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特許7048723感光性転写材料、電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法
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  • 特許-感光性転写材料、電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】感光性転写材料、電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220329BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20220329BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220329BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20220329BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220329BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/004 501
G03F7/031
G03F7/038 501
G03F7/032 502
G03F7/20 501
G06F3/041 495
G06F3/041 660
G06F3/041 400
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020510447
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2019006758
(87)【国際公開番号】W WO2019187851
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2018065445
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜山 達也
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181959(JP,A)
【文献】特開2014-002285(JP,A)
【文献】特開2012-208200(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体、及び、
感光性層を有し、
前記感光性層が、バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、チオール化合物とを含有し、
前記チオール化合物の含有量が、前記感光性層の全質量に対し、6.5質量%以上であり、
前記感光性層の全質量に対する前記ラジカル重合性化合物と前記チオール化合物の総含有量MRSと前記感光性層の全質量に対する前記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.1~2.0である
感光性転写材料。
ただし、前記感光性層が、
光重合性官能基及び炭素-窒素結合を有する重量平均分子量が2,000以上である化合物と、光重合性官能基を有する重量平均分子量が2,000未満である化合物と、光重合開始剤と、前記光重合性官能基に対して反応性を有する官能基を含有するシラン化合物と、を含有する場合と、
バインダーポリマー、エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、光重合開始剤、チオール化合物、及び、チオール基を有しないシランカップリング剤を含有する場合と、
を除く。
【請求項2】
前記感光性層が、ブロックイソシアネート化合物を更に含有する請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記チオール化合物が、2官能以上のチオール化合物である請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記チオール化合物が、下記式1で表される化合物を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【化1】


式1中、nは1~6の整数を表し、Aは炭素数1~15のn価の有機基、又は、下記式2で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表す。
【化2】


式2中、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表し、波線部分は、前記式1における酸素原子との結合位置を表す。
【請求項5】
前記感光性層の全質量に対する前記ラジカル重合性化合物と前記チオール化合物の総含有量MRSと前記感光性層の全質量に対する前記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.4~1.2である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記チオール化合物の含有量が、前記感光性層の全質量に対し、6.5質量%~40質量%である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
前記バインダーポリマーが、ラジカル重合性基を有する構成単位を有する樹脂を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項8】
前記ブロックイソシアネート化合物が、ラジカル重合性基を有する請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項9】
タッチパネルにおける保護膜形成用感光性転写材料である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の感光性転写材料から前記仮支持体が取り除かれた感光性層を硬化してなる電極保護膜。
【請求項11】
基板上に、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の感光性転写材料から前記仮支持体を除いた後の感光性層を有する
積層体。
【請求項12】
請求項10に記載の電極保護膜、又は、請求項11に記載の積層体を有する静電容量型入力装置。
【請求項13】
基板上にタッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備することと、
前記タッチパネル用基板の前記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された側の面の上に、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の感光性転写材料を用いて感光性層を形成することと、
前記タッチパネル用基板上に形成された前記感光性層をパターン露光することと、
パターン露光された前記感光性層を現像することにより、前記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の少なくとも一部を保護するタッチパネル用保護膜を得ることと、を含む
タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行の端末などの電子機器では、近年、液晶装置などの表面にタブレット型の入力装置が配置される。液晶装置の画像表示領域に表示された指示画像を参照しながら、指示画像が表示されている箇所に指又はタッチペンなどを触れることで、指示画像に対応する情報の入力が行える装置がある。
【0003】
既述の如き入力装置(以下、タッチパネルと称することがある。)には、抵抗膜型、静電容量型などがある。静電容量型入力装置は、単に一枚の基板に透光性導電膜を形成すればよいという利点がある。かかる静電容量型入力装置では、例えば、互いに交差する方向に電極パターンを延在させて、指などが接触した際、電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するタイプの装置がある。
静電容量型入力装置の電極パターンや枠部にまとめられた引き回し配線(例えば銅線などの金属配線)などを保護する等の目的で、指などで入力する表面とは反対側に透明樹脂層が設けられている。
【0004】
これらの静電容量型入力装置を使用するにあたり、例えば、光源からの入射光の正反射近傍から少し離れた位置においてタッチパネルの表面を目視すると、内部に存在する透明電極パターンが目視され、外観上支障を来すことがある。したがって、タッチパネル等の表面において透明電極パターンの隠蔽性を向上させることが求められている。
【0005】
感光性樹脂組成物を用いる樹脂硬化膜のパターン形成方法としては、特許文献1に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、基材上に、バインダーポリマーと、光重合性化合物と、光重合開始剤と、チオール化合物と、を含有する感光性樹脂組成物からなる感光層を設ける第1工程と、上記感光層の所定部分を活性光線の照射により硬化させる第2工程と、上記感光層の上記所定部分以外を除去し、上記感光層の上記所定部分の硬化膜パターンを形成する第3工程と、を備え、上記感光性樹脂組成物が上記光重合開始剤としてオキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含む、樹脂硬化膜パターンの形成方法が記載されている。
【0006】
また、感光性樹脂組成物としては、特許文献2又は3に記載のものが挙げられる。
特許文献2には、〔A〕エチレン性不飽和カルボン酸に由来する重合単位および/またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物に由来する重合単位を有する共重合体、〔B〕エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、〔C〕光重合開始剤並びに〔D〕下記式(1)または(2):
【0007】
【化1】
(式(1)において、Rは、メチレン基または炭素数2~20のアルキレン基であり、Rはメチレン基または炭素数2~6の直鎖もしくは分岐アルキレン基でありそしてmは1~20の整数を表わす)
【0008】
【化2】
(式(2)において、Rは、同一もしくは異なり、-H、-OHまたは下記式(2’)
【0009】
【化3】
【0010】
で表わされる基であり、Rはメチレン基または炭素数2~6の直鎖もしくは分岐アルキレン基である、但し4つのRの少なくとも1つは上記式(2’)で表わされる基であるものとする、)
で表わされるチオール化合物を含有することを特徴とする、液晶表示素子用スペーサーの形成に用いられる感光性樹脂組成物が記載されている。
【0011】
特許文献3には、成分Aとして、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、成分Bとして、重合開始剤、成分Sとして、チオール化合物、及び、成分Dとして、有機溶剤、を含有し、成分Aが、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含み、成分A中の上記6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの割合が、70~100質量%であり、成分Sの含有量が、硬化性組成物の全固形分に対し、1~20質量%であることを特徴とする硬化性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2013/084872号
【文献】特開2008-77067号公報
【文献】国際公開第2015/072533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、タック性が低く、及び、硬化後の曲げ耐性に優れる感光性転写材料を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記感光性転写材料を用いた電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体、及び、感光性層を有し、上記感光性層が、バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、チオール化合物とを含有し、上記チオール化合物の含有量が、上記感光性層の全質量に対し、5質量%以上であり、上記感光性層の全質量に対する上記ラジカル重合性化合物と上記チオール化合物の総含有量MRSと上記感光性層の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.1~2.0である感光性転写材料。
<2> 上記感光性層が、ブロックイソシアネート化合物を更に含有する<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記チオール化合物が、2官能以上のチオール化合物である<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記チオール化合物が、下記式1で表される化合物を含む<1>又は<2>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
【0015】
【化4】
【0016】
式1中、nは1~6の整数を表し、Aは炭素数1~15のn価の有機基、又は、下記式2で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表す。ただし、Aが下記式2で表される基を表す場合、nは3を表す。
【0017】
【化5】
【0018】
式2中、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表し、波線部分は、上記式1におけるAに隣接する酸素原子との結合位置を表す。
【0019】
<5> 上記感光性層の全質量に対する上記ラジカル重合性化合物と上記チオール化合物の総含有量MRSと上記感光性層の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.4~1.2である<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6> 上記チオール化合物の含有量が、上記感光性層の全質量に対し、5質量%~40質量%である<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<7> 上記バインダーポリマーが、ラジカル重合性基を有する構成単位を有する樹脂を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<8> 上記ブロックイソシアネート化合物が、ラジカル重合性基を有する<2>に記載の感光性転写材料。
<9> タッチパネルにおける保護膜形成用感光性転写材料である<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料から上記仮支持体が取り除かれた上記感光性層を硬化してなる電極保護膜。
<11> 基板上に、<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料から上記仮支持体を除いた後の上記感光性層を有する積層体。
<12> <10>に記載の電極保護膜、又は、<11>に記載の積層体を有する静電容量型入力装置。
<13> 基板上にタッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備することと、上記タッチパネル用基板の上記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方が配置された側の面の上に、<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料を用いて感光性層を形成することと、上記タッチパネル用基板上に形成された上記感光性層をパターン露光することと、パターン露光された上記感光性層を現像することにより、上記タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方の少なくとも一部を保護するタッチパネル用保護膜を得ることと、を含むタッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、タック性が低く、硬化後の曲げ耐性に優れる感光性転写材料を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いた電極保護膜、積層体、静電容量型入力装置、及び、タッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示に係る感光性転写材料の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示に係るタッチパネルの第1具体例を示す概略断面図である。
図3】本開示に係るタッチパネルの第2具体例を示す概略断面図である。
図4】曲げ耐性評価における、水平方向から見た場合の、高さdに曲げ耐性評価用試料102を曲げる前の模式図である。
図5】曲げ耐性評価における、重力方向上側から見た場合の、高さdに曲げ耐性評価用試料102を曲げる前の模式図である。
図6】曲げ耐性評価における、水平方向から見た場合の、高さdに曲げ耐性評価用試料102を曲げた後の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、樹脂中の構成単位の割合は、特に断りが無い限り、質量割合を表す。
本開示において、分子量分布がある場合の分子量は、特に断りが無い限り、重量平均分子量(Mw)を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0023】
(感光性転写材料)
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体、及び、感光性層を有し、上記感光性層が、バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、チオール化合物とを含有し、上記チオール化合物の含有量が、上記感光性層の全質量に対し、5質量%以上であり、上記感光性層の全質量に対する上記ラジカル重合性化合物と上記チオール化合物の総含有量MRSと上記感光性層の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.1~2.0である。
本開示に係る感光性転写材料は、タッチパネル用感光性転写材料として好適に用いることができ、タッチパネルにおける保護膜形成用感光性転写材料としてより好適に用いることができ、タッチパネルにおける電極保護膜形成用感光性転写材料として特に好適に用いることができる。
【0024】
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、タック性が低く、硬化後の曲げ耐性に優れる感光性転写材料を提供することができることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
感光性層がチオール化合物を5質量%以上含有することにより、チオール化合物がエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と反応し、チオエーテル結合が生じ、得られる硬化膜の柔軟性が向上し、硬化後の曲げ耐性に優れる。上記感光性層の全質量に対する上記ラジカル重合性化合物と上記チオール化合物の総含有量MRSと上記感光性層の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.1~2.0であることにより、感光性層の硬度及び表面の粘着性を適度な範囲とすることができ、タック性を低くすることができる。
【0025】
<感光性層>
本開示に係る感光性転写材料は、感光性層を有し、上記感光性層が、バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物と、光重合開始剤と、チオール化合物とを含有し、上記チオール化合物の含有量が、上記感光性層の全質量に対し、5質量%以上であり、上記感光性層の全質量に対する上記ラジカル重合性化合物と上記チオール化合物の総含有量MRSと上記感光性層の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値が、MRS/M=0.1~2.0である。
【0026】
<<チオール化合物>>
上記感光性層は、チオール化合物を含有する。
上記感光性層におけるチオール化合物の含有量は、上記感光性層の全質量に対し、5質量%以上であり、タック性、及び、硬化後の曲げ耐性の観点から、5質量%~40質量%が好ましく、5質量%~35質量%がより好ましく、5.5質量%~30質量%が更に好ましく、6.5質量%~25質量%が特に好ましい。
チオール化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
また、上記感光性層において、上記感光性層の全質量に対する上記ラジカル重合性化合物と上記チオール化合物の総含有量MRSと上記感光性層の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量Mとの比の値は、MRS/M=0.1~2.0であり、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、MRS/M=0.2~1.8であることが好ましく、MRS/M=0.3~1.5であることがより好ましく、MRS/M=0.4~1.2であることが特に好ましい。
【0028】
チオール化合物としては、単官能チオール化合物、又は、多官能チオール化合物が好適に用いられる。中でも、硬化後の硬度の観点から、2官能以上のチオール化合物(多官能チオール化合物)を含むことが好ましく、多官能チオール化合物であることがより好ましい。
本開示において多官能チオール化合物とは、メルカプト基(チオール基)を分子内に2個以上有する化合物を意味する。多官能チオール化合物としては、分子量100以上の低分子化合物が好ましく、具体的には、分子量100~1,500であることがより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
多官能チオール化合物の官能基数としては、硬化後の硬度の観点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能が更に好ましい。
また、多官能チオール化合物としては、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、脂肪族多官能チオール化合物であることが好ましい。
更に、チオール化合物としては、感光性転写材料の保存安定性の観点から、第二級チオール化合物がより好ましい。
【0029】
多官能チオール化合物として具体的には、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、p-キシレンジチオール、m-キシレンジチオール、ジ(メルカプトエチル)エーテル等を例示することができる。
【0030】
これらの中でも、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、及び、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましく挙げられる。
【0031】
単官能チオール化合物としては、脂肪族チオール化合物、及び、芳香族チオール化合物のどちらも用いることができる。
単官能脂肪族チオール化合物としては、具体的には、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
単官能芳香族チオール化合物としては、ベンゼンチオール、トルエンチオール、キシレンチオール等が挙げられる。
【0032】
上記チオール化合物は、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、エステル結合を有するチオール化合物であることが好ましく、下記式1で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0033】
【化6】
【0034】
式1中、nは1~6の整数を表し、Aは炭素数1~15のn価の有機基、又は、下記式2で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表す。
【0035】
【化7】
【0036】
式2中、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~15の二価の有機基を表し、波線部分は、上記式1におけるAに隣接する酸素原子との結合位置を表す。ただし、Aが下記式2で表される基を表す場合、nは3を表す。
【0037】
式1におけるnは、硬化後の硬度の観点から、2~6の整数であることが好ましい。
式1におけるAは、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数1~15のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることが好ましく、炭素数4~15のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることがより好ましく、炭素数4~10のn価の脂肪族基、又は、上記式2で表される基であることが更に好ましく、上記式2で表される基であることが特に好ましい。
また、式1におけるAは、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性、硬度及び透湿性の観点から、水素原子及び炭素原子からなるn価の基、又は、水素原子、炭素原子及び酸素原子からなるn価の基であることが好ましく、水素原子及び炭素原子からなるn価の基であることがより好ましく、n価の脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。
式1におけるRはそれぞれ独立に、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数1~15のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数3のアルキレン基であることが更に好ましく、1,2-プロピレン基であることが特に好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。
【0038】
式2におけるR~Rはそれぞれ独立に、タック性、並びに、硬化後の曲げ耐性及び硬度の観点から、炭素数2~15の脂肪族基であることが好ましく、炭素数2~15のアルキレン基、又は、炭素数3~15のポリアルキレンオキシアルキル基であることがより好ましく、炭素数2~15のアルキレン基であることが更に好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0039】
また、多官能チオール化合物としては、下記式S-1で表される基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0040】
【化8】
【0041】
式S-1中、R1Sは水素原子又はアルキル基を表し、A1Sは-CO-又は-CH2-を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【0042】
多官能チオール化合物としては、式S-1で表される基を2以上6以下有する化合物が好ましい。
式S-1中のR1Sにおけるアルキル基としては、直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、炭素数の範囲としては1~16が好ましく、1~10がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、2-エチルへキシル基等であり、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基が好ましい。
1Sとしては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基が特に好ましく、メチル基又はエチル基が最も好ましい。
【0043】
更に、多官能チオール化合物としては、上記式S-1で表される基を複数個有する下記式S-2で表される化合物であることが特に好ましい。
【0044】
【化9】
【0045】
式S-2中、R1Sはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、A1Sはそれぞれ独立に、-CO-又は-CH2-を表し、L1SはnS価の連結基を表し、nSは2~8の整数を表す。合成上の観点からは、R1Sは全て同じ基であることが好ましく、また、A1Sは全て同じ基であることが好ましい。
【0046】
式S-2中のR1Sは、上記式S-1中のR1Sと同義であり、好ましい範囲も同様である。nSは2~6の整数が好ましい。
式S-2中のnS価の連結基であるL1Sとしては、例えば-(CH2mS-(mSは2~6の整数を表す。)、-(CHmS{(CHmSO}mT(CHmS-(mS及びmTはそれぞれ独立に2~6の整数を表す。)などの二価の連結基、トリメチロールプロパン残基、-(CH2pS-(pSは2~6の整数を表す。)を3個有するイソシアヌル環などの三価の連結基、
ペンタエリスリトール残基などの四価の連結基、ジペンタエリスリトール残基などの五価又は六価の連結基が挙げられる。
【0047】
チオール化合物として具体的には、以下の化合物が好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは、言うまでもない。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
<<バインダーポリマー>>
本開示に係る感光性転写材料における感光性層は、バインダーポリマーを含む。
上記バインダーポリマーは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
上記バインダーポリマーの酸価は、特に制限はないが、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のバインダーポリマーであることが好ましく、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂であることが特に好ましい。
バインダーポリマーが、酸価を有することで、加熱により酸と反応可能な化合物と熱架橋し、3次元架橋密度を高めることができると推定される。また、カルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂のカルボキシル基が無水化され、疎水化することにより湿熱耐性の改善に寄与すると推定される。
【0051】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂(以下、特定重合体Aと称することがある。)としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて特に制限はなく、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。
例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂であるバインダーポリマー、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリル樹脂等が、本実施形態における特定重合体Aとして好ましく用いることができる。
ここで、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の少なくとも一方を含む樹脂を指す。
(メタ)アクリル樹脂中における(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計割合は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。
【0052】
特定重合体Aにおける、カルボキシル基を有するモノマーの共重合比の好ましい範囲は、特定重合体A全質量に対して、5質量%~50質量%であり、より好ましくは5質量%~40質量%、更に好ましくは10質量%~30質量%の範囲内である。
特定重合体Aは、反応性基を有していてもよく、反応性基を特定重合体Aに導入する手段としては、水酸基、カルボキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、スルホン酸などに、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート、イソシアネート、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、カルボン酸無水物などを反応させる方法が挙げられる。
これらの中でも、反応性基としては、ラジカル重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和基であることがより好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることが特に好ましい。
【0053】
また、バインダーポリマー、特に特定重合体Aは、硬化後の透湿度及び強度の観点から、芳香環を有する構成単位を有することが好ましい。
芳香環を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香環を有する構成単位としては、後述する式P-2で表される構成単位を少なくとも1種含有することが好ましい。また、芳香環を有する構成単位としては、スチレン化合由来の構成単位であることが好ましい。
【0054】
バインダーポリマーが芳香環を有する構成単位を含有する場合、芳香環を有する構成単位の割合は、バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが更に好ましい。
【0055】
また、バインダーポリマー、特に特定重合体Aは、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、脂肪族環式骨格を有する構成単位を有することが好ましい。
脂肪族環式骨格を有する構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記脂肪族環式骨格を有する構成単位が有する脂肪族環としては、ジシクロペンタン環、シクロヘキサン環、イソボロン環、トリシクロデカン環等が好ましく挙げられる。中でも、トリシクロデカン環が特に好ましく挙げられる。
【0056】
バインダーポリマーが脂肪族環式骨格を有する構成単位を含有する場合、脂肪族環式骨格を有する構成単位の割合は、バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、20質量%~70質量%であることが更に好ましい。
【0057】
また、バインダーポリマー、特に特定重合体Aは、タック性、及び、硬化後の強度の観点から、ラジカル重合性基を有する構成単位を有することが好ましく、エチレン性不飽和基を有する構成単位を有することがより好ましい。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
バインダーポリマーがエチレン性不飽和基を有する構成単位を含有する場合、エチレン性不飽和基を有する構成単位の割合は、バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることが更に好ましい。
【0058】
特定重合体Aとしては、以下に示す化合物A-1又は化合物A-2が好ましく、化合物A-1が更に好ましい。なお、以下に示す各構成単位の割合は目的に応じて適宜変更することができる。
【0059】
【化12A】
【化12B】
上記A-1~A-2における各構成単位の割合は、質量比である。また、Meはメチル基を表す。
【0060】
本開示に用いられるバインダーポリマーの酸価は、60mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gであることがより好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gであることが更に好ましい。
本明細書において、酸価は、JIS K0070(1992年)に記載の方法に従って、測定された値を意味する。
【0061】
上記バインダーポリマーが、酸価60mgKOH/g以上のバインダーポリマーを含むことで、既述の利点に加え、後述する透明樹脂層が酸基を有する(メタ)アクリル樹脂を含有することにより、感光性層と透明樹脂層との層間密着性を高めることができる。
特定重合体Aの重量平均分子量は、1万以上が好ましく、2万~10万がより好ましい。
【0062】
また、上記バインダーポリマーは、上記特定ポリマー以外にも、任意の膜形成樹脂を目的に応じて適宜選択して用いることができる。感光性転写材料を静電容量型入力装置の電極保護膜として用いる観点から、表面硬度、耐熱性が良好な膜が好ましく、アルカリ可溶性樹脂がより好ましく、アルカリ可溶性樹脂の中でも、公知の感光性シロキサン樹脂材料などを好ましく挙げることができる。
【0063】
本開示に用いられるバインダーポリマーとしては、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を含む重合体(以下、特定重合体Bとも称する。)を含むことが好ましい。特定重合体Bを含むことにより、現像性、及び、硬化後の強度により優れる。
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造及び環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が更に好ましい。
また、環状カルボン酸無水物構造は、他の環構造と縮環又は結合して多環構造を形成していてもよいが、多環構造を形成していないことが好ましい。
【0064】
環状カルボン酸無水物構造に他の環構造が縮環又は結合して多環構造を形成している場合、多環構造としては、ビシクロ構造又はスピロ構造が好ましい。
多環構造において、環状カルボン酸無水物構造に対し縮環又は結合している他の環構造の数としては、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
他の環構造としては、炭素数3~20の環状の炭化水素基、炭素数3~20のヘテロ環基等が挙げられる。
ヘテロ環基としては、特に限定されないが、脂肪族ヘテロ環基及び芳香族ヘテロ環基が挙げられる。
また、ヘテロ環基としては、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。
また、ヘテロ環基としては、酸素原子を少なくとも一つ含有するヘテロ環基(例えば、オキソラン環、オキサン環、ジオキサン環等)が好ましい。
【0065】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位であるか、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
【0066】
【化13】
【0067】
式P-1中、RA1aは置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよい。
1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表す。n1aは0以上の整数を表す。
【0068】
A1aで表される置換基としては、上述したカルボン酸無水物構造が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0069】
1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。
【0070】
式P-1で表される部分構造は、他の環構造と縮環又は結合して多環構造を形成していてもよいが、多環構造を形成していないことが好ましい。
ここでいう他の環構造としては、上述した、カルボン酸無水物構造と縮環又は結合してもよい他の環構造と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0071】
1aは、0以上の整数を表す。
1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは0~4の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0が更に好ましい。
1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
【0072】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることがより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位であることが更に好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位であることが更に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位であることが特に好ましい。
【0073】
以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位はこれらの具体例に限定されるものではない。
下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CHOH基、又はCF基を表し、Meは、メチル基を表す。
【0074】
【化14】
【0075】
【化15】
【0076】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、上記式a2-1~式a2-21のいずれかで表される構成単位のうちの少なくとも1種であることが好ましく、上記式a2-1~式a2-21のいずれかで表される構成単位のうちの1種であることがより好ましい。
【0077】
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、硬化膜の耐汗性向上及び感光性転写材料とした場合の現像残渣低減の観点から、式a2-1で表される構成単位及び式a2-2で表される構成単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、式a2-1で表される構成単位を含むことがより好ましい。
【0078】
特定重合体Bにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位の割合(2種以上である場合には合計割合。以下同じ。)は、特定重合体Bの全量に対し、0モル%を超え、60モル%以下であることが好ましく、5モル%~40モル%であることがより好ましく、10モル%~35モル%であることが更に好ましい。
なお、本開示において、「構成単位」の割合をモル比で規定する場合、当該「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本開示において当該「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0079】
特定重合体Bは、下記式P-2で表される構成単位を少なくとも1種含有することが好ましい。これにより、形成される硬化膜の疎水性及び強度がより向上する。
【0080】
【化16】
【0081】
式P-2中、RP1は、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシ基、又はハロゲン原子を表し、RP2は、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、nPは0~5の整数を表す。nPが2以上の整数である場合、2つ以上存在するRP1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
P1としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、カルボキシ基、F原子、Cl原子、Br原子、又はI原子であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、Cl原子、又はBr原子であることがより好ましい。
P2としては、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素原子6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0083】
nPは、0~3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0084】
式P-2で表される構成単位としては、スチレン化合物に由来する構成単位であることが好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,p-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン等が挙げられ、スチレン又はα-メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
式P-2で表される構成単位を形成するためのスチレン化合物は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
【0085】
特定重合体Bが式P-2で表される構成単位を含有する場合、特定重合体Bにおける式P-2で表される構成単位の割合(2種以上である場合には合計割合。以下同じ。)は、特定重合体Bの全量に対し、5モル%~90モル%であることが好ましく、30モル%~90モル%であることがより好ましく、40モル%~90モル%であることが更に好ましい。
【0086】
特定重合体Bは、カルボン酸無水物構造を有する構成単位及び式P-2で表される構成単位以外のその他の構成単位を少なくとも1種含んでいてもよい。
その他の構成単位は、酸基を含有しないことが好ましい。
その他の構成単位としては特に限定されないが、単官能エチレン性不飽和化合物に由来する構成単位が挙げられる。
上記単官能エチレン性不飽和化合物としては、公知の化合物を特に限定なく用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物;アリルグリシジルエーテル等のアリル化合物の誘導体;等が挙げられる。
【0087】
特定重合体Bにおけるその他の構成単位の割合(2種以上である場合には合計割合)は、特定重合体Bの全量に対し、10モル%以上100モル%未満であることが好ましく、50モル%以上100質量%未満であることがより好ましい。
【0088】
バインダーポリマーの重量平均分子量は、特に制限はないが、3,000を超えることが好ましく、3,000を超え60,000以下であることがより好ましく、5,000~50,000であることが更に好ましい。
【0089】
バインダーポリマーは、1種単独で使用しても、2種以上を含有してもよい。
上記感光性層におけるバインダーポリマーの含有量は、感光性及び硬化膜の強度の観点から、上記感光性層の全質量に対し、10質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0090】
<<エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物>>
本開示に係る感光性転写材料における感光性層は、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含有する。
エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物は、上記感光性層の感光性(すなわち、光硬化性)及び硬化膜の強度に寄与する成分である。
また、エチレン性不飽和化合物は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
【0091】
上記感光性層は、エチレン性不飽和化合物として、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
ここで、2官能以上のエチレン性不飽和化合物とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0092】
上記感光性層は、硬化後の硬化性の観点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含有することが特に好ましい。
【0093】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、より具体的には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0094】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物、等が挙げられる。
【0095】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0096】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0097】
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(好ましくは3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物)も挙げられる。
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、UA
-1100H(新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0098】
また、エチレン性不飽和化合物は、現像性向上の観点から、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
酸基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及び、カルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=80~120mgKOH/g))、酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価=25~70mgKOH/g))、等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0099】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより現像性、及び、硬化膜の強度が高まる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックスM-520(東亞合成(株)製)、又は、アロニックスM-510(東亞合成(株)製)を好ましく用いることができる。
【0100】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物は、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物であることも好ましい。この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
本開示に用いられるエチレン性不飽和化合物の重量平均分子量(Mw)としては、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
また、上記感光性層に用いられるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、上記感光性層に含有されるすべてのエチレン性不飽和化合物に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0102】
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記感光性層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性層の全質量に対し、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、10質量%~70質量%が更に好ましく、20質量%~60質量%が特に好ましく、20質量%~50質量%が最も好ましい。
【0103】
また、上記感光性層が2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物とを含有する場合、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~85質量%がより好ましく、30質量%~80質量%が更に好ましい。
また、この場合、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物に対し、10質量%~90質量%が好ましく、15質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、この場合、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、2官能のエチレン性不飽和化合物と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との総含有量に対し、40質量%以上100質量%未満であることが好ましく、40質量%~90質量%であることがより好ましく、50質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0104】
また、上記感光性層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記感光性層は、更に単官能エチレン性不飽和化合物を含有してもよい。
更に、上記感光性層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合、上記感光性層に含有されるエチレン性不飽和化合物において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が主成分であることが好ましい。
具体的には、上記感光性層が2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含有する場合において、2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性層に含有されるエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が特に好ましい。
【0105】
また、上記感光性層が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、カルボキシ基を含有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物又はそのカルボン酸無水物)を含有する場合、酸基を有するエチレン性不飽和化合物の含有量は、上記感光性層に対し、1質量%~50質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0106】
<<光重合開始剤>>
本開示に係る感光性転写材料における感光性層は、光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0107】
光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びN-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0108】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0109】
光重合開始剤の市販品としては、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:IRGACURE 379EG、BASF社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 907、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 127、BASF社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名:IRGACURE 369、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(商品名:IRGACURE 1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:IRGACURE 184、BASF社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:IRGACURE 651、BASF社製)、オキシムエステル系(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0110】
光重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
上記感光性層における光重合開始剤の含有量は、特に制限はないが、上記感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。
また、光重合開始剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0111】
<<ブロックイソシアネート化合物>>
本開示に係る感光性転写材料における感光性層は、硬化後の硬度の観点から、ブロックイソシアネート化合物を更に含有することが好ましい。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(マスク)した構造を有する化合物」のことをいう。
【0112】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、100℃~160℃であることが好ましく、130℃~150℃であることがより好ましい。
本明細書中におけるブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200)によりDSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合に、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」のことをいう。
【0113】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、ピラゾール化合物(3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾールなど)、活性メチレン化合物(マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル)など)、トリアゾール化合物(1,2,4-トリアゾールなど)、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどの分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)などが挙げられる。中でも、保存安定性の観点から、オキシム化合物、又は、ピラゾール化合物が好ましく、オキシム化合物が特に好ましい。
【0114】
また、ブロックイソシアネート化合物がイソシアヌレート構造を有することが膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から好ましい。イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えばヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより調製することができる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、現像残渣を少なくしやすい観点から好ましい。
【0115】
本開示に用いられるブロックイソシアネート化合物は、硬化後の硬度の観点から、ラジカル重合性基を有することが好ましい。
ラジカル重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、例えば、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、グリシジル基等のエポキシ基を有する基などが挙げられる。中でも、重合性基としては、得られる硬化膜における表面の面状、現像速度及び反応性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましく、(メタ)アクリロキシ基であることがより好ましい。
【0116】
本開示に用いられるブロックイソシアネート化合物としては、市販のブロックイソシアネート化合物を挙げることもできる。例えば、カレンズAOI-BM、カレンズMOI-BM、カレンズ、カレンズMOI-BP(いずれも昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0117】
本開示に用いられるブロックイソシアネート化合物は、分子量が200~3,000であることが好ましく、250~2,600であることがより好ましく、280~2,200であることが特に好ましい。
【0118】
本開示においては、ブロックイソシアネート化合物を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ブロックイソシアネート化合物の含有量は、感光性層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0119】
<<界面活性剤>>
上記感光性層は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017及び特開2009-237362号公報の段落0060~0071に記載の界面活性剤、公知のフッ素系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、メガファック(登録商標)F551(DIC(株)製)が挙げられる。
【0120】
上記感光性層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、上記感光性層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましく、0.1質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0121】
<<重合禁止剤>>
上記感光性層は、重合禁止剤を少なくとも1種含有してもよい。
重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤(重合禁止剤ともいう)を用いることができる。
中でも、フェノチアジン、フェノキサジン又は4-メトキシフェノールを好適に用いることができる。
【0122】
上記感光性層が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、上記感光性層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましく、0.01質量%~0.8質量%が更に好ましい。
【0123】
<<金属酸化抑制剤>>
上記感光性層は、金属酸化抑制剤を更に含有することが好ましい。
金属酸化抑制剤は、窒素原子を有する複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。窒素原子を有する複素芳香環を有する化合物は、置換基を有してもよい。
窒素原子を有する複素芳香環としては、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、又は、これらのいずれか1つと他の芳香環との縮合環が好ましく、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環又はこれらのいずれか1つと他の芳香環との縮合環であることがより好ましい。
縮合環を形成する「他の芳香環」は、単素環でも複素環でもよいが、単素環が好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環がより好ましく、ベンゼン環が更に好ましい。
具体的には、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、および、メルカプトチアジアゾールが挙げられる。
【0124】
上記感光性層が金属酸化抑制剤を含有する場合、金属酸化抑制剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、0.01質量%~20質量%が好ましく、0.05質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%が更に好ましい。
【0125】
<<水素供与性化合物>>
上記感光性層は、水素供与性化合物を更に含有することが好ましい。
本開示において水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、或いは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
このような水素供与性化合物の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-20189号公報、特開昭51-82102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-84305号公報、特開昭62-18537号公報、特開昭64-33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、p-メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0126】
また、水素供与性化合物の更に別の例としては、アミノ酸化合物(例、N-フェニルグリシン等)、特公昭48-42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-34414号公報記載の水素供与体、特開平6-308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0127】
これら水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以上25質量%以下の範囲がより好ましく、0.5質量%以上20質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0128】
<<その他の成分>>
上記感光性層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載の熱重合防止剤、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤、等が挙げられる。
【0129】
また、上記感光性層は、その他の成分として、屈折率や光透過性を調節することを目的として、粒子(例えば金属酸化物粒子)を少なくとも1種含んでもよい。
金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれる。硬化膜の透明性の観点から、粒子(例えば金属酸化物粒子)の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましく、3~80nmがより好ましい。平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0130】
粒子の含有量は、上記感光性層の全質量に対して、0質量%~35質量%が好ましく、0質量%~10質量%がより好ましく、0質量%~5質量%が更に好ましく、0質量%~1質量%が更に好ましく、0質量%(即ち、上記感光性層に粒子が含まれないこと)が特に好ましい。
【0131】
また、上記感光性層は、その他の成分として、微量の着色剤(顔料、染料、等)を含有してもよいが、透明性の観点から、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。
具体的には、上記感光性層における着色剤の含有量は、上記感光性層の全質量に対し、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
【0132】
上記感光性層の厚さは、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、12μm以下が特に好ましい。
上記感光性層の厚さが、20μm以下であると、感光性転写材料全体の薄膜化、感光性層又は得られる硬化膜の透過率向上、感光性層又は得られる硬化膜の黄着色化抑制等の面で有利である。
上記感光性層の厚さは、製造適性の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上が特に好ましい。
【0133】
上記感光性層の屈折率としては、1.47~1.56が好ましく、1.50~1.53がより好ましく、1.50~1.52が更に好ましく、1.51~1.52が特に好ましい。
本開示において、「屈折率」は、波長550nmにおける屈折率を指す。
本開示における「屈折率」は、特に断りが無い限り、温度23℃において波長550nmの可視光で、エリプソメトリーによって測定した値を意味する。
【0134】
上記感光性層の形成方法には、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。
上記感光性層の形成方法の一例として、仮支持体上に、溶剤を含有する感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
塗布の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ダイコート法(即ち、スリットコート法)等が挙げられ、ダイコート法が好ましい。
乾燥の方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の方法を、単独で、又は複数組み合わせて適用することができる。
【0135】
-溶剤-
上記感光性層の形成には、塗布による感光性層の形成の観点から、溶剤を少なくとも1種含有してもよい。
【0136】
溶剤としては、通常用いられる溶剤を特に制限なく用いることができる。
溶剤としては、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、2-プロパノールなどを挙げることができる。また、使用する溶剤は、これらの化合物の混合物である混合溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤、メチルエチルケトンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの混合溶剤、又はジエチレングリコールエチルメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの混合溶剤が好ましい。
【0137】
溶剤を使用する場合、感光性樹脂組成物の固形分含有量としては、感光性樹脂組成物の全質量に対し、5質量%~80質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が特に好ましい。
【0138】
また、溶剤を使用する場合、感光性樹脂組成物の粘度(25℃)は、塗布性の観点から、1mPa・s~50mPa・sが好ましく、2mPa・s~40mPa・sがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sが特に好ましい。
粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22(東機産業(株)製)を用いて測定する。
感光性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、感光性樹脂組成物の表面張力(25℃)は、塗布性の観点から、5mN/m~100mN/mが好ましく、10mN/m~80mN/mがより好ましく、15mN/m~40mN/mが特に好ましい。
表面張力は、例えば、Automatic Surface Tensiometer
CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定する。
【0139】
溶剤としては、米国特許出願公開第2005/282073号明細書の段落0054及び0055に記載のSolventを用いることもでき、この明細書の内容は本明細書に組み込まれる。
また、溶剤として、必要に応じて沸点が180℃~250℃である有機溶剤(高沸点溶剤)を使用することもできる。
【0140】
<仮支持体>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体を有する。
仮支持体は、フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮又は伸びを生じないフィルムを用いることができる。
このようなフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
また、仮支持体として使用するフィルムは、シワ等の変形や、傷がないものであることが好ましい。
【0141】
仮支持体の厚みは、特に制限はないが、5μm~200μmであることが好ましく、取扱い易さ及び汎用性の観点から、10μm~150μmであることが特に好ましい。
【0142】
<透明樹脂層>
本開示に係る感光性転写材料は、更に、感光性層からみて仮支持体が存在する側とは反対側に、透明樹脂層を備えてもよい(例えば、後述する感光性転写材料の具体例参照)。
透明樹脂層としては、屈折率調整層が好ましく挙げられる。
屈折率調整層を備える態様の感光性転写材料によれば、透明電極パターンを備えるタッチパネル用基板に対し、感光性転写材料の屈折率調整層及び感光性層を転写することによりタッチパネル用保護層を形成した場合において、透明電極パターンがより視認されにくくなる(すなわち、透明電極パターンの隠蔽性がより向上する。)。透明電極パターンが視認される現象は、一般に、「骨見え」と称されている。
透明電極パターンが視認される現象、及び、透明電極パターンの隠蔽性については、特開2014-10814号公報及び特開2014-108541号公報を適宜参照できる。
【0143】
透明樹脂層は、感光性層に隣接して配置されることが好ましい。
透明樹脂層の屈折率は、骨見え抑制の観点から、感光性層の屈折率よりも高いことが好ましい。
透明樹脂層の屈折率は、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上である。
透明樹脂層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。
【0144】
透明樹脂層は、光硬化性(すなわち、感光性)を有してもよいし、熱硬化性を有していてもよいし、光硬化性及び熱硬化性の両方を有してもよい。
転写後の光硬化により、強度に優れた硬化膜を形成する観点からは、透明樹脂層は光硬化性を有することが好ましい。
また、熱硬化により、硬化膜の強度をより向上させることができる観点から、透明樹脂層は熱硬化性を有することが好ましい。 透明樹脂層は、アルカリ可溶性(例えば、弱アルカリ水溶液に対する溶解性)を有することが好ましい。
【0145】
透明樹脂層が感光性を有する態様は、転写後において、基板上に転写された感光性層及び透明樹脂層を、一度のフォトリソグラフィによってまとめてパターニングできるという利点を有する。
【0146】
透明樹脂層の膜厚としては、500nm以下が好ましく、110nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
また、透明樹脂層の膜厚は、20nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、55nm以上が更に好ましく、60nm以上が特に好ましい。
【0147】
透明樹脂層の屈折率は、透明電極パターンの屈折率に応じて調整することが好ましい。
例えば、ITOからなる透明電極パターンのように透明電極パターンの屈折率が1.8~2.0の範囲である場合は、透明樹脂層の屈折率は、1.60以上が好ましい。この場合の透明樹脂層の屈折率の上限は特に制限されないが、2.1以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましく、1.74以下が特に好ましい。
また、例えば、IZO(Indium Zinc Oxide;酸化インジウム亜鉛)からなる透明電極パターンのように、透明電極パターンの屈折率が2.0を超える場合は、透明樹脂層の屈折率は、1.70以上1.85以下が好ましい。
【0148】
透明樹脂層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と金属酸化物粒子又は金属粒子とを用いる方法、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法、等が挙げられる。
【0149】
透明樹脂層は、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である無機粒子、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である樹脂、及び、屈折率が1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)である重合性モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
この態様であると、透明樹脂層の屈折率を1.50以上(より好ましくは1.55以上、特に好ましくは1.60以上)に調整し易い。
【0150】
また、透明樹脂層は、バインダーポリマー、エチレン性不飽和化合物、及び、粒子を含有することが好ましい。
透明樹脂層の成分については、特開2014-108541号公報の段落0019~0040及び0144~0150に記載されている硬化性透明樹脂層の成分、特開2014-10814号公報の段落0024~0035及び0110~0112に記載されている透明層の成分、国際公開第2016/009980号の段落0034~段落0056に記載されているアンモニウム塩を有する組成物の成分等を参照することができる。
【0151】
また、透明樹脂層は、金属酸化抑制剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
透明樹脂層が金属酸化抑制剤を含有する場合には、透明樹脂層を基板(即ち、転写対象物)上に転写する際に、透明樹脂層と直接接する部材(例えば、基板上に形成された導電性部材)を表面処理することができる。この表面処理は、透明樹脂層と直接接する部材に対し金属酸化抑制機能(保護性)を付与する。
金属酸化抑制剤としては、上述したものが挙げられる。
【0152】
透明樹脂層は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。
透明樹脂層に含有され得るその他の成分としては、上述した感光性層に含まれる各成分と同様のものが挙げられる。
透明樹脂層は、その他の成分として、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0153】
透明樹脂層の形成方法には特に限定はない。
透明樹脂層の形成方法の一例として、仮支持体上に形成された上述の感光性層上に、水系溶剤を含有する態様の透明樹脂層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。
塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、感光性層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
【0154】
透明樹脂層形成用組成物は、上述した透明樹脂層の各成分を含有し得る。
透明樹脂層形成用組成物は、例えば、バインダーポリマー、エチレン性不飽和化合物、粒子、及び水系溶剤を含有する。
また、透明樹脂層形成用組成物としては、国際公開第2016/009980号の段落0034~0056に記載されている、アンモニウム塩を有する組成物も好ましい。
【0155】
<保護フィルム>
本開示に係る感光性転写材料は、更に、感光性層からみて仮支持体とは反対側に、保護フィルムを備えていてもよい。
本開示に係る感光性転写材料が、感光性層からみて仮支持体とは反対側に透明樹脂層を備える場合には、保護フィルムは、好ましくは、透明樹脂層からみて仮支持体とは反対側に配置される。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
保護フィルムとしては、例えば、特開2006-259138号公報の段落0083~0087及び0093に記載のものを用いてもよい。
【0156】
<熱可塑性樹脂層>
本開示に係る感光性転写材料は、更に、仮支持体と感光性層との間に、熱可塑性樹脂層を備えていてもよい。
感光性転写材料が熱可塑性樹脂層を備える場合には、感光性転写材料を基板に転写して積層体を形成した場合に、積層体の各要素に気泡が発生しにくくなる。この積層体を画像表示装置に用いた場合には、画像ムラなどが発生し難くなり、優れた表示特性が得られる。
熱可塑性樹脂層は、アルカリ可溶性を有することが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、転写時において、基板表面の凹凸を吸収するクッション材として機能する。
基板表面の凹凸には、既に形成されている、画像、電極、配線なども含まれる。熱可塑性樹脂層は、凹凸に応じて変形し得る性質を有していることが好ましい。
【0157】
熱可塑性樹脂層は、特開平5-72724号公報に記載の有機高分子物質を含むことが好ましく、ヴィカー(Vicat)法(具体的には、アメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質を含むことがより好ましい。
【0158】
熱可塑性樹脂層の厚さとしては、3μm~30μmが好ましく、4μm~25μmがより好ましく、5μm~20μmが更に好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚さが3μm以上であると、基板表面の凹凸に対する追従性が向上するので、基板表面の凹凸をより効果的に吸収できる。
熱可塑性樹脂層の厚さが30μm以下であると、プロセス適性がより向上する。例えば、仮支持体に熱可塑性樹脂層を塗布形成する際の乾燥(溶剤除去)の負荷がより軽減され、また、転写後の熱可塑性樹脂層の現像時間が短縮される。
【0159】
熱可塑性樹脂層は、溶剤及び熱可塑性の有機高分子を含む熱可塑性樹脂層形成用組成物を仮支持体に塗布し、必要に応じ乾燥させることによって形成され得る。
塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、感光性層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
溶剤としては、熱可塑性樹脂層を形成する高分子成分を溶解するものであれば、特に制限されず、有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n-プロパノール、及び2-プロパノール)が挙げられる。
【0160】
熱可塑性樹脂層は、100℃で測定した粘度が1,000~10,000Pa・sであることが好ましい。また、100℃で測定した熱可塑性樹脂層の粘度が、100℃で測定した感光性層の粘度よりも低いことが好ましい
【0161】
<中間層>
本開示に係る感光性転写材料は、更に、仮支持体と感光性層との間に、中間層を備えていてもよい。
本開示に係る感光性転写材料が熱可塑性樹脂層を備える場合、中間層は、好ましくは、熱可塑性樹脂層と感光性層との間に配置される。
中間層の成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、又は、これらのうちの少なくとも2種を含む混合物である樹脂が挙げられる。
また、中間層としては、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されているものを用いることもできる。
【0162】
仮支持体上に熱可塑性樹脂層、中間層、及び感光性層をこの順に備える態様の感光性転写材料を製造する場合において、中間層は、例えば、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤と、中間層の成分としての上記樹脂と、を含有する中間層形成用組成物を塗布し、必要に応じ乾燥させることによって形成され得る。塗布及び乾燥の方法の具体例は、それぞれ、感光性層を形成する際の塗布及び乾燥の具体例と同様である。
上記の場合、例えば、まず、仮支持体上に熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を形成する。次いで、この熱可塑性樹脂層上に中間層形成用組成物を塗布し、乾燥させて中間層を形成する。その後、中間層上に、有機溶剤を含有する態様の感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて感光性層を形成する。この場合の有機溶剤は、中間層を溶解しない有機溶剤であることが好ましい。
【0163】
<感光性転写材料の具体例>
図1は、本開示に係る感光性転写材料の一具体例である感光性転写材料10の概略断面図である。
図1に示されるように、感光性転写材料10は、保護フィルム16/透明樹脂層20A/感光性層18A/仮支持体12の積層構造(即ち、仮支持体12と、感光性層18Aと、透明樹脂層20Aと、保護フィルム16と、がこの順に配置された積層構造)を有する。
ただし、本開示に係る感光性転写材料は、感光性転写材料10であることには限定されず、例えば、透明樹脂層20A及び保護フィルム16は省略されていてもよい。また、仮支持体12と感光性層18Aとの間に、上述の熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方を備えていてもよい。
【0164】
透明樹脂層20Aは、感光性層18Aからみて仮支持体12が存在する側とは反対側に配置された層であり、波長550nmにおける屈折率が1.50以上である層である。
感光性転写材料10は、ネガ型材料(ネガ型フィルム)である。
【0165】
感光性転写材料10の製造方法は、特に制限されない。
感光性転写材料10の製造方法は、例えば、仮支持体12上に感光性層18Aを形成する工程と、感光性層18A上に透明樹脂層20Aを形成する工程と、透明樹脂層20A上に保護フィルム16を形成する工程と、をこの順に含む。
感光性転写材料10の製造方法は、透明樹脂層20Aを形成する工程と保護フィルム16を形成する工程との間に、国際公開第2016/009980号の段落0056に記載されている、アンモニアを揮発させる工程を含んでもよい。
【0166】
(電極保護膜、積層体、及び、静電容量型入力装置)
本開示に係る電極保護膜は、本開示に係る感光性転写材料から、上記仮支持体が取り除かれた感光性層を硬化してなる電極保護膜である。
本開示に係る電極保護膜は、静電容量型入力装置の電極保護膜であることが好ましく、タッチパネル用電極保護膜であることがより好ましい。
以下に述べる本開示に係る積層体は、本開示に係る電極保護膜を有する。
【0167】
本開示に係る積層体は、基板上に、本開示に係る感光性転写材料から上記仮支持体を除いた後の感光性層を上記基板側から順に有する。また、上記積層体における上記感光性層は、硬化した感光性層(硬化膜ともいう。)であってもよい。
本開示に係る静電容量型入力装置は、本開示に係る電極保護膜、又は、本開示に係る積層体を有する。
上記基板は、静電容量型入力装置の電極を含む基板であることが好ましい。
【0168】
静電容量型入力装置の電極は、透明電極パターンであっても、引き回し配線であってもよい。積層体は、静電容量型入力装置の電極が、電極パターンであることが好ましく、透明電極パターンであることがより好ましい。
【0169】
本開示に係る積層体においては、透明電極パターンの隠蔽性を良好にする観点から、基板と、透明電極パターンと、透明電極パターンに隣接して配置された透明樹脂層と、透明樹脂層に隣接して配置された感光性層と、を有し、透明樹脂層の屈折率が感光性層の屈折率よりも高いことが好ましい。透明樹脂層の屈折率は、1.6以上であることが好ましい。
【0170】
上記基板としては、ガラス基板又は樹脂基板が好ましい。
また、基板は、透明な基板であることが好ましく、透明な樹脂基板であることがより好ましい。透明の意味については、上述のとおりである。
基板の屈折率は、1.50~1.52が好ましい。
ガラス基板としては、例えば、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)などの強化ガラスを用いることができる。
樹脂基板としては、光学的に歪みがないもの及び透明度が高いものの少なくとも一方を用いることが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂からなる基板が挙げられる。
透明な基板の材質としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に記載されている材質が好ましく用いられる。
【0171】
上記静電容量型入力装置としては、タッチパネルが好適に挙げられる。
タッチパネル用電極としては、例えば、タッチパネルの少なくとも画像表示領域に配置される透明電極パターンが挙げられる。タッチパネル用電極は、画像表示領域からタッチパネルの枠部にまで延びていてもよい。
タッチパネル用配線としては、例えば、タッチパネルの枠部に配置される引き回し配線(取り出し配線)が挙げられる。
タッチパネル用基板及びタッチパネルの好ましい態様は、透明電極パターンのタッチパネルの枠部に延びている部分に、引き回し配線の一部が積層されることにより、透明電極パターンと引き回し配線とが電気的に接続されている態様が好適である。
【0172】
透明電極パターンの材質としては、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜が好ましい。
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛及びマンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム又はチタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0173】
本開示に係るタッチパネル用電極保護膜は、電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)を保護する目的で、電極等を直接又は他の層を介して覆うように設けられる。
タッチパネル用電極保護膜の厚さの好ましい範囲は、上述した感光性層の厚さの好ましい範囲と同様である。
【0174】
本開示に係る電極保護膜、好ましくはタッチパネル用電極保護膜は、開口部を有していてもよい。
上記開口部は、感光性層の非露光部が現像液によって溶解されることによって形成され得る。
この場合において、タッチパネル用電極保護膜が、感光性転写材料を用いて高温のラミネート条件で形成された場合においても、タッチパネル用電極保護膜の開口部における現像残渣が抑制される。
【0175】
タッチパネルは、更に、電極等とタッチパネル用電極保護層との間に第一屈折率調整層を備えていてもよい(例えば、後述するタッチパネルの第1具体例参照)。
第一屈折率調整層の好ましい態様は、感光性転写材料に備えられ得る透明樹脂層の好ましい態様と同様である。第一屈折率調整層は、第一屈折率調整層形成用組成物の塗布及び乾燥によって形成されてもよいし、別途、屈折率調整層を備える感光性転写材料の屈折率調整層を転写することによって形成されてもよい。
第一屈折率調整層を備える態様のタッチパネルは、好ましくは、透明樹脂層を備える態様の本開示に係る感光性転写材料を用い、感光性転写材料における感光性層及び透明樹脂層を転写することによって形成することが好ましい。この場合、感光性転写材料における感光性層からタッチパネル用電極保護層が形成され、感光性転写材料における透明樹脂層から第一屈折率調整層が形成される。
【0176】
また、タッチパネル又はタッチパネル用基板は、基板と電極等との間に、第二屈折率調整層を備えていてもよい(例えば、後述するタッチパネルの第1具体例参照)。
第二屈折率調整層の好ましい態様は、感光性転写材料に備えられ得る透明樹脂層の好ましい態様と同様である。
【0177】
タッチパネルが第一屈折率調整層を備える態様(より好ましくは第一屈折率調整層及び第二屈折率調整層を備える態様)は、電極等が視認されにくくなる(即ち、いわゆる骨見えが抑制される)という利点を有する。
【0178】
タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【0179】
<タッチパネルの第1具体例>
図2は、本開示に係るタッチパネルの第1具体例であるタッチパネル30の概略断面図である。より詳細には、図2は、タッチパネル30の画像表示領域の概略断面図である。
図2に示されるように、タッチパネル30は、基板32と、第二屈折率調整層36と、タッチパネル用電極としての透明電極パターン34と、第一屈折率調整層20と、タッチパネル用電極保護膜18と、がこの順序で配置された構造を有する。
タッチパネル30では、タッチパネル用電極保護膜18及び第一屈折率調整層20が、透明電極パターン34の全体を覆っている。しかし本開示に係るタッチパネルはこの態様には限定されない。タッチパネル用電極保護膜18及び第一屈折率調整層20は、透明電極パターン34の少なくとも一部を覆っていればよい。
【0180】
また、第二屈折率調整層36及び第一屈折率調整層20は、それぞれ、透明電極パターン34が存在する第1領域40及び透明電極パターン34が存在しない第2領域42を、直接又は他の層を介して連続して被覆することが好ましい。これにより、透明電極パターン34がより視認されにくくなる。
第二屈折率調整層36及び第一屈折率調整層20は、第1領域40及び第2領域42の両方を、他の層を介して被覆するよりも、直接被覆することが好ましい。「他の層」としては、例えば、絶縁層、透明電極パターン34以外の電極パターン、等が挙げられる。
【0181】
第一屈折率調整層20は、第1領域40及び第2領域42の両方にまたがって積層されている。第一屈折率調整層20は、第二屈折率調整層36と隣接しており、更に、透明電極パターン34とも隣接している。
第二屈折率調整層36と接触する箇所における透明電極パターン34の端部の形状が、図2に示される如きテーパー形状である場合は、テーパー形状に沿って(すなわち、テーパー角と同じ傾きで)、第一屈折率調整層20が積層されていることが好ましい。
【0182】
透明電極パターン34としては、ITO透明電極パターンが好適である。
透明電極パターン34は、例えば、以下の方法により形成できる。
第二屈折率調整層36が形成された基板32の上に、スパッタリングにより電極用薄膜(例えばITO膜)を形成する。この電極用薄膜の上に、エッチング用感光性レジストを塗布することにより、又は、エッチング用感光性フィルムを転写することにより、エッチング保護層を形成する。次いで、露光及び現像により、このエッチング保護層を所望とするパターン形状にパターニングする。次いで、エッチングにより、電極用薄膜のうちパターニングされたエッチング保護層に覆われていない部分を除去する。これにより、電極用薄膜を所望の形状のパターン(すなわち、透明電極パターン34)とする。続いて、剥離液によりパターニングされたエッチング保護層を除去する。
【0183】
第一屈折率調整層20及びタッチパネル用電極保護膜18は、例えば以下のようにして、第二屈折率調整層36及び透明電極パターン34が順次設けられた基板32(即ち、タッチパネル用基板)の上に形成される。
まず、図1に示した感光性転写材料10(すなわち、保護フィルム16/透明樹脂層20A/感光性層18A/仮支持体12の積層構造を有する感光性転写材料10)を準備する。
次に、感光性転写材料10から保護フィルム16を取り除く。
次に、保護フィルム16が取り除かれた感光性転写材料10を、第二屈折率調整層36及び透明電極パターン34が順次設けられた基板32(即ち、タッチパネル用基板)の上にラミネートする。ラミネートは、保護フィルム16が取り除かれた感光性転写材料10の透明樹脂層20Aと、透明電極パターン34と、が接する向きで行う。このラミネートにより、仮支持体12/感光性層18A/透明樹脂層20A/透明電極パターン34/第二屈折率調整層36/基板32の積層構造を有する積層体が得られる。
次に、積層体から仮支持体12を取り除く。
次に、仮支持体12が取り除かれた積層体をパターン露光することにより、感光性層18A及び透明樹脂層20Aをパターン状に硬化させる。感光性層18A及び透明樹脂層20Aのパターン状に硬化は、それぞれ別個のパターン露光によって別個に行ってもよいが、1回のパターン露光によって同時に行うことが好ましい。
次に、現像によって感光性層18A及び透明樹脂層20Aの非露光部(即ち、非硬化部)を除去することにより、感光性層18Aのパターン状の硬化物であるタッチパネル用電極保護膜18(パターン形状については不図示)、及び、透明樹脂層20Aのパターン状の硬化物である第一屈折率調整層20(パターン形状については不図示)をそれぞれ得る。パターン露光後の感光性層18A及び透明樹脂層20Aの現像は、それぞれ別個の現像によって別個に行ってもよいが、1回の現像によって同時に行うことが好ましい。
【0184】
ラミネート、パターン露光、現像の好ましい態様は後述する。
【0185】
タッチパネルの構造については、特開2014-10814号公報又は特開2014-108541号公報に記載の静電容量型入力装置の構造を参照してもよい。
【0186】
<タッチパネルの第2具体例>
図3は、本開示に係るタッチパネルの第2具体例であるタッチパネル90の概略断面図である。
図3に示されるように、タッチパネル90は、画像表示領域74及び画像非表示領域75を有する。
図3に示されるように、タッチパネル90は、基板32の両面にタッチパネル用電極を備えている。詳細には、タッチパネル90は、基板32の一方の面に第1透明電極パターン70を備え、他方の面に第2透明電極パターン72を備えている。
タッチパネル90では、第1透明電極パターン70及び第2透明電極パターン72のそれぞれに、引き回し配線56が接続されている。引き回し配線56は、例えば銅配線である。
タッチパネル90では、基板32の一方の面において、第1透明電極パターン70及び引き回し配線56を覆うようにタッチパネル用電極保護膜18が形成されており、基板3
2の他方の面において、第2透明電極パターン72及び引き回し配線56を覆うようにタッチパネル用電極保護膜18が形成されている。
基板32の一方の面及び他方の面には、それぞれ、第1具体例における第一屈折率調整層及び第二屈折率調整層が設けられていてもよい。
【0187】
<タッチパネルの製造方法>
本開示に係るタッチパネルを製造する方法には、特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。
本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、
基板上に電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)と、
タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上に、本開示に係る感光性転写材料を用いて感光性層を形成する工程(以下、「感光性層形成工程」ともいう。)と、
タッチパネル用基板の上記面の上に形成された感光性層をパターン露光する工程(以下、「パターン露光工程」ともいう。)と、
パターン露光された感光性層を現像することにより、電極等の少なくとも一部を保護するタッチパネル用電極保護膜を得る工程(以下、「現像工程」ともいう。)と、
を含む。
【0188】
上記好ましい製造方法によれば、曲げ耐性に優れたタッチパネル用電極保護膜を備えるタッチパネルを製造できる。
また、上記好ましい製造方法では、本開示に係る感光性転写材料を用い高温のラミネート条件で感光性層を形成した場合においても、現像後の感光性層の非露光部において、現像残渣の発生が抑制される。
【0189】
以下、上記好ましい製造方法の各工程について説明する。
【0190】
<準備工程>
準備工程は、便宜上の工程であり、基板上に電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)が配置された構造を有するタッチパネル用基板を準備する工程である。
準備工程は、予め製造されたタッチパネル用基板を単に準備するだけの工程であってもよいし、タッチパネル用基板を製造する工程であってもよい。
タッチパネル用基板の好ましい態様は、タッチパネルの第1具体例及びタッチパネルの第2具体例にて上述のとおりである。
【0191】
<感光性層形成工程>
感光性層形成工程は、タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上に、本開示に係る感光性転写材料を用いて感光性層を形成する工程である。
【0192】
以下、感光性層形成工程において、本開示に係る感光性転写材料を用いる態様について説明する。
この態様では、本開示に係る感光性転写材料をタッチパネル用基板の電極等が配置された側の面の上にラミネートし、本開示に係る感光性転写材料の感光性層を上記面の上に転写することにより、上記面の上に感光性層を形成する。
ラミネート(感光性層の転写)は、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを用いて行うことができる。
【0193】
ラミネート条件としては、一般的な条件を適用できる。
ラミネート温度としては、80℃~150℃が好ましく、90℃~150℃がより好ましく、100℃~150℃が特に好ましい。
上述のとおり、本開示に係る感光性転写材料を用いる態様では、ラミネート温度が高温(例えば120℃~150℃)である場合においても、熱かぶりによる現像残渣の発生が抑制される。
ゴムローラーを備えたラミネーターを用いる場合、ラミネート温度は、ゴムローラー温度を指す。
ラミネート時の基板温度には特に制限はない。ラミネート時の基板温度としては、10℃~150℃が挙げられ、20℃~150℃が好ましく、30℃~150℃がより好ましい。基板として樹脂基板を用いる場合には、ラミネート時の基板温度としては、10℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましく、30℃~50℃が特に好ましい。
また、ラミネート時の線圧としては、0.5N/cm~20N/cmが好ましく、1N/cm~10N/cmがより好ましく、1N/cm~5N/cmが特に好ましい。
また、ラミネート時の搬送速度(ラミネート速度)としては、0.5m/分~5m/分が好ましく、1.5m/分~3m/分がより好ましい。
【0194】
保護フィルム/感光性層/中間層/熱可塑性樹脂層/仮支持体の積層構造を有する感光性転写材料を用いる場合には、まず、感光性転写材料から保護フィルムを剥離して感光性層を露出させ、次いで、露出した感光性層とタッチパネル用基板の電極等が配置された側の面とが接するようにして、感光性転写材料とタッチパネル用基板とを貼り合わせ、次いで加熱及び加圧を施す。これにより、感光性転写材料の感光性層が、タッチパネル用基板の電極等が配置された側の面上に転写され、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性層/電極等/基板の積層構造を有する積層体が形成される。この積層構造のうち、「電極等/基板」の部分が、タッチパネル用基板である。
その後、必要に応じ、上記積層体から仮支持体を剥離する。ただし、仮支持体を残したまま、後述のパターン露光を行うこともできる。
【0195】
タッチパネル用基板上に感光性転写材料の感光性層を転写し、パターン露光し、現像する方法の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0196】
<パターン露光工程>
パターン露光工程は、タッチパネル用基板上に形成された感光性層をパターン露光する工程である。
ここで、パターン露光とは、パターン状に露光する態様、すなわち、露光部と非露光部とが存在する態様の露光を指す。
タッチパネル用基板上の感光性層のうち、パターン露光における露光部が硬化され、最終的に硬化膜となる。
一方、タッチパネル用基板上の感光性層のうち、パターン露光における非露光部は硬化せず、次の現像工程で、現像液によって除去(溶解)される。非露光部は、現像工程後、硬化膜の開口部を形成し得る。
パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
【0197】
パターン露光の光源としては、感光性層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及び、メタルハライドランプが挙げられる。露光量は、好ましくは5mJ/cm~200mJ/cmであり、より好ましくは10mJ/cm~200mJ/cmである。
【0198】
感光性転写材料を用いて基板上に感光性層を形成した場合には、パターン露光は、仮支持体を剥離してから行ってもよいし、仮支持体を剥離する前に露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。
また、露光工程では、パターン露光後であって現像前に、感光性層に対し熱処理(いわゆるPEB(Post Exposure Bake))を施してもよい。
【0199】
<現像工程>
現像工程は、パターン露光された感光性層を現像することにより(即ち、パターン露光における非露光部を現像液に溶解させることにより)、電極等の少なくとも一部を保護するタッチパネル用電極保護膜を得る工程である。
【0200】
現像に用いる現像液は特に制限されず、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を用いることができる。
現像液としては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ性水溶液に含有され得るアルカリ性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)、等が挙げられる。
アルカリ性水溶液の25℃におけるpHとしては、8~13が好ましく、9~12がより好ましく、10~12が特に好ましい。
アルカリ性水溶液中におけるアルカリ性化合物の含有量は、アルカリ性水溶液全質量に対し、0.1質量%~5質量%が好ましく、0.1質量%~3質量%がより好ましい。
【0201】
現像液は、水に対して混和性を有する有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε-カプロラクタム、及び、N-メチルピロリドンを挙げることができる。
有機溶剤の濃度は、0.1質量%~30質量%が好ましい。
現像液は、公知の界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤の濃度は0.01質量%~10質量%が好ましい。
現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0202】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像、等の方式が挙げられる。
シャワー現像を行う場合、パターン露光後の感光性層に現像液をシャワー状に吹き付けることにより、感光性層の非露光部を除去する。感光性層と熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方とを備える感光性転写材料を用いた場合には、これらの層の基板上への転写後であって感光性層の現像の前に、感光性層の溶解性が低いアルカリ性の液をシャワー状に吹き付け、熱可塑性樹脂層及び中間層の少なくとも一方(両方存在する場合には両方)を予め除去してもよい。
また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付けつつブラシなどで擦ることにより、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温度は、20℃~40℃が好ましい。
【0203】
現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化膜を加熱処理(以下、「ポストベーク」ともいう)する段階と、を含んでいてもよい。
基板が樹脂基板である場合には、ポストベークの温度は、100℃~160℃が好ましく、130℃~160℃がより好ましい。
このポストベークにより、透明電極パターンの抵抗値を調整することもできる。
また、感光性層がカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を含む場合には、ポストベークにより、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の少なくとも一部をカルボン酸無水物に変化させることができる。これにより、現像性、及び、硬化膜の強度に優れる。
【0204】
また、現像工程は、上記現像を行う段階と、上記現像によって得られた硬化膜を露光(以下、「ポスト露光」ともいう。)する段階と、を含んでいてもよい。
現像工程がポスト露光する段階及びポストベークする段階を含む場合、好ましくは、ポスト露光、ポストベークの順序で実施する。
【0205】
パターン露光、現像などについては、例えば、特開2006-23696号公報の段落0035~0051の記載を参照することもできる。
【0206】
本開示に係るタッチパネルの好ましい製造方法は、上述した工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、通常のフォトリソ工程に設けられることがある工程(例えば、洗浄工程など)を特に制限なく適用できる。
【0207】
(画像表示装置)
本開示に係る画像表示装置は、本開示に係る静電容量型入力装置、好ましくは本開示に係るタッチパネル(例えば、第1~第2具体例のタッチパネル)を備える。
本開示に係る画像表示装置としては、本開示に係るタッチパネルを公知の液晶表示素子と重ね合わせた構造を有する液晶表示装置が好ましい。
タッチパネルを備える画像表示装置の構造としては、例えば、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行(株)テクノタイムズ)、三谷雄二監修、『タッチパネルの技術と開発』、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292に開示されている構造を適用することができる。
【実施例
【0208】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
なお、以下の実施例において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた重量平均分子量である。
【0209】
(実施例1~39、及び、比較例1~5)
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1~表3に示す組成の固形分割合となるように材料を混合し、更に、有機溶媒を加えて、固形分100質量部あたり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、(株)ダイセル製)25.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG、和光純薬工業(株)製)67.8質量部、メチルエチルケトン(MEK、丸善石油化学(株)製)151.5質量部が含まれる溶液とすることで、実施例1~39、及び、比較例1~5の感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0210】
<感光性転写材料の作製>
ポリエチレンテレフタレートフィルムである厚み16μmの仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、得られた感光性樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥後膜厚が8μmの感光性層を形成した。感光性層の上に保護フィルム(厚さ16μmのポリエチレンフタレートフィルム)を圧着し、実施例1~39、及び、比較例1~5の感光性転写材料をそれぞれ作製した。
【0211】
<曲げ耐性の評価>
-曲げ耐性評価用試料の作製-
得られた感光性転写材料を、保護フィルムを剥離してから、145℃30分間の熱処理をした東洋紡(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルムのコスモシャインA4300(厚み50μm)の両方の面の上にラミネートし、仮支持体/厚さ8μmの感光性層/コスモシャインA4300(厚み50μm)/厚さ8μmの感光性層/仮支持体の層構造を有する積層体Aを形成した。ラミネートの条件は、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。
その後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で両面露光した。両面の仮支持体を剥離してから、更に露光量375mJ/cm(i線)で両面露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性層を硬化させて硬化膜を形成した。
このようにして、厚さ8μmの硬化された感光性層/コスモシャインA4300(厚み50μm)/厚さ8μmの硬化された感光性層からなる曲げ耐性評価用試料を得た。
【0212】
-曲げ耐性の評価-
曲げ耐性評価用試料を用い、以下のようにして曲げ耐性を評価した。
上述の曲げ耐性評価用試料を5cm×12cmの長方形に裁断した。裁断した曲げ耐性評価用試料102を図4及び図5に示すように、高さ5cmの2個のスペーサーA104を介して上下の金属板106にテープで貼り合せ、U字の形に固定し、更に上側の金属板の上に1kgのおもり108を載せた。
なお、図5において、曲げ耐性評価用試料102、2個のスペーサーA104、及び、2個のスペーサーB110は、重力方向上側から見た場合は、直接視認できないが、点線により記載した。
次に、図4及び図5に示すように、指定のGap(高さd)の2個のスペーサーB110を金属板106に載せたのち、スペーサーA104を金属板106の外側(図4及び図5の矢印の向き)に同時に手で移動させることで、上側の金属板106をスペーサーB110の上まで自由落下させた(図6の状態)。
上記動作(図4の状態と図6の状態との繰り返し)を15回繰り返した後の曲げ耐性評価用試料を金属板106からテープを剥がして外したのち、曲げ耐性評価用試料102の表面のクラックの有無を目視で確認した。
【0213】
このスペーサーB110のGap(高さd)を変えながら、上記の動作を行い、クラックが発生しない最も小さいGap(スペーサーB110の高さd)を求めた。下記評価基準において、Aが曲げ耐性が最も良く、Eが曲げ耐性が最も悪い。A、B、Cのいずれかであれば、実用に適し、Aが最も好ましい。
A:クラックが発生しない最も小さいGapが4mm以下
B:クラックが発生しない最も小さいGapが4mmより大きく5mm以下
C:クラックが発生しない最も小さいGapが5mmより大きく6mm以下
D:クラックが発生しない最も小さいGapが6mmより大きく7mm以下
E:クラックが発生しない最も小さいGapが7mmより大きい
【0214】
<硬度の評価>
-硬度評価用試料の作製-
得られた感光性転写材料を4.5cm×9cmの大きさに裁断し、保護フィルムを剥離してから、5cm×10cmの大きさのガラス(イーグルXG、コーニング社製)上にラミネートし、仮支持体/厚さ8μmの感光性層/ガラスの層構造を有する積層体を形成した。ラミネートの条件は、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。
その後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で全面露光した。仮支持体を剥離してから、更に露光量375mJ/cm(i線)で露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性層を硬化させて硬化膜を形成した。
このようにして、厚さ8μmの感光性層/ガラスの層構造を有する硬度評価用試料を得た。
【0215】
-硬化膜の硬度の評価-
硬度評価用試料を用い、以下のようにして硬化膜の硬度を評価した。
フィッシャーインスツルメンツ社製HM2000型硬度計を用い、Berkovich圧子(三角錐圧子)、負荷速度20.0mN/分、最大荷重20.0mNの条件で押し込み試験を行い、最大押し込み深さよりマルテンス硬度(HM)を求めた。
下記評価基準において、A、B、Cのいずれかであれば、実用に適し、Aが最も好ましい。
A:マルテンス硬度が190N/mm以上
B:マルテンス硬度が160N/mm以上190N/mm未満
C:マルテンス硬度が130N/mm以上160N/mm未満
D:マルテンス硬度が100N/mm以上130N/mm未満
E:マルテンス硬度が100N/mm未満
【0216】
<タック性の評価>
得られた感光性転写材料を5cm×18cmの長方形に裁断し、保護フィルムを剥離した。厚み500μmのPFA(ポリテトラフルオロエチレン)フィルムを10cm×15cmの長方形に裁断し、水平な面に固定した。PFAフィルムと上記裁断した感光性転写材料の上記感光性層が形成された面とが接するように、上記PFAフィルムと上記感光性転写材料とを重ね、その上に底部4cm×6cmの直方体形状の70gの重りを乗せた。SHIMPO製Force Gauge Standを用いて、上記重ねた感光性転写材料を長辺と平行な水平方向に一定速度で引き、上記重りの荷重がかかった状態での摩擦力(単位:N)を測定した。
摩擦力を70で割った値(以下、「タック性指標値」ともいう。)をタック性の指標とした。下記評価基準において、A、B、Cのいずれかであれば実用に適し、Aが最も好ましい。
【0217】
-タック性の評価基準-
A:タック性指標値が2未満である。
B:タック性指標値が2以上4未満である。
C:タック性指標値が4以上6未満である。
D:タック性指標値が6以上10未満である。
E:タック性指標値が10以上である。
【0218】
<透湿度の評価>
〔透湿度測定用試料の作製〕
各実施例又は比較例の感光性転写材料を、保護フィルムを剥離してから、住友電気工業(株)製PTFE(四フッ化エチレン樹脂)メンブレンフィルターFP-100-100上にラミネートし、仮支持体/厚さ8μmの感光性層/メンブレンフィルターの層構造を有する積層体Aを形成した。ラミネートの条件は、メンブレンフィルター温度40℃、ラミロール温度110℃、線圧3N/cm、搬送速度2m/分とした。
形成した積層体Aから仮支持体を剥離し、感光性層に保護フィルムを剥離した転写材料を上記と同様にラミネートした。この、仮支持体を剥離し転写材料をラミネートする工程を更に3回繰り返して、仮支持体/合計膜厚40μmの感光性層/メンブレンフィルターの積層構造を有する積層体Bを形成した。
得られた積層体Bの感光性層を、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、仮支持体を介して露光量100mJ/cm(i線)で露光した。仮支持体を剥離してから、更に露光量375mJ/cm(i線)で露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性層を硬化させて硬化膜を形成した。
以上により、合計膜厚40μmの硬化膜/メンブレンフィルターの積層構造を有する透湿度測定用試料を得た。
【0219】
〔水蒸気透過度(WVTR)の測定〕
透湿度測定用試料を用い、JIS-Z-0208(1976)を参考にして、カップ法による透湿度測定を実施した。以下、詳細を説明する。
まず、透湿度測定用試料から直径70mmの円形試料を切り出した。次に、測定カップ内に乾燥させた20gの塩化カルシウムを入れ、次いで上記円形試料によって蓋をすることにより、蓋付き測定カップを準備した。
この蓋付き測定カップを、恒温恒湿槽内にて65℃、90%RHの条件で24時間放置した。上記放置前後での蓋付き測定カップの質量変化から、円形試料の水蒸気透過度(WVTR)(単位:g/(m・day))を算出した。
上記測定を3回実施し、3回の測定でのWVTRの平均値を算出した。WVTRの平均値に基づき、下記評価基準に従い、水蒸気透過度(WVTR)を評価した。下記評価基準において、A、B、Cのいずれかであることが好ましく、A又はBがより好ましく、Aが最も好ましい。
なお、上記測定では、上述のとおり、硬化膜/メンブレンフィルターの積層構造を有する円形試料のWVTRを測定した。しかし、メンブレンフィルターのWVTRが硬化膜のWVTRと比較して極めて高いことから、上記測定では、実質的には、硬化膜自体のWVTRを測定したことになる。
【0220】
〔水蒸気透過度(WVTR)の評価基準〕
A:WVTRの平均値が140g/(m・day)未満
B:WVTRの平均値が140g/(m・day)以上170g/(m・day)未満
C:WVTRの平均値が170g/(m・day)以上200g/(m・day)未満
D:WVTRの平均値が200g/(m・day)以上250g/(m・day)未満
E:WVTRの平均値が250g/(m・day)以上
【0221】
以下の表1~表3に評価結果をまとめて示す。
【0222】
【表1】
【0223】
【表2】
【0224】
【表3】
【0225】
上記表1~表3より、実施例1~39の感光性転写材料は、比較例1~5の感光性転写材料と比べ、タック性が低く、硬化後の曲げ耐性に優れることがわかる。
また、上記表1~表3より、実施例1~39の感光性転写材料は、硬化後の硬度及び透湿度にも優れる。
【0226】
以下、上述した以外の表1~表3に記載の成分の詳細について記載する。
A-1:下記に示す構造の樹脂(Mw=20,000)
A-2:下記に示す構造の樹脂(Mw=27,000)
A-3:下記に示す構造の樹脂(Mw=20,000)
【0227】
【化17】


【0228】
上記A-1~A-3における各構成単位の割合は、質量比である。また、Meはメチル基を表す。
【0229】
SMA EF-40:スチレン/無水マレイン酸=4:1(モル比)の共重合体、酸無水物価1.94mmol/g、重量平均分子量10,500、Cravy Valley社製
メガファックF551A:フッ素系界面活性剤、DIC(株)製
【符号の説明】
【0230】
10:感光性転写材料
12:仮支持体
16:保護フィルム
18:感光性層(タッチパネル用電極保護膜)
20,20A:透明樹脂層(第一屈折率調製層)
30:タッチパネル
32:基板
34:透明電極パターン
36:第二屈折率調整層
40:透明電極パターンが存在する第1領域
42:透明電極パターンが存在しない第2領域
56:引き回し配線
70:第1透明電極パターン
72:第2透明電極パターン
74:画像表示領域
75:画像非表示領域
90:タッチパネル
102:曲げ耐性評価用試料
104:スペーサーA
106:金属板
108:おもり
110:スペーサーB
d:Gap(高さ)


図1
図2
図3
図4
図5
図6