作用等を有する公知の成分である。
本発明で使用されるモノテルペンの種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、メントール、チモール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、シネオール、テルピネオール等のアルコール系モノテルペン;シトラール、シトロネラール、ペリルアルデヒド、サフラナール等のアルデヒド系モノテルペン;カンフル、メントン、カルボメントン、ヨノン等のケトン系モノテルペン等が挙げられる。これらのモノテルペンは、光学異性体が存在する場合には、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。
【0033】
また、本発明では、モノテルペンとして、モノテルペンを含む精油の状態で使用してもよい。モノテルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。なお、本明細書における(D)成分の含有量や比率に関する記載は、(D)成分としてモノテルペンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるモノテルペン量に換算した値である。
【0034】
本発明の口腔用組成物において、(D)成分として、1種のモノテルペンを単独で使用してもよく、2種以上のモノテルペンを組み合わせて使用してもよい。
【0035】
これらの(D)成分の中でも、シリカの分散性向上効果をより向上させる観点から、好ましくはアルコール系モノテルペン、更に好ましくはl-メントールが挙げられる。
【0036】
本発明の口腔用組成物に(D)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限さないが、シリカの分散性向上効果をより向上させる観点から、例えば、(D)成分の総量で0.01~5重量%、好ましくは0.02~3重量%、より好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1重量%、特に好ましくは0.5~1重量%が挙げられる。
【0037】
また、本発明の口腔用組成物に(D)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(D)成分の比率については、(A)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、たとえば、(A)成分の総量1重量部当たり、(D)成分が0.01~100重量部が挙げられる。(A)成分に対する(D)成分の比率として、シリカの分散性向上効果をより向上させる観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、(D)成分が、好ましくは0.04~60重量部、より好ましくは0.3~20重量部、更に好ましくは0.4~20重量部、特に好ましくは2~20重量部が挙げられる。
【0038】
また、本発明の口腔用組成物に(D)成分を含有させる場合、(B)成分に対する(D)成分の比率については、(B)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、たとえば、(B)成分の総量100重量部当たり、(D)成分が0.02~200重量部が挙げられる。(B)成分に対する(D)成分の比率として、シリカの分散性向上効果をより向上させる観点から、(B)成分の総量100重量部当たり、(D)成分が、好ましくは0.05~100重量部、より好ましくは0.3~25重量部、更に好ましくは1.6~25重量部が挙げられる。
【0039】
その他の成分
本発明の口腔用組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、増粘剤、湿潤剤、賦形剤、香料、甘味剤、色素、消臭剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0040】
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
【0041】
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
【0042】
研磨剤としては、例えば、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等が挙げられる。
【0043】
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
【0044】
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
【0045】
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0046】
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
【0047】
歯質強化/再石灰化剤としては、例えば、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が挙げられる。
【0048】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。
【0049】
局所麻酔剤としては、例えば、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等が挙げられる。
【0050】
血行促進剤としては、例えば、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等が挙げられる。
【0051】
増粘剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸 n-ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体及びメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
【0052】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0053】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース等が挙げられる。
【0054】
香料としては、例えば、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
【0055】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
【0056】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
【0057】
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が挙げられる。
【0058】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0059】
溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の1価アルコール等が挙げられる。
【0060】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
本発明の口腔用組成物において、これらの成分を含有させる場合、その含有量については、当該技術分野で通常使用される範囲で適宜設定すればよい。
【0062】
pH
また、本発明の口腔用組成物のpHについては、口腔内への適用が許容される範囲で適宜設定すればよいが、例えば、4~8、好ましくは5~7.5、更に好ましくは6~7が挙げられる。ここで、pHとは、25℃の温度条件下で測定される値である。
【0063】
製剤形態
【0064】
本発明の口腔用組成物の剤型については、口腔内への適用が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
【0065】
本発明の口腔用組成物の製剤形態については、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、更に好ましくは液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液が挙げられる。
【0066】
2.シリカの分散性向上剤、及びシリカの分散性向上方法
前述するように、ホスホコリン基含有重合体は、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物において、シリカの分散性を向上させることができる。従って、本発明は、更に、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物におけるシリカの分散性を向上させるために使用される分散性向上剤であって、少なくともホスホコリン基含有重合体を有効成分とする分散性向上剤を提供する。有効成分には、シリカの分散性向上効果をより一層向上させるために、ホスホコリン基含有重合体に加えてモノテルペンがさらに含まれてもよい。また、本発明は、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物において、シリカの分散性を向上させる分散性向上方法であって、口腔用組成物に、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水と共に、ホスホコリン基含有重合体を配合する、分散性向上方法を提供する。シリカの分散性向上効果をより一層向上させるために、ホスホコリン基含有重合体に加えてモノテルペンがさらに配合されてもよい。
【0067】
前記分散性向上剤はホスホコリン基含有重合体、又はホスホコリン基含有重合体及びモノテルペンの添加剤としての用途であり、また、前記分散性向上方法は、ホスホコリン基含有重合体、またはホスホコリン基含有重合体及びモノテルペンを利用して、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物におけるシリカの分散性を向上させる方法である。
【0068】
前記分散性向上剤及び分散性向上方法において、使用する成分の種類や使用量、口腔用組成物の形態等については、前記「1.口腔用組成物」の欄に示す通りである。
【実施例
【0069】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
試験例1
表1~表3に示す組成の液剤を調製し、得られた液剤5mLをガラス製スクリュー管瓶(容量6mL)に充填し、遮光条件下で室温(25℃)で1日間静置した。1日間静置後の各液剤の外観を観察し、以下に示す判定基準に従ってシリカ分散の程度を評価した。
【0071】
<シリカの分散の程度の判定基準>
(1)ケーキング
○:1日静置後に、上下に激しく20回振って撹拌させた際、全てのシリカが溶液中に分散される。
×:1日静置後に、上下に激しく20回振って撹拌させた際、容器底部に一部のシリカが分散せずに凝集した状態で付着している。
(2)分散度
1日静置後の、液剤全体が占める高さに対するシリカ分散領域(白濁部位)が占める高さの比率を「分散度」とした。さらに、シリカのみを同じ含有濃度で精製水に分散させた液剤を「参照用液剤」(例えば、実施例1における参照用液剤はシリカ4%分散液であり、実施例2における参照用液剤はシリカ5%分散液というように、評価対象となる液剤と同じシリカを同じ総吸水値で含むシリカ単独分散液をいう)とし、参照用液剤を一日放置後の、参照用液剤全体が占める高さに対するシリカ分散領域(白濁部位)が占める高さの比率を「参照用分散度」とした。参照用分散度を100とした場合の各溶剤の分散度の値を「相対分散度」として導出し、分散性の指標の1つとした。(したがって、比較例における相対分散度は全て100である。)これによって、シリカの絶対含有量による分散性評価への影響を排除した。
分散度の計算式:(液剤中のシリカ分散領域の高さ)/(液剤全体の高さ)
相対分散度の計算式:(評価対象となる各液剤の分散度)/(シリカのみを精製水に分散させた参照用液剤の分散度)×100
なお、シリカの含有量が比較的多く分散度が100となる場合については相対分散度が計算できないため「○」評価とし、ケーキングの有無で分散性を評価した。
【0072】
<シリカの吸水量>
シリカの総吸水値を求めるための吸水量(mL/g)は、JIS K5101-13-1(吸油量の測定法)を参考にして以下のように定義した。即ち、測定試料(シリカ)1gをガラス版の上に置き、精製水を4,5滴ずつ徐々に加え、その都度パレットナイフで精製水を試料に練り込み;これを繰り返し、試料が塊になるまで精製水の滴下を続け;さらに、精製水を1滴ずつ塊に滴下して、均一になるまで練りこむ作業を、試料が滑らかなペースト状になるまで繰り返し(この場合においてペースト状とは、水分過不足のない状態をいい、具体的には、パレットナイフでガラス板に塗り広げたときに塗り広げられた試料に割れ目が生じず、さらにパレットナイフで1つの塊としてまとめ直すこともできる性状をいう);当該ペースト状になるまでに要した水量(ml)を吸水量とした。
【0073】
得られた結果を表1~表3に示す。表に示されるように、シリカの総吸水値が7.4未満である液剤(参考例1及び参考例2)の場合にはケーキングが起らないが、総吸水値が7.4~48の範囲内である液剤(比較例1及び比較例2)の場合にはケーキングが起こる。これに対して、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含む液剤(実施例1~22)では、ケーキングが抑制できており、相対分散度が計算可能な場合にあっては全て相対分散度が向上していた。つまり、シリカの良好な分散状態を維持できていた。また、l-メントールをさらに含む液剤(実施例6,7及び実施例19~22)では、同じ総吸水値のシリカを含みl-メントールを含まない液剤(実施例2及び実施例13)に比べ、シリカの相対分散度がさらに向上しており、シリカのより一層良好な分散状態を維持できていた。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
試験例2
本試験例では、増粘性シリカまたは研磨性シリカを変更し表4~表6に示す組成の液剤を調製したことを除き、試験例1と同様にシリカ分散の程度を評価した。
【0078】
得られた結果を表4~表6に示す。表に示されるように、シリカの総吸水値が7.4未満の範囲である液剤(参考例3~6)の場合にはケーキングが起らないが、総吸水値が7.4~48の範囲である液剤(比較例3~14)の場合にはケーキングが起こる。これに対して、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含む液剤(実施例23~34)では、ケーキングが抑制できており、相対分散度も向上していた。つまり、シリカの良好な分散状態を維持できていた。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
製剤例1
表7に示す組成の練歯磨剤を製造した。得られた練歯磨剤をチューブ容器に入れて保存した。以下に示す判定基準に従って、シリカ分散の程度を評価した。なお、表7において、各成分の含有量の単位は、重量%である。
【0083】
<シリカの分散の程度の判定基準>
チューブ容器に入れた練歯磨剤を、遮光条件下、50℃で1か月静置した後、容器を切り開き、製剤表面の離水を目視にて確認した。
◎:離水が認められない、または、やや表面が濡れている程度である。
×:離水が認められた。
【0084】
表7に示す通り、得られた口腔用組成物については、保存後に離水が抑制されていたためシリカが良好に分散していた。
【0085】
【表7】
【0086】
製剤例2
表8に示す組成の練歯磨剤を製造した。なお、表中の各成分の含有量の単位は、重量%である。得られた口腔用組成物については、いずれも保存後に離水は抑制されていたためシリカが良好に分散していた。
【0087】
【表8】