(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220329BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20220329BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20220329BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220329BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/04 A
C23C14/50 F
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2020172698
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0147138
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】関谷 任史
(72)【発明者】
【氏名】木村 竜司
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊介
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-033468(JP,A)
【文献】特開2005-308145(JP,A)
【文献】特表2020-518121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
C23C 14/04
C23C 14/50
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器の外部に設置され、前記容器の少なくとも一部を支持する容器支持体と、
前記容器内に設置され、基板を保持する基板ホルダと、
前記容器内に設置され、マスクを支持するマスクホルダと、
前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動機構と、
前記マスクホルダを駆動するマスクホルダ駆動機構と、
前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構との間、及び、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構との間のうち少なくとも一方に設置された振動伝達抑制部材とを、含み、
前記基板ホルダ駆動機構は、前記容器内に設置され、
前記マスクホルダ駆動機構は、前記容器の外部に設置され、
前記振動伝達抑制部材は、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構の間に設置されることを特徴とす
る成膜装置。
【請求項2】
容器と、
前記容器の外部に設置され、前記容器の少なくとも一部を支持する容器支持体と、
前記容器内に設置され、基板を保持する基板ホルダと、
前記容器内に設置され、マスクを支持するマスクホルダと、
前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動機構と、
前記マスクホルダを駆動するマスクホルダ駆動機構と、
前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構との間、及び、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構との間のうち少なくとも一方に設置された振動伝達抑制部材とを、
前記マスクホルダに設置され、前記基板ホルダに保持された基板の位置を検知するための位置検知機構
とを、
含むことを特徴とす
る成膜装置。
【請求項3】
容器と、
前記容器の外部に設置され、前記容器の少なくとも一部を支持する容器支持体と、
前記容器内に設置され、基板を保持する基板ホルダと、
前記容器内に設置され、マスクを支持するマスクホルダと、
前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動機構と、
前記マスクホルダを駆動するマスクホルダ駆動機構と、
前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構との間、及び、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構との間のうち少なくとも一方に設置された振動伝達抑制部材とを、
前記容器支持体から延びて、前記基板ホルダ駆動機構を支持するように構成された基板ホルダ駆動機構支持体と、
前記基板ホルダ駆動機構支持体に設置され、前記基板ホルダに保持された基板と前記マスクホルダに保持されたマスクとの間の相対的位置ずれ量を測定するためのアライメント用カメラユニット
とを、
含むことを特徴とす
る成膜装置。
【請求項4】
容器と、
前記容器の外部に設置され、前記容器の少なくとも一部を支持する容器支持体と、
前記容器内に設置され、基板を保持する基板ホルダと、
前記容器内に設置され、マスクを支持するマスクホルダと、
前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動機構と、
前記マスクホルダを駆動するマスクホルダ駆動機構と、
前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構との間、及び、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構との間のうち少なくとも一方に設置された振動伝達抑制部材とを、含み、
前記基板ホルダ駆動機構は、磁気浮上式の駆動機構であり、
前記マスクホルダ駆動機構は、機械式の駆動機構であることを特徴とす
る成膜装置。
【請求項5】
容器と、
前記容器の外部に設置され、前記容器の少なくとも一部を支持する容器支持体と、
前記容器内に設置され、基板を保持する基板ホルダと、
前記容器内に設置され、マスクを支持するマスクホルダと、
前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動機構と、
前記マスクホルダを駆動するマスクホルダ駆動機構と、
前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構との間、及び、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構との間のうち少なくとも一方に設置された振動伝達抑制部材とを、含み、
前記基板ホルダ駆動機構は、前記容器の外部に設置され、
前記マスクホルダ駆動機構は、前記容器の内部に設置され、
前記振動伝達抑制部材は、前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構の間に設置されることを特徴とす
る成膜装置。
【請求項6】
前記基板ホルダに設置され、前記マスクホルダに保持されたマスクの位置を検知するための位置検知機構をさらに含むことを特徴とする請求項
5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記容器支持体から延びて、前記基板ホルダ駆動機構を支持するように構成された基板ホルダ駆動機構支持体と、
前記容器支持体から延びて、前記マスクホルダ駆動機構を支持するように構成されたマスクホルダ駆動機構支持体と、
をさらに含むことを特徴とする請求項
5に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記基板ホルダ駆動機構支持体は、前記基板ホルダ駆動機構が設置される第1支持部材と、前記容器支持体から延びて、前記第1支持部材を支持するように構成された第2支持部材とを含み、
前記振動伝達抑制部材は、前記第1支持部材と前記第2支持部材の間に設けられることを特徴とする請求項
7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記マスクホルダ駆動機構支持体に設置され、前記基板ホルダに保持された基板と前記マスクホルダに保持されたマスクとの間の相対的位置ずれ量を測定するためのアライメント用カメラユニットをさらに含むことを特徴とする請求項
7に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記振動伝達抑制部材は、アクティブ除振装置であることを特徴とする請求項1ないし
9のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の成膜材料をマスクを介して基板に蒸着するための成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)は、スマートフォン、テレビ、自動車用ディスプレイだけでなく、VR HMD(Virtual Reality Head Mount Display)などにその応用分野が広がっており、特に、VR HMDに用いられるディスプレイは、ユーザーのめまいを低減するなどのために画素パターンを高精度で形成することが求められる。すなわち、さらなる高解像度化が求められている。
【0003】
こういった有機EL表示装置の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子;OLED)を形成する際に、成膜装置の成膜源から放出された成膜材料を、画素パターンが形成されたマスクを介し、基板に成膜することで、有機物層や金属層を形成する。
【0004】
このような成膜装置においては、成膜精度を高めるために、成膜工程の前に、基板とマスクの相対位置を検知し、相対位置がずれている場合には、基板および/またはマスクを相対的に移動させて位置を調整(アライメント)する工程が行われる。
【0005】
このため、従来の成膜装置は、基板支持ユニットおよび/またはマスク台に連結され、基板支持ユニットおよび/またはマスク台を駆動するアライメントステージ機構を含む。
【0006】
従来、アライメントステージ機構を含む成膜装置として、特許文献1に挙げられているようなものが知られている。特許文献1では、アライメントステージ機構を載置する支持板と成膜室の天板を分離する構造をとっている。このことにより、成膜室の変形や、成膜室に伝わる振動を低減し、基板とマスクの位置ずれを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている成膜装置では、基板もしくはマスクのアライメントステージ機構を駆動した際に、その駆動時の振動がどちらか一方の支持体に伝わり、アライメント精度が悪化する。また、高精度なアライメントを行う際にアライメントステージ機構の制御可能な周波数帯域を上げる必要があるが、駆動時の振動が外乱となり、制御性能が低下して、結果としてアライメント精度低下する。
【0009】
本発明は、上記従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであって、アライメント精度が低下することを抑制できる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による成膜装置は、容器と、前記容器の外部に設置され、前記容器の少なくとも一部を支持する容器支持体と、前記容器内に設置され、基板を保持する基板ホルダと、前記容器内に設置され、マスクを支持するマスクホルダと、前記基板ホルダを駆動する基板ホルダ駆動機構と、前記マスクホルダを駆動するマスクホルダ駆動機構と、前記容器支持体と前記基板ホルダ駆動機構との間、及び、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構との間のうち少なくとも一方に設置された振動伝達抑制部材とを、含み、前記基板ホルダ駆動機構は、前記容器内に設置され、前記マスクホルダ駆動機構は、前記容器の外部に設置され、前記振動伝達抑制部材は、前記容器支持体と前記マスクホルダ駆動機構の間に設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アライメント精度が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の成膜装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態による振動伝達抑制の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態による振動伝達抑制の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を図面に基づいて、以下に説明する。以下の実施形態及び実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、限定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好適に適用できる。
【0015】
基板の材料としては、半導体(例えば、シリコン)、ガラス、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選ぶことができる。基板は、例えば、シリコンウエハ、又はガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板であってもよい。また、成膜材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選ぶことができる。
【0016】
なお、本発明は、加熱蒸発による真空蒸着装置の以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、適用できる。本発明の技術は、具体的には、半導体デバイス、磁気デバイス、電子部品などの各種電子デバイスや、光学部品などの製造装置に適用可能である。電子デバイスの具体例としては、発光素子や光電変換素子、タッチパネルなどが挙げられる。
【0017】
本発明は、中でも、OLEDなどの有機発光素子や、有機薄膜太陽電池などの有機光電変換素子の製造装置に好ましく適用可能である。なお、本発明における電子デバイスは、発光素子を備えた表示装置(例えば有機EL表示装置)や照明装置(例えば有機EL照明装置)、光電変換素子を備えたセンサ(例えば有機CMOSイメージセンサ)も含むものである。
【0018】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0019】
図1の製造装置は、例えば、VR HMD用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。VR HMD用の表示パネルの場合、例えば、所定のサイズ(例えば300mm)のシリコンウエハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って該シリコンウエハを切り出して、複数の小さなサイズのパネルに製作する。
【0020】
本実施形態に係る電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間を繋ぐ中継装置とを含む。
【0021】
クラスタ装置1は、基板Wに対する処理(例えば、成膜)を行う成膜装置11と、使用前後のマスクを収納するマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を具備する。搬送室13は、
図1に示したように、成膜装置11およびマスクストック装置12のそれぞれと接続される。
【0022】
搬送室13内には、基板Wまたはマスクを搬送する搬送ロボット14が配置される。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板W又はマスクを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0023】
成膜装置11では、成膜源から放出された成膜材料がマスクを介して基板W上に成膜される。搬送ロボット14との基板W/マスクの受け渡し、基板Wとマスクの相対的位置の調整(アライメント)、マスク上への基板Wの固定、成膜などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0024】
有機EL表示装置を製造するための製造装置において、成膜装置11は、成膜される材料の種類によって、有機膜の成膜装置と金属性膜の成膜装置に分けることができ、有機膜の成膜装置は、有機物の成膜材料を蒸着又はスパッタリングによって基板Wに成膜する。金属性膜の成膜装置は、金属性の成膜材料を蒸着またはスパッタリングにより基板Wに成膜する。
【0025】
有機EL表示装置を製造するための製造装置において、どの成膜装置をどの位置に配置するかは、製造される有機EL素子の積層構造によって異なり、有機EL素子の積層構造に応じてこれを成膜するための複数の成膜装置が配置される。
【0026】
有機EL素子の場合、通常、アノードが形成されている基板W上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、カソードがこの順に積層される構造を有し、これらの層を順次成膜できるように基板の流れ方向に沿って適切な成膜装置が配置される。
【0027】
例えば、
図1において、成膜装置11aは、正孔注入層HILおよび/または正孔輸送層HTLを成膜する。成膜装置11b、11fは、青色の発光層を、成膜装置11cは、赤色の発光層を、成膜装置11d、11eは、緑色の発光層を成膜する。成膜装置11gは、電子輸送層ETLおよび/または電子注入層EILを成膜する。成膜装置11hは、カソード金属膜を成膜するように配置される。
図1に示した実施例では、素材の特性上、青色の発光層と緑色の発光層の成膜速度が赤色の発光層の成膜速度より遅いので、処理速度のバランスを取るために青色の発光層と緑色の発光層とをそれぞれ2つの成膜装置で成膜するようにしているが、本発明はこれに限定されず、他の配置構造を有しても良い。
【0028】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、複数のカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納されている新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0029】
複数のクラスタ装置1の間を連結する中継装置は、クラスタ装置1の間で基板Wを搬送するパス室15を含む。
【0030】
搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Wを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Wを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11e)から受け取って、下流側に連結されたパス室15に搬送する。
【0031】
中継装置は、パス室15の他に、上流側のクラスタ装置1及び下流側のクラスタ装置1での基板Wの処理速度の差を吸収するためのバッファ室(不図示)、及び基板Wの方向を変えるための旋回室(不図示)をさらに含むことができる。例えば、バッファ室は、複数の基板Wを一時的に収納する基板積載部を含む。旋回室は、基板Wを180度回転させるための基板回転機構(例えば、回転ステージまたは搬送ロボット)を含む。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Wの向きが同じくなり、基板処理が容易になる。
【0032】
パス室15は、複数の基板Wを一時的に収納するための基板積載部(不図示)や基板回転機構を含んでもよい。つまり、パス室15が、バッファ室や旋回室の機能を兼ねても良い。
【0033】
クラスタ装置1を構成する成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13などは、有機発光素子の製造過程で、高真空状態に維持される。中継装置のパス室15は、通常、低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもいい。
【0034】
有機EL素子を構成する複数の層の成膜が完了した基板Wは、有機EL素子を封止するための封止装置(不図示)や基板を所定のパネルサイズに切断するための切断装置(不図示)などに搬送される。
【0035】
本実施形態では、
図1を参照し電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバを有してもよく、これらの装置やチャンバ間の配置が変わってもいい。
【0036】
例えば、本発明の電子デバイス製造装置は、
図1に示したクラスタタイプではなく、インラインタイプであってもいい。つまり、基板Wとマスクをキャリアに搭載して、一列に並んだ複数の成膜装置内を搬送させながら成膜を行う構成としてもよい。また、クラスタタイプとインラインタイプを組み合わせたタイプの構造を有しても良い。例えば、有機層の成膜まではクラスタタイプの製造装置で行い、電極層(カソード層)の成膜工程から封止工程及び切断工程などは、インラインタイプの製造装置で行ってよい。
【0037】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
【0038】
<成膜装置>
図2は、成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とし、水平面をXY平面とするXYZ直交座標系を用いる。また、X軸まわりの回転角をθ
X、Y軸まわりの回転角をθ
Y、Z軸まわりの回転角をθ
Zで表す。
【0039】
図2は、成膜材料を加熱することによって蒸発または昇華させ、マスクMを介して基板Wに成膜する成膜装置11の一例を示す断面図である。
【0040】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21内に設けられ、基板Wを保持する基板ホルダ24と、真空容器21内に設けられ、基板ホルダ24を少なくともX方向、Y方向、及びθZ方向に駆動するための基板ホルダ駆動機構22と、真空容器21内に設けられ、マスクMを支持するマスクホルダ23と、マスクホルダ23を少なくともX方向、Y方向、θZ方向に駆動するためのマスクホルダ駆動機構28と、真空容器21内に設けられ、成膜材料を収納し、成膜時に成膜材料を粒子化して放出する成膜源25とを含む。
【0041】
成膜装置11は、磁気力によってマスクMを基板W側に引き寄せるための磁力印加手段26をさらに含むことができる。磁力印加手段26は、基板Wの温度上昇を抑制するための冷却手段(例えば、冷却板)を兼ねてもいい。
【0042】
成膜装置11の真空容器21は、基板ホルダ駆動機構22が配置される第1真空容器部211と、成膜源25が配置される第2真空容器部212とを含み、例えば、第2真空容器部212に接続された真空ポンプPによって真空容器21全体の内部空間が高真空状態に維持される。
【0043】
また、少なくとも第1真空容器部211と第2真空容器部212との間には、伸縮可能部材213が設置される。伸縮可能部材213は、第2真空容器部212に連結される真空ポンプからの振動や、成膜装置11が設けられた床又はフロアからの振動(床振動)が、第2真空容器部212を通して第1真空容器部211に伝わることを低減する。伸縮可能部材213は、例えば、ベローズであるが、第1真空容器部211と第2真空容器部212との間で振動の伝達を低減できる限り、他の部材を使用してもよい。
【0044】
成膜装置11は、真空容器21の少なくとも一部(例えば、
図2に示した第1真空容器部211)を支持する真空容器支持体217をさらに含む。
【0045】
基板ホルダ24は、搬送室13の搬送ロボット14が搬送してきた、被成膜体としての基板Wを保持する手段であり、後述する基板ホルダ駆動機構22の可動台の微動ステージプレート部222に設置される。
【0046】
基板ホルダ24は、基板クランピング手段または基板吸着手段である。基板ホルダ24としての基板吸着手段は、例えば、誘電体/絶縁体(例えば、セラミック材質)マトリックス内に金属電極などの電気回路が埋設された構造を有する静電チャックまたは粘着式吸着手段である。
【0047】
基板ホルダ24としての静電チャックは、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が高い誘電体が介在して、電極と被吸着体との間のクーロン力によって吸着が行われるクーロン力タイプの静電チャックであってもよいし、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が低い誘電体が介在して、誘電体の吸着面と被吸着体との間に発生するジョンソン・ラーベック力によって吸着が行われるジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックであってもよいし、不均一電界によって被吸着体を吸着するグラジエント力タイプの静電チャックであってもよい。
【0048】
被吸着体が導体または半導体(シリコンウエハ)である場合には、クーロン力タイプの静電チャックまたはジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックを用いることが好ましく、被吸着体がガラスのような絶縁体である場合には、グラジエント力タイプの静電チャックを用いることが好ましい。
【0049】
静電チャックは、一つのプレートで形成されてもよく、複数のサブプレートを有するように形成されてもいい。また、一つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電気回路を有し、一つのプレート内で位置によって静電引力が異なるように制御してもいい。
【0050】
基板ホルダ駆動機構22は、磁気浮上リニアモータにより基板ホルダ24を駆動して、基板Wの位置を調整するためのアライメントステージ機構であって、少なくともX方向、Y方向、及びθZ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向の6つの方向における基板ホルダ24の位置を調整する。
【0051】
基板ホルダ駆動機構22は、固定台として機能するステージ基準プレート部221と、可動台として機能する微動ステージプレート部222と、微動ステージプレート部222をステージ基準プレート部221に対し磁気浮上及び移動させるための磁気浮上ユニット223とを含む。
【0052】
基板ホルダ駆動機構22は、
図2に示したように、真空容器支持体217から延びる基板ホルダ駆動機構支持体215に設けられる。基板ホルダ駆動機構支持体215と第1真空容器部211との間に伸縮可能部材213を設置してもよい。これにより、基板ホルダ駆動機構支持体215を介して基板ホルダ駆動機構22に外部振動が伝わることをさらに低減できる。
【0053】
このように、基板ホルダ駆動機構22として、基板Wと物理的に接触しない磁気浮上式の駆動機構を使用することにより、床振動や真空ポンプ(P)からの振動、ドアバルブの振動、搬送ロボット14からの振動が、基板Wに伝わることを抑制できる。
【0054】
マスクホルダ23は、搬送ロポット14によって真空容器内に搬入されたマスクMを支持する手段である。真空容器内に搬入されたマスクMは、少なくともアライメント時及び成膜時にマスクホルダ23に載置される。マスクホルダ23は、後述するマスクホルダ駆動機構28に連結される。
【0055】
マスクホルダ23には、基板ホルダ24に支持された基板Wの位置を検知するための位置検知機構231が設置されることができる。位置検知機構231は、基板W、基板ホルダ24、または微動ステージプレート部222の位置を検知できる限り、その種類は特に制限されない。
【0056】
例えば、位置検知機構231は、レーザ干渉計と反射鏡を含むレーザ干渉測長機であってもよく、静電容量センサ、非接触の変位計や、光学式のスケールであってもいい。
【0057】
マスクMは、基板W上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有する。マスクMの開口パターンは、成膜材料の粒子を通過させない遮断パターンによって定義される。マスクの材料としては、インバー材やシリコン、銅、ニッケル、ステンレス等の金属材料を用いられる。
【0058】
例えば、VR-HMD用の有機EL表示パネルを製造するのに使われるマスクMは、有機EL素子の発光層のRGB画素パターンに対応する微細な開口パターンが形成された金属製マスクであるファインメタルマスク(Fine Metal Mask)と、有機EL素子の共通層(正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層など)を形成するのに使われるオープンマスク(Open Mask)とを含む。
【0059】
マスクホルダ駆動機構28は、マスクホルダ23の位置を調整するための駆動機構であり、マスクホルダ23を水平方向(XYθZ方向)に移動可能な粗動ステージ機構28aと、粗動ステージ機構28aを鉛直方向、即ち、Z方向に昇降できる粗動Z昇降機構28bを含む。粗動ステージ機構28aは、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを後述するアライメントカメラの視野内に入るよう移動することができ、粗動Z昇降機構28bは、基板WとマスクMの間の鉛直方向における間隔を容易に調整できる。
【0060】
粗動ステージ機構28aと粗動Z昇降機構28bは、サーボモータ及びボールねじ(不図示)などによって機械的に駆動される。
【0061】
マスクホルダ駆動機構28は、振動伝達抑制部材29を介して、真空容器支持体217の上に設けられる。
【0062】
振動伝達抑制部材29は、マスクホルダ駆動機構28と真空容器支持体217との間の振動の伝達を抑制する。より具体的に、振動伝達抑制部材29は、床振動や真空容器21から伝わる真空ポンプ(P)の振動、真空容器21のドアバルブの振動、基板やマスクを搬送する搬送ロボット14から伝わる振動が、マスクホルダ駆動機構28を介して、マスクホルダ23に伝わることを抑制できる。
【0063】
また、基板ホルダ駆動機構22が駆動した際の反力が基板ホルダ駆動機構支持体215、真空容器支持体217を介して、マスクホルダ23やマスクホルダ23上に設けられた位置検知機構231に伝達することを抑制できる。これにより、基板ホルダ駆動機構22の制御における周波数特性上に制御の外乱と成り得る基板ホルダ駆動機構支持体215などの共振振動の励起を抑制できるため、より高周波まで安定して制御することが可能となり、結果としてアライメント精度を向上させることができる。
【0064】
振動伝達抑制部材29は、アクティブ除振装置や除振ゴムのようなパッシブ除振装置であってもいい。振動伝達抑制部材29をアクティブ除振装置にする場合、振動の類型や大きさ、方向などに関係せずに、効果的に振動の伝達を抑制できる。
【0065】
成膜源25は、基板Wに成膜される成膜材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、成膜源25からの蒸発レートが一定になるまで成膜材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。成膜源25には粒子化した成膜材料が放出される一つ以上の放出孔が設けられ、その放出孔の指向する先にマスクM及び基板Wが成膜面を放出孔に向けて配置されている。
【0066】
成膜源25は、点(point)成膜源や線状(linear)成膜源など、用途に従って多様な構成を有する。
【0067】
成膜源25は、互いに異なる成膜材料を収納する複数のるつぼを含んでもよい。このような構成においては、真空容器21を大気開放せずに成膜材料を変更できるように、異なる成膜材料を収納する複数のるつぼを成膜位置に移動可能に設置してもよい。
【0068】
磁力印加手段26は、成膜工程時に磁気力によってマスクMを基板W側に引き寄せて密着させるための手段であって、鉛直方向に昇降可能に設置される。例えば、磁力印加手段26は、電磁石および/または永久磁石で構成される。
【0069】
図2に図示しなかったが、成膜装置11は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含んでもいい。
【0070】
真空容器21の上部外側(大気側)には磁力印加手段26を昇降させるための磁力印加手段昇降機構261が設置される。
【0071】
成膜装置11は、真空容器21の上部外側(大気側)に設置され、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラユニット27をさらに含む。
【0072】
本実施形態において、アライメント用カメラユニット27は、基板WとマスクMの相対的位置を大まかに調整するのに用いられるラフアライメント用カメラと、基板WとマスクMの相対的位置を高精度に調整するのに用いられるファインアライメント用カメラとを含むことができる。ラフアライメント用カメラは、相対的に視野角が広く、低解像度であり、ファインアライメント用カメラは、相対的に視野角は狭いが、高解像度を有するカメラである。
【0073】
ラフアライメント用カメラとファインアライメント用カメラは、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークに対応する位置に設置される。例えば、ファインアライメント用カメラは、4つのカメラが矩形の4つのコーナー部をなすように設置され、ラフアライメント用カメラは、該矩形の対向する二つの辺の中央に設置される。ただし、本発明はこれに限定されず、基板W及びマスクMのアライメントマークの位置に応じて他の配置を有しても良い。
【0074】
図2に示したように、成膜装置11のアライメント用カメラユニット27は、真空容器21の上部大気側から真空容器21に設けられた真空対応筒214を通してアライメントマークを撮影する。このようにアライメント用カメラは真空対応筒を介して真空容器21の内側に入り込むように設置することによって、基板ホルダ駆動機構22の介在により、基板WとマスクMが基板ホルダ駆動機構支持体215から相対的に遠く離れて支持されても、基板WとマスクMに形成されたアライメントマークに焦点を合わせることができる。真空対応筒の下端の位置は、アライメント用カメラの焦点深度と、基板W/マスクMが基板ホルダ駆動機構支持体215から離れた距離に応じて、適切に決めることができる。
【0075】
図2には図示しなかったが、成膜工程中に密閉される真空容器21の内部は暗いので、真空容器21の内側に入り込んでいるアライメント用カメラによりアライメントマークを撮影するために、下方からアライメントマークを照らす照明光源を設置してもよい。
【0076】
成膜装置11は、制御部(不図示)を具備する。制御部は、基板W/マスクMの搬送及びアライメントの制御、成膜の制御などの機能を有する。また、制御部は、静電チャックへの電圧印加を制御する機能を有してもいい。制御部は、アライメントの制御時に、特に、位置検知機構231で検知した位置に基づいてフィードバック制御を行う。
【0077】
制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成することができる。この場合、制御部の機能は、メモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(Programmable Logic Controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0078】
<振動伝達抑制機構>
以下、
図3および
図4を参照して、本発明の実施形態による成膜装置11における振動伝達抑制機構について詳細に説明する。
【0079】
<第1実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係る成膜装置311の振動伝達抑制機構を示す模式図である。
【0080】
図3を参照すると、成膜装置311は、内部が、例えば、真空雰囲気に維持される真空容器321を含む。真空容器321の少なくとも一部は、その外部に設けられた真空容器支持体317によって支持される。
【0081】
真空容器321内には、基板Wを保持する基板ホルダ(不図示)と、マスクMを支持するマスクホルダ323が設置される。基板ホルダは、基板Wを吸着して保持する静電チャックであるが、これに限定されない。マスクホルダ323は、マスクホルダ駆動機構328から延びるマスクホルダ支持体316によって、真空容器321内に支持される。
【0082】
基板ホルダ駆動機構322は、基板ホルダを駆動するための機構であって、真空容器支持体317から延びる基板ホルダ駆動機構支持体315によって真空容器321内に支持される。本実施形態によると、基板ホルダ駆動機構322は、磁気浮上リニアモータによって基板ホルダを非接触に移動させ、基板Wの位置を調整するための磁気浮上式の駆動機構であって、少なくともX方向、Y方向、及びθZ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向の6つの方向における基板Wの位置を調整できる。
【0083】
マスクホルダ移動機構328は、マスクホルダ323を移動させ、マスクMの位置を調整するための機械式の駆動機構である。マスクホルダ移動機構328は、少なくともX方向、Y方向、Z方向、及びθZ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向の6つの方向におけるマスクMの位置を調整できる。マスクホルダ駆動機構328は、真空容器321の外部に設けられ、サーボモータ、転がりのリニアガイド及びボールネジなどで構成される。
【0084】
このようなマスクホルダ駆動機構328は、振動伝達抑制部材329を介して、真空容器支持体317上に設置される。つまり、振動伝達抑制部材329が、マスクホルダ駆動機構328と真空容器支持体317の間に設置される。基板ホルダ駆動機構支持体315と真空容器支持体317の間にも振動伝達抑制部材が設置されても良い。
【0085】
本実施形態に係る成膜装置311は、マスクホルダ323に設けられ、基板ホルダによって保持されている基板Wの位置を検知するための位置検知機構331をさらに含むことができる。例えば、位置検知機構331は、レーザ干渉測長機、静電容量センサ、非接触の変位計、又は光学式のスケールを選択できる。
【0086】
本実施形態による成膜装置311は、基板ホルダ駆動機構支持体315を介して真空容器2の上部外側に設置され、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮像するためのアライメント用カメラユニット327をさらに含むことができる。
【0087】
本実施形態によると、基板ホルダ駆動機構322は、基板W又は基板ホルダと接触せずに基板Wの位置を調整する磁気浮上式の駆動機構で構成される。また、マスクMの位置を調整する機械式の駆動機構であるマスクホルダ駆動機構328は、振動伝達抑制部材329を介して、真空容器支持体317上に設置される。
【0088】
この様な構成によると、床振動や真空容器321から伝わる真空ポンプPの振動、ドアバルブの振動、基板WやマスクMを搬送する搬送ロボット14から伝わる振動が、マスクホルダ駆動機構328に伝わることを抑制できる。
【0089】
また、磁気浮上式の駆動機構である基板ホルダ駆動機構322が駆動した際の反力が、基板ホルダ駆動機構支持体315を介して、真空容器支持体317に伝わっても、振動伝達抑制部材329により、マスクホルダ323やマスクホルダ323上に設けられた位置検知機構331に伝達することを抑制できる。これにより、基板ホルダ駆動機構322の制御における周波数特性上、制御の外乱と成り得る基板ホルダ駆動機構支持体315やマスクホルダ支持体316などの共振振動の励起を抑制できるため、より高周波まで安定して制御することが可能となり、結果としてアライメント精度を向上させることができる。
【0090】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態に係る成膜装置411においての振動伝達抑制機構を示す模式図である。
【0091】
図4に示した成膜装置411は、基板ホルダ駆動機構422が真空容器421の外部に設置される機械式の駆動機構であり、マスクホルダ駆動機構428が真空容器421内に設置される磁気浮上式の駆動機構である。また、振動伝達抑制部材429が真空容器支持体417と基板ホルダ駆動機構422の間に設置される。以下、
図3に示した成膜装置311の振動伝達抑制機構との違いを中心に、本実施形態による成膜装置の振動伝達抑制機構について説明する。
【0092】
図4を参照すると、成膜装置411は、内部が、例えば、真空雰囲気に維持される真空容器421を含む。真空容器421の少なくとも一部は、その外部に設けられた真空容器支持体417によって支持される。
【0093】
真空容器421内には、基板Wを保持する基板ホルダ424と、マスクMを保持するマスクホルダ(不図示)が設置される。基板ホルダ424は、基板Wを吸着して保持する静電チャックであるか、又はクランプ機構である。マスクホルダは、マスクMを吸着して保持する静電チャックである。
【0094】
マスクホルダ駆動機構428は、マスクホルダ(不図示)を移動させて、マスクMの位置を調整するための駆動機構であって、真空容器支持体417から延びるマスクホルダ駆動機構支持体423によって真空容器421内に支持される。本実施形態によると、マスクホルダ駆動機構428は、磁気浮上リニアモータによってマスクホルダを非接触に移動させ、マスクMの位置を調整するための磁気浮上式の駆動機構であって、少なくともX方向、Y方向、及びθZ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向の6つの方向におけるマスクMの位置を調整できる。
【0095】
基板ホルダ移動機構422は、基板ホルダ424を移動させ、基板Wの位置を調整するための機械式の駆動機構であって、少なくともX方向、Y方向、Z方向、及びθZ方向、好ましくは、X方向、Y方向、Z方向、θX方向、θY方向、θZ方向の6つの方向における基板Wの位置を調整できるように構成される。基板ホルダ駆動機構422は、真空容器421の外部に設けられ、サーボモータ、転がりのリニアガイド及びボールネジなどで構成される。
【0096】
基板ホルダ駆動機構422は、真空容器支持体417から延びて設置された基板ホルダ駆動機構支持体415によって支持される。本実施形態において、基板ホルダ駆動機構支持体415は、真空容器421の上部外側に配置されて基板ホルダ駆動機構422が設けられる第1支持部材415aと、真空容器支持体417から延びて、第1支持部材415aを支持する第2支持部材415bとを含む。振動伝達を抑制するため、真空容器421と第1支持部材415aとは、伸縮可能部材を介して連結してもよい。
【0097】
そして、本実施形態による成膜装置411において、真空容器支持体417と基板ホルダ駆動機構422との間に、特に、第1支持部材415aと第2支持部材415bとの間には、基板ホルダ駆動機構422側への振動伝達を抑制するための振動伝達抑制部材429が設置されている。振動伝達抑制部材429を、真空容器支持体417と基板ホルダ駆動機構422の間で基板ホルダ駆動機構422に近接して設置するほど、基板ホルダ駆動機構422に伝達する振動をより効果的に抑えることができる。ただし、本発明はこれに限定されず、他の位置に振動伝達抑制部材429を設置してもいい。例えば、第2支持部材415bと真空容器支持体417の間に振動伝達抑制部材を設置してもよく、第1支持部材415aと第2支持部材415bの間及び第2支持部材415bと真空容器支持体417の間の全てに振動伝達抑制部材を設けても良い。
【0098】
本実施形態に係る成膜装置411は、基板ホルダ424に設けられ、マスクホルダによって保持されているマスクMの位置を検知するための位置検知機構431をさらに含むことができる。例えば、位置検知機構431は、レーザ干渉測長機、静電容量センサ、非接触の変位計、又は光学式のスケールを選択できる。
【0099】
図4には示していないが、本実施形態による成膜装置411において、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮像するためのアライメント用カメラユニットをマスクホルダ駆動機構支持体423に設置できる。
【0100】
本実施形態によると、基板Wの位置を調整する機械式の駆動機構である基板ホルダ駆動機構422と真空容器支持体417との間には、振動伝達抑制部材429が設置される。また、マスクホルダ駆動機構428は、マスクMまたはマスクホルダと接触せずにマスクMの位置を調整する磁気浮上式の駆動機構で構成される。
【0101】
これによると、床振動や真空容器421から伝わる真空ポンプの振動、ドアバルブの振動、基板WやマスクMを搬送する搬送ロボット14から伝わる振動が、基板ホルダ駆動機構422に伝わることを抑制できる。
【0102】
また、磁気浮上式の駆動機構であるマスクホルダ駆動機構428が駆動した際の反力が、マスクホルダ駆動機構支持体423を介して、真空容器支持体417に伝わっても、振動伝達抑制部材429により、振動が基板ホルダ424や基板ホルダ424に設けられた位置検知機構431に伝達されることを抑制できる。これにより、マスクホルダ駆動機構428の制御における周波数特性上、制御の外乱と成り得る基板ホルダ駆動機構支持体415やマスクホルダ駆動機構支持体423などの共振振動の励起を抑制できるため、より高周波まで安定して制御することが可能となり、結果としてアライメント精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0103】
11、311、411:成膜装置、21、321、421:真空容器、22、322、422:基板ホルダ駆動機構、23、323:マスクホルダ、423:マスクホルダ駆動機構支持体、24、424:基板ホルダ、25,325,425:成膜源、26:磁力印加手段、27、327:アライメント用カメラユニット、28、328、428:マスクホルダ駆動機構、29、329、429:振動伝達抑制部材、215、315、415:基板ホルダ駆動機構支持体、217、317、417:真空容器支持体