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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】コンデンサの冷却構造及びレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/041 20060101AFI20220330BHJP
【FI】
H01S3/041
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019536007
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2017028537
(87)【国際公開番号】W WO2019030792
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】勝海 久和
(72)【発明者】
【氏名】藤本 准一
(72)【発明者】
【氏名】田中 智史
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-249703(JP,A)
【文献】特開2000-092847(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186272(WO,A1)
【文献】特開2006-210561(JP,A)
【文献】特開2016-119440(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010322(WO,A1)
【文献】特開2004-123459(JP,A)
【文献】米国特許第04805072(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
H01G 2/08
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極を有するコンデンサの冷却構造であって、
前記第1の電極とネジ締めで締結され電気的に接続された導電部と、
第1の位置を含む第1の面と第2の位置を含む第2の面とを有し、前記第1の位置において前記導電部と接続された絶縁部と、
前記導電部と前記絶縁部とをネジ締めで締結する第1の締結部と、
前記第1の位置に対向する前記第2の位置と接続された冷却部と、
前記冷却部と前記絶縁部とをネジ締めで締結する第2の締結部と、
を含み、
前記導電部と前記冷却部は、前記絶縁部によって電気的に絶縁されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項2】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記導電部と前記絶縁部は、金属シートを介して接触している、コンデンサの冷却構造。
【請求項3】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記導電部と前記絶縁部は、樹脂シートを介して接触している、コンデンサの冷却構造。
【請求項4】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記絶縁部は前記導電部の一端を覆うように構成されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項5】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記絶縁部は前記冷却部の一端を覆うように構成されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項6】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記絶縁部は、酸化アルミニウムを含み、
前記第1の締結部は、ニッケル及びコバルトを含む合金を含む、コンデンサの冷却構造。
【請求項7】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記第1の締結部の一部が前記絶縁部にロウ付けされている、コンデンサの冷却構造。
【請求項8】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記導電部は、雌ネジが形成された第1のボルト穴を有し、
前記第1の締結部は、前記絶縁部にロウ付けされた第1の部分と、前記第1のボルト穴にねじ込まれる雄ネジが形成された第2の部分と、を有する、
コンデンサの冷却構造。
【請求項9】
請求項8記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記第1のボルト穴は、前記第1の部分を収容する第1の大径部と、前記第2の部分を収容する第1の小径部とを有する、コンデンサの冷却構造。
【請求項10】
請求項記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記絶縁部は、酸化アルミニウムを含み、
前記第2の締結部は、ニッケル及びコバルトを含む合金を含む、コンデンサの冷却構造。
【請求項11】
請求項記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記第2の締結部の一部が前記絶縁部にロウ付けされている、コンデンサの冷却構造。
【請求項12】
請求項記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記冷却部は、雌ネジが形成された第2のボルト穴を有し、
前記第2の締結部は、前記絶縁部にロウ付けされた第3の部分と、前記第2のボルト穴にねじ込まれる雄ネジが形成された第4の部分と、を有する、
コンデンサの冷却構造。
【請求項13】
請求項12記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記第2のボルト穴は、前記第3の部分を収容する第2の大径部と、前記第4の部分を収容する第2の小径部とを有する、コンデンサの冷却構造。
【請求項14】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記第1の電極が電源装置の出力端子に電気的に接続され、前記第2の電極が前記出力端子の電位と基準電位との間の電位を有する第3の電極に電気的に接続されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項15】
請求項14記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記冷却部は前記基準電位に電気的に接続されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項16】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記導電部は貫通孔を有し、
前記第1の締結部は、前記絶縁部にロウ付けされて前記貫通孔の貫通方向の一方側に位置する第5の部分と、前記貫通孔の貫通方向の他方側に位置する第6の部分と、前記第6の部分に取り付けられて前記導電部を前記絶縁部に固定する第7の部分と、を有する、
コンデンサの冷却構造。
【請求項17】
請求項1記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記第2の電極が電源装置の出力端子に電気的に接続され、前記第1の電極が前記出力端子の電位と基準電位との間の電位を有する第3の電極に電気的に接続されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項18】
請求項17記載のコンデンサの冷却構造であって、
前記冷却部は前記基準電位に電気的に接続されている、コンデンサの冷却構造。
【請求項19】
レーザチャンバと、
前記レーザチャンバに配置された一対の放電電極と、
ピーキングコンデンサを有し、前記一対の放電電極の間にパルス電圧を印加するように構成されたパルスパワーモジュールと、
第1の電極及び第2の電極を有する予備電離コンデンサを有し、前記レーザチャンバの内部のガスの一部を電離させるように構成された予備電離機構と、
前記第1の電極とネジ締めで締結され電気的に接続された導電部と、
第1の位置を含む第1の面と第2の位置を含む第2の面とを有し、前記第1の位置において前記導電部と接続された絶縁部と、
前記導電部と前記絶縁部とをネジ締めで締結する第1の締結部と、
前記第1の位置に対向する前記第2の位置と接続された冷却部と、
前記冷却部と前記絶縁部とをネジ締めで締結する第2の締結部と、
を含み、
前記導電部と前記冷却部は、前記絶縁部によって電気的に絶縁されている、レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンデンサの冷却構造及びレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。一般的に、露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられる。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線のレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長193nmの紫外線のレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-111313号公報
【文献】特開2015-133281号公報
【文献】特開2003-249703号公報
【文献】特開2009-289944号公報
【概要】
【0004】
本開示の1つの観点に係るコンデンサの冷却構造は、第1の電極及び第2の電極を有するコンデンサを冷却する構造であって、第1の電極とネジ締めで締結され電気的に接続された導電部と、第1の位置を含む第1の面と第2の位置を含む第2の面とを有し、第1の位置において導電部と接続された絶縁部と、導電部と絶縁部とをネジ締めで締結する第1の締結部と、第1の位置に対向する第2の位置と接続された冷却部と、冷却部と絶縁部とをネジ締めで締結する第2の締結部と、を含み、導電部と冷却部は、絶縁部によって電気的に絶縁されている。
【0005】
本開示の他の1つの観点に係るレーザ装置は、レーザチャンバと、レーザチャンバに配置された一対の放電電極と、ピーキングコンデンサを有し、一対の放電電極の間にパルス電圧を印加するように構成されたパルスパワーモジュールと、第1の電極及び第2の電極を有する予備電離コンデンサを有し、レーザチャンバの内部のガスの一部を電離させるように構成された予備電離機構と、第1の電極とネジ締めで締結され電気的に接続された導電部と、第1の位置を含む第1の面と第2の位置を含む第2の面とを有し、第1の位置において導電部と接続された絶縁部と、導電部と絶縁部とをネジ締めで締結する第1の締結部と、第1の位置に対向する第2の位置と接続された冷却部と、冷却部と絶縁部とをネジ締めで締結する第2の締結部と、を含み、導電部と冷却部は、絶縁部によって電気的に絶縁されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係るレーザ装置の構成を模式的に示す。
図2図2は、比較例に係るレーザ装置の構成を模式的に示す。
図3図3は、パルスパワーモジュール及び予備電離機構の回路図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係るレーザ装置におけるピーキングコンデンサ及び予備電離コンデンサの配置を示す平面図である。
図4B図4Bは、図4AのIVB-IVB線における断面図である。
図5A図5Aは、第2の実施形態に係るレーザ装置におけるピーキングコンデンサ及び予備電離コンデンサの配置を示す平面図である。
図5B図5Bは、図5AのVB-VB線における断面図である。
図5C図5Cは、図5AのVC-VC線における断面図である。
図6A図6Aは、参考例に係るレーザ装置におけるピーキングコンデンサ及び予備電離コンデンサの配置を示す平面図である。
図6B図6Bは、図6AのVIB-VIB線における断面図である。
【実施形態】
【0007】
<内容>
1.比較例
1.1 レーザ装置の構成
1.2 レーザ装置の動作
1.3 パルスパワーモジュール及び予備電離機構の詳細
1.3.1 構成
1.3.2 動作
1.4 課題
2.導電部と絶縁部とを締結した冷却構造
2.1 構成
2.2 動作及び作用
3.予備電離配線部に設けられた冷却構造
3.1 構成
3.2 動作及び作用
4.その他
4.1 参考例の構成
4.2 参考例の動作及び作用
4.3 補足
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.比較例
1.1 レーザ装置の構成
図1及び図2は、比較例に係るレーザ装置の構成を模式的に示す。図1においては、一対の放電電極11a及び11bの間の放電方向に略垂直で、且つ、出力結合ミラー15から出力されるレーザ光の進行方向に略垂直な方向からみたレーザ装置の内部構成が示されている。図2においては、出力結合ミラー15から出力されるレーザ光の進行方向に略平行な方向からみたレーザ装置の内部構成が示されている。出力結合ミラー15から出力されるレーザ光の進行方向を、Z方向とする。一対の放電電極11a及び11bの間の放電方向を、V方向とする。これらの両方に垂直な方向を、H方向とする。-V方向は、重力の方向とほぼ一致している。
【0010】
図1に示されるように、レーザ装置は、露光装置100と共に使用される。レーザ装置から出力されたレーザ光は、露光装置100へ入射する。露光装置100は、露光装置制御部110を含んでいる。露光装置制御部110は、露光装置100を制御するように構成されている。露光装置制御部110は、レーザ装置に含まれるレーザ制御部30に対して、目標パルスエネルギーの設定データを送信したり、発光トリガ信号を送信したりするように構成されている。
【0011】
レーザ装置は、レーザチャンバ10と、充電器12と、パルスパワーモジュール13と、狭帯域化モジュール14と、出力結合ミラー15と、エネルギーモニタ17と、クロスフローファン21と、モータ22と、レーザ制御部30と、を含む。レーザ制御部30は、レーザ装置全体の制御を統括する。
【0012】
レーザチャンバ10は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15とで構成されたレーザ共振器の光路に配置されている。レーザチャンバ10には、2つのウィンドウ10a及び10bが設けられている。レーザチャンバ10は、一対の放電電極11a及び11bを収容している。レーザチャンバ10は、レーザ媒質としてのレーザガスを収容する。
【0013】
レーザチャンバ10は開口を有し、この開口は電気絶縁部20によって塞がれている。電気絶縁部20は放電電極11aを支持している。電気絶縁部20には、複数の導電部20aが埋め込まれている。導電部20aの各々は放電電極11aに電気的に接続されている。
【0014】
レーザチャンバ10の内部にはリターンプレート10cが配置されている。レーザチャンバ10とリターンプレート10cとは、図2に示される配線部10d及び配線部10eによって電気的に接続されている。リターンプレート10cは放電電極11bを支持している。リターンプレート10cは放電電極11bに電気的に接続されている。
リターンプレート10cは、レーザチャンバ10の内部を完全に仕切っているわけではない。図2に示されるように、リターンプレート10cは、図1の紙面の奥行側と手前側とに、レーザガスが通過するための隙間を有している。
【0015】
クロスフローファン21は、レーザチャンバ10の内部に配置されている。クロスフローファン21の回転軸は、レーザチャンバ10の外部に配置されたモータ22に接続されている。モータ22は、クロスフローファン21を回転させる。これにより、図2に矢印Aで示されるようにレーザガスがレーザチャンバ10の内部で循環する。熱交換器23は、放電によって高温となったレーザガスの熱エネルギーをレーザチャンバ10の外部に排出するように構成されている。
【0016】
充電器12は、パルスパワーモジュール13に供給するための電気エネルギーを保持する。
パルスパワーモジュール13は、複数のピーキングコンデンサC3を含んでいる。パルスパワーモジュール13は、本開示における電源装置に相当する。ピーキングコンデンサC3の各々は2つの電極を含む。2つの電極のうちの一方の電極は接続プレート20bに電気的に接続され、他方の電極は図2に示される接続プレート10f又は10gに電気的に接続されている。接続プレート20bは、導電部20aを介して放電電極11aに電気的に接続されている。接続プレート10f及び10gは、レーザチャンバ10、配線部10d及び10e、及びリターンプレート10cを介して、放電電極11bに電気的に接続されている。レーザチャンバ10は基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、パルスパワーモジュール13が生成するパルス状の高電圧の基準となる電位であり、例えば接地電位である。
【0017】
接続プレート10fには冷却機構27fが接触して固定され、接続プレート10gには冷却機構27gが接触して固定されている。冷却機構27f及び27gの各々は、例えば、水などの冷却媒体を通過させる図示しない冷却管を含む。冷却機構27f及び27gの各々は、熱伝導率の高い金属で構成される。冷却機構27f及び27gは、接続プレート10f及び10gと同電位となっている。
【0018】
レーザ装置は、予備電離機構をさらに含む。予備電離機構は、図1に示される予備電離コンデンサC11と、予備電離配線部35と、誘電体パイプ24と、図2に示される予備電離内電極25と、複数の予備電離外電極26と、を含む。予備電離コンデンサC11の各々は2つの電極を含む。2つの電極のうちの一方の電極は上述の接続プレート20bに電気的に接続され、他方の電極は予備電離配線部35を介して予備電離内電極25に電気的に接続されている。予備電離内電極25は、本開示における第3の電極に相当する。予備電離配線部35は図示しない絶縁体に被覆されている。予備電離内電極25は、誘電体パイプ24に被覆されている。
【0019】
予備電離外電極26の各々は、一端が放電電極11bに電気的に接続され、他端が誘電体パイプ24の表面に接触している。予備電離内電極25及び複数の予備電離外電極26は、放電電極11bの位置よりもレーザガスの循環方向の上流側の位置に、放電電極11bの長手方向に沿って配置されている。
【0020】
狭帯域化モジュール14は、プリズム14a及びグレーティング14bなどの波長選択素子を含む。狭帯域化モジュール14の代わりに、高反射ミラーが用いられてもよい。
出力結合ミラー15は、部分反射ミラーで構成されている。
【0021】
エネルギーモニタ17は、ビームスプリッタ17aと、集光レンズ17bと、光センサ17cと、を含んでいる。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15から出力されたレーザ光の光路に配置されている。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15から出力されたレーザ光の一部を露光装置100に向けて高い透過率で透過させると共に、他の一部を反射させるように構成されている。集光レンズ17b及び光センサ17cは、ビームスプリッタ17aによって反射されたレーザ光の光路に配置されている。
【0022】
1.2 レーザ装置の動作
レーザ制御部30は、露光装置制御部110から、目標パルスエネルギーの設定データと、発光トリガ信号と、を受信する。レーザ制御部30は、露光装置制御部110から受信した目標パルスエネルギーの設定データに基づいて、充電器12に充電電圧の設定データを送信する。また、レーザ制御部30は、露光装置制御部110から受信した発光トリガ信号に基づいて、パルスパワーモジュール13にトリガ信号を送信する。
【0023】
パルスパワーモジュール13は、レーザ制御部30からトリガ信号を受信すると、充電器12に充電された電気エネルギーからパルス状の高電圧を生成し、この高電圧を一対の放電電極11a及び11bの間に印加する。
【0024】
一対の放電電極11a及び11bの間に高電圧が印加されると、一対の放電電極11a及び11bの間に放電が起こる。この放電を主放電という。主放電のエネルギーにより、レーザチャンバ10内のレーザガスが励起されて高エネルギー準位に移行する。励起されたレーザガスが、その後、低エネルギー準位に移行するとき、そのエネルギー準位差に応じた波長の光を放出する。
【0025】
レーザチャンバ10内で発生した光は、ウィンドウ10a及び10bを介してレーザチャンバ10の外部に出射する。レーザチャンバ10のウィンドウ10aから出射した光は、プリズム14aによってビーム幅を拡大させられて、グレーティング14bに入射する。プリズム14aからグレーティング14bに入射した光は、グレーティング14bの複数の溝によって反射されるとともに、光の波長に応じた方向に回折させられる。グレーティング14bは、プリズム14aからグレーティング14bに入射する光の入射角と、所望波長の回折光の回折角とが一致するようにリトロー配置されている。これにより、所望波長付近の光がプリズム14aを介してレーザチャンバ10に戻される。
【0026】
出力結合ミラー15は、レーザチャンバ10のウィンドウ10bから出射した光のうちの一部を透過させて出力し、他の一部を反射させてレーザチャンバ10に戻す。
【0027】
このようにして、レーザチャンバ10から出射した光は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15との間で往復する。この光は、一対の放電電極11a及び11bの間の放電空間を通過する度に増幅される。また、この光は、狭帯域化モジュール14で折り返される度に狭帯域化される。こうしてレーザ発振し狭帯域化された光が、出力結合ミラー15からレーザ光として出力される。
【0028】
エネルギーモニタ17に含まれる集光レンズ17bは、ビームスプリッタ17aによって反射されたレーザ光を光センサ17cに集束させる。光センサ17cは、集光レンズ17bによって集束させられたレーザ光のパルスエネルギーに応じた電気信号を、測定データとしてレーザ制御部30に送信する。
【0029】
レーザ制御部30は、エネルギーモニタ17から測定データを受信する。レーザ制御部30は、エネルギーモニタ17から受信したパルスエネルギーの測定データと、露光装置制御部110から受信した目標パルスエネルギーの設定データとに基づいて、充電器12に設定する充電電圧をフィードバック制御する。
【0030】
1.3 パルスパワーモジュール及び予備電離機構の詳細
1.3.1 構成
図3は、パルスパワーモジュール及び予備電離機構の回路図である。パルスパワーモジュール13は、充電コンデンサC0と、スイッチ13aと、昇圧トランスTC1と、複数の磁気スイッチSr1~Sr3と、コンデンサC1及びC2と、ピーキングコンデンサC3と、を含む。
【0031】
磁気スイッチSr1~Sr3は、いずれも、可飽和リアクトルを含む。磁気スイッチSr1~Sr3の各々は、その両端に印加された電圧の時間積分値が、各磁気スイッチの特性で決まる所定の値になったときに、低インピーダンスとなるように構成されている。
【0032】
放電電極11aに電気的に接続されたピーキングコンデンサC3の上記一方の電極と、予備電離内電極25との間に、予備電離コンデンサC11とインダクタL0とが電気的に接続されている。上述の予備電離配線部35が、インダクタL0として構成されている。
予備電離内電極25と、放電電極11bに電気的に接続された複数の予備電離外電極26との間に、コンデンサC12が電気的に接続されている。上述の誘電体パイプ24が、コンデンサC12として構成されている。
【0033】
予備電離コンデンサC11とコンデンサC12とで、パルスパワーモジュール13から供給されるパルス状の高電圧が分圧されるように構成されている。例えば、コンデンサC12に印加される電圧がパルスパワーモジュール13から供給される電圧の25%以上、75%以下の範囲内となるように、予備電離コンデンサC11とコンデンサC12との容量比が設定されている。
【0034】
予備電離コンデンサC11の容量と、コンデンサC12の容量と、インダクタL0のインダクタンスとを選択することにより、予備電離外電極26と予備電離内電極25との間に電圧が印加されるタイミングが調節される。予備電離コンデンサC11とコンデンサC12との合成容量は、ピーキングコンデンサC3の容量の10%以下でもよい。
【0035】
1.3.2 動作
充電器12は、レーザ制御部30により設定された充電電圧に基づいて、充電コンデンサC0を充電する。
パルスパワーモジュール13のスイッチ13aには、レーザ制御部30によりトリガ信号が入力される。トリガ信号がスイッチ13aに入力されると、スイッチ13aがONになる。スイッチ13aがONになると、充電コンデンサC0から昇圧トランスTC1の1次側に電流が流れる。
【0036】
昇圧トランスTC1の1次側に電流が流れると、電磁誘導によって昇圧トランスTC1の2次側に逆方向の電流が流れる。昇圧トランスTC1の2次側に電流が流れると、やがて磁気スイッチSr1に印加される電圧の時間積分値が閾値に達する。
【0037】
磁気スイッチSr1に印加される電圧の時間積分値が閾値に達すると、磁気スイッチSr1は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチSr1は閉じる。
磁気スイッチSr1が閉じると、昇圧トランスTC1の2次側からコンデンサC1に電流が流れ、コンデンサC1が充電される。
【0038】
コンデンサC1が充電されることにより、やがて磁気スイッチSr2は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチSr2は閉じる。
磁気スイッチSr2が閉じると、コンデンサC1からコンデンサC2に電流が流れ、コンデンサC2が充電される。このとき、コンデンサC1を充電する際の電流のパルス幅よりも短いパルス幅で、コンデンサC2が充電される。
【0039】
コンデンサC2が充電されることにより、やがて磁気スイッチSr3は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチSr3は閉じる。
磁気スイッチSr3が閉じると、コンデンサC2からピーキングコンデンサC3に電流が流れ、ピーキングコンデンサC3が充電される。このとき、コンデンサC2を充電する際の電流のパルス幅よりも短いパルス幅で、ピーキングコンデンサC3が充電される。
【0040】
このように、コンデンサC1からコンデンサC2、コンデンサC2からピーキングコンデンサC3へと電流が順次流れることにより、当該電流のパルス幅は圧縮され、高電圧化される。
【0041】
ピーキングコンデンサC3の電圧がレーザガスのブレークダウン電圧に達したときに、一対の放電電極11a及び11bの間で主放電が生じる。これにより、レーザガスが励起され、レーザ発振する。スイッチ13aのスイッチング動作によって主放電が繰り返されることにより、所定の繰返し周波数で、パルスレーザ光が出力される。
【0042】
誘電体パイプ24の周辺には、予備電離外電極26と予備電離内電極25との間に印加される電圧によって電界が発生する。この電界は、誘電体パイプ24の周辺でコロナ放電を生じさせる。コロナ放電により、短波長の光が生成される。この短波長の光は、一対の放電電極11a及び11bの間のレーザガスの一部を電離させて、荷電粒子を生成させる。主放電の前にレーザガスの一部を電離させることを予備電離という。予備電離の後の所定のタイミングで主放電を生じさせるように、予備電離コンデンサC11の容量と、コンデンサC12の容量と、インダクタL0のインダクタンスとが選択される。これにより、一対の放電電極11a及び11bの長手方向において偏りの少ない主放電を生成することができ、安定したレーザ光の出力が可能となる。
【0043】
1.4 課題
ピーキングコンデンサC3においては電気的損失が発生し、この電気的損失は熱に変わる。この熱によってピーキングコンデンサC3の温度が変化すると、ピーキングコンデンサC3の容量が変化し、主放電のタイミングがずれたり、レーザ出力の安定性が低下したりすることがある。そこで、ピーキングコンデンサC3は、接続プレート10fを介して接続された冷却機構27f、又は接続プレート10gを介して接続された冷却機構27gによって冷却される。
【0044】
予備電離コンデンサC11においても熱が発生し、予備電離コンデンサC11の容量が変化し、予備電離のタイミングがずれたり、レーザ出力の安定性が低下したりすることがある。しかしながら、予備電離コンデンサC11は、冷却機構27f及び27gの電位と異なる電位を有し、冷却機構27f及び27gによる冷却が難しい場合がある。予備電離コンデンサC11を冷却するために、図示しない冷却ファンにより空気流を発生させることも考えられるが、空気流による冷却では冷却効果が十分ではない場合がある。
【0045】
特開2009-111313号公報の図4には、予備電離コンデンサに電気的に接続された予備電離用導電部材を、熱伝導率の高いセラミックス製部材に接触させ、このセラミックス製部材を冷却部材である水冷ジャケットに接触させることが記載されている。しかしながら、この構造では、予備電離用導電部材とセラミックス製部材との接触力が製品ごとにばらつく可能性がある。予備電離用導電部材とセラミックス製部材との接触力が弱いと、予備電離用導電部材からセラミックス製部材への熱伝導が不十分となり、予備電離コンデンサの冷却を十分に行えない場合がある。
【0046】
以下に説明する実施形態においては、予備電離コンデンサに電気的に接続された導電部と、冷却部に接続された絶縁部と、を第1の締結部によって締結することにより、予備電離コンデンサの冷却を実現している。
【0047】
2.導電部と絶縁部とを締結した冷却構造
2.1 構成
図4Aは、第1の実施形態に係るレーザ装置におけるピーキングコンデンサ及び予備電離コンデンサの配置を示す平面図である。図4Bは、図4AのIVB-IVB線における断面図である。
【0048】
図1及び図2に示される電気絶縁部20の上に、接続プレート20bが配置されている。接続プレート20bは、一対の放電電極11a及び11bの長手方向と、接続プレート20bの長手方向とが略平行となるように配置されている。接続プレート20bは、パルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の出力端子に電気的に接続されている。接続プレート20bのH方向側と-H方向側とに、それぞれ複数のピーキングコンデンサC3が並べて配置されている。
【0049】
接続プレート10f及び10gが、接続プレート20bを挟んで接続プレート20bと略平行に配置されている。接続プレート10f及び10gは、基準電位に電気的に接続されている。接続プレート10fには、冷却機構27fが接触して固定され、接続プレート10gには、冷却機構27gが接触して固定されている。
【0050】
図4Bに示されるように、予備電離コンデンサC11の各々は、コンデンサ本体31aと、第1の電極31bと、第2の電極31cと、被覆部31dとを含んでいる。コンデンサ本体31aは、第1の電極31bと第2の電極31cとの間に挟まれて位置し、第1の電極31bと第2の電極31cとの間の容量を所定の容量とするように構成されている。被覆部31dは、コンデンサ本体31aと、第1の電極31bの一部と、第2の電極31cの一部とを覆っている。
【0051】
第2の電極31cは、予備電離配線部35aに電気的に接続されている。第2の電極31cに予備電離配線部35aを固定するために、第2の電極31cに形成されたボルト穴31fに、予備電離配線部35aを貫通したボルト35dがねじ込まれている。
【0052】
予備電離配線部35aは、フィードスルー36を介してレーザチャンバ10の内部に導入される。予備電離配線部35aは、レーザチャンバ10の内部において予備電離内電極25に電気的に接続される。これにより第2の電極31cが予備電離内電極25に電気的に接続される。予備電離内電極25の電位は、パルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の電位と、基準電位との間の電位となる。
【0053】
第1の電極31bは、導電部32と、絶縁部33と、冷却部34と、を含む冷却構造に接続されている。
【0054】
導電部32は、第1の大径部32a及び雌ネジが形成された第1の小径部32bを有する第1のボルト穴と、雄ネジ部32cとを含む。第1のボルト穴と雄ネジ部32cとは、導電部32の互いに反対側の面に位置する。雄ネジ部32cが第1の電極31bのボルト穴31eにねじ込まれることにより、導電部32と第1の電極31bとが電気的に接続される。導電部32は、導電率の高い銅などの材料で構成される。
【0055】
導電部32には、導電部材28aの一端が接触して固定されている。導電部材28aの他端は接続プレート20bに接触して固定されている。これにより、予備電離コンデンサC11の第1の電極31bが、導電部32と、導電部材28aと、接続プレート20bとを介して、パルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の出力端子に電気的に接続される。
【0056】
絶縁部33は、第1の位置33aを含む第1の面と、第2の位置33bを含む第2の面と、を有する。第1の面と第2の面とは互いに反対側の面である。第1の位置33aと第2の位置33bとは互いに対向する位置である。絶縁部33は、さらに、第1の位置33aの略中心から第1の面の略法線方向に突出した第1の突起部33cと、第2の位置33bの略中心から第2の面の略法線方向に突出した第2の突起部33dと、を有する。絶縁部33は、さらに、第1の位置33aの周囲において第1の面の略法線方向に突出した第1のカバー33eと、第2の位置33bの周囲において第2の面の略法線方向に突出した第2のカバー33fと、を有する。
【0057】
絶縁部33は比誘電率の低い材料で構成されることが好ましい。絶縁部33の比誘電率は、10以下が好ましい。例えば、絶縁部33は、比誘電率が8.4以上9.9以下である酸化アルミニウム、あるいは、比誘電率が8.5以上8.6以下である窒化アルミニウムで構成される。
【0058】
絶縁部33の第1の突起部33cには、第1の締結部37が固定されている。第1の締結部37は、第1の突起部33cに固定された第1の部分37aと、第1のボルト穴の第1の小径部32bにねじ込まれる雄ネジが形成された第2の部分37bと、を有する。第1の部分37aが、第1の突起部33cの周囲に被せられて第1の突起部33cにロウ付けされることにより、第1の突起部33cに強固に固定される。さらに、第2の部分37bが、第1の小径部32bにねじ込まれることにより、導電部32と絶縁部33とが締結される。
【0059】
このとき、導電部32が絶縁部33の第1の位置33aに密着して固定される。また、第1のカバー33eが導電部32の一端を覆うように導電部32の周囲を取り囲んでいる。また、第1の部分37aは第1の大径部32aに収容され、第2の部分37bは第1の小径部32bに収容されるように構成されている。
【0060】
絶縁部33が酸化アルミニウムを含むセラミックである場合、第1の締結部37は、ニッケル及びコバルトを含む合金を含むことが好ましい。これにより、絶縁部33と第1の締結部37とを熱膨張率の近い材料で構成し、絶縁部33と第1の締結部37とのロウ付けによる固定が温度変化によって影響されることを抑制できる。
【0061】
導電部32と絶縁部33とを十分に密着させるために、導電部32と絶縁部33との接触面の表面粗さRaは6.3μm以下とすることが好ましい。例えば3.2μmとすることが好ましい。また、導電部32と絶縁部33との接触面の面積は110mm以上とすることが好ましい。例えば150mmとすることが好ましい。
【0062】
導電部32と絶縁部33の第1の位置33aとは、金属シートを介して接触していてもよい。金属シートは、例えば、アルミニウム、銅、又はスズのシートでもよい。金属シートの厚みは、10μm以上、30μm以下でもよい。さらに好ましくは、10μm以上、20μm以下でもよい。
あるいは、導電部32と絶縁部33の第1の位置33aとは、樹脂シートを介して接触していてもよい。樹脂シートは、例えば、シリコーンゴム又はアクリルゴムのシートでもよい。樹脂シートの厚みは、10μm以上、1000μm以下でもよい。例えば、500μmでもよい。
金属シート又は樹脂シートを用いることにより、導電部32と絶縁部33との間の空気層が低減され、導電部32から絶縁部33への熱伝導が効率よく行われる。
【0063】
冷却部34は、第2の大径部34a及び雌ネジが形成された第2の小径部34bを有する第2のボルト穴を含む。冷却部34は、導電率の高い銅などの材料で構成される。
冷却部34は、第2のボルト穴とは別の部分で、冷却機構27gと接続されている。これにより、冷却部34から冷却機構27gへの熱伝導が可能となっている。また、冷却部34は、冷却機構27g及び接続プレート10gを介して基準電位に電気的に接続される。
【0064】
絶縁部33の第2の突起部33dには、第2の締結部38が固定されている。第2の締結部38は、第2の突起部33dに固定された第3の部分38aと、第2のボルト穴の第2の小径部34bにねじ込まれる雄ネジが形成された第4の部分38bと、を有する。第3の部分38aが、第2の突起部33dの周囲に被せられて第2の突起部33dにロウ付けされることにより、第2の突起部33dに強固に固定される。さらに、第4の部分38bが、第2の小径部34bにねじ込まれることにより、冷却部34と絶縁部33とが締結される。
【0065】
このとき、冷却部34が絶縁部33の第2の位置33bに密着して固定される。また、第2のカバー33fが冷却部34の一端を覆うように冷却部34の周囲を取り囲んでいる。また、第3の部分38aは第2の大径部34aに収容され、第4の部分38bは第2の小径部34bに収容されるように構成されている。
【0066】
絶縁部33が酸化アルミニウムを含むセラミックである場合、第2の締結部38は、ニッケル及びコバルトを含む合金を含むことが好ましい。これにより、絶縁部33と第2の締結部38とを熱膨張率の近い材料で構成し、絶縁部33と第2の締結部38とのロウ付けによる固定が温度変化によって影響されることを抑制できる。
【0067】
冷却部34と絶縁部33とを十分に密着させるために、冷却部34と絶縁部33との接触面の表面粗さRaは6.3μm以下とすることが好ましい。例えば3.2μmとすることが好ましい。また、冷却部34と絶縁部33との接触面の面積は110mm以上とすることが好ましい。例えば150mmとすることが好ましい。
【0068】
冷却部34と絶縁部33の第2の位置33bとは、金属シートを介して接触していてもよい。金属シートは、例えば、アルミニウム、銅、又はスズのシートでもよい。金属シートの厚みは、10μm以上、30μm以下でもよい。さらに好ましくは、10μm以上、20μm以下でもよい。
あるいは、冷却部34と絶縁部33の第2の位置33bとは、樹脂シートを介して接触していてもよい。樹脂シートは、例えば、シリコーンゴム又はアクリルゴムのシートでもよい。樹脂シートの厚みは、10μm以上、1000μm以下でもよい。例えば、500μmでもよい。
金属シート又は樹脂シートを用いることにより、冷却部34と絶縁部33との間の空気層が低減され、絶縁部33から冷却部34への熱伝導が効率よく行われる。
【0069】
2.2 動作及び作用
予備電離コンデンサC11で発生した熱は、導電部32及び絶縁部33を介した熱伝導によって冷却部34に排熱される。第1の締結部37により、導電部32が絶縁部33の第1の位置33aに密着して固定されるので、導電部32から絶縁部33への熱伝導が効率よく行われる。第2の締結部38により、冷却部34が絶縁部33の第2の位置33bに密着して固定されるので、絶縁部33から冷却部34への熱伝導が効率よく行われる。
【0070】
第1の位置33aと第2の位置33bとは、互いに対向して位置している。これによれば、絶縁部33の熱伝導率が、導電部32又は冷却部34の熱伝導率より低い場合でも、導電部32から冷却部34への排熱が効率よく行われる。
【0071】
導電部32はパルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の電位に電気的に接続され、冷却部34は基準電位に電気的に接続されている。しかし、導電部32と冷却部34との間は絶縁部33によって電気的に絶縁されている。これによれば、導電部32の電位と冷却部34の電位とが異なっていても、冷却部34を用いて導電部32を冷却することができる。
【0072】
絶縁部33の第1のカバー33eが導電部32の一端を覆っており、絶縁部33の第2のカバー33fが冷却部34の一端を覆っている。これにより、導電部32と冷却部34との間での放電を抑制できる。
【0073】
絶縁部33は比誘電率の低い材料で構成される。これにより、絶縁部33の静電容量を小さくすることができ、絶縁部33がコンデンサとして機能することを抑制できる。
その他の点については、図1図3を参照しながら説明した比較例と同様である。
【0074】
3.予備電離配線部に設けられた冷却構造
3.1 構成
図5Aは、第2の実施形態に係るレーザ装置におけるピーキングコンデンサ及び予備電離コンデンサの配置を示す平面図である。図5Bは、図5AのVB-VB線における断面図である。図5Cは、図5AのVC-VC線における断面図である。
図5Bに示されるように、予備電離コンデンサC11の各々は、コンデンサ本体41aと、第1の電極41bと、第2の電極41cと、被覆部41dとを含んでいる。コンデンサ本体41aは、第1の電極41bと第2の電極41cとの間に挟まれて位置し、第1の電極41bと第2の電極41cとの間の容量を所定の容量とするように構成されている。被覆部41dは、コンデンサ本体41aと、第1の電極41bの一部と、第2の電極41cの一部とを覆っている。
【0075】
第2の電極41cには、導電部材28aの一端が固定されている。第2の電極41cに導電部材28aを固定するために、第2の電極41cに形成されたボルト穴41fに、導電部材28aを貫通したボルト28dがねじ込まれている。導電部材28aの他端は接続プレート20bに固定されている。
これにより、予備電離コンデンサC11の第2の電極41cが、導電部材28aを介して、パルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の出力端子に電気的に接続される。
【0076】
第1の電極41bは、予備電離配線部35bと、絶縁部43と、冷却部44と、を含む冷却構造に接続されている。予備電離配線部35bは、本開示における導電部に相当する。
【0077】
予備電離配線部35bは、雄ネジ部35gを含む。雄ネジ部35gが第1の電極41bのボルト穴41eにねじ込まれることにより、予備電離配線部35bと第1の電極41bとが電気的に接続される。予備電離配線部35bは、導電率の高い銅などの材料で構成される。
【0078】
予備電離配線部35bは、フィードスルー36を介してレーザチャンバ10の内部に導入される。予備電離配線部35bは、レーザチャンバ10の内部において予備電離内電極25に電気的に接続される。これにより第1の電極41bが予備電離内電極25に電気的に接続される。予備電離内電極25は、パルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の電位と、基準電位との間の電位となる。
【0079】
予備電離配線部35bは、雄ネジ部35gの位置とフィードスルー36の位置との間に、貫通孔35fを有する。
【0080】
絶縁部43は、第1の位置43aを含む第1の面と、第2の位置43bを含む第2の面と、を有する。第1の面と第2の面とは互いに反対側の面である。第1の位置43aと第2の位置43bとは互いに対向する位置である。絶縁部43は、さらに、図5Cに示されるように、第1の位置43aの付近で第1の面の略法線方向に突出した第1のカバー43c及び43dを有する。絶縁部43は、さらに、図5Bに示されるように、第2の位置43bの付近で第2の面の略法線方向に突出した第2のカバー43e及び43fを有する。
【0081】
絶縁部43は比誘電率の低い材料で構成されることが好ましい。絶縁部43の比誘電率は、10以下が好ましい。例えば、絶縁部43は、比誘電率が8.4以上9.9以下である酸化アルミニウム、あるいは、比誘電率が8.5以上8.6以下である窒化アルミニウムで構成される。
【0082】
絶縁部43の第1の位置43aには、第1の締結部47が固定されている。第1の締結部47は、貫通孔35fの貫通方向の一方側に位置する第5の部分47aと、貫通孔35fの貫通方向の他方側に位置する第6の部分47bと、を含む。第5の部分47aは、第1の位置43aにロウ付けされている。第5の部分47aと第6の部分47bとは一体のボルトで構成されている。
【0083】
第1の締結部47は、さらにナット47cを含む。ナット47cは、第6の部分47bに取り付けられて回転させられると、第6の部分47bのねじ溝に従って第5の部分47aへ近づく方向に移動する。これにより、予備電離配線部35bと絶縁部43とが締結される。このとき、予備電離配線部35bが絶縁部43の第1の位置43aに密着して固定される。また、第1のカバー43c及び43dが予備電離配線部35bの一部を覆うように予備電離配線部35bの2つの側面を挟み込んでいる。ナット47cは、本開示における第7の部分に相当する。
【0084】
絶縁部43が酸化アルミニウムを含むセラミックである場合、第1の締結部47は、ニッケル及びコバルトを含む合金を含むことが好ましい。これにより、絶縁部43と第1の締結部47とを熱膨張率の近い材料で構成し、絶縁部43と第1の締結部47とのロウ付けによる固定が温度変化によって影響されることを抑制できる。
【0085】
予備電離配線部35bと絶縁部43とを十分に密着させるために、予備電離配線部35bと絶縁部43との接触面の表面粗さRaは6.3μm以下とすることが好ましい。例えば3.2μmとすることが好ましい。また、予備電離配線部35bと絶縁部43との接触面の面積は110mm以上とすることが好ましい。例えば150mmとすることが好ましい。
【0086】
予備電離配線部35bと絶縁部43の第1の位置43aとは、金属シートを介して接触していてもよい。あるいは、予備電離配線部35bと絶縁部43の第1の位置43aとは、樹脂シートを介して接触していてもよい。金属シート又は樹脂シートの材料及び厚さは、第1の実施形態で説明したものと同様でよい。金属シート又は樹脂シートを用いることにより、予備電離配線部35bと絶縁部43との間の空気層が低減され、予備電離配線部35bから絶縁部43への熱伝導が効率よく行われる。
【0087】
冷却部44は、ボルト穴44aを含む。絶縁部43を貫通したボルト46がボルト穴44aにねじ込まれることにより、冷却部44と絶縁部43とが締結される。
このとき、冷却部44が絶縁部43の第2の位置43bに密着して固定される。また、第2のカバー43e及び43fが冷却部44の一部を覆うように冷却部44の2つの側面を挟み込んでいる。
【0088】
冷却部44は、絶縁部43と締結された部分とは別の部分で、冷却機構27fと接続されている。これにより、冷却部44から冷却機構27fへの熱伝導が可能となっている。また、冷却部44は、冷却機構27f及び接続プレート10fを介して基準電位に電気的に接続される。
【0089】
冷却部44と絶縁部43とを十分に密着させるために、冷却部44と絶縁部43との接触面の表面粗さRaは6.3μm以下とすることが好ましい。例えば3.2μmとすることが好ましい。また、冷却部44と絶縁部43との接触面の面積は110mm以上とすることが好ましい。例えば150mmとすることが好ましい。
【0090】
冷却部44と絶縁部43の第2の位置43bとは、金属シートを介して接触していてもよい。あるいは、冷却部44と絶縁部43の第2の位置43bとは、樹脂シートを介して接触していてもよい。金属シート又は樹脂シートの材料及び厚さは、第1の実施形態で説明したものと同様でよい。金属シート又は樹脂シートを用いることにより、冷却部44と絶縁部43との間の空気層が低減され、絶縁部43から冷却部44への熱伝導が効率よく行われる。
【0091】
3.2 動作及び作用
予備電離コンデンサC11で発生した熱は、予備電離配線部35b及び絶縁部43を介した熱伝導によって冷却部44に排熱される。第1の締結部47により、予備電離配線部35bが絶縁部43の第1の位置43aに密着して固定されるので、予備電離配線部35bから絶縁部43への熱伝導が効率よく行われる。ボルト46により、冷却部44が絶縁部43の第2の位置43bに密着して固定されるので、絶縁部43から冷却部44への熱伝導が効率よく行われる。
【0092】
第1の位置43aと第2の位置43bとは、互いに対向して位置している。これによれば、絶縁部43の熱伝導率が、予備電離配線部35b又は冷却部44の熱伝導率より低い場合でも、予備電離配線部35bから冷却部44への排熱が効率よく行われる。
【0093】
予備電離配線部35bはレーザガスの一部を予備電離させるためのコロナ放電を生成可能な電位となる予備電離内電極25に電気的に接続され、冷却部44は基準電位に電気的に接続されている。しかし、予備電離配線部35bと冷却部44との間は絶縁部43によって電気的に絶縁されている。これにより、予備電離配線部35bの電位と冷却部44の電位とが異なっていても、冷却部44を用いて予備電離配線部35bを冷却することができる。
【0094】
絶縁部43の第1のカバー43c及び43dが予備電離配線部35bの一部を覆っており、絶縁部43の第2のカバー43e及び43fが冷却部44の一部を覆っている。これにより、予備電離配線部35bと冷却部44との間での放電を抑制できる。
【0095】
絶縁部43は比誘電率の低い材料で構成される。これにより、絶縁部43の静電容量を小さくすることができ、絶縁部43がコンデンサとして機能することを抑制できる。

その他の点については、図4A及び図4Bを参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。
【0096】
上述の説明では、ボルト46によって冷却部44と絶縁部43とが締結される場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。予備電離配線部35bと絶縁部43との締結と同様に、絶縁部43の第2の位置43bにロウ付けされて冷却部44の貫通孔を貫通する図示しない締結部により、冷却部44と絶縁部43とが締結されてもよい。
【0097】
4.その他
4.1 参考例の構成
図6Aは、参考例に係るレーザ装置におけるピーキングコンデンサ及び予備電離コンデンサの配置を示す平面図である。図6Bは、図6AのVIB-VIB線における断面図である。
【0098】
参考例において、図6Bに示される第1の電極41bは、予備電離配線部35cと、冷却装置50と、を含む冷却構造に接続されている。予備電離配線部35cは、レーザチャンバ10の内部において予備電離内電極25に電気的に接続される。予備電離内電極25の電位は、パルスパワーモジュール13から出力されるパルス状の高電圧の電位と、基準電位との間の電位となる。
冷却装置50は、供給排出部50aと、冷却管部50bと、絶縁シート50cと、被覆部50dと、を含んでいる。供給排出部50a及び冷却管部50bは、例えば、基準電位に電気的に接続される。
【0099】
供給排出部50aは、図示しないポンプ等に接続された配管である。供給排出部50aは、水などの冷却媒体を冷却管部50bに供給し、冷却管部50bを通過した冷却媒体を排出する。
【0100】
冷却管部50bは、予備電離配線部35cの周囲に配置され、熱伝導率の高い材料で構成された配管である。冷却管部50bは、供給排出部50aから供給された冷却媒体を通過させる。このとき、予備電離配線部35cから冷却媒体に熱伝導が行われる。冷却管部50bを通過した冷却媒体は、供給排出部50aを介して排出される。
【0101】
絶縁シート50cは、予備電離配線部35cと冷却管部50bとの間に配置されている。絶縁シート50cは、電気絶縁性を確保する一方で熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0102】
被覆部50dは、絶縁性の樹脂で構成され、供給排出部50aの一部と、冷却管部50bとを覆っている。被覆部50dは、供給排出部50a及び冷却管部50bと、予備電離配線部35cとの間の放電を抑制するように構成されている。
【0103】
4.2 参考例の動作及び作用
予備電離コンデンサC11で発生した熱は、予備電離配線部35c及び絶縁シート50cを介した熱伝導によって、冷却管部50bに排熱され、さらに冷却媒体によって供給排出部50aに排熱される。熱伝導率の高い絶縁シート50cを採用することにより、予備電離配線部35cから冷却管部50bへの熱伝導が効率よく行われる。
【0104】
予備電離配線部35cはレーザガスの一部を予備電離させるためのコロナ放電を生成可能な電位となる予備電離内電極25に電気的に接続され、供給排出部50a及び冷却管部50bは基準電位に電気的に接続されている。しかし、予備電離配線部35cと、供給排出部50a及び冷却管部50bと、の間は絶縁シート50c及び被覆部50dによって電気的に絶縁されている。これにより、予備電離配線部35cの電位と供給排出部50a及び冷却管部50bの電位とが異なっていても、冷却装置50を用いて予備電離配線部35cを冷却することができる。
その他の点については、図5A図5Cを参照しながら説明した第2の実施形態と同様である。
【0105】
4.3 補足
第1の実施形態においてはパルスパワーモジュール13の出力端子に電気的に接続された第1の電極31bを冷却する場合について説明した。また、第2の実施形態及び参考例においては予備電離内電極25に電気的に接続された第1の電極41bを冷却する場合について説明した。しかし、本開示はこれらに限定されない。パルスパワーモジュール13の出力端子に電気的に接続された電極と、予備電離内電極25に電気的に接続された電極と、の両方を冷却してもよい。第1の実施形態、第2の実施形態、及び参考例に係る冷却構造のうちの任意の2つを組み合わせてもよい。
【0106】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0107】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B